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法律第九十五号(昭四〇・六・一)

  ◎公害防止事業団法

目次

 第一章 総則(第一条―第六条)

 第二章 役員及び職員(第七条―第十七条)

 第三章 業務(第十八条―第二十一条)

 第四章 財務及び会計(第二十二条―第三十条)

 第五章 監督(第三十一条・第三十二条)

 第六章 雑則(第三十三条―第三十五条)

 第七章 罰則(第三十六条―第三十八条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 公害防止事業団は、工場及び事業場が集中し、かつ、これらにおける事業活動に伴う大気の汚染、水質の汚濁等による公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域におけるこれらの公害の防止に必要な業務を行ない、もつて生活環境の維持改善及び産業の健全な発展に資することを目的とする。

 (法人格)

第二条 公害防止事業団(以下「事業団」という。)は、法人とする。

 (事務所)

第三条 事業団は、主たる事務所を東京都に置く。

2 事業団は、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、必要な地に従たる事務所を置くことができる。

 (登記)

第四条 事業団は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。

2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

 (名称の使用制限)

第五条 事業団でない者は、公害防止事業団という名称を用いてはならない。

 (民法の準用)

第六条 民法(明治二十九年法律第八十九号)第四十四条(法人の不法行為能力)及び第五十条(法人の住所)の規定は、事業団に準用する。

   第二章 役員及び職員

 (役員)

第七条 事業団に、役員として、理事長一人、理事三人以内及び監事一人を置く。

 (役員の職務及び権限)

第八条 理事長は、事業団を代表し、その業務を総理する。

2 理事は、理事長が定めるところにより、理事長を補佐して事業団の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行なう。

3 監事は、事業団の業務を監査する。

4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、理事長又は厚生大臣及び通商産業大臣に意見を提出することができる。

 (役員の任命及び任期)

第九条 理事長及び監事は、厚生大臣及び通商産業大臣が任命する。

2 理事は、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、理事長が任命する。

3 役員の任期は、四年とする。

4 役員は、再任されることができる。

 (役員の欠格条項)

第十条 次の各号の一に該当する者は、役員となることができない。

 一 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)

 二 物品の製造若しくは販売若しくは工事の請負を業とする者であつて事業団と取引上密接な利害関係を有するもの又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)

 三 前号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)

 (役員の解任)

第十一条 厚生大臣及び通商産業大臣は、理事長又は監事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

2 理事長は、理事が前条各号の一に該当するに至つたときは、これを解任しなければならない。

第十二条 厚生大臣及び通商産業大臣は、理事長又は監事が次の各号の一に該当するとき、その他理事長又は監事たるに適しないと認めるときは、これを解任することができる。

 一 心身の故障のため職務の執行に堪えないと認められるとき。

 二 職務上の義務違反があるとき。

2 理事長は、理事が前項各号の一に該当するとき、その他理事たるに適しないと認めるときは、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、これを解任することができる。

 (役員の兼職禁止)

第十三条 役員は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、厚生大臣及び通商産業大臣が役員としての職務の執行に支障がないものと認めて承認したときは、この限りでない。

 (代表権の制限)

第十四条 事業団と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合は、監事が事業団を代表する。

 (代理人の選任)

第十五条 理事長は、理事又は事業団の職員のうちから、事業団の従たる事務所の業務に関し一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する代理人を選任することができる。

 (職員の任命)

第十六条 事業団の職員は、理事長が任命する。

 (役員等の地位)

第十七条 事業団の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

   第三章 業務

 (業務の範囲)

第十八条 事業団は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。

 一 工場及び事業場が集中し、かつ、これらにおける事業活動に伴う大気の汚染、水質の汚濁等による公害(以下「産業公害」という。)が著しく、又は著しくなるおそれがある地域において、工場又は事業場の共同の利用に供するばい煙処理施設、汚水処理施設その他の産業公害を防止するための施設(これに附属する施設を含む。)を設置し、及び譲渡すること。

 二 前号に規定する地域において、産業公害を防止するために行なわれる工場又は事業場の建物の利用の共同化に必要な建物(これに附属する建物を含む。)を設置し、及び譲渡すること。

 三 第一号に規定する地域における産業公害を防止するために移転する工場若しくは事業場が集団して設置されるのに必要な敷地を造成し、又はこれとあわせて当該工場若しくは事業場のための同号に規定する施設を設置し、及びこれらを譲渡すること。

 四 第一号に規定する地域のうち産業公害が発生するおそれが特に著しい地域において、その発生を防止するために設置することが必要な施設(工場又は事業場の共同の利用に供する施設であつて、当該地域の工場又は事業場の従業員及び住民の福利に資するものに限る。)を設置し、及び譲渡すること。

