衆議院

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第13号 平成30年3月29日(木曜日)

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平成三十年三月二十九日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十一号

  平成三十年三月二十九日

    午後一時開議

 第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件

 第三 二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件

 森林経営管理法案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長高鳥修一君。

    ―――――――――――――

 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高鳥修一君登壇〕

高鳥修一君 ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、駐留軍関係離職者及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者の発生が今後においても引き続き予想される状況に鑑み、これらの離職者に関する臨時措置法の有効期限を、それぞれ五年延長しようとするものであります。

 本案は、去る三月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日加藤厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、昨日、質疑を行った後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件

 日程第三 二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第二、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件、日程第三、二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長中山泰秀君。

    ―――――――――――――

 盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 二千九年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中山泰秀君登壇〕

中山泰秀君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、視覚障害者等による著作物の利用機会促進マラケシュ条約は、平成二十五年六月二十七日に、マラケシュで開催された世界知的所有権機関の外交会議において採択されたもので、視覚障害者等が著作物を利用する機会を促進するため、利用しやすい様式の複製物に関する国内法令上の制限及び例外、利用しやすい様式の複製物の国境を越える交換等について定めるものであります。

 次に、船舶再資源化香港条約、いわゆるシップリサイクル条約につきましては、平成二十一年五月十五日に、国際海事機関の主催により香港で開催された国際会議において採択されたもので、船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のため、船舶における有害物質を含む装置等の設置及び使用の禁止又は制限、締約国によって許可を与えられる船舶の再資源化施設の要件等について定めるものであります。

 両件は、二十二日外務委員会に付託され、翌二十三日に河野太郎外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。昨二十八日に質疑を行い、引き続き採決を行いました結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両件を一括して採決いたします。

 両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 森林経営管理法案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、森林経営管理法案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣齋藤健君。

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 森林経営管理法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の森林は、戦中戦後の大量伐採により大きく荒廃しましたが、先人の様々な努力により造成された結果がようやく実り、その約半数が主伐期を迎えようとしております。この森林資源を伐って、使って、植えるという形で循環利用していくことで、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立し、先人の築いた貴重な資産を継承、発展させることが、これからの森林・林業政策の主要課題であります。

 しかしながら、現状は、多くの森林所有者が小規模零細で分散した森林を抱え、林業経営の意欲が低下している一方で、意欲と能力のある林業経営者の多くが事業規模拡大のための事業地確保に悩んでおり、このような森林所有者と林業経営者との間の連携を構築するための方策が必要となっております。

 このような認識の下、森林所有者に対して適切な経営管理を促すため、その責務を明確化するとともに、森林所有者自らが経営管理を実行できない場合に、市町村が経営管理を行うために必要な権利を取得した上で、林業経営に適した森林については意欲と能力のある林業経営者に委ねることとし、林業経営に適さない森林等については市町村が自ら経営管理を行うという新たなシステムを構築するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、責務についてであります。

 森林所有者は、その権原に属する森林について、適時に伐採、造林及び保育を実施することにより、自然的経済的社会的諸条件に応じた適切な経営管理を持続的に行わなければならないものとしております。

 また、市町村は、その区域内に存する森林について、経営管理が円滑に行われるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第二に、市町村への経営管理の委託及び林業経営者への再委託についてであります。

 市町村は、その区域内の森林について、経営管理の状況等を勘案して、森林所有者への意向調査又は森林所有者からの申出を踏まえ、経営管理権集積計画を定め、公告することにより、森林所有者からの委託を受けて経営管理を行うことができるものとしております。

 また、市町村が意欲と能力のある林業経営者に再委託を行おうとする場合には、都道府県が公募し、公表した林業経営者の中から、市町村が再委託を行うものを選定し、経営管理実施権配分計画を定め、公告することにより、林業経営者が経営管理を行うことができるものとしております。

 さらに、市町村は、自然的条件に照らして林業経営に適さない森林や林業経営者に再委託するまでの間の森林については、自ら経営管理できるものとしております。

 第三に、所有者不明森林に係る措置についてであります。

 森林所有者の全部又は一部が不明等の森林において、林業経営の集約化や効率化を図るため、市町村は、不明森林所有者の探索、公告等の手続を経て、経営管理権集積計画を定めることにより、経営管理の委託を受けることができるものとしております。

 第四に、林業経営者に対する支援措置であります。

 再委託を受けた林業経営者が更なる施業の効率化を図ることができるよう支援するため、独立行政法人農林漁業信用基金は、当該林業経営者に対して経営の改善発達に係る助言等の支援を行うことができるものとするとともに、国は、国有林野事業に係る立木の伐採等を他に委託して実施する場合は、当該林業経営者に委託するよう配慮するものとしております。

