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法律第七十七号(平一五・六・一一)

  ◎特定都市河川浸水被害対策法

目次

 第一章 総則(第一条―第三条)

 第二章 流域水害対策計画等

  第一節 流域水害対策計画の策定等(第四条・第五条)

  第二節 流域水害対策計画に基づく措置(第六条―第八条)

 第三章 特定都市河川流域における規制等

  第一節 雨水浸透阻害行為の許可等(第九条―第二十二条)

  第二節 保全調整池(第二十三条―第二十六条)

  第三節 管理協定(第二十七条―第三十一条)

 第四章 都市洪水想定区域等(第三十二条・第三十三条)

 第五章 雑則(第三十四条―第三十七条)

 第六章 罰則(第三十八条―第四十二条)

 附則

   第一章 総則

 (目的)

第一条 この法律は、都市部を流れる河川の流域において、著しい浸水被害が発生し、又はそのおそれがあり、かつ、河道等の整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難な地域について、浸水被害から国民の生命、身体又は財産を保護するため、当該河川及び地域をそれぞれ特定都市河川及び特定都市河川流域として指定し、浸水被害対策の総合的な推進のための流域水害対策計画の策定、河川管理者による雨水貯留浸透施設の整備その他の措置を定めることにより、特定都市河川流域における浸水被害の防止のための対策の推進を図り、もって公共の福祉の確保に資することを目的とする。

 (定義)

第二条 この法律において「特定都市河川」とは、都市部を流れる河川(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第三条第一項に規定する河川をいう。以下同じ。)であって、その流域において著しい浸水被害が発生し、又はそのおそれがあるにもかかわらず、河道又は洪水調節ダムの整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難なもののうち、国土交通大臣又は都道府県知事が次条の規定により区間を限って指定するものをいう。

2 この法律において「特定都市河川流域」とは、当該特定都市河川の流域(当該特定都市河川に係る区間が河口を含まない場合にあってはその区間の最も下流の地点から河口までの区間に係る流域を除き、当該特定都市河川の流域内において河川に雨水を放流する下水道(以下「特定都市下水道」という。)がある場合にあってはその排水区域(下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第七号に規定する排水区域をいう。以下同じ。)を含む。)として国土交通大臣又は都道府県知事が次条の規定により指定するものをいう。

3 この法律において「浸水被害」とは、特定都市河川流域において、洪水による浸水(以下「都市洪水」という。)又は一時的に大量の降雨が生じた場合において下水道その他の排水施設若しくは河川その他の公共の水域に当該雨水を排水できないことによる浸水(以下「都市浸水」という。)により、国民の生命、身体又は財産に被害を生ずることをいう。

4 この法律において「河川管理者」とは、河川法第七条に規定する河川管理者(同法第九条第二項又は第五項の規定により都道府県知事又は指定都市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市をいう。以下同じ。)の長が河川法第九条第二項に規定する指定区間内の一級河川(同法第四条第一項に規定する一級河川をいう。以下同じ。)の管理の一部を行う場合にあっては、当該都道府県知事又は当該指定都市の長)をいう。

5 この法律において「下水道管理者」とは、下水道法第四条第一項に規定する公共下水道管理者、同法第二十五条の三第一項に規定する流域下水道管理者及び同法第二十七条第一項に規定する都市下水路管理者をいう。

6 この法律において「雨水貯留浸透施設」とは、雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を有する施設であって、浸水被害の防止を目的とするものをいう。

7 この法律において「防災調整池」とは、雨水貯留浸透施設のうち、雨水を一時的に貯留する機能を有する施設であって、河川管理者及び下水道管理者以外の者が設置するもの(第九条の許可を受けて行う第十条第一項第三号に規定する対策工事により設置されるものを除く。)をいう。

8 この法律において「保全調整池」とは、防災調整池のうち、第二十三条第一項の規定により指定されるものをいう。

9 この法律において「宅地等」とは、宅地、池沼、水路、ため池、道路その他雨水が浸透しにくい土地として政令で定めるものをいう。

 (特定都市河川等の指定)

第三条 国土交通大臣は、一の水系に係る一又は二以上の一級河川につき、区間を限ってこれを特定都市河川として指定することができる。

2 前項の規定により指定する河川の区間は、一級河川の連続する区間でなければならない。この場合において、二以上の一級河川を併せて指定するときは、そのうち一の一級河川の連続する区間が、他の一級河川の連続する区間と直接に又は他の一級河川の連続する区間を通じて間接に接続していなければならない。

