法律第六十一号(平一七・六・一七)
◎地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律
地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第三十二条」を「第三十三条」に改める。
第一条中「国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)の的確かつ円滑な実施を確保する」を「京都議定書目標達成計画を策定するとともに、社会経済活動その他の活動による温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置を講ずる」に改める。
第二条第五項中「温室効果ガスの総排出量」を「温室効果ガス総排出量」に改め、「係数をいう」の下に「。以下同じ」を加える。
第三条第三項及び第四条第二項中「抑制等のための措置」を「量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置」に改める。
第七条中「京都議定書」を「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(以下「京都議定書」という。)」に改める。
第八条第二項第六号を次のように改める。
六 第二十条の二第一項に規定する政府実行計画及び第二十一条第一項に規定する地方公共団体実行計画に関する基本的事項
第八条第二項第七号中「温室効果ガスの総排出量」を「温室効果ガス総排出量」に改める。
第九条第一項中「平成十六年及び」を削る。
第十一条第一号中「作成」の下に「及び実施の推進」を加え、同条第二号を次のように改める。
二 長期的展望に立った地球温暖化対策の実施の推進に関する総合調整に関すること。
第二十条の見出しを「(国及び地方公共団体の施策)」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
国は、温室効果ガスの排出の抑制等のための技術に関する知見及びこの法律の規定により報告された温室効果ガスの排出量に関する情報その他の情報を活用し、地方公共団体と連携を図りつつ、温室効果ガスの排出の抑制等のために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする。
第二十条の次に次の一条を加える。
(政府実行計画等)
第二十条の二 政府は、京都議定書目標達成計画に即して、その事務及び事業に関し、温室効果ガスの排出の量の削減並びに吸収作用の保全及び強化のための措置に関する計画(以下この条において「政府実行計画」という。)を策定するものとする。
2 政府実行計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 計画期間
二 政府実行計画の目標
三 実施しようとする措置の内容
四 その他政府実行計画の実施に関し必要な事項
3 環境大臣は、政府実行計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣は、政府実行計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならない。
5 環境大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、政府実行計画を公表しなければならない。
6 前三項の規定は、政府実行計画の変更について準用する。
7 政府は、毎年一回、政府実行計画に基づく措置の実施の状況(温室効果ガス総排出量を含む。)を公表しなければならない。
第二十一条の見出しを「(地方公共団体実行計画等)」に改め、同条第一項中「抑制等」を「量の削減並びに吸収作用の保全及び強化」に、「実行計画」を「地方公共団体実行計画」に改め、同条第三項中「実行計画」を「毎年一回、地方公共団体実行計画」に、「温室効果ガスの総排出量」を「温室効果ガス総排出量」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項中「実行計画」を「地方公共団体実行計画」に改め、同項を同条第三項とし、同条第一項の次に次の一項を加える。
2 地方公共団体実行計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 計画期間
二 地方公共団体実行計画の目標
三 実施しようとする措置の内容
四 その他地方公共団体実行計画の実施に関し必要な事項
第二十一条の次に次の九条を加える。
(温室効果ガス算定排出量の報告)
第二十一条の二 事業活動(国又は地方公共団体の事務及び事業を含む。以下この条において同じ。)に伴い相当程度多い温室効果ガスの排出をする者として政令で定めるもの(以下「特定排出者」という。)は、毎年度、主務省令で定めるところにより、事業所(事業活動の態様を勘案して事業所によることが適当でないと認められる特定排出者として主務省令で定めるものにあっては、主務省令で定める区分。以下この項、次条第一項、第二十一条の四第二項第二号及び第二十一条の六第二項第二号において同じ。)ごとに、主務省令で定める期間に排出した温室効果ガス算定排出量に関し、主務省令で定める事項を当該事業所に係る事業を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)に報告しなければならない。
2 この章において「温室効果ガス算定排出量」とは、温室効果ガスである物質ごとに、特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量として政令で定める方法により算定される当該物質の排出量に当該物質の地球温暖化係数を乗じて得た量をいう。
(権利利益の保護に係る請求)