 五 第一号に規定する施設その他の産業公害を防止するための施設(これに附属する施設を含む。)であつて政令に定めるものを設置しようとする者に対し、その設置に必要な資金の貸付けを行なうこと。

 六 前五号の業務に附帯する業務を行なうこと。

 (業務の委託)

第十九条 事業団は、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、金融機関に対し、前条第五号の業務の一部を委託することができる。

2 前項の規定による厚生大臣及び通商産業大臣の認可があつた場合においては、金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、当該認可に係る業務を受託することができる。

3 第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関(以下「受託金融機関」という。)の役員又は職員であつて当該委託業務に従事するものは、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 (業務方法書)

第二十条 事業団は、業務開始の際、業務方法書を作成し、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 前項の業務方法書に記載すべき事項は、厚生省令、通商産業省令で定める。

 (事業実施計画)

第二十一条 事業団は、第十八条第一号から第四号までの業務を行なおうとするときは、厚生省令、通商産業省令で定めるところにより、事業実施計画を作成し、関係都道府県知事に協議するとともに、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

2 都道府県知事は、前項の規定による協議をするに当たつては、関係市町村長の意見をきかなければならない。

   第四章 財務及び会計

 (事業年度)

第二十二条 事業団の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

 (予算等の認可)

第二十三条 事業団は、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (財務諸表)

第二十四条 事業団は、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に厚生大臣及び通商産業大臣に提出し、その承認を受けなければならない。

2 事業団は、前項の規定により財務諸表を厚生大臣及び通商産業大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添附しなければならない。

 (利益及び損失の処理)

第二十五条 事業団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。

2 事業団は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。

 (借入金及び公害防止債券)

第二十六条 事業団は、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、長期借入金若しくは短期借入金をし、又は公害防止債券(以下「債券」という。)を発行することができる。

2 前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができない金額に限り、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。

3 前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。

4 第一項の規定による債券の債権者は、事業団の財産について他の債権者に先だつて自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

5 前項の先取特権の順位は、民法の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。

6 事業団は、厚生大臣及び通商産業大臣の認可を受けて、債券の発行、償還、利子の支払その他の債券に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。

7 商法(明治三十二年法律第四十八号)第三百九条から第三百十一条まで(受託会社の権限及び義務)の規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社に準用する。

8 第一項及び第四項から前項までに定めるもののほか、債券に関し必要な事項は、政令で定める。

 (交付金)

第二十七条 政府は、予算の範囲内において、事業団に対し、その事務に要する費用に相当する金額を交付することができる。

 (余裕金の運用)

第二十八条 事業団は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。

 一 国債その他厚生大臣及び通商産業大臣の指定する有価証券の保有

 二 資金運用部への預託

 三 銀行その他厚生大臣及び通商産業大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金

 (給与及び退職手当の支給の基準)

第二十九条 事業団は、その役員及び職員に対する給与及び退職手当の支給の基準を定めようとするときは、厚生大臣及び通商産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。

 (厚生省令、通商産業省令への委任)

第三十条 この法律及びこれに基づく政令に規定するもののほか、事業団の財務及び会計に関し必要な事項は、厚生省令、通商産業省令で定める。

   第五章 監督

 (監督)

第三十一条 事業団は、厚生大臣及び通商産業大臣が監督する。

2 厚生大臣及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団に対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができる。

 (報告及び検査)

第三十二条 厚生大臣及び通商産業大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業団若しくは受託金融機関に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、事業団若しくは受託金融機関の事務所若しくは事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の必要な物件を検査させることができる。ただし、受託金融機関に対しては、当該委託業務の範囲内に限る。

2 前項の規定により職員が立入検査をする場合においては、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

   第六章 雑則

 (解散)

第三十三条 事業団の解散については、別に法律で定める。

 (大蔵大臣との協議)

第三十四条 厚生大臣及び通商産業大臣は、次の場合には、大蔵大臣と協議しなければならない。

 一 第十九条第一項、第二十条第一項、第二十条又は第二十六条第一項、第二項ただし書若しくは第六項の規定による認可をしようとするとき。

 二 第二十条第二項又は第三十条の厚生省令、通商産業省令を定めようとするとき。

 三 第二十四条第一項又は第二十九条の規定による承認をしようとするとき。

 四 第二十八条第一号又は第三号の規定による指定をしようとするとき。

 (他の法令の準用)

第三十五条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)その他政令で定める法令については、政令で定めるところにより、事業団を国の行政機関とみなして、これらの法令を準用する。

   第七章 罰則

第三十六条 第三十二条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、その違反行為をした事業団又は受託金融機関の役員又は職員は、三万円以下の罰金に処する。

