法律第四十一号(昭二七・三・三一)
◎外務公務員法
目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 職階制(第五条・第六条)
第三章 任免(第七条―第十二条)
第四章 給与(第十三条)
第五章 能率(第十四条―第十六条)
第六章 保障(第十七条―第二十二条)
第七章 服務(第二十三条)
第八章 名誉総領事及び名誉領事並びに外国人の任用(第二十四条・第二十五条)
第九章 雑則(第二十六条―第二十八条)
附則
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、外務公務員の職務と責任の特殊性に基き、外務公務員の職階制、任免、給与、能率、保障、服務等に関し国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の特例その他必要な事項を定め、あわせて名誉総領事及び名誉領事並びに外務省に勤務する外国人の任用について規定することを目的とする。
(外務公務員の定義)
第二条 この法律において「外務公務員」とは、左に掲げる者をいう。
一 特命全権大使(以下「大使」という。)
二 特命全権公使(以下「公使」という。)
三 政府代表
四 全権委員
五 政府代表又は全権委員の代理、顧問及び随員
六 外務職員
2 この法律において「政府代表」とは、日本国政府を代表して、特定の目的をもつて外国政府と交渉し、又は国際会議若しくは国際機関に参加し、若しくはこれにおいて行動する権限を付与された者をいう。
3 この法律において「全権委員」とは、日本国政府を代表して、特定の目的をもつて外国政府と交渉し、又は国際会議に参加し、且つ、条約に署名調印する権限を付与された者をいう。
4 この法律において「外務職員」とは、外務省本省に勤務する一般職の国家公務員のうち外交領事事務(これと直接関連する業務を含む。)及びその一般的補助業務に従事する者で外務省令で定めるもの並びに在外公館に勤務するすべての一般職の国家公務員をいう。
(外務職員に対する国家公務員法等の適用)
第三条 国家公務員法並びにこれに基く法令の規定は、この法律にその特例を定める場合を除く外、外務職員に関して適用があるものとする。
(特別職の外務公務員に対する国家公務員法等の準用)
第四条 国家公務員法第九十六条第一項、第九十八条第一項、第九十九条並びに第百条第一項及び第二項の規定は、大使及び公使、政府代表及び全権委員並びに政府代表又は全権委員の代理、顧問及び随員に準用する。この場合において、国家公務員法第九十六条第一項、第九十八条第一項、第九十九条及び第百条第一項中「職員」とあるのは「大使若しくは公使、政府代表若しくは全権委員又は政府代表若しくは全権委員の代理、顧問若しくは随員」と、第百条第二項中「所轄庁の長(退職者については、その退職した官職又はこれに相当する官職の所轄庁の長)」とあるのは「外務大臣」と読み替えるものとする。
2 前項に定めるものを除く外、大使及び公使、政府代表及び全権委員並びに政府代表又は全権委員の代理、顧問及び随員の任免その他の身分上の事項及び服務に関する事項については、この法律の定めるところによる。
第二章 職階制
(外務職員の官職の格付)
第五条 国家公務員法第三十一条に規定する官職の格付は、同条及び国家公務員の職階制に関する法律(昭和二十五年法律第百八十号)第十二条の規定にかかわらず、外務職員については、外務大臣が行う。
2 外務職員の官職の格付に関し必要な事項は、政令で定める。
(外務職員の公の名称)
第六条 外務職員(外務事務次官を除く。)は、組織上の名称の外、公の便宜のために国際慣行に従い用いる公の名称として、参事官、一等書記官、二等書記官、三等書記官及び外交官補、総領事、領事、副領事及び領事官補並びに一等理事官、二等理事官、三等理事官、副理事官及び外務書記という名称を用いることができる。
2 外務大臣は、公の便宜のために国際慣行に従い特に必要と認める場合には、外務職員に対し、前項に掲げる公の名称以外の公の名称を用いさせることができる。
3 前二項に定めるものを除く外、公の名称に関し必要な事項は、外務省令で定める。
第三章 任免
(外務公務員の欠格事由)
第七条 国家公務員法第三十八条の規定に該当する場合の外、国籍を有しない者若しくは外国の国籍を有する者又はこれを配偶者とする者は、外務公務員となることができない。
2 外務公務員は、前項の規定により外務公務員となることができなくなつたときは、政令で定める場合を除く外、当然失職する。
(特別職の外務公務員の任免)
第八条 大使及び公使の任免は、外務大臣の申出により内閣が行い、天皇がこれを認証する。
2 政府代表及び全権委員並びにそれらの代理、顧問及び随員の任免は、外務大臣の申出により内閣が行う。
(信任状等の認証)
第九条 大使及び公使の信任状及び解任状、全権委任状並びに領事館の委任状は、天皇がこれを認証する。
(選考による外務職員の任命)
第十条 外務大臣は、もつぱら財務、商務、農務、労働等に関する外交領事事務又は特別の技術を必要とする外交領事事務に従事させるためその他特に必要がある場合には、外務省令で定めるところにより、選考によつて外務職員を任命することができる。
