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法律第百三十四号(平一五・八・一)

  ◎担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律

 (民法の一部改正)

第一条 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

  第三百六条第二号を次のように改める。

   二 雇用関係

  第三百八条を次のように改める。

 第三百八条 雇用関係ノ先取特権ハ給料其他債務者ト使用人トノ間ノ雇用関係ニ基キ生ジタル債権ニ付キ存在ス

  第三百五十九条中「定アルトキ」の下に「又ハ担保不動産収益執行ノ開始アリタルトキ」を加える。

  第三百六十三条を次のように改める。

 第三百六十三条 債権ニシテ之ヲ譲渡スニハ其証書ヲ交付スルコトヲ要スルモノヲ以テ質権ノ目的ト為ストキハ質権ノ設定ハ其証書ノ交付ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ズ

  第三百七十一条を次のように改める。

 第三百七十一条 抵当権ハ其担保スル債権ニ付キ不履行アリタルトキハ其後ニ生ジタル抵当不動産ノ果実ニ及ブ

  第三百七十八条を次のように改める。

 第三百七十八条 抵当不動産ニ付キ所有権ヲ取得シタル第三者ハ抵当権消滅請求(第三百八十三条ノ規定ニ依リ同条第三号ノ代価又ハ金額ヲ抵当権者ニ提供シテ抵当権ノ消滅ヲ請求スルコトヲ謂フ以下同ジ)ヲ為スコトヲ得

  第三百七十九条中「抵当権ノ滌除」を「抵当権消滅請求」に改める。

  第三百八十条中「停止条件附第三取得者」を「停止条件付第三取得者」に、「抵当権ノ滌除」を「抵当権消滅請求」に改める。

  第三百八十一条及び第三百八十二条を次のように改める。

 第三百八十一条 削除

 第三百八十二条 第三取得者ハ抵当権ノ実行トシテノ競売ニ因ル差押ノ効力発生前ニ抵当権消滅請求ヲ為スコトヲ要ス

  第三百八十三条中「滌除セン」を「消滅セシメン」に改め、同条第三号中「一个月内ニ次条ノ規定ニ従ヒ増価競売ヲ請求セザル」を「二箇月内ニ抵当権ヲ実行シテ競売ノ申立ヲ為サザル」に改める。

  第三百八十四条を次のように改める。

 第三百八十四条 左ノ場合ニ於テハ前条ノ送達ヲ受ケタル債権者ハ第三取得者ガ同条ノ規定ニ依リ提供シタル同条第三号ノ代価又ハ金額ヲ承諾シタルモノト看做ス

   一 其債権者ガ前条ノ送達ヲ受ケタル後二箇月内ニ抵当権ヲ実行シテ競売ノ申立ヲ為サザルトキ

   二 其債権者ガ前号ノ申立ヲ取下ゲタルトキ

   三 第一号ノ申立ヲ却下スル旨ノ決定ガ確定シタルトキ

   四 第一号ノ申立ニ基ク競売ノ手続ヲ取消ス旨ノ決定(民事執行法第百八十八条ニ於テ準用スル同法第六十三条第三項若クハ第六十八条の三第三項又ハ同法第百八十三条第一項第五号ノ謄本ガ提出セラレタル場合ニ於ケル同条第二項ノ規定ニ依ルモノヲ除ク)ガ確定シタルトキ

  第三百八十五条中「債権者ガ増価競売ヲ請求スルトキハ前条」を「第三百八十三条ノ送達ヲ受ケタル債権者ガ前条第一号ノ申立ヲ為ストキハ同号」に改める。

  第三百八十六条及び第三百八十七条を次のように改める。

 第三百八十六条 登記ヲ為シタル総テノ債権者ガ第三取得者ノ提供シタル代価又ハ金額ヲ承諾シ且第三取得者ガ其承諾ヲ得タル代価若クハ金額ヲ払渡シ又ハ之ヲ供託シタルトキハ抵当権ハ消滅ス

 第三百八十七条 登記シタル賃貸借ハ其登記前ニ登記シタル抵当権ヲ有スル総テノ者ガ同意シ且其同意ノ登記アルトキハ之ヲ以テ其同意ヲ為シタル抵当権者ニ対抗スルコトヲ得

  抵当権者ガ前項ノ同意ヲ為スニハ其抵当権ヲ目的トスル権利ヲ有スル者其他抵当権者ノ同意ニ因リテ不利益ヲ受クベキ者ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス

  第三百八十九条中「其設定者ガ抵当地ニ建物ヲ築造シタルトキ」を「抵当地ニ建物ガ築造セラレタルトキ」に、「之ヲ競売スル」を「其建物ヲ競売スル」に改め、同条に次の一項を加える。

  前項ノ規定ハ其建物ノ所有者ガ抵当地ヲ占有スルニ付キ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得ベキ権利ヲ有スル場合ニハ之ヲ適用セズ

  第三百九十五条を次のように改める。

 第三百九十五条 抵当権者ニ対抗スルコトヲ得ザル賃貸借ニ因リ抵当権ノ目的タル建物ノ使用又ハ収益ヲ為ス者ニシテ左ニ掲ゲタルモノ(以下建物使用者ト称ス)ハ其建物ノ競売ノ場合ニ於テ買受人ノ買受ノ時ヨリ六箇月ヲ経過スルマデハ其建物ヲ買受人ニ引渡スコトヲ要セズ

   一 競売手続ノ開始前ヨリ使用又ハ収益ヲ為ス者

   二 強制管理又ハ担保不動産収益執行ノ管理人ガ競売手続ノ開始後ニ為シタル賃貸借ニ因リ使用又ハ収益ヲ為ス者

  前項ノ規定ハ買受人ノ買受ノ時ヨリ後ニ同項ノ建物ノ使用ヲ為シタルコトノ対価ニ付キ買受人ガ建物使用者ニ対シ相当ノ期間ヲ定メテ其一月分以上ノ支払ヲ催告シ其相当ノ期間内ニ履行ナキ場合ニハ之ヲ適用セズ

  第三百九十八条ノ十九第一項ただし書を削り、同項に後段として次のように加える。

   此場合ニ於テハ担保スベキ元本ハ其請求ノ時ヨリ二週間ヲ経過シタルニ因リテ確定ス

  第三百九十八条ノ十九第二項を次のように改める。

  根抵当権者ハ何時ニテモ担保スベキ元本ノ確定ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ担保スベキ元本ハ其請求ノ時ニ於テ確定ス

