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法律第二百八十四号(昭二四・一二・二六)

◎郵便物運送委託法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 業務委託の方法

  第一節 競争契約又は随意契約による場合(第三条−第七条)

  第二節 郵政大臣の要求による場合(第八条−第十五条)

 第三章 運送等の業務の取扱(第十六条−第二十条)

 第四章 罰則(第二十一条−第二十四条)

 附則

第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、郵政大臣が郵便物の取集、運送及び配達(以下「運送等」という。)を運送業者等に委託する場合に関し必要な事項を定め、もつて郵便物の運送等を適正且つ円滑にすることを目的とする。

 (運送等を委託する場合)

第二条 郵政大臣は、郵便物の運送等を他に委託することが経済的であり、且つ、郵便物の運送等に関する業務に支障がないと認めるときは、この法律に定めるところに従い、これを他に委託することができる。

   第二章 業務委託の方法

    第一節 競争契約又は随意契約による場合

 (競争契約)

第三条 郵政大臣は、郵便物の運送等を委託する場合には、競争による契約によらなければならない。但し、次条及び第八条に規定する場合は、この限りでない。

2 前項の規定による競争に加わろうとする者は、郵政大臣において、運送等に関し必要な能力を有し且つその者にその業務を行わせても支障が生じないと認める者でなければならない。

 (随意契約)

第四条 郵政大臣は、左に掲げる場合に限り、随意契約により郵便物の運送等を委託することができる。この場合においては、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第二十九条但書の規定にかかわらず、大蔵大臣に協議することを要しない。

 一 競争に応ずる者がないとき、又は競落者がないとき。

 二 競落者が契約を結ばないとき。

 三 契約者がその契約に定められた事項を行わないため、他の者に委託する必要が生じたとき。

 四 郵便物の運送等のため必要とする種類の運送施設により運送事業を営む者が、第八条第一項第一号から第三号までに掲げる者に該当し、且つ、その数が当該区間に二以上ない場合において、その者の現に運営する運送施設を利用するとき。

 五 動力による運送施設を使用しないで、主として労力により郵便物の運送等をするとき。

 六 災害その他の事由により臨時に郵便物の運送等をする必要があるとき。

2 前項の規定による随意契約は、同項第一号の場合にあつては最初競争に付するとき定めた価格、同項第二号の場合にあつては当該競落者の落札金額、同項第三号の場合にあつては当該契約者について定めた契約金額をこえる契約金額で締結することができず、且つ、その他の条件(期限を除く。)を変更して締結することができない。

 (運送料金の基準)

第五条 第八条第一項に掲げる者が前二条の規定により郵便物を運送する場合における運送料金は、郵便物の運送原価に公正妥当な利潤を加えた金額を基準としなければならない。但し、その者が、資本金の全額を政府が出資する運送事業者又は地方公共団体であるときは、郵便物の運送料金は、その運送原価を基準としなければならない。

2 前項の運送料金の基準は、運輸大臣があらかじめ郵政大臣に協議して、運輸省設置法(昭和二十四年法律第百五十七号)第五条に規定する運輸審議会にはかり、その決定を尊重して定める。

3 運輸大臣が、運送料金の基準の変更について運輸省設置法第七条の規定に基いて運輸審議会から勧告を受けたときは、その勧告を尊重し、郵政大臣に協議してこれを変更することができる。

 (運送に関する法令による用途外使用の制限に関する特例)

第六条 郵便物の運送等のため必要とする種類の運送施設により一定の区間に運送事業を営む者がない場合において、その区間に自己の用に供するため当該運送施設を運営する者は、郵政大臣と第三条又は第四条の契約を締結して郵便物の運送等の業務を行うことができる。

2 郵政大臣は、前項の契約をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に協議しなければならない。

 (運送等の契約の期間)

第七条 郵便物の運送等の契約の期間は、四年以内とする。

 第二節 郵政大臣の要求による場合

 (運送に関する要求)

第八条 左に掲げる者(以下「運送業者」という。)は、この節に定めるところにより、郵政大臣の要求があるときは、郵便物の運送をし、又は郵便物の運送に関し必要な行為をしなければならない。

 一 日本国有鉄道

 二 地方鉄道法(大正八年法律第五十二号)による地方鉄道業者

 三 軌道法(大正十年法律第七十六号)による軌道経営者

 四 一般交通の用に供するため航路を定め定期に船舶を運行して運送業を営む者

 五 路線を定める一般自動車運送事業を営む者

 六 索道事業を営む者

 七 前各号に掲げるものを除いて、一般交通の用に供するため航路又は路線を定め定期に舟車馬を運行して運送業を営む者

2 郵政大臣がこの節の規定に従つてする要求は、運送業者との間に第三条若しくは第四条の契約が成立しないとき又は第三条若しくは第四条の契約により郵便物の運送を行う運送業者が契約で定めた事項を履行しないときにおいて当該運送業者に対しする場合に限り、且つ、郵便物の適正且つ円滑な運送を行うため必要な最少限度のもので、この節に別段の定がある場合を除くの外、当該運送業者に特別の義務を課さないものでなければならない。

