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法律第百十五号(昭四七・七・三)

  ◎海上交通安全法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 交通方法

  第一節 航路における一般的航法(第三条−第十条)

  第二節 航路ごとの航法(第十一条−第二十一条)

  第三節 特殊な船舶の航路における交通方法の特則(第二十二条−第二十四条)

  第四節 狭い水道における航法(第二十五条)

  第五節 危険防止のための交通制限等(第二十六条)

  第六節 燈火等(第二十七条−第二十九条)

 第三章 危険の防止(第三十条−第三十三条)

 第四章 雑則(第三十四条−第三十九条)

 第五章 罰則(第四十条−第四十三条)

 附則

   第一章 総則

 (目的及び適用海域)

第一条 この法律は、船舶交通がふくそうする海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行なうことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とする。

2 この法律は、東京湾、伊勢湾(伊勢湾の湾口に接する海域及び三河湾のうち伊勢湾に接する海域を含む。)及び瀬戸内海のうち次の各号に掲げる海域以外の海域に適用するものとし、これらの海域と他の海域(次の各号に掲げる海域を除く。)との境界は、政令で定める。

 一 港則法(昭和二十三年法律第百七十四号)に基づく港の区域

 二 港則法に基づく港以外の港である港湾に係る港湾法(昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第三項に規定する港湾区域

 三 漁港法(昭和二十五年法律第百三十七号)第五条第一項の規定により農林大臣が指定した漁港の区域内の海域

 四 陸岸に沿う海域のうち、漁船以外の船舶が通常航行していない海域として政令で定める海域

 (定義)

第二条 この法律において「航路」とは、別表に掲げる海域における船舶の通路として政令で定める海域をいい、その名称は同表に掲げるとおりとする。

2 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

 一 巨大船 長さ二百メートル以上の船舶をいう。

 二 漁ろう船等 次に掲げる船舶をいう。

  イ 漁ろうに従事している船舶

  ロ 工事又は作業を行なつているため接近してくる他の船舶の進路を避けることが容易でない運輸省令で定める船舶で運輸省令で定めるところにより燈火又は標識を表示しているもの

3 この法律において「船舶」、船舶の「長さ」、「汽笛」及び「漁ろうに従事している」の意義は、海上衝突予防法(昭和二十八年法律第百五十一号)第一条第三項に規定する当該用語の意義による。

   第二章 交通方法

    第一節 航路における一般的航法

 (避航等)

第三条 航路外から航路に入り、航路から航路外に出、若しくは航路を横断しようとし、又は航路をこれに沿わないで航行している船舶(漁ろう船等を除く。)は、航路をこれに沿つて航行している他の船舶と衝突するおそれがあるときは、当該他の船舶の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十七条第一項、第十八条第一項、第十九条、第二十条第一項及び第二十四条第一項の規定は、当該他の船舶について適用しない。

2 航路外から航路に入り、航路から航路外に出、若しくは航路を横断しようとし、若しくは航路をこれに沿わないで航行している漁ろう船等又は航路で停留している船舶は、航路をこれに沿つて航行している巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十八条第一項、第十九条、第二十条第一項、第二十四条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

3 前二項の規定の適用については、次の各号に掲げる船舶は、航路をこれに沿つて航行している船舶でないものとみなす。

 一 第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)又は第二十条第一項の規定による交通方法に従わないで航路をこれに沿つて航行している船舶

 二 第二十六条第二項又は第三項の規定により前号に掲げる規定による交通方法と異なる交通方法が定められた場合において、当該交通方法に従わないで航路をこれに沿つて航行している船舶

 (航路航行義務)

第四条 長さが運輸省令で定める長さ以上である船舶は、航路の附近にある運輸省令で定める二の地点の間を航行しようとするときは、運輸省令で定めるところにより、当該航路又はその区間をこれに沿つて航行しなければならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

 (速力の制限)

