衆議院

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第8号 平成29年3月7日(火曜日)

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平成二十九年三月七日(火曜日)

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  平成二十九年三月七日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 急速な少子高齢化が進展する中で、就業促進や雇用継続を通じた職業の安定を図り、誰もが安心して活躍できる環境の整備を進めることが我が国の重要な課題となっています。また、基本手当の給付日数を延長する等の暫定措置の期限が今年度末までとなっています。

 こうした状況を踏まえ、雇用保険の失業等給付の拡充、失業等給付に係る保険料率の暫定的な引き下げ、職業紹介事業等の適正な事業運営を確保するための措置の拡充、子育てと仕事が両立しやすい就業環境の整備等を行うこととし、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、雇用保険制度について、離職者の実情に応じた失業中のセーフティーネットの確保や労働者の職業能力の向上等に取り組むため、若い世代の基本手当の所定給付日数の拡充、教育訓練給付等の拡充を行うとともに、災害により離職した方等の給付日数の延長を可能にすることとしています。

 また、平成二十九年度から平成三十一年度までの間、暫定的に、失業等給付の保険料率の引き下げを行うとともに、失業等給付等の国庫負担について国庫が負担することとされている額の百分の十としています。

 第二に、職業紹介等に関する制度について、その機能強化と求人情報等の適正化を図るため、ハローワーク等が労働関係法令違反の求人者等からの求人を不受理とすることができる制度の強化、虚偽の求人申し込みに係る罰則や募集情報等提供事業に係る指導監督権限の創設を行うとともに、求人票等で明示した労働条件を変更しようとする場合等に、変更内容等の明示義務を課すこととしています。

 第三に、育児休業制度について、男女ともに働きながら子育てができる環境を整備するため、子が一歳六カ月に達するまで育児休業をしてもなお雇用の継続のために特に必要と認められる場合には、子が二歳に達するまで育児休業ができることとし、あわせて、育児休業給付の給付期間の延長を行うこととしています。

 最後に、この法律案は、一部の規定を除き、平成二十九年四月一日から施行することとしています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

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 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。郡和子君。

    〔郡和子君登壇〕

郡和子君 民進党の郡和子です。(拍手)

 冒頭、まず、北朝鮮の弾道ミサイル発射に強く抗議をいたします。

 明確な国連安保理決議違反であり、断じて看過できません。国際社会に対し、このような挑発行為を続ける北朝鮮に対して、断固抗議いたします。

 それでは、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部改正案について質問をいたします。

 その前に、国民の大切な財産である国有地を、安倍総理夫人が名誉校長を務める森友学園に対し、九割引きという、ディスカウントストアもびっくりの破格の安値で投げ売りした件について一言申し上げます。

 一連の経緯について、極めて不透明であったことはもはや国民周知の事実となりました。森友学園の籠池理事長夫妻が自民党の鴻池参議院議員に語ったというとおり、上から政治力で早く結論が得られるように工作しない限り、このような結論に至るとは到底思えません。

 我が党は、疑惑の核心を知る籠池理事長らの参考人招致を強く求めていますが、与党はこの疑惑が安倍政権を直撃することを恐れてか、参考人招致を拒み、安倍総理夫妻も利用されただけだと火消しに躍起です。

 我が国財政は、アベノミクスのばらまき財政によって危険水域に近づいており、財政健全化は待ったなしの課題です。にもかかわらず、大切な国有地を総理のお友達あるいは応援団に大安売りするというのは、国民に対する背信行為であります。与党には、速やかに籠池理事長らの参考人招致に応じ、国民への説明責任を果たすよう求めます。

 それでは、質問に入ります。

 政府は、昨年の通常国会で雇用保険法等の一部を改正する法律案を成立させ、雇用保険料率の引き下げ、育児・介護休業の見直し、マタニティーハラスメント対策など多岐にわたる改正を行いました。

