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法律第四十九号(昭四二・七・五)

  ◎石炭鉱業再建整備臨時措置法

 (目的)

第一条 この法律は、急激かつ大規模な合理化が行なわれたことにより生じた石炭鉱業の過重な負担を軽減するための措置を講ずることにより、石炭鉱業の再建整備を図り、もつて将来にわたり国民経済における石炭鉱業の使命を遂行させることを目的とする。

 (再建整備計画)

第二条 石炭鉱業を営む会社であつて、その財務の状況及び掘採可能鉱量が通商産業省令で定める基準に該当するものは、この法律の施行の日後三月をこえない範囲内において政令で定める日までに、次の各号に掲げる事項について定めた再建整備計画を作成し、これを通商産業大臣に提出して、その再建整備計画が適当であるかどうかにつき認定を求めることができる。

 一 石炭の生産及び販売並びに財務に関する計画

 二 鉱区の調整、石炭坑の近代化その他の生産の合理化のための措置

 三 不要資産の処分、経費の節約その他の経営の合理化のための措置

 四 資本金の増加、固定した債務の整理その他の資本構成の是正のための措置

2 前項の財務の状況及び掘採可能鉱量の計算の方法は、通商産業省令で定める。

第三条 通商産業大臣は、前条第一項の規定により認定を受けたい旨の請求があつた場合において、その再建整備計画が次の各号に該当し、かつ、その実施が当該会社の経理的基礎及び技術的能力並びに当該会社に対する金融機関の協力の見通しに照して確実であると認めるときは、当該再建整備計画が適当である旨の認定をするものとする。

 一 前条第一項第一号の計画が石炭鉱業の再建整備を図るため適切なものであること。

 二 前条第一項第二号から第四号までに掲げる措置が当該会社の生産の合理化、経営の合理化又は資本構成の是正のため適切なものであること。

2 通商産業大臣は、前項の認定をしようとするときは、石炭鉱業審議会の意見をきかなければならない。

 (元利補給契約)

第四条 政府は、前条第一項の認定を受けた会社が、日本開発銀行、中小企業金融公庫、石炭鉱業合理化事業団その他通商産業省令で定める金融機関(以下「金融機関」と総称する。)から昭和四十一年三月三十一日以前において借り入れ、昭和四十二年四月一日現在において借入残高のある借入金(償還期間(すえおき期間を含む。)が一年未満のものとして借り入れたもの及び石炭鉱業合理化事業団から借り入れた石炭鉱業合理化臨時措置法(昭和三十年法律第百五十六号)第二十六条第二項第九号に規定する近代化資金として借り入れたものを除く。)のそれぞれの借入契約ごとに、同日現在における借入残高に通商産業省令で定める計算の方法により計算した率を乗じて得た金額につき、当該金融機関との間において当該借入契約の内容を変更して、その変更に係る部分の内容を次の各号に適合するものとしたときは、第一号に規定する償還期間における変更に係る部分の借入金の元本の償還及び利子の支払のための補給金を交付する旨の契約(以下「元利補給契約」という。)を当該認定を受けた会社と結ぶことができる。

 一 変更に係る部分の借入金の償還期間が、昭和四十二年四月一日から起算して、日本開発銀行、中小企業金融公庫及び石炭鉱業合理化事業団からの借入金にあつては十二年、その他の金融機関からの借入金にあつては十年となつていること。

 二 変更に係る部分の借入金の利率が、日本開発銀行、中小企業金融公庫及び石炭鉱業合理化事業団からの借入金にあつては年六分五厘、その他の金融機関からの借入金にあつては年五分となつていること。

 三 変更に係る部分の借入金の元本の償還及び利子の支払が、元利合計半年賦均等償還の方法その他の通商産業省令で定める方法に従つて行なわれることとなつていること。

2 政府が元利補給契約を結ぶ場合における元利補給契約に係る借入金の元本の額の総額は、千億円を限度とする。

 (再建整備計画の変更)

第五条 政府と元利補給契約を結んでいる会社(以下「再建整備会社」という。)は、第三条第一項の認定に係る再建整備計画を変更しようとするときは、その変更の内容につき通商産業大臣の認定を受けなければならない。

