法律第七十九号(令三・六・一八)
◎災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律
目次
第一章 総則(第一条−第三条)
第二章 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する基本方針(第四条・第五条)
第三章 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画(第六条)
第四章 船舶活用医療推進本部(第七条−第十五条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、海に囲まれた我が国においては災害が発生した時又は感染症が発生し若しくはまん延し、若しくはそのおそれがある時(以下「災害時等」という。)における医療を確保する上で船舶を活用した医療の提供が効果的であることに鑑み、災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その他の基本となる事項を定めるとともに、船舶活用医療推進本部を設置することにより、災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備を総合的かつ集中的に推進することを目的とする。
(基本理念)
第二条 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進は、災害が発生し、又は感染症が発生し若しくはまん延し、若しくはそのおそれがある地域(第四条第二号において「災害が発生した地域等」という。)において必要とされる医療を船舶を活用して的確かつ迅速に提供することにより、当該地域にある医療施設の機能を補完し、国民の生命及び身体を災害又は感染症から保護することに資することを旨として、行われなければならない。
(国の責務)
第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
第二章 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する基本方針
(基本方針)
第四条 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備は、次に掲げる基本方針に基づき、推進されるものとする。
一 災害時等における船舶を活用して提供される医療と陸上の医療施設において提供される医療との適切な役割分担及び相互の連携協力を確保すること。
二 災害が発生した地域等において必要とされる医療の的確かつ迅速な提供が可能となるよう、災害時等における医療の提供の用に主として供するための船舶を保有すること(独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第十三条において同じ。)その他の国以外の者により保有することを含む。)。
三 災害時等における船舶を活用した医療の提供に必要な官民の医療関係者、船舶職員その他の人員を確保すること。
四 災害時等における船舶を活用した医療の提供のための教育訓練等を実施することにより人材を育成すること。
五 災害時等における船舶を活用した医療の提供に必要な医薬品、医療機器その他の物資を確保すること。
六 災害時等以外において、離島等における巡回診療、国際緊急援助活動等に第二号の船舶を効果的に活用すること。
七 民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。
八 前各号に掲げるもののほか、災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関し必要と認められる施策を実施すること。
(法制上の措置等)
第五条 政府は、前条に定める基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
第三章 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画
第六条 政府は、政府が災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関し講ずべき措置について必要な計画(以下「整備推進計画」という。)を策定しなければならない。
2 内閣総理大臣は、整備推進計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
3 政府は、整備推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
4 前二項の規定は、整備推進計画の変更について準用する。
第四章 船舶活用医療推進本部
(設置)
第七条 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進を総合的かつ集中的に行うため、内閣に、船舶活用医療推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務)
第八条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する総合調整に関すること。
二 整備推進計画の案の作成及び実施の推進に関すること。
三 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進を総合的かつ集中的に行うために必要な法律案及び政令案の立案に関すること。
四 災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する関係機関及び関係団体との連絡調整に関すること。
2 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(組織)
第九条 本部は、船舶活用医療推進本部長、船舶活用医療推進副本部長及び船舶活用医療推進本部員をもって組織する。
(船舶活用医療推進本部長)
第十条 本部の長は、船舶活用医療推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
(船舶活用医療推進副本部長)
第十一条 本部に、船舶活用医療推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(船舶活用医療推進本部員)
第十二条 本部に、船舶活用医療推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
(資料の提出その他の協力)
第十三条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体、独立行政法人、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)及び国立大学法人等(国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)第二条第五項に規定する国立大学法人等をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第八号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(事務局)
第十四条 本部の事務を処理させるため、本部に、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3 事務局長は、本部長の命を受けて、局務を掌理する。
(政令への委任)
第十五条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
2 本部については、この法律の施行後五年を目途として総合的な検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
(内閣総理・厚生労働・国土交通・防衛大臣署名)