  第三百九十八条ノ十九に次の一項を加える。

  前二項ノ規定ハ担保スベキ元本ノ確定スベキ期日ノ定アルトキハ之ヲ適用セズ

  第三百九十八条ノ二十第一項第一号を削り、同項第二号中「ニ付キ競売」の下に「若クハ担保不動産収益執行」を加え、同号ただし書中「競売手続」の下に「若クハ担保不動産収益執行手続」を加え、同号を同項第一号とし、同項中第三号から第五号までを一号ずつ繰り上げ、同条第二項中「前項第四号」を「前項第三号」に、「同項第五号」を「同項第四号」に改める。

  第五百七十七条中「先取特権、質権又ハ」を削り、「滌除」を「抵当権消滅請求」に改め、同条に次の一項を加える。

  前項ノ規定ハ買受ケタル不動産ニ付キ先取特権又ハ質権ノ登記アル場合ニ之ヲ準用ス

 (不動産登記法の一部改正)

第二条 不動産登記法(明治三十二年法律第二十四号)の一部を次のように改正する。

  第百十九条ノ十中「前八条」を「第百十九条ノ二乃至前条」に改め、同条を第百十九条ノ十一とする。

  第百十九条ノ九中「第三百九十八条ノ二十第一項第四号」を「第三百九十八条ノ二十第一項第三号」に改め、同条を第百十九条ノ十とする。

  第百十九条ノ八の次に次の一条を加える。

 第百十九条ノ九 民法第三百九十八条ノ十九第二項ノ規定ニ依リ根抵当権ノ担保スベキ元本ガ確定シタル場合ノ登記ハ申請書ニ同項ノ規定ニ依ル請求ヲ為シタルコトヲ証スル書面ヲ添附シタルトキハ根抵当権者ノミニテ之ヲ申請スルコトヲ得

  第百三十二条第一項中「若クハ賃借権」を「、賃借権」に改め、「許シタルトキ」の下に「若クハ敷金アルトキ」を加える。

 (民事執行法の一部改正)

第三条 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第百八十条」を「第百七十九条」に、「第百八十一条」を「第百八十条」に、「第四章 罰則(第百九十六条―第百九十八条)」を

第四章 財産開示手続(第百九十六条―第二百三条)

 
 

第五章 罰則(第二百四条―第二百七条)

 に改める。

  第一条中「換価のための競売」の下に「並びに債務者の財産の開示」を加える。

  第六条第一項に次のただし書を加える。

   ただし、第六十四条の二第五項の規定に基づく職務の執行については、この限りでない。

  第二十七条に次の三項を加える。

 3 執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。

  一 債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法(平成元年法律第九十一号)第二十五条の二第一項に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法第六十二条第一項の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。

  二 債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における第八十三条第一項本文(第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(第五十五条第一項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、第八十三条の二第一項(第百八十七条第五項又は第百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。

   イ 第五十五条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分

   ロ 第七十七条第一項第三号(第百八十八条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分

   ハ 第百八十七条第一項に規定する保全処分又は公示保全処分(第五十五条第一項第三号に掲げるものに限る。)

 4 前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から四週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。

 5 第三項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

  第三十三条第一項中「第二十七条」を「第二十七条第一項又は第二項」に、「執行文の」を「執行文(同条第三項の規定により付与されるものを除く。)の」に改める。

  第五十五条の見出し中「保全処分」を「保全処分等」に改め、同条第一項及び第二項を次のように改める。

   執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為(不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれがある行為をいう。以下この項において同じ。)をするときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、次に掲げる保全処分又は公示保全処分(執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分をいう。以下同じ。)を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による不動産の価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。

  一 当該価格減少行為をする者に対し、当該価格減少行為を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

  二 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

   イ 当該価格減少行為をする者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。

   ロ 執行官に不動産の保管をさせること。

  三 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分

   イ 前号イ及びロに掲げる事項

   ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び当該不動産の使用を許すこと。

 2 前項第二号又は第三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。

  一 前項の債務者が不動産を占有する場合

  二 前項の不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者又は第五十九条第一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができない場合

  第五十五条第三項中「前二項」を「第一項」に改め、同条第九項中「若しくは第二項」を削り、「同項」を「同項(第一号を除く。)」に改め、「要した費用」の下に「(不動産の保管のために要した費用を含む。)」を加え、同項を同条第十項とし、同条第八項中「第二項の規定による決定」を「前項に規定する決定」に改め、同項を同条第九項とし、同条第七項中「第二項の規定による決定」を「第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定」に改め、同項を同条第八項とし、同条第六項中「第四項」を「第五項」に改め、同項を同条第七項とし、同条第五項中「、第二項」を削り、同項を同条第六項とし、同条第四項中「又は第二項」を削り、同項を同条第五項とし、同条第三項の次に次の一項を加える。

 4 執行裁判所が第一項の規定による決定をするときは、申立人に担保を立てさせることができる。ただし、同項第二号に掲げる保全処分については、申立人に担保を立てさせなければ、同項の規定による決定をしてはならない。

  第五十五条の次に次の一条を加える。

  (相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等)

 第五十五条の二 前条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行裁判所は、相手方を特定しないで、これを発することができる。

 2 前項の規定による決定の執行は、不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。

 3 第一項の規定による決定の執行がされたときは、当該執行によつて不動産の占有を解かれた者が、当該決定の相手方となる。

 4 第一項の規定による決定は、前条第八項の期間内にその執行がされなかつたときは、相手方に対して送達することを要しない。この場合において、第十五条第二項において準用する民事訴訟法第七十九条第一項の規定による担保の取消しの決定で前条第四項の規定により立てさせた担保に係るものは、執行裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによつて、その効力を生ずる。

  第五十六条第一項中「差押債権者」の下に「(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)」を加え、同条第二項中「前条第九項」を「第五十五条第十項」に改める。

  第六十二条中「作成し、一般の閲覧に供するために、その写しを執行裁判所に備え置かなければ」を「作成しなければ」に改め、同条に次の一項を加える。

 2 執行裁判所は、前項の物件明細書の写しを執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供し、又は不特定多数の者が当該物件明細書の内容の提供を受けることができるものとして最高裁判所規則で定める措置を講じなければならない。

  第六十四条の次に次の一条を加える。

  (内覧)

 第六十四条の二 執行裁判所は、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てがあるときは、執行官に対し、内覧(不動産の買受けを希望する者をこれに立ち入らせて見学させることをいう。以下この条において同じ。)の実施を命じなければならない。ただし、当該不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者及び第五十九条第一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができる場合で当該占有者が同意しないときは、この限りでない。