 第五に、災害等防止措置命令についてであります。

 市町村は、伐採又は保育が実施されておらず、かつ、引き続き伐採又は保育が実施されないことが確実であると見込まれる森林において、周辺の環境を著しく悪化させる事態等の発生を防止するため、森林所有者に対し、伐採又は保育の実施等の措置を講ずべきことを命ずることができるほか、自らこれを行うことができるものとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 森林経営管理法案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大河原雅子君。

    〔大河原雅子君登壇〕

大河原雅子君 立憲民主党の大河原雅子です。

 立憲民主党を代表して、ただいま議題となりました森林経営管理法案について質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、どうしても一言申し上げなければなりません。森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書の改ざん問題です。

 一昨日、佐川前国税庁長官に対する証人喚問が行われましたが、五十回にも及ぼうかという佐川氏の証言拒否の結果、真相究明がなされたとは全くもって言えない状況です。

 決裁文書の改ざんは立法府に対する冒涜であり、国政調査権のじゅうりんです。いつ、誰が、何のために改ざんを行ったのか一切わからないままです。与党の大幹部は、疑いは晴れたなどと、どうしていけしゃあしゃあと言えるのでしょうか。立法府に身を置く政治家としての矜持を疑います。

 麻生大臣は、佐川氏が最終責任者であると主張されていました。しかし、麻生大臣の言うところの最終責任者が、一昨日、立法府に対して、そして国民に対して、その説明責任を放棄するような姿勢に終始したことは、まことに遺憾です。麻生大臣は、その佐川氏を適材適所とも言い続けてきました。今でも適材適所だったと本気で考えておられるのでしょうか。佐川氏に対する任命責任、特に理財局長に任命した責任について、改めて伺いたいと思います。

 また、佐川氏は、証人喚問で、財務省の調査について、中身を承知していない旨の発言をいたしました。財務省は、佐川氏に対して、今回の森友問題の件できちんと事情を聞いたのでしょうか。退職前に事務次官が事情を聞いたとの話はありますが、それだけなんでしょうか。今後、詳細なヒアリングを行う予定はあるのでしょうか。予定がないとすれば、それで調査が成り立つとでもいうのでしょうか。いずれも麻生大臣の答弁を求めます。

 この件でもう一点申し上げます。

 一昨日の証人喚問で佐川氏は、最後の最後になって、どういう経緯で、誰が、どう具体的に指示をしたかという点については答えず、その点については明らかになっていない、証人みずからがぬけぬけと述べるという前代未聞の事態が起こりました。何を今さらと思った国民の皆さんも多いと思います。やはり、真相究明は全くなされていないと言わざるを得ません。

 麻生大臣は、佐川証人がここまで言ったことを受けても、真相究明は一昨日の喚問で十分だと思われているのでしょうか。あわせて御答弁を願います。

 では、本題の森林経営管理法案について質問させていただきます。

 国土の七割が森林に覆われている日本は、世界でも有数の森林国だと言われています。森林面積は国土の三分の二に当たる約二千五百万ヘクタールを占めています。そのうち四割の約一千万ヘクタールが、木材生産を目的とした人工林です。戦後の復興のために大造林した木々が今や主伐期を迎えています。

 森林は、国土の保全、水源涵養、生物多様性の保全、地球温暖化防止、木材を始め林産物の生産など、多面的、公益的な機能を持っています。この多面的な機能が持続的に発揮されるために、林業の持続的な発展と、林産物の安定的な供給と利用が課題となってきました。

 国産材の価格は昭和五十年を境として長期的に下落傾向にあり、平成二十五年ごろからようやく価格に落ちつきが見られるようになりました。しかし、その木材価格はピーク時と比較するとおよそ三分の一に低下しています。そのため、伐採期に入った森林であっても、伐採後の再造林のコストの捻出が困難な事態に陥っています。

 先祖代々受け継いできた森林だからこそ、よりよいタイミングで伐採できるようにしたいと考える林家も多く存在しています。また、相続の中で所有者が不明となった森林も多く、荒廃が進行している事例も報告されています。

 林業は子育てに例えられます。苗木を植え、下草を刈り、雪で倒れれば綱をかけて起こし、除伐や間伐、枝打ちを行い、何十年、時には百年以上も、精魂込めた作業が続きます。

 こうした長年の努力が生み出してきた林業の価値が経済的な利益だけではないことを再認識し、次世代へと引き継いでいくことは大変重要なことです。

 これまでの先人の努力により、戦後造林された人工林を中心に、現在、本格的な利用期を迎えており、国内の豊富な森林資源の循環利用が大きな課題です。

 林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現するためには、低迷する国内林業の活性化を図り、森林整備を推進し、山村での雇用創出を実現する必要があります。

