法律第五十九号(令三・六・九)
◎瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正する法律
瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十二条の三」を「第十二条の二」に、「第十二条の四−第十二条の六」を「第十二条の三−第十二条の五」に、「第三節 自然海浜の保全等(第十二条の七−第十三条)」を
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第三節 生物の多様性及び生産性の確保のための栄養塩類の管理(第十二条の六−第十二条の十二) |
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第四節 自然海浜の保全等(第十二条の十三−第十三条) |
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に、「第四節」を「第五節」に改める。
第一条中「防止」の下に「、生物の多様性及び生産性の確保のための栄養塩類の管理」を加える。
第二条の二第一項中「鑑み」の下に「、気候変動による水温の上昇その他の環境への影響が瀬戸内海においても生じていること及びこれが長期にわたり継続するおそれがあることも踏まえ」を加える。
第三条第一項及び第四条第一項中「この章において」を削る。
第十二条の三を削る。
第十二条の四第一項中「燐(りん)その他の」を「富栄養化による生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものとして」に改め、第三章第二節中同条を第十二条の三とし、第十二条の五を第十二条の四とし、第十二条の六を第十二条の五とする。
第十六条の二中「又は海底に存する」を「その海底に存し、海岸に漂着し、又は海岸に散乱している」に、「漂流ごみ等の除去」を「国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連携の下に、漂流ごみ等の除去、発生の抑制」に改める。
第三章第四節を同章第五節とする。
第十二条の八を第十二条の十四とする。
第十二条の七第一号中「水際線付近」の下に「又はその水深がおおむね二十メートルを超えない海域」を、「自然」の下に「(以下この号において「砂浜等」という。)」を、「もの」の下に「(損なわれた砂浜等が再生され、又は砂浜等が新たに創出されたものを含む。)」を加え、同条を第十二条の十三とする。
第三章第三節を同章第四節とし、同章第二節の次に次の一節を加える。
第三節 生物の多様性及び生産性の確保のための栄養塩類の管理
(栄養塩類管理計画の策定)
第十二条の六 関係府県知事は、単独で又は共同して、次に掲げる区域について、栄養塩類(窒素及びその化合物並びに燐(りん)及びその化合物をいう。以下同じ。)を適切に増加させるための海域における栄養塩類の投入、工場又は事業場における汚水等の処理の方法の変更その他の措置(以下「栄養塩類増加措置」という。)の計画的な実施に関する計画(以下「栄養塩類管理計画」という。)を定めることができる。
一 前二節に規定する措置のみによつては生物の多様性及び生産性の確保が困難であり、栄養塩類増加措置の実施が必要と認められる瀬戸内海の海域(以下「対象海域」という。)
二 対象海域における潮流その他の自然的条件及び排出水の排出の状況に照らして当該対象海域と一体として栄養塩類増加措置を実施することが相当と認められる瀬戸内海の海域及び陸域(当該府県の区域内に限る。)
2 栄養塩類管理計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 栄養塩類管理計画の区域(以下「計画区域」という。)
二 対象海域において栄養塩類増加措置の対象とする物質及び当該物質に係る水質の目標値
三 栄養塩類増加措置を実施する者の氏名又は名称並びにその実施場所(工場又は事業場にあつては、その名称及び所在地)及び実施方法
四 第二号の目標値に関する測定の地点、方法及び頻度
五 前号に規定する測定の結果に基づく対象海域の水質の状況についての調査、分析及び評価の方法
六 前各号に掲げるもののほか、栄養塩類増加措置の計画的な実施に関し必要な事項
3 栄養塩類管理計画は、基本計画及び当該府県知事が定めた府県計画に即するとともに、他の法律の規定による環境の保全に関する計画との調和が保たれたものでなければならない。
4 第二項第二号の目標値は、環境基本法(平成五年法律第九十一号)第十六条第一項の規定による水質の汚濁に係る環境上の条件についての基準の範囲内において定めなければならない。
5 関係府県知事は、栄養塩類管理計画を定めようとするときは、栄養塩類増加措置が環境に及ぼす影響について、調査、予測及び評価を行うものとする。
6 関係府県知事は、栄養塩類管理計画を定めようとするときは、あらかじめ、計画区域内において特定施設を設置する工場又は事業場の設置者、住民その他の関係者の意見を聴くとともに、当該栄養塩類管理計画に記載しようとする栄養塩類増加措置を実施する者に協議しなければならない。
7 関係府県知事は、栄養塩類管理計画を定めようとするときは、あらかじめ、計画区域における栄養塩類増加措置の実施に関し環境保全上関係がある他の関係府県の知事及び市町村の長の意見を聴くとともに、環境大臣に協議しなければならない。
