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法律第百八十四号(昭二三・七・二一)

◎金融機関再建整備法の一部を改正する法律

 金融機関再建整備法(昭和二十一年法律第三十九号)の一部を次のように改正する。

 第二十五条の三に次の一項を加える。

  第二十五条第一項第三号の規定により資本の減少を行はなければならない金融機関は、前項の規定により資本の減少がその効力を生ずる日から、本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所の所在地において百二十日以内に資本減少の登記をなせば足りるものとする。

第三十三条 第二十四条第一項の規定により確定損の整理負担額を計算するもなほ確定損の残額があるときは、その残額は、政府において、これを補償する。

 政府は、前項の補償債務の決済を、国債証券の交付により行ふことができる。

 前項の規定により決済のため交付する国債証券の交付価格、償還期限及び利率は、次の通りとする。

 一 交付価格 額面百円につき百円

 二 償還期限 五年

 三 利  率 年四分五厘

  政府は、第一項の補償債務の決済のため必要な金額を限り、公債を発行することができる。

  第二項の規定による決済は、金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日において、これを行う。

  第一項の規定による政府の補償の金額は、大蔵省預金部等損失特別処理法(昭和二十一年法律第五十六号)による補償金の額と昭和二十年「ポツダム」宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く金融機関経理応急措置法の一部を改正する政令(昭和二十三年政令第六十四号)附則第七条の規定による補償金の額とを合計し、百六十三億円を限度とする。

  第二項の規定による国債証券の交付により補償を受けた金融機関は、第二十六条第三項又は第三十七条の二第一項第一号の規定により政府に納付する金額がある場合においては、当該国債証券を以て納付することができる。

  第三十四条第三項中「本店又は主たる事務所の所在地においては二週間以内に、又、支店又は従たる事務所の所在地においては三週間以内に」を「本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所の所在地において百二十日以内に」に改める。

第三十七条 第二十五条第三項若しくは第四項又は前条第二項若しくは第三項の規定によりその整理債務又は指定債務の債権の全部又は一部が消滅した金融機関は、新勘定及び旧勘定の区分の消滅後、調整勘定を設け、左の各号の金額を生じたときは、これを同勘定において経理しなければならない。

 一 前に旧勘定に属した資産及び負債について生じた利益金(資産の増価益及び処分益、運用益その他の利益金をいふ。)の金額

 二 新勘定及び旧勘定の区分の消滅する際における最終処理引当金の残額

 三 新勘定及び旧勘定の区分の消滅する際における旧勘定の負債の総額と資産の総額との差額その他主務大臣の許可を受けて積み立てた留保金の金額

 四 前に旧勘定に属した資産及び負債について生じた損失金(資産の減価損及び処分損、運用損その他の損失金をいふ。)の金額

  前項の規定により設ける調整勘定は、調整勘定以外の勘定と区分経理しなければならない。

  前二項の適用に関し必要な事項は、主務大臣が、これを定める。

第三十七条の二 金融機関は、その調整勘定に利益金を生じたときは、随時、第三十七条の六の規定による債権者審査会の同意を得て、且つ、主務大臣の認可を受けて、左の各号の順序により、これを処分するものとする。

 一 第三十三条第一項の規定による政府の補償があつたときは、その額(金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日から納付の日までの期間に応じ年四分五厘の割合を乗じて得た金額を加算する。)まで、これを政府に納付する。

 二 前号によるもなほ利益金の残額があるときは、左の各号の順序により、確定損を負担して消滅した指定債務の債権者(相続人その他の一般承継人を含む。)に、その確定損の整理負担額の限度において、これを分配する。

  イ 財産税、戦時補償特別税及び非戦災者家屋税以外の租税の徴収等により国又は地方公共団体の取得した預金等に関する債務の債権者

  ロ 戦時補償特別税に関し他の金融機関からの求償に応じて履行をなすべき債務の債権者

  ハ 一万五千円以下の退職金その他の臨時的給与の債務の債権者

 三 前号によるもなほ利益金の残額があるときは、第二十四条第一項第九号、第七号、第六号、第五号、第四号の順序により、確定損を負担して消滅した整理債務の債権者(相続人その他の一般承継人を含む。)に、その確定損の整理負担額の限度において、これを分配する。

 四 前号によるもなほ利益金の残額があるときは、先づ、約定利率のある整理債務の債権者に、第三号の順序により、金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日から本号の規定による分配の日までの期間に応じ、指定時における約定利率を超えない範囲内でできるだけ高い利率による利息に相当する金額を分配し、なお残額があるときは、約定利率のない整理債務の債権者に、第三号の順序により、右の期間に応じ、指定時における約定利率のうち最も低い利率を超えない利率による利息に相当する金額を分配する。但し、生命保険会社による保険契約者及び年金契約者に対する利息に相当する金額の分配については、年三分五厘の利率を超えない範囲内でできるだけ高い利率によるものとする。

