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法律第百十六号(昭三八・七・一)

  ◎金属鉱業等安定臨時措置法

 (目的)

第一条 この法律は、鉱産物の輸入に関する事情の変化が金属鉱業等に及ぼす影響に対処して、鉱産物の生産費の引下げを促進するとともにその生産及び価格を安定させる等金属鉱業等の国際競争力を強化するための措置を講ずることにより、金属鉱業等の安定を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「鉱産物」とは、次に掲げるものをいう。

 一 製造業の原材料として重要な金属の原料となる鉱物又は製造業の原材料として重要な鉱物のうち生産費の引下げを促進する必要があるものであつて政令で定めるもの

 二 前号の政令で定める鉱物から生産される金属のうち生産費の引下げを促進する必要があるものであつて政令で定めるもの

2 この法律において「金属鉱業等」とは、鉱産物の生産の事業をいう。

 (基本計画)

第三条 通商産業大臣は、鉱業審議会の意見をきいて、金属鉱業等の国際競争力を強化してこれを安定させるための基本計画を定めなければならない。

2 基本計画に定める事項は、次のとおりとする。

 一 目標年度における鉱産物の生産費その他合理化の目標

 二 目標年度における鉱産物の生産の目標

 三 前二号に掲げるもののほか、技術の向上、設備の近代化その他国際競争力の強化に関する重要事項

3 基本計画は、鉱産物の国際価格、内外の需給事情その他の経済事情を勘案し、鉱産物の安定的かつ低廉な供給の確保を図ることを旨として定めるものとする。

4 通商産業大臣は、基本計画を定めたときは、遅滞なく、その要旨を告示しなければならない。

 (実施計画)

第四条 通商産業大臣は、毎年、鉱業審議会の意見をきいて、基本計画の実施を図るため必要な実施計画を定めなければならない。

2 前条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (計画の変更)

第五条 通商産業大臣は、鉱産物の国際価格、内外の需給事情その他の経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、鉱業審議会の意見をきいて、基本計画又は実施計画を変更しなければならない。

2 第三条第四項の規定は、前項の場合に準用する。

 (取決め)

第六条 鉱産物の生産の事業を営む者及びその需要者は、当該鉱産物(当該鉱産物が第二条第一項第一号の政令で定める鉱物の場合にあつては、当該鉱物又は当該鉱物から生産される同項第二号の政令で定める金属)の輸入の制限の廃止その他これに準ずる措置がとられることにより、当該鉱産物の販売価格が実施計画に定める生産費を下り、その生産の事業を営む者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがあるため、基本計画の達成に重大な支障を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その双方又はいずれか一方がそれぞれ共同して、締結の日の一月前までに通商産業大臣に届け出て、当該鉱産物の価格、数量、品質その他の取引に関する事項について、取決めを締結することができる。

2 通商産業大臣は、前項の規定による届出があつた場合において、届出に係る取決めが次の各号に適合するものでないと認めるときは、その取決めの締結前に、その取決めを締結しようとする者に対し、その取決めの変更を命じ、又はその締結を禁止しなければならない。

 一 前項に規定する要件に適合するものであること。

 二 前項に規定する事態を克服するため必要な程度をこえないこと。

 三 不当に差別的でないこと。

 四 その取決めに参加し、又はその取決めから脱退することを不当に制限しないこと。

 五 一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。

3 通商産業大臣は、第一項の規定による届出に係る取決めが前項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、その取決めを締結している者に対し、その変更又は廃止を命じなければならない。

4 第一項の規定による届出に係る取決めを締結している者は、その取決めを廃止したときは、遅滞なく、その旨を通商産業大臣に届け出なければならない。

 (私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外)

第七条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定は、前条第一項の規定による届出に係る取決め及びこれに基づいてする行為には、適用しない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

 一 不公正な取引方法を用いるとき。

 二 前条第二項又は第三項の規定による処分に違反したとき。

 三 次条第三項の規定による公示があつた後一月を経過したとき。(同条第二項の規定による請求に応じ、前条第二項又は第三項の規定による処分があつた場合を除く。)

 (公正取引委員会との関係)

第八条 通商産業大臣は、第六条第一項若しくは第四項の規定による届出を受理し、又は同条第二項若しくは第三項の規定による処分をしたときは、遅滞なく、その旨を公正取引委員会に通知しなければならない。

2 公正取引委員会は、第六条第一項の規定による届出に係る取決めが同条第二項各号に適合せず、又は同項各号に適合するものでなくなつたと認めるときは、通商産業大臣に対し、同項又は同条第三項の規定による処分をすべき旨を請求することができる。

3 公正取引委員会は、前項の規定による請求をしたときは、遅滞なく、その旨を官報に公示しなければならない。

 (援助)

第九条 政府は、基本計画の達成を図るため、金属鉱業等を営む者に対し、必要な資金のあつせん、技術的な助言その他の援助に努めるものとする。

 (勧告)

第十条 通商産業大臣は、第二条第一項第二号の政令で定める金属の原料となる鉱物の輸入価格その他の輸入取引の条件が著しく悪化し、当該金属の生産費が実施計画に定める生産費をこえるおそれがある場合において、基本計画の達成を図るため特に必要があると認めるときは、鉱業審議会の意見をきいて、当該金属の生産の事業を営む者に対し、当該鉱物の輸入取引の条件を改善すべき旨の勧告をすることができる。

2 通商産業大臣は、鉱産物について、第六条第一項に規定する措置がとられることにより、又は同項に規定する措置がとられた場合において当該鉱産物の需給が著しく均衡を失することにより、同項に規定する事態が生じており、かつ、その事態を克服するため特に必要があると認めるときは、鉱業審議会の意見をきいて、当該鉱産物の生産の事業を営む者及びその需要者に対し同項の取決めを締結すべき旨の勧告をし、又は当該鉱産物の生産の事業を営む者に対しその生産数量を制限すべき旨の勧告をすることができる。

 (報告の徴収)

第十一条 通商産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、金属鉱業等を営む者又は鉱産物の需要者に対し、その業務に関し報告をさせることができる。

 (罰則)

第十二条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同項の刑を科する。

   附 則

1 この法律は、公布の日から施行する。

2 この法律は、昭和四十三年三月三十一日までに廃止するものとする。

(内閣総理・通商産業大臣署名) 

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