法律第百二十三号(昭三五・七・二五)
◎身体障害者雇用促進法
目次
第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 職業紹介等(第三条―第五条)
第三章 適応訓練(第六条―第十条)
第四章 雇用(第十一条―第十五条)
第五章 身体障害者雇用審議会(第十六条―第二十二条)
第六章 雑則(第二十三条・第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、身体障害者が適当な職業に雇用されることを促進することにより、その職業の安定を図ることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の欠陥がある者をいう。
2 この法律において「特定職種」とは、労働能力はあるが、身体上の欠陥の程度が著しく重いため、通常の職業に就くことが特に困難である身体障害者の能力にも適合すると認められる政令で定める職種をいう。
3 この法律において「重度障害者」とは、前項に規定する身体障害者をいい、その範囲は、特定職種ごとに政令で定める。
4 この法律において「職員」とは、国若しくは地方公共団体又は日本専売公社、日本国有鉄道若しくは日本電信電話公社の機関に常時勤務する職員であつて、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第二条第三項第一号から第十一号までに掲げる職員、警察官、船員である職員その他政令で定める職員以外のものをいう。
5 この法律において「労働者」とは、坑内労働者、船員その他労働省令で定める労働者以外の労働者をいう。
第二章 職業紹介等
(求人の条件等)
第三条 公共職業安定所は、正当な理由がないにもかかわらず身体障害者でないことを条件とする求人の申込みを受理しないことができる。
2 公共職業安定所は、身体障害者にその能力に適合する職業を紹介するため必要があるときは、求人者に対して、身体的条件その他の求人の条件について指導するものとする。
3 公共職業安定所は、身体障害者について職業紹介を行なう場合において、求人者から求めがあるときは、その有する当該身体障害者の職業能力に関する資料を提供するものとする。
(就職後の指導)
第四条 公共職業安定所は、その紹介により就職した身体障害者に対して、就職後においても、その作業の環境に適応させるため必要な指導を行なうことができる。
(雇用主に対する助言)
第五条 公共職業安定所は、身体障害者を雇用し又は雇用しようとする者に対して、能力検査、配置、作業設備、作業補助具その他身体障害者の雇用に関する技術的事項について助言することができる。
第三章 適応訓練
(適応訓練)
第六条 都道府県は、必要があると認めるときは、求職者である身体障害者について、その能力に適合する作業の環境に適応することを容易にすることを目的として、適応訓練を行なうものとする。
2 適応訓練は、前項に規定する作業でその環境が標準的なものであると認められるものを行なう事業主に委託して実施するものとする。
(あつせん)
第七条 公共職業安定所は、身体障害者に対して、適応訓練を受けることについてあつせんするものとする。
(適応訓練を受ける者に対する措置)
第八条 適応訓練は、無料とする。
2 都道府県は、適応訓練を受ける身体障害者に対して、手当を支給することができる。
(経費の補助)
第九条 国は、都道府県が適応訓練を行なう場合においては、当該都道府県に対して、予算の範囲内で、その経費の一部を補助することができる。
(労働省令への委任)
第十条 この章に規定するもののほか、訓練期間その他適応訓練の基準については、労働省令で定める。
第四章 雇用
(雇用に関する国等の義務)
第十一条 国及び地方公共団体の任命権者(委任を受けて任命権を行なう者を除く。以下同じ。)並びに日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の総裁(以下「任命権者等」という。)は、職員の採用について、当該機関(当該任命権者の委任を受けて任命権を行なう者に係る機関を含む。以下同じ。)に勤務する身体障害者である職員の数が、当該機関の職員の総数に、政令で定める身体障害者雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)未満である場合には、身体障害者である職員の数がその身体障害者雇用率を乗じ得た数以上となるようにするため、政令で定めるところにより、身体障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
(採用状況の通報等)
第十二条 任命権者等は、政令で定めるところにより、前条の計画及びその実施状況を労働大臣(市町村の任命権者にあつては、都道府県知事。以下次項において同じ。)に通報しなければならない。
2 労働大臣は、特に必要があると認めるときは、前条の計画を作成した任命権者等に対して、その適正な実施に関する事項を勧告することができる。
(一般雇用主の雇用義務)
第十三条 常時労働者を使用する事業所(国及び地方公共団体並びに日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の機関を除く。以下同じ。)の雇用主は、労働者の雇入れについては、常時使用する身体障害者である労働者の数が、常時使用する労働者の総数に、事業の種類に応じて労働省令で定める身体障害者雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)以上であるように努めなければならない。
(身体障害者の雇入れに関する計画)
第十四条 公共職業安定所長は、身体障害者の雇用を促進するため特に必要があると認める場合は、常時百人以上の労働者を使用する事業所であつて、常時使用する身体障害者である労働者の数が前条の規定により算定した数未満であり、かつ、その数を増加するのに著しい困難を伴わないと認められるものの雇用主に対して、身体障害者である労働者の数がその前条の規定により算定した数以上となるようにするため、身体障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずることができる。
2 雇用主は、前項の規定により身体障害者の雇入れに関する計画を作成したときは、遅滞なく、これを公共職業安定所長に提出しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
3 公共職業安定所長は、身体障害者の雇入れに関する計画が著しく不適当であると認めるときは、当該雇用主に対してその変更を勧告することができる。
(重度障害者)
第十五条 任命権者等は、特定職種の職員の採用について、当該機関に勤務する重度障害者である当該職種の職員の数が、当該機関に勤務する当該職種の職員の総数に、職種に応じて政令で定める重度障害者雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)未満である場合には、重度障害者である当該職種の職員の数がその重度障害者雇用率を乗じて得た数以上となるようにするため、政令で定めるところにより、重度障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
