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法律第百四十五号(昭二二・一二・一)

◎失業手当法

 (法律の目的)

第一条 この法律は、失業保険の被保険者が失業した場合に、失業手当金又は失業保険金を支給することを目的とする。

前項の失業保険金は、失業保険法の規定にかかわらず、この法律の定めるところによつて、これを支給するものとする。

 (失業手当金又は失業保険金の支給)

第二条 政府は、失業保険の被保険者が左に掲げる事項に該当するときは、昭和二十三年四月三十日までは、失業手当金を、同年五月一日以後は、失業保険金を支給する。

一 離職の日まで六箇月以上、失業保険法に規定する事業所(昭和二十二年十一月一日前の期間については、継続して同一の事業所)に雇用されたこと。

二 前号に該当する者が、昭和二十二年十一月一日から、昭和二十三年四月三十日までの間において離職し、失業保険法第十五条第一項の規定に該当しないこと。

前項の規定によつて失業手当金(同項に規定する失業保険金を含む。第十六条の場合を除いて、以下同じ。)の支給を受けることができる者が、第六条に規定する期間内に、再び就職した後離職した場合においては、同項に掲げる事項に該当しないときでも、失業手当金を支給する。

 (失業の意義)

第三条 この法律で失業とは、労働者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。

この法律で離職とは、労働者について、事業主との雇用関係が終了することをいう。

 (受給要件)

第四条 第二条の規定に該当する者(以下受給資格者という。)が、失業手当金の支給を受けようとするときは、左の手続をしなければならない。

一 第二条第一項の規定に該当することを証明する文書その他必要な文書を公共職業安定所に提出すること。

二 離職後、政令の定めるところによつて、公共職業安定所に出頭し求職の申込をした上、失業の認定を受けること。

 (支給金額)

第五条 失業手当金は、失業保険の被保険者の離職した月前において、被保険者期間として計算された最後の月及びその前月(月の末日において離職し、その月が被保険者期間として計算される場合は、その月及びその月前において被保険者期間として計算された最後の月)に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除した額によつて算定する。但し、その二箇月間における後の月に支払われた賃金が、法令又は労働協約若しくは、就業規則に基く昇給その他これに準ずる賃金の増加によつて、その前の月に支払われた賃金より高いときは、その後の月に支払われた賃金の総額をその期間の総日数で除して得た額によつて算定する。

前項の額が左の各号の一によつて計算した額に満たないときは、失業手当金は、前項の規定にかかわらず、左の各号の一によつて計算した額によつて算定する。

一 賃金が労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、前項の期間に支払われた賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の百分の七十

二 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額との合算額

失業手当金は、労働大臣の定める失業手当金額表における賃金等級に属する賃金に応じて定められた定額とする。但し、失業手当金算定の基礎となる賃金の最高額は、一日につき、百七十円を超えてはならない。

失業手当金の額は、第一項及び第二項の規定によつて算定した賃金の額が、四十円以上八十円未満の賃金等級に属する場合には、その賃金の百分の五十五に相当する額、その賃金の額が八十円以上百七十円以下の賃金等級に属する場合には、百七十円について百分の三十五を最低の率として逓減した率によつて算定した額、又はその賃金の額が十円(十円未満のものも含む。)以上四十円未満の賃金等級に属する場合には、十円について百分の七十五を最高の率として逓増した率によつて算定した額を基準とした金額とする。

受給資格者は、第四条の規定によつて公共職業安定所において認定を受けた失業の期間中、自己の労働によつて収入を得るに至つた場合において、その収入の額が失業手当金算定の基礎となつた賃金の百分の八十に相当する額を基準とする金額に達しないときは、失業手当金の支給を受けることができる。この場合における失業手当金算定の方法は、政令でこれを定める。

受給資格者が、健康保険法第五十五条の規定によつて傷病手当金の支給を受ける場合においては、失業手当金は、その者に支給すべき失業手当金の額からその支給を受けるべき傷病手当金の額を控除した残りの額を支給する。

 (受給期間)

第六条 失業手当金の支給を受ける期間は、受給資格者の最初の離職の日の翌日から起算して、一年間とする。

 (待期)

第七条 失業手当金は、受給資格者が公共職業安定所に離職後最初に求職の申込をした日以後において、失業の日数が通算して三十日に満たない間はこれを支給しない。但し、失業手当金の支給を受けることができる者が前条に規定する一年の期間内に再び就職した後離職した場合は、この限りでない。

 (支給日数)

第八条 失業手当金は、第六条に規定する一年の期間内において、通算して百二十日分を超えては、これを支給しない。

 (失業保険との調整)

第九条 受給資格者が、失業保険法第十五条第一項の規定に該当するに至つたときは、失業手当金を支給しない。

 (支給の制限)

第十条 受給資格者が、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又はその指示した職業の補導を受けることを拒んだときは、失業手当金を支給しない。但し、左の各号の一に該当するときは、この限りでない。

一 紹介された職業又は補導を受けることを指示された職業が、受給資格者の能力からみて不適当と認められるとき。

二 就職するために、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であると認められるとき。

三 就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び技能について行われる一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。

四 職業安定法第二十条の規定に違反して、労働争議の発生している事業所に受給資格者を紹介したとき。

五 その他正当な理由のあるとき。

公共職業安定所は、受給資格者について、前項各号の一に該当するかしないかを認定しようとするときは、労働大臣が失業保険委員会の意見を聞いて定めた基準によらなければならない。