 このような中、平成三十一年度税制改正において、仮称、森林環境税等を創設することとされ、森林整備等の推進が期待されるところであります。

 そこで、まず、林業の成長産業化に向けて、この法律が果たす役割について伺います。

 また、林業の成長産業化のためには、木材自給率だけでなく、木材消費量を伸ばしていく必要があります。そのために、木材等の需要拡大、販売促進などの政策も必要ですが、これらについて、別途検討するのか、あわせてお答えください。

 本案により、これまで放置してきた森林所有者は、所有する森林に経営管理権が設定された場合には、新たな経済的損失なく、森林所有者の責務を果たすことになります。さらに、経営管理実施権が設定された場合には、販売収入の中から利益を得る可能性もあります。

 これまで熱心に林業経営に取り組んできた森林所有者が、みずから管理しなくとも利益が得られるのであれば、経営管理集積計画の作成を希望することもあり、逆に意欲をそぐ可能性があるのではないかと危惧されます。

 また、意欲があり、これまで長年の取組で培ってきた能力の高い経営者は、利益の一部を森林所有者に還元することが必要であり、手元に残る利益が減ることから、新しい森林管理システムを活用するインセンティブがわかりにくいと思われます。この点について、政府の考えを伺います。

 林業は、植林から伐採、収穫までに数十年を要します。長期間の経営管理を行える林業経営者を十分に確保できる見込みがあるのか、また、そのような経営者をどのように選定するのかも、あわせてお聞かせください。

 次に、所有者不明森林に係る措置についても伺います。

 所有者が不明の場合や共有者が不明の場合、相当な努力が払われたと認められる探索の方法は政令で定めることになっています。公簿での探索、登記簿上の所有者とその配偶者、また子までを範囲とする方向で検討されておりますが、政令で定める具体的な探索方法、また、事後に森林所有者があらわれた場合にどう対処していくのか、政府の考えをお聞かせください。

 日本の森林面積は二千五百万ヘクタール。このうち本案が対象とする民有林は七割であり、残り三割は国有林です。

 本案の対象を民有林に限った理由について御説明ください。

 また、民有林には私有林と公有林が含まれます。都道府県、市町村等が森林所有者である公有林について、経営管理権を設定することがあり得るのでしょうか。公有林に経営管理権を設定することがあるとすれば、公平性、透明性が求められます。

 市町村の場合には、公有林の管理を行う者と経営管理集積計画を作成する者が同じと想定されますが、その際の公平性、透明性はどのように担保されるのでしょうか。この点についても、政府の考え方を伺います。

 最後は、市町村の実施体制についてです。都道府県、市町村の責務について伺います。

 市町村は、本案によって、森林管理が円滑に行われるように必要な措置を講ずるよう努めることになっています。

 新たに創設される森林管理システムでは市町村が中心的役割を果たしますが、業務の増大が想定されます。市町村は、これまでの森林・林業政策にかかわる業務に加えて、経営管理集積計画の作成や、所有者や共有者不明森林の所有者の探索等、新たな業務が生じ、人員や活動経費などの体制整備が必須です。市町村の実施体制への支援について、政府の方針を伺います。

 また、市町村が中心的役割を担うとしても、都道府県の役割が不明確です。この点についてもあわせてお答えください。

 最後に、一言申し上げます。

 私は、三十年以上前に、水を汚さない暮らしを進める活動の中で、森は海の恋人という言葉に出会いました。以来、森と海は川で結ばれ、つながっていることを心に刻み、活動してまいりました。

 豊かな森林から供給される有機物は、川から海へ流れて、植物プランクトンは豊かな漁場をつくり、魚介類や海藻類など多彩な水産資源を私たちにもたらしてくれます。日本は太平洋、日本海に三万五千の川が注ぐ国ですが、山が荒れ、川にはダムや河口堰がつくられて、森、川、海の関係がずたずたになってしまったところでは、漁場が荒廃し、多くの水産資源が失われています。

 しかし、東日本大震災では、被害を受けた気仙沼のカキやホタテの養殖がいち早く復興しました。背後の川がきちんと整備され、森は海の恋人という考えのもとに、漁業者が植林活動を進めるなど、海、川、森のつながりをしっかりとつくってきたからだと言われています。

 ふるさとの風景にある、森、川、海のつながりを途切れさせず、食料、エネルギー、医療や介護などのケアの自給圏の拡大によって地域経済を循環させ、持続可能な地域をつくることが最も重要であることを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 大河原議員から、決裁文書の書換えの問題について、計三問お尋ねがあっております。

 まず、佐川長官について、理財局長に任命したことも含め、任命責任についてのお尋ねがあっております。

 佐川前長官につきましては、理財局長時代の対応により国有財産行政に対する信頼を損ねたと言わざるを得ないと考えております。

 佐川前長官を理財局長に任命したのは私であります。三月九日に懲戒処分を行った上で、退職させたものであります。

 他方、私としては、佐川前長官の行政官としての能力が全て否定されたものでもないとも考えており、実際に、国税庁長官として、国税分野における豊富な行政経験などを生かして、職務を適切に行ってきたものだと考えております。