3 郵政大臣がこの節の規定に従つてする要求により運送業者に業務を行わせる期間は、一年をこえるものであつてはならない。

4 郵政大臣は、運送業者に対しこの節の規定に従つて郵便物の運送に関する要求をしようとするときは、あらかじめ運輸大臣に協議しなければならない。

5 郵政大臣は、運送業者に対しこの節の規定に従つて郵便物の運送に関する要求をする場合には、緊急やむを得ない場合を除くの外、三十日を下らない範囲でその実施に必要な準備期間を置かなければならない。

 (郵便車等の供給)

第九条 鉄道により運送事業を営む運送業者(以下「鉄道運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、定期の列車に、郵便物の運送に必要な設備を有する車両(以下「郵便車」という。)を連結して郵便物を運送しなければならない。

2 鉄道運送業者は、郵便物が多量のため又は災害等のため定期の列車によつては郵便物の運送をすることができない場合において、郵政大臣の要求があるときは、臨時に定期の列車以外の列車に郵便車又はこれに代る車両を連結して郵便物の運送をしなければならない。

3 前二項の場合において、郵政大臣は、鉄道運送業者が連結する郵便車又はこれに代る車両の容積が当該列車ごとに、列車定数の総容積の五分の一をこえるような要求をすることができない。

4 鉄道運送業者は、第一項又は第二項の規定により連結する郵便車又はこれに代る車両の台枠が木造のものであるときは、緊急やむを得ない場合を除くの外、これを木造以外の台枠を有する車両間に連結してはならない。

5 鉄道運送業者が第一項又は第二項の規定により連結する郵便車又はこれに代る車両は、客車と同一程度の強度を有し、且つ、郵便車にあつては郵政大臣の指定する様式のものでなければならない。

6 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、郵便車に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。

 (郵便物の夜間受渡)

第十条 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、夜間に発着する列車に連結する郵便車に積卸をする郵便物を郵便物の取扱に従事する者(以下「郵便取扱員」という。)で郵便局に所属するものから受領して郵便車に乗務する郵便取扱員に引き渡し、又は郵便車に乗務する郵便取扱員から受領して郵便局に所属する郵便取扱員に引き渡さなければならない。

 (土地建物等の供給)

第十一条 鉄道運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、その運送する郵便物の積卸、保管その他の取扱のため必要な鉄道用地、停車場構内の建物、機器又は通信設備を郵政省の使用に供し、これに必要な電力を供給しなければならない。

 (自動車の郵便物積載場所等の供給)

第十二条 路線を定める一般自動車運送事業を営む運送業者(以下「自動車運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、定期に運行する旅客自動車又は貨物自動車の一定部分を郵便物を積載する場所に充てて、郵便物を運送しなければならない。

2 前項の場合において、郵政大臣は、郵便物を積載する場所の床面積がその自動車ごとに、旅客自動車にあつては定員の五分の一に相当する床面積、貨物自動車にあつては貨物を積載する床面積の三分の一をこえるような要求をすることができない。

3 自動車運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、第一項の郵便物を積載する場所に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。

 (船舶の郵便物積載場所等の供給)

第十三条 一般交通の用に供するため航路を定め定期に船舶を運行して運送事業を営む運送業者(以下「船舶運送業者」という。)は、郵政大臣の要求があるときは、船舶の一定部分を郵便物を積載する場所に充てて、郵便物を運送しなければならない。

2 前項の場合において、総トン数五十トン未満の船舶については、郵政大臣は、郵便物を積載する船舶の一定部分の容積がその船舶ごとに、旅客定員に相当する容積の五分の一又は貨物積載容積の五分の一をこえるような要求をすることができない。

3 船舶運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、第一項の郵便物を積載する場所に郵便物の取扱のため必要な設備をし、且つ、その取扱に支障のないようにこれを維持しなければならない。

 (その他の運送の要求)

第十四条 第九条第一項及び第二項、第十二条第一項並びに前条第一項に掲げる場合の外、運送業者は、郵政大臣の要求があるときは、その要求する運送の種類、区間若しくは回数、運送機関の発着時刻又は郵便物授受の方法により、郵便物を運送しなければならない。

2 前項の要求は、当該運送業者の運送の施設、路線若しくは回数、運送機関の発着時刻その他運送の方法を変更するものであつてはならず、且つ、その運送に使用する当該車両又は船舶の容積又は床面積が第九条第三項、第十二条第二項又は前条第二項に定める限度をこえるものであつてはならない。

