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法律第百八十五号(昭二二・一二・一五)

  ◎農業災害補償法

   第一章 総則

第一条 農業災害補償は、農業者が不慮の事故に因つて受けることのある損失を補填して農業経営の安定を図り、農業生産力の発展に資することを目的とする。

第二条 農業災害補償は、農業共済組合の行う共済事業、農業共済保険組合の行う保険事業及び政府の行う再保険事業とする。

第三条 農業共済組合及び農業共済保険組合(以下農業共済団体という。)は、法人とする。

第四条 農業共済組合又は農業共済保険組合の名称中には、農業共済組合又は農業共済保険組合なる文字を用いなければならない。

  農業共済団体でない者は、その名称中に農業共済組合又は農業共済保険組合なる文字を用いてはならない。

第五条 農業共済組合の区域は、市町村(地方自治法第百五十五条第二項の市にあつては、区。以下本条において同じ。)又は特別区の区域による。但し、特別の事由があるときは、市町村又は特別区の区域によらないことができる。

  農業共済保険組合の区域は、都道府県の区域による。

第六条 農業共済団体の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとする。

第七条 この法律の規定により登記すベき事項は、登記の後でなければこれを以て第三者に対抗することができない。

第八条 農業共済団体の事業年度は、四月一日から翌年三月三十一日までとする。

第九条 農業共済団体には、所得税及び法人税を課さない。

  地方公共団体は、農業共済団体に対して営業税を課することができない。

第十条 農業共済団体がこの法律に基いてする登記については、登録税を課さない。

第十一条 農業災害補償に関する書類には、印紙税を課さない。

第十二条 食糧管理特別会計は、政令の定めるところにより、農業共済組合の組合員の支払うべき農作物共済に係る共済掛金の一部を負担する。

  前項の負担金は、農業共済再保険特別会計の歳入にこれを繰り入れる。

  政府は、第一項の規定による負担金を食糧を消費する者が負担するように、食糧の売渡価格を定めなければならない。

第十三条 前条第一項の規定による負担金は、農業共済組合の組合員が当該組合に支払うべき共済掛金の一部に充てるため、当該組合にこれを交付する。

  前項の規定により農業共済組合に交付すべき交付金は、組合に交付するのに代えて、当該組合がその属する農業共済保険組合に支払うべき保険料の一部に充てるため、当該農業共済保険組合にこれを交付し、又は当該農業共済保険組合が支払うべき再保険料の一部に充てて、農業共済再保険特別会計の再保険料収入にこれを計上することができる。

第十四条 国庫は、政令の定めるところにより、毎会計年度予算の範囲内において、農業共済団体の事務費を負担する。

   第二章 農業共済団体の組織

    第一節 組合員

第十五条 農業共済組合の組合員たる資格を有する者は、左の各号の一に該当する者とする。但し、命令の定めるところにより、定款で特別の定をしたときは、その定による。

 一 当該農業共済組合の区域内に住所を有し、水稲、麦その他第八十四条第一項第一号に規定する食糧農作物の耕作又は養蚕の業務を営む者

 二 当該農業共済組合の区域内に住所を有し、牛、馬、山羊、めん羊又は種豚を所有し、又は管理する者

  農業共済保険組合の組合員たる資格を有する者は、当該農業共済保険組合の区域内に住所を有する農業共済組合とする。

第十六条 農業共済組合が成立したときは、前条第一項第一号に該当する者は、すべてその農業共済組合の組合員とする。農業共済組合が成立した後において同号に該当するに至つた者についても、また同様とする。

  農業共済保険組合が成立したときは、当該農業共済保険組合の区域の一部を区域とする農業共済組合は、当該農業共済保険組合の組合員とする。農業共済保険組合が成立した後において当該農業共済保険組合の区域の一部を区域とする農業共済組合が成立したときは、当該農業共済組合についても、また同様とする。

  農業共済組合は、前条第一項第二号のみに該当する者から加入の申込を受けたときは、正当な理由がなければ、その加入を拒んではならない。

第十七条 農業共済団体の組合員は、各々一箇の議決権及び役員の選挙権を有する。

第十八条 農業共済団体の組合員は、定款の定めるところにより、第三十八条第三項の規定により予め通知のあつた事項につき、書面又は代理人を以て議決権を行うことができる。

  前項の規定により議決権を行う者は、これを出席者とみなす。

  代理人は、二人以上の組合員を代理することができない。

  代理人は、代理権を証する書面を農業共済団体に提出しなければならない。

第十九条 農業共済団体の組合員は、左の事由に因つて脱退する。

 一 組合員たる資格の喪失

 二 死亡又は解散

  農業共済組合の組合員で第十五条第一項第二号のみに該当するものは、前項の事由に因る外、共済関係の全部の消滅に因つて脱退する。但し、定款で特別の定をしたときは、この限りでない。

    第二節 設立

第二十条 農業共済組合を設立するには、十五人以上の第十五条第一項第一号又は第二項に掲げる者が、農業共済保険組合を設立するには、二以上の農業共済組合が発起人とならなければならない。

第二十一条 発起人は、予め組合の区域及び組合員たる資格に関する目論見書を作り、一定の期間前までにこれを設立準備会の日時及び場所とともに公告して、設立準備会を開かなければならない。

  前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。

第二十二条 設立準備会においては、出席した組合員たる資格を有する者(その者が農業共済組合であるときは、その組合員)の中から定款の作成に当るべき者(以下定款作成委員という。)を選任し、且つ、区域、組合員たる資格その他定款作成の基本となるべき事項を定めなければならない。

  前項の定款作成委員は、十五人を下つてはならない。

  設立準備会の議事は、出席した前条第一項の目論見書に定める組合員たる資格を有する者の過半数の同意を以てこれを決する。

第二十三条 定款作成委員が定款を作成したときは、発起人は、一定の期間前までにこれを創立総会の日時及び場所とともに公告して、創立総会を開かなければならない。但し、農業共済組合を設立する場合にあつては、組合の設立につき第十五条第一項第一号の規定による組合員たる資格を有する者の三分の二以上の同意がなければ、創立総会を開くことができない。

  前項の一定の期間は、二週間を下つてはならない。

  定款作成委員が作成した定款の承認、事業計画の設定その他設立に必要な事項の決定は、創立総会の議決によらなければならない。

  創立総会においては、前項の定款を修正することができる。但し、区域及び組合員たる資格に関する規定については、この限りでない。

  創立総会の議事は、組合員たる資格を有する者でその会日までに発起人に対し設立の同意を申し出たものの半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上でこれを決する。

