法律第十九号(昭二七・三・二九)
◎住宅緊急措置令等の廃止に関する法律
(住宅緊急措置令及び住宅緊急措置損失補償委員会官制の廃止)
第一条 住宅緊急措置令(昭和二十年勅令第六百四十一号)及び住宅緊急措置損失補償委員会官制(昭和二十年勅令第六百九十六号)は、廃止する。
(使用権の存続)
第二条 住宅緊急措置令(以下「旧令」という。)第二条の規定に基いて使用権が設定された建物又は建物以外の工作物(附属物件及び土地を含む。以下「建物等」と総称する。)で、この法律施行の際、当該使用権が存続中であり、且つ、使用権の設定を受けた者(その承継人を含む。)が居住者を入居させているものについては、当該使用権は、同条第三項の規定によつて都道府県知事が定めた存続期間にかかわらず、昭和二十八年三月三十一日まで存続するものとする。但し、当該期日までに建物等の返還が第三条の規定により完了したときは、使用権は、返還の完了した日において消滅するものとする。
2 旧令第九条、第十条(第三項及び第五項を除く。)、第十一条、第十二条、第十四条及び第十五条の規定は、前項本文の場合については、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
3 前項の規定によりなお効力を有する旧令第十条第一項の規定による損失補償の金額は、都道府県知事が収用委員会の議決を経て定める。
(建物等の返還)
第三条 前条第一項の規定によつて存続することとなつた使用権を有する者(その承継人を含む。以下「起業者」という。)は、居住者を立ち退かせて、同項に規定する期日までの間においてなるべくすみやかに、当該建物等をその所有者に返還しなければならない。但し、当該建物等の所有者が居住者を立ち退かせないで返還することを承諾したときは、居住者を立ち退かせないで返還することを妨げない。
2 起業者は、居住者を立ち退かせようとする場合においては、当該居住者に対して、その旨を一月前に予告しなければならない。
(明渡命令)
第四条 都道府県知事は、起業者から居住者が前条の規定に基く立退の要求に応じない旨の申出があつたとき、又は起業者が、同条の規定にかかわらず、第二条第一項に規定する期日までに居住者を立ち退かせないときは、当該居住者に対して十日以上の期間を定めて建物等の明渡を命ずるものとする。
(建物等の原状回復)
第五条 起業者は、建物等を返還する場合においては、建物等の所有者の請求により、当該建物等を使用権の設定される前の用途に供するために支障がある部分を原状に復し、又は当該部分を原状に復するために必要な費用を補償しなければならない。
2 都道府県は、起業者に前項の原状回復又は補償を行わせることが適当でなく、且つ、建物等の所有者の申出により必要があると認められるときは、前項の規定にかかわらず、起業者(市町村である起業者を除く。)に代つて当該建物等を使用権の設定される前の用途に供するために支障がある部分を原状に復し、又は当該部分を原状に復するために必要な費用を補償しなければならない。
3 前二項の規定により当該建物等を原状に復するための工事の内容及び工事を完了すべき時期又は当該建物等を原状に復するために必要な費用として補償すべき金額及びその支払時期については、都道府県知事が収用委員会の議決を経て定める。
4 都道府県知事は、前項の規定による決定をしたときは、起業者及び建物等の所有者並びに当該建物等に関して所有権以外の権利を有する者(以下「関係者」という。)に通知しなければならない。但し、都道府県知事が過失がなくて関係者を確知することができないときは、その者に対しては通知することを要しない。
(公営住宅への優先入居)
第六条 公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)に基く公営住宅を設置している地方公共団体は、第三条の規定によつて起業者が居住者を立ち退かせようとする場合又は第四条の規定によつて都道府県知事が建物等の明渡を命ずる場合において、居住者に適当な立退先がないときは、当該公営住宅にその居住者を他の申込者に優先して入居させなければならない。但し、左の各号の一に該当する者については、この限りでない。
一 家賃を著しく滞納し、その他当該建物等の使用に関して著しく不誠実な行為のあつた者
二 公営住宅法第十七条に規定する入居資格を欠く者
2 前項の場合において、地方公共団体は、建物等の所在地を管轄する都道府県知事が公営住宅に入居させるべき者の数、入居させるべき公営住宅の種別その他居住者を公営住宅に入居させるため必要な事項について関係地方公共団体の意見を聞いて定めるところに従わなければならない。
(使用権の消滅した建物等への準用)
第七条 第三条(第二項を除く。)から前条までの規定は、旧令第二条の規定に基いて使用権が設定された建物等で、この法律施行の際、既に使用権の存続期間が満了して更新の手続がとられていないにかかわらず、当該使用権の設定を受けた者(その承継人を含む。以下「使用者」という。)が現に居住者を入居させているものについて準用する。この場合において、第三条第一項中「前条第一項の規定によつて存続することとなつた使用権を有する者(その承継人を含む。以下「起業者」という。)」とあり、又は第四条から第六条までの中「起業者」とあるのは「使用者」と、第三条第一項中「同項に規定する期日までの間においてなるべくすみやかに」とあり、又は第四条中「第二条第一項に規定する期日までに」とあるのは「すみやかに」と読み替えるものとする。
2 前項の規定は、建物等の所有者が使用権の存続期間が満了した後建物等が返還されるまでの間において生じた損害に対する賠償の請求を使用者に対してすることを妨げない。
(国の補助)
第八条 国は、第五条(前条第一項において準用する場合を含む。)の規定によつて建物等を原状に復し、又は原状に復するために必要な費用を補償するために要する費用については、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、その費用の一部を補助することができる。
(出訴期間の特例)
第九条 第五条第三項(第七条第一項において準用する場合を含む。)の規定による都道府県知事の決定に対して不服のある者は、当該決定の通知を受けた日から一月以内に裁判所に出訴することができる。
(旧令の効力に関する経過規定)
第十条 旧令第十三条ノ五の規定は、同令第十三条ノ三の規定による勧奨又は同令第十三条ノ四の規定による命令に基いてした賃貸借については、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
2 第六条の規定は、昭和二十八年三月三十一日以前に都道府県知事が前項の規定によりなお効力を有する旧令第十三条ノ五第二項の規定に基いて賃借人に立退を命ずる場合に準用する。
第十一条 旧令第十条第三項、第四項及び第六項並びに第十一条の規定は、この法律施行前に存続期間が満了し、又は取り消された使用権に係る同令第十条第一項の規定による損失補償の金額については、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
2 前項の規定による損失補償の金額でこの法律施行前に定められていないものについては、都道府県知事が収用委員会の議決を経て定める。
第十二条 旧令は、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。
(大蔵・厚生・建設・内閣総理大臣署名)