3 前二項の規定により国土交通大臣が特定都市河川を指定するときは、併せて、当該特定都市河川に係る特定都市河川流域を指定しなければならない。

4 第一項及び第二項の規定により指定しようとする区間のすべてが河川法第九条第二項に規定する指定区間内にあるときは、第一項及び前項の規定にかかわらず、その特定都市河川及び特定都市河川流域の指定は、都道府県知事が行うものとする。

5 都道府県知事は、一の水系に係る一又は二以上の河川法第五条第一項に規定する二級河川につき、区間を限ってこれを特定都市河川として指定することができる。この場合においては、第二項及び第三項の規定を準用する。

6 前二項の場合において、指定しようとする特定都市河川流域が二以上の都府県にわたるときのこれらの規定の適用については、これらの規定中「都道府県知事」とあるのは、「都道府県知事(当該特定都市河川流域が二以上の都府県にわたる場合にあっては、都府県知事及び当該特定都市河川流域の区域の一部をその区域に含む他の都府県知事)」とする。

7 第三項(第五項において準用する場合に限る。)及び前三項の規定により都道府県知事が特定都市河川及び特定都市河川流域の指定を行おうとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。

8 国土交通大臣は、第一項及び第三項の規定により特定都市河川及び特定都市河川流域の指定を行おうとするときは、あらかじめ、当該特定都市河川流域の区域の全部又は一部をその区域に含む都道府県及び市町村の長並びに当該特定都市河川流域に係る特定都市下水道の下水道管理者の意見を聴かなければならない。

9 都道府県知事は、第三項(第五項において準用する場合に限る。)及び第四項から第六項までの規定により特定都市河川及び特定都市河川流域の指定を行おうとするときは、あらかじめ、当該特定都市河川流域の区域の全部又は一部をその区域に含む市町村の長及び当該特定都市河川流域に係る特定都市下水道の下水道管理者の意見を聴かなければならない。

10 国土交通大臣又は都道府県知事は、第一項、第三項(第五項において準用する場合を含む。)及び第四項から第六項までの規定により特定都市河川及び特定都市河川流域の指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、これを公示しなければならない。

11 前各項の規定は、特定都市河川又は特定都市河川流域の指定の変更又は解除について準用する。

   第二章 流域水害対策計画等

    第一節 流域水害対策計画の策定等

 (流域水害対策計画の策定)

第四条 前条の規定により特定都市河川及び特定都市河川流域が指定されたときは、当該特定都市河川の河川管理者、当該特定都市河川流域の区域の全部又は一部をその区域に含む都道府県及び市町村の長並びに当該特定都市河川流域に係る特定都市下水道の下水道管理者(以下この条及び次条において「河川管理者等」という。)は、共同して、特定都市河川流域における浸水被害の防止を図るための対策に関する計画(以下「流域水害対策計画」という。)を定めなければならない。

2 流域水害対策計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 一 特定都市河川流域における浸水被害対策の基本方針

 二 特定都市河川流域において都市洪水又は都市浸水の発生を防ぐべき目標となる降雨

 三 特定都市河川の整備に関する事項

 四 特定都市河川流域において当該特定都市河川の河川管理者が行う雨水貯留浸透施設の整備に関する事項

 五 下水道管理者が行う特定都市下水道の整備に関する事項(汚水のみを排除するためのものを除く。)

 六 特定都市河川流域において河川管理者及び下水道管理者以外の者が行う浸水被害の防止を図るための雨水の一時的な貯留又は地下への浸透に関する事項

 七 下水道管理者が管理する特定都市下水道のポンプ施設(河川に下水を放流するためのものに限る。)の操作に関する事項

 八 浸水被害が発生した場合における被害の拡大を防止するための措置に関する事項

 九 前各号に定めるもののほか、浸水被害の防止を図るために必要な措置に関する事項

3 河川管理者等は、第一項の規定により流域水害対策計画を定めようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣に協議し、その同意を得なければならない。ただし、当該流域水害対策計画に係る特定都市河川の河川管理者が国土交通大臣である場合は、この限りでない。

4 河川管理者等は、流域水害対策計画を定めようとする場合において必要があると認めるときは、あらかじめ、河川及び下水道に関し学識経験を有する者の意見を聴かなければならない。

5 河川管理者等は、前項に規定する場合において必要があると認めるときは、あらかじめ、公聴会の開催等特定都市河川流域内の住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。

6 河川管理者等は、流域水害対策計画のうち第二項第三号及び第四号に掲げる事項については、当該特定都市河川の河川管理者が作成する案に基づいて定めるものとする。

7 河川管理者等は、流域水害対策計画のうち第二項第五号に掲げる事項については、当該特定都市下水道の下水道管理者及び当該下水道管理者の管理する下水道の排水区域の全部又は一部をその区域に含む都道府県の知事が共同して作成する案に基づいて定めるものとする。ただし、当該排水区域の全部が一の市町村の区域内にある場合においては、当該下水道管理者が作成する案に基づいて定めるものとする。

