衆議院

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第13号 平成29年3月28日(火曜日)

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平成二十九年三月二十八日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第八号

  平成二十九年三月二十八日

    午後一時開議

 第一 農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出)

 第二 主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出)

 日程第二 主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出)

 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案(初鹿明博君外六名提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(初鹿明博君外六名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまミエーゴンボ・エンフボルド・モンゴル国国家大会議議長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第一 農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出)

 日程第二 主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、農業機械化促進法を廃止する等の法律案、日程第二、主要農作物種子法を廃止する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長北村茂男君。

    ―――――――――――――

 農業機械化促進法を廃止する等の法律案及び同報告書

 主要農作物種子法を廃止する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔北村茂男君登壇〕

北村茂男君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、農業機械化促進法を廃止する等の法律案は、最近における農業をめぐる状況の変化に鑑み、農業機械化促進法を廃止するとともに、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の業務に係る規定の整備を行うものであります。

 次に、主要農作物種子法を廃止する法律案は、最近における農業をめぐる状況の変化に鑑み、主要農作物種子法を廃止するものであります。

 両法律案は、去る三月七日本委員会に付託され、翌八日山本農林水産大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日質疑を行いました。

 質疑終局後、農業機械化促進法を廃止する等の法律案に対し、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の四会派共同提案により、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が実施する農業等に関する技術上の検査を農機具についての検査に限定する修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、両法律案及び修正案について一括して討論を行い、順次採決をいたしましたところ、まず、農業機械化促進法を廃止する等の法律案につきましては、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも賛成多数をもって可決され、修正議決すべきものと議決した次第であります。次に、主要農作物種子法を廃止する法律案につきましては、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第一につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり修正議決いたしました。

 次に、日程第二につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案(初鹿明博君外六名提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(初鹿明博君外六名提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案並びに初鹿明博君外六名提出、将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣塩崎恭久君。

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) ただいま議題となりました地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 高齢化の進展等に伴い、介護を必要とする高齢者等の増加が見込まれる中、高齢者等が住みなれた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにしていくことが重要です。

 このような状況を踏まえ、介護保険制度の持続可能性を高めるとともに、介護保険の保険者である市町村の取り組みを推進することなどを通じて、地域包括ケアシステムの強化を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、高齢者の自立支援や要介護状態の重度化防止等に向けた取り組みを効果的に実施するため、市町村が地域の課題を分析して、介護保険事業計画に具体的な取り組み内容や目標を記載することとするほか、都道府県による市町村支援や、これらの取り組みを支援するための交付金など、保険者機能を強化するための仕組みを法律に位置づけます。

 第二に、今後、増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズに対応するため、日常的な医学管理が必要な要介護者の受け入れやみとり、ターミナルケア等の機能と、生活施設としての機能とを兼ね備えた新たな介護保険施設として、介護医療院を創設します。

 第三に、地域共生社会の実現に向けた取り組みを推進するため、高齢者に限らず、障害者、子供など、全ての地域住民が抱えるさまざまな分野にわたる生活課題を解決するための包括的支援体制づくりなどを市町村の努力義務とするとともに、高齢者と障害児者が同一の事業所でサービスを受けやすくするための共生型サービスを法律に位置づけます。

 第四に、介護保険制度の持続可能性を高める等の観点から、一定以上の所得を有する者の給付割合の見直しを行うとともに、被用者保険等保険者の介護納付金を標準報酬総額に応じた負担といたします。

 最後に、この法律案の施行期日は、平成三十年四月一日など、改正事項ごとに所要の施行期日を定めることとしています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 提出者初鹿明博君。

    〔初鹿明博君登壇〕

初鹿明博君 ただいま議題となりました、将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案並びに介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案、いわゆる介護崩壊防止法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 まず、二法案の提案理由について御説明いたします。

 平成十二年四月の介護保険制度創設から十七年が経過しました。介護保険制度は着実に社会に定着し、高齢者の介護を支える、なくてはならない仕組みとなっています。

 制度創設時の理念は、これまで家族が抱え込んでいた介護を社会全体で支える介護の社会化を実現し、社会的入院に追い込まれていた高齢者を、地域の中で暮らし続けられるように、在宅でのサービスを充実させていくことであったはずです。

 しかし、団塊の世代が後期高齢者になる二〇二五年問題を控え、高齢者の在宅サービスを支えるために介護保険制度を充実していくことが求められているにもかかわらず、安倍政権における介護保険制度への対応を見ていると、どうでしょうか。

 看板政策のアベノミクスの三本の矢の一つに介護離職ゼロを掲げながら、史上最大の介護報酬の引き下げを行い、軽度者のサービス、それも在宅生活に欠かせない生活援助や福祉用具レンタルの切り捨てを検討するなど、むしろ介護離職を増大させる方向に進んでいます。

 つまり、安倍政権の介護政策は、介護離職ゼロと国民に聞こえのよい言葉を使いながら、サービスは縮小、事業所は倒産、介護従事者は離職、家族は介護離職と、制度があってもサービスが利用できない介護崩壊に突き進んでおり、言行不一致です。

 安倍総理、これ以上国民を欺くのはやめてください、そういう思いを込めて、以下、具体的な問題点を指摘いたします。

 平成二十六年度の介護保険法改正では、要支援者に対する訪問介護及び通所介護が地域支援事業に移行されました。この大きな改革に対して、多くの市町村は対応に苦慮しており、自治体によっては、事業者に支払われる報酬を引き下げることなどで要支援者に適切なサービスが今後提供されなくなるのではないかとの懸念の声が上がっております。

 また、平成二十六年改正では、一定以上の所得のある利用者の負担割合が二割に引き上げられました。二割負担となる者の所得水準は政令事項であり、国会の審議を経ることなく勝手に対象者の拡大をできるという問題を含んでいるほか、この改正は平成二十七年八月に施行されたばかりであり、負担増による利用抑制も起こっており、その影響すら十分に検証されておりません。それにもかかわらず、今回の政府提出法案では拙速に三割負担を導入することとしております。

 平成二十七年四月の介護報酬改定では、事業所の手元には残らない処遇改善や新設の加算などによる引き上げ部分はありますが、サービス単価自体の引き下げは四・四八%もの大幅なもので、介護事業所、特に在宅サービスを提供している事業所は大打撃を受けました。その結果、老人福祉・介護事業所の倒産件数は、平成二十七年、二十八年と二年連続して過去最多を更新するなど、介護事業者は非常に厳しい経営環境に置かれています。

 さらに、今回の政府提出法案には盛り込まれませんでしたが、軽度の要介護者や要支援者に対するサービス提供の切り下げ、保険給付外し、福祉用具レンタルの原則自己負担化という制度改悪の方向で検討が進められています。目先のサービスを切り下げ、保険外しは、状態の重度化、ひいては介護給付の増大を招くということがなぜわからないのでしょうか。

 そして、介護の現場における深刻な人材不足の問題であります。介護従事者は重要な役割を担っているにもかかわらず、その賃金はほかの業種と比較して著しく低い水準にあります。職員の確保ができないという理由で、ベッドがあっても利用者を受け入れられない特別養護老人ホームが、要員不足と回答した施設のうち約一割もあるとの調査結果も報告されています。

 安倍政権は、平成二十九年度において、臨時に介護報酬改定を行い、月額平均一万円相当の処遇改善を実施することとしています。これ自体は評価いたしますが、不十分であり、さらなる処遇改善が求められています。なお、こうした処遇改善が求められているのは、障害福祉の分野においても同様であります。

 介護の現場は疲弊し切っており、利用者やその家族が満足できる質の高い介護サービスを提供することが困難な状況に陥っています。介護事業者が撤退したり、介護職で働く人がいなくなったりしたら、家族が仕事をやめて介護を担うしかなくなります。世の中ではこのような事態を指して介護離職というのです。

 つまり、安倍総理は威勢よく介護離職ゼロと言っていますが、実際に行っていることは介護離職ゼロとは真逆の方向に向かっているのです。

 我々は、こうした現状を打破し、介護の崩壊を防止するため、サービス低下につながる軽度者切りの防止、利用者の生活を守るため、二割負担の安易な拡大防止、介護従事者が安心して働き続けられるようにするための介護従事者の賃金月額二万円アップ、事業者が安定的に事業を継続できるようにする次回改定での介護報酬のアップ、家族に介護が必要となっても働き続けられるよう介護休業等の改善を五本柱としたこの二法案、介護崩壊防止法案を提出した次第であります。

 以下、二法案の概要を御説明いたします。

 まず、将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案について申し上げます。

 第一に、介護保険制度の理念として、要介護状態になった場合においても、日常生活の質を維持向上させるよう、また、介護離職等を防止するため、要介護者等の家族の負担を十分に軽減するように配慮されなければならないことを明記することとしております。

 第二に、国、地方公共団体、介護事業者の責務として、利用者及びその家族の介護サービスに対する評価の把握に努めるとともに、当該評価を向上させるための措置を講じるよう努めなければならないことを追加することとしております。