 2 前項の申立ては、最高裁判所規則で定めるところにより、執行裁判所の売却を実施させる旨の命令の時までにしなければならない。

 3 第一項の命令を受けた執行官は、売却の実施の時までに、最高裁判所規則で定めるところにより内覧への参加の申出をした者(不動産を買い受ける資格又は能力を有しない者その他最高裁判所規則で定める事由がある者を除く。第五項及び第六項において「内覧参加者」という。)のために、内覧を実施しなければならない。

 4 執行裁判所は、内覧の円滑な実施が困難であることが明らかであるときは、第一項の命令を取り消すことができる。

 5 執行官は、内覧の実施に際し、自ら不動産に立ち入り、かつ、内覧参加者を不動産に立ち入らせることができる。

 6 執行官は、内覧参加者であつて内覧の円滑な実施を妨げる行為をするものに対し、不動産に立ち入ることを制限し、又は不動産から退去させることができる。

  第六十八条の二の見出し中「保全処分」を「保全処分等」に改め、同条第一項を次のように改める。

   執行裁判所は、入札又は競り売りの方法により売却を実施させても買受けの申出がなかつた場合において、債務者又は不動産の占有者が不動産の売却を困難にする行為をし、又はその行為をするおそれがあるときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。次項において同じ。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせて、次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)を命ずることができる。

  一 債務者又は不動産の占有者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官又は申立人に引き渡すことを命ずること。

  二 執行官又は申立人に不動産の保管をさせること。

  第六十八条の二第四項を次のように改める。

 4 第五十五条第二項の規定は第一項に規定する保全処分について、同条第三項の規定は第一項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項の申立てについての裁判、前項の規定による裁判又は同項の申立てを却下する裁判について、同条第七項の規定は前項の規定による決定について、同条第八項及び第九項並びに第五十五条の二の規定は第一項に規定する保全処分を命ずる決定について、第五十五条第十項の規定は第一項の申立て又は同項の規定による決定の執行に要した費用について、第六十三条第四項の規定は第二項の保証の提供について準用する。

  第七十七条を次のように改める。

  (最高価買受申出人又は買受人のための保全処分等)

 第七十七条 執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が、価格減少行為等(不動産の価格を減少させ、又は不動産の引渡しを困難にする行為をいう。以下この項において同じ。)をし、又は価格減少行為等をするおそれがあるときは、最高価買受申出人又は買受人の申立てにより、引渡命令の執行までの間、その買受けの申出の額(金銭により第六十六条の保証を提供した場合にあつては、当該保証の額を控除した額)に相当する金銭を納付させ、又は代金を納付させて、次に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。

  一 債務者又は不動産の占有者に対し、価格減少行為等を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

  二 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

   イ 当該価格減少行為等をし、又はそのおそれがある者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。

   ロ 執行官に不動産の保管をさせること。

  三 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分

   イ 前号イ及びロに掲げる事項

   ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び不動産の使用を許すこと。

 2 第五十五条第二項(第一号に係る部分に限る。)の規定は前項第二号又は第三号に掲げる保全処分について、同条第二項(第二号に係る部分に限る。)の規定は前項に掲げる保全処分について、同条第三項、第四項本文及び第五項の規定は前項の規定による決定について、同条第六項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する同条第五項の申立てについての裁判について、同条第七項の規定はこの項において準用する同条第五項の規定による決定について、同条第八項及び第九項並びに第五十五条の二の規定は前項第二号又は第三号に掲げる保全処分を命ずる決定について準用する。

  第七十八条第四項後段を削り、同項に次のただし書を加える。

   ただし、配当期日において、買受人の受けるべき配当の額について異議の申出があつたときは、買受人は、当該配当期日から一週間以内に、異議に係る部分に相当する金銭を納付しなければならない。

  第八十三条の第二項中「六月」の下に「買受け時に民法第三百九十五条第一項に規定する建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、九月)」を加え、同条の次に次の一条を加える。

  (占有移転禁止の保全処分等の効力)

 第八十三条の二 強制競売の手続において、第五十五条第一項第三号又は第七十七条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該決定の被申立人に対して引渡命令が発せられたときは、買受人は、当該引渡命令に基づき、次に掲げる者に対し、不動産の引渡しの強制執行をすることができる。

  一 当該決定の執行がされたことを知つて当該不動産を占有した者

  二 当該決定の執行後に当該執行がされたことを知らないで当該決定の被申立人の占有を承継した者

 2 前項の決定の執行後に同項の不動産を占有した者は、その執行がされたことを知つて占有したものと推定する。

 3 第一項の引渡命令について同項の決定の被申立人以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、買受人に対抗することができる権原により不動産を占有していること、又は自己が同項各号のいずれにも該当しないことを理由とすることができる。

  第八十七条第一項第四号中「(平成元年法律第九十一号)」を削る。

  第九十条第六項中「一週間以内」の下に「(買受人が第七十八条第四項ただし書の規定により金銭を納付すべき場合にあつては、二週間以内)」を加える。

  第九十三条第一項中「収益の給付義務を負う第三者があるときは、その第三者に対し収益を管理人に給付すべき」を「債務者が賃貸料の請求権その他の当該不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「給付請求権」という。)を有するときは、債務者に対して当該給付をする義務を負う者(以下「給付義務者」という。)に対しその給付の目的物を管理人に交付すべき」に改め、同条第二項中「既に収穫し、又は」を削り、同条第三項を次のように改める。

 3 第一項の開始決定は、債務者及び給付義務者に送達しなければならない。

  第九十三条第四項中「第一項の開始決定」を「強制管理の申立てについての裁判」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項の次に次の一項を加える。

 4 給付義務者に対する第一項の開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達された時に生ずる。

  第九十三条の次に次の三条を加える。

  (二重開始決定)

 第九十三条の二 既に強制管理の開始決定がされ、又は第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制管理の開始決定をするものとする。

  (給付義務者に対する競合する債権差押命令等の陳述の催告)

 第九十三条の三 裁判所書記官は、給付義務者に強制管理の開始決定を送達するに際し、当該給付義務者に対し、開始決定の送達の日から二週間以内に給付請求権に対する差押命令の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。この場合においては、第百四十七条第二項の規定を準用する。

  (給付請求権に対する競合する債権差押命令等の効力の停止等)

 第九十三条の四 第九十三条第四項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する差押命令であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。ただし、強制管理の開始決定の給付義務者に対する効力の発生が第百六十五条各号(第百九十三条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる時後であるときは、この限りでない。

 2 第九十三条第四項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する仮差押命令であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。

