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法律第百七十二号(昭二四・五・三一)

◎臨時鉄くず資源回収法

 (目的)

第一条 この法律は、鉄鋼業その他鉄くずを原料又は材料として使用する産業の回復及び振興に必要な鉄くずの供給を確保することを目的とする。

 (くず化物件の指定)

第二条 通商産業大臣は、銑又は鋼(鋼を主要な成分とする合金を含む。)を主要な材料とする物件(国有の物件を除く。)で、左に掲げるもののうち、現に本来の用途に供せられていず、且つ、将来もその見込のないものの全部又は一部をくず化物件として指定することができる。但し、第二号の物件については、あらかじめ運輸大臣に協議しなければならない。

一 建造物

二 艦船

三 機械、器具、設備又は装置

四 車両

2 前項の指定は、同項の物件を鉄くずとして利用することが国民経済上最も有効であると認められる場合でなければ行うことができない。

3 通商産業大臣は、第一項の指定をしたときは、直ちにその物件の名称、所在地、所有者又は占有者の氏名その他省令で定める事項をその物件の所有者及び占有者に通知するとともに、これを公告しなければならない。

第三条 前条第三項の規定による通知があつたときは、その物件の所有者又は占有者は、第十二条第一項の規定による命令による場合の外、その物件につき譲渡その他の処分をし、又はその形質を変更してはならない。但し、省令の定めるところにより、通商産業大臣の許可を受けたときは、この限りでない。

 (異議の申立及び利害関係人の意見)

第四条 くず化物件の所有者、占有者又はこれにつき担保権を有する者は、第二条第一項の規定によるくず化物件の指定に異議があるときは、同条第三項の規定による公告のあつた日から四十日以内に、通商産業大臣に異議を申し立てることができる。

2 通商産業大臣は、前項の規定による異議の申立を受けたときは、八十日以内に、くず化物件審議会にはかつて決定しなければならない。

3 前項の期間内に異議の決定がないときは、その申立を容認する旨の決定があつたものとみなす。

4 通商産業大臣は、第二項の規定により異議の申立を容認する旨の決定をした場合又は前項の場合には、直ちに指定を取り消し、又は変更し、且つ、その旨を公告しなければならない。

第五条 前条第一項の規定による異議の申立があつたときは、そのくず化物件の利害関係人は、省令の定めるところにより、くず化物件審議会に出席して、そのくず化物件の指定の当否に関し意見を述べることができる。

 (くず化物件審議会)

第六条 通商産業省にくず化物件審議会(以下「審議会」という。)を置く。

第七条 審議会は、第四条第二項及び第十二条第四項に規定するものの外、通商産業大臣の諮問に応じ、左に掲げる事項を調査審議する。

一 くず化物件の指定の基準に関する事項

二 くず化物件の解体を促進する方策に関する事項

三 前各号の外、くず化物件に関する重要事項

2 審議会は、くず化物件に関する事項について、関係行政庁に建議することができる。

第八条 審議会は、会長一人及び委員十五人以内をもつて組織する。

第九条 審議会の会長は、通商産業大臣をもつて充てる。

2 審議会の委員は、関係各庁の職員、学識経験のある者、鉄くずの集荷又は販売を業とする者及び鉄くずの需要者の中から、通商産業大臣が委嘱する。

第十条 審議会の委員は、予算に定める金額の範囲内において手当及び旅費を受けるものとする。

第十一条 この法律に定めるものの外、審議会に関し必要な事項は省令で定める。

 (通商産業大臣の命令権)

第十二条 通商産業大臣は、経済安定本部総裁が定める方策に基き、左の事項に関して、必要な命令をすることができる。

一 くず化物件の割当、譲渡若しくは引渡又は譲渡若しくは引渡の制限若しくは禁止

二 くず化物件の解体によつて生じた鉄くずの割当、配給、譲渡若しくは引渡又は使用、譲渡若しくは引渡の制限若しくは禁止

2 政府は、前項第一号に掲げるくず化物件の譲渡又は引渡に関する命令により損失を受けた者に対し、その損失を補償する。

3 前項の規定により補償すべき損失は、通常生ずべき損失とする。

4 第二項の規定による補償の金額は、通商産業大臣が大蔵大臣に協議して、審議会の意見を聴いて定める。

5 前三項に定めるものの外、損失の補償に関し必要な事項は、省令で定める。

6 第一項の規定による命令をする場合における担保権の処理その他必要な事項は、政令で定める。

 (報告、検査)

第十三条 通商産業大臣は、くず化物件若しくは鉄くずの所有者、占有者若しくは需要者又は鉄くずの集荷若しくは販売を業とする者に対し、鉄くずの需給調整上必要があると認める事項につき、報告を命ずることができる。この場合において、報告を命ぜられた者が報告をせず、又はその報告が虚偽であると認められるときは、通商産業大臣は、その職員にその者の事務所、営業所、工場、事業場又は倉庫に立ち入り、業務の状況又はくず化物件若しくは鉄くず、帳簿書類その他必要な物件を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを示さなければならない。

 (罰則)

第十四条 左の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

一 第三条の規定に違反した者

二 第十二条第一項の規定による命令に違反した者

2 前項の罪を犯した者には、情状により、懲役及び罰金を併科することができる。

第十五条 左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は一万円以下の罰金に処する。

一 第十三条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

二 第十三条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

第十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第十四条第一項又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

附 則

1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。

2 この法律は、昭和二十七年六月一日にその効力を失う。

3 前項の時までにした行為に対する罰則の適用に関しては、この法律は、その時以後もなおその効力を有する。

(通商産業・運輸・内閣総理大臣署名)

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