 次に、佐川前国税庁長官への聞き取り調査についてのお尋ねがありました。

 書換えの経緯などに関する調査の途中でどの職員からどのような話を聞いたかをお答えすれば、今後の調査に支障が生じかねないことから、基本的にお答えは差し控えさせていただきます。

 佐川前長官につきましては、三月九日に退職した経緯があることから、その際の財務省としての対応についてこれまで説明しているものであり、事務方に対しましては、決裁文書を国会に提出した担当局長だったという意味で責任者であるが、具体的なことは、捜査を受けている身でもあるので差し控えたいという話があったと聞いております。

 いずれにせよ、三月九日に佐川前長官が退職する際に、私から、今後の捜査、調査にも真摯に協力するように伝え、佐川前長官も了解したところであり、今後とも必要な対応はとってまいりたいと考えております。

 最後に、森友学園への国有地貸付け、売却に関する決裁文書の書換えに関する真相究明についてのお尋ねがあっております。

 政府としては、基本的に証人喚問についての感想等々はお答えを差し控えさせていただくことにいたしております。私の所感についてお答えすることは、したがって差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、決裁文書の書換えの経緯や目的について、今後、進行中の捜査にも全面的に協力するとともに、財務省として引き続きさらなる調査を進め、しっかりと全容を解明してまいりたいと考えております。その上で、二度とこうしたことが起こらないよう、信頼回復に向けて取組を行ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 大河原議員の御質問にお答えいたします。

 森林経営管理法案が果たす役割と木材の需要拡大についてのお尋ねがありました。

 我が国の森林は、国土の保全、水源の涵養、温暖化防止などの公益的機能を有しているほか、資源が充実し、主伐期を迎えつつあることから、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していく必要があります。

 しかしながら、森林所有者の経営意欲が低下している中、所有者不明の森林の増加も相まって、適切な森林整備が進まず、林業の発展のみならず公益的機能の維持にも支障が生ずることが懸念されているところであります。

 このため、本法案においては、森林所有者みずから経営管理できない森林のうち、経営ベースに乗る森林については、その経営管理権限を市町村を介して意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については、市町村が公的に管理するという仕組みを創設することとしております。

 また、これにより木材の供給力の増大が図られることから、あわせて木材需要の拡大を図ることが重要です。

 このため、木材需要の拡大に向けて、公共建築物を始め、これまで余り木材が使われてこなかった中高層、中大規模、非住宅など新たな分野におけるCLTの活用促進も含めた建築物の木造化、内装木質化、あるいは木質バイオマスのエネルギー利用、付加価値の高い木材製品の輸出拡大、さらに、木のよさや価値を実感できる木材製品の情報発信や木育などの普及啓発等の取組を進めていく考えです。

 このような取組を通じ、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を実現してまいります。

 森林所有者や林業経営者に対する本法案の影響についてのお尋ねがありました。

 林業経営に熱心に取り組む森林所有者を含む林業経営者については、経営規模を拡大したいと考える者が多い一方で、事業地の確保が困難となっているなど、林業経営者が事業規模を拡大する上で、みずからの努力では解決し得ない問題が多いものと認識しています。

 このため、本法案により、経営意欲の低い森林所有者の森林を意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化することで、林業経営者の事業規模の拡大や経営の安定化が円滑に推進することが期待されます。

 林業経営者の確保と選定についてのお尋ねがありました。

 森林の適切な経営管理が行われるためには、経営管理実施権の設定を受ける林業経営者の役割が重要であることから、本法案においては、林業経営者に対する金融支援措置や国有林野事業の事業委託の配慮等の支援を通じて、林業経営者の育成、確保に努めてまいります。

 また、林業経営者については、都道府県が経営管理実施権の設定を希望する者の募集、公表を行い、市町村は公表された中から公正な方法により選定する、そういうふうにしているところでございます。

 所有者不明森林の対処についてのお尋ねがありました。

 不明な森林所有者の探索については、公簿による探索など、市町村として相当な努力を払ったと認められる方法を今後検討してまいります。

 また、後に不明な森林所有者があらわれた場合については、その森林所有者は、林業経営者に経営管理実施権が設定されている場合には、林業経営者の承諾が得られたときなど一定の条件を満たすとき、その他の場合には、原則として無条件で、市町村に対し経営管理権を取り消す申請を行うことができることとしております。