 雇用保険法は、平成に入って十四回も改正をされております。また、改正内容の中にはことしの一月一日施行のものも含まれていて、施行間もなく再び法改正すれば、国民生活に混乱が生じるおそれもあります。政府には、現場に混乱が生じないよう、慎重かつ適切な対応を求めます。

 まず、失業等給付の拡充について伺います。

 倒産、解雇等による離職者の失業給付の所定給付日数の一部拡充など、本法案に雇用のセーフティーネットを拡大する内容が盛り込まれたことは一歩前進であると考えます。しかし、本法案は、給付の拡充を倒産、解雇による離職者の一部に限定するとともに、雇いどめ離職者への対応を暫定措置等にとどめる一方で、教育訓練給付の拡充は恒久措置です。雇用保険の本体給付と訓練給付のバランスがとれていません。

 なぜ今、セーフティーネットである本体給付の恒久化を先送りしたのか、厚労大臣の答弁を求めます。

 次に、自己都合離職者等の給付水準の引き上げについて伺います。

 積立金残高が平成二十八年度末の見込みで六兆二千億円を超えるまでに積み上がったのは、二〇〇〇年改正と二〇〇三年改正で行った大幅な自己都合退職者の給付カットが今日まで続いているということが要因と考えられます。

 積立金に余裕があると判断したのであれば、まず、当時カットされた自己都合退職者の給付を二〇〇〇年及び二〇〇三年改正前の水準まで戻すことを検討すべきであると考えますけれども、検討されたのかどうか、大臣の答弁を求めます。

 失業等給付に係る保険料率及び国庫負担率の時限的引き下げについて伺います。

 国庫負担が政府の雇用対策への責任を示すものであることを鑑みれば、その大幅な引き下げは時限措置でなければなりません。

 本法案では、三年間の国庫負担率の引き下げの後、自動的に国庫負担はもとに戻ることになっていますが、また法改正して引き下げを延長するということがないと約束いただけるか。また、国庫負担は本来の水準の五五%の額に暫定的に引き下げられていますが、本来の水準に戻すことについてどのように考えているのか、答弁を求めます。

 政府は、国庫負担の引き下げの理由について、単に、雇用情勢が改善し、受給者実人員が減り、積立金が六兆円を超えるまで積み上がったためなどと短絡的な説明しかしておりません。今後の給付と国庫負担、保険料率のあり方を示すべきと考えますが、厚生労働大臣の見解を求めます。

 次に、職業紹介に関する制度の改正について伺います。

 政府は、今回の法改正で、募集情報等提供事業、いわゆる求人情報サイトや求人情報誌の募集情報の適正化のために講ずべき措置を指針に定めるだけにとどめました。虚偽の求人情報の提示は、人生を左右させる悪質な行為です。指針でどの程度なくせると考えているのか、大臣の見解を伺います。

 また、本法案は、ハローワーク等を通じて虚偽の条件を提示した求人者を罰則の対象としています。しかし、現行法でもハローワーク等を介さずに虚偽の条件を提示した場合は罰則の対象ですけれども、その適用事例について、厚労省は全く把握していないとのことです。

 このような無責任なスタンスを貫き、虚偽求人の実態を把握しないつもりなのか、厚労大臣の答弁を求めます。

 育児休業に係る制度の見直しについて伺います。

 安倍総理は、女性活躍、女性活躍と連呼し続けています。一方で、平成二十九年度末までに待機児童をゼロにする約束は事実上ほごにし、六月に新たな待機児童解消プランを決定すると報じられました。できないことへ、まずおわびをするべきです。やるふりだけを見せられても、ママたちの不安はおさまりません。

 昨年、民進党が緊急提言した待機児童の全国統一基準も、いまだにつくろうとしていません。統一基準がないことで、待機児童はゼロでも保留児童は大勢いるという事態が起きているんです。

 全国に多くいらっしゃるお母さんたち、先日、国会にお集まりになりました。ことしも保育園落ちた、さようなら私の自立と次々に発言するママたち。与党議員の姿がないことを嘆くママもいました。そして、きょうこの時間も、多くの皆さんたちが保育園に入りたいと院内集会を開いています。