(外務職員の昇任)
第十一条 外務職員の昇任は、外務省令で定めるところにより、試験又は選考によつて行う。
(大使及び公使の待命)
第十二条 在外公館の長たる大使及び公使その他在外公館に勤務する大使及び公使は、その在外公館に勤務することを免ぜられたときは、新たに在外公館に勤務することを命ぜられるまで、又は臨時の用務を処理するために外国に派遣されるまでの間、待命となる。
2 待命の大使又は公使は、その待命の期間が一年を経過するときは、その職を免ぜられる。
3 待命の大使又は公使は、特別の必要がある場合には、臨時に外務省本省の事務に従事させることができる。
4 待命の大使又は公使には、前項の規定により臨時に外務省本省の事務に従事する場合を除く外、待命の期間中、俸給及び勤務地手当のそれぞれ百分の八十を支給するものとする。
5 前三項に規定する場合を除く外、待命の大使又は公使は、この法律の適用については、待命でない大使又は公使と異なることはない。
第四章 給与
(在外公館に勤務する外務公務員の給与)
第十三条 在外公館に勤務する外務公務員の給与は、在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律(昭和二十七年法律第九十三号)に基いて支給するものとする。
第五章 能率
(勤務成績の評定)
第十四条 外務職員の勤務成績の評定及びその記録に関し必要な事項は、外務省令で定める。
(研修)
第十五条 外務大臣は、外務省令で定めるところにより、外務職員に、外務省研修所又は外国を含むその他の場所で研修を受ける機会を与えなければならない。
(査察)
第十六条 外務大臣は、在外公館の事務が適正に行われているかどうかを査察させるため、外務公務員のうち適当と認める者を査察使として派遣することができる。
2 査察使は、査察の結果を遅滞なく外務大臣に文書で報告しなければならない。
3 外務大臣は、前項の報告を受けたときは、その報告に基き必要と認める措置を執らなければならない。
4 前三項に定めるものを除く外、査察に関し必要な事項は、外務省令で定める。
第六章 保障
(勤務条件に関する行政措置の要求)
第十七条 外務職員は、勤務条件に関し、外務大臣により適当な行政上の措置が行われることを要求しようとするときは、国家公務員法第八十六条の規定にかかわらず、外務人事審議会(以下「審議会」という。)に対して要求しなければならない。
2 国家公務員法第八十七条及び第八十八条の規定は、前項の要求に係る事案の審査及び判定並びにその結果執るべき措置に準用する。この場合において、国家公務員法第八十七条中「前条」とあるのは「外務公務員法第十七条第一項」と、「職員」とあるのは「外務職員」と、同条及び第八十八条中「人事院」とあるのは「外務人事審議会」と、第八十八条中「その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、その職員の所轄庁の長に対し、」とあるのは「外務大臣に対し、」と読み替えるものとする。
3 前二項に定めるものを除く外、勤務条件に関する行政措置の要求に関する審査の手続に関し必要な事項は、政令で定める。
第十八条 外務職員は、前条の規定による審議会の判定に対し不服があるときは、人事院に対し、再審査の請求をすることができる。
2 国家公務員法第八十七条及び第八十八条の規定は、前項の請求に係る事案の審査及び判定並びにその結果執るべき措置に準用する。この場合において、国家公務員法第八十七条中「前条」とあるのは「外務公務員法第十八条第一項」と、「要求」とあるのは「請求」と、「職員」とあるのは「外務職員」と、第八十八条中「その権限に属する事項については、自らこれを実行し、その他の事項については、その職員の所轄庁の長に対し、」とあるのは「外務大臣に対し、」と読み替えるものとする。
(懲戒処分に関する審査)
第十九条 外務職員が外交機密の漏えいによつて国家の重大な利益をき損したという理由で懲戒処分を受けた場合におけるその処分に関する審査の請求は、国家公務員法第九十条の規定にかかわらず、外務大臣に対してしなければならない。
第二十条 外務大臣は、前条に規定する請求を受理したときは、直ちにその事案を審議会の調査に付さなければならない。
2 審議会は、前項の規定に基いて事案を調査する場合において、処分を受けた外務職員の請求があつたときは、口頭審理を行わなければならない。
3 口頭審理は、非公開とする。
4 処分を受けた外務職員は、すべての口頭審理に出席し、陳述を行い、証人を出席させ、並びに書類、記録その他のあらゆる適切な事実及び資料を提出することができる。
第二十一条 外務大臣は、前条に規定する審議会の調査の結果に基いて事案を判定し、且つ、その判定に基いて当該処分を承認し、修正し、又は取り消さなければならない。この場合において、処分の修正又は取消をしたときは、その処分によつて当該外務職員が失つた給与の弁済をしなければならない。
