法律第四十八号(平一七・五・二〇)
◎原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、原子力発電における使用済燃料の再処理等を適正に実施するため、使用済燃料再処理等積立金の積立て及び管理のために必要な措置を講ずることにより、発電に関する原子力に係る環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展と国民生活の安定に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「使用済燃料」とは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第二十三条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。以下同じ。)をいう。
2 この法律において「再処理」とは、使用済燃料から核燃料物質その他の有用物質を分離するために、使用済燃料を化学的方法により処理することをいう。
3 この法律において「分離有用物質」とは、再処理に伴い使用済燃料から分離された核燃料物質その他の有用物質をいう。
4 この法律において「再処理等」とは、次に掲げるものをいう。
一 再処理
二 次に掲げるものの処理、管理及び処分(特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)第二条第二項に規定する最終処分を除く。)
イ 再処理に伴い使用済燃料から分離有用物質を分離した後に残存する物(以下「残存物」という。)
ロ 再処理に伴い使用済燃料、分離有用物質又は残存物によって汚染された物
三 再処理施設(原子炉等規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設をいう。以下同じ。)の解体
四 前三号に掲げるもののほか、分離有用物質の貯蔵(再処理施設において行うものに限る。)その他の政令で定める行為
5 この法律において「特定実用発電用原子炉」とは、原子炉等規制法第二十三条第二項第八号に掲げる処分の方法として再処理する旨を記載して同条第一項の許可を受けた実用発電用原子炉をいう。
6 この法律において「特定実用発電用原子炉設置者」とは、特定実用発電用原子炉を設置している者をいう。
(使用済燃料再処理等積立金)
第三条 特定実用発電用原子炉設置者は、特定実用発電用原子炉の運転に伴って生ずる使用済燃料の再処理等を適正に実施するため、毎年度、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣が第四項の規定により通知する額(第五項の変更の通知があった場合は、その変更後の額)の金銭を使用済燃料再処理等積立金として積み立てなければならない。
2 使用済燃料再処理等積立金の積立ては、経済産業省令で定めるところにより、第十条第一項に規定する資金管理法人(次項及び第六条において単に「資金管理法人」という。)にしなければならない。
3 使用済燃料再処理等積立金は、資金管理法人が管理する。
4 使用済燃料再処理等積立金の額は、特定実用発電用原子炉の運転に伴う使用済燃料の発生の状況、再処理施設の再処理能力及び稼働状況(分離有用物質の発生の状況を含む。)、再処理等に要する費用その他の事項を基礎とし、経済産業省令で定める基準に従い、特定実用発電用原子炉設置者ごとに経済産業大臣が算定して通知する額とする。
5 経済産業大臣は、使用済燃料の発生の状況の著しい変化その他著しい事情の変更があると認めるときは、前項の額の変更を通知することができる。
6 経済産業大臣は、第四項の規定により通知する場合において必要があると認めるときは、併せて、特定実用発電用原子炉設置者であった者に対して、その者が現に積み立てている使用済燃料再処理等積立金の額、再処理等に要する費用その他の事情を勘案して、使用済燃料再処理等積立金として追加して積み立てるべき金額を通知することができる。
7 前項の規定による通知を受けた者は、経済産業省令で定めるところにより、その通知された額の金銭を使用済燃料再処理等積立金として積み立てなければならない。
(再処理事業者等の届出)
第四条 原子炉等規制法第四十四条の四第一項に規定する再処理事業者及び第二条第四項第二号に掲げる行為を業として行う者(経済産業省令で定める者を除く。以下「再処理事業者等」という。)は、毎年度、経済産業省令で定めるところにより、再処理施設の稼働状況、再処理等の実施に関する計画、再処理等に要する費用その他経済産業省令で定める事項を経済産業大臣に届け出なければならない。その届け出た事項に変更(経済産業省令で定める軽微な変更を除く。)が生じたときも、同様とする。
(特定実用発電用原子炉設置者の届出)
第五条 特定実用発電用原子炉設置者は、毎年度、経済産業省令で定めるところにより、その者に係る特定実用発電用原子炉の運転に伴う使用済燃料の発生の状況、再処理等の実施に関する計画、再処理等に要する費用その他経済産業省令で定める事項を経済産業大臣に届け出なければならない。その届け出た事項に変更(経済産業省令で定める軽微な変更を除く。)が生じたときも、同様とする。
(利息)
第六条 資金管理法人は、経済産業省令で定めるところにより、使用済燃料再処理等積立金に利息を付さなければならない。
(取戻し)
第七条 特定実用発電用原子炉設置者等(特定実用発電用原子炉設置者及び特定実用発電用原子炉設置者であった者をいう。以下同じ。)は、再処理等の実施に要する費用に充てる場合その他使用済燃料再処理等積立金を積み立てておく必要がないものとして経済産業省令で定める場合には、経済産業省令で定めるところにより、次項の規定により承認を受けた計画に従って使用済燃料再処理等積立金を取り戻すことができる。
2 特定実用発電用原子炉設置者等は、使用済燃料再処理等積立金を取り戻そうとするときは、毎年度、経済産業省令で定めるところにより、使用済燃料再処理等積立金の取戻しに関する計画を作成し、経済産業大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
(承継)
第八条 特定実用発電用原子炉設置者等について相続又は合併があったときは、当該特定実用発電用原子炉設置者等が積み立てた使用済燃料再処理等積立金は、当該特定実用発電用原子炉設置者等の相続人又は合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人が積み立てたものとみなす。
2 特定実用発電用原子炉設置者から他の特定実用発電用原子炉設置者に対する使用済燃料の譲渡があったときは、当該特定実用発電用原子炉設置者が積み立てた当該使用済燃料に係る使用済燃料再処理等積立金は、当該他の特定実用発電用原子炉設置者が積み立てたものとみなす。
