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法律第百三十二号(昭二二・一一・一九)

  ◎農業協同組合法

   第一章 総則

第一条 この法律は、農民の協同組織の発達を促進し、以て農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図り、併せて国民経済の発展を期することを目的とする。

第二条 農業協同組合又は農業協同組合連合会の名称中には、農業協同組合又は農業協同組合連合会なる文字を用いなければならない。

  農業協同組合又は農業協同組合連合会でない者は、その名称中に農業協同組合又は農業協同組合連合会なる文字を用いてはならない。

第三条 農業協同組合及び農業協同組合連合会(以下組合と総称する。)は、法人とする。

第四条 第十三条第一項の規定により出資をさせる組合(以下出資組合という。)には、所得税及び法人税を課さない。

  地方公共団体は、組合に対して営業税を課することができない。

第五条 組合の住所は、その主たる事務所の所在地に在るものとする。

第六条 組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員(以下組合員と総称する。)のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。

第七条 組合は、昭和二十二年法律第五十四号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)の適用については、これを同法第二十四条各号に掲げる要件を備える組合とみなす。

第八条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これを以て第三者に対抗することができない。

第九条 この法律において、農民とは、みずから農業を営み、又は農業に従事する個人をいう。

  この法律において、農業とは、耕作、養畜又は養蚕の業務(これに付随する業務を含む。)をいう。

  みずから前項に掲げる業務を営み、又はこれに従事する者が行う薪炭生産の業務(これに附随する業務を含む。)は、この法律の適用については、これを農業とみなす。

   第二章 事業

第十条 組合は、左の事業の全部又は一部を行うことができる。

 一 組合員の事業又は生活に必要な資金の貸付

 二 組合員の貯金の受入

 三 組合員の事業又は生活に必要な物資の供給又は共同利用施設の設置

 四 農作業の共同化その他農業労働の効率の増進に関する施設

 五 農業の目的に供される土地の造成、改良若しくは管理又は農業水利施設の設置若しくは管理

 六 組合員の生産する物資の運搬、加工、貯蔵又は販売

 七 農村工業に関する施設

 八 農業上の災害又はその他の災害の共済に関する施設

 九 農村の生活及び文化の改善に関する施設

 十 農業技術及び組合事業に関する組合員の知識の向上を図るための教育並びに組合員に対する一般的情報の提供に関する施設

 十一 組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結

 十二 前各号の事業に附帯する事業

  組合員に出資をさせない組合(以下非出資組合という。)は、前項の規定にかかわらず、同項第一号及び第二号の事業を併せ行うことができない。

  組合は、定款の定めるところにより、組合員以外の者にその施設を利用させることができる。但し、一事業年度における組合員以外の者の事業の利用分量の総額は、当該事業年度における組合員の事業の利用分量の総額の五分の一を超えてはならない。

  農業協同組合連合会は、第一項の事業の外、会員たる組合の指導及び連絡に関する事業を行うことができる。

  第一項第一号及び第二号の事業を併せ行う農業協同組合連合会は、同項の規定にかかわらず、これらの事業に附帯する事業の外他の事業を行うことができない。

  前項の農業協同組合連合会は、会員のために、手形を割り引き、若しくは定款で定める金融機関に対して会員の負担する債務を保証し、又は当該金融機関の委任を受けてその債権を取り立てることができる。

