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法律第二百二十九号(昭二七・七・一五)

  ◎農地法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 農地及び採草放牧地

  第一節 権利移動及び転用の制限

      (第三条―第五条)

  第二節 小作地等の所有の制限(第六条―第十七条)

  第三節 利用関係の調整(第十八条―第三十二条)

  第四節 競売及び公売の特例(第三十三条―第三十五条)

  第五節 国からの売渡(第三十六条―第四十三条)

 第三章 未墾地等の買収及び売渡

  第一節 買収(第四十四条―第六十条)

  第二節 売渡(第六十一条―第七十五条)

 第四章 雑則(第七十六条―第九十一条)

 第五章 罰則(第九十二条―第九十四条)

 附則

   第一章 総則

 (この法律の目的)

第一条 この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、その権利を保護し、その他土地の農業上の利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。

2 この法律で「自作地」とは、耕作の事業を行う者が所有権に基いてその事業に供している農地をいい、「小作地」とは、耕作の事業を行う者が所有権以外の権原に基いてその事業に供している農地をいう。

3 この法律で、「自作採草放牧地」とは、耕作又は養畜の事業を行う者が所有権に基いてその事業に供している採草放牧地をいい、「小作採草放牧地」とは、耕作又は養畜の事業を行う者が所有権以外の権原に基いてその事業に供している採草放牧地をいう。

4 この法律で「自作農」とは、農地又は採草放牧地につき所有権に基いて耕作又は養畜の事業を行う個人をいい、「小作農」とは、農地又は採草放牧地につき所有権以外の権原に基いて耕作又は養畜の事業を行う個人をいう。

5 前三項の規定の適用については、耕作又は養畜の事業を行う者の世帯員が農地又は採草放牧地について有する所有権その他の権利は、その耕作又は養畜の事業を行う者が有するものとみなす。

6 この法律で「世帯員」とは、住居及び生計を一にする親族をいう。この場合において、世帯員のいずれかについて生じた左に掲げる事由により世帯員が一時住居又は生計を異にしても、これらの者は、なお住居又は生計を一にするものとみなす。

 一 疾病又は負傷による療養

 二 就学

 三 公選による公職への就任

 四 その他省令で定める事由

7 この法律で「小作料」とは、耕作の目的で農地につき地上権又は賃借権が設定されている場合の地代又は借賃(その地上権又は賃借権の設定に附随して、農地以外の土地についての地上権若しくは賃借権又は建物その他の工作物についての賃借権が設定され、その地代又は借賃と農地の地代又は借賃とを分けることができない場合には、その農地以外の土地又は工作物の地代又は借賃を含む。)及び農地につき永小作権が設定されている場合の小作料をいう。

   第二章 農地及び採草牧牧地

    第一節 権利移動及び転用の制限

 (農地又は採草放牧地の権利移動の制限)

第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、省令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(使用貸借による権利若しくは賃借権については、市町村農業委員会の許可)を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当する場合及び第五条第一項本文に規定する場合は、この限りでない。

 一 第三十六条、第六十一条、第六十八条、第六十九条、第七十条又は第八十条の規定によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

 二 第二十六条から第三十一条までの規定によつて利用権が設定される場合

 三 これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合

 四 土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)による交換分合によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

 五 民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)による農事調停によつてこれらの権利が設定され、又は移転される場合

 六 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合

 七 遺産の分割によりこれらの権利が取得される場合

 八 その他省令で定める場合

2 前項の許可は、左の各号の一に該当する場合には、することができない。但し、第三号から第五号までに掲げる場合において、政令で定める相当の事由があるときは、この限りでない。

 一 小作地又は小作採草放牧地につきその小作農及びその世帯員以外の者が所有権を取得しようとする場合

 二 所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得しようとする者及びその世帯員がその農地又は採草放牧地について耕作又は養畜の事業を行わないと認められる場合

 三 前号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員が耕作の事業に供すべき農地の面積とこれらの者が所有する小作地の面積との合計が、その取得の結果、その取得しようとする権利に係る土地のある都道府県について別表で定める面積(都道府県知事が農林大臣の承認を受け、その都道府県の区域を二以上の区域に分けて各区域の面積をその平均がおおむね別表のその都道府県の面積と等しくなるように定め、これを公示したときは、その面積)をこえることとなる場合

 四 第二号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員が耕作又は養畜の事業に供すべき採草放牧地の面積とこれらの者が所有する小作採草放牧地の面積との合計が、その取得の結果、その取得しようとする権利に係る土地のある都道府県について別表で定める面積(都道府県知事が農林大臣の承認を受け、その都道府県の区域を二以上の区域に分けて各区域の面積をその平均がおおむね別表のその都道府県の面積と等しくなるように定め、これを公示したときは、その面積)をこえることとなる場合

 五 第二号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員が現に耕作の事業に供している農地の面積の合計及び現に耕作又は養畜の事業に供している採草放牧地の面積の合計が、いずれも、北海道では二町歩、都府県では三反歩(都道府県知事が農林大臣の承認を受け、その都道府県の区域の一部についてこれらの面積の範囲内で別段の面積を定め、これを公示したときは、その面積)に達しない場合

 六 旧自作農創設特別措置法(昭和二十一年法律第四十三号)第十六条第一項若しくは第二項(これらの規定を同法第二十九条第二項で準用する場合を含む。)、同法第二十八条第三項若しくは第五項(これらの規定を同法第二十九条第二項及び第四十一条第四項で準用する場合を含む。)若しくは同法第四十一条第一項の規定により国から売り渡された農地若しくは採草放牧地、旧自作農創設特別措置法及び農地調整法の適用を受けるべき土地の譲渡に関する政令(昭和二十五年政令第二百八十八号)第二条第一項の規定により譲渡された農地若しくは採草放牧地又は第三十六条若しくは第六十一条の規定により売り渡された農地若しくは採草放牧地につき地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利又は賃借権を設定しようとする場合(その土地の所有者又はその世帯員の死亡又は前条第六項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため、一時貸し付けようとする場合を除く。)

 七 小作地又は小作採草放牧地について耕作又は養畜の事業を行う者がその小作地又は小作採草放牧地を貸し付け、又は質入れしようとする場合(その土地の小作農又はその世帯員の死亡又は前条第六項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため、一時貸し付けようとする場合を除く。)

 八 第二号に掲げる権利を取得しようとする者又はその世帯員がその農地又は採草放牧地を耕作又は養畜の事業に供することにより農業生産が低下することが明らかである場合

3 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。

4 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

 (農地の転用の制限)

第四条 農地を農地以外のものにする者は、省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可(その者が同一の事業の目的に供するため五千坪をこえる農地を農地以外のものにする場合には、農林大臣の許可)を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。

 一 第七条第一項第三号に掲げる農地を農地以外のものにする場合

 二 次条第一項の許可に係る農地をその許可に係る目的に供する場合

 三 国又は都道府県が農地を農地以外のものにする場合

 四 土地収用法その他の法律によつて収用し、又は使用した農地をその収用又は使用に係る目的に供する場合

 五 その他省令で定める場合

2 都道府県知事が、前項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業委員会の意見を聞かなければならない。

3 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。

 (農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)

第五条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、省令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため五千坪をこえる農地について権利を取得する場合には、農林大臣の許可)を受けなければならない。但し、左の各号の一に該当する場合は、この限りでない。

 一 これらの権利を取得する者が国又は都道府県である場合

 二 土地収用法その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合

 三 その他省令で定める場合

2 第三条第三項及び第四項並びに前条第二項の規定は、前項の場合に準用する。

    第二節 小作地等の所有の制限

 (所有できない小作地及び小作採草放牧地)

第六条 国以外の者は、何人も左に掲げる小作地又は小作採草放牧地を所有してはならない。

 一 その所有者の住所のある市町村の区域(採草放牧地にあつては、これに隣接する市町村の区域を含む。以下この節で同様とする。)の外にある小作地又は小作採草放牧地

 二 その所有者の住所のある市町村の区域内にある小作地又は小作採草放牧地でその住所のある都道府県について別表で定める面積(都道府県知事か農林大臣の承認を受け、その都道府県の区域を二以上の区域に分けて各区域の面積をその平均がおおむね別表のその都道府県の面積と等しくなるように定め、これを公示したときは、その面積)をこえる面積のもの

2 前項の規定の適用については、小作地又は小作採草放牧地の所有者の世帯員が当該所有者の住所のある市町村の区域内で所有する小作地又は小作採草放牧地は、当該所有者が所有するものとみなす。