8 河川管理者等は、流域水害対策計画を定めたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、これを公表しなければならない。

9 第三項から前項までの規定は、流域水害対策計画の変更について準用する。

 (流域水害対策計画の実施等)

第五条 河川管理者等は、流域水害対策計画を共同して作成した他の河川管理者等と連携を図りながら、当該流域水害対策計画に定められた浸水被害対策の基本方針に従い、雨水貯留浸透施設の整備、浸水被害対策に係る啓発その他浸水被害対策の実施に必要な措置を講ずるように努めなければならない。

2 特定都市河川流域内において居住し、又は事業を営む者は、当該特定都市河川流域における浸水被害の防止を図るための雨水の一時的な貯留又は地下への浸透に自ら努めるとともに、河川管理者等がこの法律の目的を達成するために行う措置に協力しなければならない。

    第二節 流域水害対策計画に基づく措置

 (河川管理者による雨水貯留浸透施設の整備)

第六条 河川管理者は、流域水害対策計画に基づき、特定都市河川流域に、特定都市河川の都市洪水による被害の防止を図ることを目的とする雨水貯留浸透施設を設置し、又は管理することができる。

2 前項の規定により河川管理者が設置し、又は管理する雨水貯留浸透施設については、当該雨水貯留浸透施設を河川法第三条第二項に規定する河川管理施設と、当該雨水貯留浸透施設の敷地である土地の区域を同法第六条第一項に規定する河川区域と、当該雨水貯留浸透施設に関する工事を同法第八条に規定する河川工事とみなして、同法その他の政令で定める法令の規定を適用する。

3 河川管理者は、国土交通省令で定めるところにより、その管理する雨水貯留浸透施設の区域として政令で定めるものを公示しなければならない。これを変更するときも、同様とする。

 (他の地方公共団体の負担金)

第七条 流域水害対策計画に基づく事業であって第四条第二項第五号又は第六号に掲げる事項に関するものを実施する地方公共団体は、当該事業により利益を受ける他の地方公共団体に対し、その利益を受ける限度において、当該事業に要する費用の全部又は一部を負担させることができる。

2 地方公共団体は、前項の規定により当該利益を受ける他の地方公共団体に当該事業に要する費用の全部又は一部を負担させようとするときは、あらかじめ、当該利益を受ける他の地方公共団体に協議しなければならない。

 (排水設備の技術上の基準に関する特例)

第八条 下水道法第四条第一項に規定する公共下水道管理者は、特定都市河川流域において流域水害対策計画に基づき浸水被害の防止を図るためには、同法第十条第一項に規定する排水設備(雨水を排除するためのものに限る。)が、同条第三項の政令で定める技術上の基準を満たすのみでは十分でなく、雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を備えることが必要であると認められるときは、政令で定める基準に従い、条例で、同項の技術上の基準に代えて排水設備に適用すべき排水及び雨水の一時的な貯留又は地下への浸透に関する技術上の基準を定めることができる。

   第三章 特定都市河川流域における規制等

    第一節 雨水浸透阻害行為の許可等

 (雨水浸透阻害行為の許可)

第九条 特定都市河川流域内の宅地等以外の土地において、次に掲げる行為(流域水害対策計画に基づいて行われる行為を除く。以下「雨水浸透阻害行為」という。)であって雨水の浸透を著しく妨げるおそれのあるものとして政令で定める規模以上のものをしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事(指定都市、地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市又は同法第二百五十二条の二十六の三第一項の特例市(以下「指定都市等」という。)の区域内にあっては、当該指定都市等の長。以下この章及び第三十八条において同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のために必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

 一 宅地等にするために行う土地の形質の変更

 二 土地の舗装(コンクリート等の不浸透性の材料で土地を覆うことをいい、前号に該当するものを除く。)

 三 前二号に掲げるもののほか、土地からの流出雨水量(地下に浸透しないで他の土地へ流出する雨水の量をいう。以下同じ。)を増加させるおそれのある行為で政令で定めるもの

 (申請の手続)

第十条 前条の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

 一 雨水浸透阻害行為をする土地の区域(以下「行為区域」という。)の位置、区域及び規模

 二 雨水浸透阻害行為に関する工事の計画

 三 雨水貯留浸透施設の設置に関する工事その他の行為区域からの雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するため自ら施行しようとする工事(以下「対策工事」という。)の計画