第十一条 前条第一項第十一号の団体協約は、書面を以てすることに因つて、その効力を生ずる。

  組合員の締結する契約でその内容が前項の団体協約に定める規準に違反するものについては、その規準に違反する契約の部分は、これをその規準によつて契約したものとみなす。

   第三章 組合員

第十二条 農業協同組合の組合員たる資格を有する者は、左に掲げる者で定款で定めるものとする。

 一 農民

 二 前号に掲げる者の外、農業協同組合の地区内に住所を有する者で当該組合の施設を利用することを相当とするもの

 農業協同組合連合会の会員たる資格を有する者は、左に掲げる者で定款で定めるものとする。

 一 組合

 二 他の法律により設立された協同組織体で組合の行う事業と同種の事業を行うもの

第十三条 組合は、定款の定めるところにより、組合員に出資をさせることができる。

  出資組合の組合員は、出資一口以上を有しなければならない。

  出資一口の金額は、均一でなければならない。

  出資組合の組合員の責任は、第十七条の規定による経費の負担の外、その出資額を限度とする。

  組合員は、出資の払込について、相殺を以て出資組合に対抗することができない。

第十四条 出資組合の組合員は、出資組合の承認を得なければ、その持分を譲り渡すことができない。

  組合員でない者が持分を譲り受けようとするときは、加入の例によらなければならない。

  持分の譲受人は、その持分について、譲渡人の権利義務を承継する。

  組合員は、持分を共有することができない。

第十五条 非出資組合の組合員の責任は、第十七条の規定による経費の負担に限る。

第十六条 組合員は、各々一箇の議決権及び役員の選挙権を有する。但し、第十二条第一項第二号及び第二項第二号の規定による組合員(以下准組合員という。)は、議決権及び選挙権を有しない。

  組合員は、定款の定めるところにより、第三十七条第三項の規定により予め通知のあつた事項につき、書面又は代理人を以て、議決権を行うことができる。

  前項の規定により議決権を行う者は、これを出席者とみなす。

  代理人は、二人以上の組合員を代理することができない。

  代理人は、代理権を証する書面を組合に提出しなければならない。

第十七条 組合は、定款の定めるところにより、組合員に経費を賦課することができる。

  組合員は、前項の経費の支払について、相殺を以て組合に対抗することができない。

第十八条 組合は、定款の定めるところにより、組合員に対して過怠金を課すことができる。

第十九条 組合は、定款の定めるところにより、一年を超えない期間を限り、組合員が当該組合の施設の一部を専ら利用すべき旨の契約を組合員と締結することができる。

  前項の契約の締結は、組合員の任意とし、組合は、その締結を拒んだことを理由として、その組合員が組合の施設を利用することを拒んではならない。

第二十条 組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は、正当な理由がないのに、その加入を拒み、又はその加入につき現在の組合員が加入の際に附されたよりも困難な条件を附してはならない。

第二十一条 組合員は、六十日前までに予告し、事業年度の終において脱退することができる。

  前項の予告期間は、定款でこれを延長することができる。但し、その期間は、一年を超えてはならない。

第二十二条 組合員は、左の事由に因つて脱退する。

 一 組合員たる資格の喪失

 二 死亡又は解散

 三 除名

  除名は、左の各号の一に該当する組合員につき、総会の議決によつてこれをすることができる。但し、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これを以てその組合員に対抗することはできない。

 一 長期間にわたつて組合の施設を利用しない組合員

 二 出資の払込、経費の支払その他組合に対する義務を怠つた組合員

 三 その他定款で定める行為をした組合員

第二十三条 出資組合の組合員は、脱退したときは、定款の定めるところにより、その持分の全部又は一部の払戻を請求することができる。

  前項の持分は、脱退した事業年度の終における当該出資組合の財産によつてこれを定める。

第二十四条 持分を計算するにあたり、出資組合の財産を以てその債務を完済するに足りないときは、当該出資組合は、定款の定めるところにより、脱退した組合員に対して、その負担に帰すべき損失額の払込を請求することができる。