3 前項の規定は、特定実用発電用原子炉設置者であった者から特定実用発電用原子炉設置者に対する使用済燃料の譲渡があった場合に準用する。
(経済産業省令への委任)
第九条 第三条及び第六条から前条までに定めるもののほか、使用済燃料再処理等積立金の積立て及び取戻しに関し必要な事項は、経済産業省令で定める。
(指定等)
第十条 経済産業大臣は、営利を目的としない法人であって、次項に規定する業務(以下「資金管理業務」という。)に関し次に掲げる基準に適合すると認められるものを、その申請により、全国を通じて一個に限り、資金管理法人として指定することができる。
一 資金管理業務を適確に実施するに足りる経理的及び技術的な基礎を有するものであること。
二 役員又は職員の構成が、資金管理業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
三 資金管理業務以外の業務を行っている場合には、その業務を行うことによって資金管理業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること。
四 第十八条第一項の規定により指定を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者でないこと。
五 役員のうちに次のいずれかに該当する者がないこと。
イ 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
ロ この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したことにより罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
2 資金管理法人は、次に掲げる業務を行うものとする。
一 使用済燃料再処理等積立金の管理を行うこと。
二 使用済燃料再処理等積立金の取戻しに関して、取り戻された使用済燃料再処理等積立金の額に相当する金額が確実に再処理等に要する費用に支出されることを確認すること。
3 経済産業大臣は、第一項の規定による指定をしたときは、当該指定を受けた者の名称及び住所並びに事務所の所在地を公示しなければならない。
4 資金管理法人は、その名称及び住所並びに事務所の所在地を変更しようとするときは、あらかじめ、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
5 経済産業大臣は、前項の規定による届出があったときは、当該届出に係る事項を公示しなければならない。
(資金管理業務規程)
第十一条 資金管理法人は、資金管理業務の開始前に、その実施方法その他の経済産業省令で定める事項について資金管理業務規程を定め、経済産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 経済産業大臣は、前項の認可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一 資金管理業務の実施方法が適正かつ明確に定められていること。
二 特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと。
三 特定実用発電用原子炉設置者等の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと。
3 経済産業大臣は、第一項の認可をした資金管理業務規程が資金管理業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その資金管理業務規程を変更すべきことを命ずることができる。
(事業計画等)
第十二条 資金管理法人は、毎事業年度、経済産業省令で定めるところにより、資金管理業務に関し事業計画書及び収支予算書を作成し、経済産業大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 資金管理法人は、経済産業省令で定めるところにより、毎事業年度終了後、資金管理業務に関し事業報告書及び収支決算書を作成し、経済産業大臣に提出しなければならない。
(業務の休廃止)
第十三条 資金管理法人は、経済産業大臣の許可を受けなければ、資金管理業務の全部又は一部を休止し、又は廃止してはならない。
(使用済燃料再処理等積立金の運用)
第十四条 資金管理法人は、次の方法によるほか、使用済燃料再処理等積立金を運用してはならない。
一 国債その他経済産業大臣の指定する有価証券の保有
二 銀行その他経済産業大臣の指定する金融機関への預金又は郵便貯金
三 信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)への金銭信託
2 資金管理法人は、使用済燃料再処理等積立金に係る経理を、経済産業省令で定めるところにより、一般の経理と区分し、使用済燃料再処理等積立金を積み立てた特定実用発電用原子炉設置者等ごとに、それぞれ勘定を設けて整理しなければならない。
(帳簿)
第十五条 資金管理法人は、経済産業省令で定めるところにより、帳簿を備え、資金管理業務に関し経済産業省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
(解任命令)
第十六条 経済産業大臣は、資金管理法人の役員が、この法律の規定若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反したとき、第十一条第一項の認可を受けた同項に規定する資金管理業務規程に違反する行為をしたとき、又は資金管理業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、資金管理法人に対して、その役員を解任すべきことを命ずることができる。
(監督命令)
第十七条 経済産業大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、資金管理法人に対し、資金管理業務に関し監督上必要な命令をすることができる。
(指定の取消し等)
第十八条 経済産業大臣は、資金管理法人が次の各号のいずれかに該当するときは、第十条第一項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。
一 資金管理業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
二 指定に関し不正の行為があったとき。