 四 その他国土交通省令で定める事項

2 前項の申請書には、国土交通省令で定める図書を添付しなければならない。

 (許可の基準)

第十一条 都道府県知事は、第九条の許可の申請があったときは、その対策工事の計画が、当該行為区域における雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するために必要な措置を政令で定める技術的基準(次条の条例が定められているときは、当該条例で定める技術的基準を含む。第十七条第二項及び第三項、第十八条第一項並びに第二十条第一項第四号において同じ。)に従い講じたものであり、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。

 (条例による技術的基準の強化)

第十二条 地方公共団体は、その地方の浸水被害の発生の状況又は自然的条件の特殊性を勘案し、前条の政令で定める技術的基準のみによっては特定都市河川流域における浸水被害の防止を図ることが困難であると認められる場合においては、政令で定める基準に従い、条例で、当該技術的基準を強化することができる。

2 市町村(指定都市等を除く。)は、前項の規定により条例を定めようとするときは、あらかじめ、都道府県知事と協議し、その同意を得なければならない。

 (許可の条件)

第十三条 都道府県知事は、第九条の許可に、行為区域における雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するために必要な条件を付することができる。この場合において、その条件は、当該許可を受けた者に不当な義務を課するものであってはならない。

 (許可の特例)

第十四条 国又は地方公共団体が行う雨水浸透阻害行為については、国又は地方公共団体と都道府県知事との協議が成立することをもって第九条の許可を受けたものとみなす。

 (許可又は不許可の通知)

第十五条 都道府県知事は、第九条の許可の申請があったときは、遅滞なく、許可又は不許可の処分をしなければならない。

2 前項の処分をするには、文書をもって同項の申請をした者に通知しなければならない。

 (変更の許可等)

第十六条 第九条の許可(この項の規定による許可を含む。)を受けた者は、第十条第一項各号に掲げる事項の変更をしようとする場合においては、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、国土交通省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。

2 前項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

3 第九条の許可を受けた者は、第一項ただし書に該当する変更をしたときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

4 第十一条及び前三条の規定は、第一項の許可について準用する。

5 第一項又は第三項の場合における次条の規定の適用については、第一項の規定による許可又は第三項の規定による届出に係る変更後の内容を第九条の許可の内容とみなす。

 (工事完了の検査等)

第十七条 第九条の許可を受けた者は、当該許可に係る雨水浸透阻害行為に関する工事を完了し、又は当該工事を廃止したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

2 都道府県知事は、前項の規定による工事を完了した旨の届出があったときは、遅滞なく、当該工事が第十一条の政令で定める技術的基準に適合しているかどうかについて検査しなければならない。

3 都道府県知事は、雨水貯留浸透施設の設置を伴う第一項の工事について、前項の検査の結果当該工事が第十一条の政令で定める技術的基準に適合すると認めたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる土地又は建築物等(建築物その他の工作物をいう。以下同じ。)に、当該技術的基準に適合する雨水貯留浸透施設が存する旨を表示した標識を設けなければならない。

 一 雨水貯留浸透施設の敷地である土地

 二 建築物等に雨水貯留浸透施設が設置されている場合にあっては、当該建築物等又はその敷地である土地

4 前項各号に掲げる土地又は建築物等の所有者、管理者又は占有者は、正当な理由がない限り、同項の標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

5 何人も、第三項の規定により設けられた標識を設置者の承諾を得ないで移転し、若しくは除却し、又は汚損し、若しくは損壊してはならない。

6 都道府県(当該雨水貯留浸透施設が指定都市等の区域内にある場合にあっては、当該指定都市等。次項及び第八項において同じ。)は、第三項の規定による行為により損失を受けた者がある場合においては、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

7 前項の規定による損失の補償については、都道府県と損失を受けた者が協議しなければならない。

8 前項の規定による協議が成立しない場合においては、都道府県又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。

 (雨水貯留浸透施設の機能を阻害するおそれのある行為の許可)

第十八条 前条第二項の検査の結果第十一条の政令で定める技術的基準に適合すると認められた雨水貯留浸透施設について、次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

 一 雨水貯留浸透施設の全部又は一部の埋立て

 二 雨水貯留浸透施設(建築物等に設置されているものを除く。)の敷地である土地の区域における建築物等の新築、改築又は増築

 三 雨水貯留浸透施設が設置されている建築物等の改築又は除却(雨水貯留浸透施設に係る部分に関するものに限る。)

 四 前三号に掲げるもののほか、雨水貯留浸透施設が有する雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を阻害するおそれのある行為で政令で定めるもの

2 前項の許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の許可の申請があったときは、その申請に係る行為が雨水貯留浸透施設が有する雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能の保全上支障がなく、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、その許可をしなければならない。