  前項の者は、書面又は代理人を以て議決権を行うことができる。

  創立総会については、第十七条、第十八条第二項乃至第四項及び民法第六十六条の規定を準用する。

第二十四条 発起人は、創立総会終了の後遅滞なく、定款及び事業計画書を行政庁に提出して、設立の認可を申請しなければならない。

  発起人は、行政庁の要求があるときは、農業共済団体の設立に関する報告書を提出しなければならない。

第二十五条 行政庁は、前条第一項の申請があつたときは、設立の手続又は定款若しくは事業計画の内容が法令又は法令に基いてする行政庁の処分に違反する場合を除いては、その申請に係る同項の認可をしなければならない。

第二十六条 第二十四条第一項の申請があつたときは、行政庁は、申請書を受理した日から一箇月以内に、発起人に対し、認可又は不認可の通知を発しなければならない。

  行政庁が前項の期間内に同項の通知を発しなかつたときは、その期間満了の日に第二十四条第一項の認可があつたものとみなす。この場合には、発起人は、行政庁に対し、認可に関する証明をすベきことを請求することができる。

  行政庁は、不認可の通知をするときは、その理由を通知書に記載しなければならない。

  発起人が不認可の取消を求める訴を提起した場合において、裁判所がその取消を判決をしたときは、その判決確定の日に第二十四条第一項の認可があつたものとみなす。この場合には、第二項後段の規定を準用する。

第二十七条 第二十四条第一項の設立の認可があつたときは、発起人は、遅滞なくその事務を理事に引き渡さなければならない。

第二十八条 農業共済団体は、主たる事務所の所在地において、設立の登記をすることに因つて成立する。

第二十九条 都道府県知事は、都道府県農業共済保険審査会の申出があつた場合において、必要があると認めるときは、命令の定めるところにより、区域及び組合員たる資格を定め、組合員たる資格を有する者に対し、農業共済組合を設立すべきことを命ずることができる。

  前項の規定により設立を命ぜられた者は、命令の定めるところにより、創立総会を開き、定款その他設立に必要な事項を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。

第三十条 農業共済団体の定款には、左の事項を記載しなければならない。

 一 目的

 二 名称

 三 区域

 四 事務所の所在地

 五 組合員たる資格並びに組合員の加入及び脱退に関する規定

 六 共済掛金又は保険料及び事務費に関する規定

 七 共済責任又は保険責任に関する規定

 八 役員の定数及び選挙に関する規定

 九 準備金の額及びその積立の方法

 十 剰余金の処分及び不足金の処理に関する規定

 十一 公告の方法

  行政庁は、模範定款例を定めることができる。

    第三節 管理

第三十一条 農業共済団体に、役員として理事及び監事を置く。

  理事の定数は、五人以上とし、監事の定数は、二人以上とする。

  役員は、定款の定めるところにより、総会においてこれを選挙する。但し、設立当時の役員は、創立総会においてこれを選挙する。

  役員の選挙は、無記名投票によつてこれを行う。

  投票は、一人につき一票とする。

  農業共済団体の理事の定数の少くとも四分の三は、組合員(組合員が農業共済組合であるときは、その組合員)でなければならない。但し、設立当時の理事は、設立の同意者(同意者が農業共済組合であるときは、その組合員)でなければならない。

第三十二条 役員の任期は、一年とする。但し、定款で二年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

  設立当時の役員の任期は、前項の規定にかかわらず、創立総会において定める期間とする。但し、その期間は、一年を超えてはならない。

第三十三条 理事は、監事又は農業共済団体の使用人と、監事は、理事又は農業共済団体の使用人と相兼ねてはならない。

第三十四条 農業共済団体が理事と契約をするときは、監事が、農業共済団体を代表する。農業共済団体と理事との訴訟についても、また同様とする。

第三十五条 理事は、毎事業年度一回通常総会を招集しなければならない。

第三十六条 組合員が総組合員の五分の一以上の同意を以て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して総会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあつた日から二十日以内に総会を招集しなければならない。

第三十七条 理事の職務を行う者がないとき、又は前条の請求があつた場合において理事が正当な理由がないのに総会招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。

第三十八条 農業共済団体の組合員に対してする通知又は催告は、組合員名簿に記載したその者の住所に、その者が別に催告を受ける場所を農業共済団体に通知したときは、その場所に宛てることを以て足りる。

  前項の通知又は催告は、通常到達すべきであつた時に、到達したものとみなす。

  総会招集の通知は、その会日から十日前までに、その会議の目的たる事項を示してこれをしなければならない。

第三十九条 理事は、定款及び総会の議事録を各事務所に備え置き、且つ、命令の定めるところにより、組合員名簿を主たる事務所に備えて置かなければならない。

  農業共済団体の組合員及び債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。

第四十条 理事は、通常総会の会日から一週間前までに、事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案を監事に提出し、且つ、これらを主たる事務所に備えて置かなければならない。

  農業共済団体の組合員及び債権者は、前項に掲げる書類の閲覧を求めることができる。

  第一項に掲げる書類を通常総会に提出するときは、監事の意見書を添附しなければならない。

第四十一条 役員は、総組合員の五分の一以上の請求に因り、任期中でも総会においてこれを改選することができる。

  前項の規定による請求は、理事の全員又は監事の全員について、同時にこれをしなければならない。但し、法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款の違反を理由とする改選の請求は、この限りでない。

  第一項の規定による請求は、改選の理由を記載した書面を農業共済団体に提出してこれをしなければならない。

  前項の規定による書面の提出があつたときは、農業共済団体は、総会の会日から七日前までに、役員に対し、その書面を送付し、且つ、総会において弁明する機会を与えなければならない。

第四十二条 役員には、民法第四十四条第一項、第五十二条第二項、第五十三条乃至第五十六条、第五十九条及び第六十一条第一項の規定を準用する。この場合において、民法第五十六条中「裁判所」とあるのは、「行政庁」と読み替えるものとする。

第四十三条 左の事項は、総会の議決を経なければならない。

 一 定款の変更

 二 事務費を徴収する場合には、その額及び徴収方法

 三 事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書及び剰余金処分案又は不足金処理案

  定款の変更に係る議決は、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の三分の二以上の多数によらなければならない。

  定款の変更は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の認可については、第二十五条及び第二十六条の規定を準用する。