第五条 運輸省令で定める航路の区間においては、船舶は、当該航路を横断する場合を除き、当該区間ごとに運輸省令で定める速力をこえる速力で航行してはならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

 (追い越しの場合の信号)

第六条 追い越し船(海上衝突予防法第二十四条第二項又は第三項の規定により追い越し船とされるものをいう。)で汽笛を備えているものは、航路において他の船舶を追い越そうとするときは、運輸省令で定めるところにより信号を行なわなければならない。

 (行先の表示)

第七条 船舶(汽笛を備えていない船舶その他運輸省令で定める船舶を除く。)は、航路外から航路に入り、航路から航路外に出、又は航路を横断しようとするときは、運輸省令で定めるところにより信号により行先を表示しなければならない。

 (航路の横断の方法)

第八条 航路を横断する船舶は、当該航路に対しできる限り直角に近い角度で、すみやかに横断しなければならない。

2 前項の規定は、航路をこれに沿つて航行している船舶が当該航路と交差する航路を横断することとなる場合については、適用しない。

 (航路への出入又は航路の横断の制限)

第九条 運輸省令で定める航路の区間においては、船舶は、航路外から航路に入り、航路から航路外に出、又は航路を横断する航行のうち当該区間ごとに運輸省令で定めるものをしてはならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

 (びよう泊の禁止)

第十条 船舶は、航路においては、びよう泊(びよう泊をしている船舶にする係留を含む。以下同じ。)をしてはならない。ただし、海難を避けるため又は人命若しくは他の船舶を救助するためやむを得ない事由があるときは、この限りでない。

    第二節 航路ごとの航法

 (浦賀水道航路及び中ノ瀬航路)

第十一条 船舶は、浦賀水道航路をこれに沿つて航行するときは、同航路の中央から右の部分を航行しなければならない。

2 船舶は、中ノ瀬航路をこれに沿つて航行するときは、北の方向に航行しなければならない。

第十二条 航行し、又は停留している船舶(巨大船を除く。)は、浦賀水道航路をこれに沿つて航行し、同航路から中ノ瀬航路に入ろうとしている巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、第三条第一項並びに海上衝突予防法第十八条第一項、第十九条、第二十条第一項、第二十四条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

2 第三条第三項の規定は、前項の規定を適用する場合における浦賀水道航路をこれに沿つて航行する巨大船について準用する。

 (伊良湖水道航路)

第十三条 船舶は、伊良湖水道航路をこれに沿つて航行するときは、できる限り、同航路の中央から右の部分を航行しなければならない。

第十四条 伊良湖水道航路をこれに沿つて航行している船舶(巨大船を除く。)は、同航路をこれに沿つて航行している巨大船と行き会う場合において衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十八条第一項、第二十条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

2 第三条第三項の規定は、前項の規定を適用する場合における伊良湖水道航路をこれに沿つて航行する巨大船について準用する。

3 海上保安庁長官は、伊良湖水道航路をこれに沿つて航行しようとする巨大船と巨大船以外の他の船舶(長さが運輸省令で定める長さ以上のものに限る。)とが同航路内において行き会うことが予想される場合において、その行き会いが危険であると認めるときは、当該他の船舶に対し、信号その他の方法により、当該巨大船との航路内における行き会いを避けるため必要な間航路外で待機すべき旨を指示することができる。

4 前項の規定による指示を信号によつて行なう場合の信号の方法及び意味は、運輸省令で定める。

 (明石海峡航路)

第十五条 船舶は、明石海峡航路をこれに沿つて航行するときは、同航路の中央から右の部分を航行しなければならない。

 (備讃瀬戸東航路、宇高東航路及び宇高西航路)

第十六条 船舶は、備讃瀬戸東航路をこれに沿つて航行するときは、同航路の中央から右の部分を航行しなければならない。

2 船舶は、宇高東航路をこれに沿つて航行するときは、北の方向に航行しなければならない。

3 船舶は、宇高西航路をこれに沿つて航行するときは、南の方向に航行しなければならない。

第十七条 宇高東航路又は宇高西航路をこれを沿つて航行している船舶は、備讃瀬戸東航路をこれに沿つて航行している巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十九条、第二十条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

