法律第二百五十号(昭二七・七・三一)
◎日本電信電話公社法
目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 経営委員会(第九条―第十八条)
第三章 役員及び職員(第十九条―第三十六条)
第四章 財務及び会計(第三十七条―第七十四条)
第五章 監督(第七十五条・第七十六条)
第六章 罰則(第七十七条・第七十八条)
第七章 雑則(第七十九条―第八十六条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 公衆電気通信事業の合理的且つ能率的な経営の体制を確立し、公衆電気通信設備の整備及び拡充を促進し、並びに電気通信による国民の利便を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的として、ここに日本電信電話公社を設立する。
(法人格)
第二条 日本電信電話公社(以下「公社」という。)は、法人とする。
(業務)
第三条 公社は、公衆電気通信業務及びこれに附帯する業務その他第一条に規定する目的を達成するために必要な業務を行う。
2 公社は、前項の業務の円滑な遂行に妨げのない限り、委託により左の業務を行うことができる。
一 電気通信設備の設置及び保存
二 電気通信用の機械、器具その他の物品の調達、保管、修理、加工及び検査
三 電気通信技術に関する実用化研究及び基礎的研究
四 電気通信業務に従事する者の訓練
(事務所)
第四条 公社は、主たる事務所を東京都に置く。
2 公社は、郵政大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。
(資本金)
第五条 公社の資本金は、この法律の施行の際における電気通信事業特別会計の資産の価額から負債の金額を控除した残額に相当する額とし、政府が全額を出資するものとする。
2 政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において、公社に追加して出資することができる。
(登記)
第六条 公社は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記を必要とする事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
(名称の使用制限)
第七条 公社でない者は、その名称中に日本電信電話公社という文字又はこれに類似する文字を用いてはならない。
(民法の準用)
第八条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)、第五十条(法人の住所)及び第五十四条(代表権の制限)の規定は、公社に準用する。
第二章 経営委員会
(設置)
第九条 公社に、経営委員会を置く。
(権限)
第十条 経営委員会は、公社の業務の運営に関する重要事項を決定する機関とする。
2 左の事項は、経営委員会の議決を経なければならない。
一 予算、事業計画及び資金計画
二 決算
三 長期借入金及び一時借入金の借入並びに電信電話債券の発行
四 長期借入金及び電信電話債券の償還計画
五 その他経営委員会が特に必要と認めた事項
(組織)
第十一条 経営委員会は、委員五人及び職務上当然就任する特別委員(以下単に「特別委員」という。)二人をもつて組織する。
2 経営委員会に委員長一人を置き、委員の互選により選任する。
3 委員長は、経営委員会の会務を総理する。
4 経営委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長を代理する者を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第十二条 委員は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
2 委員の任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣は、前項の規定にかかわらず、両議院の同意を得ないで委員を任命することができる。この場合においては、任命後の最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。
3 左の各号の一に該当する者は、委員となることができない。
一 国務大臣、国会議員、政府職員(国家人事委員会が指定する非常勤の者を除く。)又は地方公共団体の議会の議員
二 政党の役員
三 物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であつて公社と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
四 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)
五 公社の役員又は職員
(委員の任期)
第十三条 委員の任期は、四年とする。但し、補欠の委員は、前任者の残任期間在任する。
2 委員は、再任されることができる。
(委員の罷免)
第十四条 内閣は、第十二条第二項後段の両議院の事後の承認を得られないとき、又は委員が同条第三項各号の一に該当するに至つたときは、その委員を罷免しなければならない。
第十五条 内閣は、委員が左の各号の一に該当するとき、その他委員が委員たるに適しないと認めるときは、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。
