法律第百九号(昭三六・六・一)
◎公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律
目次
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 市街地改造事業
第一節 測量、調査及び土地の収用等(第七条―第十七条)
第二節 事業計画及び管理処分計画(第十八条―第三十条)
第三節 建築施設の部分による対償の給付(第三十一条―第三十九条)
第四節 建築施設に関する権利関係の確定等(第四十条―第五十条)
第五節 費用の負担等(第五十一条・第五十二条)
第三章 雑則(第五十三条―第六十七条)
第四章 罰則(第六十八条―第七十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、公共施設の整備に関連する市街地の改造に関し、市街地改造事業の施行その他必要な事項について規定することにより、都市の機能を維持し、及び増進するとともに、土地の合理的利用を図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 市街地改造事業 公共施設の用に供される土地及びその附近地においてこの法律で定めるところに従つて行なわれる公共施設の整備並びに建築物及び建築敷地の整備に関する事業並びにこれに附帯する事業をいう。
二 建築施設整備事業 市街地改造事業のうち建築物及び建築敷地の整備に関する事業(建築敷地の取得に関するものを除く。)並びにこれに附帯する事業をいう。
三 施行者 市街地改造事業を施行する者をいう。
四 施行地区 市街地改造事業を施行する土地の区域をいう。
五 公共施設 政令で定める重要な道路、広場その他の公共の用に供する施設をいう。
六 施設建築物 建築施設整備事業によつて建築される建築物をいう。
七 施設建築敷地 建築施設整備事業によつて造成される建築敷地をいう。
八 建築施設 施設建築物及び施設建築敷地をいう。
九 借地権 建物の所有を目的とする地上権及び賃借権をいう。ただし、臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
十 借家権 建物の賃借権をいう。ただし、一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。
(市街地の改造に関する都市計画)
第三条 建設大臣は、次の各号に掲げる条件に該当する土地の区域について、市街地改造事業を施行すべきことを、都市計画法(大正八年法律第三十六号)の定める手続によつて、都市計画として決定することができる。
一 当該区域内に公共施設に関する都市計画が決定されていること。
二 当該区域が建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第四十八条第一項の用途地域(工業地域を除く。)内にあること。
三 当該区域(公共施設の用に供される土地の区域を除く。以下次号において同じ。)の二分の一をこえる部分が建築基準法第五十九条第一項の高度地区(建築物の高さの最低限度が定められているものに限る。)内又は同法第六十条第一項の防火地域若しくは準防火地域内にあること。
四 当該区域内にある耐火建築物(建築基準法第二条第九号の二に規定する耐火建築物をいう。)以外の建築物で地階を除く階数が二以下であるものの建築面積の合計が当該区域内にあるすべての建築物の建築面積の合計の三分の二をこえていること。
五 当該区域内の公共施設の整備に伴い、建築敷地として形のととのわない又は地積の過小な土地が当該公共施設に隣接することとなるため、市街地としての環境が著しくそこなわれるおそれがあること。
六 当該区域内に建築物が密集しているため、土地の区画及び形質の変更のみによつては、当該区域内の土地の合理的利用の増進を図ることが困難であること。
第四条 前条の都市計画は、次の各号に掲げるところに従つて決定しなければならない。
一 公共施設の整備に関する計画は、前条第一号の都市計画に従つて定めること。
二 建築物の整備に関する計画は、公共施設の整備によつて生ずる空間の有効な利用及び建築物相互間の開放性の確保を考慮して、建築物が都市計画上当該区域にふさわしい階数、配列及び用途構成を備えた健全な高度利用形態となるように定めること。
三 建築敷地の整備に関する計画は、前号の高度利用形態に適合した適正な街区が形成されるように定めること。
(市街地改造事業の施行)
第五条 市街地改造事業は、都市計画事業として施行する。
(施行者)
第六条 都市計画法第五条の規定は、市街地改造事業には適用しない。
2 市街地改造事業は、次に掲げる者が施行する。
一 公共施設の管理者である又は管理者となるべき建設大臣、都道府県知事又は市町村長
二 公共施設の管理者である又は管理者となるべき都道府県又は市町村で、建設大臣に市街地改造事業を施行することを申し出たもの
3 公共施設の管理者又は管理者となるべき者が都道府県知事又は市町村長である場合において、その都道府県知事又は市町村長の統轄する都道府県又は市町村が建設大臣に建築施設整備事業を施行することを申し出たときは、建築施設整備事業は、その都道府県又は市町村が施行するものとする。
第二章 市街地改造事業
第一節 測量、調査及び土地の収用等
(測量及び調査のための土地の立入り等)
第七条 市街地改造事業を施行しようとする者又は施行者は、市街地改造事業の施行の準備又は施行のため他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行なう必要がある場合においては、その必要の限度において、他人の占有する土地に、自ら立ち入り、又はその命じた者若しくは委任した者に立ち入らせることができる。
2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、立ち入ろうとする日の三日前までに、その旨を土地の占有者に通知しなければならない。
3 第一項の規定により、建築物が所在し、又はかき、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を土地の占有者に告げなければならない。
4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があつた場合を除き、前項に規定する土地に立ち入つてはならない。
5 土地の占有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入りを拒み、又は妨げてはならない。
(障害物の伐除及び土地の試掘等)