3 第一項の規定の適用については、小作地又は小作採草放牧地の所有者で第二条第六項に掲げる事由により、一時その住所がその所有する小作地又は小作採草放牧地のある市町村の区域内にないものは、その住所がその市町村の区域内にあるものとみなす。

4 第一項の規定の適用については、自作農又はその世帯員であつた者で第二条第六項に掲げる事由以外の事由によりその住所がその所有する農地のある市町村の区域内になくなり、その者の配偶者又はその者と住所及び生計を一にしていた二親等内の血族がその農地について引き続き耕作をしていて、且つ、その農地の所有者がその農地のある市町村の区域内に住所を有するに至る見込があると市町村農業委員会が認めたものは、その住所がその市町村の区域内にあるものとみなす。

5 第一項の規定の適用については、小作地以外の農地又は小作採草放牧地以外の採草放牧地でその所有者又はその世帯員でない者が平穏に、且つ、公然と耕作又は養畜の事業に供しているものは、小作地又は小作採草放牧地とみなす。

6 第一項の規定の適用については、次条第一項第五号及び第六号に掲げる小作地又は小作採草放牧地の面積は、その所有者の所有面積に算入しない。

 (所有制限の例外)

第七条 左の各号の一に該当する小作地又は小作採草放牧地は、前条第一項の規定にかかわらず、所有することができる。

 一 国又は地方公共団体が公用又は公共用に供している小作地又は小作採草放牧地

 二 試験研究又は農事指導の目的に供するものとして、省令で定める手続に従い、都道府県知事の指定を受けた小作地又は小作採草放牧地

 三 近く農地又は採草放牧地以外のものとすることを相当とするものとして、省令で定める手続に従い、都道府県知事の指定を受けた小作地又は小作採草放牧地

 四 自作農又はその世帯員の死亡又は第二条第六項に掲げる事由によつて自作地又は自作採草放牧地として耕作、採草又は家畜の放牧をすることができなくなつたため、小作地又は小作採草放牧地として貸し付けられている土地であつて、自作農であつた者又はその世帯員が耕作、採草又は家畜の放牧をすることができるようになれば直ちにこれをすると市町村農業委員会が認めたもの

 五 新開墾地、焼畑、切替畑等収穫の著しく不定な小作地で、省令で定める手続に従い、都道府県知事の指定を受けたもの

 六 第二十六条から第三十一条までの規定による利用権の設定により新たに小作採草放牧地となつた土地

 七 その他省令で定める小作地又は小作採草放牧地

2 前項第二号、第三号及び第五号の指定は、有効期間を限り、又はその他の条件をつけてすることができる。

 (公示及び通知)

第八条 市町村農業委員会は、前二条の規定により所有してはならない小作地又は小作採草放牧地があると認めたときは、左に掲げる事項を公示し、且つ、公示の日の翌日から起算して一箇月間、その事務所で、これらの事項を記載した書類を縦覧に供しなければならない。

 一 その小作地又は小作採草放牧地の所有者の氏名又は名称及び住所

 二 第六条第一項第一号の規定により所有してはならない場合には、その小作地又は小作採草放牧地の所在、地番、地目及び面積、同項第二号の規定により所有してはならない場合には、その者がその市町村の区域内で所有するすべての小作地又は小作採草放牧地(前条第一項第五号及び第六号に掲げるものを除く。)の所在、地番、地目及び面積並びに所有してはならない面積

 三 その他必要な事項

2 市町村農業委員会は、前項の規定による公示をしたときは、遅滞なく、その土地の所有者に同項に掲げる事項を通知しなければならない。この場合において、通知ができないときは、通知すべき事項を公示して通知に代えることができる。

 (買収)

第九条 前条第一項の規定により公示された小作地又は小作採草放牧地の所有者が、第六条第一項第一号に該当する旨の公示があつたときはその公示に係る小作地又は小作採草放牧地を、同項第二号に該当する旨の公示があつたときはその公示に係る小作地又は小作採草放牧地のうち所有してはならない面積に相当するものを、その公示の日から起算して一箇月以内に(その公示に係る小作地又は小作採草放牧地の所有者がその期間の満了前に市町村農業委員会に対しその期間の満了の日の翌日から起算して二箇月をこえない期間内で期日を定め、その期日までその期間を延長すべきことを書類で申し入れたときは、その期日までに)他の者に譲渡しないときは、国がこれを買収する。但し、本文に規定する期間内に第三条第一項の規定による許可の申請があり、その期間経過後もこれに対する処分がないときは、これに対し不許可の処分があるまでは、この限りでない。

2 国は、第六条第一項第二号に該当するものとして前項の規定により小作地又は小作採草放牧地を買収する場合において、その分筆を避けるため特に必要があるときは、一反歩をこえない範囲内で、所有してはならない面積をこえる面積のものを買収することができる。

3 前二項の規定による国の買収は、後三条に規定する手続に従つてするものとする。

 (市町村農業委員会の関係書類の進達)

第十条 市町村農業委員会は、前条の規定により国が小作地又は小作採草放牧地を買収すべき場合には、遅滞なく、買収すべき小作地又は小作採草放牧地を定め、左に掲げる事項を記載した書類を都道府県知事に進達しなければならない。

 一 その土地の所有者の氏名又は名称及び住所

 二 その土地の所在、地番、地目及び面積

 三 その土地の上に先取特権、質権又は抵当権がある場合には、その権利の種類並びにその権利を有する者の氏名又は名称及び住所

2 市町村農業委員会は、前項の書類を進達する場合において、買収すべき土地の上に先取特権、質権又は抵当権があるときは、その権利を有する者に対し、省令で定めるところにより、対価の供託の要否を二十日以内に都道府県知事に申し出るべき旨を通知しなければならない。

 (買収令書の交付及び縦覧)

第十一条 都道府県知事は、前条の規定により進達された書類に記載されたところに従い、遅滞なく(同条第二項の規定による通知をした場合には、同項の期間経過後遅滞なく)、左に掲げる事項を記載した買収令書を作成し、これをその土地の所有者に、その謄本をその市町村農業委員会に交付しなければならない。

 一 前条第一項に掲げる事項

 二 買収の期日

 三 対価

 四 対価の支払の方法(次条第二項の規定により対価を供託する場合には、その旨)

 五 その他必要な事項

2 都道府県知事は、前項の規定による買収令書の交付をすることができない場合には、その内容を公示して交付に代えることができる。

3 市町村農業委員会は、買収令書の謄本の交付を受けたときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その公示の日の翌日から起算して二十日間、その事務所でこれを縦覧に供しなければならない。

 (対価)

第十二条 前条第一項第三号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。

2 買収すべき土地の上に先取特権、質権又は抵当権がある場合には、その権利を有する者から第十条第二項の期間内に、その対価を供託しないでもよい旨の申出があつたときを除いて、国は、その対価を供託しなければならない。

3 国は、前項に規定する場合の外、左に掲げる場合にも対価を供託することができる。

 一 対価の支払を受けるべき者が受領を拒み、又は受領することができない場合

 二 対価の支払を受けるべき者を確知することができない場合

 三 差押又は仮差押により対価の支払の禁止を受けた場合

 (効果)

第十三条 国が買収令書に記載された買収の期日までに対価の支払又は供託をしたときは、その期日に、その土地の上にある先取特権、質権及び抵当権は、消滅し、その土地の所有権は、国が取得する。

2 前項の規定により消滅する先取特権、質権又は抵当権を有する者は、前条第二項若しくは第三項の規定により供託された対価に対してその権利を行うことができる。

3 国が買収令書に記載された買収の期日までに対価の支払又は供託をしないときは、その買収令書は、効力を失う。

4 第一項及び前項の規定の適用については、国が、会計法(昭和二十二年法律第三十五号)第二十一条第一項の規定により、対価の支払に必要な資金を日本銀行に交付して送金の手続をさせ、その旨をその土地の所有者に通知したときは、その通知が到達した時を国が対価の支払をした時とみなす。

 (附帯施設の買収)

第十四条 第九条の規定による買収をする場合において、市町村農業委員会がその買収される土地の農業上の利用のため特に必要があると認めるときは、国は、その買収される土地の所有者又はその世帯員の有する土地(農地及び採草放牧地を除く。)、立木、建物その他の工作物又は水の使用に関する権利をあわせて買収することができる。

2 第十条から前条までの規定は、前項の規定による買収をする場合に準用する。この場合において、第十条第一項中第二号は、「二 土地についてはその所在、地番、地目及び面積、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、水の使用に関する権利についてはその内容」と読み替えるものとする。

