法律第五十四号(平三〇・六・一五)
◎消費者契約法の一部を改正する法律
消費者契約法(平成十二年法律第六十一号)の一部を次のように改正する。
第三条第一項を次のように改める。
事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
一 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。
二 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、個々の消費者の知識及び経験を考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。
第四条第二項中「故意に」を「故意又は重大な過失によって」に改め、同条第三項に次の六号を加える。
三 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること。
イ 進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項
ロ 容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項
四 当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
五 当該消費者が、加齢又は心身の故障によりその判断力が著しく低下していることから、生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
六 当該消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。
七 当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該消費者契約を締結したならば負うこととなる義務の内容の全部又は一部を実施し、その実施前の原状の回復を著しく困難にすること。
八 前号に掲げるもののほか、当該消費者が当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をする前に、当該事業者が調査、情報の提供、物品の調達その他の当該消費者契約の締結を目指した事業活動を実施した場合において、当該事業活動が当該消費者からの特別の求めに応じたものであったことその他の取引上の社会通念に照らして正当な理由がある場合でないのに、当該事業活動が当該消費者のために特に実施したものである旨及び当該事業活動の実施により生じた損失の補償を請求する旨を告げること。
第八条の見出し中「条項」を「条項等」に改め、同条第一項第一号中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する」に改め、同項第二号中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する」に改め、同項第三号中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する」に改め、同項第四号中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の限度を決定する権限を付与する」に改め、同項第五号中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する」に改める。
第八条の二の見出し中「条項」を「条項等」に改め、同条各号中「放棄させる」を「放棄させ、又は当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(事業者に対し後見開始の審判等による解除権を付与する条項の無効)
第八条の三 事業者に対し、消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する消費者契約(消費者が事業者に対し物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものを提供することとされているものを除く。)の条項は、無効とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。ただし、附則第三条及び第五条の規定は、公布の日から施行する。
(経過措置)
第二条 この法律の施行前にされた消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示については、この法律による改正後の消費者契約法(以下「新法」という。)第四条第二項(新法第五条第一項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 新法第四条第三項第三号から第八号まで(これらの規定を新法第五条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、この法律の施行前にされた消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示については、適用しない。
3 この法律の施行前に締結された消費者契約の条項については、新法第八条第一項及び第八条の二の規定にかかわらず、なお従前の例による。
4 新法第八条の三の規定は、この法律の施行前に締結された消費者契約の条項については、適用しない。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条 政府は、消費者の被害の状況、消費者の利益の擁護を図るための諸施策の実施の状況その他社会経済情勢の変化を勘案しつつ、新法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第五条 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成二十九年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
第九十八条のうち、消費者契約法第八条第二項の改正規定中「免除する」を「免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与する」に改め、同法第八条の二の改正規定中「条項の」を「条項等の」に、「放棄させる消費者契約」を「放棄させ、又は当該事業者にその解除権の有無を決定する権限を付与する消費者契約」に改める。
(内閣総理・法務大臣署名)