第二十五条 前二条の規定による請求権は、脱退の時から二年間これを行わないときは、時効に因つて消滅する。

第二十六条 脱退した組合員が出資組合に対する債務を完済するまでは、出資組合は、その持分の払戻を停止することができる。

第二十七条 出資組合の組合員は、定款の定めるところにより、その出資口数を減少することができる。

  前項の場合には、第二十三条乃至第二十五条の規定を準用する。

   第四章 管理

第二十八条 組合の定款には、左の事項を記載しなければならない。但し、非出資組合の定款には、第六号、第八号及び第九号の事項を記載しなくてもよい。

 一 事業

 二 名称

 三 地区

 四 事務所の所在地

 五 組合員たる資格並びに組合員の加入及び脱退に関する規定

 六 出資一口の金額及びその払込の方法並びに一組合員の有することのできる出資口数の最高限度

 七 経費の分担に関する規定

 八 剰余金の処分及び損失の処理に関する規定

 九 準備金の額及びその積立の方法

 十 役員の定数、職務の分担及び選挙に関する規定

 十一 事業年度

 十二 公告の方法

  組合の定款には、前項の事項の外、組合の存立時期を定めたときはその時期を、現物出資する者を定めたときはその者の氏名、出資の目的たる財産及びその価格並びにこれに対して与える出資口数を記載しなければならない。

  行政庁は、模範定款例を定めることができる。

第二十九条 左の事項は、定款で定めなければならない事項を除いて、これを規約で定めることができる。

 一 総会又は総代会に関する規定

 二 業務の執行及び会計に関する規定

 三 役員に関する規定

 四 組合員に関する規定

 五 その他必要な事項

第三十条 組合は、役員として理事及び監事を置く。

  理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。

  役員は、定款の定めるところにより、総会においてこれを選挙する。但し、設立当時の役員は、創立総会においてこれを選挙する。

  役員の選挙は、無記名投票によつてこれを行う。

  投票は、一人につき一票とする。

  組合の理事の定数の少くとも四分の三は、組合員(準組合員及び法人たる組合員を除き、組合員の組合員又はその組合員で准組合員又は法人でないものを含む。以下本条において同じ。)でなければならない。但し、設立当時の理事は、設立の同意は申し出た農民又は設立の同意を申し出た組合の組合員でなければならない。

第三十一条 役員の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

  設立当時の役員の任期は、前項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。但し、その期間は、一年を越えてはならない。

第三十二条 理事は、監事又は組合の使用人と、監事は、理事又は組合の使用人と相兼ねてはならない。

第三十三条 組合が理事と契約するときは、監事が、組合を代表する。組合と理事との訴訟についても、また同様とする。

第三十四条 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。

第三十五条 組合員(准組合員を除く。)が総組合員(准組合員を除く。)の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して、総会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあつた日から二十日以内に、総会を招集しなければならない。

第三十六条 理事の職務を行う者がないとき、又は前条の請求があつた場合において理事が正当な理由がないのに総会招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。

第三十七条 組合の組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその者の住所に、その者が別に通知又は催告を受ける場所を組合に通知したときは、その場所に宛てることを以て足りる。

  前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に、到達したものとみなす。

  総会招集の通知は、その会日から十日前までに、その会議の目的たる事項を示してこれをしなければならない。

第三十八条 理事は、定款、規約及び総会の議事録を各事務所に、組合員名簿を主たる事務所に備えて置かなければならない。

  組合員名簿には、各組合員について左の事項を記載しなければならない。但し、非出資組合の組合員名簿には、第三号及び第四号の事項を記載しなくてもよい。

 一 氏名又は名称及び住所

 二 加入の年月日及び組合員たる資格の別

 三 出資口数及び出資各口の取得の年月日

 四 払込済出資額及びその払込の年月日

  組合員及び組合の債権者は、第一項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。

第三十九条 理事は、通常総会の会日から一週間前までに、非出資組合にあつては事業報告書及び財産目録を、出資組合にあつては事業報告書、財産目録、貸借対照表及び剰余金処分案又は損失処理案を監事に提出し、且つ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。

  組合員及び組合の債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。

  第一項に掲げる書類を通常総会に提出するときは、監事の意見書を添附しなければならない。

第四十条 役員は、総組合員(准組合員を除く。)の五分の一以上の請求に因り、任期中でも総会においてこれを改選することができる。

  前項の規定による請求は、理事の全員又は監事の全員について、同時にこれをしなければならない。但し、法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約の違反を理由とする改選の請求は、この限りでない。

