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法律第三十五号(平二・六・一九)

  ◎特定通信・放送開発事業実施円滑化法

 (目的)

第一条 この法律は、社会経済の情報化の進展に伴い国民経済及び国民生活における情報の流通の重要性が増大していることにかんがみ、特定通信・放送開発事業の実施の円滑化に必要な措置を講ずること等により、新たな通信・放送事業分野の開拓等を通じて電気通信による情報の円滑な流通の促進を図り、もって我が国における情報化の均衡ある発展に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「通信・放送事業分野」とは、電気通信業又は放送業(有線放送業を含む。以下同じ。)に属する事業、委託を受けて専ら電気通信業又は放送業において行われる業務の一部を行う事業、電気通信業又は放送業の発達を図るための業務であって、放送番組を収集し、及び保管する業務その他これらの業に密接に関連するものを行う事業、電気通信業又は放送業が提供する役務の有効利用に資する電気通信設備を整備する事業、電気通信設備の機能の効率的な利用を支援する電気通信の業務を行う事業並びに電気通信システム(電気通信設備の集合体であって電気通信の業務を一体的に行うよう構成されたものをいう。)の設計その他の電気通信設備の機能の効率的な利用を技術的に支援する業務を行う事業の属する事業分野をいう。

2 この法律において「特定通信・放送開発事業」とは、通信・放送新規事業、地域通信・放送開発事業及び通信・放送共同開発事業をいう。

3 この法律において「通信・放送新規事業」とは、通信・放送事業分野に属する事業のうち、新たな役務を提供する事業又は新技術を用いて役務の提供の方式を改善する事業であって、新たな通信・放送事業分野の開拓を通じて情報の円滑な流通の促進に寄与するものをいう。

4 この法律において「地域通信・放送開発事業」とは、通信・放送事業分野に属する事業のうち、電気通信の高度化が進展していないため社会経済の情報化に即応した諸活動の円滑な実施に支障を生じている地域において行われる電気通信の高度化に資する事業であって、当該地域における通信・放送事業分野の現状等から見て、当該事業を行うことが当該地域における情報の円滑な流通の促進を通じて地域経済の発展又は地域住民の生活の向上に寄与するものをいう。

5 この法律において「通信・放送共同開発事業」とは、新たな通信・放送事業分野の開拓のために行う次に掲げる事業(高度な電気通信技術の企業化を行うための事業場として相当数の企業等に利用させるための構造及び設備を有する施設の整備を行う事業であって次の各号の事業と一体的に行われるものを含む。)をいう。

 一 高度な電気通信技術の企業化を共同して行う事業

 二 高度な電気通信技術の企業化のために必要な需要の開拓の事業

 (実施指針)

第三条 郵政大臣は、電気通信による情報の円滑な流通の促進を図るため、特定通信・放送開発事業の実施に関する指針(以下「実施指針」という。)を定めなければならない。この場合において、次項第二号から第四号までに掲げる事項については、通信・放送新規事業、地域通信・放送開発事業及び通信・放送共同開発事業につきそれぞれ定めなければならない。

2 実施指針には、次に掲げる事項について定めるものとする。

 一 全国及び地域における電気通信による情報の円滑な流通の促進に関する事項

 二 特定通信・放送開発事業の内容に関する事項

 三 特定通信・放送開発事業の実施方法に関する事項

 四 特定通信・放送開発事業の実施に際し配慮すべき重要事項

3 前項各号に掲げる事項のほか、地域通信・放送開発事業に係る実施方針においては、当該事業が行われるべき地域に関する事項について定めるものとする。

4 実施指針は、通信・放送事業分野に係る国際環境との調和を確保するよう配慮されたものであるとともに、地域社会の健全な発展に資するよう配慮されたものでなければならない。

5 郵政大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、実施指針を変更するものとする。

6 郵政大臣は、実施指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議し、かつ、政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。

7 郵政大臣は、実施指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 (実施計画の認定)