2 航行し、又は停留している船舶(巨大船を除く。)は、備讃瀬戸東航路をこれに沿つて航行し、同航路から北の方向に宇高東航路に入ろうとしており、又は宇高西航路をこれに沿つて南の方向に航行し、同航路から備讃瀬戸東航路に入ろうとしている巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、第三条第一項並びに海上衝突予防法第十八条第一項、第十九条、第二十条第一項、第二十四条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

3 第三条第三項の規定は、前二項の規定を適用する場合における備讃瀬戸東航路をこれに沿つて航行する巨大船について準用する。

 (備讃瀬戸北航路、備讃瀬戸南航路及び水島航路)

第十八条 船舶は、備讃瀬戸北航路をこれに沿つて航行するときは、西の方向に航行しなければならない。

2 船舶は、備讃瀬戸南航路をこれに沿つて航行するときは、東の方向に航行しなければならない。

3 船舶は、水島航路をこれに沿つて航行するときは、できる限り、同航路の中央から右の部分を航行しなければならない。

4 第十四条の規定は、水島航路について準用する。

第十九条 水島航路をこれに沿つて航行している船舶(巨大船及び漁ろう船等を除く。)は、備讃瀬戸北航路をこれを沿つて西の方向に航行している他の船舶と衝突するおそれがあるときは、当該他の船舶の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十七条第一項、第十九条及び第二十条第一項の規定は、当該他の船舶について適用しない。

2 水島航路をこれに沿つて航行している漁ろう船等は、備讃瀬戸北航路をこれに沿つて西の方向に航行している巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十九条、第二十条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

3 備讃瀬戸北航路をこれに沿つて航行している船舶(巨大船を除く。)は、水島航路をこれに沿つて航行している巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、海上衝突予防法第十九条、第二十条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

4 航行し、又は停留している船舶(巨大船を除く。)は、備讃瀬戸北航路をこれに沿つて西の方向に若しくは備讃瀬戸南航路をこれに沿つて東の方向に航行し、これらの航路から水島航路に入ろうとしており、又は水島航路をこれに沿つて航行し、同航路から西の方向に備讃瀬戸北航路若しくは東の方向に備讃瀬戸南航路に入ろうとしている巨大船と衝突するおそれがあるときは、当該巨大船の進路を避けなければならない。この場合において、第三条第一項並びに海上衝突予防法第十八条第一項、第十九条、第二十条第一項、第二十四条第一項及び第二十六条の規定は、当該巨大船について適用しない。

5 第三条第三項の規定は、前二項の規定を適用する場合における水島航路をこれに沿つて航行する巨大船について準用する。

 (来島海峡航路)

第二十条 船舶は、来島海峡航路をこれに沿つて航行するときは、次の各号に掲げる航法によらなければならない。この場合において、これらの航法によつて航行している船舶については、海上衝突予防法第二十五条第一項の規定は、適用しない。

 一 順潮の場合は来島海峡中水道(以下「中水道」という。)を、逆潮の場合は来島海峡西水道(以下「西水道」という。)を航行すること。ただし、これらの水道を航行している間に転流があつた場合は、引き続き当該水道を航行することができることとし、また、西水道を航行して小島と波止浜との間の水道へ出ようとする船舶又は同水道から来島海峡航路に入つて西水道を航行しようとする船舶は、順潮の場合であつても、西水道を航行することができることとする。

 二 中水道を経由して航行する場合は、できる限り大島及び大下島側に近寄つて航行すること。

 三 西水道を経由して航行する場合は、できる限り四国側に近寄つて航行すること。この場合において、西水道を航行して小島と波止浜との間の水道へ出ようとする船舶又は同水道から来島海峡航路に入つて西水道を航行しようとする船舶は、その他の船舶の四国側を航行しなければならない。