  第一項の規定による請求は、改選の理由を記載した書面を組合に提出してこれをしなければならない。

  前項の規定による書面の提出があつたときは、組合は、総会の会日から七日前までに、役員に対し、その書面を送付し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。

第四十一条 役員には、民法第四十四条第一項、第五十二条第二項、第五十三条乃至第五十五条、第五十九条及び第六十一条第一項の規定を準用する。

第四十二条 組合は、参事及び会計主任を選任し、その主たる事務所又は従たる事務所において、その業務を行わせることができる。

  参事及び会計主任の選任及び解任は、理事の過半数によりこれを決する。

  参事には、商法第三十八条第一項第三項及び第三十九条乃至第四十二条並びに非訟事件手続法第百七十二条乃至第百七十四条の規定を準用する。

第四十三条 組合員(准組合員を除く。)は、総組合員(准組合員を除く。)の十分の一以上の同意を得て、理事に対し、参事又は会計主任の解任を請求することができる。

  前項の規定による請求は、解任の理由を記載した書面を理事に提出してこれをしなければならない。

  第一項の規定による請求があつたときは、理事は、当該参事又は会計主任の解任の可否を決しなければならない。

  理事は、前項の可否を決する日から七日前までに、当該参事又は会計主任に対し、第二項の書面を送付し、且つ、弁明する機会を与えなければならない。

第四十四条 左の事項は、総会の決議を経なければならない。

 一 定款の変更

 二 規約の設定、変更及び廃止

 三 毎事業年度の事業計画の設定及び変更

 四 経費の賦課及び徴収の方法

 五 貸付金の利率の最高限度

 六 農業協同組合連合会が一会員のためにする手形の割引金額の最高限度

 七 事業報告書、財産目録、貸借対照表、剰余金処分案及び損失処理案

  定款の変更は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の認可については、第六十条及び第六十一条の規定を準用する。

第四十五条 総会の議事は、この法律、定款又は規約に特別の定のある場合を除いて、出席者の議決権の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

  議長は、総会においてこれを選任する。

  議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない。

第四十六条 左の事項は、総組合員(准組合員を除く。)の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 一 定款の変更

 二 組合の解散及び合併

 三 組合員の除名

第四十七条 総会には、民法第六十四条及び第六十六条の規定を準用する。この場合において、第六十四条中「第六十二条」とあるのは、「農業協同組合法第三十七条第三項」と読み替えるものとする。

第四十八条 千人以上の組合員(准組合員を除く。)を有する組合は、定款の定めるところにより、総会に代るべき総代会を設けることができる。

  総代は、組合員(准組合員を除く。)でなければならない。

  総代の定数は、少くとも二百人以上でなければならない。

  総代には、第三十条第三項乃至第五項の規定を準用する。

  総代会には、総会に関する規定を準用する。但し、総代会においては、定款の変更、解散及び合併の決議をすることができない。

第四十九条 出資組合は、出資一口の金額の減少を議決したときは、その議決の日から二週間以内に財産目録及び貸借対照表を作らなければならない。

  出資組合は、前項の期間内に、債権者に対して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、貯金者以外の知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。

  前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。

第五十条 債権者が前条第二項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、出資一口の金額の減少を承認したものとみなす。

  債権者が異議を述べたときは、出資組合は、弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として、信託会社若しくは信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。