 (旧自作農創設特別措置法により売り渡した農地等の買収)

第十五条 第三条第二項第六号に規定する農地又は採草放牧地をその所有者及びその世帯員以外の者が耕作又は養畜の事業に供したときは、第三条第一項の規定による許可を受けて貸し付けられた場合を除き、国がこれを買収する。

2 第十条から前条までの規定は、前項の規定による買収をする場合に準用する。

 (申出による買収)

第十六条 農地又は採草放牧地の所有者は、市町村農業委員会に対し、その所有する農地又は採草放牧地を国が買収すべき旨を申し出ることができる。

2 第十条から第十四条までの規定は、前項の規定による申出があつた場合に準用する。

 (承継人に対する効力)

第十七条 第十条第二項(第十四条第二項、第十五条第二項又は前条第二項で準用する場合を含む。)の規定による通知及び第十一条(第十四条第二項、第十五条第二項又は前条第二項で準用する場合を含む。)の規定による買収令書の交付は、その通知又は交付を受けた者の承継人に対してもその効力を有する。

    第三節 利用関係の調整

 (農地又は採草放牧地の賃貸借の対抗力)

第十八条 農地又は採草放牧地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があつたときは、これをもつてその後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者に対抗することができる。

2 民法(明治二十九年法律第八十九号)第五百六十六条第一項及び第三項(用益的権利による制限がある場合の売主の担保責任)の規定は、登記をしてない賃貸借の目的である農地又は採草放牧地が売買の目的物である場合に準用する。

3 民法第五百三十三条(同時履行の抗弁権)の規定は、前項の場合に準用する。

 (農地又は採草放牧地の賃貸借の更新)

第十九条 農地又は採草放牧地の賃貸借について期間の定がある場合において、その当事者が、その期間の満了の一年前から六箇月前まで(賃貸人又はその世帯員の死亡又は第二条第六項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため、一時賃貸をしたことが明らかな場合は、その期間の満了の六箇月前から一箇月前まで)の間に、相手方に対して更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。

 (農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)

第二十条 農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は、省令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入をし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。但し、合意による解約が民事調停法による農事調停によつて行われる場合は、この限りでない。

2 前項の許可は、左に掲げる場合でなければしてはならない。

 一 賃借人が信義に反した行為をした場合

 二 その農地又は採草放牧地を農地又は採草放牧地以外のものにすることを相当とする場合

 三 賃借人の生計、賃借人の経営能力等を考慮し、賃貸人がその農地又は採草放牧地を耕作又は養畜の事業に供することを相当とする場合

 四 その他正当の事由がある場合

3 都道府県知事が、第一項の規定により許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業委員会の意見を聞かなければならない。

4 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。

5 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

6 前条又は民法第六百十七条(解約の申入)若しくは第六百十八条(解約権の留保)の規定と異なる小作条件でこれらの規定による場合に比して賃借人に不利なものは、定めないものとみなす。

7 農地又は採草放牧地の賃貸借につけた解除条件又は不確定期限は、つけないものとみなす。

 (小作料の最高額)

第二十一条 市町村農業委員会は、小作農の経営を安定させることを旨とし、省令で定める基準に基き、都道府県知事の認可を受けて、農地ごとに小作料の最高額を定めなければならない。

2 市町村農業委員会は、前項の額を定めたときは、これを公示しなければならない。

3 第一項の基準が変更されたときは、同項の規定により市町村農業委員会が定めた額は、変更後の基準の従前の基準に対する比率に応じて変更されたものとみなす。

 (小作料の定額金納)

第二十二条 小作料を定める契約では、その額は、前条第一項の規定により市町村農業委員会が定めた額をこえない範囲の定額の金銭で定めなければならない。

2 前項の規定に違反する契約については、前条第一項の規定により市町村農業委員会が定めた額を小作料の額と定めたものとみなす。

 (小作料の支払又は受領の制限)

第二十三条 小作料は、金銭以外のもので支払い、若しくは受領し、又は第二十一条第一項の規定により市町村農業委員会が定めた額をこえて支払い、若しくは受領してはならない。

2 どのような名目によるものであつても、前項の規定による制限を免かれる行為をしてはならない。

 (小作料の減額請求権)

第二十四条 小作料の額が、田にあつては、収穫された米の価額の二割五分、畑にあつては、収穫された主作物の価額の一割五分をこえるときは、小作農は、その農地の所有者又は賃貸人に対し、その割合に相当する額になるまで小作料の減額を請求することができる。

 (契約の文書化)

第二十五条 農地又は採草放牧地の賃貸借契約については、当事者は、書面によりその存続期間、小作料の額及び支払条件その他その契約並びにこれに附随する契約の内容を明らかにするとともに、その写を市町村農業委員会に提出しなければならない。

 (利用権設定に関する承認)

第二十六条 耕作の事業を行う者は、左に掲げる事項を目的とする土地又は立木についての使用収益の権利(以下「利用権」という。)を取得する必要があるときは、省令で定める手続に従い、市町村農業委員会の承認を受け、土地又は立木の所有者その他これらに関し権利を有する者に対し、利用権の設定に関する協議を求めることができる。

 一 自家用の薪炭とするための原木の採取

 二 自家用の燃料とするための枝、落葉等の採取

 三 自家用の肥料、飼料又は敷料とするための草又は落葉の採取

 四 耕作の事業に附随して飼育する家畜の放牧

2 前項第一号に掲げる事項を目的とする利用権の設定については、市町村農業委員会は、左に掲げる場合に限り、同項の承認をすることができる。

 一 耕作の事業を行う者が従来慣行又は契約により原木の採取をしていた土地について利用権を設定しようとする場合

 二 耕作の事業を行う者が従来慣行又は契約により原木の採取をしていた土地についてその採取をすることができなくなつた場合において、これに代るべき土地に利用権を設定しようとする場合

 三 他の耕作の事業を行う者が慣行又は契約により原木の採取をしている土地について利用権を設定しようとする場合

3 市町村農業委員会は、第一項の規定による承認の申請があつたときは、その申請に係る協議の相手方その他省令で定める者の意見を聞かなければならない。

4 市町村農業委員会は、第一項の承認をしたときは、遅滞なく、その旨をその承認に係る協議の相手方に通知するとともに、これを公示しなければならない。

5 第一項の規定は、国有林野法(昭和二十六年法律第二百四十六号)による国有林野には、適用しない。

 (裁定の申請)

第二十七条 前条第一項の協議がととのわず、又は協議をすることができないときは、同項の承認を受けた者は、その承認を受けた日から起算して二箇月以内に、省令で定める手続に従い、その利用権の設定に関し市町村農業委員会に裁定を申請することができる。

 (意見書の提出)

第二十八条 市町村農業委員会は、前条の規定による申請があつたときは、省令で定める事項を公示するとともに、その申請に係る利用権設定の相手方にこれを通知し、二週間を下らない期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならない。

2 市町村農業委員会は、前項の期間経過後二箇月以内に裁定をしなければならない。

 (裁定)

第二十九条 利用権を設定すべき旨の裁定においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

 一 利用権を設定すべき土地の所在、地番、地目及び面積又は立木の所在、樹種及び数量

 二 利用権の内容

 三 利用権の始期及び存続期間

 四 対価

 五 対価の支払の方法

2 前項の裁定は、同項第一号から第三号までの事項については、申請の範囲をこえてはならない。

第三十条 市町村農業委員会は、裁定をしたときは、遅滞なく、省令で定める手続に従い、その旨をその裁定の申請者及び第二十八条第一項の通知をした者に通知するとともに、これを公示しなければならない。第八十五条第一項第三号の規定による訴願に対する裁決によつて裁定の内容が変更されたときもまた同様とする。

2 利用権を設定すべき旨の裁定について前項の公示があつたときは、その裁定の定めるところにより、当事者間に協議がととのつたものとみなす。

3 民法第二百七十二条但書(永小作権の譲渡又は賃貸の禁止)及び第六百十二条(賃借権の譲渡又は転貸の禁止)の規定は、前項の場合には、適用しない。

 (市町村等の利用権設定)

第三十一条 第二十六条から前条までの規定は、市町村又は農業協同組合が耕作の事業を行う者のために第二十六条第一項に掲げる事項を目的とする土地又は立木の利用権を取得する必要があると認めた場合に準用する。

 (利用権の保護)

第三十二条 耕作の事業を行う者が第二十六条第一項に掲げる事項を行うことを目的とする有償の契約については、第十八条から第二十条まで及び第二十五条の規定を準用する。

    第四節 競売及び公売の特例

 (競売の特例)