第四十四条 総会の議事は、この法律又は定款に特別の定のある場合を除いては、出席者の議決権の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

  議長は、総会においてこれを選任する。

  議長は、組合員として総会の議決に加わる権利を有しない。

第四十五条 総会には、民法第六十四条及び第六十六条の規定を準用する。この場合において、同法第六十四条中「第六十二条」とあるのは、「農業災害補償法第三十八条第三項」と読み替えるものとする。

    第四節 解散及び清算

第四十六条 農業共済団体は、左の事由に因つて解散する。

 一 総会の議決

 二 農業共済組合の合併

 三 破産

 四 第八十条第二項の規定による解散の命令

  解散の議決には、第四十三条第二項の規定を準用する。

  解散の議決は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の場合には、第二十五条及び第二十六条の規定を準用する。

第四十七条 農業共済団体が解散したときは、農業共済組合の合併の場合を除いては、共済関係又は保険関係は、終了する。

  前項の場合には、農業共済団体は、まだ経過しない期間に対する共済掛金又は保険料を払い戻さなければならない。

第四十八条 農業共済組合が合併しようとするときは、総会において合併を議決しなければならない。

  前項の場合には、第四十三条第二項の規定を準用する。

  合併は、行政庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

  前項の場合には、第二十五条及び第二十六条の規定を準用する。

第四十九条 農業共済組合が合併の議決をしたときは、その議決の日から二週間以内に財産目録及び貸借対照表を作らなければならない。

  農業共済組合は、前項の期間内に、債権者に対して、異議があれば一定の期間内にこれを述べるべき旨を公告し、且つ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。

  前項の一定の期間は、一箇月を下つてはならない。

第五十条 債権者が前条第二項の一定の期間内に異議を述べなかつたときは、合併を承認したものとみなす。

  債権者が異議を述べたときは、農業共済組合は、弁済し、若しくは相当の担保を供し、又は債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社若しくは信託業務を営む銀行に相当の財産を信託しなければならない。

第五十一条 合併に因つて農業共済組合を設立するには、各組合の総会において組合員の中から選任した設立委員が共同して、定款を作成し、役員を選任し、その他設立に必要な行為をしなければならない。

  前項の規定による役員の選任は、合併しようとする組合の組合員の中から、これをしなければならない。

  第一項の規定による設立委員の選任には、第四十三条第二項の規定を準用する。

第五十二条 農業共済組合の合併は、合併後存続する組合又は合併に因つて設立する組合が、その主たる事務所の所在地において、第六十四条に規定する登記をすることに因つてその効力を生ずる。

第五十三条 合併後存続する組合又は合併に因つて設立した組合は、合併に因つて消滅した組合の権利義務(当該組合がその行う事業に関し、行政庁の許可、認可その他の処分に基いて有する権利義務を含む。)を承継する。

第五十四条 農業共済団体が解散したときは、合併及び破産に因る解散の場合を除いては、理事が、その清算人となる。但し、総会において他人を選任したときは、この限りでない。

第五十五条 清算人は、就職の後遅滞なく、農業共済団体の財産の状況を調査し、財産目録及び貸借対照表を作り、財産処分の方法を定め、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。

第五十六条 清算人は、農業共済団体の債務を弁済した後でなければ、農業共済団体の財産を分配することができない。

第五十七条  清算事務が終つたときは、清算人は、遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。

第五十八条 農業共済団体の解散及び清算には、民法第七十三条、第七十五条、第七十六条及び第七十八条乃至第八十三条並びに非訟事件手続法第三十五条第二項、第三十六条、第三十七条ノ二、第百三十五条ノ二十五第二項第三項、第百三十六条第一項、第百三十七条及び第百三十八条の規定を準用する。この場合において、民法第七十五条中「前条」とあるのは、「農業災害補償法第五十四条」と読み替えるものとする。

    第五節 登記

第五十九条 設立の登記は、設立の認可があつた日(第二十六条第二項及び第四項の場合にあつては、設立の認可に関する証明のあつた日)から二週間以内に、主たる事務所の所在地においてこれをしなければならない。

  設立の登記には、左の事項を掲げなければならない。

 一 第三十条第一項第一号乃至第三号及び第十一号に掲げる事項

 二 事務所

 三 役員の氏名及び住所

  農業共済団体は、設立の登記をした後二週間以内に、従たる事務所の所在地において前項の事項を登記しなければならない。

第六十条 農業共済団体の成立後従たる事務所を設けたときは、主たる事務所の所在地において二週間以内に従たる事務所を設けたことを登記し、その従たる事務所の所在地においては三週間以内に前条第二項の事項を登記し、他の従たる事務所の所在地においては同期間内にその従たる事務所を設けたことを登記しなければならない。

  主たる事務所又は従たる事務所の所在地を管轄する登記所の管轄区域内においてあらたに従たる事務所を設けたときは、その従たる事務所を設けたことを登記することを以て足りる。

第六十一条 農業共済団体が主たる事務所を移転したときは、旧所在地においては二週間以内に移転の登記をし、新所在地においては三週間以内に第五十九条第二項の事項を登記し、従たる事務所を移転したときは、旧所在地においては三週間以内に移転の登記をし、新所在地においては四週間以内に同項の事項を登記しなければならない。

  同一の登記所の管轄区域内において主たる事務所又は従たる事務所を移転したときは、その移転の登記をすることを以て足りる。

第六十二条 第五十九条第二項の事項中に変更を生じたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に変更の登記をしなければならない。

第六十三条 農業共済団体が解散したときは、合併及び破産の場合を除いては、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に解散の登記をしなければならない。

第六十四条 農業共済組合が合併をしたときは、主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に、合併後存続する組合については変更の登記、合併に因つて消滅する組合については解散の登記、合併に因つて設立した組合については第五十九条第二項に規定する登記をしなければならない。

第六十五条 清算人は、その就職の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算人の氏名及び住所を登記しなければならない。

  前項の登記には、第六十二条の規定を準用する。

第六十六条 農業共済団体の清算が結了したときは、清算結了の日から主たる事務所の所在地においては二週間以内に、従たる事務所の所在地においては三週間以内に清算結了の登記をしなければならない。

第六十七条 農業共済団体の登記については、その事務所の所在地を管轄する司法事務局又はその出張所を管轄登記所とする。

  各登記所に、農業共済組合登記簿及び農業共済保険組合登記簿を備える。

第六十八条 農業共済団体の設立の登記は、役員全員の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、定款及び役員たることを証する書面を添附しなければならない。