第五十一条 出資組合は、定款で定める額に達するまでは、毎事業年度の剰余金の十分の一以上を準備金として積み立てなければならない。

  前項の定款で定める準備金の額は、出資総額の二分の一を下つてはならない。

  第一項の準備金は、損失の填補に充てる場合を除いては、これを取り崩してはならない。

  出資組合は、第十条第一項第十号の事業の費用に充てるため、毎事業年度の剰余金の二十分の一以上を翌事業年度に繰り越さなければならない。

第五十二条 出資組合は、損失を填補し、前条第一項の準備金及び同条第四項の繰越金を控除した後でなければ、剰余金の配当をしてはならない。

  剰余金の配当は、定款の定めるところにより、年五分を超えない範囲内において、払い込んだ出資額の割合に応じてこれをし、なお剰余があるときは、組合員の事業の利用分量の割合に応じてこれをしなければならない。

第五十三条 出資組合は、定款の定めるところにより、組合員が出資の払込を終るまでは、組合員に配当する剰余金をその払込に充てることができる。

第五十四条 出資組合は、組合員の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けることができない。

   第五章 設立

第五十五条 農業協同組合を設立するには、十五人以上の農民が、農業協同組合連合会を設立するには、二以上の組合が発起人となることを必要とする。

第五十六条 発起人は、予め組合の事業及び地区並びに組合員たる資格に関する目論見書を作り、一定の期間前までにこれを設立準備会の日時及び場所とともに公告して、設立準備会を開かなければならない。

  前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。

第五十七条 設立準備会においては、出席した農民又は組合の理事の中から、定款の作成に当るべき者(以下定款作成委員という。)を選任し、且つ、地区、組合員たる資格その他定款作成の基本となるべき事項を定めなければならない。

  定款作成委員は、農業協同組合にあつては十五人以上、農業協同組合連合会にあつては二人以上でなければならない。

  設立準備会の議事は、出席した農民又は組合の過半数の同意を以てこれを決する。

第五十八条 定款作成委員が定款を作成したときは、発起人は、一定の期間前までにこれを創立総会の日時及び場所とともに公告して、創立総会を開かなければならない。

  前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。

  定款作成委員が作成した定款の承認、事業計画の設定その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。

  創立総会においては、前項の定款を修正することができる。但し、地区及び組合員たる資格に関する規定については、この限りでない。

  創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上でこれを決する。

  前項の申出をした者は、書面又は代理人を以て議決権を行うことができる。

  創立総会については、第十六条第一項第三項乃至第五項及び民法第六十六条の規定を準用する。

第五十九条 発起人は、創立総会終了の後遅滞なく、定款及び事業計画を行政庁に提出して、設立の認可を申請しなければならない。

  発起人は、行政庁の要求があるときは、組合の設立に関する報告書を提出しなければならない。

第六十条 行政庁は、前条第一項の申請があつたときは、設立の手続又は定款若しくは事業計画の内容が法令又は法令に基いてする行政庁の処分に違反する場合を除いては、その申請に係る同項の認可をしなければならない。

第六十一条 第五十九条第一項の申請があつたときは、行政庁は、申請書を受理した日から二箇月以内に発起人に対し、認可又は不認可の通知を発しなければならない。

  行政庁が前項の期間内に同項の通知を発しなかつたときは、その期間満了の日に第五十九条第一項の認可があつたものとみなす。この場合には、発起人は、行政庁に対し、認可に関する証明をすべきことを請求することができる。

  行政庁は、不認可の通知をするときは、その理由を通知書に記載しなければならない。

  発起人が不認可の取消を求める訴を提起した場合において、裁判所がその取消の判決をしたときは、その判決確定の日に第五十九条第一項の認可があつたものとみなす。この場合には、第二項後段の規定を準用する。

第六十二条 第五十九条第一項の認可があつたときは、発起人は、遅滞なくその事務を理事に引き渡さなければならない。

  出資組合の理事は、前項の規定による引渡を受けたときは、遅滞なく出資の第一回の払込をさせなければならない。

  現物出資者は、第一回の払込の期日に、出資の目的たる財産の全部を給付しなければならない。但し、登記、登録その他権利の設定又は移転を以て第三者に対抗するため必要な行為は、組合成立の後にこれをすることを妨げない。