第八条 前条第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入つて測量又は調査を行なう者は、その測量又は調査を行なうにあたり、やむを得ない必要があつて、障害となる植物若しくはかき、さく等(以下「障害物」という。)を伐除しようとする場合又は当該土地に試掘若しくはボーリング若しくはこれらに伴う障害物の伐除(以下「試掘等」という。)を行なおうとする場合において、当該障害物又は当該土地の所有者及び占有者の同意を得ることができないときは、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて当該障害物を伐除し、又は当該土地の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けて当該土地に試掘等を行なうことができる。この場合において、市町村長が許可を与えようとするときは障害物の所有者及び占有者に、都道府県知事が許可を与えようとするときは土地又は障害物の所有者及び占有者に、あらかじめ、意見を述べる機会を与えなければならない。
2 前項の規定により障害物を伐除しようとする者又は土地に試掘等を行なおうとする者は、伐除しようとする日又は試掘等を行なおうとする日の三日前までに、当該障害物又は当該土地若しくは障害物の所有者及び占有者に通知しなければならない。
3 第一項の規定により障害物を伐除しようとする場合(土地の試掘又はボーリングに伴う障害物の伐除をしようとする場合を除く。)において、当該障害物の所有者及び占有者がその場所にいないためその同意を得ることが困難であり、かつ、その現状を著しく損傷しないときは、市街地改造事業を施行しようとする者若しくは施行者又はその命じた者若しくは委任した者は、前二項の規定にかかわらず、当該障害物の所在地を管轄する市町村長の許可を受けて、ただちに、当該障害物を伐除することができる。この場合においては、当該障害物を伐除した後、遅滞なく、その旨をその所有者及び占有者に通知しなければならない。
(証明書等の携帯)
第九条 第七条第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯しなければならない。
2 前条の規定により障害物を伐除しようとする者又は土地に試掘等を行なおうとする者は、その身分を示す証明書及び市町村長又は都道府県知事の許可証を携帯しなければならない。
3 前二項に規定する証明書又は許可証は、関係人の請求があつた場合においては、これを提示しなければならない。
(土地の立入り等に伴う損失の補償)
第十条 市街地改造事業を施行しようとする者又は施行者(それらの者が、建設大臣であるときは国、都道府県知事であるときは都道府県、市町村長であるときは市町村)は、第七条第一項又は第八条第一項若しくは第三項の規定による行為により他人に損失を与えた場合においては、その損失を受けた者に対して通常生ずべき損失を補償しなければならない。
2 前項の規定による損失の補償については、損失を与えた者と損失を受けた者が協議しなければならない。
3 前項の規定による協議が成立しない場合においては、損失を与えた者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。
(測量のための標識の設置)
第十一条 市街地改造事業を施行しようとする者又は施行者は、市街地改造事業の施行の準備又は施行に必要な測量を行なうため必要がある場合においては、建設省令で定める標識を設けることができる。
2 何人も、前項の規定により設けられた標識を設置者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。
(関係簿書の閲覧等)
第十二条 市街地改造事業を施行しようとする者又は施行者は、市街地改造事業の施行の準備又は施行のため必要がある場合においては、施行地区となるべき区域若しくは施行地区を管轄する登記所に対し、又はその他の官公署の長に対し、無償で必要な簿書の閲覧若しくは謄写又はその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。
(建築行為等の制限)
第十三条 都市計画事業として決定された市街地改造事業を施行すべき土地の区域内において、市街地改造事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行ない、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行なおうとする者は、都道府県知事(建設大臣が市街地改造事業を施行すべき土地の区域内にあつては、建設大臣。以下この条において同じ。)の許可を受けなければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する許可の申請があつた場合において、その許可を与えようとするときは、あらかじめ、施行者の意見をきかなければならない。
3 都道府県知事は、第一項に規定する許可をする場合において、市街地改造事業の施行のため必要があると認めるときは、許可に期限その他必要な条件を附することができる。この場合において、これらの条件は、当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであつてはならない。
4 都道府県知事は、第一項の規定に違反し、又は前項の規定により附した条件に違反した者がある場合においては、これらの者又はこれらの者から当該土地、建築物その他の工作物若しくは物件についての権利を承継した者に対して、相当の期限を定めて、市街地改造事業の施行に対する障害を排除するため必要な限度において、当該土地の原状回復又は当該建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命ずることができる。
5 都道府県知事は、前項の規定により土地の原状回復又は建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命じようとするときは、あらかじめ、その原状回復又は移転若しくは除却を命ずべき者について聴聞を行なわなければならない。ただし、それらの者が正当な理由がなくて聴聞に応じないときは、この限りでない。
6 第四項の規定により土地の原状回復又は建築物その他の工作物若しくは物件の移転若しくは除却を命じようとする場合において、過失がなくてその原状回復又は移転若しくは除却を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、それらの者の負担において、その措置を自ら行ない、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行なわせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、これを原状回復し、又は移転し、若しくは除却すべき旨及びその期限までに原状回復し、又は移転し、若しくは除却しないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が、原状回復し、又は移転し、若しくは除却する旨を公告しなければならない。
7 前項の規定により土地を原状回復し、又は建築物その他の工作物若しくは物件を移転し、若しくは除却しようとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつた場合においては、これを提示しなければならない。