 3 第一項の差押命令の債権者、同項の差押命令が効力を停止する時までに当該債権執行の手続において配当要求をした債権者及び前項の仮差押命令の債権者は、第百七条第四項の規定にかかわらず、前二項の強制管理の手続において配当等を受けることができる。

  第百五条第一項中「債権者」の下に「及び第百八十一条第一項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者」を加える。

  第百七条第四項を次のように改める。

 4 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。

  一 差押債権者のうち次のイからハまでのいずれかに該当するもの

   イ 第一項の期間の満了までに強制管理の申立てをしたもの

   ロ 第一項の期間の満了までに一般の先取特権の実行として第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの

   ハ 第一項の期間の満了までに第百八十条第二号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの(ロに掲げるものを除く。)であつて、当該申立てが最初の強制管理の開始決定に係る差押えの登記前に登記(民事保全法第五十三条第二項に規定する保全仮登記を含む。)がされた担保権に基づくもの

  二 仮差押債権者(第一項の期間の満了までに、強制管理の方法による仮差押えの執行の申立てをしたものに限る。)

  三 第一項の期間の満了までに配当要求をした債権者

  第百八条中「が、仮差押債権者の債権であるとき、又は第三十九条第一項第七号に掲げる文書の提出されている債権で」を「について第九十一条第一項各号(第七号を除く。)に掲げる事由が」に改める。

  第百十一条中「第四十五条第二項及び第三項、」を削り、「第四十七条第一項、第二項」を「第四十七条第二項」に、「並びに第八十八条」を「、第八十七条第二項及び第三項並びに第八十八条」に改める。

  第百十二条中「この節」の下に「及び次章」を加える。

  第百十五条第七項中「第五十五条第七項から第九項まで」を「第五十五条第八項から第十項まで」に改める。

  第百二十一条中「第五十五条第二項、第七項及び第八項」を「第五十五条第一項(第二号に係る部分に限る。)」に改め、「第五十六条」の下に「、第六十四条の二」を加え、「並びに」を「及び」に改める。

  第百二十二条第一項中「この節」の下に「、次章及び第四章」を加える。

  第百二十七条第四項中「第五十五条第七項から第九項まで」を「第五十五条第八項から第十項まで」に改める。

  第百三十一条第二号中「債務者等の」の下に「一月間の」を加え、「二月間の」を削り、同条第三号中「一月間」を「二月間」に改める。

  第百五十一条の次に次の一条を加える。

  (扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)

 第百五十一条の二 債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。

  一 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務

  二 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務

  三 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

  四 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務

 2 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。

  第百五十二条に次の一項を加える。

 3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

  第百五十五条第一項中「金銭の支払を目的とする債権(以下「金銭債権」という。)」を「金銭債権」に改める。

  第百六十八条第一項中「不動産又は人の居住する船舶等」を「不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)」に、「目的物」を「不動産等」に改め、同条第八項を同条第九項とし、同条第七項中「前項」を「第五項(第六項後段において準用する場合を含む。)」に改め、同項を同条第八項とし、同条第六項を削り、同条第五項を同条第七項とし、同条第四項中「これを保管しなければならない」を「最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる」に改め、同項を同条第五項とし、同項の次に次の一項を加える。

 6 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

  第百六十八条第三項中「不動産又は船舶等」を「不動産等」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「前項」を「第一項」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。

 2 執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。

  第百六十八条の次に次の一条を加える。

  (明渡しの催告)

 第百六十八条の二 執行官は、不動産等の引渡し又は明渡しの強制執行の申立てがあつた場合において、当該強制執行を開始することができるときは、次項に規定する引渡し期限を定めて、明渡しの催告(不動産等の引渡し又は明渡しの催告をいう。以下この条において同じ。)をすることができる。ただし、債務者が当該不動産等を占有していないときは、この限りでない。

 2 引渡し期限(明渡しの催告に基づき第六項の規定による強制執行をすることができる期限をいう。以下この条において同じ。)は、明渡しの催告があつた日から一月を経過する日とする。ただし、執行官は、執行裁判所の許可を得て、当該日以後の日を引渡し期限とすることができる。

 3 執行官は、明渡しの催告をしたときは、その旨、引渡し期限及び第五項の規定により債務者が不動産等の占有を移転することを禁止されている旨を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。

 4 執行官は、引渡し期限が経過するまでの間においては、執行裁判所の許可を得て、引渡し期限を延長することができる。この場合においては、執行官は、引渡し期限の変更があつた旨及び変更後の引渡し期限を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。

 5 明渡しの催告があつたときは、債務者は、不動産等の占有を移転してはならない。ただし、債権者に対して不動産等の引渡し又は明渡しをする場合は、この限りでない。

 6 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、引渡し期限が経過するまでの間においては、占有者(第一項の不動産等を占有する者であつて債務者以外のものをいう。以下この条において同じ。)に対して、第一項の申立てに基づく強制執行をすることができる。この場合において、第四十二条及び前条の規定の適用については、当該占有者を債務者とみなす。

 7 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、占有者は、明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由として、債権者に対し、強制執行の不許を求める訴えを提起することができる。この場合においては、第三十六条、第三十七条及び第三十八条第三項の規定を準用する。

 8 明渡しの催告後に不動産等を占有した占有者は、明渡しの催告があつたことを知つて占有したものと推定する。

 9 第六項の規定により占有者に対して強制執行がされたときは、当該占有者は、執行異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により目的物を占有していること、又は明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。

 10 明渡しの催告に要した費用は、執行費用とする。

  第百六十九条第一項中「前条第一項」を「第百六十八条第一項」に改め、同条第二項中「前条第四項から第七項まで」を「第百六十八条第五項から第八項まで」に改める。

  第百七十一条の前の見出しを削り、同条に見出しとして「(代替執行)」を付する。

  第百七十二条の前に見出しとして「(間接強制)」を付する。

  第百七十三条から第百八十条までを次のように改める。

 第百七十三条 第百六十八条第一項、第百六十九条第一項、第百七十条第一項及び第百七十一条第一項に規定する強制執行は、それぞれ第百六十八条から第百七十一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、前条第一項に規定する方法により行う。この場合においては、同条第二項から第五項までの規定を準用する。

 2 前項の執行裁判所は、第三十三条第二項各号(第四号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。

  (意思表示の擬制)

 第百七十四条 意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾若しくは調停に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは第二十七条第一項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は第三項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。

 2 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

 3 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。

 第百七十五条から第百七十九条まで 削除

  (不動産担保権の実行の方法)

 第百八十条 不動産(登記することができない土地の定着物を除き、第四十三条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。