 第三に、利用者負担の割合が二割となる所得額をおおむね上位二〇%の所得額以上の額において定める旨を規定し、政令委任の趣旨を明確化することとしております。

 第四に、軽度要介護者、要支援者に対する保険給付等に係るサービスが将来にわたりあまねく全国において十分な内容及び水準で提供されるようにする旨の規定を設けることとしております。

 第五に、政府は、当分の間、介護保険制度等の改正が行われた場合、調査、分析及び評価を行い、今後、改正を行おうとする場合には、この結果を踏まえ、調査、予測及び評価を行わなければならないこととしております。

 第六に、介護離職を余儀なくされる事態が生じないよう、介護休業の日数及び回数の増加等、速やかに検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講ずることとしております。

 次に、介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案について申し上げます。

 第一に、都道府県知事は、賃金を改善するための措置を講ずる介護・障害福祉事業者等に対し、その申請に基づき、介護・障害福祉従事者処遇改善助成金または介護・障害福祉従事者等処遇改善特別助成金を支給することとしております。

 具体的には、二つの助成金を各事業者等に選択していただき、処遇改善加算の対象職種には月額一万円、または、処遇改善加算の対象職種を含む全ての職種に月額六千円の賃金引き上げを想定した助成金制度を創設し、国は、都道府県に対し、助成金の費用の全額及び事務の執行に要する費用を交付することとしております。

 第二に、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての介護・障害福祉事業者等のサービスの提供の安定的な継続、介護・障害福祉従事者の賃金の改善による将来にわたる職業生活の安定及び離職の防止に資するよう配慮しなければならないこととしております。特に、平成三十年度介護報酬改定に当たっては、介護報酬の引き上げを想定し、平成二十七年度改定による報酬引き下げの影響を勘案することを明記することとしております。

 以上が、二法案の提案理由及び内容の概要であります。

 何とぞ、速やかに御審議の上、御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出)並びに将来にわたる質の高い介護サービスの提供の確保等のための介護保険法等の一部を改正する法律案(初鹿明博君外六名提出)及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案(初鹿明博君外六名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小松裕君。

    〔小松裕君登壇〕

小松裕君 自由民主党の小松裕です。

 ただいま議題となりました政府提出の地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案について、自由民主党・無所属の会を代表して質問いたします。(拍手)

 我が国では、二〇二五年には、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上になるなど、一層の人口の高齢化の進展が見込まれています。

 私の地元長野県は、平均寿命が男女とも全国一位で、健康長寿の県として知られています。これは、各個人の意識の高さとともに、食生活の指導や健康スポーツの推進など、地域で健康を支え合う仕組みが根底にあるからです。

 健康で長生きしたいという多くの願いを将来にわたって支えていくためにも、介護保険制度を初めとした高齢者の方々の生活を支える仕組みを強化し、持続可能な制度としていくことは、現在、私たちにとっても待ったなしの最重要課題であります。

 まず最初に、今回の改正のポイントについて伺います。

 介護保険制度の理念である高齢者の尊厳の保持や自立支援を実現していく観点からも、医療、介護、住まい、予防、生活支援が身近な地域で包括的に確保される地域包括ケアシステムを強化していくことは大変重要と考えます。

 今回の制度改正で、高齢者の方々にとって何が変わり、どのようなメリットがあるのでしょうか。厚生労働大臣にお伺いします。

 次に、在宅医療と介護の連携について伺います。

 地域包括ケアシステムを構築するためには、急性期の医療から在宅医療や在宅介護までの一連のサービスを切れ目なく提供することが必要不可欠です。

 七十五歳以上の高齢者の方々は、慢性疾患等、複数の疾病にかかりやすく、認知症や要介護状態となる方も多いことから、地域の医療や介護の関係者が密接に連携し、必要な医療・介護サービスを一体的に提供することが求められます。

 今回の改正でも、医療と介護のニーズに対応していく観点から、慢性期の医療と生活支援としての機能を一体的に提供する介護医療院を創設しますが、これも一つの取り組みであります。

 医療と介護の連携については、平成二十六年の介護保険法改正で、全ての市町村が、関係者との協議や多職種研修などを行う在宅医療・介護連携推進事業に取り組むこととされました。

 しかし、これまでは医療政策は主に都道府県が担ってきたため、市町村にはノウハウが乏しいなどの理由により、市町村ごとで事業の進捗に差が見られると聞いています。

 市町村における在宅医療・介護連携推進事業の着実な実施や充実を図っていくためには、都道府県による市町村支援の充実を図ることが重要だと考えますが、どのように取り組んでいくのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、制度を支える費用負担のあり方について伺います。

 四十歳から六十四歳までの第二号被保険者の方の保険料については、介護納付金として、健康保険組合などの医療保険者に賦課されています。介護納付金は、加入者数に応じて保険料負担が決められており、被保険者の総報酬が高い保険者も低い保険者も、一人当たりの介護納付金は同額となっています。

 今回の法案によって総報酬割が導入されれば、それぞれの総報酬に応じて負担していただく額が決まることになります。世代内の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、総報酬割の導入は必要であると考えます。

 また、そもそも、平成二十四年二月、民主党政権時代に閣議決定された社会保障・税一体改革においては、「今後の急速な高齢化の進行に伴って増加する介護費用を公平に負担する観点から、介護納付金の負担を医療保険者の総報酬に応じた按分方法とすることを検討する。」とされています。

 それがこの法案でようやく実現に近づいているわけですが、今般の介護納付金への総報酬割の導入の趣旨について、社会保障・税一体改革の考え方との関係も含めて、改めて厚生労働大臣よりお聞かせ願います。

 最後に、総理にお伺いいたします。

 介護や医療を初めとする社会保障制度は、国民の安心した生活を支える大切な制度であり、将来にわたって持続可能なものにしていかなければなりません。これは与野党を超えて皆が共有できる目標だと考えています。

 今回の法案も、持続可能な社会保障制度を目指して、地域包括ケアシステムを強化するものです。持続可能な社会保障制度、とりわけ地域包括ケアシステムの推進に向けた総理の御決意をお伺いし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 小松裕議員にお答えをいたします。

 地域包括ケアシステムの推進についてのお尋ねがありました。

 二〇二五年は、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上になる超高齢社会を迎える年であり、その中においても、国民一人一人が状態に応じた適切な介護や医療を受けられるよう、持続可能な社会保障制度を構築し、介護と医療の提供体制をしっかりと整えていく必要があります。

 このため、政府としては、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく確保される地域包括ケアシステムの構築を進めることとしており、今回の法案も地域包括ケアシステムを強化するためのものであります。

 具体的には、高齢者の自立支援や要介護状態の重度化防止を図るとともに、制度を持続可能なものとしていくため、負担能力に応じた負担を求める観点からの見直しなどの改正を行うものです。

 政府としては、本法案を審議いただき、成立させ、着実に実施していくことにより、地域包括ケアシステムの構築をより一層進め、安倍内閣の重要な責務として、社会保障制度を持続可能なものにしてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 小松裕議員にお答え申し上げます。

 今回の制度改正による変更点とメリットについてのお尋ねがございました。

 本法案は、地域包括ケアシステムを強化するための制度改正を行うものでございます。

 具体的には、全ての市町村で保険者機能を強化する仕組みを制度化することにより、高齢者の自立支援や重度化防止につながる介護サービスなどが受けやすくなります。

 また、新たな介護保険施設として介護医療院を創設し、今後ますます増加する慢性期の医療・介護ニーズに対応するための受け皿を強化いたします。

 さらに、これまでの縦割りの福祉サービスを丸ごとへ転換し、高齢者、障害者、子供など、全ての地域住民が抱えるさまざまな分野にわたる生活課題を解決するための包括的な支援体制の整備を進めることとしております。

 政府としては、こうした制度改正により、高齢者を初め、全ての方々が住みなれた地域で安心して暮らし続けることができる地域共生社会の実現を進めてまいります。

 在宅医療・介護連携推進事業の着実な実施と充実についてのお尋ねがございました。

 高齢者が住みなれた地域で自分らしい暮らしを続けるためには、在宅医療と介護の連携を推進し、充実させていくことが大切でございます。

 このため、今回の法案においては、事業の実施主体である市町村を都道府県が支援に努めることを法律上位置づけることとしておりまして、具体的には、医療や介護に関するデータを収集、分析すること、広域的な入退院時の連携体制を整備すること、在宅医療に係る体制を整備することなどの支援に取り組んでいただくことを予定しております。

 厚生労働省としても、自治体向けの手引を示すことなどにより、市町村における在宅医療・介護連携推進事業が着実に実施されるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 介護納付金の総報酬割の導入の趣旨についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、世代内の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、介護納付金に総報酬割を導入することとしております。これにより、総報酬の低い医療保険者については介護納付金の額が軽減されることとなり、被用者保険の被保険者のうち約六割の方は介護保険料の負担が軽減されると見込まれます。