(市街地改造事業のための土地等の収用)
第十四条 施行者は、市街地改造事業の施行のため必要がある場合においては、市街地改造事業を施行すべき土地の区域内の土地又はその土地にある土地収用法第五条第一項各号に掲げる権利を収用することができる。
2 前項の規定により土地又は権利が収用される場合において、権原により当該土地又は当該権利の目的である土地に建築物を所有する者は、その建築物の収用を請求することができる。
(物件の移転命令等)
第十五条 施行者(施行者が都道府県又は市町村であるときは、都道府県知事又は市町村長)は、市街地改造事業の施行のため必要がある場合においては、市街地改造事業を施行すべき土地の区域内の建築物、工作物その他の物件の所有者で当該物件の存する土地に関し施行者に対抗することができる権利を有しないものに対して、相当の期限を定めて、当該物件の移転を命じ、当該物件の占有者で当該物件に関し所有者に対抗することができる権利を有しないものに対して、相当の期限を定めて、当該物件を所有者に引き渡すべきことを命ずることができる。
(一時収容施設等の設置のための土地等の使用)
第十六条 施行者は、市街地改造事業を施行すべき土地の区域内の建築物に居住する者で施設建築物に入居することとなるものを一時収容するため必要な施設その他市街地改造事業の施行のため欠くことのできない材料置場等の施設を設置するため必要な土地又はこれに関する所有権以外の権利を使用することができる。
(土地収用法の適用等)
第十七条 第十四条第一項の規定による収用又は前条の規定による使用に関しては、この法律に特別の規定がある場合のほか、土地収用法の規定を適用する。
2 都市計画法第十九条及び第二十条の規定は、第十四条第一項の規定による収用又は前条の規定による使用について準用する。
3 土地収用法第八十七条の規定は、第十四条第二項の規定による収用の請求について準用する。
第二節 事業計画及び管理処分計画
(事業計画の決定及び認可)
第十八条 施行者は、事業計画を定めなければならない。この場合において、建設大臣以外の施行者は、建設省令で定めるところにより、建設大臣の認可を受けなければならない。
2 前項後段の規定は、事業計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。
(事業計画の内容等)
第十九条 事業計画においては、建設省令で定めるところにより、施行地区(施行地区を工区に分けるときは、施行地区及び工区)、設計及び資金計画を定めなければならない。
2 この法律に規定するもののほか、事業計画の設定の技術的基準その他事業計画に関し必要な事項は、建設省令で定める。
(事業計画の公告)
第二十条 施行者は、事業計画を定め、若しくは変更したとき(政令で定める軽微な変更をしたときを除く。)、又は事業計画若しくはその変更の認可を受けたときは、その旨を公告しなければならない。
(譲受け希望の申出及び賃借り希望の申出)
第二十一条 事業計画を定め、又はその認可を受けた旨の公告があつたときは、施行地区内の土地の所有者、その土地について借地権を有する者(その者がさらに借地権を設定しているときは、その借地権の設定を受けた者)又は権原によりその土地に建築物を所有する者は、その公告があつた日から起算して三十日以内に、施行者に対し、建設省令で定めるところにより、その者が施行者から払渡しを受けることとなる当該土地、借地権又は建築物の対償に代えて、施設建築物の一部(施設建築物の共用部分の共有持分を含む。)及び施設建築敷地の共有持分(以下「建築施設の部分」と総称する。)の譲受けを希望する旨の申出(以下「譲受け希望の申出」という。)をすることができる。
2 前項の建築物について借家権を有する者(その者がさらに借家権を設定しているときは、その借家権の設定を受けた者。以下同じ。)は、同項の期間内に、施行者に対し、建設省令で定めるところにより、施設建築物の一部の賃借りを希望する旨の申出(以下「賃借り希望の申出」という。)をすることができる。
3 施行者は、譲受け希望の申出をした者の建築物について借家権を有する者から賃借り希望の申出があつたときは、遅滞なく、その旨を譲受け希望の申出をした者に通知しなければならない。
4 前三項の規定は、施行地区を変更して従前の施行地区外の土地を新たに施行地区に編入した場合において、事業計画を変更し、又はその変更の認可を受けた旨の公告があつたときに準用する。この場合において、第一項中「施行地区」とあるのは、「施行地区に編入された土地の区域」と読み替えるものとする。
(管理処分計画の決定及び認可)
第二十二条 施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、施行地区(施行地区が工区に分かれているときは、施行地区又は工区)ごとに建築施設の管理処分計画(以下「管理処分計画という。)を定めなければならない。この場合において、建設大臣以外の施行者は、建設省令で定めるところにより、建設大臣の認可を受けなければならない。
2 施行者は、管理処分計画を定めるには、審査委員の過半数の同意を得なければならない。
3 第一項後段及び前項の規定は、管理処分計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。
(管理処分計画の内容)
第二十三条 管理処分計画には、建設省令で定めるところにより、次の各号に掲げる事項を定めなければならない。
一 配置設計
二 譲受け希望の申出をした者で建築施設の部分を譲り受けることができるものの氏名又は名称及び住所
三 前号に掲げる者の土地、借地権又は建築物並びにその者がその対償に代えて譲り受ける建築施設の部分の明細及びその価額の概算額
四 賃借り希望の申出をした者が施設建築物の一部を賃借りすることができるものの氏名又は名称及び住所
五 前号に掲げる者が賃借りする施設建築物の一部
六 第三号の建築施設の部分及び前号の施設建築物の一部の引渡しの期間
七 建築施設のうち第三号の建築施設の部分及び施行者が賃貸しする第五号の施設建築物の一部以外の部分の明細及び管理処分の方法
八 施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額及び家賃以外の借家条件の概要
九 その他建設省令で定める事項
(管理処分計画の基準)
第二十四条 管理処分計画は、災害を防止し、衛生を向上し、その他居住条件を改善するとともに、建築施設の合理的利用を図るように定めなければならない。
第二十五条 管理処分計画においては、譲受け希望の申出をした者に対しては建築施設の部分を譲り渡すように定め、賃借り希望の申出をした者のうち、建築施設の部分を譲り受ける者の所有する建築物について借家権を有する者に対してはその所有者が譲り受ける施設建築物の一部を、その他の者に対しては譲受け希望の申出をした者に譲り渡さない施設建築物の一部を賃借りすることができるように定めなければならない。