第六十三条 組合は、主たる事務所の所在地において、設立の登記をすることに因つて成立する。

   第六章 解散及び清算

第六十四条 組合は、左の事由に因つて解散する。

 一 総会の議決

 二 組合の合併

 三 組合の破産

 四 存立時期の満了

 五 第九十五条第二項の規定による解散の命令

  解散の議決は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の場合には、第六十条及び第六十一条の規定を準用する。

  第一項の事由に因る外、農業協同組合は、組合員(准組合員を除く。)が十五人未満になつたことに因つて、農業協同組合連合会は、会員(准組合員を除く。)が一人になつたことに因つて解散する。

  組合は、前項の規定により解散したときは、遅滞なくその旨を行政庁に届け出なければならない。

第六十五条 組合が合併しようとするときは、総会において合併を議決しなければならない。

  合併は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の場合には、第六十条及び第六十一条の規定を準用する。

  出資組合の合併には、第四十九条及び第五十条の規定を準用する。

第六十六条 合併に因つて組合を設立するには、各組合の総会において組合員(准組合員及び法人たる組合員を除く。)又は会員たる組合の役員の中から適任した設立委員が共同して、定款を作成し、役員を選任し、その他設立に必要な行為をしなければならない。

  前項の規定による役員の選任は、合併しようとする組合の組合員(法人たる組合員を除き、組合員の組合員又はその組合員で法人でないものを含む。)の中から、これをしなければならない。但し、理事の選任は、准組合員の中から、これをすることができない。

  第一項の規定による設立委員の選任には、第四十六条の規定を準用する。

第六十七条 組合の合併は、合併後存続する組合又は合併に因つて設立する組合が、その主たる事務所の所在地において、第七十九条に規定する登記をすることに因つてその効力を生ずる。

第六十八条 合併後存続する組合又は合併に因つて設立した組合は、合併に因つて消滅した組合の権利義務(当該組合がその行う事業に関し、行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。

第六十九条 組合が解散したときは、合併及び破産に因る解散の場合を除いては、理事が、その清算人となる。但し、総会において他人を選任したときは、この限りでない。

第七十条 清算人は、就職の後遅滞なく、組合の財産の状況を調査し、非出資組合にあつては財産目録、出資組合にあつては財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。

第七十一条 清算人は、組合の債務を弁済した後でなければ、組合の財産を分配することができない。

第七十二条 清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。

第七十三条 組合の解散及び清算には、民法第七十三条、第七十五条、第七十六条及び第七十八条乃至第八十三条並びに非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百三十五条ノ二十五第二項第三項、第百三十六条第一項、第百三十七条及び第百三十八条の規定を準用する。この場合において、民法第七十五条中「前条」とあるのは、「農業協同組合法第六十九条」と読み替えるものとする。

   第七章 登記

第七十四条 設立の登記は、非出資組合にあつては設立の認可があつた日(第六十一条第二項及び第四項の場合にあつては、設立の認可に関する証明のあつた日)から、出資組合にあつては出資の第一回の払込があつた日から二週間以内に、主たる事務所の所在地においてこれをしなければならない。

  設立の登記には、左の事項を掲げなければならない。

 一 第二十八条第一項第一号乃至第三号の事項

 二 事務所

 三 出資組合にあつては、出資一口の金額及びその払込の方法並びに出資の総口数及び払い込んだ出資の総額

 四 存立時期を定めたときは、その時期

 五 役員の氏名及び住所

 六 公告の方法

  組合は、設立の登記をした後二週間以内に、従たる事務所の所在地において前項の事項を登記しなければならない。

第七十五条 組合の成立後従たる事務所を設けたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に従たる事務所を設けたことを登記し、その従たる事務所の所在地においては三週間以内に前条第二項の事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設けたことを登記しなければならない。

 主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内においてあらたに従たる事務所を設けたときは、その従たる事務所を設けたことを登記することを以て足りる。