第四条 通信・放送新規事業又は通信・放送共同開発事業を実施しようとする者(これらの事業を実施する法人を設立しようとする者を含む。)は、当該事業の実施に関する計画(以下「実施計画」という。)を作成し、これを郵政大臣に提出して、その実施計画が適当である旨の認定を受けることができる。

2 実施計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。

 一 特定通信・放送開発事業の内容

 二 特定通信・放送開発事業の実施に必要な設備その他特定通信・放送開発事業の実施方法

 三 特定通信・放送開発事業の実施時期

 四 特定通信・放送開発事業の実施に必要な資金の額及びその調達方法

3 郵政大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その実施計画が実施指針に照らし適切なものであり、かつ、当該実施計画が確実に実施される見込みがあると認めるときは、同項の認定をするものとする。

4 郵政大臣は、第一項の認定をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。

 (実施計画の変更等)

第五条 前条第一項の認定を受けた者(その者の設立に係る同項の法人を含む。)は、当該認定に係る実施計画を変更しようとするときは、郵政大臣の認定を受けなければならない。

2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の認定に準用する。

3 郵政大臣は、前条第一項の認定を受けた実施計画(第一項の規定による変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)に係る特定通信・放送開発事業を実施する者(以下「認定事業者」という。)が当該認定計画に従って特定通信・放送開発事業を実施していないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。

 (通信・放送衛星機構の業務の特例)

第六条 通信・放送衛星機構(以下「機構」という。)は、通信・放送衛星機構法(昭和五十四年法律第四十六号。以下「機構法」という。)第二十八条第一項に規定する業務のほか、この法律の目的を達成するため、次の業務を行う。

 一 認定計画に係る特定通信・放送開発事業の実施に必要な資金を調達するために発行する社債及び当該資金の借入れに係る債務の保証を行うこと。

 二 認定計画に係る通信・放送新規事業の実施に必要な資金の出資を行うこと。

 三 郵政大臣及び大蔵大臣が指定する金融機関が行う地域通信・放送開発事業の実施に必要な資金の貸付けについて、当該金融機関に対し、利子補給金を支給すること。

 四 情報の円滑な流通の促進に寄与する通信・放送事業分野に関し、情報の収集、調査及び研究を行い、その成果を提供し、並びに照会及び相談に応ずること。

 五 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。

2 機構は、地域通信・放送開発事業の実施地域、内容及び実施方法が実施指針に照らし適切なものであると認めるときでなければ、前項第三号の利子補給金の支給の決定をしてはならない。

 (出資)

第七条 機構は、前条第一項第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。以下「出資業務」という。)に必要な資金又は第九条第一項に規定する信用基金に充てるため必要があるときは、郵政大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。

2 政府は、前項の規定により機構がその資本金を増加するときは、予算で定める金額の範囲内において、機構に出資することができる。

3 第一項の認可があった場合において機構に出資しようとする者は、出資業務に必要な資金又は第九条第一項に規定する信用基金のそれぞれに充てるべき金額を示すものとする。

 (業務の委託等)

第八条 機構は、郵政大臣及び大蔵大臣の認可を受けて、第六条第一項第一号から第三号までに掲げる業務(債務の保証の決定、出資の決定及び利子補給金の支給の決定を除く。)の一部を金融機関に委託することができる。

2 金融機関は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による委託を受け、当該業務を行うことができる。

3 第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関の役員又は職員で、当該委託業務に従事するものは、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

4 機構法第四十条及び第四十四条の規定は、第一項の規定により業務の委託を受けた金融機関について準用する。この場合において、機構法第四十条第一項中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣又は大蔵大臣」と、「その業務」とあるのは「その委託を受けた業務」と、「事務所その他の事業所」とあるのは「事務所」と、「業務の状況」とあるのは「その委託を受けた業務に関し業務の状況」と、機構法第四十四条中「第四十条第一項」とあるのは「特定通信・放送開発事業実施円滑化法第八条第四項において準用する第四十条第一項」と読み替えるものとする。

 (信用基金)

