法律第百九十三号(昭二六・六・四)
◎公営住宅法
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 公営住宅の建設(第五条―第十一条)
第三章 公営住宅の管理(第十二条―第二十三条)
第四章 補則(第二十四条―第三十条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を建設し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。
(用語の定義)
第二条 この法律において、左の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 地方公共団体 市町村及び都道府県をいう。
二 公営住宅 この法律により、地方公共団体が国の補助を受けて建設し、その住民に賃貸する住宅及びその附帯施設をいう。
三 第一種公営住宅 政令で定める基準の収入のある者に対して賃貸する、政令で定める規格の公営住宅をいう。
四 第二種公営住宅 第一種公営住宅の家賃を支払うことができない程度の低額所得者又は災害に因り住宅を失つた低額所得者に対して賃貸する、政令で定める規格の公営住宅をいう。
五 公営住宅の建設 公営住宅を建設するために必要な土地を取得し、又はその土地を宅地に造成することを含むものとする。
六 公営住宅の供給 公営住宅の建設及び管理をすることをいう。
七 共同施設 児童遊園、共同浴場、集会所その他公営住宅の入居者の共同の福祉のために必要な施設で政令で定めるものをいう。
八 共同施設の建設 共同施設を建設するために必要な土地を取得し、又はその土地を宅地に造成することを含むものとする。
九 事業主体 公営住宅の供給を行う地方公共団体をいう。
(公営住宅の供給)
第三条 地方公共団体は、常にその区域内の住宅事情に留意し、低額所得者の住宅不足を緩和するため必要があると認めるときは、公営住宅の供給を行わなければならない。
(国及び都道府県の援助)
第四条 国は、必要があると認めるときは、地方公共団体に対して、公営住宅の供給に関し、財政上、金融上及び技術上の援助を与えなければならない。
2 都道府県は、必要があると認めるときは、市町村に対して、公営住宅の供給に関し、財政上及び技術上の援助を与えなければならない。
第二章 公営住宅の建設
(建設基準)
第五条 公営住宅の建設は、建設大臣の定める建設基準に従い、行わなければならない。
2 事業主体は、一団の土地に五十戸以上集団的に公営住宅の建設をするときは、これにあわせて共同施設の建設を、建設大臣の定める建設基準に従い、するように努めなければならない。
(公営住宅建設三箇年計画)
第六条 都道府県知事は、市町村長と協議の上、建設省令で定めるところにより、昭和二十七年度以降の毎三箇年を各一期として、当該期間中の公営住宅の建設及び共同施設の建設に関する計画(以下「公営住宅建設三箇年計画」という。)の資料を作成し、計画初年度の前年の五月三十一日までに、建設大臣に提出しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定により提出された公営住宅建設三箇年計画の資料に基いて、建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)第十条に規定する住宅対策審議会の意見を聞き、公営住宅建設三箇年計画案を作成して閣議の決定を求めなければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の規定により閣議の決定を経た公営住宅建設三箇年計画の大綱を国会に提出して、その承認を求めなければならない。
4 建設大臣は、前項の規定による国会の承認があつたときは、遅滞なく、都道府県の区域ごとの公営住宅建設三箇年計画を定め、これを当該都道府県知事に通知しなければならない。
5 都道府県知事は、前項の規定による通知があつたときは、関係市町村長と協議の上、建設大臣の承認を得て、遅滞なく、市町村の区域ごとの公営住宅建設三箇年計画を定め、これを当該市町村長に通知しなければならない。
6 内閣は、昭和二十七年度以降毎年度、国の財政の許す範囲内において、第三項の規定により国会の承認のあつた公営住宅建設三箇年計画を実施するために必要な経費を予算に計上しなければならない。
(国の補助)