 待機児童はいつまでにゼロにするのか、待機児童の全国統一基準をつくるのかつくらないのか、つくるのならいつまでにつくるのか、明確にすべきです。答弁を求めます。

 今回の法改正では、育児休業期間を最長二年に延長することを可能にしています。労働政策審議会雇用均等分科会の議論では、労使ともに、今回の育児休業の延長について、職場、家庭内における性別役割分担意識を助長し、復帰したい女性を職場から遠ざけ、女性活躍促進に逆行する、中小企業で人材の確保が難しくなる、育児休業の延長よりも保育の受け皿を整備すべきだなど、慎重な発言が相次ぎました。にもかかわらず、育休を二年に延長することを強引に推し進めようとする理由をお聞きします。大臣の答弁を求めます。

 また、今回の育休延長と、以前総理が打ち出したものの批判を浴びて引っ込めざるを得なかった三年間だっこし放題と、どこがどう違うのか。私は、どちらも女性を家庭に押し込める政策でしかないというふうに思うのですが、その違いを明確にお答えください。

 男性の育児休業取得率は二・六五%と低迷した状況ですが、政府は、男性の取得率を二〇二〇年までに一三%にする目標を立てています。本法案の育児休業期間の延長が二〇一七年十月一日施行であることや、この法案の見直しが五年と附則に記載されていることを考えれば、今回の改正が目標達成に向け抜本的な取り組みを行う最後のチャンスと言えるのではないでしょうか。

 しかし、本法案では、男性の育児参加促進策について努力義務しか設けておらず、抜本的な改善策は見送られています。これは、政府が二〇二〇年までの目標をおろすということなのでしょうか。そうでないのであれば、諸外国の例に倣い、パパクオータ制など、男性の育児休業取得促進に向けた抜本施策を盛り込むべきであります。もし盛り込まない、盛り込めないというのであれば、明言せずとも、目標をおろしたのと同じであります。大臣、この点について明快な答弁を求めます。

 また、現在制定されているパパ・ママ育休プラスは、男女が交互または同時に取得すれば育児休業期間を一歳二カ月まで延長できるというものですが、今回の改正で、保育園に入れない場合、最大二歳まで育児休業を延長でき、さらにこのパパ・ママ育休プラスとの差が開くことになります。いつまでたっても男性の育休取得にはつながりません。

 そもそも、育休取得者でも、経済上の理由や、休業を長くとると保育所に入れなくなるといった理由から、一年程度で復帰を希望する人が多いと思われますが、どの程度の人が二年に延長することを必要としているのか、立法事実を御説明いただきたいと思います。大臣、よろしくお願いします。

 育休を二年に延長することによってやめずに済む人がいるとは思いますが、まずは、男性が率先して育休を取得できる仕組みづくりや、復帰したいタイミングで安心して子供が預けられるゼロ歳児、一歳児の保育所の整備に重点的に取り組むことが必要ではないでしょうか。

 保育所整備のためには、保育士不足の深刻な状況を変える。政府の予算案の処遇改善では不十分であります。民進党などは、全ての保育士の給与を五万円引き上げる法案を既に国会に提出していますが、いまだその法案は審議いただけません。改めて、政府・与党に審議をするよう強く求めます。大臣の答弁を求めます。

 就学前の子供の育ちには、親や保護者が子供と向き合える環境を整える、このことが重要です。時間外労働の上限規制だけでなく、インターバル規制も導入すべきなのです。

 民進党など野党四党が提出している長時間労働規制法案には、勤務の終わりから翌日の勤務開始までに一定時間の休息を確保するインターバル規制の導入を義務づけています。インターバル規制の導入が、今月中にまとめられる働き方改革の実行計画に盛り込まれるのか。また、子育てと仕事の両立のために、過重な長時間労働を促進する高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の拡大はしないと力強く宣言できるのか。働き方改革担当大臣と厚労大臣の答弁を求めます。