2 前項第一号の潮流の流向は、運輸省令で定めるところにより海上保安庁長官が信号により示す流向による。

第二十一条 汽笛を備えている船舶は、次の各号に掲げる場合は、運輸省令で定めるところにより信号を行なわなければならない。

 一 中水道又は西水道を来島海峡航路に沿つて航行する場合において、前条第二項の規定による信号により転流することが予告され、中水道又は西水道の通過中に転流すると予想されるとき。

 二 西水道を来島海峡航路に沿つて航行して小島と波止浜との間の水道へ出ようとするとき、又は同水道から同航路に入つて西水道を同航路に沿つて航行しようとするとき。

2 海上衝突予防法第二十五条第二項前段及び中段の規定は、来島海峡航路及びその周辺の運輸省令で定める海域において航行する船舶について適用しない。

    第三節 特殊な船舶の航路における交通方法の特則

 (巨大船等の航行に関する通報)

第二十二条 次の各号に掲げる船舶が航路を航行しようとするときは、船長(船長以外の者が船長に代わつてその職務を行なうべきときは、その者。以下同じ。)は、あらかじめ、航行予定時刻その他の運輸省令で定める事項を海上保安庁長官に通報しなければならない。通報した事項を変更するときも、同様とする。

 一 巨大船

 二 危険物積載船(原油、液化石油ガスその他の運輸省令で定める危険物を積載している船舶で総トン数が運輸省令で定める総トン数以上のものをいう。以下同じ。)

 三 船舶、いかだその他の物件を引き、又は押して航行する船舶(当該引き船の船首から当該物件の後端まで又は当該押し船の船尾から当該物件の先端までの長さが運輸省令で定める長さ以上となる場合に限る。)

 (巨大船等に対する指示)

第二十三条 海上保安庁長官は、前条各号に掲げる船舶(以下「巨大船等」という。)の航路における航行に伴い生ずるおそれのある船舶交通の危険を防止するため必要があると認めるときは、当該巨大船等の船長に対し、運輸省令で定めるところにより、航行予定時刻の変更、進路を警戒する船舶の配備その他当該巨大船等の運航に関し必要な事項を指示することができる。

 (緊急用務を行なう船舶等に関する航法の特例)

第二十四条 消防船その他の政令で定める緊急用務を行なうための船舶は、当該緊急用務を行なうためやむを得ない必要がある場合において、政令で定めるところにより燈火又は標識を表示しているときは、第四条、第五条、第七条から第十一条まで、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行し、又はびよう泊をすることができる。

2 漁ろうに従事している船舶は、第四条、第六条から第九条まで、第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行することができ、及び第二十二条の規定による通報をしないで航行することができる。

3 第三十条第一項の規定による許可(同条第九項の規定によりその許可を受けることを要しない場合には、港則法第三十一条第一項(同法第三十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による許可)を受けて工事又は作業を行なつている船舶は、当該工事又は作業を行なうためやむを得ない必要がある場合において、第二条第二項第二号ロの運輸省令で定めるところにより燈火又は標識を表示しているときは、第四条、第八条から第十一条まで、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法に従わないで航行し、又はびよう泊をすることができる。

    第四節 狭い水道における航法

 (狭い水道における航法)

第二十五条 海上保安庁長官は、狭い水道(航路を除く。)をこれに沿つて航行する船舶がその右側の水域を航行することが、地形、潮流その他の自然的条件又は船舶交通の状況により、危険を生ずるおそれがあり、又は実行に適しないと認められるときは、告示により、当該水道をこれに沿つて航行する船舶の航行に適する経路(当該水道への出入の経路を含む。)を指定することができる。

2 前項の水道をこれに沿つて航行する船舶は、できる限り、同項の経路によつて航行しなければならない。

    第五節 危険防止のための交通制限等

 (危険防止のための交通制限等)