  合併に因る農業共済組合の設立の登記の申請書には、前項に掲げる書面の外、第四十九條第二項の規定による公告及び催告をしたこと、若し異議を述べた債権者があるときは、これに対し、弁済し、若しくは担保を供し、又は信託をしたことを証する書面を添附しなければならない。

第六十九条 第五十九条第三項の規定による登記は、理事の申請に因つてこれをする。

第七十条 農業共済団体の事務所の新設又は事務所の移転その他第五十九条第二項の事項の変更の登記は、理事又は清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、事務所の新設又は登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。

  農業共済組合の合併に因る変更の登記の申請書には、第六十八条第三項の規定を準用する。

第七十一条 第六十三条の規定による農業共済団体の解散の登記は、第三項に規定する場合を除いては、清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、解散の事由を証する書面を添附しなければならない。

  行政庁が農業共済団体の解散を命じた場合における解散の登記は、当該行政庁の嘱託に因つてこれをする。

第七十二条 第六十四条の規定による解散の登記は、合併に因つて消滅した農業共済組合の理事の申請に因つてこれをする。

  前項の場合には、第六十八条第三項及び前条第二項の規定を準用する。

第七十三条 第六十五条第一項の規定による登記の申請書には、理事が清算人でない場合には、申請人の資格を証する書面を添附しなければならない。

  第六十五条第二項の規定による登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添附しなければならない。

第七十四条 農業共済団体の清算結了の登記は、清算人の申請に因つてこれをする。

  前項の登記の申請書には、清算人が第五十七条の規定により決算報告書の承認を得たことを証する書面を添附しなければならない。

第七十五条 登記すべき事項で行政庁の認可を要するものは、その認可書の到達した時から登記の期間を起算する。但し、第二十六条第二項及び第四項の場合には、認可に関する証明書の到達した時から登記の期間を起算する。

第七十六条 登記した事項は、司法事務局において遅滞なくこれを公告しなければならない。

第七十七条 農業共済団体の登記には、非訟事件手続法第百四十一条乃至第百五十一条ノ六及び第百五十四条乃至第百五十七条の規定を準用する。

    第六節 監督

第七十八条 行政庁は、農業共済団体に法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款を遵守させるために必要があると認めるときは、農業共済団体からその業務又は財産の状況に関し報告を徴することができる。

第七十九条 組合員が総組合員の十分の一以上の同意を得て、農業共済団体の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反する疑があることを理由として検査を請求したときは、行政庁は、当該団体の業務又は会計の状況を検査しなければならない。

  行政庁は、農業共済団体の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反する疑があると認めるときは、何時でも、当該団体の業務又は会計の状況を検査することができる。

第八十条 行政庁は、前条の規定による検査を行つた場合において、当該団体の業務又は会計が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反すると認めるときは、当該団体に対し、必要な措置を採るべき旨を命ずることができる。

  農業共済団体が前項の規定による命令に違反したときは、行政庁は、当該団体の解散を命ずることができる。

第八十一条 組合員が総組合員の十分の一以上の同意を得て、総会の招集手続、議決の方法又は選挙が法令、法令に基いてする行政庁の処分又は定款に違反することを理由として、その議決又は選挙若しくは当選決定の日から一箇月以内に、その議決又は選挙若しくは当選の取消を請求した場合において、行政庁は、その違反の事実があると認めるときは、当該決議又は選挙若しくは当選を取り消すことができる。

第八十二条 この章中行政庁とあるのは、第五十三条の場合を除いて、農業共済組合については都道府県知事、農業共済保険組合については主務大臣とする。

  前項の規定による主務大臣の権限の一部は、これを都道府県知事に委任することができる。

   第三章 農業共済組合の共済事業

    第一節 通則

第八十三条 農業共済組合の行う共済事業は、左の通りとする。

 一 農作物共済

 二 蚕繭共済

 三 家畜共済

  家畜共済は、死亡廃用共済、疾病傷害共済及び生産共済とする。

第八十四条 農業共済組合は、農作物共済にあつては第一号、蚕繭共済にあつては第二号、死亡廃用共済にあつては第三号、疾病傷害共済にあつては第四号、生産共済にあつては第五号に掲げる共済目的につき、当該各号に掲げる共済事故に因つて生じた損害について、組合員に対し共済金を交付するものとする。

 一 共済目的 水稲、麦その他政令で指定する食糧農作物

   共済事故 風水害、干害、冷害その他気象上の原因(地震及び噴火を含む。)に因る災害及び病害

 二 共済目的 蚕繭

   共済事故 蚕児の病害及び風水害、干害、凍害又はひよう害に因る桑葉の減収

 三 共済目的 出生後第五月の月の末日を経過した牛、山羊、めん羊及び種豚並びに明け二歳以上の馬

   共済事故 死亡(屠殺に因る死亡を除く。)及び廃用

 四 共済目的 出生後第五月の月の末日を経過した牛、山羊、めん羊及び種豚並びに明け二歳以上の馬

   共済事故 疾病及び傷害

 五 共済目的 妊娠第六月の月の初日から出生に至るまでの牛の胎児及び出生後第五月の月の末日に至るまでの牛(命令で定める場合を除いて、乳用種の雄牛を除く。)並びに妊娠第七月の月の初日から出生に至るまでの馬の胎児及び出生後その年の末日に至るまでの馬

   共済事故 死亡(屠殺に因る死亡を除き、流産を含む。)及び廃用

  前項第三号及び第五号の廃用の範囲は、命令でこれを定める。

第八十五条 農業共済組合は、命令で定める場合を除いては、第八十三条に掲げる共済事業のすべてを行わなければならない。

第八十六条 農業共済組合の組合員は、定款の定めるところにより、定額の共済掛金を組合に支払わなければならない。

第八十七条 農業共済組合は、定款の定めるところにより、第十四条の規定により国庫が負担する事務費以外の事務費を組合員に賦課することができる。

  第百三十二条において準用する前項の規定により賦課される賦課金の支払に充てる費用についても、また同項と同様とする。

第八十八条 共済掛金及び前条の規定による賦課金を徴収し、又は共済掛金の返還若しくは払戻を受ける権利及び共済金の支払を受け、又はその返還を受ける権利は、一年間これを行わないときは、時効に因つて消滅する。

  農業共済組合が定款の定めるところによりする前項の共済掛金及び賦課金の徴収の告知は、民法第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。

