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法律第百四十七号(昭二三・七・一二)

  ◎検察審査会法

   第一章 総則

第一条 公訴権の実行に関し民意を反映せしめてその適正を図るため、政令で定める地方裁判所及び地方裁判所支部の所在地に検察審査会を置く。但し、検察審査会の数は、二百を下つてはならず、且つ、各地方裁判所の管轄区域内に少くともその一を置かなければならない。

  検察審査会の名称及び管轄区域は、政令でこれを定める。

第二条 検察審査会は、左の事項を掌る。

 一 検察官の公訴を提起しない処分の当否の審査に関する事項

 二 検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項

  検察審査会は、告訴若しくは告発をした者、請求を持つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者の申立があるときは、前項第一号の審査を行わなければならない。

  検察審査会は、その過半数による議決があるときは、自ら知り得た資料に基き職権で第一項第一号の審査を行うことができる。

第三条 検察審査会は、独立してその職権を行う。

第四条 検察審査会は、当該検察審査会の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者の中からくじで選定した十一人の検察審査員を以てこれを組織する。

   第二章 検察審査員及び検察審査会の構成

第五条 左に掲げる者は、検察審査員となることができない。

 一 小学校を卒業しない者、但し、小学校卒業と同等以上の学識を有する者は、この限りでない。

 二 破産者で復権を得ないもの

 三 耳の聞えない者、口のきけない者及び目の見えない者

 四 一年の懲役又は禁錮以上の刑に処せられた者

第六条 左に掲げる者は、検察審査員の職務に就くことができない。

 一 天皇、皇后、太皇太后、皇太后及び皇嗣

 二 国務大臣

 三 裁判官

 四 検察官

 五 会計検査院検査官

 六 最高裁判所事務総長、最高裁判所長官秘書官、司法研修所教官、裁判所調査官、裁判所事務官、裁判所技官、執行吏及び廷吏

 七 少年審判官、少年保護司及び少年審判所書記

 八 法務庁官吏

 九 検事総長秘書官、検察事務官、検察技官その他の検察庁の職員

 十 検察審査会事務官

 十一 国家公安委員会委員、都道府県公安委員会委員、市町村公安委員会委員、特別区公安委員会委員及び警察職員

 十二 司法警察職員としての職務を行う者

 十三 監獄官吏

 十四 経済調査官吏

 十五 収税官吏、税関官吏及び専売官吏

 十六 郵便電信電話鉄道及び軌道の現業に従事する者並びに船員

 十七 都道府県知事及び市町村長

 十八 弁護士及び弁理士

 十九 公証人及び司法書士

第七条 検察審査員は、左の場合には、職務の執行から除斥される。

 一 検察審査員が被疑者又は被害者であるとき。

 二 検察審査員が被疑者又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。

 三 検察審査員が被疑者又は被害者の法定代理人、後見監督人又は保佐人であるとき。

 四 検察審査員が被疑者又は被害者の同居人又は雇人であるとき。

 五 検察審査員が事件について告発又は請求をしたとき。

 六 検察審査員が事件について証人又は鑑定人となつたとき。

 七 検察審査員が事件について被疑者の代理人又は弁護人となつたとき。

 八 検察審査員が事件について検察官又は司法警察職員として職務を行つたとき。

第八条 左に掲げる者は、検察審査員の職務を辞することができる。

 一 年齢六十年以上の者

 二 国会又は地方公共団体の議会の議員、但し、会期中に限る。

 三 国会職員、官吏、公吏及び教員

 四 学生及び生徒

 五 重い疾病、海外旅行その他やむを得ない事由があつて検察審査会から職務を辞することの承認を受けた者

第九条 検察審査会事務局長は、毎年十二月二十日までに、検察審査員候補者の員数を当該検察審査会の管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知しなければならない。