2 譲受け希望の申出をした者が譲り受ける建築施設の部分及び賃借り希望の申出をした者が賃借りする施設建築物の一部は、それらの者が権利を有する施行地区内の土地又は建築物の位置、地積又は床面積、環境及び利用状況とそれらの者が譲り受け、又は賃借りする施設建築物の一部の位置、床面積及び環境とを総合的に勘案して、それらの者の相互間に不均衡が生じないように定めなければならない。
3 管理処分計画を前条の基準に適合させるため特別な必要がある場合においては、前項の規定によれば床面積が過小となる施設建築物の一部の床面積を増して適正なものとすることができる。この場合においては、必要な限度において、前項の規定によれば床面積が大で余裕がある施設建築物の一部の床面積を減ずることができる。
4 前項の過小な床面横の基準は、政令で定める基準に従い、施行者が審査委員の過半数の同意を得て定める。
5 前項の規定により定められた床面積の基準に照らし床面積が著しく小である施設建築物の一部を譲り受け、又は賃借りすることとなる者に対しては、第一項の規定にかかわらず、建築施設の部分を譲り渡さず、又は施設建築物の一部を賃借りすることができないこととすることができる。
第二十六条 譲受け希望の申出をした者に譲り渡す施設建築物の共用部分の共有持分及び施設建築敷地の共有持分の割合は、政令で定めるところにより、その者に譲り渡す施設建築物の一部の位置及び床面積を勘案して定めなければならない。
第二十七条 譲受け希望の申出をした者に譲り渡す建築施設の部分の価額の概算額及び施行者が施設建築物の一部を賃貸しする場合における標準家賃の概算額は、政令で定めるところにより、建築施設整備事業及び建築敷地の取得に関する事業に要する費用並びに近傍類似の土地又は建築物の価額を基準として定めなければならない。
第二十八条 建築施設のうち譲受け希望の申出をした者に譲り渡し、又は賃借り希望の申出をした者に賃貸ししない部分は、原則として、公募により譲り渡し、又は賃貸しすることとしなければならない。
(管理処分計画の縦覧等)
第二十九条 施行者は、管理処分計画を定めようとするときは、これを二週間譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者の縦覧に供しなければならない。この場合においては、あらかじめ、縦覧の開始の日、縦覧の場所及び縦覧の時間をそれらの者に通知しなければならない。
2 譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者は、縦覧期間内に、管理処分計画について施行者に意見書を提出することができる。
3 施行者は、前項の意見書の提出があつた場合においては、これを審査委員の審査に付し、その意見書に係る意見を採択すべきであると認めるときは管理処分計画に必要な修正を加え、その意見書に係る意見を採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書を提出した者に通知しなければならない。
4 前項の通知を受けた者は、その通知を受けた日から一週間以内に、譲受け希望の申出又は賃借り希望の申出を撤回することができる。
5 施行者が管理処分計画に必要な修正を加えたときは、その修正部分についてさらに第一項からこの項までに規定する手続を行なうべきものとする。ただし、その修正が政令で定める軽微なものである場合においては、その修正部分に係る者にその内容を通知することをもつて足りる。
6 前五項の規定は、管理処分計画を変更する場合(政令で定める軽微な変更をする場合を除く。)に準用する。この場合において、第一項及び第二項中「譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者」とあるのは、「変更部分に係る譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者」と読み替えるものとする。
(管理処分計画の公告等)
第三十条 施行者は、管理処分計画を定め、若しくは変更したとき(政令で定める軽微な変更をしたときを除く。)又は管理処分計画若しくはその変更の認可を受けたときは、遅滞なく、建設省令で定める事項を、公告するとともに、譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者に通知しなければならない。
第三節 建築施設の部分による対償の給付
(建築施設の部分による対償の給付)
第三十一条 管理処分計画において建築施設の部分を譲り受ける者として定められた者(以下「建築施設の部分の譲受け予定者」という。)の土地、借地権又は建築物が施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者に取得され、又は消滅する場合においては、その取得又は消滅につき施行者が払い渡すべき対償(その対償の額が当該建築施設の部分の価額をこえるときは、その対償のうち当該価額に相当する部分)に代えて、この法律で定めるところにより当該建築施設の部分が給付されるものとする。
2 土地収用法第百条の規定は、前項に規定する対償(その対償の額が管理処分計画において定められた当該建築施設の部分の価額の概算額をこえるときは、その対償のうち当該概算額に相当する部分)に関しては適用しない。
3 第一項の土地、借地権又は建築物が施行者との契約に基づき施行者に取得されたときは、これらの土地、借地権又は建築物の上の先取特権、質権又は抵当権は、消滅する。
(物上代位)
第三十二条 前条第一項の土地、借地権又は建築物が先取特権、質権又は抵当権の目的である場合においては、その先取特権、質権又は抵当権を有する者は、同項の規定による建築施設の部分の給付を受ける権利及び次条、第三十八条、第四十一条第二項又は第四十七条第二項の規定による供託金に対して、その権利を行なうことができる。
2 一の建築施設の部分が二以上の土地、借地権又は建築物の対償に代えて給付される場合においては、各土地、借地権又は建築物の上の先取特権、質権又は抵当権を有する者が前項の規定に基づき優先弁済を受けることができる範囲は、当該建築施設の部分の給付を受ける権利の代価のうち、これを当該各土地、借地権又は建築物の対償の額に応じて配分した額を限度とする。
(土地等の取得又は消滅の際における対償の払渡しに代えての供託)
第三十三条 第三十一条第一項の土地、借地権又は建築物が先取特権、質権又は抵当権の目的である場合において、同項の対償の額が管理処分計画において定められた建築施設の部分の価額の概算額(前条第二項に規定する場合においては、同項の例により配分した額)をこえるときは、施行者は、その差額に相当する金額を払渡しに代えて供託しなければならない。
(土地等の取得又は消滅の制限)
第三十四条 譲受け希望の申出をした者の土地、借地権又は建築物は、管理処分計画の公告(第二十一条第四項において準用する同条第一項の規定により譲受け希望の申出をした者にあつては、当該施行地区の変更に伴う管理処分計画の変更の公告。以下次条において同じ。)の日前及びその日から起算して二週間以内においては、その者と施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者が取得し、又は消滅させることはできない。