 最後になりますけれども、雇いどめされた方や、子育てで仕事をやめざるを得ない窮地に立たされている保護者のセーフティーネットとして機能し、悪質な事業者から、新しい仕事にチャレンジしようとする方を守るものとなるよう、当事者の声をしっかりとお聞きになって、真摯に向き合い、徹底した議論を行うことを求めまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 郡和子議員にお答えを申し上げます。

 まず、雇用保険の本体給付と訓練給付のバランスについてのお尋ねがございました。

 教育訓練給付の拡充については、少子高齢化が進展する中、働く方の職業能力の開発、向上が今後ますます重要となってくると考えているため、恒久措置として位置づけております。

 一方で、雇いどめによる離職者に対する暫定措置については、リーマン・ショック以後の急激に悪化した雇用失業情勢や経済状況に鑑み、これまで暫定措置としてまいりました。近年、雇用失業情勢の改善が進み、雇いどめによる離職者は減少傾向にあるものの、非正規の仕事で働く方が増加傾向にあることを踏まえ、暫定措置として、今後の推移を見きわめることとしております。

 次に、過去の改正で削減をされた自己都合離職者の給付水準の回復についてのお尋ねがございました。

 基本手当の給付水準を二〇〇〇年、二〇〇三年改正前の水準に戻すことについては、昨年度に引き続き、労働政策審議会において議論がなされました。

 その結果、倒産、解雇等により離職した方のうち、被保険者期間が一年から五年の三十歳から四十五歳の層については、所定給付日数内での就職率が他の層と比較して低くなっていることを踏まえ、給付の拡充を行うこと、また、基本手当日額の下限額、上限額等についても、最新の賃金分布をもとに引き上げることとの結論に至り、これらについて基本手当を拡充しております。

 なお、さらに基本手当の拡充を行うことは、早期再就職のインセンティブを弱め、かえって再就職を阻害することにもつながりかねないとの意見もあることから、慎重な検討が必要と考えております。

 今後の給付と国庫負担、保険料率についてのお尋ねがございました。

 今回の法案における国庫負担の引き下げについては、三年間に限り行うものであり、その後は現在と同じ水準に戻ることとなっております。

 さらに、国庫負担については本来の割合に戻すべきとの基本的な考え方は変わらず、平成三十二年度以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で国庫負担に関する暫定措置を廃止することを改めて法律附則に明記しております。

 また、長期的な給付と保険料率については、雇用情勢等に左右されるもので、現時点で具体的に申し上げることは困難ですが、働く方が失業した場合に、早期再就職に向けて適切に支援ができることが重要だと考えております。

 募集情報等提供事業についてのお尋ねがございました。

 求人情報サイト等に虚偽の求人情報が掲載されることは、あってはならないと考えております。

 現行でも、事業主が虚偽の条件を提示して働く方を募集することは職業安定法に抵触するものであり、こうした事案に対しては、指導等により是正を図っております。

 これに加え、今回の改正では、求人情報サイト等の募集情報等提供事業についても、情報の適正化に向けた努力義務を課し、指導監督を行うこととしております。

 虚偽求人についてのお尋ねがございました。

 厚生労働省では、虚偽の条件を提示して働く方を募集した事業主に対しては、指導等により是正を図っており、是正されずに告発を行った事例はありません。

 今回の改正では、ハローワーク等に虚偽の条件を提示する場合も罰則の対象に加えることとしており、今後とも、問題のある事案の把握に努め、事案に応じて必要な指導等を行ってまいります。

 待機児童についてのお尋ねがございました。

 待機児童解消を目指すという目標は、決しておろしません。総理の発言にもあったように、本年四月以降に明らかになる改善状況等を見きわめた上で、待機児童ゼロのための新たなプランを六月までに決定してまいります。

 また、待機児童数調査検討会の目的は、待機児童の定義の見直しではなく、市区町村ごとの不合理な運用上のばらつきを是正することであり、年度内をめどに取りまとめる予定でございます。