第二十六条 海上保安庁長官は、工事若しくは作業の実施により又は船舶の沈没等の船舶交通の障害の発生により船舶交通の危険が生じ、又は生ずるおそれがある海域について、告示により、期間を定めて、当該海域を航行することができる船舶又は時間を制限することができる。

2 海上保安庁長官は、航路又はその周辺の海域について前項の処分をした場合において、当該航路における船舶交通の危険を防止するため特に必要があると認めるときは、告示により、期間及び航路の区間を定めて、第四条、第八条、第九条、第十一条、第十三条、第十五条、第十六条、第十八条(第四項を除く。)、第二十条第一項又は第二十一条第一項の規定による交通方法と異なる交通方法を定めることができる。

3 前項の場合において、海上保安庁長官は、同項の航路が、宇高東航路又は宇高西航路であるときは宇高西航路又は宇高東航路についても、備讃瀬戸北航路又は備讃瀬戸南航路であるときは備讃瀬戸南航路又は備讃瀬戸北航路についても同項の処分をすることができる。

    第六節 燈火等

 (巨大船及び危険物積載船の燈火等)

第二十七条 巨大船及び危険物積載船は、航行し、停留し、又はびよう泊をしているときは、運輸省令で定めるところにより燈火又は標識を表示しなければならない。

2 巨大船及び危険物積載船以外の船舶は、前項の燈火若しくは標識又はこれと誤認される燈火若しくは標識を表示してはならない。

 (ろかい船等の燈火)

第二十八条 航路又は政令で定める海域において航行し、又は停留している長さ十二・一九メートル未満のろかい又は帆を用いている船舶(小形ろかい舟を除く。)については、海上衝突予防法第七条第五項ただし書の規定は、適用しない。

2 航路又は前項の政令で定める海域において航行し、又は停留している小形ろかい舟は、海上衝突予防法第五条又は第九条第二項の規定により燈火を表示する場合を除き、同法第七条第一項ただし書及び同条第七項の規定にかかわらず、同項の燈火を周囲から最も見えやすい場所に表示しなければならない。

 (物件えい航船の燈火等)

第二十九条 海上衝突予防法第三条第一項及び第三項、第七条第一項及び第三項(第一号に係る部分に限る。)並びに第十五条第二項(第一号に係る部分に限る。)及び第三項(第五号に係る部分に限る。)の規定は、航路又は前条第一項の政令で定める海域において船舶以外の物件を引き又は押して、航行し、又は停留している船舶(当該引き船の船尾から当該物件の後端まで又は当該押し船の船首から当該物件の先端までの長さが運輸省令で定める長さ以上となる場合に限る。)で漁ろうに従事しているもの以外のものについても準用する。

2 前項の船舶は、その引き又は押す物件に運輸省令で定める燈火を表示しなければ、これを引き又は押して、航行し、又は停留してはならない。ただし、当該物件に本文の燈火を表示することが困難である場合において、当該物件を照射しているときは、この限りでない。

   第三章 危険の防止

 (航路及びその周辺の海域における工事等)

第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、当該各号に掲げる行為について海上保安庁長官の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定めるものについては、この限りでない。

 一 航路又はその周辺の政令で定める海域において工事又は作業をしようとする者

 二 前号に掲げる海域(港湾区域と重複している海域を除く。)において工作物の設置(現に存する工作物の規模、形状又は位置の変更を含む。以下同じ。)をしようとする者

2 海上保安庁長官は、前項の許可の申請があつた場合において、当該申請に係る行為が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしなければならない。

 一 当該申請に係る行為が船舶交通の妨害となるおそれがないと認められること。

 二 当該申請に係る行為が許可に附された条件に従つて行なわれることにより船舶交通の妨害となるおそれがなくなると認められること。

 三 当該申請に係る行為が災害の復旧その他公益上必要やむを得ず、かつ、一時的に行なわれるものであると認められること。

3 海上保安庁長官は、第一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、当該許可の期間を定め(同項第二号に掲げる行為については、仮設又は臨時の工作物に係る場合に限る。)、及び当該許可に係る行為が前項第一号に該当する場合を除き当該許可に船舶交通の妨害を予防するため必要な条件を附することができる。