 本法案の対象森林についてのお尋ねがありました。

 本法案の対象は、森林所有者がみずから経営管理できない森林で、市町村に経営管理に必要な権利を集積、集約化を図る必要がある森林となります。

 そのため、国が所有者であり、既に経営管理に必要な権利を集積、集約化する必要のない国有林を除いて、民有林のみを本法案の対象とするものであります。

 公有林への対応についてのお尋ねがありました。

 都道府県や市町村などが森林所有者である公有林については、経営管理に必要な権利を集積、集約化する必要がないので、基本的には本法案の対象としては想定しておりません。

 しかしながら、公有林については、住民が共同で管理するなどさまざまな形態があることから、今後、地域から経営管理権の設定が求められる場合には、当該公有林の実態を踏まえて、公平性、透明性にも配慮しつつ、具体的な対応を検討してまいります。

 市町村の実施体制への支援についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、市町村には、地域の森林の経営管理が円滑に行われるように主体的に取り組むことが求められるため、実施体制の整備が重要な課題と認識しております。

 そのため、市町村が林業技術者を地域林政アドバイザーとして雇用する取組を推進するとともに、本法案においては、都道府県による市町村の事務の代替執行ができるなどの制度を導入しており、必要な体制整備に向けた取組を進めることとしております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 緑川貴士君。

    〔緑川貴士君登壇〕

緑川貴士君 希望の党・無所属クラブ、秋田県に住んでいる緑川貴士と申します。(拍手)

 本題に入る前に、私からも、森友文書改ざん問題についてお尋ねしなければなりません。

 おととい、衆参両院において佐川前国税庁長官の証人喚問が行われましたが、佐川証人は証言拒否を連発し、真相究明どころか、疑惑はますます深まりました。

 この問題は、国権の最高機関である国会の権威が行政府によって冒涜されるという、憲政史上まれに見る政治的事件であります。国会が国民の負託に応えるためには、真相究明は不可欠であり、そのためにも、安倍昭恵総理夫人、迫田英典元財務省理財局長、谷査恵子元総理夫人付、今井尚哉総理秘書官ら関係者の証人喚問は必須と考えます。

 さらには、森友文書改ざん問題調査特別委員会の設置も検討すべきであります。

 事実に反する答弁を国会で繰り返し、証人喚問では、指示はなかった、またそんたくも否定し、それではなぜ改ざんというあるまじき暴挙に出たのか、財務省の矜持は一体どこへ行ってしまったのか、残念の一言しかございませんが、真相の究明とともに求められるのが、責任の明確化であります。

 佐川氏を国税庁長官に起用したことについて、適材適所だと胸を張られた麻生大臣、佐川氏の任命権者として、現在の率直なお考えをお聞かせください。

 かつて、大蔵省接待汚職事件で七人もの逮捕者が出た際、時の三塚大蔵大臣は引責辞任しました。政治家として、これは当然の行動であったというふうに思います。しかし、今回の問題について、政府・与党幹部の発言を聞いていると、財務省理財局のみに全ての責任を押しつけようという意図が明白であります。

 今回の議題である本法案の条文では、森林所有者の責務が明確に規定されています。

 国民にはその責任を果たすことを強いながら、政治家みずからはその責任をとらないというのでは、示しがつきません。

 麻生大臣、あなたは政治家として誰よりもダンディズムを追求される方だとお見受けいたしますが、みずからは何ら責任をとるおつもりはないんでしょうか。明確にお答えください。

 続いて、本題であります森林経営管理法案について質問をさせていただきます。

 かつて天然杉の産地として名をとどろかせていた秋田県にあって、私が住む秋田県北部、そこを流れる一級河川である米代川の流域は、木材の主要な供給源として、日本が近代国家の歩みを進める中で高まる木材需要を長らく支えるなど、国内の林業において大きな役割を担ってまいりました。人口が増加していた時代、集落圏の形成、拡大はまさに林業の発展とともにあり、昭和期から展開された年間一万ヘクタール造林運動などによって森林整備が進められ、秋田県は、現在、全国一の杉人工林面積を有しています。

 本県では、本格的に利用期に入っている森林が多数を占め、その積極的な伐採と、また伐採後の植林などの森林を若返らせる事業、さらには、若い林齢の森林の除伐、間伐といった保育など一連の施業を通じて、適正な森林管理と木材の安定供給に向けた取組を進めているところであります。

 森林資源の活用を通じた地域経済の振興、若者の林業の可能性へのチャレンジなど林業の再生に向けた地域の取組が活発化していく中で、本法案への期待は大変大きなものを地元としても感じております。

 本法案の趣旨は、林業の成長産業化と資源の適切な管理、その両立を図るために、市町村を介して、林業経営の意欲の低い小規模零細な森林所有者の経営を意欲と能力のある林業経営者につなぐことで、林業経営の集積、集約化を図るとともに、経済的に成り立たない森林については、市町村みずからが経営管理を行う仕組みを構築していくこととされています。

 一方で、おととし閣議決定された森林・林業基本計画では、林業及び木材産業を安定的に成長発展させ、山村等における就業機会の創出と所得水準の上昇をもたらす産業へと転換することとされています。

