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法律第百十号(昭四八・一〇・二)

  ◎瀬戸内海環境保全臨時措置法

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)

 第二章 瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画の策定(第三条)

 第三章 排出水の排出の規制その他の措置(第四条−第十九条)

 第四章 雑則(第二十条−第二十三条)

 第五章 罰則(第二十四条−第二十七条)

 附則

   第一章 総則

 (趣旨)

第一条 この法律は、瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するための瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画を策定すべきことを明示するとともに、当該計画が策定されるまでの間における瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するための当面の措置として、排水規制の強化、特定施設の設置の規制等に関し、特別の措置を定めるものとする。

 (定義)

第二条 この法律において「瀬戸内海」とは、次に掲げる直線及び陸岸によつて囲まれた海面並びにこれに隣接する海面であつて政令で定めるものをいう。

 一 和歌山県紀伊日の御岬燈台から徳島県伊島及び前島を経て蒲生田岬に至る直線

 二 愛媛県佐田岬から大分県関崎燈台に至る直線

 三 山口県火ノ山下燈台から福岡県門司崎燈台に至る直線

2 この法律において「関係府県」とは、大阪府、兵庫県、和歌山県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県及び大分県並びに瀬戸内海の環境の保全に関係があるその他の府県で政令で定めるものをいう。

3 この法律において「関係府県知事」とは、関係府県の知事をいう。

   第二章 瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画の策定

 (瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画の策定)

第三条 政府は、瀬戸内海が、わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ、瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するため、すみやかに、瀬戸内海の水質の保全、自然景観の保全等に関し、瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画を策定しなければならない。

   第三章 排出水の排出の規制その他の措置

 (排出水の排出の規制の強化)

第四条 環境庁長官は、瀬戸内海環境保全審議会の議を経て、瀬戸内海及びこれに接続する海域以外の公共用水域(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域をいう。以下同じ。)に排出される産業排水に係る化学的酸素要求量で表示した汚濁負荷量を昭和四十七年当時の二分の一程度に減少させることを目途として、関係府県ごとの当該汚濁負荷量の限度を定めなければならない。

2 関係府県は、当該府県の前項に規定する産業排水に係る化学的酸素要求量で表示した汚濁負荷量をこの法律の施行の日から三年以内に同項の規定により定められた当該府県に係る汚濁負荷量の限度まで段階的に減少させることを旨として、水質汚濁防止法第三条第三項の規定に基づく排水基準を定めるものとする。

3 第一項の汚濁負荷量の限度の決定は、この法律の施行の日から起算して三月を経過する日までに行なわなければならない。

 (特定施設の設置の許可)

第五条 関係府県の区域(政令で定める区域を除く。)において工場又は事業場から公共用水域に水を排出する者は、特定施設(水質汚濁防止法第二条第二項に規定する特定施設をいい、同項に規定する特定施設を設置する工場又は事業場から排出される排出水(同条第三項に規定する排出水をいう。以下同じ。)の一日当たりの最大量が五十立方メートル未満である場合における当該特定施設その他政令で定めるものを除く。以下同じ。)を設置しようとするときは、総理府令で定めるところにより、府県知事の許可を受けなければならない。

2 前項の許可を受けようとする者は、次の各号に掲げる事項を記載した申請書を府県知事に提出しなければならない。

 一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

 二 工場又は事業場の名称及び所在地

 三 特定施設の種類

 四 特定施設の構造

 五 特定施設の使用の方法

 六 特定施設から排出される汚水又は廃液 (以下「汚水等」という。)の処理の方法

 七 排出水の一日当たりの最大量

 八 排出水の汚染状態その他の総理府令で定める事項

3 前項の申請書には、当該特定施設を設置することが環境に及ぼす影響についての調査の結果に基づく事前評価に関する事項を記載した書面を添附しなければならない.

4 府県知事は、第一項の許可の申請があつた場合には、遅滞なく、その概要を告示するとともに、前項の書面をその告示の日から三週間公衆の縦覧に供しなければならない。

5 府県知事は、前項の告示をしたときは、遅滞なく、その旨を他の関係府県知事及び当該特定施設の設置に関し環境保全上関係がある市町村の長に通知し、期間を指定して当該関係府県知事及び当該市町村長の意見を求めなければならない。

6 第四項の告示があつたときは、当該特定施設の設置に関し利害関係を有する者は、同項の縦覧期間満了の日までに、当該府県知事に、第三項の事前評価に関する事項についての意見書を提出することができる。

7 第三項の事前評価に関し必要な事項は、総理府令で定める。

 (特定施設の設置の許可の基準)

第六条 府県知事は、前条第一項の申請に係る特定施設が次の各号のいずれかに該当するものであると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。

 一 廃棄物の処理を目的とする工場又は事業場に係るものであること。

 二 当該特定施設からの汚水等の排出が瀬戸内海の環境を保全する上において著しい支障を生じさせるおそれがないものであること.