4 海上保安庁長官は、船舶交通の妨害を予防し、又は排除するため特別の必要が生じたときは、前項の規定により附した条件を変更し、又は新たに条件を附することができる。

5 海上保安庁長官は、第一項の規定による許可を受けた者が前二項の規定による条件に違反したとき、又は船舶交通の妨害を予防し、若しくは排除するため特別の必要が生じたときは、その許可を取り消し、又はその許可の効力を停止することができる。

6 海上保安庁長官は、前項の規定による処分をしようとするときは、当該処分に係る者に対し、あらかじめ、弁明をなすべき日時、場所及び当該処分をしようとする理由を通知して、当該事案について弁明及び証拠の提出の機会を与えなければならない。ただし、船舶交通の妨害を予防し、又は排除するため緊急やむを得ないときは、この限りでない。

7 第一項の規定による許可を受けた者は、当該許可の期間が満了したとき、又は第五項の規定により当該許可が取り消されたときは、すみやかに当該工作物の除去その他原状に回復する措置をとらなければならない。

8 国の機関又は地方公共団体(港湾法の規定による港務局を含む。以下同じ。)が第一項各号に掲げる行為(同項ただし書の行為を除く。)をしようとする場合においては、当該国の機関又は地方公共団体と海上保安庁長官との協議が成立することをもつて同項の規定による許可があつたものとみなす。

9 港則法に基づく港の境界附近においてする第一項第一号に掲げる行為については、同法第三十一条第一項(同法第三十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による許可を受けたときは第一項の規定による許可を受けることを要せず、同項の規定による許可を受けたときは同法第三十一条第一項(同法第三十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による許可を受けることを要しない。

 (航路及びその周辺の海域以外の海域における工事等)

第三十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、あらかじめ、当該各号に掲げる行為をする旨を海上保安庁長官に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で運輸省令で定めるものについては、この限りでない。

 一 前条第一項第一号に掲げる海域以外の海域において工事又は作業をしようとする者

 二 前号に掲げる海域(港湾区域と重複している海域を除く。)において工作物の設置をしようとする者

2 海上保安庁長官は、前項の届出に係る行為が次の各号のいずれかに該当するときは、当該届出のあつた日から起算して三十日以内に限り、当該届出をした者に対し、船舶交通の危険を防止するため必要な限度において、当該行為を禁止し、若しくは制限し、又は必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

 一 当該届出に係る行為が船舶交通に危険を及ぼすおそれがあると認められること。

 二 当該届出に係る行為が係留施設を設置する行為である場合においては、当該係留施設に係る船舶交通が他の船舶交通に危険を及ぼすおそれがあると認められること。

3 海上保安庁長官は、第一項の届出があつた場合において、実地に特別な調査をする必要があるとき、その他前項の期間内に同項の処分をすることができない合理的な理由があるときは、その理由が存続する間、同項の期間を延長することができる。この場合においては、同項の期間内に、第一項の届出をした者に対し、その旨及び期間を延長する理由を通知しなければならない。

4 前条第六項の規定は、第二項の規定による処分をしようとする場合について準用する。

5 国の機関又は地方公共団体は、第一項各号に掲げる行為(同項ただし書の行為を除く。)をしようとするときは、同項の規定による届出の例により、海上保安庁長官にその旨を通知しなければならない。

6 海上保安庁長官は、前項の規定による通知があつた場合において、当該通知に係る行為が第二項各号のいずれかに該当するときは、当該国の機関又は地方公共団体に対し、船舶交通の危険を防止するため必要な措置をとることを要請することができる。この場合において、当該国の機関又は地方公共団体は、そのとるべき措置について海上保安庁長官と協議しなければならない。

7 港則法に基づく港の境界附近においてする第一項第一号に掲げる行為については、同法第三十一条第一項(同法第三十七条の三において準用する場合を含む。)の規定による許可を受けたときは、第一項の規定による届出をすることを要しない。