2 第三条の規定は、前項の規定による変更の認定について準用する。

 (利益を計上した場合の納付金)

第六条 再建整備会社は、元利補給契約により政府が交付する補給金(以下「元利補給金」という。)の交付を受けた日の属する営業年度に係る決算について、その財務の状況を第二条第二項の通商産業省令で定める計算の方法により計算した場合において、その財務の状況が同条第一項の基準に該当しないこととなつたときは、当該計算の方法により計算された利益の額を国庫に納付しなければならない。ただし、交付を受けた元利補給金の合計額に相当する金額を限度とする。

2 元利補給金の交付を受けた会社は、最後に元利補給金の交付を受けた日の属する営業年度の直後の営業年度から、その日から起算して五年を経過した日の属する営業年度までの各営業年度に係る決算について通商産業省令で定めるところにより計算した利益の額が当該会社の出資の総額又は資本(発行済額面株式の株金総額及び発行済無額面株式の発行価額をいう。)の金額に政令で定める率を乗じて得た金額をこえるときは、その利益の額からその乗じて得た金額を控除した額に相当する金額を国庫に納付しなければならない。ただし、交付を受けた元利補給金の合計額に相当する金額から前項及びこの項の規定により当該決算以前の決算に計上した利益に関して国庫に納付し、又は納付すべき金額に相当する金額を控除した金額を限度とする。

 (強制徴収)

第七条 通商産業大臣は、前条の規定による納付金を納付しない会社があるときは、期限を指定して、その納付を督促しなければならない。

2 通商産業大臣は、前項の規定により督促するときは、督促状を発する。この場合において、督促状により指定すべき期限は、督促状を発する日から起算して十日以上経過した日でなければならない。

3 通商産業大臣は、前二項の規定による督促を受けた会社がその指定の期限までにその督促に係る納付金及び次条の延滞金を納付しないときは、国税滞納処分の例により、これを処分する。この場合におけるその納付金及び延滞金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

 (延滞金)

第八条 通商産業大臣は、前条第一項の規定により督促したときは、その督促に係る納付金の金額百円につき一日四銭の割合で、納期限の翌日からその納付の日までの日数により計算した延滞金を徴収する。

 (元利補給契約の解除)

第九条 政府は、再建整備会社が石炭の生産の事業を廃止したときは、将来にわたつてその元利補給契約を解除するものとする。

2 政府は、再建整備会社の財務の状況が第二条第一項の基準に該当しないこととなつたときは、将来にわたつてその元利補給契約を解除するものとする。

3 政府は、再建整備会社が第十五条の規定による勧告に従わなかつたときは、将来にわたつてその元利補給契約を解除することができる。

4 第三条第二項の規定は、前項の規定による元利補給契約の解除について準用する。

 (損失の補償)

第十条 政府は、前条第一項の規定により元利補給契約を解除した場合において、当該元利補給契約に係る借入金に係る金融機関が当該借入金の元本の償還に関し損失を受けたときは、当該金融機関に対し、予算の範囲内で、当該損失の一部を補償することができる。

2 前項の規定により補償する損失は、金融機関が当該借入金に係るすべての担保権を実行し、かつ、当該借入金について保証人があるときは、すべての保証人に対し債務の履行を請求し、当該担保権に基づく競売の申立て若しくは委任若しくは差押命令の申請又は保証人に対する履行の請求のうち最後に行なわれたものが行なわれた日から一年を経過してもなお取り立てることができなかつた元本の額の二分の一に相当する金額とする。ただし、金融機関が当該借入金に係る担保権を実行し、及び保証人に対し債権を行使してもこれに要する費用を償うことができない場合その他当該借入金に係る担保権を実行し、及び保証人に対し債権を行使することが著しく不利である場合において、当該借入金の元本の額のうち償還されるべきものから政府と当該金融機関とが協議により定める担保物の評価額及び保証人に対する債権行使による取立見込額を控除した金額の二分の一に相当する金額をもつて同項の規定により補償する損失とすることについて政府と当該金融機関との協議が成立したときは、その額とする。

 (債権の保全及び取立て)