 (補償金)

第十五条 運送業者がこの節に規定するところに従い、郵政大臣の要求に基き、郵便物を運送し、又は施設若しくは役務を提供したときは、郵政大臣は、当該運送業者に対し、相当の補償金を支払わなければならない。

2 前項の補償金の額は、郵政大臣が運輸大臣に協議して定める。この場合において、郵便物の運送に対する補償金の額については、第五条第二項の規定により定める基準に基いて、土地建物等を使用に供した場合の補償金の額については当該施設を賃借するとすれば通常支払うべき賃借料を基準として、その他の場合の補償金の額については通常生ずべき損失の額を下らない額においてこれを定めなければならない。

3 郵政大臣は、前項の補償金の額を定めたときは、遅滞なく、その旨を当該運送業者に通知しなければならない。

4 第二項の補償金の額に不服のある者は、訴をもつて増額を請求することができる。但し、前項の通知を受けた日から一箇月を経過したときは、この限りでない。

第三章 運送等の業務の取扱

 (運送等の業務取扱の基準)

第十六条 郵便物の運送等を行う者は、郵便物の運送等を安全、正確且つ迅速に自ら行わなければならない。

 (郵便船車室等の使用制限)

第十七条 何人も、もつぱら郵便物の運送等に現に使用している車両、船舶若しくは馬匹又は車室若しくは船室に、郵便物、現に郵便物運送の用に供する物、郵便取扱員及び郵政大臣の発行する職務を行うための証明書を所持する者以外の者又は物をのせてはならない。但し、当該運送業者がその職員をして職務を行わせるためのせる場合は、この限りでない。

 (郵便物の非常取扱)

第十八条 郵便物の運送等を行う者は、災害等のため運送等の途中においてその運送等を停止したときは、次項の場合を除き、すみやかにこれを継続する手段を講じなければならない。

2 郵便物の運送等を行う者は、災害等のため運送等の途中においてその運送等を停止した場合において、運送等の継続ができず、且つ、郵便取扱員がいないときは、当該郵便物をすみやかにもよりの郵便局に送付しなければならない。但し、当該郵便物を送付することが困難である場合その他正当な事由がある場合において、これを保護し、もよりの郵便局に通知した場合にあつては、この限りでない。

3 郵政大臣は、郵便物の運送等を行う者が前二項の規定による取扱をしたときは、これに要した費用を支払わなければならない。

 (郵便物の優先陸揚)

第十九条 船舶に積載した郵便物をその目的地において陸揚をする場合には、他の貨物に先だつてこれをしなければならない。災害等のため航行の途中において積替又は陸揚をする場合も同様である。

 (発着日時の変更)

第二十条 郵便物の運送等を行う者は、郵便物の運送等に使用する運送機関であつてその発着日時を定めたものの日時を変更するときは、少くともその七日前までにその旨を郵政省に通知しなければならない。

2 郵便物の運送等を行う者が、災害その他やむを得ない事由により、臨時に前項の発着日時を変更するときは、直ちにその旨を郵政省に通知しなければならない。

第四章 罰則

 (郵便物を運送しない等の罪)

第二十一条 第九条第一項、第十二条第一項、第十三条第一項又は第十四条第一項の規定に違反してことさらに郵便物の運送をしない者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

 (郵便車の臨時連結をしない等の罪)

第二十二条 第九条第二項若しくは第四項、第十条、第十一条、第十七条又は第十八条第一項若しくは第二項の規定に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。

 (優先陸揚をしない等の罪)

第二十三条 第十九条又は第二十条の規定に違反した者は、科料に処する。

 (両罰規定)

第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑又は科料刑を科する。

附 則

1 この法律は、公布の日から起算して三十日を経過した日から施行する。

2 鉄道船舶郵便法(明治三十三年法律第五十六号)は、廃止する。但し、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

3 郵便法(昭和二十二年法律第百六十五号)の一部を次のように改正する。

  第十条を次のように改める。

 第十条 削除

4 運輸省設置法の一部を次のように改正する。

  第六条第一項第三号の次に次の一号を加える。

  三の二 郵便物運送委託法(昭和二十四年法律第二百八十四号)第五条第二項の規定による郵便物の運送料金の基準の設定

5 この法律施行の際郵便物の運送等を行つている者と郵政大臣との間に現に存する郵便物の運送等に関する契約は、この法律施行のときにおいて、この法律の規定に基き郵便物の運送等を行つている者と郵政大臣との間に締結された契約とみなす。但し、その契約は、この法律施行の日から六箇月をこえて存続することができない。

(運輸・郵政・内閣総理大臣署名) 

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