 御指摘のとおり、介護納付金の総報酬割については、民主党政権下の社会保障・税一体改革大綱において、その導入を検討することとされていたものであり、今回の法案は、社会保障・税一体改革とも整合的であると考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 民進党の中島克仁です。

 私は、民進党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、政府提出、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案及び民進党提出、介護崩壊防止法案に対して質問をいたします。(拍手)

 大事な介護の問題を少しでも多く質問したいところ大変残念ですが、重要な二点について、まず安倍総理にお尋ねをいたします。

 先週、衆参予算委員会において、森友学園籠池前理事長に対する証人喚問が行われました。籠池氏の発言は具体的かつ詳細で、一定の信憑性もあるという受けとめが大勢だったと考えられます。

 いずれにしても、疑惑解明のためには、一方の当事者のみならず、当事者双方から事情を聞くのは基本中の基本であります。各種世論調査でも、大多数の国民が政府側の説明に納得できないと答えています。自民党総裁でもある安倍総理は、昭恵夫人を初めとする当事者の証人喚問を実現するよう、指導力を発揮すべきだと考えますが、いかがでしょうか。安倍総理の答弁を求めます。

 安倍総理は、二月二十七日の予算委員会において、森友学園に関する認可あるいは国有地払い下げについて、自分や妻、事務所も含めて、もしかかわっていたのであれば、間違いなく総理大臣も国会議員もやめるとおっしゃっておりました。その後、内閣総理大臣夫人付の谷査恵子さんが、籠池氏の依頼を受け、財務省本省に問い合わせを行い、昭恵夫人にも報告していたことが判明しております。これをかかわっていたと言わずして何と言うのでしょうか。安倍総理はみずからの御発言にどう責任を持つのか、お尋ねをいたします。

 以上二点をお尋ねして、政府提出法案、民進党提出法案について質問をいたします。

 政府提出法案においては、中身に入る以前の問題として、本則、附則に係る合わせて三十一本の、論点の異なる、多岐にわたる内容の法改正を一括に束ねた極めて乱暴な法案であることをまず指摘いたします。また、ほとんどが政省令に委ねられており、このようなことがまかり通ってしまえば、立法府の意思、すなわち国民の声が反映されず、制度は維持できたとしても、国民の生活は立ち行かなくなってしまいます。

 国民生活に密着する介護の問題を軽視する、また独善的な安倍政権の姿勢そのものであり、強く抗議をいたします。

 さらに、安倍政権は、介護離職ゼロの看板とは裏腹に、前回報酬改定で実質史上最大のマイナス改定を行い、介護サービスの基盤をぶち壊しました。総理は、その責任を感じているのでしょうか。

 安倍政権の施策が、今後さらに介護の基盤を崩壊させるものにならないかどうかという観点から、質問します。

 政府提出法案のタイトルは地域包括ケアシステムの強化をうたっておりますが、一方で、政府は、経済・財政再生計画により社会保障費の伸びを圧縮する方針を示しています。

 地域包括ケアシステムは、例えば在宅医療、二十四時間定期巡回・随時サービスなどに象徴されるように、効率性は必ずしもよくなく、整備するにはコスト高とも言えます。実際に整備は進んでいないのが現状であり、私も、在宅医として地元山梨県の山間部で在宅医療に従事し、そのことは実感しております。

 安倍総理にお尋ねをいたしますが、地域包括ケアシステムの構築には経済的合理性があると考えているのでしょうか。考えていないのであれば無責任だと思いますし、合理性があるというなら、その根拠をお示しください。合理性がない、コスト高というのなら、政府が実行している、経済・財政再生計画による社会保障費の伸びを圧縮していることとの整合性をどのように説明するのか、お尋ねいたします。

 安倍政権は、平成二十七年度介護報酬改定で二・二七%と、実質過去最大の引き下げを行いました。その影響が如実にあらわれています。介護現場が一体どうなってしまったのか、総理は御存じでしょうか。実際足を運んで、現場の切実な声に耳を傾けておられますでしょうか。

 総理は、実際の介護現場の現状をどのような方法で把握しておられるのか、お尋ねいたします。

 東京商工リサーチの調査結果によれば、二〇一六年一年間の老人福祉・介護事業の倒産件数は百八件に達し、調査開始以来最多となっています。厚労省の平成二十八年度介護事業経営概況調査によれば、各介護サービスの収支差率について、介護報酬改定前の平成二十六年度と改定後の平成二十七年度の状況を比較すると、多くの介護サービスにおいて収支差率は低下しています。

 平成二十七年度の介護報酬のマイナス改定によって、施設サービスも居宅サービスも厳しい経営を強いられていることは素直に認めるべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 地域包括ケアシステムの強化、介護離職ゼロと言っておきながら、よもや、平成三十年度、次回介護報酬改定を引き下げるということはあり得ないと考えますが、引き下げないと断言できますか。

 来年の報酬改定は、六年に一度の診療報酬、介護報酬同時改定であり、地域包括ケアシステムの構築のためにも大変重要となります。来年の診療報酬、介護報酬同時改定をどのように位置づけているのか、総理の答弁を求めます。

 また、議員立法提案者に、平成二十七年度の介護報酬改定に対する評価と、介護崩壊防止法案で介護報酬改定をどのように位置づけているのか、伺います。

 安倍政権は、要支援高齢者に対する訪問介護と通所介護を地域支援事業に移行しました。ことし四月からは全ての自治体が移行することになっています。このいわゆる要支援切りによる弊害が出るかどうかもわからないうちに、政府は、軽度者の生活援助サービスを地域支援事業に移行することを検討してきました。また、軽度者の福祉用具貸与や住宅改修を原則自己負担とすることも検討しています。

 世論の批判を浴びて、すぐに実施することは見送られましたが、政府はその旗をおろしていません。実行されれば、軽度者の介護度を重度化させ、訪問介護等の他の介護保険サービスの利用が増大することになりかねません。その結果、保険給付の抑制という目的に反して、財政負担の増大を招き、介護職員の人材不足に拍車をかけるおそれがあります。さらに、政府が掲げる介護離職ゼロとは大きく矛盾します。

 昨年、私が独自に、ケアマネまた要介護度一、二の介護者を在宅介護する御家族にアンケート調査をした結果、生活援助サービスを介護保険から切り離した場合、九割以上のケアマネ、家族の方は、介護離職がふえると回答をいたしました。介護保険から切り離さないとしても、まさか、介護報酬を切り下げて、事実上軽度者へのサービス提供ができなくなるようなことは考えていませんよね。

 軽度者に対するサービスは現行制度を維持すべきであると考えますが、総理並びに議員立法提案者に御見解をお尋ねいたします。

 一定以上の所得のある人の介護保険の自己負担割合については、平成二十七年八月に一割から二割に引き上げられたばかりです。政府提出法案では、二割の対象者のうち、現役並み所得の方の負担割合を三割に引き上げることとしていますが、まずは、二割負担に引き上げられたことの影響を丁寧に検証すべきです。どのような調査、検討を行い、どのような検証結果となったのか、お尋ねいたします。総理の答弁を求めます。

 二割負担の対象者は、所得の上位二〇%の人が対象となるように設定されていますが、政令で決められるため、対象者の拡大が危惧されます。今後、対象者を拡大することはないのか、お伺いいたします。

 また、三割負担の対象者は年収三百四十万円以上の人が想定されていますが、こちらも政令で決めることができ、国会審議を経ずに簡単に対象を拡大することができます。年収要件を引き下げ、対象者を拡大することはないと断言できるのか、対象者が拡大しないように法律に明記するべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。

 また、対象者拡大防止策の必要性についてどのように考えるか、議員立法提案者にお尋ねいたします。

 加えて、今回の負担増が政府の掲げる介護離職ゼロとは逆に介護離職をふやしてしまう可能性について、総理の見解を求めます。

 私たちが昨年、介護職員の月給一万円引き上げの法案を提出したことにより、平成二十九年度予算案に介護職員の月一万円の処遇改善が盛り込まれたことは評価をいたします。しかし、介護職員の平均給与と全産業の平均給与には十万円程度もまだ差があり、まだまだ不十分です。さらなる処遇改善を行う考えがあるのか、総理の見解をお伺いします。

 政府の介護職員の処遇改善は、介護に直接携わる人だけが対象であり、介護事業所で働く事務や調理などの職種の職員の処遇改善に充てることはできません。このような仕組みでは、全ての職員に公平に処遇改善しようとすると、介護職員以外の処遇改善に要する経費は事業所の持ち出しになってしまいます。介護現場での使い勝手をよくするために、処遇改善は介護に直接携わらない職員も対象とすべきではないでしょうか。総理の答弁を求めます。

