法律第八十三号(令三・六・二三)
◎宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、宇宙基本法(平成二十年法律第四十三号)の基本理念にのっとり、宇宙資源の探査及び開発に関し、同法第三十五条第一項に基づき宇宙活動に係る規制等について定める人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成二十八年法律第七十六号。以下「宇宙活動法」という。)の規定による許可の特例を設けるとともに、宇宙資源の所有権の取得その他必要な事項を定めることにより、宇宙活動法第二条第一号に規定する宇宙の開発及び利用に関する諸条約(第三条第二項第一号において単に「宇宙の開発及び利用に関する諸条約」という。)の的確かつ円滑な実施を図りつつ、民間事業者による宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を促進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 宇宙資源 月その他の天体を含む宇宙空間に存在する水、鉱物その他の天然資源をいう。
二 宇宙資源の探査及び開発 次のいずれかに掲げる活動(専ら科学的調査として又は科学的調査のために行うものを除く。)をいう。
イ 宇宙資源の採掘、採取その他これに類するものとして内閣府令で定める活動(ロ及び第五条において「採掘等」という。)に資する宇宙資源の存在状況の調査
ロ 宇宙資源の採掘等及びこれに付随する加工、保管その他内閣府令で定める行為
(人工衛星の管理に係る許可の特例)
第三条 宇宙資源の探査及び開発を人工衛星(宇宙活動法第二条第二号に規定する人工衛星をいう。第一号及び第四項において同じ。)の利用の目的として行う人工衛星の管理(同条第七号に規定する人工衛星の管理をいう。)に係る宇宙活動法第二十条第一項の許可(以下この条において「宇宙資源の探査及び開発の許可」という。)を受けようとする者は、宇宙活動法第二十条第二項各号に掲げる事項のほか、内閣府令で定めるところにより、同項の申請書に次に掲げる事項を定めた計画(以下「事業活動計画」という。)を併せて記載しなければならない。
一 当該宇宙資源の探査及び開発の許可の申請に係る人工衛星を利用して行おうとする宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動(以下この項において単に「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動」という。)の目的
二 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の期間
三 第一号に規定する宇宙資源の探査及び開発を行おうとする場所
四 第一号に規定する宇宙資源の探査及び開発の方法
五 前三号に掲げるもののほか、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の内容
六 その他内閣府令で定める事項
2 宇宙資源の探査及び開発の許可の申請については、内閣総理大臣は、当該申請が、宇宙活動法第二十二条各号に掲げるもののほか、次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、当該宇宙資源の探査及び開発の許可をしてはならない。
一 事業活動計画が、宇宙基本法の基本理念に則したものであり、かつ、宇宙の開発及び利用に関する諸条約の的確かつ円滑な実施及び公共の安全の確保に支障を及ぼすおそれがないものであること。
二 申請者(個人にあっては、宇宙活動法第二十条第二項第八号の死亡時代理人を含む。)が事業活動計画を実行する十分な能力を有すること。
3 内閣総理大臣は、宇宙資源の探査及び開発の許可をしようとするときは、当該宇宙資源の探査及び開発の許可の申請が前項各号に適合していると認めることについて、あらかじめ、経済産業大臣に協議しなければならない。
4 第一項及び宇宙活動法第二十条第二項の規定は同条第一項の許可に係る人工衛星の利用の目的を変更して宇宙資源の探査及び開発をその利用の目的とするための宇宙活動法第二十三条第一項の許可を受けようとする者について、前二項の規定は当該許可をしようとするときについて、それぞれ準用する。
5 宇宙資源の探査及び開発の許可又は前項に規定する宇宙活動法第二十三条第一項の許可(次条及び第五条において「宇宙資源の探査及び開発の許可等」という。)を受けた者に対する宇宙活動法の規定の適用については、宇宙活動法第二十三条第一項中「事項」とあるのは「事項又は宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(令和三年法律第▼▼▼号)第三条第一項に規定する事業活動計画(以下単に「事業活動計画」という。)」と、宇宙活動法第二十四条中「管理計画」とあるのは「管理計画及び事業活動計画」と、宇宙活動法第二十六条第一項、第三項及び第四項並びに第三十一条第一項中「この法律」とあるのは「この法律及び宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」と、宇宙活動法第二十六条第五項中「の規定」とあるのは「並びに宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律第三条第二項(第二号に係る部分に限る。)の規定」と、第六十条第五号中「事項」とあるのは「事項又は事業活動計画」とするほか、必要な技術的読替えは、内閣府令で定める。