4 第十三条から第十五条までの規定は、第一項の許可について準用する。この場合において、第十三条、第十四条及び第十五条第一項中「第九条」とあるのは「第十八条第一項」と、第十三条中「行為区域における雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制する」とあるのは「雨水貯留浸透施設が有する雨水を一時的に貯留し、又は地下に浸透させる機能を保全する」と、第十四条中「雨水浸透阻害行為」とあるのは「第十八条第一項各号に掲げる行為」と、第十五条第二項中「前項」とあるのは「第十八条第四項において準用する第十五条第一項」と、「同項」とあるのは「第十八条第一項の許可」と読み替えるものとする。

5 第三条第十一項の規定による特定都市河川流域の指定の変更又は解除により第一項の雨水貯留浸透施設が特定都市河川流域外に存することとなった場合においては、当該雨水貯留浸透施設については、前条第三項から第八項まで及び前各項の規定は、適用しない。

 (雨水の流出の増加の抑制)

第十九条 特定都市河川流域内の宅地等以外の土地において、雨水浸透阻害行為であって第九条の政令で定める規模未満のものをしようとする者は、行為区域における当該雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 (監督処分)

第二十条 都道府県知事は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、特定都市河川流域における浸水被害の防止を図るために必要な限度において、第九条、第十六条第一項若しくは第十八条第一項の許可を取り消し、若しくはその許可に付した条件を変更し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて必要な措置をとることを命ずることができる。

 一 第九条又は第十六条第一項の規定に違反して、雨水浸透阻害行為をした者

 二 第十八条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者

 三 第九条、第十六条第一項又は第十八条第一項の許可に付した条件に違反した者

 四 特定都市河川流域内における雨水浸透阻害行為(当該特定都市河川流域の指定の際当該特定都市河川流域内において既に着手している行為を除く。)であって、行為区域における流出雨水量の増加を抑制するために必要な措置を第十一条の政令で定める技術的基準に従って講じていないものに関する工事の注文主若しくは請負人(請負工事の下請人を含む。)又は請負契約によらないで自らその工事をしている者若しくはした者

 五 詐欺その他不正な手段により第九条、第十六条第一項又は第十八条第一項の許可を受けた者

2 前項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、都道府県知事は、その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、当該措置を行うべき旨及びその期限までに当該措置を行わないときは、都道府県知事又はその命じた者若しくは委任した者が当該措置を行う旨を、あらかじめ、公告しなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。

4 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る土地又は建築物等若しくは建築物等の敷地内に設置することができる。この場合においては、同項の規定による命令に係る土地又は建築物等若しくは建築物等の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。

 (立入検査)

第二十一条 都道府県知事は、第九条、第十六条第一項、第十七条第二項、第十八条第一項又は前条第一項の規定による権限を行うために必要な限度において、その職員に、雨水浸透阻害行為に係る土地(対策工事に係る建築物等を含む。)に立ち入り、当該土地、当該雨水浸透阻害行為に関する工事若しくは当該対策工事の状況又は当該対策工事により設置された施設を検査させることができる。

2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは、これを提示しなければならない。

3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 (報告の徴収等)

第二十二条 都道府県知事は、第九条又は第十六条第一項の許可を受けた者に対し、当該許可に係る土地又は当該許可に係る雨水浸透阻害行為に関する工事の状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は当該土地における雨水浸透阻害行為による流出雨水量の増加を抑制するために必要な助言若しくは勧告をすることができる。

2 都道府県知事は、第十八条第一項の許可を受けた者に対し、当該許可に係る雨水貯留浸透施設又は当該許可に係る行為の状況について報告若しくは資料の提出を求め、又は当該雨水貯留浸透施設が有する雨水を一時的に貯留し、若しくは地下に浸透させる機能を保全するために必要な助言若しくは勧告をすることができる。

    第二節 保全調整池

 (保全調整池の指定等)

第二十三条 都道府県知事は、特定都市河川流域内に存する政令で定める規模以上の防災調整池の雨水を一時的に貯留する機能が当該特定都市河川流域における浸水被害の防止を図るために有用であると認めるときは、当該防災調整池を保全調整池として指定することができる。

2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、当該保全調整池が存する市町村の長(指定都市等の長を除く。)の意見を聴かなければならない。

3 都道府県知事は、第一項の規定による指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、当該保全調整池を公示するとともに、その旨を当該保全調整池が存する市町村の長(指定都市等の長を除く。)及び当該保全調整池の所有者に通知しなければならない。