8 環境大臣は、前項の規定による協議を受けたときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
9 関係府県知事は、栄養塩類管理計画を定めたときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を公告するとともに、環境大臣に報告し、かつ、第七項に規定する他の関係府県の知事及び市町村の長に通知しなければならない。
(栄養塩類管理計画の変更)
第十二条の七 栄養塩類管理計画を定めた府県知事は、定期的に、計画区域における公共用水域の水質の状況について、調査、分析及び評価を行い、必要があると認めるときは、当該栄養塩類管理計画を変更するものとする。
2 栄養塩類管理計画を定めた府県知事は、当該栄養塩類管理計画を変更しようとするときは、当該栄養塩類管理計画に記載された栄養塩類増加措置を実施する者に協議しなければならない。
3 前条第三項から第九項までの規定は、栄養塩類管理計画の変更(同条第五項から第八項までの規定については、環境省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。
(特定施設の構造等の変更の特例)
第十二条の八 栄養塩類管理計画において栄養塩類増加措置の実施場所として定められた工場又は事業場(以下この条及び次条第一項において「計画事業場」という。)から公共用水域に水を排出する者(第五条第一項の許可を受けた者に限る。)が、当該計画事業場に係る同条第二項第四号から第七号までに掲げる事項の変更について第八条第一項の規定による許可を受けようとする場合において、当該変更が当該栄養塩類管理計画に記載されたものであるときは、同条第三項において準用する第五条第三項から第七項までの規定は、適用しない。
(水質汚濁防止法の特例)
第十二条の九 指定地域内計画事業場(水質汚濁防止法第四条の五第一項に規定する指定地域内事業場である計画事業場をいう。次項において同じ。)についての同法第八条の二、第十二条の二及び第十三条第三項の規定の適用については、同法第八条の二中「総量規制基準」とあるのは、「総量規制基準(指定地域内計画事業場(瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)第十二条の九第一項に規定する指定地域内計画事業場をいう。)が定められた同法第十二条の六第一項に規定する栄養塩類管理計画に定められた同条第二項第二号に規定する物質による汚濁負荷量に係る部分を除く。第十二条の二及び第十三条第三項において同じ。)」とする。
2 栄養塩類管理計画の変更により指定地域内計画事業場でなくなつた水質汚濁防止法第四条の五第一項に規定する指定地域内事業場についての同法第十二条の二及び第十三条第三項の規定の適用については、当該指定地域内事業場が指定地域内計画事業場でなくなつた日から六月間は、同法第十二条の二中「指定地域内事業場の」とあるのは「指定地域内事業場(瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)第十二条の六第一項に規定する栄養塩類管理計画の変更により同法第十二条の九第一項に規定する指定地域内計画事業場でなくなつたものに限る。以下この条及び第十三条第三項において同じ。)の」と、「総量規制基準」とあるのは「総量規制基準(当該変更前の栄養塩類管理計画に定められていた同法第十二条の六第二項第二号に規定する物質による汚濁負荷量に係る部分を除く。第十三条第三項において同じ。)」とする。
(関係府県知事等の協力)
第十二条の十 関係府県知事は、栄養塩類管理計画の策定及び実施に関して必要があると認めるときは、他の関係府県の知事又は市町村の長に対し、必要な協力を求めることができる。
(関係者の協力)
第十二条の十一 栄養塩類管理計画を定めた府県知事及び当該栄養塩類管理計画に記載された栄養塩類増加措置を実施する者は、当該栄養塩類管理計画の実施に関し、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
(科学的知見の充実のための措置)
第十二条の十二 国は、瀬戸内海における生物の多様性及び生産性の確保のための栄養塩類の管理に関する科学的知見の充実を図るため、これに関する情報の収集、整理及び分析並びに研究の推進に努めるものとする。
第二十四条中「一に」を「いずれかに」に改め、「該当する」の下に「場合には、当該違反行為をした」を加え、同条第一号及び第二号中「者」を「とき。」に改める。
第二十五条中「一に」を「いずれかに」に改め、「該当する」の下に「場合には、当該違反行為をした」を加え、同条第一号中「者」を「とき。」に改め、同条第二号中「第十二条の六第一項」を「第十二条の五第一項」に、「者」を「とき。」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次項の規定は、公布の日から施行する。
(政令への委任)
2 この法律の施行に伴い必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
3 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(環境・内閣総理大臣署名)