  検察審査員候補者は、各検察審査会ごとに、第一乃至第四の四群に分ち、各群の員数は、それぞれ百人とする。

第十条 市町村の選挙管理委員会は、前条の通知を受けたときは、当該市町村の衆議院議員選挙人名簿に登載された者の中から、同条の規定により割り当てられた員数の倍数のそれぞれ第一群乃至第四群に属すべき検察審査員候補者の予定者をくじで選定し、各予定者について検察審査員としての資格を調査した後、その資格を有する予定者の中から同条の規定により割り当てられた員数のそれぞれ第一群乃至第四群に属すべき検察審査員候補者をくじで選定しなければならない。

  前項の調査の結果その資格を有する予定者が割り当てられた検察審査員候補者の員数に足りないときは、その足りない員数についてこれを充足させるまで前項の規定を準用する。

  市町村の選挙管理委員会は、第一項又は第二項の規定によりくじを行う日から、少くとも三日前にくじを行うべき場所及び日時を告示しなければならない。

  第一項又は第二項の規定によりくじを行う場合においては、衆議院議員の選挙権を有する者は、これに立ち会うことができる。但し、立ち合う場合には少くとも三人が立ち合わなければならない。

  市町村の選挙管理委員会は、第一項及び第二項の規定により選定された検察審査員候補者について、その氏名、住所及び生年月日を記載した検察審査候補者名簿を調製しなければならない。

第十一条 市町村の選挙管理委員会は、一月十五日までに検察審査員候補者名簿を管轄検察審査会事務局に送付しなければならない。

  市町村の選挙管理委員会は、検察審査員候補者名簿に登載された者にその旨を通知し、且つその氏名を告示しなければならない。

第十二条 市町村の選挙管理委員会は、前項の規定により検察審査員候補者名簿を送付した後、その候補者中死亡し、若しくは衆議院議員選挙権を有しなくなつた者があるとき、又は第五条若しくは第六条の各号の一に該当するに至つた者があるときは、遅滞なくこれを管轄地方裁判所又は地方裁判所支部の事務局長又は上席の裁判所事務官に通知しなければならない。

策十三条 検察審査会事務局長は、毎年一月三十一日に第一群検察審査員候補者の中から各五人の、四月三十日に第二群検察審査員候補者の中から各六人の、七月三十一日に第三群検察審査員候補者の中から各五人の、十月三十一日に第四群検察審査員候補者の中から各六人の検察審査員及び補充員をくじで選定しなければならない。

  前項に掲げた日が日曜日にあたるときは、それぞれその前日に前項のくじを行わなければならない。

  第一項のくじは、地方裁判所の判事、地方検察庁の検事及び関係市町村の吏員各一人の立会を以てこれを行わなければならない。この場合において、立会をした者は、検察審査員及び補充員の選定の証明をしなければならない。

第十四条 検察審査員及び補充員の任期は、各々六箇月とする。

第十五条 第十三条第一項の規定による検察審査員及び補充員の選定が了つたときは、その都度速やかに検察審査会議を開き、検察審査会長を互選しなければならない。この場合において検察審査会長が互選されるまでは、検察審査会事務局長が検察審査会長の職務を行う。

  検察審査会長は、検察審査会議の議長となり、検察審査会の事務を掌理し、検察審査会事務官を指揮監督する。

  検察審査会長の任期は、第十九条第一項の規定による次期の選定の行われる時までとする。

  第一項の規定は、検察審査会長が欠け、又は職務の執行を停止された場合にこれを準用する。

  前項に規定する場合を除くの外、検察審査会長に事故のあるときは、予め検察審査会の定める順序により他の検察審査員が臨時に検察審査会長の職務を行う。

第十六条 地方裁判所長又は地方裁判所支部に勤務する裁判官は、前条第一項の検察審査会議の開会前、検察審査員及び補充員に対し検察審査員の心得を諭告し、これをして宣誓をさせなければならない。