 (違反行為者に対する措置命令)

第三十二条 海上保安庁長官は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、当該違反行為に係る工事又は作業の中止、当該違反行為に係る工作物の除去、移転又は改修その他当該違反行為に係る工事若しくは作業又は工作物の設置に関し船舶交通の防害を予防し、又は排除するため必要な措置(第四号に掲げる者に対しては、船舶交通の危険を防止するため必要な措置)をとるべきことを命ずることができる。

 一 第三十条第一項の規定に違反して同項各号に掲げる行為をした者

 二 第三十条第三項の規定により海上保安庁長官が附し、又は同条第四項の規定により海上保安庁長官が変更し、若しくは附した条件に違反した者

 三 第三十条第七項の規定に違反して当該工作物の除去その他原状に回復する措置をとらなかつた者

 四 前条第一項の規定に違反して同項各号に掲げる行為をした者

 (海難が発生した場合の措置)

第三十三条 海難により船舶交通の危険が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、当該海難に係る船舶の船長は、できる限りすみやかに、運輸省令で定めるところにより、標識の設置その他の船舶交通の危険を防止するため必要な応急の措置をとり、かつ、当該海難の概要及びとつた措置について海上保安庁長官に通報しなければならない。ただし、港則法第二十五条の規定の適用がある場合は、この限りでない。

2 海上保安庁長官は、船長が前項の規定による措置をとらなかつたとき又は同項の規定により船長がとつた措置のみによつては船舶交通の危険を防止することが困難であると認めるときは、船舶交通の危険の原因となつている船舶(船舶以外の物件が船舶交通の危険の原因となつている場合は、当該物件を積載し、引き、又は押していた船舶)の所有者(当該船舶が共有されているときは船舶管理人、当該船舶が貸し渡されているときは船舶借入人)に対し、当該船舶の除去その他船舶交通の危険を防止するため必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

   第四章 雑則

 (航路等の海図への記載)

第三十四条 海上保安庁が刊行する海図のうち海上保安庁長官が指定するものには、第一条第二項の政令で定める境界、航路、第五条及び第九条の航路の区間、浦賀水道航路、明石海峡航路及び備讃瀬戸東航路の中央、第二十五条第一項の規定により指定した経路並びに第二十八条第一項の海域を記載するものとする。

 (航路等を示す航路標識の設置)

第三十五条 海上保安庁長官は、運輸省令で定めるところにより、航路、第五条及び第九条の航路の区間、浦賀水道航路、明石海峡航路及び備讃瀬戸東航路の中央並びに第二十五条第一項の規定により指定した経路を示すための指標となる航路標識を設置するものとする。

 (海上安全船員教育審議会への諮問)

第三十六条 運輸大臣は、この法律の施行に関する重要事項については、海上安全船員教育審議会の意見をきき、その意見を尊重しなければならない。

 (権限の委任)

第三十七条 この法律の規定により海上保安庁長官の権限に属する事項は、運輸省令で定めるところにより、管区海上保安本部長に行なわせることができる。

2 管区海上保安本部長は、運輸省令で定めるところにより、前項の規定によりその権限に属させられた事項の一部を海上保安監部その他の管区海上保安本部の事務所の長に行なわせることができる。

 (運輸省令への委任)

第三十八条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な手続その他の事項は、運輸省令で定める。

 (経過措置)

第三十九条 この法律の規定に基づき政令又は運輸省令を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ、政令又は運輸省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