第三十三条 民事訴訟法(明治二十三年法律第二十九号)又は競売法(明治三十一年法律第十五号)による競売手続の開始決定のあつた農地又は採草放牧地について、競売期日、再競売期日又は入札期日において許すべき競売価額の申出がないときは、その競売を申し立てた者は、省令で定める手続に従い、農林大臣に対し、国がその土地を買い取るべき旨を申し出ることができる。

2 農林大臣は、前項の申出があつたときは、左に掲げる場合を除いて、次の競売期日、再競売期日又は入札期日までに、裁判所に対し、その土地を第十二条第一項の政令で定めるところにより算出した額で買い取る旨を申し入れなければならない。

 一 最低競売価額又は最低入札価額が第十二条第一項の政令で定めるところにより算出した額をこえる場合

 二 国が競落人となれば、その土地の上にある留置権、先取特権、質権又は抵当権で担保される債権を弁済する必要がある場合

 三 売却条件が国に不利になるように変更されている場合

3 前項の申入があつたときは、国は、民事訴訟法又は競売法による最高価競買人又は最高価入札人となつたものとみなす。この場合の競買価額又は入札価額は、第十二条第一項の政令で定めるところにより算出した額とする。

 (公売の特例)

第三十四条 国税徴収法(明治三十年法律第二十一号)による滞納処分(その他の法令により同法の滞納処分の例による場合を含む。)により公売に付された農地又は採草放牧地について買受人がない場合に、滞納処分を行う行政庁が、省令で定める手続に従い、農林大臣に対し、国がその土地を第十二条第一項の政令で定めるところにより算出した額で買い取るべき旨の申出をしたときは、農林大臣は、前条第二項第二号及び第三号に掲げる場合を除いて、その行政庁に対し、その土地を買い取る旨を申し入れなければならない。

2 前項の申入があつたときは、国は、公売により買受人となつたものとみなす。

 (市町村農業委員会への通知)

第三十五条 農林大臣は、第三十三条又は前条の規定により国が農地又は採草放牧地を取得したときは、市町村農業委員会に対し、その旨を通知しなければならない。

    第五節 国からの売渡

 (農地、採草放牧地等の売渡の相手方)

第三十六条 国は、第九条第一項若しくは第二項若しくは第十五条第一項の規定により買収し、又は第十六条第一項の規定に基く申出により買収した農地及び採草放牧地、所管換又は所属替を受けて第七十八条第一項の規定により農林大臣が管理する農地及び採草放牧地のうち農林大臣が定めるもの並びに第三十三条又は第三十四条の規定により国が取得した農地及び採草放牧地を、この節に規定する手続に従い、左に掲げる者に売り渡す。但し、第八十条の規定により売り払い、又は所管換若しくは所属替をする場合は、この限りでない。

 一 その土地が小作地又は小作採草放牧地(次号に掲げるものを除く。)である場合には、その土地につき現に耕作又は養畜の事業を行つている者(耕作又は養畜の事業を行つていた者又はその世帯員が死亡又は第二条第六項に掲げる事由によつて耕作又は養畜の事業を行うことができなくなつたため、その土地を貸し付けている場合において、その貸主が耕作又は養畜の事業を行うことができるようになれば直ちにその事業を行うと市町村農業委員会が認めた場合にあつては、その貸主)で自作農として農業に精進する見込があるもの

 二 その土地が共同利用することが適当な採草放牧地である場合には、地方公共団体又は農業協同組合

 三 前二号以外の場合には、自作農として農業に精進する見込がある者で市町村農業委員会が適当と認めたもの

2 前項の規定により売り渡すべき農地又は採草放牧地について、その農業上の利用のため第十四条第一項の規定によりあわせて買収した土地、立木、建物その他の工作物又は水の使用に関する権利(以下「附帯施設」という。)があるときは、これをその農地又は採草放牧地の売渡を受ける者にあわせて売り渡す。

 (買受の申込)

第三十七条 前条第一項の農地又は採草放牧地を買い受けようとする者は、省令で定める買受申込書を市町村農業委員会に提出しなければならない。

 (市町村農業委員会の関係書類の進達)

第三十八条 市町村農業委員会は、第三十六条第一項各号の一に該当する者から前条の買受申込書の提出があつたときは、これに基き、左に掲げる事項を記載した書類を都道府県知事に進達しなければならない。

 一 売渡の相手方の氏名又は名称及び住所

 二 売り渡すべき農地又は採草放牧地の所在、地番、地目及び面積

 三 売り渡すべき附帯施設があるときは、土地については所在、地番、地目及び面積、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、水の使用に関する権利についてはその内容

 四 その他省令で定める事項

 (売渡通知書)

第三十九条 都道府県知事は、前条の規定により進達された書類に記載されたところに従い、左に掲げる事項を記載した売渡通知書を作成し、これを売渡の相手方に、その謄本をその市町村農業委員会に交付しなければならない。

 一 前条第一号から第三号までに掲げる事項

 二 売渡の期日

 三 対価

 四 対価の支払の方法

 五 その他必要な事項

2 前項第三号の対価は、第十二条第一項(第十四条第二項で準用する場合を含む。)の政令で定めるところにより算出した額とする。

3 第十一条第三項の規定は、第一項の場合に準用する。

 (効果)

第四十条 前条の規定による売渡通知書の交付があつたときは、その通知書に記載された売渡の期日に、その農地若しくは採草放牧地の所有権又は附帯施設である土地、立木若しくは工作物の所有権若しくは水の使用に関する権利は、その売渡の相手方に移転する。

 (対価の支払)

第四十一条 第三十六条の規定により売り渡した農地、採草放牧地及び附帯施設の対価の支払は、支払期間三十年(据置期間を含む。)以内、年利五分五厘の均等年賦支払の方法によるものとする。但し、その農地、採草放牧地又は附帯施設を買い受ける者の申出があつたときは、その対価の全部又は一部につき一時支払の方法にするものとする。

 (対価の徴収の委任)

第四十二条 国は、政令で定めるところにより、前条の対価の徴収を市町村にさせることができる。

2 市町村が避けられない災害によつて前項の規定による徴収金を失つたときは、国は、省令で定めるところにより、その責任を免除することができる。

 (督促、滞納処分等)

第四十三条 第三十六条の規定による売渡を受けた者がその指定された期日までにその対価を支払わなかつたときは、国は、督促状により、期限を指定してその支払を督促しなければならない。

2 前項の督促状で指定された期限までに対価の支払がないときは、その期限満了の日の翌日から対価の支払の日までの日数に応じ、滞納額百円につき一日四銭の割合を乗じて計算した金額を延滞金として徴収する。

3 第一項の対価及び前項の延滞金は、国税滞納処分の例により処分し、又は滞納者の居住地若しくは財産所在地の属する市町村に対してその処分を請求することができる。

4 国が前項の規定により市町村に対して処分を請求したときは、市町村は、市町村税の例によつてこれを処分する。この場合には、国は、徴収金額の百分の四をその市町村に交付しなければならない。

5 第四十一条の対価及び第二の延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

6 国税徴収法第四条ノ一(繰上徴収)、第四条ノ九(書類の送達)、第四条ノ十(公示送達)及び第九条第四項から第十項まで(延滞加算税額の徴収)の規定は、第四十一条の対価の徴収について準用する。この場合において、これらの規定中「延滞加算税額」とあるのは、「延滞金額」と読み替えるものとする。

   第三章 未墾地等の買収及び売渡

    第一節 買収

 (買収の対象)

第四十四条 国は、自作農を創設し、又は自作農の経営を安定させるため必要があるときは、第四十六条から第五十四条までの規定に従い、左に掲げるものを買収することができる。

 一 開発して農地とすることが適当な土地及びその土地について耕作の事業を行うべき自作農が採草放牧地、薪炭林、防風林、道路、水路、ため池、宅地等として利用する必要がある土地

 二 国が所有する前号に該当する土地に関する担保権以外の権利

 三 第一号に該当する土地附近の農地でこれらの土地とあわせて開発する必要があるもの

 四 第一号又は前号に該当する土地の上にある立木又は建物その他の工作物でこれらの土地の開発後の利用上必要なもの

 五 第一号又は第三号に該当する土地の開発後の利用上必要な水の使用に関する権利

2 前項第一号の規定により買収する土地は、傾斜、土性その他の条件が政令で定める基準に適合し、且つ、これを農業のために利用することが国土資源の利用に関する総合的な見地から適当であると認められるものでなければならない。