第十一条 前条第一項の規定により損失の補償を受けた金融機関は、当該借入金については、善良な管理者の注意をもつて、当該借入金に係る債権を保全し、かつ、その取立てに努めなければならない。

2 金融機関が、前条第一項の規定により損失の補償を受けた場合において、当該借入金に係る債権を取り立てたときは、取り立てた金額を債権行使のために要した費用であつて政令で定める範囲のものに充当し、なお残額があるときは、その残額の二分の一に相当する金額を国庫に納付しなければならない。ただし、同項の規定による補償金の額に相当する金額を限度とする。

 (利益金の処分)

第十二条 再建整備会社の利益金の処分に関する決議は、通商産業大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

2 通商産業大臣は、前項の認可の申請があつた場合において、その申請に係る利益金の処分が次の各号に適合すると認めるときは、同項の認可をしなければならない。

 一 その申請に係る営業年度において、政令で定めるところにより、減価償却その他の費用について必要な経理を行なつた後に行なうものであること。

 二 再建整備計画の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。

 (投資等の計画の届出)

第十三条 再建整備会社は、毎営業年度開始前に、その営業年度に行なおうとする投資(融資を含む。)及び重要な財産の処分(通商産業省令で定める範囲のものに限る。)について、通商産業省令で定める事項を記載した計画を作成し、これを通商産業大臣に届け出なければならない。

2 再建整備会社は、前項の計画を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を届け出なければならない。

 (実施状況の報告)

第十四条 再建整備会社は、毎営業年度終了後三月以内に、その再建整備計画の当該営業年度に係る実施状況について、通商産業大臣に報告しなければならない。

 (勧告)

第十五条 通商産業大臣は、再建整備会社がその再建整備計画を実施していないと認めるときは、再建整備会社に対し、その再建整備計画を確実に実施すべき旨の勧告をすることができる。

2 通商産業大臣は、石炭鉱業における生産条件その他経済事情の著しい変動のため特に必要があると認めるときは、再建整備会社に対し、その再建整備計画を変更すべき旨の勧告をすることができる。

3 通商産業大臣は、第十三条の規定による届出があつた場合において、その届出に係る計画が再建整備計画の実施に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、その計画を変更すべき旨の勧告をすることができる。

 (監査等)

第十六条 通商産業大臣は、毎年、再建整備会社の業務及び経理の監査をしなければならない。

2 通商産業大臣は、前項の規定による監査を行なうため、必要があると認めるときは、再建整備会社からその業務若しくは経理に関し報告をさせ、又はその職員に再建整備会社の事務所若しくは事業場に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。

3 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

4 第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

 (大蔵大臣との協議)

第十七条 通商産業大臣は、第二条第一項及び第二項、第四条第一項並びに第六条第二項の通商産業省令の制定又は改廃を行なおうとするときは、大蔵大臣と協議しなければならない。

 (罰則)

第十八条 次の各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第十三条第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十四条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者

 三 第十六条第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

第十九条 再建整備会社の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その再建整備会社の業務又は経理に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その再建整備会社に対して同条の刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

1 この法律は、公布の日から施行する。

 (廃止)

2 この法律は、昭和六十年三月三十一日までに廃止するものとする。

 (石炭鉱業合理化臨時措置法の一部改正)

3 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を次のように改正する。

  第七十条中「この法律」の下に「及び石炭鉱業再建整備臨時措置法(昭和四十二年法律第四十九号)」を加える。

 (石炭鉱業経理規制臨時措置法の一部改正)

4 石炭鉱業経理規制臨時措置法(昭和三十八年法律第百四十五号)の一部を次のように改正する。

  第二条に次の一項を加える。

 3 通商産業大臣は、石炭鉱業を営む会社が石炭鉱業再建整備臨時措置法(昭和四十二年法律第四十九号)第五条第一項に規定する再建整備会社であるときは、前項の規定にかかわらず、同項の規定による指定をしないものとし、指定会社が同法第五条第一項に規定する両建整備会社となつたときは、前二項の規定による指定を取り消さなければならない。

(法務・大蔵・通商産業・内閣総理大臣署名) 

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