 五 前号によるもなほ利益金の残額があるときは、先づ、約定利率のある指定債務の債権者に、第二号の順序により、金融機関の新勘定及び旧勘定の区分の消滅した日の翌日から本号の規定による分配の日までの期間に応じ、指定時における約定利率を超えない範囲内でできるだけ高い利率による利息に相当する金額を分配し、なほ残額があるときは、約定利率のない指定債務の債権者に、第二号の順序により、右の期間に応じ、指定時における約定利率のうち最も低い利率を超えない利率による利息に相当する金額を分配する。

  前項の場合において、同順位の債権者があるときは、その確定損の整理負担額に応じ、均等の割合で分配するものとする。

  金融機関再建整備法施行規則(昭和二十一年大蔵、農林、商工省令第一号)第六十四条第二項の規定により金融機関に無記名式の債券を提出した者は、第一項第三号の規定の適用については、これを当該債券に係る権利につき確定損を負担した債権者とみなす。

  金融機関再建整備法施行規則第六十四条第二項の規定により金融機関に無記名式の債券を提出しなければならない者が、同項の提出期限を経過した後第三十七条の三の規定による調整勘定の閉鎖の日までに、当該債券を当該金融機関に提出したときは、当該債券を提出した者は、同条の規定による利益金の残額があるときに限り、その残額の範囲内において、その確定損の整理負担額に応じ均等の割合で、且つ、その確定損の整理負担額の限度において、その残額の分配を受けることができる。

  第三項の規定は、前項の場合に、これを準用する。

第三十七条の三 金融機関は、前に旧勘定に属した資産及び負債の整理が完了したとき又は前条の規定により調整勘定の利益金を確定損を負担した整理債務の債権者にその整理負担額の全額まで分配したときは、主務大臣の認可を受け、その認可に当り主務大臣の指定する日において、調整勘定を閉鎖しなければならない。

  調整勘定閉鎖の際、調整勘定に利益金の残額がある場合において、当該金融機関に商法第二百八十八条第一項の準備金(その他の法令によるこれに準ずる準備金を含む。以下法定準備金といふ。)があるときは、当該利益金の残額は、法定準備金に併せられ、又、法定準備金がないときは、当該利益金の残額がそのまま法定準備金となるものとする。

第三十七条の四 金融機関は、新勘定及び旧勘定の区分の消滅後、前条の規定により調整勘定を閉鎖する時までの間において、前に旧勘定に属した資産(その資産が債権である場合においてその代物弁済として交付を受けたものを含む。以下第三十七条の五において同じ。)を処分しようとするときは、予め、第三十七条の六の規定による債権者審査会の同意を得、且つ、主務大臣の許可を受けなければならない。但し、貸付金その他の債権を回収する場合(担保の解除又は和解を伴ふことに因り第三十七条第一項第二号乃至第五号の規定による債権者の利益を害する場合を除く。)については、この限りでない。

第三十七条の五 金融機関は、第三十七条の三の規定により調整勘定を閉鎖するまでの間は、前に旧勘定に属した資産について、これを他の資産と区分し、当該金融機関の確定損を負担した債権者のために、善良な管理者の注意を以て、これを管理又は処分しなければならない。調整勘定に生じた利益金についてもまた同じ。

第三十七条の六 第三十七条の規定により調整勘定を設けなければならない金融機関は、債権者審査会を置かなければならない。

  債権者審査会は、七人の審査人を以て、これを組織する。

  前項の審査人は、金融機関の確定損を負担した整理債務の債権者であつて当該金融機関に対し債務を負担していない者(当該金融機関の役員、職員その他の従業者、国、地方公共団体、持株会社整理委員会及び昭和二十年ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く公職に関する就職禁止、退職等に関する勅令(昭和二十二年勅令第一号)第三条第二項に規定する覚書該当者を除く。)のうちで確定損負担額の最も多額な者から順次に、当該金融機関の理事機関がこれを選任し、その任期は、一年とする。

  金融機関の理事機関は、審査人がその就職の後当該金融機関から債務を負担するに至つたとき、又は当該金融機関の役員、職員その他の従業者となつたときは、当該審査人を解任しなければならない。

  審査人が心身の故障その他の理由に因りその職務をとることができない場合には、金融機関の理事機関は、当該審査人を解任することができる。

  金融機関の理事機関は、前三項の規定により審査人を選任し又は解任したときは、遅滞なく、その者の氏名又は名称及び住所並びに整理債務の金額を、主務大臣に届出でなければならない。

  審査人は、その職務の執行のために要した費用についてその実費の支払を受ける外、報酬を受けることができない。

  債権者審査会の職務の執行は、審査人の過半数を以て、これを決する。

第三十七条の七 調整勘定に繰り入れる金額又は調整勘定から支出する金額は、法人税法(昭和二十二年法律第二十八号)による各事業年度の普通所得及び地方税法(昭和二十三年法律第百十号)により事業税を課する場合における各事業年度の所得の計算上、これを益金又は損金に算入しない。

第三十七条の八 前七条の規定は、第二十五条第三項若しくは第四項又は第三十六条第二項若しくは第三項の規定によりその債権の全部又は一部が消滅した譲渡金融機関からその事業の全部の譲渡又は保険契約の全部の移転を受けた金融機関に、これを準用する。