4 第一項の規定による指定は、前項の規定による公示によってその効力を生ずる。

5 前三項の規定は、第一項の規定による指定の解除について準用する。

 (標識の設置等)

第二十四条 都道府県知事は、保全調整池を指定したときは、国土交通省令で定めるところにより、次に掲げる土地又は建築物等に、保全調整池が存する旨を表示した標識を設けなければならない。

 一 保全調整池の敷地である土地

 二 建築物等に保全調整池が設置されている場合にあっては、当該建築物等又はその敷地である土地

2 第十七条第四項から第八項までの規定は、前項の場合について準用する。この場合において、同条第四項中「前項各号」とあるのは「第二十四条第一項各号」と、同条第五項及び第六項中「第三項」とあるのは「第二十四条第一項」と、同条第六項中「当該雨水貯留浸透施設」とあるのは「当該保全調整池」と、同条第七項中「前項」とあるのは「第二十四条第二項において準用する第十七条第六項」と、同条第八項中「前項」とあるのは「第二十四条第二項において準用する第十七条第七項」と読み替えるものとする。

 (行為の届出等)

第二十五条 保全調整池について、次に掲げる行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を都道府県知事に届け出なければならない。ただし、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの及び非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。

 一 保全調整池の全部又は一部の埋立て

 二 保全調整池(建築物等に設置されているものを除く。)の敷地である土地の区域における建築物等の新築、改築又は増築

 三 保全調整池が設置されている建築物等の改築又は除却(保全調整池に係る部分に関するものに限る。)

 四 前三号に掲げるもののほか、保全調整池が有する雨水を一時的に貯留する機能を阻害するおそれのある行為で政令で定めるもの

2 都道府県知事(指定都市等の長を除く。)は、前項の規定による届出を受けたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該届出の内容を特定都市河川の河川管理者(次項において「関係河川管理者」という。)、当該保全調整池が存する下水道の排水区域に係る下水道管理者(次項において「関係下水道管理者」という。)及び当該保全調整池が存する市町村の長に通知しなければならない。

3 指定都市等の長は、第一項の規定による届出を受けたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該届出の内容を当該指定都市等を包括する都道府県の知事、関係河川管理者及び関係下水道管理者に通知しなければならない。

4 都道府県知事は、第一項の規定による届出があった場合において、当該保全調整池が有する雨水を一時的に貯留する機能の保全のため必要があると認めるときは、当該届出をした者に対して、必要な助言又は勧告をすることができる。

 (防災調整池の保全)

第二十六条 特定都市河川流域内に存する防災調整池の所有者その他当該防災調整池の管理について権原を有する者は、当該防災調整池が有する雨水を一時的に貯留する機能を維持するように努めなければならない。

    第三節 管理協定

 (管理協定の締結等)

第二十七条 地方公共団体は、保全調整池が有する雨水を一時的に貯留する機能の保全のため必要があると認めるときは、保全調整池所有者等(当該保全調整池の敷地である土地(建築物等に保全調整池が設置されている場合にあっては、当該建築物等のうち当該保全調整池に係る部分)の所有者又は使用及び収益を目的とする権利(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者をいう。次項及び第三十一条において同じ。)との間において、次に掲げる事項を定めた協定(以下「管理協定」という。)を締結して、当該保全調整池の管理を行うことができる。

 一 管理協定の目的となる保全調整池(以下「管理協定調整池」という。)

 二 管理協定調整池の管理の方法に関する事項

 三 管理協定の有効期間

 四 管理協定に違反した場合の措置

2 管理協定については、保全調整池所有者等の全員の合意がなければならない。

 (管理協定の縦覧等)

第二十八条 地方公共団体は、管理協定を締結しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、当該管理協定を当該公告の日から二週間利害関係人の縦覧に供さなければならない。

2 前項の規定による公告があったときは、利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、当該管理協定について、地方公共団体に意見書を提出することができる。

 (管理協定の公告等)

第二十九条 地方公共団体は、管理協定を締結したときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公告し、かつ、当該管理協定の写しを当該地方公共団体の事務所に備えて公衆の縦覧に供するとともに、次に掲げる土地又は建築物等に、管理協定調整池が存する旨を明示しなければならない。

 一 管理協定調整池の敷地である土地

 二 建築物等に管理協定調整池が設置されている場合にあっては、当該建築物等又はその敷地である土地

 (管理協定の変更)

第三十条 第二十七条第二項及び前二条の規定は、管理協定において定めた事項の変更について準用する。

 (管理協定の効力)

第三十一条 第二十九条(前条において準用する場合を含む。)の規定による公告のあった管理協定は、その公告のあった後において当該管理協定調整池の保全調整池所有者等となった者に対しても、その効力があるものとする。