第二十二条 前三条に定めるものを除く外、懲戒処分に関する審査の手続に関し必要な事項は、政令で定める。
第七章 服務
(休暇帰国)
第二十三条 外務大臣は、在外公館に勤務する外務公務員のうち一又は二以上の在外公館に引き続き勤務する期間(不健康地その他これに類する地域で外務大臣が指定するものにある在外公館にあつては、勤務する期間一月につき一月を加算した期間)が四年をこえる者に対し、二月以内の期間(勤務地と本邦との間を往復するに要する期間を除く。)で一回に限り、休暇のための帰国(以下「休暇帰国」という。)を許すことができる。
2 特別の事情がある場合には、休暇帰国の期間は、前項に定める期間に二月以内の期間を加えたものとすることができる。
3 第一項の休暇は、有給休暇とする。
4 前三項に定めるものを除く外、休暇帰国に関し必要な事項は、外務省令で定める。
第八章 名誉総領事及び名誉領事並びに外国人の任用
(名誉総領事及び名誉領事の任命)
第二十四条 外務大臣は、審議会の意見を聞いて、名誉総領事又は名誉領事を任命することができる。
(外国人の採用)
第二十五条 外務大臣は、審議会の意見を聞いて、外務省本省に勤務する外国人を採用することができる。
2 在外公館の長は、外務大臣の許可を得て、当該在外公館に勤務する外国人を採用することができる。
第九章 雑則
(政令及び外務省令)
第二十六条 外務大臣は、第十七条第三項及び第二十二条の規定に基く政令案の立案並びに第十条、第十一条、第十四条、第十五条、第十六条第四項及び第二十三条第四項の規定による外務省令の制定又は改廃を行うときは、あらかじめ審議会の議に付し、その意見に基いてこれをしなければならない。
(罰則)
第二十七条 第四条において準用する国家公務員法第百条第一項又は第二項の規定に違反して秘密を漏らした者及びこれらの項の規定に違反する行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はそのほう助をした者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する
(国外犯罪)
第二十八条 国家公務員法中外務職員に関して適用される罰則の規定及び前条の規定は、国外において当該各条に掲げるいずれかの罪を犯した者にも適用する。
附 則
1 この法律は、日本国との平和条約の最初の効力発生の日(昭和二十七年四月一日までに同条約が効力を発生しないときは、同日)から施行する。但し、第二十六条及び附則第五項の規定は、公布の日から施行する。
2 第十九条から第二十二条までの規定は、外務省本省に勤務する一般職の国家公務員で外務公務員でないものに準用する。この場合において、第十九条、第二十条第二項及び第四項並びに第二十一条後段中「外務職員」とあるのは、「外務省本省に勤務する一般職の国家公務員で外務公務員でないもの」と読み替えるものとする。
3 国家公務員法の一部を次のように改正する。
第二条第三項第十一号を次のように改める。
十一 大使及び公使、政府代表及び全権委員並びに政府代表又は全権委員の代理、顧問及び随員
4 国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の一部を次のように改正する。
第二十条の次に次の一条を加える。
(在外公館に勤務する職員等の特例)
第二十条の二 在外公館に勤務する職員又は公務で外国旅行中の職員に係る補償につき特例を設ける必要のあるものについては、人事院規則で特例を定めることができる。但し、その特例は、本章の規定の趣旨に適合するものでなければならない。
5 外務省設置法(昭和二十六年法律第二百八十三号)の一部を次のように改正する。
第十四条中
「 |
外務省研修所 |
」 |
を
「 |
外務人事審議会 |
」 |
外務省研修所 |
に改める。
第十四条の次に次の一条を加える。
(外務人事審議会)
第十四条の二 外務人事審議会(以下「審議会」という。)は、外務公務員法(昭和二十七年法律第四十一号)及び他の法令に基いてその権限に属させられた事項をつかさどる。
2 審議会は、前項の規定によるの外、外務公務員の給与その他勤務条件に関し必要な資料を適時外務大臣に提出し、及び外務大臣の諮問に応じてその意見を答申することができる。
3 審議会は、委員五人で組織する。
4 委員は、外務公務員である者のうちから一人、人事院職員である者のうちから一人及び学識経験のある者のうちから三人を、外務大臣が任命する。
5 前各項に規定するものを除く外、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
第二十六条中「国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)」を「外務公務員法及び国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)」に改める。
(内閣総理大臣・法務総裁・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・電気通信・労働・建設大臣・経済安定本部総裁署名)