(対償の額が定められた場合の譲受け希望の申出の撤回)
第三十五条 建築施設の部分の譲受け予定者で、その土地、借地権又は建築物に関し、第二十九条第一項又は第五項の規定による縦覧期間(同条第三項又は第五項の規定により意見書に係る意見を採択しない旨の通知を受けた者にあつては、同条第四項又は第五項の規定により譲受け希望の申出を撤回することができる期間)(第二十一条第四項において準用する同条第一項の規定により譲受け希望の申出をした者にあつては、当該施行地区の変更に伴う管理処分計画の変更に関し、第二十九条第六項において準用する同条第一項、第四項又は第五項の規定によるこれらの期間)の末日以後管理処分計画の公告の日の前日までの間に、譲渡若しくは消滅に関する施行者との契約が成立し、又は収用による損失の補償の裁決を受けたものは、管理処分計画において譲り受けることと定められた建築施設の部分の価額の概算額がその土地、借地権又は建築物の対償の額をこえる場合に限り、管理処分計画の公告の日から起算して二週間以内に、その譲受け希望の申出を撤回するこができる。
2 建築施設の部分の譲受け予定者で、その土地、借地権又は建築物に関し、管理処分計画の公告の日以後に、譲渡若しくは消滅に関する施行者との契約が成立し、又は収用による損失の補償の裁決を受けたものは、管理処分計画において譲り受けることと定められた建築施設の部分の価額の概算額がその土地、借地権又は建築物の対償の額をこえる場合に限り、その契約が成立し、又は裁決を受けた日からその譲渡若しくは消滅の日又は収用の時期までの間に、その譲受け希望の申出を撤回することができる。
(管理処分計画の変更に伴う対償の払渡し)
第三十六条 建築施設の部分の譲受け予定者が第二十九条第六項において準用する同条第四項の規定により譲受け希望の申出を撤回したときは、施行者は、その者の土地、借地権又は建築物の対償のうち払渡しをしていない部分の金額を払い渡さなければならない。
2 建築施設の部分の価額の概算額を減ずる管理処分計画の変更をした場合において、建築施設の部分の譲受け予定者の土地、借地権又は建築物の対償のうち払渡しをしていない部分の金額が変更後の概算額をこえるときは、施行者は、その差額に相当する金額を払い渡さなければならない。
(利息相当額の払渡し)
第三十七条 施行者は、建築施設の部分の譲受け予定者の土地、借地権又は建築物の対償のうち払渡しをしていない部分の金額については、政令で定めるところにより、政令で定める利率により算出した利息に相当する金額を払い渡さなければならない。
(管理処分計画の変更に伴う対償の払渡し及び利息相当額の払渡しに代えての供託)
第三十八条 前二条の土地、借地権又は建築物が、施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者に取得され、又は消滅する時において、先取特権、質権又は抵当権の目的となつていた場合においては、施行者は、前二条の規定により払い渡すべき金額(第三十六条第二項の場合において、第三十二条第二項に規定する場合に該当するときは、同項の例により配分した金額)を払渡しに代えて供託しなければならない。
(建築施設の部分の給付を受ける権利の譲渡等の対抗要件)
第三十九条 第三十一条第一項の規定による建築施設の部分の給付を受ける権利の譲渡又はその権利を目的とする質権の設定は、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百六十七条の規定に従い、建設省令で定めるところにより、施行者に通知しなければ、施行者その他の第三者に対抗することができない。
第四節 建築施設に関する権利関係の確定等
(工事の元了の公告等)
第四十条 施行者は、建築施設整備事業に関する工事が完了したときは、遅滞なく、その旨を、公告するとともに、建築施設の部分の譲受け予定者及び管理処分計画において施設建築物の一部を賃借りすることができる者として定められた者に通知しなければならない。
(建築施設の部分の取得等)
第四十一条 前条の公告の日の翌日において、建築施設の部分の譲受け予定者は、管理処分計画において定められた建築施設の部分を取得し、管理処分計画において施設建築物の一部を賃借りすることができる者として定められた者は、その施設建築物の一部について賃借権を取得する。
2 建築施設の部分の譲受け予定者の土地、借地権又は建築物が、施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者に取得され、又は消滅する時において、先取特権、質権又は抵当権の目的となつていた場合において、前条の公告の日までに、その者とその先取特権、質権又は抵当権(これらの権利を目的とする権利を含む。)を有していた者との間に、当該建築施設の部分の譲受け予定者の建築施設の部分の給付を受ける権利に対する第三十二条第一項の規定による権利の消滅に関する合意が成立しないときは、当該建築施設の部分の譲受け予定者は、その譲受け希望の申出を撤回したものとみなし、施行者は、その者の土地、借地権又は建築物の対償のうち払渡しをしていない部分の金額を払渡しに代えて供託しなければならない。
3 前項に規定する合意が成立したときは、当事者は、前条の公告の日の翌日から起算して一週間を経過する日までに、建設省令で定めるところにより、その旨を施行者に届け出なければならない。
4 前項の期日までに同項の届出がないときは、第二項に規定する合意が成立しなかつたものとみなす。
5 第一項の賃借権は、次条第二項の質権又は抵当権に対抗することができない。
(登記の嘱託)
第四十二条 施行者は、政令で定めるところにより、前条第一項の規定により建築施設の部分を取得した者のために、遅滞なく、所有権の取得の登記を登記所に嘱託しなければならない。
2 前条第二項に規定する合意が、同条第一項の規定により取得される建築施設の部分に質権又は抵当権を設定すべきことを条件として成立した場合においては、施行者は、政令で定めるところにより、質権者又は抵当権者のために、質権又は抵当権の設定の登記を登記所に嘱託しなければならない。
(借家条件の協議)
第四十三条 建築施設の部分の譲受け予定者と管理処分計画においてその者から施設建築物の一部を賃借りすることができる者として定められた者は、家賃その他の借家条件について協議しなければならない。
(借家条件の裁定)
第四十四条 第四十条の公告の日までに前条の規定による協議が成立しない場合においては、施行者(施行者が都道府県又は市町村であるときは、都道府県知事又は市町村長。以下次項において同じ。)は、当事者の一方又は双方の申立てにより、審査委員の過半数の同意を得て、次の各号に掲げる事項について裁定することができる。
一 賃借りの目的
二 家賃の額、支払期日及び支払方法
三 敷金又は借家権の設定の対価を支払うべき場合にあつては、その額
2 施行者は、前項の規定による裁定をする場合においては、賃借りの目的については賃借り部分の構造及び賃借り人の職業を、家賃の額については賃貸し人の受けるべき適正な利潤を、その他の事項についてはその地方における一般の慣行を考慮して定めなければならない。