第七条 国は、事業主体が公営住宅建設三箇年計画に基いて公営住宅の建設をする場合においては、予算の範囲内において、当該事業主体に対して、第一種公営住宅の建設についてはその費用の二分の一、第二種公営住宅の建設についてはその費用の三分の二を補助しなければならない。
2 国は、事業主体が公営住宅建設三箇年計画に基いて共同施設の建設をする場合においては、予算の範囲内において、当該事業主体に対して、その費用の二分の一以内を補助することができる。
3 前二項の規定による国の補助金額の算定については、同項に規定する公営住宅の建設又は共同施設の建設に要する費用が建設大臣の定める標準建設費をこえるときは、標準建設費をその費用とみなす。
4 国は、第一項又は第二項の場合においては、公営住宅建設三箇年計画により公営住宅又は共同施設を建設するために必要な土地の取得又は宅地の造成に要する費用については、次年度以降に建設すべき公営住宅又は共同施設に係るものについても、補助することができる。
(災害の場合の国の補助の特例)
第八条 国は、左の各号の一に該当する場合において、事業主体が災害に因り滅失した住宅に居住していた低額所得者に賃貸するため第二種公営住宅の建設をするときは、その費用の三分の二を補助しなければならない。但し、災害に因り滅失した住宅の戸数の三割に相当する戸数をこえる分については、この限りでない。
一 地震、暴風雨、こう水、高潮その他の異常な天然現象に因り住宅が滅失した場合で、その減失した戸数が被災地全域で五百戸以上又は一市町村の区域内の住宅戸数の一割以上であるとき。
二 火災に因り住宅が滅失した場合で、その滅失した戸数が被災地全域で二百戸以上又は一市町村の区域内の住宅戸数の一割以上であるとき。
2 国は、災害(地震に因る火災以外の火災を除く。)に因り公営住宅又は共同施設が滅失し、又は著しく損傷した場合において、事業主体が公営住宅の建設、共同施設の建設又はこれらの補修をするときは、第七条第一項及び第二項の規定による補助率の区分に従い、当該公営住宅の建設、当該共同施設の建設又はこれらの補修(以下「災害に基く補修」という。)に要する費用を補助することができる。
3 第七条第三項の規定は、前二項の場合に準用する。
(国の補助の申請及び交付の手続)
第九条 事業主体は、前二条の規定により国の補助を受けようとするときは、建設省令で定めるところにより、事業計画書及び工事設計要領書を添えて、国の補助金の交付申請書を建設大臣に提出しなければならない。
2 建設大臣は、前項の規定による提出書類を審査し、適当と認めるときは、国の補助金の交付を決定し、これを当該事業主体に通知しなければならない。
(都道府県の補助)
第十条 都道府県は、公営住宅の建設、共同施設の建設又は災害に基く補修をする事業主体が市町村であるときは、当該事業主体に対して補助金を交付することができる。
(国の貸付金)
第十一条 国は、事業主体に対して、当該事業主体の財政事情及び第十二条に規定する公営住宅の建設に要する費用の償却の条件を参しやくして、通常の条件より事業主体に有利な条件で、公営住宅の建設、共同施設の建設又は災害に基く補修に必要な資金を貸し付けることができる。
第三章 公営住宅の管理
(家賃の決定)
第十二条 公営住宅の家賃は、政令で定めるところにより、当該公営住宅の建設に要する費用(当該費用のうち国又は都道府県の補助に係る部分を除く。)を期間二十年以上、利率年六分以下で毎年元利均等に償却するものとして算出した額に修繕費、管理事務費及び損害保険料を加えたものの月割額を限度として、事業主体が定める。
2 前項の場合において公営住宅の敷地が借地であるときは、当該公営住宅の家賃は、同項の月割額に地代の月割額を加えた額を限度として定めるものとする。
3 事業主体は、前二項の規定にかかわらず、特別の事情がある場合において家賃の減免を必要とすると認める者に対して、家賃を減免することができる。
4 前各項に規定する家賃に関する事項は、条例で定めなければならない。
(家賃及び敷金の変更等)
第十三条 事業主体は、左の各号の一に該当する場合においては、建設大臣の承認を得て、条例で、前条の規定による家賃(敷金を徴収している場合においては、敷金を含む。以下この条において同様とする。)を変更し、又は前条第一項から第三項までの規定にかかわらず家賃を別に定めることができる。
一 物価の変動に伴い家賃を変更する必要があると認めるとき。
二 公営住宅相互の間における家賃の均衡上必要があると認めるとき。
2 前項の規定により、市町村が建設大臣の承認を求めるときは、都道府県知事を経由してしなければならない。
(家賃以外の金品徴収の禁止)