  一 担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

  二 担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

  「第三章 担保権の実行としての競売等」を削り、第百八十条の前に次の章名を付する。

    第三章 担保権の実行としての競売等

  第百八十一条の見出しを「(不動産担保権の実行の開始)」に改め、同条第一項中「第四十三条第一項に規定する不動産(同条第二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下「不動産」という。)を目的とする担保権の実行としての競売(以下この章において「不動産競売」という。)」を「不動産担保権の実行」に改め、同条第二項から第四項までの規定中「不動産競売」を「不動産担保権の実行」に改める。

  第百八十二条の見出し中「執行異議」を「執行抗告等」に改め、同条中「不動産競売の開始決定に対する」を「不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は」に改める。

  第百八十三条の見出し及び同条第一項中「不動産競売」を「不動産担保権の実行」に改める。

  第百八十四条中「代金」を「担保不動産競売における代金」に改める。

  第百八十五条から第百八十七条までを次のように改める。

 第百八十五条及び第百八十六条 削除

  (担保不動産競売の開始決定前の保全処分等)

 第百八十七条 執行裁判所は、担保不動産競売の開始決定前であつても、債務者又は不動産の所有者若しくは占有者が価格減少行為(第五十五条第一項に規定する価格減少行為をいう。以下この項において同じ。)をする場合において、特に必要があるときは、当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、同条第一項各号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。

 2 前項の場合において、第五十五条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。

  一 前項の債務者又は同項の不動産の所有者が当該不動産を占有する場合

  二 前項の不動産の占有者の占有の権原が同項の規定による申立てをした者に対抗することができない場合

 3 第一項の規定による申立てをするには、担保不動産競売の申立てをする場合において第百八十一条第一項から第三項までの規定により提出すべき文書を提示しなければならない。

 4 執行裁判所は、申立人が第一項の保全処分を命ずる決定の告知を受けた日から三月以内に同項の担保不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、被申立人又は同項の不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。

 5 第五十五条第三項から第五項までの規定は第一項の規定による決定について、同条第六項の規定は第一項又はこの項において準用する同条第五項の申立てについての裁判について、同条第七項の規定はこの項において準用する同条第五項の規定による決定について、同条第八項及び第九項並びに第五十五条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)について、第五十五条第十項の規定は第一項の申立て又は同項の規定による決定(同条第一項第一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)の執行に要した費用について、第八十三条の二の規定は第一項の規定による決定(第五十五条第一項第三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずるものに限る。)の執行がされた場合について準用する。この場合において、第五十五条第三項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。

  第百八十七条の二を削る。

  第百八十八条を次のように改める。

  (不動産執行の規定の準用)

 第百八十八条 第四十四条の規定は不動産担保権の実行について、前章第二節第一款第二目(第八十一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款第三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。

  第百八十九条中「第二章第二節第二款」を「前章第二節第二款」に、「第百八十七条」を「第百八十四条」に改め、「第百十二条に規定する」及び「、第百八十五条第一項中「増価競売の請求を発した日」とあるのは「増価競売の請求を発した後船舶を目的とする担保権の実行としての競売の申立てをすることができることとなつた日」と」を削る。

  第百九十条を次のように改める。

  (動産競売の要件)

 第百九十条 動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。

  一 債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合

  二 債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合

  三 債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、第百九十二条において準用する第百二十三条第二項の規定による捜索に先立つて又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合

 2 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が第百二十三条第二項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。

 3 前項の許可の決定は、債務者に送達しなければならない。

 4 第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

  第百九十二条中「第二章第二節第三款」を「前章第二節第三款」に改め、「実行としての動産競売について」の下に「、第百二十三条第二項の規定は第百九十条第一項第三号に掲げる場合における動産競売について」を加える。

  第百九十三条第二項中「第二章第二節第四款」を「前章第二節第四款」に改める。

  第百九十四条中「実行としての競売」の下に「、担保不動産収益執行」を加える。

  第百九十八条第一項中「前二条」を「前条」に改め、同条を第二百七条とする。

  第百九十六条及び第百九十七条を削る。

  「第四章 罰則」を削る。

  第百九十五条の次に次の一章、章名及び三条を加える。

    第四章 財産開示手続

  (管轄)

 第百九十六条 この章の規定による債務者の財産の開示に関する手続(以下「財産開示手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

  (実施決定)

 第百九十七条 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本(債務名義が第二十二条第二号、第四号若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。

  一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。

  二 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。

 2 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。

  一 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。

  二 知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。

 3 前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。第一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。

  一 債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。

  二 債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。

  三 当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。

 4 第一項又は第二項の決定がされたときは、当該決定(第二項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。

 5 第一項又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 6 第一項又は第二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。

  (期日指定及び期日の呼出し)

 第百九十八条 執行裁判所は、前条第一項又は第二項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。

 2 財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。

  一 申立人

  二 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者)

  (財産開示期日)

 第百九十九条 開示義務者(前条第二項第二号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(第百三十一条第一号又は第二号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。

 2 前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、第二章第二節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。

 3 執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。

 4 申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。

 5 執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。

 6 財産開示期日における手続は、公開しない。

 7 民事訴訟法第百九十五条及び第二百六条の規定は前各項の規定による手続について、同法第二百一条第一項及び第二項の規定は開示義務者について準用する。

  (陳述義務の一部の免除)

 第二百条 財産開示期日において債務者の財産の一部を開示した開示義務者は、申立人の同意がある場合又は当該開示によつて第百九十七条第一項の金銭債権若しくは同条第二項各号の被担保債権の完全な弁済に支障がなくなつたことが明らかである場合において、執行裁判所の許可を受けたときは、前条第一項の規定にかかわらず、その余の財産について陳述することを要しない。

 2 前項の許可の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

  (財産開示事件の記録の閲覧等の制限)

 第二百一条 財産開示事件の記録中財産開示期日に関する部分についての第十七条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。

  一 申立人

  二 債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本(債務名義が第二十二条第二号、第四号若しくは第五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する債権者

  三 債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者

  四 債務者又は開示義務者

  (財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限)

 第二百二条 申立人は、財産開示手続において得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

 2 前条第二号又は第三号に掲げる者であつて、財産開示事件の記録中の財産開示期日に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該財産開示事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

  (強制執行及び担保権の実行の規定の準用)

 第二百三条 第三十九条及び第四十条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく財産開示手続について、第四十二条(第二項を除く。)の規定は財産開示手続について、第百八十二条及び第百八十三条の規定は一般の先取特権に基づく財産開示手続について準用する。

    第五章 罰則

  (公示書等損壊罪)