   第四章 都市洪水想定区域等

 (都市洪水想定区域及び都市浸水想定区域)

第三十二条 国土交通大臣は特定都市河川のうち一級河川の区間(河川法第九条第二項に規定する指定区間を除く。)について、都道府県知事は特定都市河川のうちその他の区間について、都市洪水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保し、及び都市洪水による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、それぞれ、流域水害対策計画において定められた都市洪水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合にその特定都市河川のはん濫による都市洪水が想定される区域を、都市洪水想定区域として指定するものとする。ただし、その特定都市河川について、水防法(昭和二十四年法律第百九十三号)第十条第二項又は第十条の二第一項の規定による指定があるときは、この限りでない。

2 前項本文に定めるもののほか、特定都市河川流域の全部又は一部をその区域に含む市町村の長、当該市町村を包括する都道府県の知事及び特定都市下水道の下水道管理者(特定都市河川流域の全部が一の市町村の区域内にある場合にあっては、市町村の長及び特定都市下水道の下水道管理者)は、共同して、当該特定都市河川流域について、都市浸水が発生した時の円滑かつ迅速な避難を確保し、及び都市浸水による被害の軽減を図るため、国土交通省令で定めるところにより、流域水害対策計画において定められた都市浸水の発生を防ぐべき目標となる降雨が生じた場合に都市浸水が想定される区域を、都市浸水想定区域として指定するものとする。

3 前二項の規定による指定は、指定の区域及び浸水した場合に想定される水深を明らかにしてするものとする。

4 第一項本文又は第二項の規定による指定をした者は、指定後速やかに、国土交通省令で定めるところにより、指定の区域及び浸水した場合に想定される水深を公表しなければならない。

5 第一項本文の規定による指定をした者は、指定後速やかに、前項の規定により公表すべき事項を当該都市洪水想定区域の全部又は一部をその区域に含む市町村の長に通知しなければならない。

6 前三項の規定は、第一項本文又は第二項の規定による指定の変更について準用する。

 (都市洪水想定区域及び都市浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難を確保するための措置)

第三十三条 市町村防災会議(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第十六条第一項に規定する市町村防災会議をいい、これを設置しない市町村にあっては、当該市町村の長とする。次項において同じ。)は、前条第一項本文の規定による都市洪水想定区域の指定又は同条第二項の規定による都市浸水想定区域の指定があったときは、市町村地域防災計画(同法第四十二条第一項に規定する市町村地域防災計画をいう。第三項において同じ。)において、都市洪水及び都市浸水が相互に影響を及ぼすものであることを考慮して、都市洪水又は都市浸水の発生又は発生のおそれに関する情報(以下「洪水等情報」という。)の伝達方法、避難場所その他都市洪水又は都市浸水が生じた時の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な事項について定めるものとする。

2 市町村防災会議は、都市洪水想定区域内又は都市浸水想定区域内に地下街その他不特定かつ多数の者が利用する地下に設けられた施設がある場合には、都市洪水又は都市浸水が生じた時における当該施設の利用者の円滑かつ迅速な避難の確保が図られるように、前項に規定する洪水等情報の伝達方法を定めるものとする。

3 都市洪水想定区域又は都市浸水想定区域をその区域に含む市町村の長は、市町村地域防災計画において定められた洪水等情報の伝達方法、避難場所その他都市洪水又は都市浸水が生じた時の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な事項について、住民に周知させるように努めるものとする。

4 都市洪水想定区域(当該特定都市河川が水防法第十条第二項又は第十条の二第一項の規定による指定を受けている場合にあっては、同法第十条の四第一項に規定する浸水想定区域を含む。)内又は都市浸水想定区域内の地下街その他不特定かつ多数の者が利用する地下に設けられた施設の所有者又は管理者は、単独に又は共同して、都市洪水又は都市浸水が生じた時における当該施設の利用者の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な措置に関する計画を作成し、これを公表するように努めなければならない。

5 第一項から第三項までの規定は、災害対策基本法第十七条第一項の規定により浸水被害の軽減を図るため市町村防災会議の協議会が設置されている場合について準用する。この場合において、第一項中「市町村防災会議(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第十六条第一項に規定する市町村防災会議をいい、これを設置しない市町村にあっては、当該市町村の長とする。」とあるのは「市町村防災会議の協議会(災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第十七条第一項に規定する市町村防災会議の協議会をいう。」と、「市町村地域防災計画(同法第四十二条第一項に規定する市町村地域防災計画をいう。」とあるのは「市町村相互間地域防災計画(同法第四十四条第一項に規定する市町村相互間地域防災計画をいう。」と、第二項中「市町村防災会議」とあるのは「市町村防災会議の協議会」と、第三項中「市町村地域防災計画」とあるのは「市町村相互間地域防災計画」と読み替えるものとする。