第八十九条 共済金の支払を受ける権利は、これを譲り渡し、又は差し押えることができない。

第九十条 農業共済組合の組合員は、組合に支払うべき共済掛金及び第八十七条の規定による賦課金について相殺を以て農業共済組合に対抗することができない。

第九十一条 農業共済組合が組合員に対して支払う共済金の額は、その組合が農業共済保険組合から支払を受けた保険金の額を下つてはならない。

第九十二条 共済金の支払に不足を生ずるときは、農業共済組合は、命令の定めるところにより、共済金額を削減することができる。

第九十三条 農作物共済又は蚕繭共済の共済目的の譲受人は、共済関係に関し譲渡人の有する権利義務を承継する。但し、当該共済目的の譲受人が譲渡人の所属する農業共済組合の組合員でないときは、この限りでない。

  家畜共済の共済目的の譲受人は、農業共済組合の承諾を受けて、共済関係に関し譲渡人の有する権利義務を承継することができる。

  農業共済組合は、正当な理由がなければ、前項の承諾を拒むことができない。

  農作物共済又は蚕繭共済の共済目的の譲受人で譲渡人の所属する農業共済組合の組合員でないものについては、前二項の規定を準用する。

  共済目的について相続その他の包括承継があつた場合には、前四項の規定を準用する。

第九十四条 農業共済組合の組合員は、共済目的について通常すべき管理その他損害防止を怠つてはならない。

  農業共済組合は、前項の管理その他損害防止について組合員を指導することができる。

第九十五条 農業共済組合は、組合員に、損害防止のため特に必要な処置をすべきことを指示することができる。この場合には、組合員の負担した費用は、組合の負担とする。

第九十六条 農業共済組合は、定款の定めるところにより、損害防止のため必要な施設をすることができる。

第九十七条 農業共済組合は、損害の防止又は認定のため必要があるときは、何時でも、共済目的のある土地又は工作物に立ち入り、必要な事項を調査することが出来る。

第九十八条 農業共済組合の組合員は、共済事故が発生したときは、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。

  農業共済組合の組合員は、共済金の支払を受けるべき損害があると認めるときは、定款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。

第九十九条 左の場合には、農業共済組合は、共済金の全部又は一部につき、支払の責を免れることができる。

 一 組合員が第九十四条第一項の規定による義務を怠つたとき。

 二 組合員が第九十五条の規定による指示に従わなかつたとき。

 三 組合員が前条の規定による通知を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて不実の通知をしたとき。

 四 組合員が第百五条第一項の規定による共済細目書の提出を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて共済細目書に不実の記載をしたとき。

 五 組合員が正当な理由がないのに第百五条第一項の規定による払込を遅滞したとき。

 六 組合員が第百五条第三項の規定による通知を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて不実の通知をしたとき。

第百条 農業共済組合は、毎事業年度の終において存する共済責任につき、命令の定めるところにより、責任準備金を積み立てなければならない。

第百一条 農業共済組合は、不足金の填補に備えるため、命令の定めるところにより、毎事業年度の剰余金の中から準備金を積み立てなければならない。

第百二条 農業共済組合の組合員が、自己の責に帰すべき事由がなくて、命令の定めるところにより、一定年間組合から共済金の支払を受けないとき、又は支払を受けた共済金が一定の額に満たないときは、組合は、組合員に対して共済掛金の一部に相当する金額を払い戻すことができる。

第百三条 農業共済組合の共済事業には、商法第六百四十二条、第六百四十三条及び第六百四十六条の規定を準用する。

    第二節 農作物共済及び蚕繭共済

第百四条 第十五条第一項第一号に掲げる者が第十六条第一項の規定により農業共済組合の組合員となつたときは、命令で定める場合を除いて、その者と農業共済組合との間に農作物共済及び蚕繭共済の共済関係が成立するものとする。

第百五条 農業共済組合の組合員は、定款に特別の定のある場合を除いては、毎年農作物共済又は蚕繭共済に係る共済責任期間の開始する時までに、当該組合に、共済目的を明かにすべき事項を記載した共済細目書を提出し、且つ、共済掛金を払い込まなければならない。

  前項の共済細目書に記載すべき事項は、定款でこれを定める。

  第一項の規定により提出した共済細目書に記載した事項に変更を生じたときは、組合員は定款の定めるところにより遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。

第百六条 農作物共済及び蚕繭共済の共済金額は、主務大臣が共済目的の種類ごとに単位当り収穫量別にその収穫物の価格の二分の一を標準として定める最高額と最低額の範囲内において共済目的の種類ごとに一律に定款でこれを定める。

第百七条 農作物共済及び蚕繭共済の共済掛金率は、共済目的の種類ごとに、当該市町村(地方自治法第百五十五条第二項の市にあつては、区。以下本条において同じ。)又は特別区の属する危険階級の基準共済掛金率を下らない範囲内において定款でこれを定める。

  基準共済掛金率は、都道府県の区域内における危険階級別の共済金額の合計額を重みとするその算術平均が当該都道府県の共済掛金標準率に一致し、且つ、その相互の比が各危険階級の危険程度を表示する指数の比に一致するように主務大臣が、共済目的の種類ごとに危険階級別にこれを定める。

  前項の危険階級の別、各危険階級に属する市町村及び特別区並びに各危険階級の危険程度を表示する指数は、都道府県知事が、共済目的の種類ごとにこれを定める。

  共済掛金標準率は、左の率を共済目的の種類ごとに都道府県別に合計したものとする。

 一 命令で定める一定年間における当該都道府県の各年の被害率(以下本条において単に被害率という。)のうち、主務大臣が共済目的の種類ごとに定める標準被害率(以下単に標準被害率という。)を超えないものにあつてはその被害率を、標準被害率を超えるものにあつては標準被害率を基礎として主務大臣が共済目的の種類ごとに定める率(以下通常共済掛金標準率という。)

 二 被害率のうち、標準被害率を超え主務大臣が共済目的の種類ごとに定める一定の率を超えないものにあつては標準被害率を超える部分の率を、その一定の率を超えるものにあつては標準被害率を超えその一定の率を超えない部分の率を基礎として主務大臣が共済目的の種類ごとに定める率(以下異常共済掛金標準率という。)

 三 被害率のうち、前号の一定の率を超えるもののその超える部分の率を基礎として主務大臣が共済目的の種類ごとに定める率(以下超異常共済掛金標準率という。)