 林業の成長産業化に向けて、本法案をどのように位置づけているのか、まず齋藤農林水産大臣の御所見を伺います。

 また、成長産業化という以上は、経済的に成り立たないとされる民有林はそもそも少ないことが前提になると思いますが、今回対象としている民有林のうち、どのくらいの規模が経済ベースに乗る民有林と捉えているのか、さらに、今後検討を進めるとしている国有林の活用についてはどのように考えているのか、あわせて伺います。

 林業の成長産業化の展望については、農水省の意識・意向調査によれば、森林所有者のうちの八割が森林経営への意欲が低く、その多くがみずから主伐する意向がないと答えている状況の中、その所有者の森林に経営管理権が設定された場合は、新たな経済的損失もなく所有者としての責務も果たせ、更にそこに経営管理実施権が設定されれば、市町村の委託を受けてその森林の経営管理を行う民間事業者の販売収入の一部から利益を得ることも期待できます。

 つまり、所有しているだけでもうけが出るとすれば、これまで林業経営者として働いてきた森林所有者の労働意欲をそぐ形にもなりかねず、経営管理を委託して利益を得ようというケースがふえていくことも考えられます。そうした場合、結果として、森林における所有と経営の分離が一層進んでいくことになることが見込まれます。

 市町村から委託された事業者が経営管理する際に、たとえ収益が見込まれる森林であったとしても、事業を軌道に乗せていくためには効率的な経営管理など一定以上の努力が求められ、たとえ成果を上げたとしても、その販売収入の一部は所有者に還元していく必要性が生じる中で、モチベーションを保ちながら継続できるだけの事業性、採算性の見通しはあるのか、そもそも、意欲と能力のある林業経営者とは具体的にどのような主体であるのか、お考えを伺います。

 林業経営者の事業体の一つに森林組合がありますが、森林組合は時代とともに合併が進み、組合員の数も減少しています。林業の成長産業化を進める上で、地域林業のこの中核的な担い手である組合を本法案ではどのように位置づけ、事業量の拡大、経営基盤の強化、施業集約化に当たって具体的に国としてどうサポートしていくのか、お尋ねいたします。

 また、経営管理を委託されるのは、国内事業者だけでなく外国資本による経営管理も想定されますが、事業者の中には、その収入減少分をカバーするために、短期的な利益を求める余り、再造林や育林事業などの森林資源の適正管理への取組が薄れる懸念もあります。経営管理実施権に基づいて市町村が委託したとはいえ、その後の事業者に対する監督が十分に行われることも、この新たな森林管理システムを実効的なものにする大前提であると考えますが、大臣の御所見を伺います。

 以上のように見ていきますと、成長産業として進める上では不十分な面があり、この新たなシステムのもとで木材供給がふえていくことを見込む中で、木材産業における需要を今後高めていくために、高付加価値な木材加工事業や低コスト化に向けた流通改革、販売促進など、川下における政策が一層重要になっていくと考えられますが、需要の掘り起こしはどのように進めていくお考えでしょうか。

 秋田県北部に位置する私の地元、大館北秋田地域は、林野庁の林業成長産業化地域創出モデル事業を行う地域の一つに選ばれました。各自治体と森林組合などの素材生産者、また製材加工業者、苗木生産者など民間事業者を交えた協議会がこのほど発足し、かつてない規模で川上から川下までが連携し、増産可能な体制づくりとともに、需要拡大に向けた動きを強めております。

 秋田の伝統工芸品、大館曲げわっぱは、樹齢百年以上を超える木が適しているとされ、その安定的な原料供給に向けた、高樹齢木の育成計画や、若くてもその技法にたえ得るような良質な木々の選定についての研究も進められているほか、木質バイオマス関連事業においては、木の根元や枝など低質材のさらなる活用が検討されております。地域経済を支える柱の一つとして期待されるこうした取組を、本法案の制定によってどのような支援が可能となるのか伺います。

 各地域の取組を支える上で、それぞれの市町村は、これまでの森林・林業行政に係る業務に加え、森林管理の新たな仕組みの中心的役割を担うことによる行政の過重な負担が想定されます。

 都道府県が市町村の事務をかわりに行うことも一部可能ではあるといえ、先ほど触れた、民間事業者に対する監督のほか、経営管理集積計画を定める場合の森林所有者不明問題への対応など、根気の要る取組が求められます。

 現場では、森林の区画が細かく、所有地が驚くほど分散されていたり、相続のたびに森林所有が細分化されているケースを考えれば、所有が不明となっている森林の集積に当たり、市町村職員の負担が相当にかかっていくことが予想されます。

 市町村の林業部門の職員数は全体としていずれも長期的に減少しており、市町村ごとにその体制や能力はさまざまであることを踏まえ、行政にかかる負担をどのように解消し、取組を進めていくのか、お尋ねいたします。