第三十七条 次の各号の一に該当する場合には、その違反行為をした事業団の役員は、三万円以下の過料に処する。

 一 この法律の規定により厚生大臣及び通商産業大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかつたとき。

 二 第四条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠つたとき。

 三 第十八条に規定する業務以外の業務を行なつたとき。

 四 第二十八条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

 五 第三十一条第二項の規定による厚生大臣及び通商産業大臣の命令に違反したとき。

第三十八条 第五条の規定に違反して公害防止事業団という名称を用いた者は、一万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から施行する。

 (事業団の設立)

第二条 厚生大臣及び通商産業大臣は、事業団の理事長又は監事となるべき者を指名する。

2 前項の規定により指名された理事長又は監事となるべき者は、事業団の成立の時において、この法律の規定によりそれぞれ理事長又は監事に任命されたものとする。

第三条 厚生大臣及び通商産業大臣は、設立委員を命じて、事業団の設立に関する事務を処理させる。

2 設立委員は、事業団の設立の準備を完了したときは、その旨を厚生大臣及び通商産業大臣に届け出るとともに、その事務を前条第一項の規定により指名された理事長となるべき者に引き継がなければならない。

第四条 附則第二条第一項の規定により指名された理事長となるべき者は、前条第二項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。

第五条 事業団は、前条の規定による設立の登記をすることによつて成立する。

 (経過規定)

第六条 この法律の施行の際現に公害防止事業団という名称を用いている者については、第五条の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。

第七条 事業団の最初の事業年度は、第二十二条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、昭和四十一年三月三十一日に終わるものとする。

第八条 事業団の最初の事業年度の予算、事業計画及び資金計画については、第二十三条中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「事業団の成立後遅滞なく」とする。

 (登録税法の一部改正)

第九条 登録税法(明治二十九年法律第二十七号)の一部を次のように改正する。

  第十九条第七号中「簡易保険郵便年金福祉事業団」の下に「、公害防止事業団」を、「簡易保険郵便年金福祉事業団法」の下に「、公害防止事業団法」を加え、同条第三十号の次に次の一号を加える。

  三十ノ二 公害防止事業団ガ公害防止事業団法第十八条第三号ノ業務ノ為ニスル土地ノ所有権ノ取得ノ登記

 (印紙税法の一部改正)

第十条 印紙税法(明治三十二年法律第五十四号)の一部を次のように改正する。

  第五条第六号ノ十三の次に次の一号を加える。

  六ノ十三ノ二 公害防止事業団ガ公害防止事業団法第十八条第一号乃至第三号及第五号ノ業務ニ関シ発スル証書、帳簿

 (所得税法の一部改正)

第十一条 所得税法(昭和四十年法律第三十三号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第一号の表中鉱害復旧事業団の項の次に次のように加える。

公害防止事業団

公害防止事業団法(昭和四十年法律第九十五号)

 (法人税法の一部改正)

第十二条 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第一号の表中港務局の項の前に次のように加える。

公害防止事業団

公害防止事業団法(昭和四十年法律第九十五号)

 (地方税法の一部改正)

第十三条 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の一部を次のように改正する。

  第七十二条の四第一項第二号中「金属鉱物探鉱促進事業団」の下に「、公害防止事業団」を加える。

  第七十三条の四第一項に次の一号を加える。

  十九 公害防止事業団が公害防止事業団法(昭和四十年法律第九十五号)第十八条第一号から第四号までに規定する業務の用に供する不動産

 (行政管理庁設置法の一部改正)

第十四条 行政管理庁設置法(昭和二十三年法律第七十七号)の一部を次のように改正する。

  第二条第十二号中「金属鉱物探鉱促進事業団」の下に「、公害防止事業団」を加える。

 (厚生省設置法の一部改正)

第十五条 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。

  第五条第三十一号の次に次の一号を加える。

  三十一の二 公害防止事業団を監督すること。

  第九条の二第三号の二の次に次の一号を加える。

  三の三 公害防止事業団を監督すること。

 (通商産業省設置法の一部改正)

第十六条 通商産業省設置法(昭和二十七年法律第二百七十五号)の一部を次のように改正する。

  第九条第一項に次の一号を加える。

  十七 公害防止事業団に関すること。

  第九条第二項中「第十六号」を「第十七号」に改める。

 (地方財政再建促進特別措置法の一部改正)

第十七条 地方財政再建促進特別措置法(昭和三十年法律第百九十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条第二項中「金属鉱物探鉱促進事業団」の下に「、公害防止事業団」を加える。

(内閣総理・法務・大蔵・厚生・通商産業・自治大臣署名) 

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