政治資金規正法等の一部を改正する法律案要綱
第1 収支報告書等に関する罰則の強化等
1 収支報告書等に関する代表者の罰則の強化
(1) 収支報告書等の記載及び提出義務者への代表者の追加
ア 政治団体の収支報告書については、当該政治団体の会計責任者とともに、当該政治団体の代表者も、その記載及び提出をしなければならないものとすること。 (政治資金規正法第12条第1項関係)
イ 政党の使途等報告書についても、アと同様の措置を講ずるものとすること。 (政党助成法第17条第1項関係)
(2) 収支報告書における寄附の不記載に関する罰則の強化
ア 1件150万円を超える金額の寄附については、それ以外の寄附と区別して政治団体の収支報告書に記載しなければならないものとすること。 (政治資金規正法第12条第1項第1号ロ関係)
イ 重過失以外の過失によりアの寄附を政治団体の収支報告書に記載しなかった者は、50万円以下の罰金に処するものとすること。
(政治資金規正法第27条第3項関係)
(3) 公民権の停止
(2)のイの罪を犯し罰金刑に処せられた者は、故意又は重過失により(1)のアの違反に係る罪を犯し罰金刑に処せられた者と同様に、その裁判が確定した日から5年間、公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を有しないものとすること。 (政治資金規正法第28条第1項関係)
2 代表者の公職の候補者への限定のための措置
(1) 寄附金控除等対象政治団体の代表者の限定
政治活動に関する寄附をした場合の寄附金控除の特例又は所得税額の特別控除の適用を受けることができる政治団体は、その代表者が公職の候補者であるものに限るものとすること。 (租税特別措置法第41条の18関係)
(2) 2号国会議員関係政治団体の廃止
(1)に伴い、「国会議員関係政治団体」とは、衆議院議員又は参議院議員に係る公職の候補者が代表者である政治団体(政党及び第5条第1項各号に掲げる団体を除く。)のみをいうものとすること。 (政治資金規正法第3条第5項関係)
第2 政治資金収支報告の適正の確保及び公開の充実
1 国会議員関係政治団体から寄附を受けた政治団体の収支報告の特例
国会議員関係政治団体以外の政治団体(政党及び政治資金団体を除く。)のうち、各年中において国会議員関係政治団体で同一の公職の候補者が代表者であるものから受けた寄附の金額の合計額が100万円以上となった政治団体は、その年及びその翌年の収支報告書の記載等について、国会議員関係政治団体であるものとみなすこと。 (政治資金規正法第19条の12関係)
2 登録政治資金監査人による政治資金監査の拡充
(1) 収入受領書等の作成等
ア 政治資金監査対象団体の会計責任者等は、全ての収入について、その収入に係る支払を受けた後直ちに、当該支払に係る収入受領書及びその控えを作成し、当該収入受領書をその収入に係る支払をした者に交付しなければならないものとすること。
イ 個人が負担する党費又は会費、機関紙誌の発行その他の事業による収入(政治資金パーティーの対価に係るものを除く。)等については、収入の明細書等の作成をもって、アの収入受領書及びその控えの作成に代えることができるものとすること。
ウ ア及びイは、政治資金監査対象団体の預金又は貯金の口座への振込みによりされた収入については、適用しないものとすること。 (政治資金規正法第11条の2関係)
(2) 収入受領書の控え等の提出
政治資金監査対象団体の代表者及び会計責任者は、収支報告書を提出するときは、政治資金監査対象団体である間に受けた収入に係る収入受領書の控え若しくは収入の明細書等の写し又は預貯金の口座に係る通帳等の写し等を併せて提出しなければならないものとすること。 (政治資金規正法第13条の2第2項関係)
(3) 登録政治資金監査人による政治資金監査の拡大
ア 登録政治資金監査人による政治資金監査の対象となる政治団体(以下「政治資金監査対象団体」という。)に、政党本部及び政治資金団体並びに政策研究団体等を追加すること。 (政治資金規正法第14条の2第1項関係)
イ 登録政治資金監査人による政治資金監査の対象となる事項に、その年における収入に関する事項を追加すること。
(政治資金規正法第14条の2第2項関係)
3 電子情報処理組織を使用する方法による提出の義務化
政治資金監査対象団体の代表者及び会計責任者は、収支報告書及び政治資金監査報告書の提出については、電子情報処理組織を使用する方法により行うものとすること。 (政治資金規正法第14条の4関係)
4 収支報告書のインターネットの利用による公表等
(1) 収支報告書のインターネットによる公表の義務化等
ア 総務大臣又は都道府県の選挙管理委員会は、収支報告書の要旨を公表するとともに、当該報告書をインターネットを利用する方法により公表しなければならないこと。 (政治資金規正法第20条第1項関係)