3 第一項の規定による裁定に関し必要な手続に関する事項は、政令で定める。
(裁定の効果)
第四十五条 前条第一項の規定による裁定があつたときは、裁定の定めるところにより、当事者間に協議が成立したものとみなす。
(建築施設の部分の価額等の確定)
第四十六条 施行者は、建築施設整備事業に関する工事が完了したときは、すみやかに、建築施設整備事業及び建築敷地の取得に関する事業に要した費用の額を確定するとともに、政令で定めるところにより、その確定した額及び近傍類似の土地又は建築物の価額を基準として、建築施設の部分の譲受け予定者が取得した建築施設の部分の価額及び賃借り希望の申出をした者が施行者から賃借りした施設建築物の一部の家賃の額を確定しなければならない。
(清算)
第四十七条 前条の規定により確定した建築施設の部分の価額と当該建築施設の部分を第四十一条第一項の規定により取得した者の土地、借地権又は建築物の対償のうち払渡しをしていない部分の金額とに差額がある場合においては、施行者は、その差額に相当する金額を徴収し、又は交付しなければならない。
2 前項の土地、借地権又は建築物が、施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者に取得され、又は消滅する時において、先取特権、質権又は抵当権の目的となつていた場合においては、施行者は、同項の規定により交付すべき清算金(第三十二条第二項に規定する場合においては、同項の例により配分した金額)を払渡しに代えて供託しなければならない。
3 第一項の規定により徴収すべき清算金は、政令で定めるところにより、利子を附して分割して徴収することができる。
4 施行者は、第一項の規定により徴収すべき清算金(前項の規定により利子を附した場合においては、その利子を含む。以下同じ。)を滞納する者があるときは、督促状によつて納付すべき期限を指定して督促することができる。
5 前項の規定による督促をするときは、施行者は、政令で定めるところにより、百円につき一日四銭の割合を乗じて計算した額の範囲内の延滞金を徴収することができる。
6 第四項の規定による督促を受けた者がその督促状において指定した期限までにその納付すべき清算金を納付しないときは、施行者は、国税滞納処分の例により当該清算金及び前項に規定する延滞金を徴収することができる。この場合における清算金及び延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。
7 延滞金は、清算金に先だつものとする。
(消滅時効)
第四十八条 前条第一項の清算金及び同条第五項の延滞金を徴収する権利は、五年間これを行なわないときは、時効によつて消滅する。
2 前条第四項の規定による督促は、民法第百五十三条の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
(先取特権)
第四十九条 第四十七条第一項の清算金を徴収する権利を有する施行者は、同項の建築施設の部分の上に先取特権を有する。
2 前項の先取特権は、第四十二条第一項の規定による登記の際に清算金の予算額を登記することによつてその効力を保存する。ただし、清算金の額がその予算額を超過するときは、その超過額については存在しない。
3 第一項の先取特権は、不動産工事の先取特権とみなし、前項本文の規定に従つてした登記は、民法第三百三十八条第一項本文の規定に従つてした登記とみなす。
(第二十三条第七号に規定する部分の管理処分)
第五十条 施行者は、建築施設のうち第二十三条第七号に規定する部分については、管理処分計画で定めるところにより、管理し、又は処分しなければならない。
第五節 費用の負担等
(費用の負担等)
第五十一条 都市計画法第六条から第七条まで及び第九条の規定は、市街地改造事業には適用しない。
第五十二条 市街地改造事業によつて整備される公共施設、建築物その他の施設の整備に要する費用に関し他の法令(都市計画法及びこれに基づく命令を除く。)に施行者以外の者の費用の負担又は補助に関する特別の規定がある場合においては、それらの規定の適用があるものとする。この場合において、その適用に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 雑則
(審査委員)
第五十三条 施行者(施行者が都道府県又は市町村であるときは、都道府県知事又は市町村長。以下次項において同じ。)は、その施行する市街地改造事業ごとに、この法律又はこの法律に基づく命令で定める権限を行なわせるため、審査委員三名以上を選任しなければならない。
2 施行者は、審査委員を選任しようとするときは、あらかじめ、譲受け希望の申出をした者及び賃借り希望の申出をした者の賛否を求め、その二分の一をこえる者の反対があつた者は審査委員に選任することができない。
3 前二項に規定するもののほか、審査委員に関し必要な事項は、政令で定める。
(処分、手続等の効力の承継)
第五十四条 施行者、施行地区内の建築物若しくは土地について権利を有する者又は第三十一条第一項の規定による建築施設の部分の給付を受ける権利を有する者の変更があつた場合においては、この法律又はこの法律に基づく命令により従前のこれらの者がした処分、手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者がしたものとみなし、従前のこれらの者に対してした処分、手続その他の行為は、新たにこれらの者となつた者に対してしたものとみなす。
(不動産登記法の特例)
第五十五条 施行地区内の土地及び建物の登記については、政令で不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の特例を定めることができる。
(財産の管理処分に関する法令の規定の適用の特例)
第五十六条 施行者がこの法律の規定により建築施設を管理し、又は処分する場合においては、施行者が、都道府県知事又は都道府県であるときは都道府県の、市町村長又は市町村であるときは市町村の、それぞれの財産の管理処分に関する法令の規定は、適用しない。
(関係簿書の備付け)
第五十七条 施行者は、建設省令で定めるところにより、市街地改造事業に関する薄書をその事務所に備え付けておかなければならない。
2 利害関係人から前項の薄書の閲覧の請求があつた場合においては、施行者は、正当な理由がないのに、これを拒んではならない。
(書類の送付に代わる公告)
第五十八条 施行者は、市街地改造事業の施行に関し書類を送付する場合において、送付を受けるべき者がその書類の受領を拒んだとき、又は過失がなくて、その者の住所、居所その他書類を送付すべき場所を確知することができないときは、その書類の内容を公告することをもつて書類の送付に代えることができる。
2 前項の公告があつた場合においては、その公告があつた日から起算して十日を経過した日に、当該書類が送付を受けるべき者に到達したものとみなす。
(意見書等の提出の期間の計算等)