  前項の通常共済掛金標準率、異常共済掛金標準率及び超異常共済掛金標準率は、五年ごとに一般にこれを改訂する。

第百八条 農作物共済及び蚕繭共済に係る共済掛金を滞納する者がある場合において、農業共済組合の請求があるときは、市町村又は特別区は、市町村税の例によつてこれを処分する。この場合には、農業共済組合は、徴収金の百分の四を市町村又は特別区に交付しなければならない。

  市町村又は特別区が前項の請求を受けた日から三十日以内にその処分に着手せず、又は九十日以内にこれを結了しないときは、農業共済組合は、都道府県知事の認可を受けて、これを処分することができる。この場合には、地方自治法第二百二十五条第一項及び第四項の規定を準用する。

  前二項の規定による徴収金の先取特権の順位は、市町村その他これに準ずるものの徴収金に次ぎ、その時効については、市町村税の例による。

第百九条 農業共済組合は、左の場合において、被害の程度に応じて、共済金額に命令で定める率を乗じて得た金額に相当する共済金を組合員に支払うものとする。

 一 農作物共済にあつては、共済事故に因る減収が平年における当該耕地の収獲量の百分の三十を超えた場合

 二 蚕繭共済にあつては、共済事故に因る減収が平年における当該組合員の単位当り収繭量の百分の四十を超えた場合

第百十条 農作物共済及び蚕繭共済の共済責任期間は、左の各号に掲げる期間とする。

 一 水稲については本田移植期(直播をする場合にあつては、発芽期)から、麦については発芽期(移植をする場合にあつては、移植期)から夫々収獲をするに至るまでの期間及びその他の農作物については、これに準ずる期間

 二 蚕繭については、桑の発芽期から最終蚕期の収繭をするに至るまでの期間

    第三節 家畜共済

第百十一条 農業共済組合は、組合員から家畜共済の申込を受けたときは、左の各号の一に該当する場合その他正当な理由がある場合を除いては、その承諾を拒んではならない。

 一 死亡廃用共済に付していない家畜について疾病傷害共済の申込があつた場合において、同時に当該家畜の死亡廃用共済の申込がないとき。

 二 死亡廃用共済に付していない母畜の胎児について生産共済の申込があつた場合において、同時に当該母畜の死亡廃用共済の申込がないとき。

第百十二条 農業共済組合の家畜共済に係る共済責任は、定款に特別の定がある場合を除いては、組合が組合員から共済掛金の支払を受けた日の翌日から始まる。

  死亡廃用共済及び疾病傷害共済の共済掛金期間は、一年とする。但し、特別の事由があるときは、定款で別段の定をすることができる。

第百十三条 左の各号の一に該当する家畜は、あらたに死亡廃用共済にこれを付することができない。

 一 十二歳を超える牛及び明け十七歳以上の馬

 二 七歳を超える山羊及びめん羊並びに六歳を超える種豚

  家畜が前項各号に該当するに至る前二年以内にあらたに開始した死亡廃用共済関係は、その該当するに至つた時の属する共済掛金期間満了の時に消滅する。

第百十四条 家畜共済の共済金額は、左の金額とする。

 一 死亡廃用共済にあつては家畜の価額の百分の八十に相当する金額を、疾病傷害共済にあつては主務大臣の定める額を夫々超えない範囲内において定款で定める額

 二 生産共済にあつては、胎児については母畜の死亡廃用共済の共済金額の百分の二十に相当する金額、出生した牛及び馬については生後満一箇月までは胎児の共済金額と同額とし、生後一箇月を加えるごとにその額にその百分の十五を加えた額

第百十五条 家畜共済の共済掛金率は共済目的の種類ごとに定款でこれを定める。

  前項の共済掛金率は、命令で定める一定年間における地域別の被害率を基礎として主務大臣が共済目的の種類ごとに定める当該地域別の共済掛金標準率を下つてはならない。

  前項の共済掛金標準率は、四年ごとに一般にこれを改訂する。

第百十六条 家畜共済に係る共済金は、左の金額とする。

 一 死亡廃用共済にあつては、共済事故の原因が発生した直前の家畜の価格により、命令の定めるところにより、定款で定める方法によつて算定された損害の額に共済金額の共済価額に対する割合を乗じて得た額

 二 疾病傷害共済にあつては、共済事故に因つて組合員が被る損害の額に農業共済組合が、命令の定めるところにより、定款で定める支払割合を乗じて得た額

 三 生産共済にあつては、胎児については共済金額の全額、出生した牛及び馬については第一号の場合に準じて算定した額

  前項第二号の損害の額は、命令の定めるところにより、定款で定める方法によつてこれを算定する。

第百十七条 疾病傷害共済に係る共済事故が発生した場合において、農業共済組合が診療その他の行為をし、又はその費用を負担したときは、組合は、当該診療その他の行為に要した費用の額の限度において共済金を支払つたものとみなす。

第百十八条 家畜共済に係る共済責任の始まつた日から二週間以内に共済事故が生じたときは、農業共済組合の組合員は、共済金の支払を請求することができない。但し、その共済事故の原因が共済責任の始つた後に生じたときは、この限りでない。

第百十九条 農業共済組合の組合員は、廃用に係る家畜を屠殺したときは、予め組合の承諾を得た場合を除いては、廃用に係る共済金の支払を請求することができない。但し、やむを得ない事由のある場合において屠殺したときは、この限りでない。

第百二十条 家畜共済には、商法第六百三十七条、第六百三十九条乃至第六百四十一条、第六百四十四条、第六百四十五条、第六百四十九条及び第六百六十二条の規定を準用する。

   第四章 農業共済保険組合の保険事業

第百二十一条 農業共済保険組合は、組合員たる農業共済組合が共済事業に因つてその組合員に対して負う共済責任を相互に保険することを目的とする。

第百二十二条 農業共済保険組合の組合員たる農業共済組合員とその組合員との間に共済関係が成立したときは、これに因つて当該農業共済保険組合と当該農業共済組合との間に保険関係が成立するものとする。