第七十六条 組合が主たる事務所を移転したときは、旧所在地においては二週間以内に移転の登記をし、新所在地においては三週間以内に第七十四条第二項の事項を登記し、従たる事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に同項の事項を登記しなければならない。

 同一の登記所の管轄区域内において主たる事務所又は従たる事務所を移転したときは、その移転の登記をすることを以て足りる。

第七十七条 第七十四条第二項の事項中に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に変更の登記をしなければならない。

第七十四条第二項第三号の事項中出資の総口数及び払い込んだ出資の総額の変更の登記は、前項の規定にかかわらず、毎事業年度末日現在により事業年度終了後主たる事務所の所在地においては四週間以内に、従たる事務所の所在地においては五週間以内にこれをすることができる。

第七十八条 組合が解散したときは、合併及び破産の場合を除いては、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に解散の登記をしなければならない。

第七十九条 組合が合併をしたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、合併後存続する組合については変更の登記、合併に因つて消滅する組合については解散の登記、合併に因つて設立した組合については第七十四条第二項に規定する登記をしなければならない。

第八十条 清算人は、その就職の日から主たる事務所の所在地においては二週間似内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、清算人の氏名及び住所を登記しなければならない。

  前項の登記には、第七十七条第一項の規定を準用する。

第八十一条 組合の清算が結了したときは、清算結了の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算結了の登記をしなければならない。

第八十二条 組合の登記については、その事務所の所在地を管轄する司法事務局又はその出張所を管轄登記所とする。

  各登記所に、農業協同組合登記簿及び農業協同組合連合会登記簿を備える。

第八十三条 組合の設立の登記は、役員の全員の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、定款並びに出資の総口数及び出資第一回の払込のあつたことを証する書面及び役員たることを証する書面を添附しなければならない。

  合併に因る出資組合の設立の登記の申請書には、前項に掲げる書面の外、第六十五条第四項において準用する第四十九条の規定による公告及び催告をしたこと、若し異議を述べた債権者があるときは、これに対し、弁済し、若しくは担保を供し、又は信託をしたことを証する書面を添附しなければならない。

第八十四条 第七十四条第三項の規定による登記は、理事の申請に因つてこれをする。

第八十五条 組合の事務所の新設又は事務所の移転その他第七十四条第二項の事項の変更の登記は、理事又は清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、事務所の新設又は登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。

  出資一口の金額の減少又は出資組合の合併に因る変更の登記の申請書には、前項に掲げる書面の外、第四十九条(第六十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定による公告及び催告をしたこと、若し異議を述べた債権者があるときは、これに対し、弁済し、若しくは担保を供し、又は信託をしたことを証する書面を添附しなければならない。

第八十六条 第七十八条の規定による組合の解散の登記は、第三項に規定する場合を除いて、清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、解散の事由を証する書面を添附しなければならない。

  行政庁が組合の解散を命じた場合における解散の登記は、当該行政庁の嘱託に因つてこれをする。

第八十七条 第七十九条の規定による解散の登記は、合併に因つて消滅した組合の理事の申請に因つてこれをする。

  前項の場合には、第八十三条第三項及び前条第二項の規定を準用する。

第八十八条 第八十条第一項の規定による登記の申請書には、理事が清算人でない場合には、申請人の資格を証する書面を添附しなければならない。

  第八十条第二項の規定による登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。

第八十九条 組合の清算結了の登記は、清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、清算人が第七十二条の規定により決算報告書の承認を得たことを証する書面を添附しなければならない。

第九十条 登記すべき事項で行政庁の認可を要するものは、その認可書の到達した時から登記の期間を起算する。但し、第六十一条第二項及び第四項の場合には、認可に関する証明書の到達した時から登記の期間を起算する。

第九十一条 登記した事項は、司法事務局において遅滞なくこれを公告しなければならない。

第九十二条 組合の登記には、非訟事件手続法第百四十一条乃至第百五十一条ノ六及び第百五十四条乃至第百五十七条の規定を準用する。

   第八章 監督

第九十三条 行政庁は、組合に法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約を遵守させるために必要があると認めるときは、組合からその業務又は財産の状況に関し報告を徴することができる。