 (国に対する買収の申出)

第四十五条 市町村農業委員会又は農業協同組合は、都道府県知事に対し、前条第一項各号に掲げる土地、立木、工作物又は権利(以下「土地等」という。)を国が買収すべき旨を申し出ることができる。

 (買収すべき土地等の調査)

第四十六条 都道府県知事は、第四十四条第一項第一号に該当する土地で自作農の創設又はその経営の安定の目的に供することを相当とするものがあると認めるときは、省令で定めるところにより、その土地の傾斜、土性等の自然的条件及びその土地に係る同項第三号から第五号まで(国が所有する土地については同項第二号から第五号まで)に掲げる土地等を調査しなければならない。

 (都道府県開拓審議会への諮問)

第四十七条 都道府県知事は、前条の規定による調査をしたときは、その調査に係る土地等を国が買収することの適否について、都道府県開拓審議会の意見を聞かなければならない。

 (買収すべき土地等の選定及び意見書の提出等)

第四十八条 都道府県知事は、前条の規定にする諮問に対し、国が買収することが適当である旨の答申があつたときは、左に掲げる事項を定め、これを公示するとともに、市町村農業委員会に通知しなければならない。

 一 土地についてはその区域、土地以外のものについてはその種類及び所在

 二 土地の利用予定の概要

2 市町村農業委員会は、前項の規定による通知を受けたときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その公示の日の翌日から起算して十日間、その事務所で、その通知の内容を記載した書類を縦覧に供しなければならない。

3 市町村農業委員会は、前項の規定による公示をしたときは、遅滞なく、その土地等の所有者にその旨を通知しなければならない。この場合において、通知ができないときは、その旨を公示して通知に代えることができる。

4 第一項の土地等の所有者、市町村農業委員会その他その土地等の買収について意見がある者は、第二項の規定による公示の日の翌日から起算して三十日以内に都道府県知事に意見書を提出することができる。

5 都道府県知事は、前項の規定による意見書の提出があつたときは、その意見書の内容を都道府県開拓審議会に通知し、その土地等を国が買収することの適否について、同項の期間満了後、更に都道府県開拓審議会の意見を聞かなければならない。

6 都道府県知事は、前項の規定による諮問に対し、その土地等の全部又は一部について、これを国が買収することが不適当である旨の答申があつたときは、その答申に従い、第一項の規定による公示を取り消し、又はこれを変更しなければならない。

 (土地の形質の変更等の制限)

第四十九条 前条第一項の規定による公示があつたときは、その公示に係る土地の形質を変更し、又はその公示に係る立木若しくは工作物を収去し、若しくは損壊してはならない。但し、その公示の日から起算して三箇月を経過した場合及び省令で定める場合は、この限りでない。

 (買収令書の交付及び縦覧)

第五十条 都道府県知事は、第四十八条第四項の期間が満了したとき(その期間内に同項の規定による意見書の提出があつた場合には、同条第五項の規定による諮問に対し都道府県開拓審議会から国が買収することが適当である旨の答申があつたとき)は、その土地等につき左に掲げる事項を記載した買収令書を作成し、これをその土地等の所有者に、その謄本を市町村農業委員会に交付しなければならない。

 一 土地等の所有者の氏名又は名称及び住所

 二 土地についてはその所在、地番、地目及び面積、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、権利についてはその種類及び内容

 三 買収の期日

 四 対価

 五 対価の支払の方法(次条第二項の規定により対価を供託する場合には、その旨)

 六 その他必要な事項

2 都道府県知事は、前項の規定により買収令書を作成する場合において、買収すべき土地等の上に先取特権、質権又は抵当権があるときは、その権利を有する者に対し、省令で定めるところにより、対価の供託の要否を二十日以内に都道府県知事に申し出るべき旨を通知しなければならない。この場合には、買収令書及びその謄本の交付は、その期間経過後にしなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による買収令書の交付をすることができないときは、その内容を公示して交付に代えることができる。

4 市町村農業委員会は、買収令書の謄本の交付を受けたときは、遅滞なく、その旨を公示するとともに、その公示の日の翌日から起算して二十日間、その事務所でこれを縦覧に供しなければならない。

 (対価)

第五十一条 前条第一項第四号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。

2 買収すべき土地等の上に先取特権、質権又は抵当権がある場合には、その権利を有する者から前条第二項の期間内に、その対価を供託しないでもよい旨の申出があつたときを除いて、国は、その対価を供託しなければならない。

3 国は、前項に規定する場合の外、左に掲げる場合にも対価を供託することができる。

 一 対価の支払を受けるべき者が受領を拒み、又は受領することができない場合

 二 対価の支払を受けるべき者を確知することができない場合

 三 差押又は仮差押により対価の支払の禁止を受けた場合

 (効果)

第五十二条 国が買収令書に記載された買収の期日までに対価の支払又は供託をしたときは、その期日に、その買収の目的となつた第四十四条第一項第一号若しくは第三号の土地の所有権、同項第四号の立木若しくは工作物の所有権又は同項第五号の権利は、国が取得し、同項第二号の権利は、消滅する。

2 前項の規定により国が第四十四条第一項第一号若しくは第三号の土地又は同項第四号の立木若しくは工作物の所有権を取得したときは、その土地、立木又は工作物に関する所有権以外の権利は、その時に消滅する。

3 前項の規定により消滅する先取特権、質権又は抵当権を有する者は、前条第二項若しくは第三項の規定により供託された対価に対してその権利を行うことができる。

4 国が買収令書に記載された買収の期日までに対価の支払又は供託をしないときは、その買収令書は、効力を失う。

5 第十三条第四項の規定は、第一項及び前項の場合に準用する。

 (補償金の交付)

第五十三条 国は、前条第二項の規定により消滅した権利(先取特権、質権及び抵当権を除く。)でその土地等に係る第四十八条第一項の公示の時に存したものをその権利の消滅の時に有していた者に対し、政令で定めるところにより算出した額の補償金を交付する。

2 前項の規定による補償金の交付の手続は、省令で定める。

 (電線路施設用地の特例)

第五十四条 第五十二条第一項の規定により国が取得した土地につきその取得の時に公益事業令(昭和二十五年政令第三百四十三号)による電気事業者又は同令附則第三項の規定によりなお効力を有する旧電気事業法(昭和六年法律第六十一号)第三十条第二項の事業を営む者(以下「電気事業者」と総称する。)のために電線路の施設(電線の支持物を除く。以下この条で同様とする。)を目的とする地役権又は電線の支持物の設置を目的とする地上権、賃借権若しくは使用貸借による権利があるときは、第五十二条第二項の規定にかかわらず。これらの権利は、消滅しない。

2 第五十二条第一項の規定により国が取得した土地が、その取得の時に電気事業者が所有権、地上権、賃借権又は使用貸借による権利に基き電線路の施設の用に供していたものである場合には、その取得の時に、その電気事業者のためにその電線路の施設を目的として、その土地を承役地とし、その電線路に近接する発電所、変電所、開閉所又は電線の支持物の用地でその電気事業者が所有するものを要役地とする地役権が設定されたものとみなす。この場合において、従前の権利に存続期間の定があるときは、地役権の存続期間は、従来の権利の残存期間とする。

3 前項の地役権は、承役地の所有者が工作物の設備その他電線路の施設の妨げとなる行為をしないことを内容とする。

4 第二項の規定による地役権の設定は、その登記がなくても、その承役地が電線路の施設の用に供されている限り、その承役地の所有権を取得した者にこれをもつて対抗することができる。

5 第二項の規定により地役権が設定された場合において、その設定の時にその要役地が抵当権の目的である工場財団、鉄道財団又は軌道財団に属しているときは、その地役権は、その抵当権の目的となるものとする。

 (不用物件の収去)

第五十五条 国は、第四十四条の規定により買収した土地又は工作物の上にある物件の所有者又は占有者にその物件を収去すべき旨を命ずることができる。

2 前項の規定による命令は、都道府県知事が省令で定める収去令書をその物件の所有者又は占有者に交付してしなければならない。

3 第一項の物件で第四十八条第一項の規定による公示の時にその土地又は工作物の上にあつたものの所有者は、前項の規定による収去令書の交付があつた場合において、収去後その物件を従来用いた目的に供することが著しく困難となるときは、省令で定める手続に従い、国に対し、その買収を請求することができる。