  宣誓は、宣誓書によりこれをしなければならない。

  宣誓書には、良心に従い公平誠実にその職務を行うべきことを誓う旨を記載しなければならない。

  地方裁判所長又は地方裁判所支部に勤務する裁判官は、起立して宣誓書を朗読し、検察審査員及び補充員をしてこれに署名押印させなければならない。

第十七条 検察審査員は、禁錮以上の刑にあたる罪につき起訴されたときは、その判決確定に至るまで、その職務の執行を停止される。

第十八条 検察審査員が欠けたとき、又は職務の執行を停止されたときは、検察審査会長は、補充員の中からくじで補欠の検察審査員を選定しなければならない。

  前項のくじは、検察審査会事務官の立会を以てこれを行わなければならない。

   第三章 検察審査会事務局及び検察審査会事務官

第十九条 各検察審査会に事務局を置く。

第二十条 各検察審査会に通じて六百人の検察審査会事務官を置く。

  検察審査会事務官は、二級又は三級の裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを命じ、検察審査会事務官の勤務する検察審査会は、最高裁判所の定めるところにより各地方裁判所がこれを定める。

  最高裁判所は、各検察審査会の検察審査会事務官のうち一人各検察審査会事務局長を命ずる。

  検察審査会事務局長及びその他の検察審査会事務官は、検察審査会長の指揮監督を受けて、検察審査会の事務を掌る。

   第四章 検察審査会議

第二十一条 検察審査会は、毎年三月、六月、九月及び十二月の各十五日に検察審査会議を開かねばならない。

  検察審査会長は、特に必要があると認めるときは、いつでも検察審査会議を招集することができる。

  第十三条第二項の規定は、第一項の場合にこれを準用する。

第二十二条 検察審査会議の招集状は、検察審査会長が、検察審査員及び補充員全員に対してこれを発する。

第二十三条 検察審査員及び補充員に対する招集状には、出頭すべき日時、場所及び招集に応じないときは過料に処せられることがある旨を記載しなければならない。

第二十四条 検察審査員及び補充員は、疾病その他やむを得ない事由に因り招集に応ずることができない場合においては、当該会議期日における職務を辞することができる。この場合においては、書面でその事由を疎明しなければならない。

第二十五条 検察審査会は、検察審査員全員の出席がなければ、会議を開き議決することができない。

  検察審査員が会議期日に出頭しないとき、又は第三十四条の規定により除斥の議決があつたときは、検察審査会長は、補充員の中からくじで臨時に検察審査員の職務を行う者を選定しなければならない。

  第十八条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第二十六条 検察審査会議は、これを公開しない。

第二十七条 検察審査会議の議事は、過半数でこれを決する。但し、起訴を相当とする議決をするには、八人以上の多数によらなければならない。

第二十八条 検察審査会議の議事については、会議録を作らなければならない。

  会議録は、検察審査会事務官が、これを作る。

第二十九条 検察審査員及び補充員には、政令の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を給する。但し、その額は、刑事訴訟費用法及び訴訟費用等臨時措置法の規定により証人に給すべき額を下ることができない。

   第五章 審査申立

第三十条 告訴若しくは告発をした者、請求を待つて受理すべき事件についての請求をした者又は犯罪により害を被つた者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官の属する検察庁の所在地を管轄する検察審査会にその処分の当否の審査の申立をすることができる。但し、裁判所法第十六条第四号に規定する事件並びに私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定に違反する罪に係る事件については、この限りでない。