  前項において譲渡金融機関とは、第二十六条第二項、第四十条第一項、第四十一条第一項若しくは第二項の規定により、又は第三十九条第一項の規定による整備計画書の定めるところにより他の金融機関に事業の全部の譲渡又は保険契約の全部の移転をなした金融機関をいふ。

第三十七条の九 第三十七条の二(前条の規定により準用する場合を含む。以下第三十七条の十及び第六十三条第九号において同じ。)の規定により調整勘定の利益金の分配を受ける権利は、これを譲渡し又は担保に供することができない。

第三十七条の十 金融機関又は金融機関の役員、職員その他の従業者は、第三十七条の二の規定により調整勘定の利益金の分配を受ける権利を有する者から、その権利を譲り受け又はその権利の譲渡を要求し若しくは約束してはならない。

  金融機関又は金融機関の役員、職員その他の従業者は、当該金融機関又は他の金融機関の調整勘定に生じた利益金の分配に関して、第三十七条の二の規定により調整勘定の利益金の分配を受ける権利を有する者から、手数料その他の報酬を収受し又はこれを要求し若しくは約束してはならない。

  金融機関又は金融機関の役員、職員その他の従業者は、何等の名義によつても、前二項の禁止を免れる行為をしてはならない。

  第三十九条第一項中「第二十四条第一項第三号又は第八号の規定により株主において確定損を負担する金融機関の理事機関は」を「金融機関の理事機関は」に改める。

  第四十六条第二項中「商法第二百八十八条第一項の準備金(その他の法令によるこれに準ずる準備金を含む。以下法定準備金といふ。)」を「法定準備金」に改め、同条に次の二項を加える。

  前項の規定にかかはらず相互会社の新勘定及び旧勘定の区分の消滅の際、特別準備金がある場合においては、当該相互会社は、左の各号の順序により、これを処分しなければならない。

 一 保険業法第六十三条の規定による準備金の総額までの積立

 二 基金の総額までの償却

  前項の規定により、特別準備金を処分するもなお残額がある場合においては、保険業法第六十六条の定めるところによる。

  第六十三条中第八号及び第九号を次のように改める。

 八 第三十七条(第三十七条の八の規定により準用する場合を含む。)の規定による経理を怠り又は同条に違反してその経理をなしたとき

 九 第三十七条の二の規定による利益金の処分を怠り又は同条の規定に違反してその処分をなしたとき

 十 第三十七条の四(第三十七条の八の規定により準用する場合を含む。)の規定に違反して資産を処分したとき

第六十三条の二 第三十七条の十の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

  第六十四条中「監査委員」の下に「及び債権者審査会の審査人」を加える。

  第六十九条中「第六十三条、」の下に「第六十三条の二、」を加える。

附 則

第一条 この法律は、公布の日から、これを施行する。但し、金融機関再建整備法第二十五条の三、第三十三条、第三十四条、第三十七条、第三十七条の七から第三十七条の九まで及び第四十六条の改正規定は、昭和二十三年四月一日から、これを適用する。

第二条 この法律施行前になした行為に対する罰則の適用については、なお、従前の例による。

第三条 昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く金融機関経理応急措置法の一部を改正する政令(昭和二十三年政令第六十四号)の一部を次のように改正する。

 附則第七条に次の一項を加える。

  金融機関再建整備法第三十三条第二項乃至第四項の規定は、前項の規定による損失の補償の場合に、これを準用する。

第四条 大蔵省預金部等損失特別処理法(昭和二十一年法律第五十六号)の一部を次のように改正する。

 第四条に次の四項を加える。

  指定時における預金部資金に属する運用資金につき、前項の規定により一般会計から大蔵省預金部に補償金を繰り入れたのちにおいて、第一条の規定による評価額に比し価額の増加又は減少があつた場合において、当該価額の増加額が減少額を超へるときは、政府は、その差額に相当する金額を、当該補償金の額まで大蔵省預金部から一般会計に繰り入れる。

  金融機関再建整備法第三十三条第二項乃至第四項の規定は、第一項の規定により一般会計から大蔵省預金部に補償金を繰り入れる場合に、これを準用する。

  金融機関再建整備法第三十三条第七項の規定は、第三項の規定により大蔵省預金部から一般会計に同項の差額に相当する金額を繰り入れる場合に、これを準用する。

  政府は、第三項の規定による差額に相当する金額を同項の規定により大蔵省預金部から一般会計に繰り入れた後なほその残額があるときは、命令の定めるところにより、これを処分するものとする。

第五条 金融緊急措置令(昭和二十一年勅令第八十三号)の一部を次のように改正する。

 第四条 削除

 第七条第一項を削る。

 第十一条中「若ハ第四条ノ規定、」を削る。

2 この法律施行前になした行為に対する罰則の適用については、従前の金融緊急措置令第四条及び第十一条の規定は、この法律施行後も、なおその効力を有する。

3 この法律施行の際現に存する金融緊急措置令施行規則(昭和二十一年大蔵省令第十二号)に定める第一封鎖預金等は、その時において同規則に定める自由預金等となるものとする。この法律施行後同規則第一条の十の規定により第一封鎖預金等となつたものについてもそのなつた時においてまた同じ。

(大蔵・内閣総理大臣署名)

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