第十四条 事業主体は、公営住宅の入居者から、住宅の使用に関し、家賃を除く外権利金その他の金品を徴収することができない。但し、三月分の家賃に相当する金額の範囲内において敷金を徴収することは、この限りでない。
(修繕の義務)
第十五条 事業主体は、公営住宅の家屋の壁、柱、床、はり、屋根及び階段を修繕する義務を免かれることができない。但し、入居者の責に帰すべき事由に因つて修繕する必要が生じたときは、この限りでない。
(入居者の募集方法)
第十六条 事業主体は、災害、不良住宅の撤去その他政令で定める特別の事由がある場合において特定の者を収容するため公営住宅の建設をする場合を除く外、公営住宅の入居者を公募しなければならない。
2 前項の規定による入居者の公募は、新聞、ラジオ、掲示等区域内の住民が周知できるような方法で行わなければならない。
(入居者資格)
第十七条 公営住宅の入居者は、少なくとも左の各号の条件を具備する者でなければならない。
一 現に同居し、又は同居しようとする親族(婚姻の届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者その他の婚姻の予約者を含む。)があること。
二 毎月政令で定める基準の収入のある者であること。但し、第八条第一項又は第二項の規定により国の補助を受けて建設する公営住宅については、なお、当該災害に因り住宅を失つた者であること。
三 現に住宅に困窮していることが明らかな者であること。
(入居者の選考)
第十八条 事業主体の長は、入居の申込をした者の数が入居させるべき公営住宅の戸数をこえる場合においては、住宅に困窮する実情を調査して、政令で定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、当該公営住宅の入居者を決定しなければならない。
(家賃等の報告)
第十九条 事業主体の長は、家賃、敷金又は前条の規定による入居者の選考方法を定め、又は変更したときは、一月以内に、建設大臣に報告しなければならない。
2 前項の規定により、市町村長が建設大臣に報告するときは、都道府県知事を経由してしなければならない。
(家賃又は選考方法の変更命令)
第二十条 建設大臣は、公営住宅の家賃又は入居者の選考方法が著しく適正を欠くと認めるときは、理由を示して、当該事業主体に対してその変更を命ずることができる。
(入居者の保管義務)
第二十一条 公営住宅の入居者は、当該公営住宅又は共同施設について必要な注意を払い、これらを正常な状態において維持しなければならない。
2 公営住宅の入居者は、当該公営住宅を他の者に貸し、又はその入居の権利を他の者に譲渡してはならない。但し、事業主体の長の承認を得たときは、当該公営住宅の一部を他の者に貸すことができる。
3 公営住宅の入居者は、当該公営住宅の用途を変更してはならない。但し、事業主体の長の承認を得たときは、他の用途に併用することができる。
4 公営住宅の入居者は、当該公営住宅を模様替し、又は増築してはならない。但し、事業主体の長の承認を得たときは、この限りでない。
(公営住宅の明渡)
第二十二条 事業主体の長は、公営住宅の入居者が左の各号の一に該当する場合においては、当該入居者に対して、その公営住宅の明渡を請求することができる。
一 不正の行為によつて入居したとき。
二 家賃を三月以上滞納したとき。
三 公営住宅又は共同施設を故意にき損したとき。
四 前条の規定に違反したとき。
五 第二十五条第一項の規定に基く条例に違反したとき。
2 公営住宅の入居者は、前項の請求を受けたときは、すみやかに当該公営住宅を明け渡さなければならない。
(公営住宅監理員)
第二十三条 事業主体は、公営住宅及び共同施設の管理に関する事務をつかさどり、公営住宅及びその環境を良好な状態に維持するよう入居者に必要な指導を与えるために公営住宅監理員を置かなければならない。
2 公営住宅監理員は、事業主体の長がその職員のうちから命ずる。
第四章 補則
(公営住宅又は共同施設の処分)
第二十四条 事業主体は、政令で定めるところにより、公営住宅又は共同施設がその耐用年限の四分の一を経過したときは、建設大臣の承認を得て、当該公営住宅又は共同施設をその入居者又は入居者の組織する団体に譲渡することができる。
2 前項の規定による譲渡の対価は、政令で定めるところにより、公営住宅の建設又は共同施設の建設の費用に充てなければならない。
3 事業主体は、公営住宅又は共同施設が災害に因り著しく損傷した場合において、これを補修することが不適当であると認めるときは、建設大臣の承認を得て、その用途を廃止することができる。