第三十一条 審査の申立は、書面により、且つ申立の理由を明示しなければならない。

第三十二条 検察官の公訴を提起しない処分の当否に関し検察審査会議の議決があつたときは、同一事件について更に審査の申立をすることはできない。

   第六章 審査手続

第三十三条 申立による審査の順序は、審査申立の順序による。但し、検察審査会長は、特に緊急を要するものと認めるときは、その順序を変更することができる。

  職権による審査の順序は、検察審査会長が、これを定める。

第三十四条 検察審査会長は、検察審査員に対し被疑者の氏名、職業及び住居を告げ、その職務の執行から除斥される理由があるかないかを問わなければならない。

  検察審査員は、除斥の理由があるとするときは、その旨の申立をしなければならない。

  除斥の理由があるとするときは、検察審査会議は、除斥の議決をしなければならない。

第三十五条 検察官は、検察審査会の要求があるときは、審査に必要な資料を提出し、又は会議に出席して意見を述べなければならない。

第三十六条 検察審査会は、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

第三十七条 検察審査会は、審査申立人及び証人を呼び出し、これを尋問することができる。

  検察審査会は、証人がその呼出に応じないときは、当該検察審査会の所在地を管轄する簡易裁判所に対し、証人の召喚を請求することができる。

  前項の請求があつたときは、裁判所は、召喚状を発しなければならない。

  前項の召喚については、刑事訴訟法を準用する。

第三十八条 検察審査会は、相当と認める者の出頭を求め、法律その他の事項に関し専門的助言を徴することができる。

第三十九条 証人及び前条の規定により助言を徴せられた者には、政令の定めるところにより旅費、日当及び宿泊料を給する。但し、その額は、刑事訴訟費用法及び訴訟費用等臨時措置法の規定により証人に給すべき額を下ることができない。

第四十条 検察審査会は、審査の結果議決をしたときは、理由を附した議決書を作成し、その謄本を当該検察官を指揮監督する検事正及び検察官適格審査委員会に送付し、その議決後七日間当該検察審査会事務局の掲示場に議決の要旨を掲示し、且つ、第三十条の規定による申立をした者があるときは、その申立にかかる事件についての議決の要旨をこれに通知しなければならない。

第四十一条 検事正は、前条の規定により議決書謄本の送付があつた場合において、その議決を参考にし、公訴を提起すベきものと思料するときは、起訴の手続をしなければならない。

   第七章 建議及び勧告

第四十二条 検察審査会は、いつでも、検察事務の改善に関し、検事正に建議又は勧告をすることができる。

   第八章 罰則

第四十三条 検察審査員及び補充員は、左の場合においては、一万円以下の過料に処する。

 一 正当な理由がなく招集に応じないとき。

 二 宣誓を拒んだとき。

  第三十七条第三項の規定により召喚を受けた証人が正当な理由がなく召喚に応じないときも、前項と同様とする。

第四十四条 検察審査員が会議の模様又は各員の意見若しくはその多少の数を漏らしたときは、一万円以下の罰金に処する。

  前項の事項を新聞紙その他の出版物に掲載したときは、新聞紙に在つては編集人及び発行人を、その他の出版物に在つては著作者及び発行者を二万円以下の罰金に処する。

第四十五条 第二条第一項第一号に規定する職務に関し、検察審査員に対し不正の請託をした者は、一年以下の懲役又は二万円以下の罰金に処する。

   第九章 補則

第四十六条 検察審査会に関する経費は、これを裁判所の経費の一部として国の予算に計上しなければならない。

第四十七条 地方自治法第百五十五条第二項の市においては、この法律中市に関する規定は、区にこれを適用する。

第四十八条 この法律の施行に関し必要な規定は、政令でこれを定める。

   附 則

 この法律は、公布の日から、これを施行する。

 この法律施行後最初に行う検察審査員及び補充員の選定は、昭和二十四年一月三十一日にこれを行わなければならない。この場合における検察審査員及び補充員の員数は、各十一人とし、その任期は、各十一人の内各六人は三箇月、各五人は六箇月とし、当該検察審査員及び補充員の選定の際、くじでこれを定める。

  裁判所職員の定員に関する法律(昭和二十二年法律第六十四号)第四条中

専任六百九十七人

専任四千七十一人

二級

三級

 を

専任七百五十九人

専任四千六百九人

二級

三級

 に改める。

(内閣総理大臣署名)

 

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