二 職務上の業務違反があるとき。
(委員の報酬)
第十六条 委員は、報酬を受けない。但し、旋費その他業務の遂行に伴う実費を受けるものとする。
(議決の方法)
第十七条 経営委員会は、委員長又は第十一条第四項に規定する委員長を代理する者及び三人以上の委員又は特別委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 経営委員会の議事は、出席者の過半数をもつて決する。可否同数のときは委員長が決する。
3 経営委員会は、理事又は公社の職員をその会議に出席させて、必要な説明を求めることができる。
(公務員たる性質)
第十八条 委員は、罰則の適用に関しては、法令により公務に従事する者とみなす。
算三章 役員及び職員
(役員の範囲)
第十九条 公社に、役員として、総裁、副総裁各一人及び理事五人以上十人以下を置く。
(役員の職務及び権限)
第二十条 総裁は、公社を代表し、その業務を総理する。
2 副総裁は、総裁を補佐して公社の業務を執行し、総裁に事故があるときはその職務を代理し、総裁が欠員のときはその職務を行う。
3 総裁及び副総裁は、第十一条第一項に規定する経営委員会の特別委員とする。
4 理事は、総裁が定めるところにより、総裁及び副総裁を補佐して公社の業務を執行し、総裁及び副総裁に事故があるときはその職務を代理し、総裁及び副総裁が欠員のときはその職務を行う。
(役員の任命及び任期)
第二十一条 総裁及び副総裁は、経営委員会の同意を得て、内閣が任命する。
2 前項の同意は、第十七条の規定にかかわらず、委員四人以上の多数による議決によることを要する。
3 理事は、総裁が任命する。
4 総裁及び副総裁の任期は、四年とし、理事の任期は、二年とする。
5 役員は、再任されることができる。
(役員の欠格条項)
第二十二条 第十二条第三項第一号から第四号までの一に該当する者は、役員となることができない。
(役員の罷免)
第二十三条 内閣は、総裁又は副総裁が第十二条第三項第一号から第四号までの一に該当するに至つたときは、これを罷免しなければならない。
2 総裁は、理事が第十二条第三項第一号から第四号までの一に該当するに至つたときは、これを罷免しなければならない。
第二十四条 内閣は、総裁又は副総裁が第十五条各号の一に該当するとき、その他総裁又は副総裁が総裁又は副総裁たるに適しないと認めるときは、経営委員会の同意を得て、これを罷免することができる。
2 第二十一条第二項の規定は、前項の同意に準用する。
3 総裁は、理事が第十五条各号の一に該当するとき、その他理事が理事たるに適しないと認めるときは、これを罷免することができる。
(役員の兼職禁止)
第二十五条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。
(代表権の制限)
第二十六条 公社と総裁との利益が相反する事項については、総裁は、代表権を有しない。この場合においては、経営委員会は、副総裁又は理事のうちから、公社を代表する者を選任しなければならない。
(代理人の選任)
第二十七条 総裁は、副総裁、理事又は公社の職員のうちから、公社の業務の一部に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。
(職員の地位及び資格)
第二十八条 この法律において公社の職員とは、公共企業体労働関係法(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二条第二項に規定する者をいう。
2 第十二条第三項第一号に該当する者(市(特別区を含む。)町村の議会の議員である者を除く。)は、職員であることができない。
(任用の基準)
第二十九条 職員の任用は、その者の受験成績、勤務成績又はその他の能力の実証に基いて行う。
(給与)
第三十条 職員の給与は、その職務の内容と責任に応ずるものであり、且つ、職員が発揮した能率が考慮されるものでなければならない。
2 前項の給与は、国家公務員及び民間事業の従業者の給与その他の事情を考慮して定めなければならない。
(降職及び免職)
第三十一条 職員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、降職され、又は免職されることがない。
一 勤務成績がよくないとき。
二 心身の故障のため職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
三 その他その職務に必要な適格性を欠くとき。
四 業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じたとき。
(休職)
第三十二条 職員は、左の各号の一に該当する場合を除き、その意に反して、休職にされることがない。
一 心身の故障のため長期の休養を要するとき。
二 刑事事件に関し起訴されたとき。
2 職員が前項第一号の規定に該当して休職にされた場合における休職の期間は、公務上負傷し、又は疾病にかかり、同号の規定に該当して休職にされた場合を除き、三年をこえない範囲内において、休養を要する程度に応じ、総裁が定める。休職の期間中その職員についてその故障が消滅したときは、総裁は、すみやかにその者を復職させなければならない。
3 第一項第二号の規定による休職の期間は、その事件が裁判所に係属する間とする。