三 この法律の規定若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反したとき、又は第十一条第一項の認可を受けた同項に規定する資金管理業務規程によらないで資金管理業務を行ったとき。
2 経済産業大臣は、前項の規定により指定を取り消したときは、その旨を公示しなければならない。
3 第一項の規定による指定の取消しが行われた場合において、特定実用発電用原子炉設置者等が当該指定を取り消された法人に積み立てた使用済燃料再処理等積立金がなお存するときは、当該指定を取り消された法人は、経済産業大臣が第十条第一項の規定により新たに指定する資金管理法人に当該積立金を速やかに引き渡さなければならない。
4 経済産業大臣は、前項の規定により使用済燃料再処理等積立金を引き渡すべき新たな資金管理法人を指定したときは、その旨を関係する特定実用発電用原子炉設置者等に通知しなければならない。
(報告及び立入検査)
第十九条 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、特定実用発電用原子炉設置者等及び再処理事業者等に対し、その業務に関し報告をさせ、又はその職員に、特定実用発電用原子炉設置者等及び再処理事業者等の事務所若しくは工場若しくは事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、資金管理法人に対し、資金管理業務の状況若しくは資産に関し必要な報告をさせ、又はその職員に、資金管理法人の事務所に立ち入り、資金管理業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
3 前二項の規定による立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4 第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(経過措置)
第二十条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
(罰則)
第二十一条 第三条第一項又は第七項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第四条又は第五条の規定に違反して届出をせず、又は虚偽の届出をした者
二 第七条第二項の承認を受けずに使用済燃料再処理等積立金を取り戻した者
三 第十九条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
四 第十九条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
第二十三条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした資金管理法人の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第十三条の許可を受けないで資金管理業務の全部を廃止したとき。
二 第十五条の規定による帳簿の記載をせず、虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
三 第十九条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
四 第十九条第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
第二十四条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第二十一条 三億円以下の罰金刑
二 第二十二条 一億円以下の罰金刑
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第四条、第五条、第十九条第一項、第三項及び第四項、第二十二条第一号、第三号及び第四号、第二十四条第二号並びに次条の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(準備行為)
第二条 第十条第一項の規定による指定及びこれに関して必要な手続その他の行為(資金管理業務規程の認可を含む。)は、この法律の施行前においても、同条及び第十一条の規定の例により行うことができる。
(経過措置)
第三条 第三条第一項の規定により毎年度積み立てるべき使用済燃料再処理等積立金のほか、この法律の施行の際現にその特定実用発電用原子炉の運転の開始の日からこの法律の施行の日の前日までの間の運転に伴って生じた使用済燃料がある特定実用発電用原子炉設置者は、当該使用済燃料の再処理等に要する費用に充てるため、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣が第五項において準用する同条第四項の規定により通知する額の金銭を資金管理法人に積み立てなければならない。
2 前項の規定により積み立てられた金銭は、第三条第一項の使用済燃料再処理等積立金として積み立てられたものとみなす。
3 第一項の規定による積立て(この法律の施行の日の属する年度の開始の日からこの法律の施行の日の前日までの間の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等に要する費用に相当するものとして経済産業省令で定める金額に係るものを除く。)は、経済産業省令で定めるところにより、この法律の施行の日の属する年度から十五年目の年度までの各年度に均等に分割して行うものとする。ただし、再処理等の適正な実施に支障が生ずるおそれがないと認められる場合において、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の承認を受けたときは、承認を受けたところに従い、分割して行うことができる。
4 前項の経済産業省令で定める金額に係る第一項の規定による積立ては、経済産業省令で定めるところにより、この法律の施行の日の属する年度において行うものとする。
5 第三条第四項の規定は、第一項の規定により積み立てるべき積立金に準用する。この場合において、同条第四項中「特定実用発電用原子炉の運転」とあるのは、「その運転の開始の日からこの法律の施行の日の前日までの間における特定実用発電用原子炉の運転」と読み替えるものとする。
(罰則)
第四条 前条第一項の規定に違反した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して三億円以下の罰金刑を、その人に対して同項の罰金刑を科する。
(政令への委任)
第五条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(経済産業・内閣総理大臣署名)