第百二十三条 農業共済保険組合の保険金額は、左の金額とする。

 一 農作物共済及び蚕繭共済にあつては、その共済金額の百分の九十に相当する金額

 二 家畜共済にあつては、その共済金額に相当する金額

  特別の事由があるときは、農業共済保険組合は、命令の定める所により、定款で前項第二号の金額に代るべき金額を定めることができる。

第百二十四条 農業共済保険組合の保険料率は、共済掛金率と同率とする。

第百二十五条 農業共済保険組合の支払うべき保険金は、左の金額とする。

 一 農作物共済及び蚕繭共済にあつては、組合員が支払うべき共済金の百分の九十に相当する金額

 二 家畜共済にあつては、組合員が支払うべき共済金に相当する金額

  前項第二号の場合には、第百二十三条第二項の規定を準用する。

第百二十六条 疾病傷害共済に係る共済事故が発生した場合において、農業共済保険組合が診療その他の行為をし、又はその費用を負担したときは、当該共済責任を負担する農業共済組合は、当該診療その他の行為に要した費用の額の限度において共済金を支払つたものとみなす。

  前項の場合には、農業共済保険組合は、同項の額の限度において保険金を当該農業共済組合に支払つたものとみなす。

第百二十七条 農業共済保険組合の組合員は、共済関係が成立したときは、定款の定めるところにより、組合に当該共済関係に関する事項を通知しなければならない。

  前項の規定により通知した事項に変更を生じたときは、農業共済保険組合の組合員は、定款の定めるところにより、遅滞なくこれを組合に通知しなければならない。

第百二十八条 農業共済保険組合の組合員は、第九十四条第一項の管理その他損害防止について指導しなければならない。

第百二十九条 左の場合には、農業共済保険組合は、保険金の全部又は一部につき、その支払の責を免れることができる。

 一 組合員が法令又は定款に違反して共済金を支払つたとき。

 二 組合員が損害額を不当に認定して共済金を支払つたとき。

 三 組合員が第百二十七条の規定による通知を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて不実の通知をしたとき。

 四 組合員が正当な理由がないのに保険料の払込を遅滞したとき。

 五 組合員が前条の規定による指導を怠つたとき。

 六 組合員が第百三十二条において準用する第九十五条の規定による指示に従わなかつたとき。

 七 組合員が第百三十二条において準用する第九十八条の規定による通知を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて不実の通知をしたとき。

第百三十条 農業共済保険組合は、命令の定めるところにより、共済事業の種類ごとに会計を区分して経理しなければならない。

第百三十一条 農業共済保険組合の組合員が保険に関する事項について当該組合に対して訴を提起するには、都道府県農業共済保険審査会の審査を経なければならない。

  前項の審査の請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。

第百三十二条 農業共済保険組合の保険事業には、第八十七条第一項、第八十八条乃至第九十一条、第九十五条乃至第九十八条及び第百条乃至第百二条並びに商法第六百四十二条、第六百四十三条、第六百四十六条、第六百四十九条及び第六百六十二条の規定を準用する。

   第五章 政府の再保険事業

第百三十三条 政府は、農業共済保険組合が保険事業に因つてその組合員に対して負う保険責任を再保険するものとする。

第百三十四条 農業共済保険組合とその組合員との間に保険関係が成立したときは、これに因つて政府と当該組合との間に再保険関係が成立するものとする。

第百三十五条 政府の再保険金額は、左の金額とする。

 一 農作物共済及び蚕繭共済にあつては、共済目的の種類ごとに当該共済目的に係る総保険金額のうち、その総保険金額に標準被害率を乗じて得た額を超える部分の金額

 二 家畜共済にあつては、その保険金額に百分の九十の範囲内において主務大臣の定める率を乗じて得た金額

第百三十六条 政府の再保険料率は左の率とする。

 一 農作物共済及び蚕繭共済にあつては、異常共済掛金標準率と超異常共済掛金標準率とを合計した率

 二 家畜共済にあつては、保険料率と同率

第百三十七条 政府の支払うべき再保険金は、左の金額とする。

 一 農作物共済及び蚕繭共済にあつては、共済目的の種類ごとに、当該共済目的に係る総支払保険金のうち、当該共済目的に係る総保険金額に標準被害率を乗じて得た額を超える部分の金額

 二 家畜共済にあつては、支払保険金に再保険金額の保険金額に対する割合を乗じて得た金額

第百三十八条 農業共済保険組合は、再保険関係が成立したときは、命令の定めるところにより、再保険関係に関する事項を主務大臣に通知しなければならない。

  前項の規定により通知した事項に変更を生じたときは、農業共済保険組合は、命令の定めるところにより、これを主務大臣に通知しなければならない。

第百三十九条 農業共済保険組合は、保険金の支払をすべき原因が発生したと認めるときは、命令の定めるところにより、遅滞なくその旨を主務大臣に通知しなければならない。

第百四十条 左の場合には、政府は、命令の定めるところにより、再保険金の全部又は一部につき、その支払の責を免れることができる。

 一 農業共済保険組合が法令又は定款に違反して保険金を支払つたとき。

 二 農業共済保険組合が損害額を不当に認定して保険金を支払つたとき。

 三 農業共済保険組合が第百三十八条又は前条の規定による通知を怠り、又は悪意若しくは重大な過失に因つて不実の通知をしたとき。

第百四十一条 農業共済保険組合が再保険に関する事項について政府に対して訴を提起するには、農林保険審査会の審査を経なければならない。

  前項の場合には、第百三十一条第二項の規定を準用する。

第百四十二条 政府の再保険事業には、第八十八条乃至第九十条並びに商法第六百四十二条、第六百四十三条、第六百四十六条及び第六百六十二条の規定を準用する。

   第六章 審査会

第百四十三条 都道府県に都道府県農業共済保険審査会を置く。

  都道府県農業共済保険審査会は、第二十九条第一項及び第百三十一条の規定によりその権限に属させた事項を処理する外、都道府県知事の諮問に応じて左の事項を調査審議する。

 一 農業災害の発生、予防及び防止に関する事項

 二 共済掛金、共済金額、保険料及び保険金額の適正化に関する事項

 三 その他この法律の運用に関する重要事項

第百四十四条 農林保険審査会は、第百四十一条の規定によりその権限に属させた事項を処理する外、主務大臣の諮問に応じて前条各号に掲げる事項を調査審議する。

第百四十五条 前二条に規定するものの外、都道府県農業共済保険審査会及び農林保険審査会に関して必要な事項は、政令でこれを定める。

   第七章 罰則

第百四十六条 第七十八条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は第七十九条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを千円以下の罰金に処する。

  農業共済団体の代表者又は代理人、使用人その他の従業者がその農業共済団体の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その農業共済団体に対しても同項の刑を科する。