2 府県知事は、前条第一項の許可の申請に係る特定施設が前項第一号に該当する場合においても、同条第一項の許可については、当該特定施設を設置することが環境に及ぼす影響について十分配慮しなければならない。

 (特定施設に係る経過措置)

第七条 第五条第一項に規定する区域において一の施設が特定施設となつた際現にその施設を設置している者(設置の工事をしている者を含む。)であつて排出水を排出するものは、当該施設について同項の許可を受けたものとみなす。

2 前項の規定により第五条第一項の許可を受けたものとみなされた者は、当該施設が特定施設となつた日から三十日以内に、総理府令で定めるところにより、同条第二項各号に掲げる事項を府県知事に届け出なければならない。

 (特定施設の構造等の変更)

第八条 第五条第一項の許可を受けた者は、その許可に係る同条第二項第四号から第七号までに掲げる事項の変更をしようとするときは、総理府令で定めるところにより、府県知事の許可を受けなければならない。ただし、総理府令で定める軽微な変更については、この限りでない.

2 前項の許可を受けようとする者は、総理府令で定める事項を記載した申請書を府県知事に提出しなければならない。

3 第五条第三項から第七項まで及び第六条の規定は、第一項の許可の申請があつた場合に準用する。

4 第五条第一項の許可を受けた者は、第一項ただし書の総理府令で定める軽微な変更をしたときは、その日から三十日以内に、その旨を府県知事に届け出なければならない。

 (氏名等の変更)

第九条 第五条第一項の許可を受けた者は、その許可に係る同条第二項第一号、第二号若しくは第八号に掲げる事項に変更があつたとき、又はその許可に係る特定施設の使用を廃止したときは、その日から三十日以内に、その旨を府県知事に届け出なければならない。

 (承継)

第十条 第五条第一項の許可を受けた者からその許可に係る特定施設を譲り受け、又は借り受けた者は、当該特定施設に係る当該許可を受けた者の地位を承継する。

2 第五条第一項の許可を受けた者について相続又は合併があつたときは、相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人は、当該許可を受けた者の地位を承継する。

3 前二項の規定により第五条第一項の許可を受けた者の地位を承継した者は、その承継があつた日から三十日以内に、その旨を府県知事に届け出なければならない。

 (違反に対する措置命令)

第十一条 府県知事は、第五条第一項の規定に違反して特定施設を設置した者又は第八条第一項の規定に違反して同項に規定する事項を変更した者に対して、当該特定施設の除却、操業の停止その他当該違反を是正するために必要な措置をとるべき旨を命ずることができる。

 (水質汚濁防止法等の適用関係)

第十二条 水質汚濁防止法第五条から第十一条まで及び同法第二十三条第三項から第五項まで(同法第五条、第七条、第八条、第十条及び第十一条に係る部分に限る。)並びに海洋汚染防止法(昭和四十五年法律第百三十六号)第三十七条第一項の規定は、第五条第一項に規定する区域において特定施設を設置する工場又は事業場から排出水を排出する者に係る当該特定施設については、適用しない。

2 第五条第一項に規定する区域における水質汚濁防止法第二十二条第一項の規定の適用については、同項中「この法律」とあるのは、「この法律(瀬戸内海環境保全臨時措置法(昭和四十八年法律第百十号)第五条から第十一条までの規定を含む。)」とする。

 (埋立て等についての特別の配慮)

第十三条 関係府県知事は、瀬戸内海における公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第二条第一項の免許又は同法第四十二条第一項の承認については、第三条の瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならない。

2 前項の規定の運用についての基本的な方針に関しては、瀬戸内海環境保全審議会において調査審議するものとする。

 (下水道及び廃棄物の処理施設の整備等)

第十四条 国及び地方公共団体は、瀬戸内海の汚染の現状にかんがみ、下水道及び廃棄物の処理施設の整備、汚でいのしゆんせつ、水質の監視又は測定のための施設及び設備の整備その他瀬戸内海の水質の保全のために必要な事業の促進に努めなければならない。

 (財政上の援助等)

第十五条 国は、前条の事業を実施する者に対し、財政上の援助、必要な資金の融通又はあつせんその他の援助に努めなければならない。

 (瀬戸内海浄化のための事業に関する計画の設定)

第十六条 政府は、瀬戸内海の汚濁した水質の浄化を図ることを目的とする大規模な事業に関する計画を設定するよう努めるものとし、そのための技術開発等を促進するとともに、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 (技術開発の促進)

第十七条 政府は、すみやかに、赤潮の発生の防除技術、船舶内における油の処理技術その他瀬戸内海の環境保全のための技術の開発に努め、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。

 (排出水に係る量規制の導入)

第十八条 政府は、すみやかに、瀬戸内海及びこれに接続する海域以外の公共用水域に排出される排出水の規制に関し、量規制の導入について必要な措置を講ずるものとする。

 (赤潮等による漁業被害者の救済)