第十一条 第二条第一項に掲げる事項に該当する者が、自己の責に帰すべき重大な事由によつて解雇され、又はやむを得ない事由がないと認められるにもかかわらず自己の都合によつて退職した者であるときは、失業手当金を支給しない。

公共職業安定所は、受給資格者の離職が前項に規定する事由によるかどうかを認定しようとするときは、労働大臣が失業保険委員会の意見を聞いて定めた基準によらなければならない。

第十二条 受給資格者が、詐欺その他不正の行為によつて失業手当金の支給を受け、又は受けようとしたときは、失業手当金を支給しない。

前項の場合において、政府は、失業手当金の支給を受けた者又はその相続人に対し、当該支給金額に相当する金額の返還を命ずることができる。

 (支給方法及び支給期日)

第十三条 失業手当金は公共職業安定所において、一週間に一回、その日以前の七日分(失業の認定を受けなかつた日分を除く。)を支給する。但し、労働大臣は、必要であると認めるときは、失業保険委員会の意見を聞いて、失業手当金の支給について別段の基準を定めることができる。

公共職業安定所は、各受給資格者について、失業手当金を支給すべき日を定め、これをその者に知らせなければならない。

 (受給権の譲渡及び差押の禁止)

第十四条 失業手当金の支給を受ける権利は、これを譲り渡し、又は差し押えることはできない。

 (租税その他の公課の非課税)

第十五条 失業手当金を標準として、租税その他の公課は、これを課さない。

 (費用の負担)

第十六条 失業手当金の支給に要する出費は、国庫において、全額これを負担し、第二条第一項の失業保険金の支給に要する費用については、その三分の一は、国庫において、これを負担し、その三分の二は、失業保険法の規定による保険料を以て、これに充てるものとする。

 (不服の申立)

第十七条 失業手当金の支給に関する処分に不服のある者は、失業手当審査官の審査を請求し、その決定に不服のある者は、失業手当審査会に審査を請求し、その決定に不服のある者は、裁判所に訴訟を提起することができる。

前項の審査の請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。

 (失業手当審査官)

第十八条 失業手当審査官は、労働大臣がこれを任命する。失業手当審査官の職務は、この法律の定めるところによる。

失業手当審査官は、必要があると認める場合においては、職権で審査をすることができる。

失業手当審査官は、審査のため必要があると認める場合においては、失業手当金の支給に関する処分をした官吏に対して、意見を求め、又は受給資格者若しくはその事業主であつた者に対して、報告をさせ、若しくは出頭を命ずることができる。

 (失業手当審査会)

第十九条 失業手当審査会は、労働者を代表する者、事業主を代表する者及び公益を代表する者につき、労働大臣が各々同数を委嘱した者でこれを組織する。

 (証拠調)

第二十条 失業手当審査官又は失業手当審査会は、審査のため必要があると認める場合においては、証人又は鑑定人の尋問その他の証拠調をすることができる。

証拠調については、民事訴訟法の証拠調に関する規定並びに民事訴訟費用法第九条及び第十一条乃至第十三条の規定を準用する。但し、過料に処し、又は拘引を命ずることができない。

 (申立の期間)

第二十一条 審査の請求又は訴の提起は、処分の通知又は決定書の交付を受けた日から六十日以内に、これをしなければならない。この場合において、審査の請求については、訴願法第八条第三項の規定を、訴の提起については、民事訴訟法第百五十八条第二項及び第百五十九条の規定を準用する。

 (施行規定)

第二十二条 前五条に規定するものの外、失業手当審査官及び失業手当審査会の事務に関する事項は、政令でこれを定める。

 (時効)

第二十三条 失業手当金の支給を受ける権利は、一年を経過したときは、時効によつて消滅する。

前項の時効について、その中断、停止その他の事項に関しては、民法の時効に関する規定を準用する。

 (印紙税の非課税)

第二十四条 失業手当に関する書類には、印紙税を課さない。

 (報告、出頭等の義務)

第二十五条 行政庁は、命令の定めるところによつて、受給資格者を雇用した事業主又は受給資格者に、受給資格者の異動、賃金その他この法律の施行に関し必要な報告、若しくは文書を提出させ、又は受給資格者を出頭させることができる。

離職した失業保険の被保険者は、命令の定めるところによつて、従前の事業主に対し失業手当金の支給を受けるために必要な証明書の交付を請求することができる。その請求があつたときは、事業主は、その請求にかかる証明書を交付しなければならない。

 (質問及び検査)

第二十六条 行政庁は、必要があると認める場合においては、当該官吏に、受給資格者を雇用した事業所に立入つて受給資格者の雇用関係及び賃金について、関係者に対し質問し又は帳簿書類の検査をさせることができる。

前項の場合において、当該官吏は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。

 (罰則)

第二十七条 事業主、受給資格者その他の関係者が、故なく左の各号の一に該当するときは、これを六ケ月以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

一 第二十五条第二項の規定による証明を拒んだ場合

二 この法律の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、文書を提出せず、若しくは虚偽の記載をした文書を提出し、又は出頭しなかつた場合

三 この法律の規定による当該官吏の質問に対して、答弁をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合

第二十八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するの外、その法人又は人に対し、同条の罰金刑を科する。

附 則

この法律は、昭和二十二年十一月一日から、これを適用する。

第六条に規定する期間は、昭和二十二年十一月一日以後この法律公布の日前に離職した者については、この法律公布の日から、これを起算するものとする。

(大蔵・労働・内閣総理大臣署名)

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