法律第二百五十六号(昭二四・一二・一二)
◎政府契約の支払遅延防止等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、政府契約の支払遅延防止等その公正化をはかることともに、国の会計経理事務処理の能率化を促進し、もつて国民経済の健全な運行に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「政府契約」とは、国を当事者の一方とする契約で、国以外の者のなす工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物件の納入に対し国が対価の支払をなすべきものをいう。
(政府契約の原則)
第三条 政府契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。
(政府契約の必要的内容事項)
第四条 政府契約の当事者は、前条の趣旨に従い、その契約の締結に際しては、給付の内容、対価の額、給付の完了の時期その他必要な事項のほか、左に掲げる事項を書面により明らかにしなければならない。但し、他の法令により契約書の作成を省略することができるものについては、この限りでない。
一 契約の目的たる給付の完了の確認又は検査の時期
二 対価の支払の時期
三 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
四 契約に関する紛争の解決方法
(給付の完了の確認又は検査の時期)
第五条 前条第一号の時期は、国が相手方から給付を終了した旨の通知を受けた日から工事については十四日、その他の給付については十日以内の日としなければならない。
2 国が相手方のなした給付を検査しその給付の内容の全部又は一部が契約に違反し又は不当であることを発見したときは、国は、その是正又は改善を求めることができる。この場合においては、前項の時期は、国が相手方から是正又は改善した給付を終了した旨の通知を受けた日から前項の規定により約定した期間以内の日とする。
(支払の時期)
第六条 第四条第二号の時期は、国が給付の完了の確認又は検査を終了した後相手方から適法な支払請求書を受理した日から工事代金については四十日、その他の給付に対する対価については三十日(以下この規定又は第七条の規定により約定した期間を「約定期間」という。)以内の日としなければならない。
2 国が相手方の支払請求書を受理した後、その請求書の内容の全部又は一部が不当であることを発見したときは、国は、その事由を明示してその請求書を相手方に返付することができる。この場合においては、当該請求書を返付した日から国が相手方の是正した支払請求書を受理した日までの期間は、約定期間に算入しないものとする。但し、その請求書の内容の不当が相手方の故意又は重大な過失による場合は、適法な支払請求書の提出があつたものとしないものとする。
3 第一項において「国が相手方から適法な支払請求書を受理した日から」とあるのは、政府の契約の特例に関する法律(昭和二十一年法律第六十号)第一条に規定する特定契約で国の支払金額の確定していないものについては、確定した日又は国が確定支払金額を指定(指定金額に対し改訂の申請があつたときはその決定、その決定に対し裁判所に出訴したときは裁判確定)した日からとする。
(時期の定の特例)
第七条 契約の性質上前二条の規定によることが著しく困難な特殊の内容を有するものについては、当事者の合意により特別の期間の定をすることができる。但し、その期間は、前二条の最長期間に一・五を乗じた日数以内の日としなければならない。
(支払遅延に対する遅延利息の額)
第八条 国が約定の支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、約定の支払時期到来の日の翌日から支払をする日までの日数に応じ、当該未支払金額に対し大蔵大臣が銀行の一般貸付利率を勘案して決定する率を乗じて計算した金額を下るものであつてはならない。但し、その約定の支払時期までに支払をしないことが天災地変等やむを得ない事由に因る場合は、特に定めない限り、当該事由の継続する期間は、約定期間に算入せず、又は遅延利息を支払う日数に計算しないものとする。
2 前項の規定により計算した遅延利息の額について特に定めない限り、その額が百円未満であるときは、遅延利息を支払うことを要せず、その額に百円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てるものとする。
(完了の確認又は検査の遅延)
第九条 国が約定の時期までに給付の完了の確認又は検査をしないときは、その時期を経過した日から完了の確認又は検査をした日までの期間の日数は、約定期間の日数から差し引くものとし、又当該遅延期間が約定期間の日数を越える場合には、約定期間は満了したものとみなし、国は、その越える日数に応じ前条の計算の例に準じ支払遅延に関し約定した利率をもつて計算した金額を相手方に対し支払わなければならない。
(定をしなかつた場合)
第十条 政府契約の当事者が第四条但書の規定により、同条第一号から第三号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときは、同条第一号の時期は、相手方が給付を終了し国がその旨の通知を受けた日から十日以内の日、同条第二号の時期は、相手方が請求書を提出した日から十五日以内の日と定めたものとみなし、同条第三号中国が支払時期までに対価を支払わない場合の遅延利息の額は、第八条の計算の例に準じ同条第一項の大蔵大臣の決定する率をもつて計算した金額と定めたものとみなす。政府契約の当事者が第四条但書の場合を除き同条第一号から第三号までに掲げる事項を書面により明らかにしないときも同様とする。
(国の過払額に対する利息の加算)
第十一条 国が前金払又は概算払をなした場合においてその支払済金額が支払確定金額を超過し当該契約の相手方がその超過額を返納告知のあつた期限までに返納しないときは、その相手方は、その期限の翌日からこれを国に返納する日までの期間に応じ、当該未返納金額に対し第八条第一項に定める率と同じ率を乗じて計算した金額を加算して国に返納しなければならない。
(大蔵大臣の監督)
第十二条 大蔵大臣は、この法律の適正な実施を確保し政府契約に基く支払の遅延を防止するため、各省各庁(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十一条に規定する各省各庁をいう。)及び公団に対し支払の状況について報告を徴し、実地監査を行い、又は必要に応じ、閣議の決定を経て支払について必要な指示をすることができる。
2 大蔵大臣は、前項の目的をもつて政府契約の相手方に対して支払の状況について報告させ、又は必要に応じ実地調査をすることができる。
(懲戒処分)
第十三条 国の会計事務を処理する職員が故意又は過失により国の支払を著しく遅延させたと認めるときは、その職員の任命権者は、その職員に対し懲戒処分をしなければならない。
2 会計検査院は、検査の結果国の会計事務を処理する職員が故意又は過失により国の支払を著しく遅延させたと認める事件でその職員の任命権者がその職員を前項の規定により処分していないものを発見したときは、その任命権者に当該職員の懲戒処分を要求しなければならない。
(この法律の準用)
第十四条 この法律の規定は、日本専売公社、日本国有鉄道及び地方公共団体のなす契約に準用する。但し、第十二条及び第十三条第二項の規定は、地方公共団体については、この限りでない。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 政府契約でこの法律施行前において国が相手方から給付を終了した旨の通知を受け、なお完了の確認又は検査をしないものがあるとき、又は相手方から適法な支払請求書を受理し、なお支払をしないものがあるときは、第四条第一号及び第二号に掲げる時期は、この法律施行の日からそれぞれ第五条及び第六条の最長期間以内の日と定めたものとみなし、支払遅延に対する遅延利息の率について第八条第一項の率を下るものがあるときは、その率と定めたものとみなす。但し、第七条の規定により、その制限内で特別の期間の定をすることを妨げない。
3 国が支払確定金額を超過する支払をなしたものでこの法律施行前に返納告知に指定した期限が経過し、なお相手方が返納しないものがあるときは、その相手方は、この法律施行の日から第十一条の規定により計算した金額を加算して国に返納しなければならない。
4 経済安定本部設置法(昭和二十四年法律第百六十四号)の一部を次のように改正する。
附則第六項中「会計法(昭和二十二年法律第三十五号)」を
「 |
会計法(昭和二十二年法律第三十五号)政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号) |
」 |
に改める。
(内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名)