4 第五十条から第五十三条までの規定は、前項の規定による請求があつた場合に準用する。この場合において、第五十条第一項中「第四十八条第四項の期間が満了したとき(その期間内に同項の規定による意見書の提出があつた場合には、同条第五項の規定による諮問に対し都道府県開拓審議会から国が買収することが適当である旨の答申があつたとき)は、」とあるのは、「第五十五条第三項の規定による請求があつたときは、」と読み替えるものとする。

5 国は、第一項の物件で第四十八条第一項の規定による公示の時にその土地又は工作物の上にあつたものの所有者又は占有者が同項の規定による命令に基く収去によつて損失を受けた場合には、省令で定める手続に従い、その者に対し、通常生ずべき損失を補償する。

 (漁業権の消滅等)

第五十六条 国は、自作農を創設し、又は自作農の経営を安定させるため必要があり、且つ、国土資源の利用に関する総合的な見地から適当と認められるときは、漁業権若しくは埋漁権を消滅させ、又は公有水面の入立をする権利を買収することができる。

2 前項の規定により権利を消滅させ、又は買収するには、都道府県知事は、その適否について都道府県開拓審議会の意見を聞かなければならない。

3 第五十条及び第五十一条の規定は、前項の規定による諮問に対し権利を消滅させ、又は買収することが適当である旨の答申があつた場合に準用する。

 この場合において、漁業権又は入漁権については、これらの規定中「買収」とあるのは「権利消滅」と、「買収令書」とあるのは「権利消滅通知書」と、「対価」とあるのは「補償金」(第五十条第一項第四号及び第五十一条第一項にあつては「補償金額」)と読み替えるものとする。

4 国が権利消滅通知書に記載された漁業権又は入漁権の消滅の期日までに補償金の支払又は供託をしたときは、その期日に、その漁業権(その上にある先取特権及び抵当権を含む。)又は入漁権は、消滅する。

5 前項の規定により消滅する先取特権又は抵当権を有する者は、第三項で準用する第五十一条第二項又は第三項の規定により供託された補償金に対してその権利を行うことができる。

6 国が買収令書に記載された公有水面の埋立をする権利の買収の期日までに対価の支払又は供託をしたときは、その期日に、その権利は、国が取得する。

7 国が権利消滅通知書又は買収令書に記載された権利消滅の期日又は買収の期日までに補償金又は対価の支払又は供託をしないときは、その権利消滅通知書又は買収令書は、効力を失う。

8 第十三条第四項の規定は、第四項及び前二項の場合に準用する。

 (使用)

第五十七条 国は、自作農の創設又はその経営の安定を目的とする農地の造成のための建設工事をする場合において、事務所、作業所、飯場、軌道等の用地として使用することが必要な土地又は井戸、えん堤等の施設で他の土地又は施設をもつて代えることが著しく困難なものがその附近にあるときは、これを使用することができる。

2 前項の規定により土地又は施設を使用するには、都道府県知事は、その適否について都道府県開拓審議会の意見を聞かなければならない。

3 第五十条第一項、第三項及び第四項並びに第五十一条第三項の規定は、前項の規定による諮問に対し土地又は施設を使用することが適当である旨の答申があつた場合に準用する。この場合において、第五十条中「買収令書」とあるのは「使用令書」と、同条第一項中「買収の期日」とあるのは「使用権の内容、使用開始の期日及び使用期間」と読み替えるものとする。

4 使用の対価は、近傍類似の土地又は施設の地代、借賃等を考慮した相当な額とする。

5 都道府県知事が第三項で準用する第五十条の規定により使用令書を交付したときは、その使用開始の期日に、その土地又は施設の使用権を国が取得し、その土地又は施設に関する所有権その他の権利は、その使用権の行使の妨げとなる範囲で使用の期間その行使を停止される。

6 国は、前項の土地又は施設に関する所有権以外の権利を有する者が同項の規定による権利の行使の停止によつて損失を受ける場合には、省令で定めるところにより、その者に対し、通常生ずべき損失を補償する。

 (被使用者の買収請求)

第五十八条 前条の規定による土地若しくは施設の使用が三年以上にわたるとき又はその使用によつてその土地若しくは施設を従来用いた目的に供することが著しく困難となるときは、その土地又は施設の所有者は、省令で定める手続に従い、国に対し、その買収を請求することができる。

2 第五十条から第五十五条までの規定は、前項の請求があつた場合に準用する。

 (代地の買収)

第五十九条 国は、第四十四条第一項の規定により同項第一号に掲げる土地を買収する場合において、特に必要があるときは、その買収の当時のその土地の所有者に対し、その土地に代るべき土地として売り渡すために必要な近傍の土地(その土地の上にある立木を含む。)を買収することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定により買収することを相当とする土地があると認めるときは、省令で定めるところにより、その土地を調査しなければならない。

3 第四十七条から第四十九条までの規定は、前項の規定による調査をした場合に準用する。

4 都道府県知事は、前項で準用する第四十八条第四項の期間が満了したとき(その期間内に同項の規定による意見書の提出があつた場合には、同条第五項の規定による諮問に対し都道府県開拓審議会から国が買収することが適当である旨の答申があつたとき)は、その土地を買収することについて、農林大臣に対し、その承認を申請しなければならない。

5 第五十条から第五十五条までの規定は、前項の承認があつた場合に準用する。

 (承継人に対する効力)

第六十条 第五十条(第五十五条第四項、第五十六条第三項、第五十七条第三項、第五十八条第二項又は前条第五項で準用する場合を含む。)の規定による買収令書、権利消滅通知書又は使用令書の交付及び第五十五条第二項(第五十八条第二項又は前条第五項で準用する場合を含む。)の規定による収去令書の交付は、その交付を受けた者の承継人に対してもその効力を有する。

    第二節 売渡

 (売り渡すべき土地等)

第六十一条 国は、左に掲げるものを次条から第六十七条までに規定する手続に従い、売り渡すことができる。

 一 第四十四条第一項の規定により買収した土地等

 二 第五十八条第一項の規定に基く請求により買収した土地又は施設

 三 第七十二条の規定により買収した土地等

 四 所管換又は所属替を受けて第七十八条第一項の規定により農林大臣が管理する土地等

 五 公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)により農林大臣が造成した埋立地

 (土地配分計画)

第六十二条 前条の規定による土地等の売渡は、土地配分計画に基いて行うものとする。

2 前項の土地配分計画は、政令で定めるところにより、農林大臣又は都道府県知事が地区ごとに作成する。

3 前項の規定により土地配分計画を作成した地区については、都道府県知事(政令で定める地区については、農林大臣)は、その所在、予定売渡口数及び予定売渡面積を公示しなければならない。

 (買受予約申込書の提出)

第六十三条 前条第三項の規定による公示があつた地区内の第六十一条に掲げる土地等を買い受けようとする者は、省令で定める買受予約申込書をその者の住所の所在地を管轄する市町村長を経由して、その土地等の属する地域を管轄する都道府県知事に提出しなければならない。

2 前項の買受予約申込書は、前条第三項の規定による公示の日から起算して三十日以内に前項の市町村長に到達するように提出しなければならない。

 (売渡予約書の交付)

第六十四条 都道府県知事は、前条の規定により買受予約申込書の提出をした者で自作農として農業に精進する見込のあるもののうちから都道府県開拓審議会の意見を聞いて適当と認められる者を選定し、その者に省令で定める売渡予約書を交付する。但し、その地区内で農業を営む者の生活上必要で欠くことができない業務に従事する者又は農業協同組合、土地改良区若しくは市町村その他の地方公共団体から前条の規定により買受予約申込書の提出があつた場合において、都道府県知事が都道府県開拓審議会の意見を聞いてその者に売り渡すことを相当と認めたときは、これらの者に対しても売渡予約書を交付することができる。

 (買受の申込)

第六十五条 前条の規定による売渡予約書の交付を受けた者は、省令で定めるところにより、その土地等の属する市町村の区域に設置された市町村農業委員会に買受申込書を提出しなければならない。

 (市町村農業委員会の関係書類の進達)

第六十六条 市町村農業委員会は、前条の規定による買受申込書の提出があつたときは、その者に売り渡すべき土地等を定め、左に掲げる事項を記載した書類を都道府県知事に進達しなければならない。

 一 売渡の相手方の氏名又は名称及び住所

 二 売り渡すべき土地についてはその面積及び所在の場所、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、水の使用に関する権利についてはその内容

 三 その他省令で定める事項

 (売渡通知書)

第六十七条 都道府県知事は、前条の規定により進達された書類に記載されたところに従い、左に掲げる事項を記載した売渡通知書を作成し、これを売渡の相手方に、その謄本をその市町村農業委員会に交付しなければならない。

