法律第百一号(平一二・五・三一)
◎金融商品の販売等に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、金融商品販売業者等が金融商品の販売等に際し顧客に対して説明すべき事項及び金融商品販売業者等が顧客に対して当該事項について説明をしなかったことにより当該顧客に損害が生じた場合における金融商品販売業者等の損害賠償の責任並びに金融商品販売業者等が行う金融商品の販売等に係る勧誘の適正の確保のための措置について定めることにより、顧客の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融商品の販売」とは、次に掲げる行為をいう。
一 預金、貯金、定期積金又は銀行法(昭和五十六年法律第五十九号)第二条第四項に規定する掛金の受入れを内容とする契約(郵便貯金に係るものを除く。)の預金者、貯金者、定期積金の積金者又は同項に規定する掛金の掛金者との締結
二 無尽業法(昭和六年法律第四十二号)第一条に規定する無尽に係る契約に基づく掛金(以下この号において「無尽掛金」という。)の受入れを内容とする契約の無尽掛金の掛金者との締結
三 信託財産の運用方法が特定されていないことその他の政令で定める要件に該当する金銭の信託に係る信託契約(当該信託契約に係る受益権が特定権利(証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項に規定する有価証券に表示される権利又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう。第六号イ及びハからホまでにおいて同じ。)であるものを除く。)の委託者との締結
四 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約(以下この号において「保険契約」という。)又は保険若しくは共済に係る契約で保険契約に類するものとして政令で定めるものの保険契約者又はこれに類する者との締結
五 有価証券(証券取引法第二条第一項に規定する有価証券又は同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利をいう。)を取得させる行為(代理又は媒介に該当するもの並びに同条第十七項に規定する有価証券先物取引(第十号において「有価証券先物取引」という。)及び同条第二十一項に規定する有価証券先渡取引(第十一号において「有価証券先渡取引」という。)に該当するものを除く。)
六 次に掲げるものを取得させる行為(代理又は媒介に該当するものを除く。)
イ 信託の受益権(特定権利であるもの並びにハ及びニに掲げるものに該当するものを除く。)
ロ 抵当証券法(昭和六年法律第十五号)第一条第一項に規定する抵当証券
ハ 商品投資に係る事業の規制に関する法律(平成三年法律第六十六号)第二条第三項に規定する商品投資受益権(特定権利であるものを除く。)
ニ 特定債権等に係る事業の規制に関する法律(平成四年法律第七十七号)第二条第六項に規定する小口債権(特定権利であるものを除く。)
ホ 譲渡性預金証書をもって表示される金銭債権(特定権利であるものを除く。)
七 商品投資に係る事業の規制に関する法律第二条第二項に規定する商品投資契約の締結
八 特定債権等に係る事業の規制に関する法律第二条第六項第二号に規定する特定債権等組合契約の締結
九 不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(金銭をもって出資の目的とし、かつ、契約の終了の場合における残余財産の分割若しくは出資の返還が金銭により行われることを内容とするもの又はこれらに類する事項として政令で定めるものを内容とするものに限る。)の締結
十 有価証券先物取引、証券取引法第二条第十八項に規定する有価証券指数等先物取引、同条第十九項に規定する有価証券オプション取引、同条第二十項に規定する外国市場証券先物取引若しくは金融先物取引法(昭和六十三年法律第七十七号)第二条第九項に規定する金融先物取引等又はこれらの取引の取次ぎ
十一 有価証券先渡取引、証券取引法第二条第二十二項に規定する有価証券店頭指数等先渡取引、同条第二十三項に規定する有価証券店頭オプション取引、同条第二十四項に規定する有価証券店頭指数等スワップ取引若しくは金融先物取引法第二条第五項に規定する店頭金融先物取引又はこれらの取引の取次ぎ
十二 金利、通貨の価格その他の指標の数値としてあらかじめ当事者間で約定された数値と将来の一定の時期における現実の当該指標の数値の差に基づいて算出される金銭の授受を約する取引(前二号に掲げるものに該当するものを除く。)であって政令で定めるもの又は当該取引の取次ぎ
十三 前各号に掲げるものに類するものとして政令で定める行為
2 この法律において「金融商品の販売等」とは、金融商品の販売又はその代理若しくは媒介(顧客のために行われるものを含む。)をいう。
3 この法律において「金融商品販売業者等」とは、金融商品の販売等を業として行う者をいう。
4 この法律において「顧客」とは、金融商品の販売の相手方をいう。
(金融商品販売業者等の説明義務)
第三条 金融商品販売業者等は、金融商品の販売等を業として行おうとするときは、当該金融商品の販売等に係る金融商品の販売が行われるまでの間に、顧客に対し、次に掲げる事項(以下「重要事項」という。)について説明をしなければならない。
一 当該金融商品の販売について金利、通貨の価格、有価証券市場における相場その他の指標に係る変動を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨及び当該指標
二 当該金融商品の販売について当該金融商品の販売を行う者その他の者の業務又は財産の状況の変化を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨及び当該者
三 前二号に掲げるもののほか、当該金融商品の販売について顧客の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものとして政令で定める事由を直接の原因として元本欠損が生ずるおそれがあるときは、その旨及び当該事由
四 当該金融商品の販売の対象である権利を行使することができる期間の制限又は当該金融商品の販売に係る契約の解除をすることができる期間の制限があるときは、その旨