4 第一項又は前項の規定により、市町村が建設大臣の承認を求めるときは、都道府県知事を経由してしなければならない。
(管理に関する条例の制定)
第二十五条 事業主体は、この法律で定めるものの外、公営住宅及び共同施設の管理について必要な事項を条例で定めなければならない。
2 事業主体の長は、前項の条例が制定され、又は改廃されたときは、一月以内に、建設大臣に報告しなければならない。
3 前項の規定により、市町村長が建設大臣に報告するときは、都道府県知事を経由してしなければならない。
(建設大臣及び都道府県知事の指導監督)
第二十六条 建設大臣及び都道府県知事は、公営住宅の建設、共同施設の建設並びにこれらの管理及び災害に基く補修に関し、事業主体に対して、必要な指示を行い、報告書の提出を命じ、又は当該職員を指定して、関係の物件又は書類を実地検査させることができる。
2 前項の実地検査において、現に居住の用に供している公営住宅に立入るときは、あらかじめ、当該公営住宅の入居者の承諾を得なければならない。
3 第一項の規定により実地検査に当る職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを呈示しなければならない。
(指導監督費の交付)
第二十七条 国は、政令で定めるところにより、前条第一項の規定により都道府県知事が行う指導監督に要する費用を都道府県に交付しなければならない。
(補助金の返還等)
第二十八条 建設大臣は、事業主体が公営住宅の建設、共同施設の建設又はこれらの管理若しくは災害に基く補修について、この法律又はこの法律に基く命令に違反する事実があつたときは、当該事業主体に対して、国の補助金の全部若しくは一部を交付せず、その交付を停止し、又は交付した国の補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。
(全部事務組合に対するこの法律の適用)
第二十九条 この法律又はこの法律に基く命令の規定の適用については、全部事務組合は市町村と、全部事務組合の管理者は市町村長とみなす。
(協議)
第三十条 建設大臣は、第二種公営住宅(第八条の規定によるものを除く。)について、左の各号に掲げる事項に関する処分をする場合においては、あらかじめ、厚生大臣と協議しなければならない。
一 第六条第二項の規定による公営住宅建設三箇年計画案の作成、同条第四項の規定による都道府県の区域ごとの公営住宅建設三箇年計画の決定及び同条第五項の規定による承認
二 第九条第二項の規定による国の補助金の交付の決定
三 第十三条第一項の規定による承認
四 第二十条の規定による家賃又は入居者の選考方法の変更命令
五 第二十四条第一項の規定による譲渡の承認又は同条第三項の規定による用途廃止の承認
附 則
1 この法律は、昭和二十六年七月一日から施行する。
2 昭和二十七年度を初年度とする公営住宅建設三箇年計画の資料の提出については、第六条第一項中「五月三十一日」とあるのは、「七月三十一日」と読み替えるものとする。
3 この法律施行の時において、現に地方公共団体がその住民に賃貸するため管理している住宅でその建設について国の補助を受けたもの及び地方公共団体がその住民に賃貸するため昭和二十六年度において国の補助を受けて建設して管理する住宅は、左の各号に掲げるところにより、第一種公営住宅又は第二種公営住宅とみなして、この法律の規定(第六条及び第七条を除く。)を適用する。
一 建設についてその費用の二分の一以内の国の補助を受けた住宅(特に低廉な家賃で低額所得者に賃貸するための第二条第四号の規定による政令で定める規格に該当する住宅を除く。)は、第一種公営住宅
二 前号に該当する住宅以外の住宅は、第二種公営住宅
4 前項の規定に基く第十二条の規定の適用については、この法律施行の時において地方公共団体がその住民に賃貸するため管理している住宅について既に決定している家賃は、同条第一項及び第二項の規定により事業主体が定めたものとみなす。
5 海外からの引揚者に対する応急援護のため設置した住宅及びこの法律施行の後同様の目的のため設置する住宅については、当分の間、この法律の規定を適用しない。
6 建設省設置法の一部を次のように改正する。
第三条第二十三号の二の次に次の一号を加える。
二十三の三 公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)の施行に関する事務を管理すること。
(内閣総理・大蔵・厚生大臣臨時代理国務・建設大臣署名)