第百四十七条 左の場合には、農業共済団体の役員又は清算人を一万円以下の過料に処する。

 一 この法律の規定により行政庁の認可を受けなければならない場合にその認可を受けなかつたとき。

 二 この法律による登記を怠り、又は不実の登記をしたとき。

 三 農業共済団体の目的でない事業をしたとき。

 四 第三十三条の規定に違反したとき。

 五 第三十五条、第三十六条又は第三十七条の規定に違反したとき。

 六 第三十九条第一項若しくは第四十条第一項の規定に違反して書類を備え置かず、その書類に記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をし、又は正当な理由がないのに第三十九条第二項若しくは第四十条第二項の規定による閲覧を拒んだとき。

 七 第四十一条第四項の規定に違反したとき。

 八 第四十九条又は第五十条第二項の規定に違反して農業共済組合の合併をしたとき。

 九 第五十五条又は第五十七条に掲げる書類に記載すべき事項を記載せず、又は不実の記載をしたとき。

 十 第五十六条の規定に違反して農業共済団体の財産を分配したとき。

 十一 第九十一条(第百三十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。

 十二 第百条(第百三十二条において準用する場合を含む。)又は第百一条(第百三十二条において準用する場合を含む。)の規定に違反したとき。

 十三 第百三十条の規定に違反したとき。

 十四 民法第七十九条の期間内に債権者に弁済をしたとき。

 十五 民法第七十九条又は同法第八十一条に規定する公告を怠り、又は不実の公告をしたとき。

 十六 民法第八十一条第一項の規定に違反して破産宣告の請求を怠つたとき。

 十七 法令又は定款に違反して剰余金を処分し、又は共済金額を削減したとき。

第百四十八条 第四条第二項の規定に違反した者は、これを千円以下の過料に処する。

   附 則

第百四十九条 この法律は、公布の日から、これを施行する。

第百五十条 第十二条第一項の規定により食糧管理特別会計が、昭和二十二年度において負担する水稲の共済掛金に係る負担金については、同条第三項の規定は、これを適用しない。

第百五十一条 左の法律は、これを廃止する。

   農業保険法

  昭和十八年法律第二十二号(農業保険の保険料国庫負担金等の交付及分担等に関する法律)

   家畜保険法

第百五十二条 この法律施行の際現に存する農業保険組合、農業保険組合連合会及び家畜保険組合については、前条に掲げる法律は、同条の規定にかかわらず、この法律施行後でも、なおその効力を有する。

第百五十三条 この法律施行の際現に農業保険法に基いて存する共済責任関係、保険責任関係及び再保険責任関係については、同法は、第百五十一条の規定にかかわらず、この法律施行後でも、なおその効力を有する。但し、第三項に規定するものに関しては、この限りでない。

  この法律施行の際現に農業保険法に基いて水稲に係る共済責任を負担する市町村農業会については、当該共済責任開始の時に、当該市町村農業会とその会員との間にこの法律に規定する農業共済組合とその組合員との間における水稲に係る共済関係と同様の共済関係が成立したものとみなす。この場合には、当該市町村農業会はこれを農業共済組合と、当該市町村農業会の所属する農業保険組合連合会はこれを農業共済保険組合とみなし、この法律を適用する。

  この法律施行の際現に農業保険法に基いて存する水稲に係る共済責任関係、保険責任関係及び再保険責任関係は、その責任開始の時にさかのぼつて消滅する。

  前三項の規定施行に関し必要な事項は、命令でこれを定める。

第百五十四条 第百五十二条に掲げる家畜保険組合の行う家畜保険事業に関しては、家畜保険法は、第百五十一条の規定にかかわらず、この法律施行後でも、なおその効力を有する。

第百五十五条 農業共済組合が成立したときは、その区域の全部又は一部をその区域とする市町村農業会の共済事業に関する権利義務は、命令の定めるところにより、その成立の時に当該農業共済組合が、これを承継する。

第百五十六条 農業共済保険組合が成立したときは、その区域の全部又は一部を区域とする農業保険組合、農業保険組合連合会及び家畜保険組合は、その成立の時に解散するものとし、当該農業保険組合連合会、農業保険組合及び家畜保険組合の再保険事業及び保険事業に関する権利義務は、命令の定めるところにより、その成立の時に、当該農業共済保険組合が、これを承継する。

第百五十七条 この法律施行前(第百五十二条に掲げる組合及び連合会については、同条の規定により効力を有する農業保険法及び家畜保険法の失効前)にした行為の処罰については、この法律施行後(同条の組合及び連合会については、同条の規定により効力を有する農業保険法及び家畜保険法の失効後)でも、なお従前の例による。

第百五十八条 農業家畜再保険特別会計法の一部を次のように改正する。「農業家畜再保険特別会計法」を「農業共済再保険特別会計法」に、「勅令」を「政令」に改める。

  第一条中「農業再保険事業及家畜再保険事業」を「農業共済再保険事業」に改め、「通ジテ一ノ」を削る。

  第三条中「農業再保険事業」を「農作物共済及蚕繭共済ニ関スル再保険事業」に改め、「一般会計及」を削り、「再保険金、」の下に「農業災害補償法第十三条ノ規定ニ依ル交付金、」を加える。

  第四条中「家畜再保険事業」を「家畜共済ニ関スル再保険事業」に改める。

  第五条中「農業再保険事業」を「農作物共済及蚕繭共済に関スル再保険事業」に、「家畜再保険事業」を「家畜共済ニ関スル再保険事業」に改める。

  第八条第二項中「純再保険料」を「再保険料」に改める。

 第十一条 内閣ハ毎年度此ノ会計ノ予算ヲ作成シ一般会計ノ予算ト共ニ之ヲ国会ニ提出スベシ

   農業災害補償法第百五十三条第一項に規定する再保険責任関係及び同法第百五十四条の規定に基く家畜保険事業に係る再保険事業については、この法律施行後でも、なほ従前の例による。

第百五十九条 農林中央金庫法の一部を次のように改正する。

  第五条中「農業保険組合連合会、農業保険組合、家畜保険組合」を「農業共済保険組合、農業共済組合」に改める。

  農業災害補償法第百五十二条に掲げる農業保険組合連合会、農業保険組合及び家畜保険組合については、この法律施行後でも、なお従前の例による。

第百六十条 食糧管理特別会計法の一部を次のように改正する。

  第六条中「農業再保険特別会計」を「農業共済再保険特別会計」に改める。

(内閣総理・内務・大蔵・司法・農林大臣署名)

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