 なお、所有者不明の問題については、今国会では、所有者不明の土地利用の円滑化、あるいは農業経営基盤の強化を促すものなど複数の法案が上がっている中、本法案は、所有者不明である森林の利用促進を図るものではあっても、その所有者を特定することに力点を置いた抜本的な解決を図るという内容ではありません。

 森林法で定める地域森林計画の対象となっている民有林については、売買や相続、贈与、法人の合併によって、その土地を新たに取得した場合には届出が義務づけられていることを踏まえ、届出の際に登記を促していくことも時代の要請であると考えますが、大臣の御見解を伺います。

 私が住む地域は、若手の林業者もふえている一方、林業者の四割近くを六十歳以上が占めるなど、依然として高齢化率が高く、リタイアする数の方が増しており、林業の担い手としては全体として年々減少している傾向です。

 秋田県内の中山間地域では、農業、林業の担い手の減少と相まって、耕作放棄地の増加とともに、これまで人が手を入れて管理してきた里山林も、利用されないまま放棄されている場所がふえています。

 見通しの悪い耕作放棄地や里山林は、野生動物、例えば熊が身を隠して移動するのに都合よく、近年は人の生活圏にまであらわれて、農作物を狙ったり、人を襲ったりというケースが目立っています。現代、経済的に暮らしが豊かになっている一方で、人の生活圏が縮小し、熊が押し寄せております。

 人里、里山、奥山と呼ばれていた構造に異変が生じており、野生動物の暮らしの垣根の明確な線引きも難しくなっている状況の中で、適切な森林管理のあり方が改めて問われている時代に来ていると私は思います。

 広大な森林県に暮らす者として、また国政を預かる政治家として、これからも真摯に議論を進めてまいります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 緑川議員からは、決裁文書の書換え問題について、計二問お尋ねがあっております。

 まず、佐川前国税庁長官の任命権者としての現在の考え方についてのお尋ねがありました。

 佐川前長官については、理財局長時代の対応により国有財産行政に対する信頼を損なったと言わざるを得ないと考えております。

 佐川前長官を理財局長に任命したのは私であり、去る三月九日に懲戒処分を行った上、退職させたものであります。

 他方、私としては、佐川前長官の行政官としての能力が全て否定されるものでもないと考えており、実際に、国税庁長官として、国税分野における豊富な行政経験などを生かして、職務を適切に行っていたものと考えております。

 最後に、もう一問、私の政治家としての責任についてのお尋ねがありました。

 決裁を経た行政文書について書換えを行ったということは極めてゆゆしきことで、まことに遺憾のきわみ、私としても深くおわびを申し上げねばならないと考えております。

 今後とも、進行中の捜査にも全面的に協力するとともに、財務省としても、引き続きさらなる調査を進めます。その上で、二度とこうした事態が起こらないよう、信頼回復に向けた取組を行っていくことで、大臣としての職責を果たしてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 緑川議員の御質問にお答えいたします。

 森林経営管理法案の位置づけについてのお尋ねがありました。

 我が国の森林は、資源が充実し、主伐期を迎えつつあることから、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していく必要があります。

 しかしながら、森林所有者の経営意欲が低下している中、所有者不明の森林の増加も相まって、今後、適切な森林整備が進まないことが懸念されているところであります。

 このため、本法案におきましては、森林所有者みずから経営管理できない森林のうち、経済ベースに乗る森林については、林業経営者に集積、集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については、市町村が公的に管理するという仕組みを創設することとしております。

 このような仕組みによりまして、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図ってまいります。

 経済ベースに乗る民有林の規模、国有林の活用についてのお尋ねがありました。

 経済ベースに乗る民有林の規模については、民有林のうち、本法案により集積、集約化を進めようとしている私有人工林約六百七十万ヘクタールについて、その三分の一の約二百二十万ヘクタールは既に経営管理されており、残り三分の二の約四百五十万ヘクタールが経営管理が不十分な状態となっております。

 この経営管理が不十分な森林のうち、半分の約二百四十万ヘクタールが経済ベースに乗るものと推計しており、主にこれらの森林について、本法案によって、林業経営者に対する集積、集約化を進めてまいります。

 また、国有林の活用については、森林の適切な経営管理のために経営管理実施権の設定を受ける林業経営者の役割が重要であることから、本法案においては、そのような林業経営者に対して国有林野事業の委託が行われるよう配慮することとしており、こうした支援等を通じて、林業経営者の育成、確保に努めてまいります。

 意欲と能力のある林業経営者についてのお尋ねがありました。

 経営管理実施権の設定を受ける民間事業者については、森林所有者及び林業従事者の所得向上につながる高い生産性や収益性を有するなど、効率的かつ安定的な林業経営を行うことができる者、主伐後の再造林を実施するなど林業生産活動を継続して行うことができる者を想定しております。