 また、介護崩壊防止法案では、介護職員等の処遇改善についてどのように対応されるのか、議員立法提案者にお伺いいたします。

 介護保険によるサービスは、介護を受ける方、御家族の方々にとってまさに命綱です。

 我々は、介護報酬の大幅引き下げ、要支援切りといった安倍政権の施策によって介護サービスの基盤が崩壊することがないよう、命綱が断ち切られることがないよう、要介護者の地域生活の継続、生活の質の維持向上、介護従事者の離職や介護離職の防止を図り、全力で取り組む所存であります。

 両法案の審議は、十分に時間をかけ、政府・与党には、丁寧かつ慎重な議論を行うよう強く求めます。

 最後に、冒頭の森友学園問題、加えて、金田法務大臣、稲田防衛大臣など、安倍内閣閣僚のたび重なる失態に対する安倍総理の任命責任、安倍総理御自身の信頼が問われている今現在、安倍総理はどのような覚悟を持って落とし前をつけようと考えておられるのかお尋ねをして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 証人喚問の実施及び私の国会での発言についてお尋ねがありました。

 証人喚問など国会運営については、国会においてお決めいただくことと認識しております。

 今回の夫人付からのファクスでは、籠池氏側の要望に沿うことはできないときっぱりとお断りをしたと承知をしており、ゼロ回答であり、そんたくはしていないことは明らかであります。

 また、回答内容については、財務省に問い合わせを行った結果として、夫人付が作成したものであり、法令や契約に基づく対応を説明したものです。国有財産に関する問い合わせに対する一般的な内容であって、仮に籠池氏側から財務省に対して直接問い合わせがあったとしても、同様に答える内容であると承知しております。

 したがって、今回の、夫人付が財務省に問い合わせた行為やファクスで回答した行為が、国有地の払い下げに私の妻が関与したことには全くならないと考えております。

 地域包括ケアシステムの経済的合理性についてお尋ねがありました。

 地域包括ケアシステムは、できる限り住みなれた地域で安心して生活を継続できるようにするための仕組みであります。

 今回の法案は、高齢者の自立支援や重度化防止などのため、市町村の取り組みを全国的に強化することなどによって、結果として給付費の伸びを抑えることにつながります。介護保険制度の持続可能性を高めることにも寄与するものであり、合理的なものと考えております。

 介護現場の現状の把握と介護報酬改定についてお尋ねがありました。

 私自身、介護の現場で働く方や介護サービスの利用者、御家族のお話をお伺いするとともに、政府としても、介護事業者の経営状況等の把握に努めております。

 平成二十七年度介護報酬改定後の状況については、介護事業者の経営状況に関する調査結果によれば、多くのサービスで収支差率は低下してはいるものの、おおむねプラスとなっており、介護報酬の請求事業所数については介護報酬改定後も増加しているなど、介護サービスは安定的に提供されているものと考えております。

 また、平成三十年度の診療報酬と介護報酬の同時改定は、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上となる二〇二五年に向けて、医療と介護の提供体制を構築していくための非常に重要な分水嶺と考えており、関係者の御意見も伺いながらしっかりと検討してまいります。

 軽度者向けサービスについてお尋ねがありました。

 軽度の要介護者に対する生活援助サービス等については、昨年末に改定された経済・財政再生計画改革工程表に沿って、高齢者の自立支援等の観点から引き続き検討を行ってまいります。

 なお、前回の介護保険法改正では、要支援の方を介護保険の対象外とするのではなく、引き続き介護保険の地域支援事業の対象とし、市町村が必要なサービスを地域の実情に応じて効果的かつ効率的に提供できるよう仕組みを見直したものであります。要支援切りとの批判は当たりません。

 介護保険の二割負担の導入による影響等についてお尋ねがありました。

 平成二十七年八月の二割負担の導入前後においてサービスの受給者数の伸び率は、これまでの傾向と比較して顕著な差は見られていません。引き続き、サービス利用の実態把握に努めてまいります。

 今回の改正案では、制度の持続可能性を高める観点から、特に所得の高い層に三割負担を導入しますが、これは、二割負担、三割負担の今後の対象者の拡大を前提としたものではありません。

 なお、医療保険制度等を見ても、対象の具体的な基準は政令で定めるのが一般的です。

 また、今回の三割負担の導入については、三割負担者の対象は、二割負担者よりも一層範囲を限定した特に所得の高い層であるとともに、一カ月の負担の上限額を据え置くといった配慮を行っており、介護離職をふやすとの指摘は当たりません。

 介護職員の処遇改善についてのお尋ねがありました。

 介護職員の処遇改善については、ニッポン一億総活躍プランに基づき、平成三十年度の介護報酬改定を待つことなく、来年度から、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額平均一万円相当の処遇の改善を行うこととしました。

 さらなる処遇改善を行うことについては、まずは、来年度からの取り組みを着実に実施していくことが重要であると考えております。自公政権のもとでの合計月額四万七千円の処遇改善を確実なものとしてまいります。

 なお、民主党政権での処遇改善の効果は、月額六千円にすぎないことを申し添えておきます。

 また、処遇改善の対象者を介護職員以外に広げることについては、介護職員の給与が他の職種に比べて低い状況にある中、まずは、介護職員の処遇改善をしっかりと進めていくことが重要であると考えております。

 どのような覚悟を持って落とし前をつけようとしているか。落とし前というのはどういう意味か理解しにくいわけでありますが、これは恐らく、安倍内閣における閣僚の任命責任等についてのお尋ねだと思います。

 もとより、閣僚の任命責任は内閣総理大臣たる私にあります。その上で、各閣僚にあっては、みずからの職務に真摯に向き合い、誠実に職務に当たっているものと考えております。

 今後とも、安倍内閣は一丸となって、経済再生を初め各般の政策を力強く前に進めることにより国民への責任を果たしていく決意であります。(拍手)

    〔井坂信彦君登壇〕

井坂信彦君 平成二十七年度の介護報酬改定に対する評価と、介護崩壊防止法案で介護報酬改定をどのように位置づけているのかというお尋ねがありました。

 社会保障の充実のために消費税を増税したにもかかわらず、政府は平成二十七年度の介護報酬改定で、全体では二・二七%、加算部分を除いたサービス単価のみで見ると四・四八%と、大幅な引き下げを行いました。国民との約束をほごにしたと言っても過言ではありません。

 議員も御指摘のように、二〇一六年の老人福祉・介護事業の倒産件数は調査開始以来最多となり、東京商工リサーチは、倒産の増加要因の一つに、介護報酬の実質マイナス改定による収益の影響を挙げています。

 仮に二回連続で介護報酬を引き下げることになれば、介護事業所の経営は深刻度を増し、介護サービスの基盤は崩壊してしまいます。幾ら介護職員の処遇改善をしても、介護事業所の倒産が続けば、国民は必要な介護サービスを受けることができなくなってしまいます。

 本法案では、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の改定に当たっては、全ての介護・障害福祉事業者等のサービス提供の安定的な継続、介護・障害福祉従事者の賃金の改善による将来にわたる職業生活の安定及び離職の防止に資するよう配慮しなければいけないこととしています。特に、平成三十年度介護報酬改定に当たっては、平成二十七年度改定による報酬引き下げの影響を勘案することを明記しております。平成三十年度は介護報酬を引き上げることを想定しており、この介護報酬のアップが本法案の五本柱の一つとなっております。

 次に、介護職員等の処遇改善についてお尋ねがありました。

 介護職員の有効求人倍率は、平成二十九年一月時点で三・五〇倍で、職業全体の一・三六倍を大きく上回っています。介護職員の人材不足は、介護職員の平均賃金が全産業平均よりも十万円程度も低いことが原因です。政府は、平成二十九年四月から介護職員の賃金を月額一万円引き上げる処遇改善を行うことにしていますが、十万円程度の開きを考えれば不十分です。

 本法案では、平成三十年四月から、介護・障害福祉従事者の人材確保のための措置として、政府の平成二十九年度予算案に計上されている月額一万円の処遇改善に上乗せして処遇改善を行うこととしています。

 具体的には、介護・障害福祉従事者のみの賃金を改善する事業者について、介護・障害福祉従事者の賃金を月額平均一万円引き上げる助成金を支給します。この介護従事者が安心して働き続けられるようにするための介護職員の賃金月額合計二万円アップが、本法案の五本柱の一つとなっています。

 さらに、介護・障害福祉従事者以外の従業者も待遇改善をしたい事業者に配慮して、介護・障害福祉従事者とその他の従業者の両方を対象に、平均して賃金を月額六千円引き上げられるオプションも用意しています。(拍手)

    〔阿部知子君登壇〕

阿部知子君 続きまして、軽度者に対するサービスは現行制度を維持すべきとの中島議員のお考えに対する私どもの見解についてお尋ねがありました。

 安倍政権は、軽度者に対する介護サービスを縮小することを検討しておられます。軽度者の生活援助サービスを市町村が行う地域支援事業に移行することや、軽度者の福祉用具貸し出しやあるいは住宅改修を原則自己負担とすることなどです。