2 前項第一号から第三号までの「元本欠損が生ずるおそれ」とは、当該金融商品の販売が行われることにより顧客の支払うこととなる金銭の合計額(当該金融商品の販売が行われることにより当該顧客の譲渡することとなる金銭以外の物又は権利であって政令で定めるもの(以下この項及び第五条第二項において「金銭相当物」という。)がある場合にあっては、当該合計額に当該金銭相当物の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の合計額を加えた額)が、当該金融商品の販売により当該顧客(当該金融商品の販売により当該顧客の定めるところにより金銭又は金銭以外の物若しくは権利を取得することとなる者がある場合にあっては、当該者を含む。以下この項において「顧客等」という。)の取得することとなる金銭の合計額(当該金融商品の販売により当該顧客等の取得することとなる金銭以外の物又は権利がある場合にあっては、当該合計額に当該金銭以外の物又は権利の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の合計額を加えた額)を上回ることとなるおそれがあることをいう。
3 一の金融商品の販売について二以上の金融商品販売業者等が第一項の規定により顧客に対し重要事項について説明をしなければならない場合において、いずれか一の金融商品販売業者等が当該重要事項について説明をしたときは、他の金融商品販売業者等は、同項の規定にかかわらず、当該重要事項について説明をすることを要しない。ただし、当該他の金融商品販売業者等が政令で定める者である場合は、この限りでない。
4 第一項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 顧客が、金融商品の販売等に関する専門的知識及び経験を有する者として政令で定める者(第八条第一項において「特定顧客」という。)である場合
二 重要事項について説明を要しない旨の顧客の意思の表明があった場合
(金融商品販売業者等の損害賠償責任)
第四条 金融商品販売業者等は、顧客に対し前条の規定により重要事項について説明をしなければならない場合において、当該重要事項について説明をしなかったときは、これによって生じた当該顧客の損害を賠償する責めに任ずる。
(損害の額の推定)
第五条 顧客が前条の規定により損害の賠償を請求する場合には、元本欠損額は、金融商品販売業者等が重要事項について説明をしなかったことによって当該顧客に生じた損害の額と推定する。
2 前項の「元本欠損額」とは、当該金融商品の販売が行われたことにより顧客の支払った金銭及び支払うべき金銭の合計額(当該金融商品の販売が行われたことにより当該顧客の譲渡した金銭相当物又は譲渡すべき金銭相当物がある場合にあっては、当該合計額にこれらの金銭相当物の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の合計額を加えた額)から、当該金融商品の販売により当該顧客(当該金融商品の販売により当該顧客の定めるところにより金銭又は金銭以外の物若しくは権利を取得することとなった者がある場合にあっては、当該者を含む。以下この項において「顧客等」という。)の取得した金銭及び取得すべき金銭の合計額(当該金融商品の販売により当該顧客等の取得した金銭以外の物若しくは権利又は取得すべき金銭以外の物若しくは権利がある場合にあっては、当該合計額にこれらの金銭以外の物又は権利の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額)の合計額を加えた額)と当該金融商品の販売により当該顧客等の取得した金銭以外の物又は権利であって当該顧客等が売却その他の処分をしたものの処分価額の合計額とを合算した額を控除した金額をいう。
(民法の適用)
第六条 重要事項について説明をしなかったことによる金融商品販売業者等の損害賠償の責任については、この法律の規定によるほか、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による。
(勧誘の適正の確保)
第七条 金融商品販売業者等は、業として行う金融商品の販売等に係る勧誘をするに際し、その適正の確保に努めなければならない。
(勧誘方針の策定等)
第八条 金融商品販売業者等は、業として行う金融商品の販売等に係る勧誘をしょうとするときは、あらかじめ、当該勧誘に関する方針(以下「勧誘方針」という。)を定めなければならない。ただし、当該金融商品販売業者等が、国、地方公共団体その他勧誘の適正を欠くおそれがないと認められる者として政令で定める者である場合又は特定顧客のみを顧客とする金融商品販売業者等である場合は、この限りでない。
2 勧誘方針においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 勧誘の対象となる者の知識、経験及び財産の状況に照らし配慮すべき事項
二 勧誘の方法及び時間帯に関し勧誘の対象となる者に対し配慮すべき事項
三 前二号に掲げるもののほか、勧誘の適正の確保に関する事項
3 金融商品販売業者等は、第一項の規定により勧誘方針を定めたときは、政令で定める方法により、速やかに、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(過料)
第九条 前条第一項の規定に違反して勧誘方針を定めず、又は同条第三項の規定に違反してこれを公表しなかった金融商品販売業者等は、五十万円以下の過料に処する。
附 則
(施行期日等)
1 この法律は、平成十三年四月一日から施行し、この法律の施行後に金融商品販売業者等が業として行った金融商品の販売等について適用する。
(重要事項についての説明に関する経過措置)
2 この法律の施行後に業として行われる金融商品の販売等について、顧客に対し、この法律の施行前に重要事項に相当する事項について説明が行われているときは、金融商品販売業者等は、当該金融商品の販売等に係る重要事項について説明を行ったものとみなす。
(政令への委任)
3 前項に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(内閣総理・大蔵大臣署名)