(公表)
第四条 内閣総理大臣は、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を国際的協調の下で促進するとともに、宇宙資源の探査及び開発に関する紛争の防止に資するため、宇宙資源の探査及び開発の許可等をしたときは、その旨及び次に掲げる事項(これらの事項に変更があった場合には、変更後の当該事項)をインターネットの利用その他適切な方法により、遅滞なく、公表するものとする。ただし、公表することにより、当該宇宙資源の探査及び開発の許可等を受けて宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を行う者の当該事業活動に係る利益が不当に害されるおそれがある場合として内閣府令で定める場合は、その全部又は一部を公表しないことができる。
一 当該宇宙資源の探査及び開発の許可等を受けた者の氏名又は名称
二 前条第一項各号(第六号を除く。)に掲げる事項
三 その他内閣府令で定める事項
(宇宙資源の所有権の取得)
第五条 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を行う者が宇宙資源の探査及び開発の許可等に係る事業活動計画の定めるところに従って採掘等をした宇宙資源については、当該採掘等をした者が所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する。
(国際約束の誠実な履行等)
第六条 この法律の施行に当たっては、我が国が締結した条約その他の国際約束の誠実な履行を妨げることがないよう留意しなければならない。
2 この法律のいかなる規定も、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用の自由を行使する他国の利益を不当に害するものではない。
(国際的な制度の構築及び連携の確保等)
第七条 国は、国際機関その他の国際的な枠組みへの協力を通じて、各国政府と共同して国際的に整合のとれた宇宙資源の探査及び開発に係る制度の構築に努めるものとする。
2 国は、民間事業者による宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動に関し、国際間における情報の共有の推進、国際的な調整を図るための措置その他の国際的な連携の確保のために必要な施策を講ずるものとする。
3 国は、前二項の施策を講ずるに当たっては、我が国の宇宙資源の探査及び開発に関係する産業の健全な発展及び国際競争力の強化について適切な配慮をするものとする。
(技術的助言等)
第八条 国は、宇宙基本法第十六条に規定する民間事業者による宇宙開発利用の促進に関する施策の一環として、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動を行う民間事業者に対し、当該事業活動に関する技術的助言、情報の提供その他の援助を行うものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。ただし、附則第三条及び第四条の規定は、公布の日から施行する。
(経過措置)
第二条 第三条及び第四条の規定は、この法律の施行後に宇宙活動法第二十条第一項又は第二十三条第一項の許可の申請があった場合について適用し、この法律の施行前に宇宙活動法第二十条第一項又は第二十三条第一項の許可の申請があった場合については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行の状況、科学技術の進展の状況、第七条第一項に規定する制度の構築に向けた取組の状況等を勘案して、民間事業者による宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動に関する法制度の在り方について抜本的な見直しを含め検討を行い、その結果に基づき、法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。
(人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律の一部改正)
第五条 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律の一部を次のように改正する。
第二十条第一項中「所在する人工衛星管理設備」を「所在し、又は日本国籍を有する船舶若しくは航空機若しくは我が国が管轄権を有する人工衛星として内閣府令で定めるものに搭載された人工衛星管理設備(以下「国内等の人工衛星管理設備」という。)」に改め、同条第二項第二号中「場所」の下に「(船舶又は航空機に搭載された人工衛星管理設備にあっては当該船舶又は航空機の名称又は登録記号、人工衛星に搭載された人工衛星管理設備にあっては当該人工衛星の名称その他当該人工衛星を特定するものとして内閣府令で定める事項)」を加える。
第二十六条第一項及び第二項並びに第五十三条中「国内に所在する人工衛星管理設備」を「国内等の人工衛星管理設備」に改める。
(内閣総理大臣署名)