 議員御指摘のように、財政上の理由から軽度者向けの介護サービスを縮小すれば、軽度者の介護サービスの利用機会の減少や利用抑制を招き、要介護状態を悪化させかねません。その結果、悪化してしまった要介護者がふえて、かえって介護保険財政の逼迫に拍車をかけるおそれがあります。朝三暮四、中長期的視野に立って検討しなければ、本末転倒の事態が起こりかねません。

 本法案では、軽度要介護者、要支援者に対する保険給付に係るサービスが、将来にわたってあまねく全国において十分な内容及び水準で提供されるようにする旨の規定を設けております。介護保険の空洞化につながる軽度者切り捨ての防止が、本法案の五本柱の一つとなっております。(拍手)

    〔水戸将史君登壇〕

水戸将史君 中島議員から、二割負担の対象者拡大防止策の必要性についてお尋ねがありました。

 平成二十七年八月から、一定以上の所得のある人の介護保険の自己負担割合が二割に引き上げられました。議員御指摘のとおり、二割負担の対象者は政令で決めることができ、法律に政令を定める際の考え方が明記されていないため、政府は、国会の審議を経ずに、政令においてその対象者を拡大することが可能であります。

 現時点では、二割負担に引き上げたことによる影響はきちんと検証はされておりません。そのため、二割負担の対象となった方が介護サービスの利用をやめたり利用回数を少なくする、あるいは食費等を削る、そのような影響が出ているかどうか、さらには家族の負担が増加していないのか、きちんと把握はされておりません。こうした状況の中で、三割負担の導入を拙速に進めるのは言語道断であります。

 仮に、二割負担によって深刻な影響が出ていないといたしましても、要介護者が必要なサービスを利用できるようにするためには、二割負担の対象者を安易に拡大するのは大いに問題があります。

 本法案では、対象者の拡大に法律で歯どめをかけるため、二割負担となる対象者の考え方を法文に明記し、おおむね上位二〇%の所得額以上の額において定める旨、政令への委任の趣旨を明確化しております。利用者の生活を守るために、二割負担の安易な拡大防止を図ることが、本法案の五本柱の一つとなっております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 桝屋敬悟君。

    〔桝屋敬悟君登壇〕

桝屋敬悟君 公明党の桝屋敬悟でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 平成十二年から始まりました我が国の介護保険制度は既に十七年が経過し、三年単位の介護保険事業計画ごとに制度を見直しながら今日を迎えているわけであります。

 人口減少時代に突入した我が国にあって、当面は、現役世代の人口が減少する中、高齢者の数がふえていく時代を突き抜けていかなければなりません。支え手が減少し、支えられる高齢者が増加するという、社会保障制度にとっては極めて困難な時代であります。

 今なさねばならないことは二つあると考えます。一つは、今を生きる高齢者の皆様方に安心していただける社会とすること、いま一つは、未来を生きる現役世代の皆様に納得と希望の持てる社会とすることであります。

 初めに、安倍総理に伺いたいと思います。

 こうした困難な時代を乗り越えるため、ただいま社会保障・税一体改革の作業に取り組んでいる最中でありますが、消費税の引き上げが延期され、社会保障の充実策もスケジュールの変更を余儀なくされております。

 団塊の世代が七十五歳以上の後期高齢者となる二〇二五年が年々近づいている中で、社会保障・税一体改革のメニューの中でも、とりわけ介護保険制度を中心とした地域包括ケアシステムの構築を進めることが急務であると考えます。

 今回の法律案が、高齢者世代の安心と現役世代の納得と希望を生み出すものとなっているかどうか、法律案の目的も含めて、総理の御見解を伺いたいと思います。

 三割負担の導入について伺います。

 介護保険の利用者負担については、平成二十七年八月から、一定所得がある場合、二割負担が導入されたところでありますが、さらに、二割負担者のうち特に所得の高い層の方々に三割負担をお願いするという法律案であります。

 これは、民主党政権時から取り組みが始まりました社会保障・税の一体改革の考え方に沿ったものであると考えておりますが、三割負担となる所得の高い高齢者の対象者はどのようになるのか、また、あわせて、負担増となる方々へのきめ細かな配慮が必要と考えますが、具体的な対応策について厚生労働大臣にお伺いしたいと思います。

 今回、介護保険制度の持続可能性の確保の観点から、介護納付金の総報酬割の導入が行われておりますが、後期高齢者支援金の総報酬割導入に続く見直しであることから、被用者保険団体からは給付の伴わない負担増と厳しい声もあるわけであります。

 現役世代の皆様の御理解をいただくためにも十分な負担軽減措置を講ずる必要があると考えますが、塩崎厚生労働大臣の回答を求めます。

 次に、保険者機能の強化について伺います。

 今回の法案では、増大する給付費に対して、保険者が地域の課題を分析し、高齢者の方々に対して適切なサービスを提供するため、保険者機能を強化することとされております。

 既に、地域ケア会議を中心に適切なサービス提供を行う取り組みが先進自治体で行われており、そうした取り組みの横展開であると考えるわけでありますが、例えば要介護の認定率の画一的な目標設定などは、介護保険制度の入り口を狭め、結果的に必要なサービスが受けられないという事態が生じるのではないかと危惧されます。

 さらに、本年度からの実施が義務づけられております市町村の総合事業について、いまだに、その実施体制が十分整備されていない自治体も多くあります。高齢者の自立支援、介護予防、重度化予防といった介護保険の理念に即した取り組みを全ての保険者がしっかりと行っていくことが重要と考えますが、市町村の規模、職員の体制、ノウハウなどに大きなばらつきがあります。

 全市町村が保険者機能を発揮するためには、都道府県や国の積極的な支援が必須と考えますが、厚生労働大臣の御見解を伺います。

 厚生労働省では、塩崎大臣のリーダーシップのもと、子供、高齢者、障害者などを含む全ての人々が役割を持ち活躍できる地域共生社会の実現のため、我が事・丸ごとと銘打って施策を進めようとされています。

 公明党においても、塩崎厚生労働大臣に負けないぐらい、地域を舞台にした共生社会の実現が極めて重要であると考えておりまして、党内の地域包括ケア推進本部を改組し、地域共生社会推進本部を立ち上げて、ただいま懸命に取り組みを進めているところであります。

 その心は、介護保険制度発足後、障害者総合支援法、子ども・子育ての新システムなどの制度に基づき、それぞれの制度の拡充、深化や人材の専門性の向上などに取り組まれてきましたけれども、結局のところ、地域においては、ダブルケアなど同一世帯内での多問題重複ケースについてはどの専門機関も対応できず、制度の谷間になっているという実態がある、ここに対応しなければならないとの思いであります。

 地域を舞台に改めて共生社会を構築することが今求められていると強く感じているところであります。このため、制度間の連携や各制度に精通した人材の確保などを進める必要があると考えます。

 塩崎大臣、大臣が訴えておられます我が事・丸ごとの取り組みは、現場の地域包括支援センターの皆さん方からは、さらに仕事がふえると悲鳴すら上がっているのであります。我が事・丸ごとは大ごとなのであります。そのようなことも知っていただいた上で、今回の法案では地域共生社会実現に向けてどのようなことができるようになるのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 福祉用具の貸与について伺います。

 昨年来、同一商品であっても貸与事業者ごとに価格差があり、中には非常に高価な価格請求が行われるケースも指摘されてきたわけであります。介護保険制度の中で、福祉用具貸与については、住宅改修とあわせ、要介護者等の生活の利便、重度化予防などに大きな役割を果たしてきたところであります。

 今後とも、介護保険制度の中で、制度の理念を堅持し、必要な方に必要なサービスが提供されることが求められるところでありますが、今回の見直しではどのように取り組まれるのか、厚生労働大臣にお伺いします。

 最後に、いま一度、安倍総理にお伺いしたいと思います。

 今回の介護保険法等の改正を経て、平成三十年度は介護報酬の改定が行われます。診療報酬と同時改定の時期を迎えるわけで、医療・介護サービスの今後の展開を考えるとき、関係者が固唾をのんで見守っている、そのときを迎えるわけであります。

 我が国の社会保障制度を持続可能な制度とするため、両報酬改定に臨む総理の決意を伺って、私の代表質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 桝屋敬悟議員にお答えをいたします。

 法案の目的等についてお尋ねがありました。

 社会全体が高齢化する中、医療、介護への需要が拡大しております。そのような状況においても、国民一人一人が状態に応じた適切な介護や医療を受けられるよう、持続可能な社会保障制度を構築し、介護と医療の提供体制をしっかりと整えていく必要があります。

 このため、今回の改正では、地域包括ケアシステムの強化を図り、高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供されるようにしつつ、負担能力に応じた御負担をいただくための改革を行います。

 高齢者が住みなれた地域で安心して暮らし続けることのできる体制を強化するとともに、世代間や世代内の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から負担割合を引き上げるなど、現役世代の方々にも御理解いただける改正であると考えています。