 育児休業の再延長の趣旨についてのお尋ねがございました。

 今回の法案は、子供が保育園等に入園できないために、働く方が離職せざるを得ないという事態を防ぐことを目的としているものでございます。

 昨年十二月の労働政策審議会の建議では、延長の期間は最長二年までと考えられること、一歳六カ月に達した後のさらなる延長については、緊急的なセーフティーネットとしての措置であることが明確になるようにすべきであることなどが指摘をされておりまして、今回の法案は、この建議を踏まえて作成したものでございます。

 育児休業の再延長と過去の取り組みとの違いについてのお尋ねがございました。

 御指摘の三年間だっこし放題とは、希望する方々が男性でも女性でも、育児休業や短時間勤務をとりやすい職場環境を整備してほしいという趣旨で、平成二十五年四月に、総理が経済界へ要請を行ったものであります。

 今回の改正では、一定の場合には二歳までの育児休業を可能とすることに加え、育児休業の対象となる方に個別に取得を勧奨することを事業主の努力義務とすることにより、働く方が、その希望に応じて、より柔軟に育児休業を取得できるようにするものであります。

 男性の育児休業の取得促進についてのお尋ねがございました。

 これまでも、育児休業取得に対するハラスメント防止措置の義務づけや、イクメンプロジェクトを実施、積極的に取り組む企業に対する助成等を行ってきましたが、これに加えて、今回の法案では、事業主が育児休業の対象となる方を把握したときは、その方に個別に取得を勧奨する仕組みを設けることとしました。

 いわゆるクオータ制の御指摘については、日本の育児・介護休業法ではパパ・ママ育休プラスという特例を設けております。

 これらの取り組み等により、引き続き、男性の育児休業の取得を促進してまいります。

 育児休業の二歳までの再延長の需要についてお尋ねがございました。

 現在、育児休業は、保育園に入れない等の事情がある場合には一歳六カ月まで取得することができますが、それでも、子供が保育園等に入園できないために職場復帰を諦め、退職する方が一定数いらっしゃると考えられます。

 そこで、保育園等に入れない場合に、直ちに離職を迫られることがないように、緊急的なセーフティーネットの整備として今回の改正を行うものでございます。

 民進党が提出している、保育士給与を五万円引き上げる法案についてのお尋ねがございました。

 まず、国会における法案審議の扱いについては国会がお決めになることであると考えております。

 その上で、民進党等が提出した法案については、財源の確保策が何ら明らかになっていない点、処遇改善のほか、就業促進や離職の防止などを含めた総合的な人材確保策となっていない点が問題であると考えております。

 高度プロフェッショナル制度や裁量労働制についてのお尋ねがございました。

 既に提出をしております労働基準法改正法案における高度プロフェッショナル制度や裁量労働制の対象となる方は、あくまで、業務の遂行手段や時間配分をみずからの裁量で決定し、自律的で創造的に働く方でございます。さらに、働き過ぎを防止するためのさまざまな施策も講じています。

 したがって、長時間労働を促進するとの指摘は当たらず、撤回する考えはございません。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 郡和子議員より、勤務間インターバル規制についてのお尋ねがありました。

 働き方改革の目的は、労働者の健康の確保を図った上で、女性や高齢者が活躍しやすい社会をつくっていくためのものであり、ワーク・ライフ・バランスを改善していくことでもあります。勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であります。

 他方、日本では、導入している企業は二・二%であり、罰則つきのインターバル規制については、今直ちに導入する環境にはないものと考えられます。

 また、EU指令でも、農業や港湾、空港労働者、鉄道輸送といった業種などで十四もの例外規定が設けられていることなどからもわかるように、労務管理上の問題もございます。

 政府としては、勤務間インターバルを導入する中小企業への助成金の創設や好事例の周知を通じて、自主的な取り組みを推進し、勤務間インターバル規制導入についての環境整備を進めてまいります。

 いずれにせよ、勤務間インターバル規制を含め働き方改革については、現在、働き方改革実現会議において、今月末における実行計画の取りまとめに向け、議論を進めているところであります。(拍手)