第二十一条の三 特定排出者は、前条第一項の規定による報告に係る温室効果ガス算定排出量の情報が公にされることにより、当該特定排出者の権利、競争上の地位その他正当な利益(以下「権利利益」という。)が害されるおそれがあると思料するときは、当該温室効果ガス算定排出量に代えて、当該特定排出者に係る温室効果ガス算定排出量を事業所ごとに合計した量(当該量によることが困難であると認められる特別な事情がある場合においては、当該特定排出者に係る温室効果ガス算定排出量を主務省令で定めるところにより合計した量。次条第二項第二号において同じ。)をもって次条第一項の規定による通知を行うよう事業所管大臣に請求を行うことができる。
2 特定排出者は、前項の請求を行うときは、前条第一項の規定による報告と併せて、主務省令で定めるところにより、その理由を付して行わなければならない。
3 事業所管大臣は、第一項の請求を認める場合には、その旨の決定をし、当該請求を行った特定排出者に対し、その旨を通知するものとする。
4 事業所管大臣は、第一項の請求を認めない場合には、その旨の決定をし、当該決定後直ちに、当該請求を行った特定排出者に対し、その旨及びその理由を通知するものとする。
5 前二項の決定は、第一項の請求があった日から三十日以内にするものとする。
6 前項の規定にかかわらず、事業所管大臣は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項の期間を三十日以内に限り延長することができる。
(報告事項の通知等)
第二十一条の四 事業所管大臣は、第二十一条の二第一項の規定による報告があったときは、当該報告に係る事項について環境大臣及び経済産業大臣に通知するものとする。
2 前項の規定による通知は、次に掲げるところにより、行うものとする。
一 前条第一項の請求がないときは、遅滞なく、当該報告に係る事項を通知すること。
二 前条第一項の請求があった場合において、同条第三項の決定をしたときは、遅滞なく、当該報告に係る事項(当該事項のうち当該決定に係る温室効果ガス算定排出量については、これに代えて当該特定排出者に係る温室効果ガス算定排出量を事業所ごとに合計した量)を通知すること。
三 前条第一項の請求があった場合において、同条第四項の決定をしたときは、同項の規定による特定排出者への通知の日から二週間を経過した日以後速やかに、当該報告に係る事項を通知すること。
3 事業所管大臣は、第二十一条の二第一項の規定による報告があったときは、主務省令で定めるところにより、遅滞なく、当該報告に係る温室効果ガス算定排出量を集計するものとする。
4 事業所管大臣は、遅滞なく、前項の規定により集計した結果を環境大臣及び経済産業大臣に通知するものとする。ただし、当該集計結果が通知されることにより、前条第三項の決定に係る特定排出者の権利利益が害されるおそれがあるときは、当該集計結果に係る温室効果ガス算定排出量については、これに代えて、これを主務省令で定めるところにより合計した量を通知するものとする。
(報告事項の記録等)
第二十一条の五 環境大臣及び経済産業大臣は、前条第一項の規定により通知された事項について、環境省令・経済産業省令で定めるところにより電子計算機に備えられたファイルに記録するものとする。
2 環境大臣及び経済産業大臣は、前項の規定による記録をしたときは、環境省令・経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、同項のファイルに記録された事項(以下「ファイル記録事項」という。)のうち事業所管大臣が所管する事業を行う特定排出者に係るものを当該事業所管大臣に通知するものとする。
3 環境大臣及び経済産業大臣は、環境省令・経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、前条第四項の規定により通知された事項を集計するものとする。この場合において、環境大臣及び経済産業大臣は、当該集計の用に供するため、関係事業所管大臣に対し、第二十一条の三第三項の決定に係る特定排出者の権利利益の保護に支障がないことを確認した上で、前条第三項の規定により集計した結果に係る温室効果ガス算定排出量を主務省令で定めるところにより合計した量を通知するよう求めることができる。
4 環境大臣及び経済産業大臣は、遅滞なく、前項の規定により集計した結果を事業所管大臣に通知するとともに、公表するものとする。
(開示請求権)
第二十一条の六 何人も、前条第四項の規定による公表があったときは、当該公表があった日以後、主務大臣に対し、当該公表に係るファイル記録事項であって当該主務大臣が保有するものの開示の請求を行うことができる。
2 前項の請求(以下「開示請求」という。)は、次の事項を明らかにして行わなければならない。
一 開示請求をする者の氏名又は名称及び住所又は居所並びに法人その他の団体にあっては代表者の氏名
二 開示請求に係る事業所又は特定排出者の名称、所在地その他のこれらを特定するに足りる事項
(開示義務)
第二十一条の七 主務大臣は、開示請求があったときは、当該開示請求をした者に対し、ファイル記録事項のうち、当該開示請求に係る事項を速やかに開示しなければならない。
(情報の提供等)
第二十一条の八 特定排出者は、主務省令で定めるところにより、第二十一条の二第一項の規定による報告に添えて、第二十一条の五第四項の規定により公表され、又は前条の規定により開示される情報に対する理解の増進に資するため、事業所管大臣に対し、当該報告に係る温室効果ガス算定排出量の増減の状況に関する情報その他の情報を提供することができる。
2 事業所管大臣は、前項の規定により提供された情報を環境大臣及び経済産業大臣に通知するものとする。