 第二百四条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

  一 第五十五条第一項(第一号に係る部分に限る。)、第六十八条の二第一項若しくは第七十七条第一項(第一号に係る部分に限る。)(これらの規定を第百二十一条(第百八十九条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は第百八十七条第一項(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定による命令に基づき執行官が公示するために施した公示書その他の標識(刑法第九十六条に規定する封印及び差押えの表示を除く。)を損壊した者

  二 第百六十八条の二第三項又は第四項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者

  (陳述等拒絶の罪)

 第二百五条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

  一 物件明細書の作成に関し、執行裁判所の呼出しを受けた審尋の期日において、正当な理由なく、出頭せず、若しくは陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした者

  二 第五十七条第二項(第百二十一条(第百八十九条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した者

  三 第百六十八条第二項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者

 2 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この項において同じ。)の占有者であつて、その占有の権原を差押債権者、仮差押債権者又は第五十九条第一項(第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、正当な理由なく、第六十四条の二第五項(第百八十八条(第百九十五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による不動産の立入りを拒み、又は妨げたときは、三十万円以下の罰金に処する。

  (過料に処すべき場合)

 第二百六条 次の各号に掲げる場合には、三十万円以下の過料に処する。

  一 開示義務者が、正当な理由なく、執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日に出頭せず、又は当該財産開示期日において宣誓を拒んだとき。

  二 財産開示期日において宣誓した開示義務者が、正当な理由なく第百九十九条第一項から第四項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたとき。

 2 第二百二条の規定に違反して、同条の情報を同条に規定する目的以外の目的のために利用し、又は提供した者は、三十万円以下の過料に処する。

 (民事保全法の一部改正)

第四条 民事保全法(平成元年法律第九十一号)の一部を次のように改正する。

  目次中「第二十五条」を「第二十五条の二」に、「第四章 仮処分の効力(第五十八条―第六十五条)」を

第四章 仮処分の効力(第五十八条―第六十五条)

 
 

第五章 罰則(第六十六条・第六十七条)

 に改める。

  第二章第二節第三款中第二十五条の次に次の一条を加える。

  (債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令)

 第二十五条の二 占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、第五十四条の二及び第六十二条において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。

  一 債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。

  二 執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。

 2 前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

 3 第一項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、第四十三条第二項の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。この場合において、第四条第二項において準用する民事訴訟法第七十九条第一項の規定による担保の取消しの決定で第十四条第一項の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。

  第四十七条第五項中「、第四十五条第二項及び第三項」を削り、「第四十七条第一項、第二項」を「第四十七条第二項」に、「第百四条まで」を「第九十三条の三まで、第九十四条から第百四条まで」に改める。

  第五十四条の次に次の一条を加える。

  (債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行)

 第五十四条の二 第二十五条の二第一項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行は、係争物である不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。

  第六十二条を次のように改める。

  (占有移転禁止の仮処分命令の効力)

 第六十二条 占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。

  一 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者

  二 当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者

 2 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。

  第四章の次に次の一章を加える。

    第五章 罰則

  (公示書等損壊罪)

 第六十六条 第五十二条第一項の規定によりその例によることとされる民事執行法第百六十八条の二第三項又は第四項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

  (陳述等拒絶の罪)

 第六十七条 第五十二条第一項の規定によりその例によることとされる民事執行法第百六十八条第二項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

   附 則

 (施行期日)

第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

 (雇用関係の先取特権に関する経過措置)

第二条 第一条の規定による改正後の民法第三百六条第二号及び第三百八条の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に同号に掲げる原因により生じた債権及び同条の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権について適用し、施行日前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第三百六条第二号に掲げる原因により生じた債権及び旧民法第三百八条の雇人給料(債務者の雇人が受けるべき最後の六箇月間の給料に限る。)として生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

 (債権質の効力の発生に関する経過措置)

第三条 施行日前に債権をもってその目的とする質権の設定をする契約をした場合における当該質権の効力の発生については、第一条の規定による改正後の民法第三百六十三条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (滌除及び増価競売に関する経過措置)

第四条 施行日前に旧民法第三百八十三条の書面が同条に規定する債権者の全員に到達した場合における当該抵当不動産についての旧民法第三百七十八条の規定による滌除及び旧民法第三百八十四条に規定する増価競売については、第一条の規定による改正後の民法及び第三条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (短期賃貸借に関する経過措置)

第五条 この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法第六百二条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。

 (根抵当権の元本の確定に関する経過措置)

第六条 施行日前に旧民法第三百九十八条ノ二十第一項第一号に掲げる場合に該当して同項の規定により確定した根抵当権の担保すべき元本については、なお従前の例による。

 (敷金の登記に関する経過措置)

第七条 第二条の規定による改正後の不動産登記法第百三十二条第一項の規定は、施行日前に登記された賃貸借の敷金については、適用しない。

 (保全処分に関する経過措置)

第八条 施行日前にされた第三条の規定による改正前の民事執行法(以下「旧民事執行法」という。)第五十五条第一項若しくは第二項、第六十八条の二第一項若しくは第七十七条第一項(これらの規定を旧民事執行法第百八十八条において準用する場合を含む。)又は旧民事執行法第百八十七条の二第一項若しくは第二項の申立てに係る事件については、第三条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (差引き納付に関する経過措置)

第九条 施行日前に旧民事執行法第七十八条第四項後段の異議の陳述又は申出があった場合における買受人が同項後段の金銭を納付すべき期限及び配当異議の申出をした債権者又は債務者が旧民事執行法第九十条第六項の規定による証明等をすべき期限については、なお従前の例による。

 (強制管理の手続に関する経過措置)

第十条 施行日前に申し立てられた強制管理の事件について、施行日前にした旧民事執行法の規定による執行処分その他の行為は、第三条の規定による改正後の民事執行法の規定の適用については、同法の相当規定によってした執行処分その他の行為とみなす。

 (差押禁止動産に関する経過措置)

第十一条 施行日前に申し立てられた旧民事執行法第百二十二条第一項に規定する動産執行又は一般の先取特権の実行としての旧民事執行法第百九十条に規定する動産競売の申立てに係る事件における差し押さえてはならない動産については、第三条の規定による改正後の民事執行法第百三十一条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (扶養義務等に係る金銭債権を請求する場合における差押禁止債権に関する経過措置)

第十二条 施行日前に第三条の規定による改正後の民事執行法第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務についての金銭債権を請求する場合における差し押さえてはならない債権については、第三条の規定による改正後の民事執行法第百五十二条第三項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (破産財団に属さない財産に関する経過措置)