   第五章 罰則

第四十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。

 一 第十条の規定の違反となるような行為をした者

 二 第十四条第三項(第十八条第四項において準用する場合を含む。)又は第二十六条第一項の規定による海上保安庁長官の処分の違反となるような行為をした者

 三 第二十三条の規定による海上保安庁長官の処分に違反した者

 四 第三十条第一項の規定に違反した者

 五 第三十条第三項の規定により海上保安庁長官が附し、又は同条第四項の規定により海上保安庁長官が変更し、若しくは附した条件に違反した者

 六 第三十一条第二項、第三十二条又は第三十三条第二項の規定による海上保安庁長官の処分に違反した者

 七 第三十三条第一項の規定に違反した者

第四十一条 第四条、第五条、第九条、第十一条、第十五条、第十六条又は第十八条第一項若しくは第二項の規定の違反となるような行為をした者は、五万円以下の罰金に処する。

第四十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三万円以下の罰金に処する。

 一 第七条又は第二十七条第一項の規定の違反となるような行為をした者

 二 第二十二条の規定に違反した者

 三 第三十条第七項又は第三十一条第一項の規定に違反した者

第四十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第四十条第四号から第六号まで又は前条第三号の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の罰金刑を科する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第三十六条及び附則第四条の規定は、公布の日から施行する。

 (海事代理士法の一部改正)

第二条 海事代理士法(昭和二十六年法律第三十二号)の一部を次のように改正する。

  別表第二第六号の次に次の一号を加える。

  六の二 海上交通安全法(昭和四十七年法律第百十五号)

 (海上衝突予防法の一部改正)

第三条 海上衝突予防法の一部を次のように改正する。

  第二十九条の次に次の一条を加える。

  (他の法令による航法等についてのこの法律の規定の適用等)

 第二十九条の二 第一条第二項、第十二条、第四章前文(第四項を除く。)、第二十一条から第二十三条まで、第二十七条、第二十八条(第四項を除く。)及び前条の規定は、他の法令において定められた燈火の表示、信号、航法その他運航に関する事項についても適用があるものとし、第四章前文第四項の規定は、他の法令において定められた避航に関する事項について準用するものとする。

  第三十条の見出しを「(この法律の規定の特例)」に改め、同条第一項中「港及びその境界附近における船舶又は水上航空機」を「船舶」に改め、「(昭和二十三年法律第百七十四号)」の下に「又は海上交通安全法(昭和四十七年法律第百十五号)」を加え、「同法」を「これらの法律」に改め、同条第二項中「河川、湖沼、内水又は水上航空機の飛行場であつて「、船舶又は」、「、これらの」及び「、前項に定めるものを除く外」を削る。

 (海上保安庁法の一部改正)

第四条 海上保安庁法(昭和二十三年法律第二十八号)の一部を次のように改正する。

  第二条第一項中「逮捕」の下に「、海上における船舶交通に関する規制」を加える。

  第七条第六号の二の次に次の一号を加える。

  六の三 海上交通安全法(昭和四十七年法律第百十五号)に基づき海上保安庁の権限に属させられた事項

別表

航路の名称

所在海域

浦賀水道航路

東京湾中ノ瀬の南方から久里浜湾沖に至る海域

中ノ瀬航路

東京湾中ノ瀬の東側の海域

伊良湖水道航路

伊良湖水道

明石海峡航路

明石海峡

備讃瀬戸東航路

瀬戸内海のうち小豆島地蔵埼沖から豊島と男木島との間を経て小与島と小瀬居島との間に至る海域

宇高東航路

瀬戸内海のうち荒神島の南方から中瀬の西方に至る海域

宇高西航路

瀬戸内海のうち大槌島の東方から神在鼻沖に至る海域

備讃瀬戸北航路

瀬戸内海のうち小与島と小瀬居島との間から佐柳島と二面島との間に至る海域で牛島及び高見島の北側の海域

備讃瀬戸南航路

瀬戸内海のうち小与島と小瀬居島との間から二面島と粟島との間に至る海域で牛島及び高見島の南側の海域

水島航路

瀬戸内海のうち水島港から葛島の西方、濃地諸島の東方及び与島と本島との間を経て沙弥島の北方に至る海域

来島海峡航路

瀬戸内海のうち大島と今治港との間から来島海峡を経て大下島の南方に至る海域

(法務・運輸・内閣総理大臣署名) 

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