3 環境大臣及び経済産業大臣は、前項の規定により通知された情報について、環境省令・経済産業省令で定めるところにより電子計算機に備えられたファイルに記録するものとする。
4 環境大臣及び経済産業大臣は、前項の規定による記録をしたときは、環境省令・経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、同項のファイル記録事項のうち事業所管大臣が所管する事業を行う特定排出者に係るものを当該事業所管大臣に通知するものとする。
5 環境大臣及び経済産業大臣は、遅滞なく、第二項の規定により通知された情報について、環境省令・経済産業省令で定めるところにより、事業所管大臣に通知するとともに、公表するものとする。
6 前二条の規定は、前項の規定による公表があった場合に準用する。
(技術的助言等)
第二十一条の九 主務大臣は、温室効果ガス算定排出量の算定の適正な実施の確保又は自主的な温室効果ガスの排出の抑制等の促進に資するため、特定排出者に対し必要な技術的助言、情報の提供その他の援助を行うものとする。
(エネルギーの使用の合理化に関する法律との関係)
第二十一条の十 特定排出者から、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和五十四年法律第四十九号)第十一条第一項(同法第十二条の三第一項において準用する場合を含む。)の規定による報告があったときは、第二十一条の二から前条まで、第三十条の三及び第三十一条の二の規定の適用については、当該報告のうち二酸化炭素の排出量に係る事項に関する部分は、エネルギー(同法第二条第一項に規定するエネルギーをいう。)の使用に伴って発生する二酸化炭素の排出量についての第二十一条の二第一項の規定による報告とみなす。この場合において、同項中「当該事業所に係る事業を所管する大臣(以下「事業所管大臣」という。)」とあり、第二十一条の三第一項、第三項、第四項及び第六項、第二十一条の四第一項、第三項及び第四項、第二十一条の五第四項、第二十一条の八第一項、第二項及び第五項、第三十条の三第一項及び第二項並びに第三十一条の二第一項中「事業所管大臣」とあり、第二十一条の五第二項及び第二十一条の八第四項中「当該事業所管大臣」とあり、並びに第二十一条の五第三項中「関係事業所管大臣」とあるのは「エネルギーの使用の合理化に関する法律第十一条第一項(同法第十二条の三第一項において準用する場合を含む。)に規定する主務大臣」とするほか、第二十一条の二から前条まで、第三十条の三及び第三十一条の二の規定の適用に関し必要な技術的読替えは、政令で定める。
第三十条の次に次の二条を加える。
(手数料)
第三十条の二 ファイル記録事項の開示を受ける者は、政令で定めるところにより、実費を勘案して政令で定める額の開示の実施に係る手数料を納付しなければならない。
(磁気ディスクによる報告等)
第三十条の三 事業所管大臣は、第二十一条の二第一項の規定による報告、第二十一条の三第一項の請求又は第二十一条の八第一項の規定による提供については、政令で定めるところにより、磁気ディスク(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物を含む。以下同じ。)により行わせることができる。
2 事業所管大臣は、第二十一条の三第三項又は第四項の規定による通知については、政令で定めるところにより、磁気ディスクにより行うことができる。
3 主務大臣は、第二十一条の六第一項(第二十一条の八第六項において準用する場合を含む。)の請求又は第二十一条の七(第二十一条の八第六項において準用する場合を含む。)の規定による開示については、政令で定めるところにより、磁気ディスクにより行わせ、又は行うことができる。
第三十一条の次に次の一条を加える。
(主務大臣等)
第三十一条の二 この法律における主務大臣は、環境大臣、経済産業大臣及び事業所管大臣とする。
2 この法律における主務省令は、環境大臣、経済産業大臣及び事業所管大臣の発する命令とする。
3 この法律による主務大臣の権限は、主務省令で定めるところにより、地方支分部局の長に委任することができる。
第三十二条の見出しを削り、同条の前に見出しとして「(罰則)」を付し、同条の次に次の一条を加える。
第三十三条 第二十一条の二第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。
附則第三条中「平成十七年」を「平成二十年」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十八年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律による改正後の地球温暖化対策の推進に関する法律第二十一条の二第一項の規定は、平成十九年度以降に行う同項に規定する報告について適用する。
(エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部改正)
第三条 エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を次のように改正する。
第十一条中「燃料等の使用の効率」の下に「及び燃料等の使用に伴つて発生する二酸化炭素の排出量」を、「電気の使用の効率」の下に「及び電気の使用に係る二酸化炭素の排出量」を加え、同条に次の一項を加える。
2 経済産業大臣は、前項の経済産業省令(燃料等の使用に伴つて発生する二酸化炭素の排出量に係る事項及び電気の使用に係る二酸化炭素の排出量に係る事項に限る。)を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、環境大臣に協議しなければならない。
第二十九条第三号中「第十一条」を「第十一条第一項」に改める。
(内閣総理・経済産業・環境大臣署名)