4 休職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。
5 休職者の給与は、第七十二条に規定する給与準則の定めるところにより支給する。
(懲戒)
第三十三条 総裁は、職員が左の各号の一に該当するときは、これに対し、懲戒処分として免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律又は公社が定める業務上の規程に違反したとき。
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
2 停職の期間は、一月以上一年以下とする。
3 停職者は、職員としての身分を保有するが、その職務に従事しない。停職者は、その停職の期間中俸給の三分の一を受ける。
4 減給は、一月以上一年以下の間俸給の十分の一以下を減ずる。
(服務の基準)
第三十四条 職員は、その職務を遂行するについて、誠実に法令及び公社が定める業務上の規程に従わなければならない。
2 職員は、全力を挙げてその職務の遂行に専念しなければならない。但し、公共企業体労働関係法第七条の規定によりもつぱら職員の組合の事務に従事する者については、この限りでない。
(準用規定)
第三十五条 第十八条の規定は、役員及び職員に準用する。
(公共企業体労働関係法の適用)
第三十六条 公社の職員の労働関係に関しては、公共企業体労働関係法の定めるところによる。
第四章 財務及び会計
(総則)
第三十七条 公社の財務及び会計に関しては、この章の定めるところによる。
(事業年度)
第三十八条 公社の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終る。
(経理原則)
第三十九条 公社の財務及び会計に関しては、財産の増減及び異動をその発生の事実に基いて経理するものとする。
(予算の弾力性)
第四十条 公社の予算には、その事業を企業的に経営することができるように、需要の急激な増加、経済事情の変動その他予測することができない事態に応ずることができる弾力性を与えるものとする。
(予算の作成及び提出)
第四十一条 公社は、毎事業年度の予算を作成し、これに当該事業年度の事業計画、資金計画その他予算の参考となる事項に関する書類を添え、郵政大臣に提出しなければならない。
2 郵政大臣は、前項の規定により予算の提出を受けたときは、大蔵大臣と協議して必要な調整を行い、閣議の決定を経なければならない。
3 内閣は、前項の決定をしたときは、その予算を、国の予算とともに、国会に提出しなければならない。
4 前項の予算には、第一項に規定する添附書類を附するものとする。
(予算の内容)
第四十二条 公社の予算は、予算総則、収入支出予算、継続費及び債務負担行為とする。
(予算総則)
第四十三条 予算総則には、収入支出予算、継続費及び債務負担行為に関する総括的規定(予算に与えられる第四十条に規定する弾力性の範囲を定める規定を含む。)を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。
一 第四十七条第二項の規定による債務負担行為の限度額
二 第五十三条第二項の規定による経費の指定
三 第五十四条第一項但書の規定による経費の指定
四 長期借入金、一時借入金及び電信電話債券の限度額
五 役員及び職員に対して支給する給与の総額
六 第七十二条但書の規定による金額の限度額
七 その他予算の実施に関し必要な事項
(収入支出予算)
第四十四条 収入支出予算は、勘定の別に区分し、勘定ごとに、収入にあつてはその性質、支出にあつてはその目的に従つて更に区分する。
(予備費)
第四十五条 災害の復旧その他避けることができない事由による支出予算の不足を補うため、公社の予算に予備費を設けることができる。
(継続費)
第四十六条 公社は、工事又は製造であつて、その完成に数事業年度を要するものについて、特に必要があるときは、経費の総額及び年割額を定め、あらかじめ予算をもつて国会の議決を経て、その議決するところに従い、数事業年度にわたつて支出することができる。
(債務負担行為)
第四十七条 公社は、法律に基くもの又は支出予算の金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、債務負担行為をするには、あらかじめ予算をもつて国会の議決を経なければならない。
2 公社は、前項に規定するものの外、災害の復旧その他緊急の必要があるときは、毎事業年度、予算をもつて国会の議決を経た金額の範囲内において、債務負担行為をすることができる。
(予算の議決)
第四十八条 予算の国会の議決に関しては、国の予算の議決の例による。
第四十九条 政府は、公社の予算が成立したときは、直ちにその旨を公社に通知しなければならない。
2 公社は、前項の規定による通知を受けた後でなければ、予算を実施することができない。
3 政府は、第一項の規定により公社に通知したときは、直ちにその旨を会計検査院に通知しなければならない。
(追加予算)
第五十条 公社は、予算作成後に生じた避けることができない事由により必要がある場合に限り、追加予算を作成し、これに当該予算に係る事業計画、資金計画その他当該予算の参考となる事項に関する書類を添え、郵政大臣に提出することができる。
2 第四十一条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による追加予算に準用する。
