貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案要綱
第一 貨物自動車運送事業法の一部改正 (改正法第一条関係)
一 健全化措置及び実運送体制管理簿に関する規定等の拡充に関する事項
1 書面の交付に係る規定等における真荷主の範囲の適正化 (第十二条及び第二十四条の五関係)
現行法において貨物利用運送事業者が真荷主として扱われる場合について、貨物利用運送事業者が元請として扱われるよう、真荷主の範囲を適正化すること。
2 真荷主から引き受けた貨物の運送に係る二以上の段階にわたる委託の制限
(新第二十三条の四関係)
一般貨物自動車運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、当該貨物の運送について当該他の貨物自動車運送事業者からの二以上の段階にわたる委託を制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。
3 準用対象の追加 (第三十五条、第三十六条、第三十七条及び第三十七条の二関係)
特定貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者、第一種貨物利用運送事業者及び第二種貨物利用運送事業者に健全化措置及び実運送体制管理簿に関する規定を準用するため、必要な規定の整備を行うこと。
二 無許可等で貨物自動車運送事業を経営する者に貨物の運送を委託する者等への対処に関する事項
1 無許可等で貨物自動車運送事業を経営する者への貨物の運送の委託の禁止
(新第六十五条の二及び第七十五条新第十四号関係)
(1) 何人も、次のいずれかに該当する者に貨物の運送を委託してはならないこと。
@ 第三条の規定に違反して無許可で一般貨物自動車運送事業を経営する者
A 第三十五条第一項の規定に違反して無許可で特定貨物自動車運送事業を経営する者
B 第三十六条第一項前段の規定に違反して無届で貨物軽自動車運送事業を経営する者
(2) (1)に違反した者は、百万円以下の罰金に処すること。
2 無許可経営等原因行為への対処 (附則新第一条の二の二関係)
(1) 国土交通大臣は、当分の間、貨物自動車運送事業者以外の者による貨物自動車運送事業の経営(以下「無許可経営等」という。)の原因となるおそれのある行為(以下「無許可経営等原因行為」という。)を荷主その他の者(以下「荷主等」という。)がしている疑いがあると認めるときは、関係行政機関の長に対し、当該荷主等に関する情報を提供することができること。
(2) 国土交通大臣は、当分の間、荷主等が無許可経営等原因行為をしているおそれがあると認めるときは、当該荷主等に対し、無許可経営等原因行為をしないよう要請することができること。
(3) 国土交通大臣は、当分の間、荷主等が無許可経営等原因行為をしていることを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、当該荷主等に対し、無許可経営等原因行為をしないよう勧告することができること。
(4) 国土交通大臣は、(3)による勧告をしたときは、その旨を公表するものとすること。
(5) 関係行政機関の長は、荷主等による無許可経営等原因行為の効果的な防止を図るため、(2)及び(3)の実施について、国土交通大臣に協力するものとすること。
(6) 地方実施機関は、当分の間、無許可経営等をする者に対する荷主等の行為が無許可経営等原因行為に該当すると疑うに足りる事実を把握したときは、その事実を国土交通大臣に通知するものとすること。
第二 貨物自動車運送事業法の一部改正 (改正法第二条関係)
一 目的規定の改正 (第一条関係)
貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることについて、貨物自動車運送事業に従事する者の労働環境の適正な整備に留意しつつ行うべきことを明記すること。
二 許可の更新制度の導入等に関する事項
1 許可の基準の追加 (第六条新第三号の二関係)
一般貨物自動車運送事業の許可の基準として、現行法の輸送の安全に関する基準及び四2の労働者の適切な処遇の確保その他の事業の適確な遂行に関する基準を遵守してその事業を遂行することその他法令の規定を遵守してその事業を遂行することが見込まれることを追加すること。
2 許可の更新制度の導入 (新第六条の二関係)
(1) 一般貨物自動車運送事業の許可は、国土交通省令で定めるところにより五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失うこと。
(2) (1)の許可の更新の申請があった場合において、(1)の期間(以下「有効期間」という。)の満了の日までに当該申請に対する処分がなされないときは、従前の一般貨物自動車運送事業の許可は、有効期間の満了後もその処分がなされるまでの間は、なおその効力を有すること。
(3) (2)の場合において、(1)の許可の更新がなされたときは、その有効期間は、従前の有効期間の満了の日の翌日から起算するものとすること。
(4) 国土交通大臣は、別に法律で定める独立行政法人に、国土交通省令で定めるところにより、(1)の許可の更新に関する事務の一部を行わせることができること。
(5) 許可の申請、欠格事由及び1を含む許可の基準の規定は、(1)の許可の更新について準用すること。
三 適正原価に関する事項
1 運賃及び料金に係る適正原価 (新第九条の二及び第六十八条関係)
(1) 国土交通大臣は、貨物自動車運送事業に係る運賃及び料金について、燃料費、全産業の労働者一人当たりの賃金の額の平均額を踏まえた人件費、減価償却費、輸送の安全確保のために必要な経費、委託手数料、事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資、公租公課その他の事業の適正な運営の確保のために通常必要と認められる費用であって国土交通省令で定めるものを的確に反映した積算を行うことにより、貨物自動車運送事業の適正な運営を図るための原価を定めることができること。
(2) 国土交通大臣は、(1)の原価(以下「適正原価」という。)を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならないこと。
(3) 国土交通大臣は、(1)による適正原価の設定については、運輸審議会に諮らなければならないこと。
2 適正原価を下回る運賃及び料金の制限 (新第九条の三関係)
(1) 一般貨物自動車運送事業者は、1(2)による適正原価の告示があった場合においては、自らが引き受ける貨物の運送に係る運賃及び料金が当該適正原価を下回ることとならないようにしなければならないこと。
(2) 一般貨物自動車運送事業者は、1(2)による適正原価の告示があった場合において、自らが引き受ける貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、その利用する運送に係る運賃及び料金が当該適正原価を下回ることとならないようにしなければならないこと。
四 労働者の適切な処遇の確保及び事業の的確な遂行に関する事項
1 労働者の適切な処遇の確保 (新第二十四条の六関係)
一般貨物自動車運送事業者は、国土交通省令で定めるところにより、その事業用自動車の運転者その他の労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するために必要な措置を実施するものとすること。
2 事業の的確な遂行に関する事項の追加 (第二十五条第一項第二号関係)
一般貨物自動車運送事業者が国土交通省令で定める基準を遵守すべき事項として、適正原価を下回らない額での貨物の運送の受託及び委託並びに労働者の適切な処遇の確保を追加すること。
五 準用対象の追加等 (第三十五条、第三十六条、第三十七条及び第三十七条の二関係)
特定貨物自動車運送事業者、貨物軽自動車運送事業者、第一種貨物利用運送事業者及び第二種貨物利用運送事業者に係る準用規定等について、二から四までの事項に関し必要な規定の整備を行うこと。
第三 施行期日等
1 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。ただし、第一は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。 (改正法附則第一条関係)
2 その他所要の規定の整備を行うこと。