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議長(大島理森君) 角田秀穂君。

    〔角田秀穂君登壇〕

角田秀穂君 公明党の角田秀穂です。

 公明党を代表して、ただいま議題となりました雇用保険法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 今、若い人や女性、高齢者、障害者も含め、誰もが将来に明るい希望が持てる社会を実現する上で、ライフステージに応じた多様かつ柔軟な働き方を可能とする環境の整備など、働き方改革の早急な実行が求められております。

 公明党は、昨年十二月に、働く人の立場に立った働き方改革の実現に向けた提言を安倍総理に提出いたしました。

 提言では、長時間労働の慣行を断ち切るために時間外労働の上限設定や、非正規労働者の正社員化の促進、同一労働同一賃金の実現、さらに、女性や障害者、難病を抱える方が自立して働けるよう、さまざまな環境の整備を求めましたが、これら提言の内容の多くが、今般政府がまとめた同一労働同一賃金ガイドライン案、さらには今回の雇用保険法改正案に反映されていることをまず評価したいと思います。

 あくまでも、働く人の立場に立った働き方改革を実現するために、政府がイニシアチブを発揮して、大胆な改革を進めていく決意が何よりも求められております。このような立場から、以下質問をさせていただきます。

 アベノミクスの推進により、有効求人倍率は史上初めて四十七都道府県全てで一倍を超え、失業率は二十二年ぶりの低い水準まで下がるなど、雇用関係の指標も着実に改善しております。雇用情勢の好転を背景に、本改正案において、雇用保険料率を暫定的に引き下げる一方で、基本手当の賃金日額水準の引き上げなど、給付の拡充が盛り込まれております。

 このことについて、雇用保険料率は昨年改正で引き下げられたばかりであり、二年連続の引き下げとなりますが、今回再び引き下げを行う理由、また、平成三十一年度までの国庫負担率の引き下げについて、安定財源を確保した上で本則に戻すとしておりますが、今後どのように財源を確保していくのか、厚生労働大臣のお考えを伺います。

 雇用情勢が改善する一方で、非正規の雇用形態で働いている方の中には、特にバブル崩壊以降のいわゆる就職氷河期世代を中心に、不本意ながら非正規で働いているという人が、平成二十八年労働力調査によれば二百九十六万人と依然として多数存在しており、不本意非正規労働者の希望する働き方への転換、正社員化の促進は、今なお大きな課題として残されています。

 本法案において、雇いどめされた有期雇用労働者の所定給付日数を倒産、解雇並みに手厚くする暫定措置の実施等が盛り込まれておりますが、雇用情勢が改善している今こそ、能力開発の充実も含め、希望する働き方の実現へ総合的かつ強力に支援施策を講じていくべきと考えます。

 さらに、正社員転換の推進と並んで、働き方にかかわらず、同一の内容の労働に対しては同一の賃金を支払う同一労働同一賃金の実現も大きな課題です。正規雇用者の六割程度にとどまっている非正規雇用者の賃金引き上げとともに、教育訓練や福利厚生などの処遇についても同一の待遇の実現が急務です。

 そのためにも、政府の同一労働同一賃金ガイドライン案を実効性あるものにする法整備が求められますが、希望する働き方への転換の促進、同一労働同一賃金実現へ向けて、厚生労働大臣の見解を伺います。

 働く女性の六割近くがパートなど非正規雇用で、男性との賃金格差が大きく、また、正社員であった女性が出産、育児等で一旦離職すると非正規で働かざるを得ない場合が多い状況に対し、保育や介護の基盤整備を初め、家事、育児をしながらでも学びやすい教育プログラムの創設など、女性がライフステージに応じて再就職できる環境整備も強く求められております。

 本法案では、専門家実践教育訓練給付の拡充に伴い、子育て女性のための学び直し、リカレント教育の講座増設が期待されておりますが、現在開設されている講座は極めて少ないことから、国としても積極的に大学等に働きかけていくとともに、産業界との連携についても支援を講じていくことが必要と考えます。