2 第十二条の規定は、前項の計画について準用する。
3 常時労働者を使用する事業所の雇用主は、特定職種の労働者の雇入れについては、常時使用する重度障害者である当該職種の労働者の数が、常時使用する当該職種の労働者の総数に、職種に応じて労働省令で定める重度障害者雇用率を乗じて得た数(一人未満の端数は、切り捨てる。)以上であるように努めなければならない。
4 前条の規定は、常時使用する重度障害者である特定職種の労働者の数が前項の規定により算定した数未満であり、かつ、その数を増加するのに著しい困難を伴わないと認められる事業所(常時使用する当該職種の労働者の数が職種に応じて労働省令で定める数以上であるものに限る。)の雇用主について準用する。
第五章 身体障害者雇用審議会
(設置)
第十六条 労働省に、身体障害者雇用審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(権限)
第十七条 審議会は、労働大臣の諮問に応じて、身体障害者の雇用の促進に関する重要事項について調査審議し、及びこれらに関し必要と認める事項について関係行政機関に意見を述べることができる。
(組織)
第十八条 審議会は、二十人以内の委員をもつて組織する。
2 審議会には、委員のほか、専門委員を置くことができる。
3 専門委員は、議決に加わることができない。
(委員及び専門委員)
第十九条 委員は、労働者を代表する者、雇用主を代表する者、身体障害者を代表する者及び学識経験のある者のうちから、労働大臣が任命する。
2 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 専門委員は、専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、労働大臣が任命する。
4 委員及び専門委員は、非常勤とする。
(会長)
第二十条 審議会に、会長を置く。
2 会長は、学識経験のある者のうちから任命された委員のうちから、委員が選挙する。
3 会長は、審議会の会務を総理する。
4 会長に事故があるときは、あらかじめ第二項の規定の例により選挙された委員が会長の職務を代理する。
(庶務)
第二十一条 審議会の庶務は、労働省職業安定局において処理する。
(労働省令への委任)
第二十二条 この章に規定するもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、労働省令で定める。
第六章 雑則
(政府の義務等)
第二十三条 政府は、身体障害者の雇用の促進について、事業主その他国民一般の理解をたかめるため必要な措置を講ずるものとする。
2 労働大臣は、身体障害者に適当な職業、作業設備及び作業補助具その他身体障害者の職業安定に関し必要な事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるものとする。
(連絡及び協力)
第二十四条 公共職業安定所及び社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)に定める福祉に関する事務所その他の身体障害者に対する援護の機関は、身体障害者の雇用の促進を図るため、相互に、密接に連絡し、及び協力しなければならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(労働省設置法の一部改正)
2 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改正する。
第四条第三十八号の次に次の一号を加える。
三十八の二 身体障害者雇用促進法(昭和三十五年法律第百二十三号)に基づいて、身体障害者の雇入れに関する計画の作成を命ずること。
第十条第一項第三号の次に次の一号を加える。
三の二 身体障害者の採用又は雇入れに関する計画に関すること。
第十条第一項第八号中「及び炭鉱離職者臨時措置法」を「、炭鉱離職者臨時措置法及び身体障害者雇用促進法」に改める。
第十三条第一項の表中
「 |
地方職業安定審議会 |
都道府県知事の諮問に応じ、公共職業安定所の業務その他職業安定法の施行に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
を
「 |
地方職業安定審議会 |
都道府県知事の諮問に応じ、公共職業安定所の業務その他職業安定法の施行に関する重要事項を調査審議すること。 |
|
身体障害者雇用審議会 |
労働大臣の諮問に応じ、身体障害者の雇用の促進に関する重要事項を調査審議すること。 |
」 |
に改める。
第十八条第一項中「及び緊急失業対策法(これに基く命令を含む。)」を「、緊急失業対策法(これに基づく命令を含む。)及び身体障害者雇用促進法(これに基づく命令を含む。)」に改める。
別表 身体上の欠陥の範囲
一 次に掲げる視覚障害で永続するもの |
イ 両眼の視力(万国式試視力表によつて測つたものをいい、屈折異状がある者については、矯正視力について測つたものをいう。以下同じ。)がそれぞれ〇・一以下のもの |
ロ 一眼の視力が〇・〇七以下のもの |
ハ 両眼の視野がそれぞれ一〇度以内のもの |
ニ 両眼による視野の二分の一以上が欠けているもの |
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で永続するもの |
イ 両耳の聴力損失がそれぞれ六〇デシベル以上のもの |
ロ 一耳の聴力損失が八〇デシベル以上のもの |
ハ 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が五〇パーセント以下のもの |
ニ 平衡機能の著しい障害 |
三 音声機能、言語機能又はそしやく機能の著しい障害で永続するもの |
四 次に掲げる肢体不自由 |
イ 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で永続するもの |
ロ 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの、ひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの又は一上肢のひとさし指を指中手骨関節で欠くもの |
ハ 一下肢の第一指を指中足骨関節で欠くもの |
ニ 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの |
ホ 一下肢のすべての指の機能を喪失したもの |
五 前各号に掲げるもののほか、就職に著しい困難があると認められる労働省令で定める身体上の欠陥 |
(内閣総理・法務・外務・大蔵・文部・厚生・農林・通商産業・運輸・郵政・労働・建設大臣署名)