第九条 機構は、第六条第一項第一号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。)に関する信用基金を設け、第七条第一項の認可を受けた場合において同条第三項の規定により信用基金に充てるべきものとして出資された金額と機構が負担する保証債務の弁済に充てることを条件として政府以外の者から出えんされた金額の合計額に相当する金額をもってこれに充てるものとする。

2 前項に規定する信用基金は、郵政省令、大蔵省令で定めるところにより、毎事業年度の損益計算上利益又は損失を生じたときは、その利益又は損失の額により増加又は減少するものとする。

 (区分経理)

第十条 機構は、第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。)に係る経理並びに出資業務に係る経理については、その他の経理と区分し、それぞれ特別の勘定を設けて整理しなければならない。

 (機構法の適用)

第十一条 第六条第一項の規定により機構の業務が行われる場合には、機構法第十七条第二項中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(特定通信・放送開発事業実施円滑化法(以下「通信・放送開発法」という。)第六条第一項第一号から第三号までに掲げる業務これらに附帯する業務を含む。以下「金融関連業務」という。)に係る変更については、郵政大臣及び大蔵大臣)」と、機構法第十九条第四項中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(金融関連業務に関する意見については、郵政大臣及び大蔵大臣)」と、機構法第二十九条第一項及び第三十五条中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(金融関連業務に係るものについては、郵政大臣及び大蔵大臣)」と、機構法第二十九条第二項及び第三十八条中「郵政省令」とあるのは「郵政省令(金融関連業務に係るものについては、郵政省令、大蔵省令)」と、機構法第三十一条及び第三十二条中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(金融関連業務に係る部分については、郵政大臣及び大蔵大臣)」と、機構法第三十四条第一項中「衛星所有勘定」とあるのは「衛星所有勘定及び通信・放送開発法第六条第一項第二号に掲げる業務(これに附帯する業務を含む。以下「出資業務」という。)に係る勘定」と、機構法第三十四条第三項及び第四十二条第一項中「衛星所有勘定」とあるのは「衛星所有勘定及び出資業務に係る勘定」と、機構法第三十八条中「この法律」とあるのは「この法律及び通信・放送開発法」と、機構法第三十九条中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(金融関連業務については、郵政大臣及び大蔵大臣)」と、機構法第三十九条、第四十条第一項及び第四十五条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は通信・放送開発法」と、機構法第四十条第一項中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣(金融関連業務については、郵政大臣又は大蔵大臣)」と、機構法第四十一条第二項中「衛星所有勘定に係る出資」とあるのは「衛星所有勘定に係る出資、通信・放送開発法第十条に規定する特別の勘定に係るそれぞれの出資」と、機構法第四十二条第一項中「一般勘定」とあるのは「通信・放送開発法第六条第一項第一号、第三号及び第四号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。以下「債務保証等業務」という。)に係る勘定並びに一般勘定」と、同条第二項中「一般勘定」とあるのは「債務保証等業務に係る勘定及び一般勘定」と、機構法第四十三条第一項中「次の場合」とあるのは「次の場合(金融関連業務に係る第二十九条第一項、第三十一条若しくは第三十五条の規定による認可又は第三十二条第一項の規定による承認をしようとするときを除く。)」と、同条第二項中「次の場合」とあるのは「次の場合(通信・放送開発法第六条第一項に規定する業務に係る第二十九条第一項又は第三十一条の規定による認可をしようとするときを除く。)」と、機構法第四十五条第一号及び第四号中「郵政大臣」とあるのは「郵政大臣又は郵政大臣及び大蔵大臣」と、同条第三号中「第二十八条第一項」とあるのは「第二十八条第一項及び通信・放送開発法第六条第一項」とする。

 (社債発行限度の特例)