 今後のリカレント教育の充実についてどのように取り組んでいくのか、文部科学大臣の見解を伺います。

 改正案では、保育所等に入れないなどの理由で離職せざるを得ないなど、働き続けることに支障が出る事態を防ぐため、育児休業期間を最長二年に延長できるようにする措置が盛り込まれているほか、事業主に、休業に関する定めを労働者に対して周知するよう、努力義務を新たに規定しておりますが、育児をしながらでも希望する働き方を続けるためには、待機児童解消に向けた保育所等の受け皿整備を力強く推し進めることが何よりも重要なことは言うまでもありません。

 その上で、育児休業を取得しやすい環境づくりを進めることも重要と考えます。

 職場におけるマタニティーハラスメント等の防止措置の徹底とともに、育児休業取得率を見ても二%台にとどまっている男性の育児参加促進に向けた事業主への指導、啓発などにも積極的に取り組んでいく必要があると考えますが、女性が働きやすい環境づくりに向けての厚生労働大臣の見解を伺います。

 障害や病気を抱えていても、持てる能力を活用して、生きがいを持って働くことのできる環境づくりも重要な課題と考えます。

 本法案では、雇用保険二事業、雇用安定事業と能力開発事業について、労働生産性の向上に資するものとなるよう留意しつつ、行われるものとする旨を明記することとしております。

 これら事業で実施されている、障害者など就職困難者を雇い入れた場合の助成を初め、雇用安定や能力開発も含めて、働きやすい環境づくりのための支援の充実をさらに進めていくべきと考えますが、これらは必ずしも生産性向上に直接結びつくものではありません。

 生産性要件は必須要件ではないとのことですが、生産性向上が強調されることによって、結果として障害者等の働き方改革が停滞するようなことがあってはならないと考えます。生産性を明記する理由、今後の障害者等が活躍しやすい環境づくりの推進について、厚労大臣の見解を伺います。

 今月は、自殺対策強化月間です。一年ほど前、希望に胸を膨らませて大手企業に就職した女性社員が、過重労働によってみずから命を絶つという痛ましい事件が起きました。過労死や過労自殺といった働き方に起因する悲劇をこれ以上繰り返してはなりません。そのためにも、大胆な働き方改革の実行は、政治が最優先で取り組むべき課題と考えます。

 目指されるべき第一は、働く人の心身の健康がしっかり守られる働き方改革の実現であり、その意味からも、長時間労働の是正は急務でありますが、加えて、健康の保持増進対策の推進も極めて重要です。

 特に、最近では、心の健康の保持増進が大きな課題になっていることに対応して、ストレスチェック制度の義務づけなど、職場でのメンタルヘルス対策の推進が図られようとしておりますが、将来の見通しが立たず強いストレスにさらされている、失業中、求職中の方へのメンタルヘルス対策にも力を入れていく必要があると考えます。今後のメンタルヘルス対策の取り組みについて、厚生労働大臣に伺います。

 前途ある若い人たち、女性や高齢者、障害や病気を抱えている方々、誰もが未来に希望を持って生き生きと活躍できる社会を実現するため、公明党はこれからも、国、地方を通じたネットワークを駆使して、庶民目線に立った改革の推進に全力で取り組んでいく決意を申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 角田秀穂議員にお答え申し上げます。

 まず、保険料率引き下げの理由と国庫負担の本則復帰の財源についてのお尋ねがございました。

 近年の雇用情勢の改善により、雇用保険の被保険者数が増加するとともに、受給者が減少傾向にあるため、雇用保険財政は安定的に推移をしております。

 これを踏まえ、制度の安定的な運営を確保できることを前提として、三年間に限定した上で保険料率の引き下げを行うこととしたものでございます。

 また、国庫負担の本則復帰につきましては、本来の割合に戻すべきとの基本的な考え方が変わるものではなく、平成三十二年度以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で国庫負担に関する暫定措置を廃止することを改めて法律附則に明記しております。