第五十九条 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により一定の期間内に施行者に差し出すべき意見書その他の文書が郵便で差し出された場合においては、郵送に要した日数は、期間に算入しない。
2 前項の文書は、その提出期限が経過した後においても、容認すべき理由がある場合においては、受理することができる。
(技術的援助の請求)
第六十条 都道府県知事又は都道府県は建設大臣に対して、市町村長又は市町村は建設大臣及び都道府県知事に対して、市街地改造事業の施行の準備又は施行のため、それぞれ市街地改造事業に関し専門的知識を有する職員の技術的援助を求めることができる。
(監督)
第六十一条 建設大臣は、施行者の行なう処分又は工事が、この法律、この法律に基づく命令又はこれらに基づく建設大臣若しくは都道府県知事の処分に違反していると認める場合においては、その施行者に対し、市街地改造事業の適正な施行を確保するため必要な限度において、その処分の取消し、変更若しくは停止又はその工事の中止若しくは変更その他必要な措置を命ずることができる。
(報告、勧告等)
第六十二条 建設大臣は都道府県知事、都道府県、市町村長又は市町村に対して、都道府県知事は市町村長又は市町村に対して、市街地改造事業の施行に関し、この法律の施行のため必要な限度において、報告若しくは資料の提出を求め、又は市街地改造事業の施行の促進を図り、若しくは建築施設の管理処分を適正に行なわせるため必要な勧告、助言若しくは援助をすることができる。
(異議の申立て、訴願及び訴訟)
第六十三条 第十三条第四項若しくは第十五条の規定による命令又は第四十四条第一項の規定による裁定について不服のある者は、その命令又は裁定があつた日から三十日以内にその命令又は裁定をした都道府県知事又は施行者(施行者が都道府県又は市町村であるときは、都道府県知事又は市町村長。以下次項において同じ。)に異議の申立てをすることができる。
2 前項の規定による異議の申立てがあつたときは、都道府県知事又は施行者は、申立てを受理した日から三十日以内に文書をもつて決定しなければならない。
3 前項の規定による決定に不服のある者は、決定の通知を受けた日から二十日以内に建設大臣に訴願することができる。
4 第四十四条第一項の規定による裁定を受けた者は、前項の規定による訴願の裁決に不服がある場合においては、行政事件訴訟特例法(昭和二十三年法律第八十一号)第五条第一項の規定にかかわらず、その裁決があつた日から三月以内に限り、訴を提起することができる。
5 訴願法(明治二十三年法律第百五号)第十二条の規定は、第一項の規定による異議の申立てについて準用する。
(建築施設整備事業の施行者がある場合の読替え)
第六十四条 第六条第三項の規定による施行者(以下この条において「建築施設整備事業の施行者」という。)がある場合においては、第二十一条第一項及び第四項中「事業計画」とあるのは「建築施設整備事業に関する事業計画」とし、同条第一項から第三項まで、第二十二条第一項及び第二項、第二十三条第七号及び第八号、第二十五条第四項、第二十七条、第二十九条第一項から第三項まで及び第五項、第三十条、第三十六条から第四十条まで、第四十一条第二項及び第三項、第四十二条、第四十四条第一項及び第二項、第四十六条、第四十七条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第五十条、第五十三条第一項及び第二項並びに第五十六条中「施行者」とあるのは「建築施設整備事業の施行者」とし、第三十一条第一項及び第三項並びに第三十三条から第三十五条まで中「施行者」とあるのは「市街地改造事業のうち建築施設整備事業以外の部分の施行者」とする。ただし、第二十一条第一項中「施行者から」とあるのは「市街地改造事業のうち建築施設整備事業以外の部分の施行者から」とし、第三十八条、第四十一条第二項及び第四十七条第二項中「施行者との契約に基づき、又は収用により、施行者に」とあるのは「市街地改造事業のうち建築施設整備事業以外の部分の施行者との契約に基づき、又は収用により、その施行者に」とする。
(権限の委任)
第六十五条 この法律又はこの法律に基づく政令の規定により建設大臣に属する権限は、政令で定めるところにより、その一部を都道府県知事に委任することができる。
(大都市の特例)
第六十六条 この法律又はこの法律に基づく政令の規定により、都道府県又は都道府県知事(以下この条において「都道府県等」という。)が処理し、又は管理し、及び執行することとされている市街地改造事業に関する事務(都道府県等が施行する市街地改造事業に係る事務を除く。)は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下この条において「指定都市」という。)においては、指定都市又は指定都市の長(以下この条において「指定都市等」という。)が行なうものとする。この場合においては、この法律又はこの法律に基づく政令中都道府県等に関する規定は、指定都市等に関する規定として指定都市等に適用があるものとする。
(政令への委任)
第六十七条 この法律に特に定めるもののほか、この法律によりなすべき公告の方法その他この法律の実施のため必要な事項は、政令で定める。
第四章 罰則
(罰則)
第六十八条 次の各号の一に該当する者は、六月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
一 第七条第一項の規定による土地の立入りを拒み、又は妨げた者
二 第八条第一項に規定する場合において、市町村長の許可を受けないで障害物を伐除した者又は都道府県知事の許可を受けないで土地に試掘等を行なつた者
三 第十三条第四項の規定による命令に違反して、土地の原状回復をせず、又は建築物その他の工作物若しくは物件を移転し、若しくは除却しなかつた者
第六十九条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。
一 第十一条第二項の規定に違反して、同条第一項の規定による標識を移転し、除却し、汚損し、又は損壊した者
二 第十五条の規定による命令に違反して、建築物、工作物その他の物件を移転せず、又は所有者に引き渡さなかつた者
第七十条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(旧土地台帳法等の特例)
2 施行地区内の土地及び建物に関して不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和三十五年法律第十四号)附則第三条第三号の規定により同法第二条の規定による廃止前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)及び家屋台帳法(昭和二十二年法律第三十一号)の規定が適用される場合においては、第五十五条中「登記」とあるのは「登記及び登録」と、「不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)」とあるのは「不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)並びに不動産登記法の一部を改正する等の法律(昭和三十五年法律第十四号)第二条の規定による廃止前の土地台帳法(昭和二十二年法律第三十号)及び家屋台帳法(昭和二十二年法律第三十一号)」と読み替えるものとする。