第九十四条 組合員が総組合員の十分の一以上の同意を得て、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約に違反する疑があることを理由として検査を請求したときは、行政庁は、当該組合の業務又は会計の状況を検査しなければならない。

  行政庁は、組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約に違反する疑があると認めるときは、何時でも、当該組合の業務又は会計の状況を検査することができる。

第九十五条 行政庁は、前条の規定による検査を行つた場合において、当該組合の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約に違反すると認めるときは、当該組合に対し、必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。

  組合が第十条に規定する以外の事業を行つたときは、行政庁は、当該組合の解散を命ずることができる。

第九十六条 組合員が総組合員の十分の一以上の同意を得て、総会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款若しくは規約に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、行政庁は、その違反の事実があると認めるときは、当該決議又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。

第九十七条 行政庁は、第十九条第一項の規定による契約の内容が公益に違反すると認めるときは、当該契約を取り消すことができる。

第九十八条 この法律中行政庁とあるのは、第六十八条の場合を除いては、都道府県若しくは特別市の区域又はその区域を超える区域を地区とする組合については主務大臣、その他の組合については都道府県知事又は特別市の市長とする。

  前項の規定による主務大臣の権限の一部は、これを都道府県知事又は特別市の市長に委任することができる。

   第九章 罰則

第九十九条 組合の役員が如何なる名義を以てするを問わず、組合の事業の範囲外において貸付をし、若しくは手形の割引をし、又は投機取引のために組合の財産を処分したときは、これを三年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

  前項の罪を犯した者には、情状に因り、懲役及び罰金を併科することができる。

  第一項の規定は、刑法に正条がある場合には、これを適用しない。

第百条 第九十三条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第九十四条の規定による検査を拒み、妨げ又は忌避した者は、これを千円以下の罰金に処する。

  組合の代表者又は代理人、使用人その他の従業者がその組合の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その組合に対して同項の罰金刑を科する。

第百一条 左の場合には、組合の役員又は清算人は、これを一万円以下の過料に処する。

 一 第十条に規定する以外の事業を営んだとき。

 二 第十九条第二項の規定に違反したとき。

 三 第二十条の規定に違反したとき。

 四 第三十二条の規定に違反したとき。

 五 第三十四条、第三十五条又は第三十六条の規定に違反したとき。

 六 第三十八条第一項若しくは第三十九条第一項の規定に違反して書類を備え置かず、その書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をし、又は正当な理由がないのに第三十八条第三項若しくは第三十九条第二項の規定による閲覧を拒んだとき。

 七 第四十条第四項又は第四十三条第四項の規定に違反したとき。

 八 第四十九条若しくは第五十条第二項又は第六十五条第四項の規定に違反して出資一口の金額を減少し、又は出資組合の合併をしたとき。

 九 第五十一条又は第五十二条の規定に違反したとき。

 十 第五十四条の規定に違反して組合員の持分を取得し、又は質権の目的としてこれを受けたとき。

 十一 第六十四条第五項の規定に違反したとき。

 十二 第七十条又は第七十二条に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。

 十三 第七十一条の規定に違反して組合の財産を分配したとき。

 十四 民法第七十九条の期間内に債権者に弁済をしたとき。

 十五 民法第七十九条又は同法第八十一条に規定する公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。

 十六 民法第八十一条第一項の規定に違反して破産宣告の請求を怠つたとき。

 十七 この法律の規定による登記を怠り、又は不実の登記をしたとき。

第百二条 第二条第二項の規定に違反した者は、これを千円以下の過料に処する。

   附 則

 この法律施行の期日は、公布の日から一箇月以内に政令でこれを定める。

(大蔵・司法・農林・内閣総理大臣署名)

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