 一 前条第一号及び第二号に掲げる事項

 二 その土地等の用途

 三 売渡の期日

 四 対価

 五 対価の支払の方法

 六 その地区における農地とすべき土地の開懇を完了すべき時期

 七 その他必要な事項

2 前項第四号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。

3 第四十条から第四十三条までの規定は、第一項の規定による売渡について準用する。

 (一時使用)

第六十八条 第六十四条の規定による売渡予約書の交付を受けた者が、省令で定める手続に従い、都道府県知事に第六十一条に掲げる土地等の使用の申込をした場合において、都道府県知事がこれを相当と認めたときは、国は、同条の規定による売渡をするまでの間、その土地等を都道府県知事が定める条件でその者に使用させることができる。

2 前項の規定による土地等の使用は、建物を除き、無償とする。但し、その使用に係る土地がその近傍の農地と同程度の生産をあげることができると認められる場合は、この限りでない。

3 第四十三条の規定は、第一項の規定による使用の対価の徴収について準用する。

 (代地の売渡)

第六十九条 第五十九条の規定により買収した土地(その土地の上にある立木を含む。)の同条に掲げる者への売渡は、都道府県知事がその者に左に掲げる事項を記載した売渡通知書を交付して行う。

 一 売渡の相手方の氏名又は名称及び住所

 二 売り渡すべき土地の面積及び所在の場所並びに売り渡すべき立木がある場合には、その樹種及び数量

 三 売渡の期日

 四 対価

 五 対価の支払の方法

 六 その他必要な事項

2 前項第四号の対価は、政令で定めるところにより算出した額とする。

3 第一項の規定により売り渡した土地及び立木の対価の支払は、一時払の方法によるものとする。

4 第四十条、第四十二条及び第四十三条の規定は、第一項の売渡について準用する。

第七十条 国は、第四十四条の規定により土地を買収する場合において、特に必要があるときは、その買収の当時のその土地の所有者に対し、所管換又は所属替を受けて第七十八条第一項の規定により農林大臣が管理する土地(その土地の上にある立木を含む。)を買収した土地に代るべき土地として売り渡すことができる。

2 前条の規定は、前項の規定による売渡について準用する。

 (売渡後の検査)

第七十一条 都道府県知事は、第六十一条の規定により売り渡した土地等につき第六十七条第一項第六号の時期到来後、遅滞なく、その状況を検査しなければならない。

 (売り渡した土地等の買戻)

第七十二条 国は、第六十一条の規定により土地等の売渡を受けた者又はその一般承継人が左の各号の一に該当した場合は、その土地等を買収することができる。但し、第六十七条第一項第六号の時期到来後三年を経過したときは、この限りでない。

 一 前条の規定による検査の結果、開墾して農地とすべき土地の開墾を完了していないことが明らかとなつた場合

 二 前条の規定による検査の結果、その土地等を売渡通知書に記載された用途に供していないことが明らかとなつた場合

 三 前条の規定による検査の期日前に、その土地等を売渡通知書に記載された用途にみずから供することをやめた場合、又はやめる旨を都道府県知事に申し出た場合

2 前項の規定による買収は、都道府県知事がその者に対し、左に掲げる事項を記載した買収令書を交付して行う。

 一 土地等の所有者の氏名又は名称及び住所

 二 土地についてはその所在、地番、地目及び面積、立木についてはその樹種、数量及び所在の場所、工作物についてはその種類及び所在の場所、権利についてはその種類及び内容

 三 買収の期日

 四 対価

 五 対価の支払の方法(第四項で準用する第五十一条第二項の規定により対価を供託する場合には、その旨)

 六 その他必要な事項

3 前項第四号の対価は、その土地等を第六十一条の規定により売り渡したときの対価に相当する額とする。

4 第五十条第二項及び第三項、第五十一条第二項及び第三項並びに第五十二条から第五十五条までの規定は、第一項の規定による買収について準用する。

 (売り渡した土地等の処分の制限)

第七十三条 第六十一条の規定により売り渡された土地等の売渡通知書に記載された第六十七条第一項第六号の時期到来後三年を経過する前にその土地等の所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、又は移転する場合には、省令で定めるところにより、当事者が農林大臣の許可を受けなければならない。但し、左に掲げる場合は、この限りでない。

 一 土地収用法その他の法律によつてその土地等が収用され、又は使用される場合

 二 遺産の分割によつてこれらの権利が取得される場合

 三 その他省令で定める場合

2 前項の許可は、条件をつけてすることができる。

3 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

 (農地及び採草放牧地に関する規定の適用除外)

第七十四条 第六十一条の規定により売り渡された土地であつて農地又は採草放牧地であるものについては、第六十七条第一項第六号の時期到来後三年を経過するまでは、第二章第一節(第四条の規定を除く。)及び第二節の規定は、適用しない。

 (開発に関する制限規定の適用除外)

第七十五条 第四十四条第一項の規定により買収した土地、自作農の創設又はその経営の安定の目的に供するため農林大臣が所管換又は所属替を受けた土地及び公有水面埋立法により農林大臣が造成した埋立地の開墾その他開発のためにする行為(これらの土地の売渡後の行為を含む。)については、他の法令中政令で定める制限又は禁止の規定は、適用しない。

   第四章 雑則

 (登記の特例)

第七十六条 国がこの法律により買収又は売渡をする場合の登記については、政令で特例を定めることができる。

 (土地台帳法の適用の特例)

第七十七条 国が第九条、第十四条、第十五条又は第十六条の規定により買収した土地については、土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)第四十四条(国有地の適用除外)の規定にかかわらず、省令で定めるところにより、同法を適用する。

2 国がこの法律により土地を買収する場合において、必要があるときは、都道府県知事は、省令で定める手続に従い、土地台帳法第十八条(地種の申告)、第二十六条(申告)、第四十条(申告義務の継承)又は第四十一条(質権者又は地上権者の申告義務)の規定による申告を土地所有者、質権者又は地上権者に代つてすることができる。

3 国がこの法律により売り渡した土地についての土地台帳法の登録については、省令で特例を定めることができる。

 (買収した土地、立木等の管理)

第七十八条 国が第九条第一項若しくは第二項、第十四条第一項、第十五条第一項、第四十四条第一項、第五十六条第一項、第五十九条第一項若しくは第七十二条第一項の規定により買収し、第十六条第一項の規定に基く申出により買収し、第三十三条第一項若しくは第三十四条第一項の規定に基く申出により買い取り、又は第五十五条第三項若しくは第五十八条第一項の規定に基く請求により買収した土地、立木、工作物及び権利、第五十六条第一項の規定により買収した公有水面埋立に関する権利に基いて造成した埋立地並びに国有財産である土地、立木、工作物及び権利であつて、自作農の創設又はその経営の安定の目的に供するために、所管換又は所属替を受けたものは、農林大臣が管理する。

2 農林大臣は、前項の規定による管理の権限の一部を、政令で定めるところにより、都道府県知事に行わせることができる。

3 第一項の規定により農林大臣が管理する国有財産につき国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号)第三十二条第一項の規定により備えなければならない台帳の取扱については、省令で特例を定めることができる。

4 第一項の規定により農林大臣が管理する土地、立木、工作物及び権利の使用料の徴収については、第四十二条の規定を準用する。

 (所属替の特例)

第七十九条 国有財産法第十四条第一項第六号の規定は、自作農の創設又はその経営の安定の目的に供するために、土地又は建物の所属替をする場合には、適用しない。

 (売払)

第八十条 農林大臣は、第七十八条第一項の規定により管理する土地、立木、工作物又は権利について、政令で定めるところにより、自作農の創設又は土地の農業上の利用の増進の目的に供しないことを相当と認めたときは、省令で定めるところにより、これを売り払い、又はその所管換若しくは所属替をすることができる。

2 農林大臣は、前項の規定により売り払い、又は所管換若しくは所属替をすることができる土地、立木、工作物又は権利が第九条、第十四条又は第四十四条の規定により買収したものであるときは、政令で定める場合を除き、その土地、立木、工作物又は権利を、その買収前の所有者に売り払わなければならない。この場合の売払の対価は、その買収の対価に相当する額(耕地整理組合費、土地区割整理組合費その他省令で定める費用を国が負担したときは、その額をその買収の対価に加算した額)とする。

 (公簿の閲覧等)

第八十一条 国又は都道府県の職員は、登記所、漁業免許に関する登録の所管庁又は市町村の事務所について、この法律による買収、買取、使用、消滅請求又は売渡に関し、無償で、必要な簿書を閲覧し、又はその謄本の交付を受けることができる。