   第五章 雑則

 (測量又は調査のための土地の立入り等)

第三十四条 国土交通大臣、都道府県知事若しくは指定都市等の長又はその命じた者若しくは委任した者は、第三条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)若しくは第四項の規定による特定都市河川流域の指定又は第二十三条第一項の規定による保全調整池の指定に関する測量又は調査のためやむを得ない必要があるときは、他人の占有する土地に立ち入り、又は特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用することができる。

2 前項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難であるときは、この限りでない。

3 第一項の規定により宅地又は垣、さく等で囲まれた他人の占有する土地に立ち入ろうとする場合においては、その立ち入ろうとする者は、立入りの際、あらかじめ、その旨を当該土地の占有者に告げなければならない。

4 日出前及び日没後においては、土地の占有者の承諾があった場合を除き、前項に規定する土地に立ち入ってはならない。

5 第一項の規定により他人の占有する土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければならない。

6 第一項の規定により特別の用途のない他人の土地を作業場として一時使用しようとする者は、あらかじめ、当該土地の占有者及び所有者に通知して、その意見を聴かなければならない。

7 土地の占有者又は所有者は、正当な理由がない限り、第一項の規定による立入り又は一時使用を拒み、又は妨げてはならない。

8 国、都道府県又は指定都市等は、第一項の規定による立入り又は一時使用により損失を受けた者がある場合においては、その者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

9 前項の規定による損失の補償については、国、都道府県又は指定都市等と損失を受けた者とが協議しなければならない。

10 前項の規定による協議が成立しない場合においては、国、都道府県又は指定都市等は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。この場合において、当該金額について不服がある者は、政令で定めるところにより、補償金の支払を受けた日から三十日以内に、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。

 (権限の委任)

第三十五条 この法律に規定する国土交通大臣の権限は、国土交通省令で定めるところにより、その全部又は一部を地方整備局長又は北海道開発局長に委任することができる。

 (経過措置)

第三十六条 この法律の規定に基づき政令又は国土交通省令を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ、政令又は国土交通省令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

 (事務の区分)

第三十七条 この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務のうち次に掲げるものは、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

 一 第三条第三項(同条第五項(同条第十一項において準用する場合を含む。)において準用する場合に限る。)、同条第四項から第七項まで、第九項及び第十項(同条第十一項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四条第一項、同条第三項から第八項まで(同条第九項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)並びに第三十四条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第八項から第十項まで(第三十四条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第八項から第十項までに規定する事務にあっては、特定都市河川流域の指定に係るものに限る。)の規定により都道府県が処理することとされている事務

 二 第四条第一項及び同条第三項から第八項まで(同条第九項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務

   第六章 罰則

第三十八条 第二十条第一項の規定による都道府県知事の命令に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第三十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 一 第九条又は第十六条第一項の規定に違反して、雨水浸透阻害行為をした者

 二 第十八条第一項の規定に違反して、同項各号に掲げる行為をした者

 三 第二十一条第一項の規定による立入検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

 四 第三十四条第七項の規定に違反して、土地の立入り又は一時使用を拒み、又は妨げた者

第四十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

 一 第十七条第一項(工事の完了の届出に係る部分に限る。)又は第二十五条第一項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者

 二 第十七条第五項(第二十四条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者

 三 第二十二条の規定による報告又は資料の提出を求められて、報告若しくは資料を提出せず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者

第四十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関し、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。

第四十二条 第十六条第三項又は第十七条第一項(工事の廃止の届出に係る部分に限る。)の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、二十万円以下の過料に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (地方自治法の一部改正)

第二条 地方自治法の一部を次のように改正する。

   別表第一に次のように加える。

特定都市河川浸水被害対策法(平成十五年法律第七十七号)

この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務のうち次に掲げるもの

 

一 第三条第三項(同条第五項(同条第十一項において準用する場合を含む。)において準用する場合に限る。)、同条第四項から第七項まで、第九項及び第十項(同条第十一項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)、第四条第一項、同条第三項から第八項まで(同条第九項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)並びに第三十四条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第八項から第十項まで(第三十四条第一項から第三項まで、第五項、第六項及び第八項から第十項までに規定する事務にあっては、特定都市河川流域の指定に係るものに限る。)の規定により都道府県が処理することとされている事務

 

二 第四条第一項及び同条第三項から第八項まで(同条第九項においてこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により市町村が処理することとされている事務

(総務・国土交通・内閣総理大臣署名) 

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