 今後、その実現に向け、できる限りの努力をしてまいりたいと思います。

 非正規で働く方の正社員化と同一労働同一賃金の実現についてのお尋ねがございました。

 平成二十九年度予算案においても、非正規から正社員への転換などを行う事業主へのキャリアアップ助成金を拡充するなど、企業における正社員転換や待遇改善の強化を進めてまいります。

 同一労働同一賃金については、ガイドライン案を実効性あるものにするよう、不合理な待遇差に関する司法判断の根拠規定の整備や、非正規で働く方と正規で働く方との待遇差に関する事業者の説明義務の整備などを含め、法改正の検討を進めていきます。今月に取りまとめられる働き方改革実行計画も踏まえながら、法改正案の早期の国会提出を目指してまいります。

 女性が働きやすい環境づくりについてお尋ねがありました。

 保育の受け皿については、平成二十九年度末までの五年間で五十万人を超える整備を進めることとしております。

 また、ことし一月から、育児休業取得に対するハラスメント防止措置が義務づけられましたが、これに加え、今回の法案では、事業主が育児休業対象者に育児休業の取得を個別に勧奨する仕組みを盛り込んでおります。

 こうした取り組みを進め、男女ともに仕事と育児を両立しやすい職場環境を実現してまいります。

 生産性向上を明記する理由と、障害者等が活躍しやすい環境づくりについてのお尋ねをいただきました。

 急速な少子高齢化が進展する中では、働く方々の能力を向上させ、生産性を高めることが職業の安定にもつながることから、生産性の向上を後押しする理念を雇用保険法に明記することといたしました。しかしながら、障害のある方の就労支援策等、生産性向上を求めることが必ずしもなじまないものにつきましては、これを要件とすることは考えておりません。

 また、障害のある方も病気の方も、希望や能力、適性などに応じて、活躍しやすい環境を整備していくことが重要でございます。このため、御本人の障害と傷病の特性に応じ、治療や通院等と仕事との両立を可能にする制度を導入する事業主を支援するなど、障害のある方などが安定的に働き続けられる環境を整えてまいります。

 失業者、求職者を含めた今後のメンタルヘルス対策の取り組みについてのお尋ねをいただきました。

 働く方の心身の健康の確保は、過労死等の防止にとどまらず、働く方のやる気と能力を発揮していただくための基盤となるものであります。

 働く方のメンタルヘルス対策については、新たに義務づけたストレスチェック制度の履行確保に努めております。また、精神障害の労災認定が複数あった企業本社に対する指導や、長時間働いた方に関する情報等を産業医に提供することを義務づけるなど、取り組みの強化を図ることといたしました。

 仕事をお探しの方のメンタルヘルス対策については、ハローワークにおいて、臨床心理士による心の健康相談や、みずからがストレスチェックシートで心の健康状態を把握し、必要に応じ、メールによるカウンセリングを受けられる体制の整備等に取り組んでおります。

 今後も、これらのメンタルヘルス対策にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣松野博一君登壇〕

国務大臣(松野博一君) 角田議員から、リカレント教育の充実についてお尋ねがありました。

 出産や育児を機に離職した女性が転職、再就職をするための環境整備のためにも、大学等における女性のリカレント教育の充実は重要と考えております。

 文部科学省では、リカレント教育の充実も含め、女性のライフステージに応じたキャリア形成支援の推進のため、関係省庁とも連携し、大学等に働きかけるとともに、大学等と自治体、産業界が連携した、女性の学び直しをサポートする地域モデルの構築と普及を図り、実践的な能力を身につけられ、再就職につながる短期プログラムの認定制度の創設に向けた検討を行います。

 女性が、いつでもどんな状況からでも再出発できるよう、大学等における女性のためのリカレント教育の充実に取り組んでまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       文部科学大臣   松野 博一君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       国務大臣     加藤 勝信君

 出席副大臣

       厚生労働副大臣  橋本  岳君


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