 介護報酬と診療報酬の同時改定についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、平成三十年度は、医療と介護のサービス提供等に関する計画である医療計画と介護保険事業計画が初めて全国で同時に改定される年であります。二〇二五年までの残された期間を考えると、今回の六年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定は、非常に重要な分水嶺と考えております。

 このため、今回の同時改定においては、医療と介護の連携強化、効率的なサービス提供体制の構築や医療機能の分化、連携の推進等を強力に進めたいと考えております。

 二〇二五年以降の超高齢社会においても国民皆保険を維持していくため、適正化、効率化すべきことは実施しつつ、質が高い医療や介護を安心して受けていただけるよう、関係者の御意見も伺いながら、平成三十年度の同時改定に向けてしっかりと検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 桝屋敬悟議員にお答えを申し上げます。

 三割負担の導入についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、介護保険制度の持続可能性を高めるため、世代内、世代間の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割に引き上げることとしております。

 三割負担の対象となる方については、二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い、現役並みの所得を有する方とすることとしており、また、月額四万四千四百円の負担の上限額は据え置くといった配慮を行います。

 介護納付金の総報酬割の導入についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、世代内の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、介護納付金に総報酬割を導入することとしております。

 これにより、総報酬の低い医療保険者につきましては介護納付金の額が軽減されることとなり、被用者保険の被保険者のうち約六割の方は介護保険料の負担が軽減されると見込まれております。

 また、今回負担増となる健康保険組合などに配慮をするため、総報酬割は平成三十二年度に向けて段階的に導入するとともに、負担の増加が特に大きい健康保険組合などについて、被保険者一人当たりの介護納付金の額に上限を設ける等の激変緩和措置を講ずることとしております。

 市町村の保険者機能の発揮に向けた支援についてのお尋ねがございました。

 高齢化が進展する中で、地域包括ケアシステムを推進するとともに、制度の持続可能性を維持するためには、保険者機能を強化し、高齢者の自立支援、重度化防止に向けた取り組みを推進することが重要でございます。

 一方、これを担う市町村の人員体制やノウハウの蓄積等の状況は地域によってさまざまであり、厚生労働省や都道府県が積極的かつ丁寧に支援していくことが必要でございます。

 具体的には、都道府県が市町村を支援することを法律上明記し、都道府県による市町村職員に対する研修の実施、リハビリテーション専門職等の派遣に関する関係団体との調整等を推進すること、また、厚生労働省は、市町村が多角的に地域課題を分析することを支援するとともに、都道府県職員に対する研修を行うことなどにより、市町村の取り組みをしっかりと支援してまいります。

 地域共生社会の実現についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、地域や個人が抱えるさまざまな生活課題を、地域住民と行政などが協働して、公的な体制による支援と相まって解決していくことができるよう、市町村においてこれを包括的に支援する体制を整備していくこととしております。

 これにより、介護と育児に同時に直面するいわゆるダブルケアなどの複合的な課題をお持ちの方や、みずから相談に行くことが困難な方などを確実に支援するとともに、支援を必要としていた方が地域を支える側にもなるような地域づくりを目指してまいります。

 福祉用具貸与の見直しについてのお尋ねがございました。

 介護保険制度における福祉用具を貸与する現在の仕組みにつきましては、同一商品の平均的な価格と比べ、非常に高額な保険請求が行われているケースが存在するなどの問題があります。

 このため、今回の制度改正により、厚生労働省が、商品ごとに全国平均の貸与価格を把握し公表するとともに、商品ごとに貸与価格の上限を設定することとします。また、利用者が機能や価格帯の異なる複数の商品から選択しやすくする仕組みを設けることとしており、こうした取り組みにより、介護保険制度のもとで、必要な方に適切な価格で福祉用具を貸与する制度としていきたいと考えております。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 堀内照文君。

    〔堀内照文君登壇〕

堀内照文君 日本共産党の堀内照文でございます。

 私は、日本共産党を代表して、地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 介護保険制度が始まって十七年を迎えます。目標とされた介護の社会化に誰しも希望を見出しました。しかし、この間、介護離職は毎年十万人の規模で推移し、介護殺人、介護心中も後を絶ちません。家族によって引き起こされた、六十歳以上の要介護者に対する殺人、心中事件は、未遂も含めればほぼ一週間に一度のペースで発生しています。介護疲れが動機の自殺者もふえています。献身的に介護し続けた末、経済的に追い詰められ、家族介護が限界になり、悲劇が生み出され続けているのです。

 総理は、悲劇を生み出す原因はどこにあるとお考えですか。

 医療、介護の制度で相次ぐ負担増、給付抑制が、過酷過ぎる家族介護に追い打ちをかけているのではありませんか。

 とりわけ、二〇一四年の介護保険法改悪では、給付を抑制するため、要支援一、二の訪問介護やデイサービスを介護保険から外し、市町村に丸投げしました。

 このもとで、無資格者やボランティアによる支援が推奨されました。その結果、専門職の支援を受けられず、心身の状態が悪化する高齢者がふえ、また生活援助の時間を削られて家族の負担が一層重くなるなど、深刻な悲鳴が上がっています。

 総理は、こうした事態をどう認識していますか。

 ところが総理は、昨年十一月の未来投資会議で、これからは、高齢者が自分でできるようになることを助ける自立支援に軸足を置くと述べられました。この会議では、要介護度改善のみを尺度とする自立支援介護が提起され、そのための報酬改定が検討されています。

 一体、総理が考える高齢者の自立した生活とは何ですか。介護サービスを使わないことなのですか。

 本来、自立とは、障害があっても、病気になっても、公的制度、社会的支援を利用し、尊厳を持って生きることです。年をとって、次第にできることが限られていく中にも、その人らしく暮らしていけるよう支援することが介護保険の役割ではありませんか。介護保険からの卒業を求め、サービスを使わない自立を強要することは、高齢者の尊厳を傷つけ、介護者の一層の負担増を招き、地域で安心して暮らすことを困難にするものです。明確な答弁を求めます。

 以下、法案について具体的に質問します。

 法案は、自立支援、重度化防止等に向けた市町村の取り組みを支援するため、目標の達成状況を評価し、交付金を支給するとしています。

 国は、何を指標に評価するのですか。要介護認定率の低下や介護給付費の縮減を競わせるのですか。

 介護保険からの卒業を目標に、交付金によって介護度軽減を競わせれば、サービス利用の阻害につながりかねないではありませんか。答弁を求めます。

 次に、利用者負担の見直しについてです。

 前回の改定で、一定以上の所得や預金がある方へ、利用料二割負担の導入や施設利用時の食費、居住費補助の打ち切りが行われました。負担増の影響を調査した認知症の人と家族の会は、施設を退所させる、ショートの回数を減らした、家族の生活も破綻してしまう、こつこつためた老後の介護資金は見る見る減るなどの実態を示し、余りに過酷と見直しを求めています。

 全国百を超す介護施設で、支払い困難を理由にした退所者が出ているとの報告もされています。厚労省は、受給者数だけを取り上げ、変化なしとしていますが、それで深刻な実態をはかることはできません。

 総理、この間の負担増は、要介護者を支える家族の生活をさらに窮地に追い込んでいるのではありませんか。

 本法案では、この上に三割負担を導入しようとしています。

 前回改定の検証もせず、年金収入等三百四十万円であれば三割負担が可能であるとどうして言えるのですか。利用抑制や介護者、家族の生活圧迫につながらないのか、その根拠を明確に示すべきです。

 高齢者を狙い撃ちにした社会保障の負担増と年金削減の中で、これ以上の重い負担を課せば、高齢者のみならず、介護者、家族の暮らしが破綻しかねません。今後、二割負担、三割負担の対象者を拡大することはないと断言できますか。総理の答弁を求めます。

 介護医療院について伺います。

 法案は、介護療養病床を廃止し、新たに介護医療院を創設するとしています。

 介護療養病床は、医療的ケアが必要な重介護の高齢者の受け皿として、施設や在宅介護の困難な高齢者、家族を支えてきました。

 介護医療院は、この介護療養病床とどう違うのですか。なぜ介護療養病床を廃止するのですか。

 介護医療院は、生活の場としての機能を強調し、みとり、ターミナルケアの場であるともしています。そうであれば、患者の生活の質の向上と尊厳が守られるよう、医療、介護の人員配置、施設基準について、現行の介護療養病床より抜本的に拡充することが当然必要ではありませんか。厚労大臣の答弁を求めます。

 続いて、共生型サービスについてです。

 共生型サービスは、障害福祉の事業所が介護サービスも実施できるよう、基準緩和を行うものです。

 しかし、障害を持つ方たちが真に望んでいるのは、六十五歳になったというだけで、サービス支給の縮小、打ち切りとともに定率負担が課せられる介護保険優先原則を廃止することです。障害福祉事業所が介護事業所を兼ねれば済むということでは断じてありません。大臣の見解を求めます。