第十三条 施行日前に破産宣告があった場合における破産法(大正十一年法律第七十一号)第六条第三項の差し押さえることのできない財産として破産財団に属さない財産については、第三条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (罰則の適用に関する経過措置)

第十四条 施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

 (外国人の抵当権に関する法律等の廃止)

第十五条 次に掲げる法律は、廃止する。

 一 外国人の抵当権に関する法律(明治三十二年法律第六十七号)

 二 金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律(平成十年法律第百二十七号)

 (外国人の抵当権に関する法律の廃止に伴う経過措置)

第十六条 施行日前に旧民法第三百八十三条の書面が同条に規定する債権者の全員に到達した場合における増価競売の請求であって、前条第一号の規定による廃止前の外国人の抵当権に関する法律の規定により抵当権者がその抵当権の目的たる権利を享有することができないときに行うものについては、なお従前の例による。

 (金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律の廃止に伴う経過措置)

第十七条 施行日前に附則第十五条第二号の規定による廃止前の金融機関等が有する根抵当権により担保される債権の譲渡の円滑化のための臨時措置に関する法律(以下この条において「旧債権譲渡円滑化臨時措置法」という。)第三条の規定により根抵当権の担保すべき元本につき旧民法第三百九十八条ノ二十第一項の規定の適用について同項第一号に規定する場合に該当するものとみなされた場合における旧債権譲渡円滑化臨時措置法第四条の登記の申請については、なお従前の例による。

 (商法の一部改正)

第十八条 商法(明治三十二年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第二百六十六条第一項第二号中「第二百九十四条ノ二第一項」を「第二百九十五条第一項」に改める。

  第二百九十五条を削り、第二百九十四条ノ二を第二百九十五条とする。

  第三百八十三条第二項中「若ハ企業担保権ノ実行」の下に「若ハ財産開示手続(民事執行法第百九十七条第一項ノ申立ニ依ルモノニ限ル以下此ノ項ニ於テ同ジ)ノ申立」を、「企業担保権ノ実行手続」の下に「並ニ財産開示手続」を加える。

  第三百八十四条中「実行トシテノ競売」を「実行」に改める。

  第四百九十四条第一項第二号中「第二百九十四条ノ二第四項」を「第二百九十五条第四項」に改める。

  第八百四十八条第三項に後段として次のように加える。

   此場合ニ於テハ民法第三百八十四条第一号中「抵当権ヲ実行シテ競売ノ申立ヲ為サザルトキ」トアルハ「抵当権ノ実行トシテノ競売ノ申立若クハ其提供ヲ承諾セザル旨ノ第三取得者ニ対スル通知ヲ為サズ又ハ其通知ヲ為シタル債権者ガ抵当権ノ実行トシテノ競売ノ申立ヲ之ヲ為スコトヲ得ルニ至リタル後一週間内ニ為サザルトキ」ト読替フルモノトス

 (商法の一部改正に伴う経過措置)

第十九条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の商法(以下「旧商法」という。)第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

2 施行日前に旧商法第八百四十八条第三項において準用する旧民法第三百八十三条の書面が同条に規定する債権者の全員に到達した場合における当該抵当権の目的たる船舶についての同項において準用する旧民法第三百七十八条の規定による滌除及び同項において準用する旧民法第三百八十四条に規定する増価競売については、第一条の規定による改正後の民法、第三条の規定による改正後の民事執行法及び前条の規定による改正後の商法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (担保附社債信託法の一部改正)

第二十条 担保附社債信託法(明治三十八年法律第五十二号)の一部を次のように改正する。

  第八十三条第一項中「実行トシテノ競売」を「実行」に改める。

 (破産法の一部改正)

第二十一条 破産法の一部を次のように改正する。

  第七十条に次の一項を加える。

  破産ノ宣告アリタルトキハ破産者ニ付為シタル財産開示手続ハ其ノ効力ヲ失フ

 (抵当証券法の一部改正)

第二十二条 抵当証券法(昭和六年法律第十五号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条中「第三百八十一条乃至第三百八十七条」を「第三百八十二条乃至第三百八十六条」に改める。

 (農業動産信用法の一部改正)

第二十三条 農業動産信用法(昭和八年法律第三十号)の一部を次のように改正する。

  第十二条第二項中「第三百八十七条」を「第三百八十条及第三百八十二条乃至第三百八十六条」に改める。

 (有限会社法の一部改正)

第二十四条 有限会社法(昭和十三年法律第七十四号)の一部を次のように改正する。

  第三十条ノ二第一項第一号中「第四十六条第一項」を「第四十六条」に改める。

  第四十六条第二項を削る。

  第八十五条第一項第十三号中「第四十六条第一項」を「第四十六条」に改める。

 (有限会社法の一部改正に伴う経過措置)

第二十五条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の有限会社法第四十六条第二項において準用する旧商法第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

 (投資信託及び投資法人に関する法律の一部改正)

第二十六条 投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)の一部を次のように改正する。

  第百九条第一項第三号中「第二百九十四条ノ二第一項」を「第二百九十五条第一項」に改める。

  第百三十九条第一項中「第二百九十四条ノ二」を「第二百九十五条」に改める。

 (企業担保法の一部改正)

第二十七条 企業担保法(昭和三十三年法律第百六号)の一部を次のように改正する。

  第二十八条中「すでに」を「既に」に、「基く」を「基づく」に、「又は」を「若しくは」に改め、「例による滞納処分」の下に「又は財産開示手続」を加える。

 (執行官法の一部改正)

第二十八条 執行官法(昭和四十一年法律第百十一号)の一部を次のように改正する。

  第八条第一項第十七号中「第五十五条第二項」を「第五十五条第一項(第二号又は第三号に係る部分に限る。)」に、「第七十七条第一項又は第百八十七条の二第二項」を「第七十七条第一項(第二号又は第三号に係る部分に限る。)又は第百八十七条第一項(同法第五十五条第一項第二号又は第三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる場合に限る。)」に改め、同号の次に次の一号を加える。

  十七の二 民事執行法第六十四条の二第一項(これを準用し、又はその例による場合を含む。)の内覧の実施

 (執行官法の一部改正に伴う経過措置)

第二十九条 施行日前にされた旧民事執行法第五十五条第二項、第六十八条の二第一項、第七十七条第一項又は第百八十七条の二第二項(これらを準用し、又はその例による場合を含む。)の申立てに係る事件における執行官が手数料を受ける事務については、前条の規定による改正後の執行官法第八条第一項第十七号の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 (登録免許税法の一部改正)