(予算の修正)
第五十一条 公社は、前条第一項の場合を除く外、予算の成立後に生じた事由に基いて既に成立した予算に変更を加える必要があるときは、予算を修正し、これに当該予算に係る事業計画、資金計画その他当該予算の参考となる事項に関する書類を添え、郵政大臣に提出することができる。
2 第四十一条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による予算の修正に準用する。
(暫定予算)
第五十二条 公社は、必要に応じて、一事業年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これに当該予算に係る事業計画、資金計画その他当該予算の参考となる事項に関する書類を添え、郵政大臣に提出することができる。
2 第四十一条第二項から第四項までの規定は、前項の規定による暫定予算に準用する。
3 暫定予算は、当該事業年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該事業年度の予算に基いてしたものとみなす。
(予算の流用)
第五十三条 公社は、予算については、当該予算に定める目的の外に使用してはならない。但し、予算の実施上適当且つ必要であるときは、第四十四条の規定による区分にかかわらず、彼此流用することができる。
2 公社は、予算で指定する経費の金額については、郵政大臣の承認を受けなければ、前項但書の規定によりこれを他に流用することができない。
(予算の繰越)
第五十四条 公社は、予算の実施上特に必要であるときは、支出予算の経費の金額のうち、当該事業年度内に支出を終らなかつたものを、翌事業年度に繰り越して使用することができる。但し、予算で指定する経費の金額については、あらかじめ郵政大臣の承認を受けなければならない。
2 公社は、継続費の毎事業年度の年割額に係る支出予算の経費の金額のうち、当該事業年度内に支出を終らなかつたものを、継続費に係る工事又は製造の完成年度まで、逓次繰り越して使用することができる。
3 公社は、前二項の規定による繰越をしたときは、事項ごとにその金額を明らかにして、郵政大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
(資金計画)
第五十五条 公社は、国会の議決を経た予算に基いて、四半期ごとに資金計画を定め、郵政大臣、大蔵大臣及び会計検査院に提出しなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2 大蔵大臣は、前項の規定により提出された資金計画が国の資金の状況により実施することができないと認めるときは、その実施することができる限度を、郵政大臣を経て公社に通知しなければならない。
3 公社は、前項の規定による通知を受けたときは、その通知に基いて資金計画を変更しなければならない。
(収入支出等の報告)
第五十六条 公社は、政令で定めるところにより、債務負担行為により負担した債務の金額並びに収入し、及び支出した金額を、毎月、郵政大臣及び会計検査院に報告しなければならない。
(決算)
第五十七条 公社は、毎事業年度の決算を翌年度六月三十日までに完結しなければならない。
第五十八条 公社は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、決算完結後一月以内に郵政大臣に提出して、その承認を受けなければならない。
2 公社は、前項の規定により郵政大臣の承認を受けたときは、その財務諸表を公告しなければならない。
第五十九条 公社は、毎事業年度、予算の区分に従いその実施の結果を明らかにした報告書を作成し、前条第一項の規定により郵政大臣の承認を受けた当該事業年度の財務諸表とともに、郵政大臣に提出しなければならない。
2 郵政大臣は、前項の規定により報告書及び財務諸表(以下「決算書類」という。)の提出を受けたときは、これを内閣に送付しなければならない。
3 第一項に規定する報告書の形式及び内容は、省令で定める。
第六十条 内閣は、前条第二項の規定により公社の決算書類の送付を受けたときは、翌事業年度の十一月三十日までにこれを会計検査院に送付しなければならない。
2 内閣は、会計検査院の検査を経た公社の決算書類を、国の歳入歳出の決算とともに、国会に提出しなければならない。
(利益及び損失の処理)
第六十一条 公社は、毎事業年度、経営上利益を生じた場合において、前事業年度から繰り越した損失の補てんに充て、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 公社は、毎事業年度、経営上損失を生じた場合において、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足の額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
(借入金及び電信電話債券)
第六十二条 公社は、郵政大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは一時借入金をし、又は電信電話債券を発行することができる。
2 前項の規定による長期借入金、一時借入金及び電信電話債券の限度額については、予算をもつて国会の議決を経なければならない。