第十二条 認定事業者であって会社であるものは、認定計画に係る特定通信・放送開発事業の実施に必要な資金を調達するために発行する新株引受権付社債であって、郵政省令で定めるところにより募集するものについては、機構が当該新株引受権付社債の元本に係る債務の額のうちその額に郵政省令で定める割合を乗じて得た額の償還について保証する場合に限り、商法(明治三十二年法律第四十八号)第二百九十七条の規定による制限を超えて募集することができる。ただし、社債の総額は、資本及び準備金の総額又は最終の貸借対照表によりその会社に現存する純資産額のいずれか少ない額の二倍を超えてはならない。

 (負担金についての損金算入の特例)

第十三条 認定事業者(その者が民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人である場合に限る。)が行う通信・放送共同開発事業(第二条第五項第一号に掲げるものを除く。)であって認定計画に係るものに係る基金に充てるための負担金を支出した場合には、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、損金算入の特例の適用があるものとする。

 (資金の確保等)

第十四条 政府は、特定通信・放送開発事業の実施に必要な資金の確保又はその融通のあっせんに努めるものとする。

2 政府は、特定通信・放送開発事業の実施の円滑化に資するため、研究開発の推進及びその成果の普及その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。

3 郵政大臣(第六条第一項第一号から第三号までに掲げる業務については、郵政大臣及び大蔵大臣)は、同項に規定する機構の業務の円滑な運営が図られるように、情報の提供その他の必要な配慮をするものとする。

 (報告の徴収)

第十五条 郵政大臣は、認定事業者に対し、認定計画に係る特定通信・放送開発事業の実施状況について報告を求めることができる。

 (罰則)

第十六条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、十万円以下の罰金に処する。

2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。

第十七条 第十二条ただし書の規定に違反した者は、百万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (罰則に関する経過措置)

第二条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (機構に対する日本開発銀行の出資)

第三条 日本開発銀行は、日本開発銀行法(昭和二十六年法律第百八号)第十八条第一項の規定にかかわらず、大蔵大臣の認可を受けて、機構に出資することができる。

2 前項の規定により日本開発銀行が出資する場合においては、日本開発銀行法第十八条の二第二項中「出資」とあるのは「出資及び特定通信・放送開発事業実施円滑化法(以下「通信・放送開発法」という。)附則第三条第一項の規定により行う出資」と、同法第五十一条第二号中「場合」とあるのは「場合及び通信・放送開発法附則第三条第一項の規定により大蔵大臣の認可を受けなければならない場合」と、同条第四号中「規定する業務」とあるのは「規定する業務並びに通信・放送開発法附則第三条第一項の規定による出資」とする。

 (印紙税法の一部改正)

第四条 印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。

  別表第三特定船舶製造業経営安定臨時措置法(昭和六十二年法律第二十五号)第十一条第一号(協会の行う債務保証業務)の業務に関する文書の項の次に次のように加える。

特定通信・放送開発事業実施円滑化法(平成二年法律第三十五号)第六条第一項第一号(通信・放送衛星機構の業務の特例)の業務に関する文書

通信・放送衛星機構

 (大蔵省設置法の一部改正)

第五条 大蔵省設置法(昭和二十四年法律第百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第四条第九十六号中「産業基盤整備基金」の下に「、通信・放送衛星機構」を加える。

 (郵政省設置法の一部改正)

第六条 郵政省設置法(昭和二十三年法律第二百四十四号)の一部を次のように改正する。

  第四条中第六十七号を第六十八号とし、第六十六号を第六十七号とし、第六十五号を第六十六号とし、第六十四号の次に次の一号を加える。

  六十五 特定通信・放送開発事業実施円滑化法(平成二年法律第三十五号)の施行に関すること。

  第五条中第二十二号の十八を第二十二号の十九とし、第二十二号の十七を第二十二号の十八とし、第二十二号の十六の次に次の一号を加える。

  二十二の十七 特定通信・放送開発事業実施円滑化法の定めるところに従い、実施指針を定め、及び実施計画の認定をすること。

  第六条第五項及び第六項中「第六十六号」を「第六十七号」に改め、同条第八項中「第六十七号」を「第六十八号」に改める。

(大蔵・郵政・内閣総理大臣署名) 

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