第十九条 政府は、瀬戸内海において赤潮、油等による漁業被害が多数発生している状況にかんがみ、すみやかに、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について必要な措置を講ずるものとする。

   第四章 雑則

 (勧告又は助言)

第二十条 環境庁長官は、この法律の適正かつ円滑な運用を確保するために必要があると認めるときは、関係府県知事に対し、必要な勧告又は助言をすることができる。

2 環境庁長官は、関係府県知事に対し、前項の勧告によつてとられた措置について報告を求めることができる。

 (経過措置)

第二十一条 この法律の規定に基づき政令を制定し、又は改廃する場合においては、その政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (事務の委任)

第二十二条 この法律の規定により府県知事の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、政令で定める市の長に委任することができる。

 (瀬戸内海環境保全審議会)

第二十三条 環境庁に、瀬戸内海環境保全審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、環境庁長官又は関係大臣の諮問に応じ、瀬戸内海の環境の保全に関する重要事項を調査審議する。

3 審議会は、瀬戸内海の環境の保全に関する重要事項について、環境庁長官又は関係大臣に意見を述べることができる。

4 審議会は、次の各号に掲げる者につき、内閣総理大臣が任命する委員四十人以内で組織する。

 一 関係行政機関の職員

 二 関係府県知事

 三 関係市町村の長を代表する者

 四 学識経験のある者

5 審議会の委員は、非常勤とする。

6 前二項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

   第五章 罰則

第二十四条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 一 第五条第一項又は第八条第一項の規定に違反した者

 二 第十一条の規定による命令に違反した者

第二十五条 第七条第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。

第二十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第二十七条 第八条第四項、第九条又は第十条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、三万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。

 (経過措置)

第二条 第五条第一項に規定する区域において、この法律の施行前に、特定施設の設置につき水質汚濁防止法第五条の規定による届出をした者でこの法律の施行の際現に同法第九条の規定による実施の制限を受けていないもの及び同法第六条の規定による届出をした者は、当該特定施設について第五条第一項の許可を受けたものとみなす。

2 第五条第一項に規定する区域において、この法律の施行の際現に特定施設につき水質汚濁防止法第九条の規定による実施の制限を受けている者については、当該制限を受けている間は、第五条第一項、第八条第一項及び第十二条第一項の規定は、適用しない。

3 前項に規定する者は、水質汚濁防止法第九条の規定による実施の制限を受けないこととなつたときは、当該特定施設について第五条第一項又は第八条第一項の許可を受けたものとみなす。

4 第五条第一項に規定する区域において、この法律の施行前に、鉱山保安法(昭和二十四年法律第七十号)第八条第一項に規定する建設物、工作物その他の施設である特定施設、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第七項に規定する電気工作物である特定施設又は海洋汚染防止法第三条第九号に規定する廃油処理施設である特定施設の設置につき、これらの法律の規定による許可若しくは認可を受けた者又はこれらの法律の規定による届出をして当該特定施設を設置した者(この法律の施行の際現に設置の工事をしている者を含む。)であつて、当該特定施設を設置する鉱山保安法第二条第二項本文に規定する鉱山又は工場若しくは事業場から排出水を排出するものは、当該特定施設について第五条第一項の許可を受けたものとみなす。

5 前項の規定により第五条第一項の許可を受けたものとみなされた者は、この法律の施行の日から三十日以内に、総理府令で定めるところにより、同条第二項第五号から第七号までに掲げる事項を府県知事に届け出なければならない。

6 前項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、五万円以下の罰金に処する。

7 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

第三条 この法律の施行前にした行為及び水質汚濁防止法第八条の規定による命令又は同法第九条第一項の規定による実施の制限に関しこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (この法律の失効)

第四条 この法律は、施行の日から起算して三年をこえない範囲内において別に法律で定める日にその効力を失う。

 (環境庁設置法の一部改正)

第五条 環境庁設置法(昭和四十六年法律第八十八号)の一部を次のように改正する。

  第四条第二十七号の次に次の一号を加える。

  二十七の二 瀬戸内海環境保全臨時措置法(昭和四十八年法律第百十号)の施行に関する事務を処理すること。

  第五条第六項中「及び第二十号から第二十五号まで」を「、第二十号から第二十五号まで及び第二十七号の二」に改め、「第三十一号に規走する事務」の下に「並びに瀬戸内海環境保全審議会の庶務に関する事務」を加える。

 第十一条第一項の表中

自然環境保全審議会

自然環境保全法、自然公園法、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律及び特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律の規定によりその権限に属させられた事項を行なうこと。

自然環境保全審議会

自然環境保全法、自然公園法、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律及び特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律の規定によりその権限に属させられた事項を行なうこと。

瀬戸内海環境保全審議会

瀬戸内海環境保全臨時措置法の規定によりその権限に属させられた事項を行なうこと。

に改める。

(内閣総理・厚生・運輸・建設・自治大臣署名) 

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