第三十条 登録免許税法(昭和四十二年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。

  別表第一第一号(五)中「担保権の実行としての競売」を「担保不動産競売」に、「若しくは強制管理」を「、強制管理若しくは担保不動産収益執行」に改め、同号(六の三)の次に次のように加える。

 (六の四) 賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記

賃借権及び抵当権の件数

一件につき千円

  別表第一第二号(六の三)の次に次のように加える。

 (六の四) 賃借権の先順位抵当権に優先する同意の登記

賃借権及び抵当権の件数

一件につき千円

  別表第一第四号(三)、第五号(二)及び第十八号(七)中「若しくは強制管理」を「、強制管理若しくは担保不動産収益執行」に改める。

 (民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)

第三十一条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。

  第二条第十九号中「第三百八十一条又は」を削る。

  別表第一の一一の項イ中「又は競売」の下に「若しくは収益執行」を加え、同表の一一の二の項イ中「又は第百七十二条第一項の強制執行の申立て」を「、第百七十二条第一項若しくは第百七十三条第一項の強制執行の申立て又は同法第百九十七条第一項若しくは第二項の財産開示手続実施の申立て」に改め、同表の一七の項ロ中「第五十五条第一項若しくは第二項」を「第五十五条第一項」に、「売却のための保全処分若しくは同条第四項」を「売却のための保全処分若しくは同条第五項」に、「又は同法第百八十七条の二第一項若しくは第二項」を「、同法第百八十七条第一項」に改め、「その取消しの申立て」の下に「又は同法第百九十条第二項の動産競売の開始の許可の申立て」を加える。

 (株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部改正)

第三十二条 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(昭和四十九年法律第二十二号)の一部を次のように改正する。

  第二十一条の二十第一項中「第二百九十四条ノ二第一項」を「第二百九十五条第一項」に改める。

 (船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部改正)

第三十三条 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(昭和五十年法律第九十四号)の一部を次のように改正する。

  第二十三条第一項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

 (保険業法の一部改正)

第三十四条 保険業法(平成七年法律第百五号)の一部を次のように改正する。

  第五十一条第二項中「第二百九十四条ノ二第一項」を「第二百九十五条第一項」に改める。

  第五十九条第一項中「及び第二百九十四条から第二百九十五条まで(会社の業務及び財産状況の検査、株主の権利の行使に関する利益の供与並びに会社の使用人の先取特権)」を「、第二百九十四条(会社の業務及び財産状況の検査)及び第二百九十五条(株主の権利の行使に関する利益の供与)」に、「第二百九十四条ノ二第一項」を「第二百九十五条第一項」に改める。

  第三百三十条第一項第二号中「第二百九十四条ノ二第四項」を「第二百九十五条第四項」に改める。

 (保険業法の一部改正に伴う経過措置)

第三十五条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の保険業法第五十九条第一項において準用する旧商法第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

 (金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部改正)

第三十六条 金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(平成八年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。

  第七十九条第二項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

  第百二十六条中「、第二十四条第一項第二号」を「第二十四条第一項第二号」に、「及び企業担保権」を「、企業担保権」に、「及び更生特例法」を「更生特例法」に改める。

  第四百五十三条の見出し中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改める。

 (資産の流動化に関する法律の一部改正)

第三十七条 資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)の一部を次のように改正する。

  第百六条第二項中「第二百九十四条ノ二第二項」を「第二百九十五条第二項」に改める。

  第百七条を次のように改める。

 第百七条 削除

  第二百七条第三項中「第二百九十四条ノ二第二項」を「第二百九十五条第二項」に改める。

 (資産の流動化に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第三十八条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の資産の流動化に関する法律第百七条において準用する旧商法第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

 (新事業創出促進法の一部改正)

第三十九条 新事業創出促進法(平成十年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。

  第十条の十二第四項中「第四十六条第一項」を「第四十六条」に改める。

 (民事再生法の一部改正)

第四十条 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)の一部を次のように改正する。

  第三十一条の見出し中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改め、同条第一項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

  第三十九条第一項中「対する再生債権に基づく強制執行等」の下に「若しくは再生債権に基づく財産開示手続の申立て」を加え、「及び再生債務者」を「並びに再生債務者」に改め、「強制執行等の手続」の下に「及び再生債権に基づく財産開示手続」を加える。

  第百二十二条第四項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

  第百二十三条第三項中「仮処分」の下に「並びに財産開示手続」を加える。

  第百九十七条の見出し中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改め、同条第一項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

 (農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部改正)

第四十一条 農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律(平成十二年法律第九十五号)の一部を次のように改正する。

  第九条の見出し中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改める。

 (外国倒産処理手続の承認援助に関する法律の一部改正)

第四十二条 外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(平成十二年法律第百二十九号)の一部を次のように改正する。

  第二十七条の見出し中「実行としての競売手続等」を「実行手続等」に改め、同条第一項中「実行としての競売」を「実行」に改める。

 (中間法人法の一部改正)

第四十三条 中間法人法(平成十三年法律第四十九号)の一部を次のように改正する。

  第七十一条第二項を削る。

 (中間法人法の一部改正に伴う経過措置)

第四十四条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の中間法人法第七十一条第二項において準用する旧商法第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

 (会社更生法の一部改正)

第四十五条 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)の一部を次のように改正する。

  第二十四条第一項第二号中「実行としての競売」を「実行」に改める。

  第五十条第一項中「企業担保権の実行」の下に「若しくは財産開示手続の申立て」を、「企業担保権の実行手続」の下に「並びに財産開示手続」を加え、同条第七項中「実行としての競売」を「実行」に改め、同条第九項中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改める。

  第五十一条第一項中「実行としての競売手続」を「実行手続」に改める。

  第百三十四条第三項中「実行としての競売」を「実行」に改め、「企業担保権の実行」の下に「並びに財産開示手続」を加える。

  第二百八条第一項中「及び企業担保権の実行手続」を「、企業担保権の実行手続及び財産開示手続」に改める。

 (なお効力を有するものとされる特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部改正)

第四十六条 特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律(平成十二年法律第九十七号)附則第二条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる同法第一条の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部を次のように改正する。

  第百六条第二項中「第二百九十四条ノ二第二項」を「第二百九十五条第二項」に改める。

  第百七条を次のように改める。

 第百七条 削除

 (なお効力を有するものとされる特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の一部改正に伴う経過措置)

第四十七条 施行日前に生じた前条の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律附則第二条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる同法第一条の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律第百七条において準用する旧商法第二百九十五条第一項の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

(内閣総理・法務・財務・農林水産・経済産業大臣署名) 

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