イ 総務大臣又は都道府県の選挙管理委員会がインターネットの利用等の方法により収支報告書を公表するときは当該報告書の要旨を公表することを要しないとする規定を削除するものとすること。
(政治資金規正法旧第20条第4項関係)
(2) 個人寄附者等の住所の公表事項の限定
(1)のアの場合において、収支報告書に記載された個人の寄附者の住所に係る部分を公表するときは、都道府県、郡及び市町村の名称に係る部分(外国の場合は、当該外国の国名)に限って行うものとすること。 (政治資金規正法第20条第3項関係)
(3) データベースの提供
(1)のアの場合において、3により提出された収支報告書に係るデータベース(収支報告書に記載された事項(個人寄附者等に係る部分を除く。)に関する情報の集合物であって、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものをいう。)を、インターネットを通じて一般の利用に供しなければならないものとすること。
(政治資金規正法新第20条第4項関係)
5 国会議員関係政治団体の収支報告書の一元的な閲覧
総務大臣は、全ての国会議員関係政治団体について、総務省令で定めるところにより、4の(1)のアにより公表された収支報告書をインターネットを利用する方法により国会議員に係る公職の候補者ごとに一元的に閲覧することができるようにするため、必要な措置を講ずるものとすること。 (政治資金規正法第19条の11第1項関係)
6 収支報告書の公表時期の早期化及び公表期間の延長
(1) 収支報告書の公表時期の早期化
収支報告書の要旨の公表の期限を、特別の事情がある場合を除き、当該報告書が提出された年の8月31日(現行は、11月30日)までとすること。 (政治資金規正法第20条第2項関係)
(2) 収支報告書の公表期間の延長等
4の(1)のアによる収支報告書の公表は、収支報告書の要旨を公表した日から同日以後7年を経過する日の属する年の8月31日まで(現行は、要旨を公表した日から3年間)とすること。 (政治資金規正法第20条第2項及び第20条の2関係)
第3 「政策活動費」の禁止
1 政党から公職の候補者個人に対してされる寄附の禁止
政党がする公職の候補者個人への政治活動(選挙運動を除く。)に関する金銭等による寄附を禁止すること。 (政治資金規正法旧第21条の2第2項関係)
2 渡切りの方法による経費支出の禁止
(1) 政治団体の経費の支出は、当該政治団体の役職員又は構成員に対する渡切りの方法によっては、することができないものとすること。 (政治資金規正法第8条の3関係)
(2) 政治資金の収支の報告に当たっては、真実の記載をしなければならず、収支の状況を明らかにしないようにするため支出の相手方として政治団体の役職員又は構成員を記載する等政治活動の公明の確保に支障を及ぼすような記載をしてはならないこと。 (政治資金規正法第2条第3項関係)
第4 施行期日等
1 施行期日
この法律は、令和8年1月1日から施行すること。 (附則第1条関係)
2 選挙区支部への寄附の寄附金控除の特例の適用除外
公職の候補者が、政党の支部で選挙区の区域又は選挙の行われる区域を単位として設けられるもののうち、当該公職の候補者が代表者であるものに対して政治活動に関する寄附をする場合においては、租税特別措置法第41条の18の規定による寄附金控除の特例及び所得税額の特別控除の適用対象とならないこととするために必要な措置が講ぜられるものとすること。 (附則第13条関係)
3 政党交付金の交付停止の制度の創設
政党助成法第3条第1項の規定による政党交付金の交付の決定を受けている政党に所属する衆議院議員又は参議院議員が政治資金又は選挙に関する犯罪に係る事件に関し起訴された場合に、当該政党に対して交付すべき政党交付金のうちその起訴された衆議院議員又は参議院議員に係る議員数割の額に相当する額の交付を停止する制度を創設するため、必要な措置が講ぜられるものとすること。 (附則第14条関係)
4 政治資金に係る機関の設置に関する検討
国会による政治資金に係る立法に関する機能及び自律的な政治資金の規正の強化に資するため、政治資金に関する政策の提言、衆議院議員又は参議院議員に関係する政治団体の政治資金に関する法令の規定の遵守の状況の監視及び当該規定の違反があった場合における勧告等を行う機関を国会に設置することとし、その機関の在り方については、速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすること。 (附則第16条関係)
5 不断の見直し
この法律の施行後においても、政治活動の公明を確保するために望ましい政治資金の収支の公開に関する制度の在り方については、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の監視と批判の下に行われるよう、不断の見直しが行われるものとすること。 (附則第17条関係)