 (立入調査)

第八十二条 農林大臣又は都道府県知事は、この法律による買収、使用その他の処分をするため必要があるときは、その職員に他人の土地又は工作物に立ち入つて調査させ、測量させ、又は調査若しくは測量の障害となる竹木その他の物を除去させ、若しくは移転させることができる。

2 前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、その土地又は工作物の所有者、占有者その他の利害関係人から要求があつたときは、これを呈示しなければならない。

3 第一項の場合には、農林大臣又は都道府県知事は、省令で定める手続きに従い、あらかじめ、その土地又は工作物の占有者にこれを通知しなければならない。但し、通知をすることができない場合その他特別の事情がある場合には、公示をもつて通知に代えることができる。

4 第一項の規定による立入は、工作物、宅地及びかき、さく等で囲まれた土地に対しては、日出から日没までの間でなければしてはならない。

5 国は、第一項の土地又は工作物の所有者又は占有者が同項の規定による調査、測量又は物件の除去若しくは移転によつて損失を受けた場合には、省令で定めるところにより、その者に対し、通常生ずべき損失を補償する。

6 第一項の規定による立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (報告の徴取)

第八十三条 農林大臣又は都道府県知事は、この法律を施行するため必要があるときは、土地の状況等に関し、都道府県農業委員会又は市町村農業委員会から必要な報告を徴することができる。

 (小作地又は小作採草放牧地の状況の縦覧)

第八十四条 市町村農業委員会は、毎年八月一日現在の小作地及び小作採草放牧地の所有状況を記載した書類を作成し、これを九月一日から同月三十日までの間市町村農業委員会の事務所で縦覧に供しなければならない。

 (訴願等)

第八十五条 左に掲げる処分(次項に規定するものを除く。)に対し不服がある者は、市町村農業委員会の処分に対しては都道府県知事に、都道府県知事又は農林大臣の処分に対しては農林大臣に、それぞれ訴願することができる。

 一 第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項又は第二十条第一項の規定による許可に関する処分

 二 第十一条第一項(第十四条第二項、第十五条第二項及び第十六条第二項で準用する場合を含む。)の規定による買収令書の交付

 三 第二十七条の規定による申請に基く裁定

 四 第三十九条第一項の規定による売渡通知書の交付

 五 第五十条第一項(第五十五条第四項、第五十六条第三項、第五十七条第三項、第五十八条第二項又は第五十九条第五項で準用する場合を含む。)又は第七十二条第二項の規定による買収令書、権利消滅通知書又は使用令書の交付

 六 第六十七条第一項の規定による売渡通知書の交付

 七 第七十三条第一項の規定による許可に関する処分

2 第四条第一項、第五条第一項又は第七十三条第一項の規定による許可に関する処分であつて、鉱業権者、租鉱権者又は採石業者を相手方とするものに対し不服がある者は、土地調整委員会の裁定を申請することができる。

 (土地の面積)

第八十六条 この法律の適用については、土地の面積は、土地台帳の地積による。但し、土地台帳の地積が著しく事実と相違する場合及び土地台帳の地積がない場合には、実測に基き、市町村農業委員会(第三章の適用については、都道府県知事)が認定したところによる。

 (換地予定地に相当する従前の土地の指定)

第八十七条 第八条の規定による公示又は第九条若しくは第十五条の規定による買収をする場合において、その公示又は買収の対象となるべき農地を明らかにするため特に必要があるときは、都道府県知事は、旧耕地整理法(明治四十二年法律第三十号)に基く耕地整理、都市計画法(大正八年法律第三十六号)第十二条第二項で準用する旧耕地整理法の規定による土地区割整理又は土地改良法に基く土地改良事業に係る規約によつて、換地処分の発効前に従前の土地に代えて使用又は収益をすることができるものとして指定された土地又はその土地の部分に相当する従前の土地又は土地の部分の地目、地積、土性等を考慮して指定することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしたときは、その指定の内容を遅滞なく市町村農業委員会に通知しなければならない。

 (公示の方法)

第八十八条 この法律により都道府県知事がする公示は、都道府県の条例の告示と同一の方法により行うものとし、市町村農業委員会がする公示は、市町村農業委員会の事務所に掲示して行うものとする。

 (代行)

第八十九条 農林大臣は、この法律の目的を達成するため特に必要があると認めるときは、この法律により市町村農業委員会の権限に属させた事項を都道府県知事に処理させることができる。

2 農林大臣は、この法律の目的を達成するため特に必要があると認めるときは、この法律により都道府県知事の権限に属させた事項を処理することができる。

3 農林大臣は、第一項の規定により処理を命じたとき又は前項の規定によりみずから処理するときは、その旨を告示しなければならない。

 (市町村農業委員会に関する特例)

第九十条 農業委員会法(昭和二十六年法律第八十八号)第二条第一項但書の規定により、市町村農業委員会が置かれていない市町村についてのこの法律の適用については、この法律中「市町村農業委員会」とあるのは、「市町村長」と読み替えるものとする。

2 農業委員会法第二条第二項の規定により二以上の市町村農業委員会が置かれている市町村についてのこの法律の適用については、この法律中「市町村の区域」とあるのは、「市町村農業委員会の区域」と読み替えるものとする。

 (特別区等の特例)

第九十一条 この法律中市町村又は市町村長に関する規定は、特別区のある地にあつては特別区又は特別区の区長に、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百五十五条第二項(区を設ける市)の市にあつては区又は区長に、全部事務組合又は役場事務組合のある地にあつては組合又は組合管理者に適用する。

   第五章 罰則

第九十二条 第三条第一項、第四条第一項、第五条第一項、第二十条第一項(第三十二条で準用する場合を含む。)、第二十三条又は第七十三条第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

第九十三条 左の各号の一に該当する者は、六箇月以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

 一 第四十九条の規定に違反した者

 二 第八十二条第一項の規定による職員の調査、測量、除去又は移転を拒み、妨げ、又は忌避した者

第九十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関し前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して前二条の罰金刑を科する。但し、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者の当該違反行為を防止するため、当該業務又は財産に対し相当の注意及び監督が尽されたことの証明があつたときは、その法人又は人については、この限りでない。

   附 則

 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内で政令で定める。

別表

 

都道府県名

第三条第二項第三号の面積

第三条第二項第四号の面積

第六条第一項第二号の小作地の面積

第六条第一項第二号の小作採草放牧地の面積

 

北海道

一二・〇

二〇・〇

四・〇

一・〇

青森

四・五

一二・八

一・五

〇・三

岩手

三・四

二三・九

一・一

宮城

三・九

六・三

一・四

秋田

四・三

一四・〇

一・四

山形

四・〇

六・六

一・三

福島

三・四

八・四

一・一

茨城

三・七

四・三

一・一

栃木

三・九

四・九

一・二

群馬

二・七

四・四

〇・九

埼玉

二・七

三・三

〇・九

千葉

三・六

三・九

一・一

東京

二・二

二・五

〇・七

神奈川

二・〇

二・六

〇・七

新潟

三・〇

四・二

一・〇

富山

三・〇

四・〇

一・〇

石川

二・七

三・〇

〇・八

福井

二・七

三・〇

〇・九

山梨

二・一

三・三

〇・七

長野

二・六

五・〇

〇・八

岐阜

二・〇

五・七

〇・六

静岡

二・三

二・六

〇・七

愛知

二・二

二・七

〇・七

三重

二・二

二・七

〇・七

滋賀

二・四

三・〇

〇・七

京都

二・〇

二・五

〇・六

大阪

一・九

二・二

〇・六

兵庫

一・八

三・一

〇・六

奈良

一・八

二・三

〇・六

和歌山

一・九

二・二

〇・六

鳥取

二・三

六・六

〇・八

島根

二・二

五・七

〇・七

岡山

二・〇

五・七

〇・七

広島

一・六

三・八

〇・五

山口

二・二

三・三

〇・七

徳島

二・一

二・九

〇・六

香川

二・〇

二・三

〇・六

愛媛

二・二

二・五

〇・七

高知

一・九

二・八

〇・七

福岡

二・五

三・一

〇・八

佐賀

三・〇

四・五

〇・九

長崎

二・一

三・一

〇・七

熊本

三・一

七・〇

一・〇

大分

二・一

六・四

〇・六

宮崎

二・七

五・〇

〇・九

鹿児島

二・〇

三・五

〇・七

(農林・内閣総理大臣署名) 

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