(登録税法の一部改正)
3 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。
第十九条中第二十一号ノ三を第二十一号ノ四とし、第二十一号ノ二を第二十一号ノ三とし、第二十一号の次に次の一号を加える。
二十一ノ二 公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律ニ依ル市街地改造事業ノ施行ノタメ必要ナル土地又ハ建物ニ関スル登記ニシテ施行者ノ嘱託ニ係ルモノ
(都市計画法の一部改正)
4 都市計画法の一部を次のように改正する。
第十一条ノ二中「第十二条ノ土地区画整理事業」の下に「若ハ第十六条第二項ノ建築敷地造成ニ関スル事業」を加える。
第十六条第二項中「政令」を「法律」に改める。
第二十一条中「及第十六条第二項ノ規定ニ依り収用シタル土地」を削る。
(建設省設置法の一部改正)
5 建設省設置法(昭和二十三年法律第百十三号)の一部を次のように改正する。
第三条第五号の七の次に次の一号を加える。
五の八 公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三十六年法律第百九号)の施行に関する事務を管理すること。
(地方税法の一部改正)
6 地方税法の一部を次のように改正する。
第七十三条の十四中第八項を第九項とし、第七項を第八項とし、第六項の次に次の一項を加える。
7 公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三十六年法律第百九号)第三十一条第一項の規定による建築施設の部分の給付を受ける権利を取得した者(譲渡に因り当該権利を取得した者を除く。)が同法第四十一条第一項の規定により建築施設の部分を取得した場合においては、当該建築施設の部分の取得に対して課する不動産取得税の課税標準の算定については、前項の規定にかかわらず、その者が市街地改造事業を施行する土地の区域内に所有していた不動産の固定資産課税台帳に登録された価格(当該不動産の価格が固定資産課税台帳に登録されていない場合にあつては、政令で定めるところにより、道府県知事が第三百八十八条第三項の規定によつて示された評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続に準じて決定した価格)に相当する額を価格から控除するものとする。
(租税特別措置法の一部改正)
7 租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。
第三十一条第一項第一号中「都市計画法(大正八年法律第三十六号)」の下に「、公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三十六年法律第百九号。以下次条及び第三十四条において「市街地改造法」という。)」を加える。
第三十二条第一項中第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。
三 土地、土地の上に存する権利又は建築物が市街地改造法による市街地改造事業の施行により買い取られ、又は収用された場合において、同法第三十一条第一項の規定によりその対償として同項に規定する建築施設の部分の給付を受ける権利を取得するとき。
第三十二条に次の一項を加える。
4 第一項第三号の規定の適用を受けた場合において、同号の給付を受ける権利につき譲渡、遺贈( 包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除く。以下第三十九条までにおいて同じ。)又は贈与(相続人に対する贈与で被相続人たる贈与者の死亡により効力を生ずべきものを除く。以下第三十九条までにおいて同じ。)があつたときは、政令で定めるところにより、当該譲渡、遺贈又は贈与のあつた日において同号に規定する土地、土地の上に存する権利又は建築物の譲渡、遺贈又は贈与があつたものとみなして所得税法第九条第一項及び資産再評価法第八条第二項又は第九条の規定を適用し、市街地改造法第三十六条第一項若しくは第二項若しくは第四十一条第二項の規定に該当することとなつたとき、又は同法第四十七条第一項の規定により同項の差額に相当する金額の交付を受けることとなつたときは、そのなつた日において当該土地、土地の上に存する権利又は建築物(同法第三十六条第二項又は第四十七条第一項の規定に該当する場合には、これらの資産のうちこれらの規定に規定する差額に相当する金額に対応するものとして政令で定める部分)につき収用等による譲渡があつたものとみなして前条の規定を適用する。
第三十四条第一項中「第三十二条の」を「第三十二条第一項若しくは第二項の」に改め、「代替資産又は換地処分等」の下に「(市街地改造法第三十一条第一項の規定による給付を含む。以下この条において同じ。)」を加え、「(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈を除く。以下第三十九条までにおいて同じ。)」、「(相続人に対する贈与で被相続人たる贈与者の死亡により効力を生ずべきものを除く。以下第三十九条までにおいて同じ。)」及び「第三十二条第一項に規定する」を削る。
第六十五条第一項中第三号を第四号とし、第二号の次に次の一号を加える。
三 土地、土地の上に存する権利又は建築物が市街地改造法(第三十一条第一項第一号に規定する市街地改造法をいう。以下この条において同じ。)による市街地改造事業の施行により買い取られ、又は収用された場合において、同法第三十一条第一項の規定によりその対償として同項に規定する建築施設の部分の給付を受ける権利を取得するとき。
第六十五条に次の一項を加える。
5 第一項第三号の規定の適用を受けた場合において、市街地改造法第三十六条第一項若しくは第二項若しくは第四十一条第二項の規定に該当することとなつたとき、又は同号の給付を受ける権利に基づき同号の建築施設の部分を取得したとき(当該建築施設の部分とともに同法第四十七条第一項に規定する差額に相当する金額の交付を受けるときを含む。)は、その該当し、又は取得した日において、当該権利(同法第三十六条第二項の規定に該当する場合には、当該権利のうち同項に規定する差額に相当する金額に対応するものとして政令で定める部分)につき収用等又は換地処分等による譲渡があつたものとみなして前二条又は第一項から前項までの規定を適用する。
(首都高速道路公団法の一部改正)
8 首都高速道路公団法(昭和三十四年法律第百三十三号)の一部を次のように改正する。
第二十九条第一項第三号中「新設又は改築」を「新設若しくは改築」に改め、「係るもの」の下に「又は公共施設の整備に関連する市街地の改造に関する法律(昭和三十六年法律第百九号)に基づく市街地改造事業でこれに関連するもの」を加える。
(法務・大蔵・建設・自治・内閣総理大臣署名)