3 第一項の規定による一時借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。但し、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額を限り、郵政大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
4 前項但書の規定により借り換えた一時借入金は、一年以内に償還しなければならない。
5 第一項の規定により公社が発行する電信電話債券の債権者は、公社の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
6 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
7 公社は、郵政大臣の認可を受けて、電信電話債券の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。
8 前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社については、商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条までの規定を準用する。
9 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、第一項の規定による長期借入金及び電信電話債券のうち、外貨で支払われるものについて、保証契約をすることができる。
10 第一項、第二項及び第五項から前項までに定めるものの外、電信電話債券に関し必要な事項は、政令で定める。
第六十三条 公社は、国会の議決を経た長期借入金又は電信電話債券の限度額のうち、当該事業年度において借入又は発行をしなかつた金額があるときは、当該金額を限度として、支出予算の繰越額及び前事業年度から持ち越した未払金の金額の範囲内で、翌事業年度において、長期借入金をし、又は電信電話債券を発行することができる。
(政府からの貸付等)
第六十四条 政府は、公社に対し、長期若しくは一時の資金の貸付をし、又は電信電話債券の引受をすることができる。
(国庫余裕金の一時使用)
第六十五条 政府は、前条の一時の資金の貸付に代えて、当該事業年度内に限り、国庫余裕金を公社に一時使用させることができる。
2 前項の規定により一時使用させる金額については、大蔵大臣の定めるところにより、相当の利子を附するものとする。
(償還計画)
第六十六条 公社は、毎事業年度、長期借入金及び電信電話債券の償還計画をたてて、郵政大臣の承認を受けなければならない。
(現金の取扱)
第六十七条 公社は、業務に係る現金を国庫に預託しなければならない。但し、業務上必要があるときは、政令で定めるところにより、郵便局又は銀行その他大蔵大臣が指定する金融機関に預け入れることができる。
2 前項本文の規定により国庫に預託する金額については、大蔵大臣の定めるところにより、相当の利子を附するものとする。
(財産の処分の制限)
第六十八条 公社が電気通信幹線路及びこれに準ずる重要な電気通信設備を譲渡し、又は交換しようとするときは、国会の議決を経なければならない。
(会計職員)
第六十九条 総裁により契約を締結する職員として任命された者は、契約の締結に関し、総裁により現金の出納を命令する職員として任命された者は、債務者に対する支払の請求に関し、総裁により現金の出納をする職員として任命された者(以下「現金出納職員」という。)は、現金の支払及び受領に関し、総裁により物品の出納をする職員として任命された者(以下「物品出納職員」という。)は、物品の引渡及び受領に関し、それぞれ総裁を代理する。
第七十条 総裁は、現金出納職員又は物品出納職員が善良な管理者の注意を怠り、その保管に係る現金又は物品を亡失き損し、公社に損害を与えたときは、その損害の弁償を命じなければならない。
2 前項の規定により弁償を命ぜられた現金出納職員又は物品出納職員は、その責を免がれるべき理由があると信ずるときは、会計検査院の検定を求めることができる。但し、弁償を命ぜられた時から起算して五年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合において、会計検査院が現金出納職員又は物品出納職員に弁償の責がないと検定したときは、総裁は、その弁償の命令を取り消し、既納に係る弁償金を直ちに還付しなければならない。
(会計規程)
第七十一条 公社は、その会計に関し、この法律及びこれに基く政令に定めるものの外、会計規程を定めなければならない。
2 前項の会計規程は、公社の事業の企業的な経営と予算の適正な実施に役立つように定めなければならない。
3 公社は、第一項の会計規程を定めるときは、その基本事項について、郵政大臣の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。
4 公社は、第一項の会計規程を定めたときは、直ちにこれを郵政大臣及び会計検査院に通知しなければならない。
(給与準則)
第七十二条 公社は、その役員及び職員に対して支給する給与ついて給与準則を定めなければならない。この場合において、この給与準則は、これに基く一事業年度の支出が国会の議決を経た当該事業年度の予算の中で定められた給与の総額をこえるものであつてはならない。但し、経済事情の変動その他予測することができない事態に応ずるため特に必要があつて、郵政大臣の認可を受け、国会の議決を経た金額の範囲内で、臨時に給与を支給する場合については、この限りでない。