 障害者自立支援法違憲訴訟団との基本合意は、障害福祉サービスと介護保険の統合を明確に否定しています。本法案は、この基本合意に反するのではないですか。障害者サービスの介護保険への統合に踏み出したのではないと言えますか。

 障害者の生存権、平等権、尊厳を公的に保障する障害者福祉制度を確立すべきであり、保険原理を持ち込むことは許されません。

 本法案は、我が事・丸ごと地域共生社会づくりを進めるとしています。厚労省の目指す地域共生社会とは、効率化、生産性向上、自助、互助、地域住民の助け合いを最優先に求め、公的責任を後退させ、福祉、介護費用の抑制を狙うもので、今後の社会福祉のあり方を大きく変質させかねません。

 厚労省は、この地域共生社会で、障害者も高齢者も子育て支援も含めた包括的な支援体制を提起しています。

 この体制とは、効率化や人材不足解決のために、相談支援窓口や施設、専門職員の共用、兼務を進めることにすぎません。本来必要なことは、福祉労働者の処遇を抜本的に改善し、それぞれの専門職をしっかりと配置することではありませんか。

 また、厚労省の提起する地域共生社会は、地域の困難はまず住民同士の支え合いで解決せよと言うのですか。地域の助け合いやボランティアは、不足する人材を補うものではありません。厚労大臣の答弁を求めます。

 憲法二十五条は、国民の生存権を保障し、そのための社会保障の向上、増進へ国の責務を定めています。その国の責任を果たすことこそ今最も切実に求められているということを強く指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 堀内照文議員にお答えをいたします。

 介護保険制度についてお尋ねがありました。

 介護をめぐる悲劇を防がなければならないということは言うまでもありません。ただし、その原因は事案ごとにさまざまであり、一概に申し上げることはできません。

 医療、介護の利用者負担の見直しは、所得の低い方々などにはきめ細かな配慮を行いつつ、負担能力に応じた御負担をいただくものであります。

 また、総合事業は、要支援の方を介護保険の対象外とするのではなく、引き続き、介護保険の対象として、地域の実情に応じて、必要なサービスを効果的、効率的に提供する仕組みです。これによる利用者の状態悪化やサービス利用の減少は確認されておらず、指摘は当たりません。

 昨年十一月の未来投資会議においては、二〇二五年に向けて、介護については、高齢者が自分でできるようになることを助ける自立支援に軸足を置くと述べましたが、これは、本人が望む限り、介護が要らない状態までの回復をできる限り目指すものであり、サービスを使わないことを強要するといった指摘は当たりません。

 介護保険の利用者負担の見直しについてお尋ねがありました。

 平成二十六年の利用者負担の見直しは、保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、制度の持続可能性を高めるため、負担能力に応じた負担を実現する観点から、所得の低い方々などにはきめ細かな配慮をしつつ行ったものであります。

 今回の改正案は、同様の観点から、特に所得の高い層について利用者負担の見直しを行うものですが、一方で、所得の低い方々の負担は引き上げないなど、配慮を行っています。

 したがって、負担できない人からも負担を求めるものではなく、要介護者を支える家族の支援を破綻に追い込むとの批判は当たりません。

 制度の持続可能性を高める観点から不断の見直しが必要ですが、今回の利用者負担の見直しは、今後の対象者の拡大を前提としたものではありません。

 地域共生社会についてお尋ねがありました。

 今回、市町村の努力義務とした、法律に新たに位置づける地域共生社会の実現は、地域住民が主体的に地域の課題に対応し、関係機関が総合的に相談支援を行う体制をつくるものです。地域住民の自助努力に全てを委ねるものではなく、社会福祉の実施主体である自治体がしっかり責任を果たすことに変わりはありません。

 公的責任を後退させる、社会福祉のあり方を変質させるなどといった批判は当たりません。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 堀内照文議員にお答えを申し上げます。

 自立支援、重度化防止に向けた取り組みに関する評価指標等についてのお尋ねがございました。

 高齢者の自立支援や重度化防止の取り組みを進めていくためには、PDCAサイクルを活用して市町村の保険者機能を強化していくことが重要であり、今回の法案でも必要な仕組みの創設を盛り込んでおります。

 この一環として、保険者のさまざまな取り組みを評価できるよう、客観的な指標を設定した上で、市町村等に対する財政的インセンティブの付与を予定しております。

 具体的な指標等については、適正なサービス利用の阻害につながらないことが前提であるとともに、各保険者における高齢化率や地域資源の違い等も踏まえ、アウトカム指標とプロセス指標を組み合わせて、関係者の意見も伺いつつ、公平な指標を設定してまいります。

 三割負担の導入についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、介護保険制度の持続可能性を高めるため、世代内、世代間の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割に引き上げることとしております。

 三割負担の対象となる方につきましては、二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い、現役並みの所得を有する方とすることとしており、また、月額四万四千四百円の負担の上限額は据え置くといった配慮を行います。

 今回の見直しの趣旨や内容につきましては、利用者の方に丁寧に説明を行ってまいりたいと考えておるところでございます。

 介護医療院についてのお尋ねがございました。

 介護療養病床につきましては、医療と介護の役割を明確化する観点から廃止することとし、老健施設等への転換を進めてきましたが、介護療養病床で提供される日常的な医学管理や、みとりやターミナルケア等の機能は重要なものと考えております。

 一方で、長期間の療養が必要なため、入院先が実質的に生活の場となるような利用者にとっては、それにふさわしい環境も重要です。

 そのため、今般の制度改正では、日常的な医学管理や、みとりやターミナルケア等の機能だけではなく、生活施設としての機能を兼ね備えた施設として、介護医療院を新たに創設することとしております。

 また、介護医療院の具体的な基準や報酬等については、適切なサービスが提供できるよう、今後、社会保障審議会介護給付費分科会等で検討してまいります。

 共生型サービスの創設等についてのお尋ねがございました。

 共生型サービスの創設により、障害者が六十五歳以上になっても、従来から障害福祉サービスとして受けてきたサービスを継続して受けやすくなります。このことは、障害福祉サービスを介護保険制度に統合しようとするものではなく、障害者自立支援法違憲訴訟団との基本合意に反するものでもありません。

 地域共生社会についてのお尋ねがございました。

 今回の法案は、高齢者、障害者、児童などの分野ごとの相談支援機関が、それぞれ直接対象とする方の課題のみならず、それ以外の、世帯全体の課題も含めて、丸ごと受けとめる体制をつくるものであり、効率化のために相談支援窓口等の共用や兼務を進めるものではありません。

 福祉人材の確保については、希望を持って保育や介護などの道を選んだ皆さんの高い使命感にしっかりと応えていくことが重要であり、本年度予算においても、処遇改善に取り組んでいくこととしております。

 また、今回の法案では、包括的な支援体制の整備を新たに市町村の努力義務として規定し、自治体の関与を強めており、決して、地域住民に解決の全てを委ねたり、地域の支え合いやボランティアを福祉人材として補ったりするものではございません。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(川端達夫君) 河野正美君。

    〔河野正美君登壇〕

河野正美君 日本維新の会の河野正美です。

 私は、日本維新の会を代表して、ただいま議題となりました地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案に関して質問をいたします。(拍手)

 我が党は、年金、医療、介護について、社会保険における受益と負担のバランスを見直すべきと主張してまいりました。例えば、医療費の自己負担割合は、年齢ではなく所得に応じて変えるべきと訴えてまいりました。

 以上のような立場から、本法案で、現役世代並みの所得のある利用者につき、自己負担割合が二割から三割に改正されることは一定の評価ができます。

 しかし、自己負担割合が二割に引き上げられてから二年もたっておりません。たびたび自己負担割合を引き上げられることは、国民の視点に立てば、介護保険制度への信頼を損なうことにもつながりかねないと危惧しております。

 効果の検証が不十分という声もあります。実際、二割への引き上げによってどのような効果があったのでしょうか。介護保険制度の持続可能性は改善したと考えているのでしょうか。安倍内閣総理大臣の見解を伺います。

 今回の改正案では、特に所得が高い層が利用者自己負担割合の引き上げ対象となり、約十二万人、受給者の三%のみと見込まれております。このような見直しでは、中途半端なものにとどまり、制度の持続可能性が見えてまいりません。実際に負担がふえる人たちからすれば、痛みの割には将来に向けて得られる安心感もほとんどないと感じることでしょう。

 そこで、塩崎厚生労働大臣にお伺いいたしますが、今後、三割負担の対象者を政令でさらに広げていく可能性もあるのでしょうか。また、法案の検討段階では、軽度者の利用者負担を大幅に引き上げる案も挙げられていたようですが、こうした案がなぜ見送りとなったのか、御認識をお伺いいたします。

 また、そもそも所得で判断されるため、資産が多くても所得が少なければ自己負担割合の引き上げ対象外となってしまうことから、不公平感は拭えません。マイナンバー制度も始まっており、所得と資産の両方を対象とし、より生活実態に近く、公平な形で負担を求めていくべきではないかと考えますが、厚生労働大臣に見解を伺います。

 次に、介護納付金における総報酬割の導入についてお伺いいたします。

 これにより、大企業の健保組合に加入するサラリーマンの負担はふえます。負担能力に応じた再分配ではありますが、現役世代の負担がふえるという一面もあります。この改正が世代間公平の点で問題がないかどうか、塩崎厚生労働大臣の御認識をお伺いいたします。

 次に、新たに創設される介護保険施設について質問いたします。

 介護療養病床の問題については、残念ながら、医療の必要性の低い入院患者と高い入院患者が混在している状況がなかなか解消されておりません。

 平成十八年に、介護療養病床を平成二十三年度までに廃止することが決まりましたが、廃止、転換は進まず、その後、平成二十九年度までの廃止延長となりました。今回、さらに経過措置期間が六年間延長されます。

 厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 介護療養病床の転換につき、二度の延長をしたことを踏まえ、介護医療院への転換が本当に進むのか、本法案が介護療養病床問題の解決に本当につながるのか、具体的な見通しとともにお答えください。

 次に、介護と医療の担い手についてお伺いします。

 地域包括ケアシステムで期待されている民間の担い手は、NPO法人等を含む非営利の主体が中心ですが、地域のあらゆる力を結集していくためには、必要な規制をしっかりかけて、質を担保することを前提に、営利法人の力を取り入れていくことも一案です。

 このような考え方に立って、我が党は、医療・介護・保育における法人制度改革法案、医療・介護への参入に係る障壁除去法案を提出いたしました。医療、介護等に関する事業は、どの法人形態でも税制や財政支援の扱いを同じにする、開設や設置に関する規制を見直し、参入の間口を広げるといった内容です。

 こうした制度改正によって多様な地域の力を生かすことが地域の介護と医療を持続可能にするものと考えますが、塩崎厚生労働大臣の御所見をお伺いいたします。

 また、介護制度は、日本全国一律に決めるのではなく、地域の事情に応じた制度にすべきです。もともと、地域包括ケアシステムも、地域ごとに柔軟なサービス提供を可能にするために導入されたはずです。

 我が党は、介護規制の地方分権化法案を提出しております。国の基準は残しつつ、それを従うべき基準から参酌基準に変えることで、地域特有の合理的な理由がある場合には、条例で地域ごとの対応を認めるものです。いわゆる待機老人問題の解決のためにも、介護分野でこうした地方分権を行うべきではないでしょうか。厚生労働大臣の御認識をお伺いいたします。

 介護現場での人手不足は、その厳しい労働環境や待遇によるところが大きく、この間、処遇改善を進めてきたことは一定の評価ができます。しかし、職員の処遇をよくする一方、介護報酬の引き下げが続いたことで介護事業者の経営環境が非常に厳しくなり、事業継続への危機感を訴える声も聞かれます。

 職員の処遇改善を進めて事業者が存続困難に陥ってしまっては本末転倒であります。処遇改善と介護事業者の経営安定化を両立させていく必要があり、来年度に予定される介護報酬改定は、制度の持続可能性を高める上で重要と考えますが、安倍内閣総理大臣のお考えをお聞かせください。

 我が党は、社会保障制度がより公平で持続可能なものとなるようにするとともに、各地域のあらゆる力を結集して、どの地域でも高齢化社会を乗り切れるような制度の構築を目指してまいります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 河野正美議員にお答えをいたします。

 介護保険の二割負担の導入の効果についてお尋ねがありました。

 平成二十六年の介護保険制度の見直しでは、一定以上の所得のある方の利用者負担を二割としました。このことにより、平成二十九年度予算において給付費を約七百億円抑制している一方、サービスの受給者数の伸び率には顕著な影響がないことから、制度の持続可能性を高める一定の効果があったと考えています。

 平成三十年度介護報酬改定についてお尋ねがありました。

 高齢者が増加する中、介護保険制度の持続可能性を確保しつつ、必要なサービスと人材の確保を両立していくことは重要な課題です。

 このため、介護人材の処遇改善については、ニッポン一億総活躍プランに基づき、平成三十年度の介護報酬改定を待つことなく、平成二十九年度から、技能や経験に応じて昇給する仕組みを構築し、月額平均一万円相当の改善を行うこととしました。

 平成三十年度介護報酬改定においては、地域包括ケアシステムの構築に向けて、介護事業者の経営状況を適切に把握した上で、適正化、効率化すべきことは実施しつつ、介護サービスが安定的に提供されるよう、しっかりと検討してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣塩崎恭久君登壇〕

国務大臣(塩崎恭久君) 河野正美議員にお答えを申し上げます。

 三割負担の導入と要介護度に応じた利用者負担についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、介護保険制度の持続可能性を高めるために、世代内、世代間の負担の公平や負担能力に応じた負担を求める観点から、現役並みの所得を有する方の負担割合を二割から三割に引き上げることとしております。

 三割負担の対象となる方については、二割負担者よりも一層範囲を限定した、特に所得の高い、現役並みの所得を有する方とすることとしております。

 なお、高齢化が進展する中で、増加が見込まれる介護サービスの負担については、保険料と公費と利用者負担を適切に組み合わせていくことが必要であり、制度の状況を常に検証し、必要な措置を講じていくことが重要と考えていますが、今般の見直しは、今後の対象者の拡大を前提とするものではございません。

 また、要介護度に応じて利用者負担に違いを設けることについては、社会保障審議会介護保険部会において、自立支援や重度化防止の意欲をそぐのではないかなどの御意見があり、今回の法案では、先ほど申し上げたとおり、負担能力に応じた負担を求める観点からの見直しを行うこととしたものでございます。

 利用者負担における資産の勘案についてのお尋ねがございました。

 平成二十六年の介護保険制度改正では、施設入所者等の食費、居住費の負担の軽減に限って預貯金等を勘案する見直しを行いました。

 これを利用者負担割合の判定に拡大することについては、事務執行や負担の公平性等の課題を整理する必要があると考えているところでございます。

 介護納付金の総報酬割の導入の趣旨についてのお尋ねがございました。

 今回の法案では、現役世代内の負担の公平、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、介護納付金に総報酬割を導入することとしております。これにより、総報酬の低い医療保険者については介護納付金の額が軽減されることとなり、被用者保険の被保険者のうち約六割の方は介護保険料の負担が軽減されると見込まれます。

 また、あわせて、一定の所得を有する高齢者の方にも三割負担の導入などの御負担をお願いする見直しを行うこととしております。

 こうした取り組みにより、世代内、世代間の公平を図り、現役世代の方にも納得して保険料を納めていただけるよう努めてまいります。

 介護医療院への転換についてのお尋ねがございました。

 介護療養病床については、医療と介護の役割を明確化する観点から、既存の老健施設等への転換を進めてまいりましたが、これまで転換が十分に進んでいないものと考えております。

 今般の制度改正では、既存の施設等では十分な受け皿が確保できていなかった、長期的な医療と介護のニーズをあわせ持つ高齢者を対象とし、日常的な医学管理や、みとりやターミナルケア等の機能と生活施設としての機能とを兼ね備えた施設として、介護医療院を新たに創設することとしております。

 介護医療院への移行につきましては、六年間の経過措置期間中にしっかりと支援を行い、移行状況等を把握しつつ、適切に進めてまいります。

 医療、介護等の事業への参入規制の見直しなどについてのお尋ねがございました。

 日本維新の会からは、株式会社等の営利法人も病院や特別養護老人ホームなどを設置できるようにすることなどを内容とする法案が提出されていると承知をしております。

 ただし、病院や特別養護老人ホーム等については、高い公益性を有する事業であり、利用者の保護を図るため、株式会社などの営利法人に対しては参入を認めておらず、御提案については難しいものと考えております。

 一方、介護保険制度のもとでは、営利法人も在宅サービス等の事業者になることができ、株式会社等を含めた多様な主体が実際に参入しております。

 このように、サービスの性質等に応じた適切な役割分担のもと、地域の多様な主体がそれぞれ活躍することは、地域包括システムを支える観点から、重要であると考えております。

 介護分野における地方分権についてのお尋ねがございました。

 介護施設等の設備、運営等の基準につきましては、平成二十三年の地方分権一括法等において、地方公共団体の創意工夫を生かせるよう、全国一律の基準という位置づけを見直し、全て自治体の条例に委任することとした上で、その基準の大部分を、条例の制定に当たって自治体に一定の裁量を認める、参酌すべき基準といたしました。

 しかしながら、高齢者の一定水準以上の処遇と生活の質を確保するために最低限不可欠な人員配置基準、居室面積基準、人権に直結する運営基準に限っては、例外的に全国一律の最低基準を維持しており、各自治体の裁量を認めることは適当ではないと考えているところでございます。(拍手)

副議長(川端達夫君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(川端達夫君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       厚生労働大臣   塩崎 恭久君

       農林水産大臣   山本 有二君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  萩生田光一君

       厚生労働副大臣  古屋 範子君


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