(会計検査)
第七十三条 公社の会計については、会計検査院が検査する。
(大蔵大臣との協議)
第七十四条 郵政大臣は、第六十二条第一項、第三項但書及び第七項の認可並びに第六十六条の承認をしようとするときは、大蔵大臣に協議しなければならない。
第五章 監督
(監督者)
第七十五条 公社は、郵政大臣がこの法律の定めるところに従い監督する。
(命令及び報告)
第七十六条 郵政大臣は、第一条に規定する目的を達成するため特に必要があると認めるときは、公社に対し監督上必要な命令をすることができる。
2 郵政大臣は、この法律を施行するため必要な限度において、公社からその業務に関する報告を徴することができる。
第六章 罰則
第七十七条 左の各号に掲げる違反があつた場合においては、その行為をした役員は、十万円以下の罰金に処する。
一 この法律により郵政大臣の承認又は認可を受けなければならない場合において、その承認又は認可を受けなかつたとき。
二 第三条に規定する業務以外の業務を行つたとき。
三 第六条第一項の規定による政令に違反して、登記することを怠り、又は不実の登記をしたとき。
四 前条第一項の規定による命令に違反したとき。
五 前条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
第七十八条 第七条の規定に違反した者は、五万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。
第七章 雑則
(恩給)
第七十九条 この法律の施行の際現に恩給法(大正十二年法律第四十八号)第十九条に規定する公務員たる者が引き続いて公社の役員又は職員となつた場合(その公務員が引き続いて、公社の役員若しくは職員又は同法第十九条に規定する公務員として在職し、更に引き続いて公社の役員又は職員となつた場合を含む。)には、同法第二十条に規定する文官として勤続するものとみなし、当分の間、これに同法の規定を準用する。
2 前項の規定により恩給法を準用する場合においては、恩給の給与等については、公社を行政庁とみなす。
3 第一項に規定する者又はその遺族の恩給の支払に充てるべき金額及びこの法律の施行前に給与事由が生じた恩給の支払に充てるべき金額で従前の電気通信事業特別会計が引き続き存続するものとした場合において電気通信事業特別会計において負担すべきこととなるものについては、公社が電気通信事業特別会計として存続するものとみなし、特別会計の恩給負担金を一般会計に繰り入れることに関する法律(昭和六年法律第八号)の規定を準用する。
4 第一項の規定により恩給法を準用する場合において、同項において準用する恩給法第五十九条の規定により公社の役員又は職員が納付すべき金額は、同条の規定にかかわらず、公社に納付するものとする。
(共済組合)
第八十条 公社の役員及び職員は、国に使用される者で国庫から報酬を受けるものとみなし、国家公務員共済組合法(昭和二十三年法律第六十九号)の規定を準用する。この場合において、同法中「各省各庁」とあるのは「日本電信電話公社」と、「各省各庁の長」とあるのは「日本電信電話公社総裁」と、第六十九条及び第九十二条中「国庫」とあるのは「日本電信電話公社」と、第七十三条第二項、第七十五条第二項及び第九十八条中「政府を代表する者」とあるのは「日本電信電話公社を代表する者」と読み替えるものとする。
2 国家公務員共済組合法第二条第一項の規定により電気通信省に設けられた共済組合は、前項の規定により準用する同法第二条第一項の規定により公社に設けられる共済組合となり同一性をもつて存続するものとする。
(健康保険等)
第八十一条 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第十二条第一項、厚生年金保険法(昭和十六年法律第六十号)第十六条ノ二及び船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第十五条の規定の適用については、公社の役員及び職員は、国に使用される者とみなす。
(災害補償)
第八十二条 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第三条第三項の規定の適用については、公社の事業は、国の直営事業とみなす。
(失業保険)
第八十三条 失業保険法(昭和二十二年法律第百四十六号)第七条の規定の適用については、公社の役員及び職員は、国に使用される者とみなす。
第八十四条 国庫は、公社がその役員及び職員に対しその離職に基く給付として失業保険法に規定する保険給付の内容をこえる給付を行う場合には、同法に規定する給付に相当する部分につき同法第二十八条第一項に規定する国庫の負担と同一割合によつて算定した金額を負担する。
(他の法令の準用)
第八十五条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他政令で定める法令については、政令で定めるところにより、公社を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。
(実施規定)
第八十六条 この法律の実施のための手続その他その施行について必要な事項は、政令で定める。
附 則
この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。
(内閣総理・大蔵・郵政・電気通信大臣署名)