 また、現在多くの林業経営者が規模拡大の意向を有しているにもかかわらず、事業地を確保することが困難なために、規模拡大が進んでおりません。

 このため、本法案によって、経営意欲の低下した森林所有者の森林を意欲と能力のある林業経営者へ集積、集約化することで、事業規模の拡大を図ることが可能となり、事業の採算性向上が見込めることから、林業経営者は意欲を持って林業経営に取り組めるものと考えております。

 森林組合の位置づけとその支援策についてのお尋ねがありました。

 森林組合は、地域の森林の経営管理の主たる担い手として現在も大きな役割を果たしており、林業の成長産業化を進める上で重要な存在であると考えております。

 本法案による新たな森林管理システムにおいては、森林組合は、経営管理実施権の設定を受ける意欲と能力のある林業経営者としての役割や、市町村がみずから経営管理する森林の施業を受託すること、さらには、市町村が行う意向調査等に協力、支援を行うことなどの役割が期待されているところでございます。

 これらの役割が期待される森林組合に対し、今後、事業量の拡大、経営基盤の強化等に向けて、路網整備や高性能林業機械導入、主伐、再造林の一貫作業の推進、製材業者との直接的な取引など、川下との連携強化等の取組を支援していく考えであります。

 林業経営者に対する監督についてのお尋ねがありました。

 本法案において、市町村は、林業経営者から経営管理の実施状況等の報告を求めることができるとともに、林業経営者が適切な経営管理を行っていない場合には、経営管理実施権を取り消すことができるとしています。

 また、これらの措置の適切な実施により、林業経営者による適切な経営管理が確保されるよう、農林水産省としても、都道府県と連携をして対応してまいります。

 木材需要の掘り起こしについてのお尋ねがありました。

 本法案により、意欲と能力のある林業経営者による木材の供給増が見込まれることから、林業の成長産業化には、木材の需要拡大などを進める必要があると考えております。

 このため、公共建築物を始め、これまで余り木材が使われてこなかった中高層、中大規模、非住宅など新たな分野におけるCLTの活用促進も含めた建築物の木造化、内装木質化、木質バイオマスのエネルギー利用、付加価値の高い木材製品の輸出拡大、さらには、木のよさや価値を実感できる木材製品の情報発信や木育などの普及啓発等により、木材需要の掘り起こしに取り組んでまいります。

 地域経済を支える取組の推進についてお尋ねがありました。

 林業の成長産業化に向けては、地域の先進的な取組を支援していくことが重要であると認識しています。

 このため、農林水産省としては、地域の森林資源の循環利用を通じ、地域の活性化を行うモデル的な取組や、森林資源をマテリアルやエネルギーとして地域内で利用する地域内エコシステムの構築などへの支援を行っております。

 さらに、本法案によりまして、これまで活用されてこなかった森林を地域の林業経営者に集積、集約化することや、路網の整備、高性能林業機械の導入により、森林資源の効率的な利用を進めてまいります。

 市町村の負担解消に向けた取組についてのお尋ねがありました。

 市町村には、地域の森林の経営管理が円滑に行われるように主体的に取り組むことが求められるため、実施体制の整備が重要な課題と認識しております。

 そのため、市町村が林業技術者を地域林政アドバイザーとして雇用する取組を推進するとともに、本法案においては、都道府県による市町村の事務の代替執行ができるなどの制度を導入しており、必要な体制整備に向けた取組を進めることとしております。

 森林の土地の所有者届出に際して登記を促していくことについてお尋ねがありました。

 木材価格の低迷などにより森林所有者の経営意欲が低下している中、所有者が不明な森林の増加により、森林整備が適切に行われないことが懸念されています。

 このため、農林水産省としては、平成二十三年及び二十八年の森林法改正により、新たに森林の土地の所有者となった者の届出制度の創設、市町村が所有者情報等を一元的に取りまとめた林地台帳を作成する制度の創設を措置したところです。

 所有者不明の森林の問題に対しては、このような措置に加え、登記制度が重要な論点であると考えております。

 登記制度等については、本年一月に設置された所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議において、森林も含めた土地制度全般の問題として、政府全体の中で必要な検討を進めてまいる考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 佐藤英道君。

    〔佐藤英道君登壇〕

佐藤英道君 公明党の佐藤英道です。

 私は、ただいま議題となりました森林経営管理法案について、公明党を代表し、質問をいたします。(拍手)

 さて、我が国は、森林率において国土の六八・五%を占め、実に二千五百万ヘクタールの森林を有する世界有数の森林国であります。

 戦後、高度経済成長期に植栽された杉やヒノキなどの人工林一千万ヘクタールは、毎年約八千万立米の森林資源を供給できる過去最大の主伐期を迎えており、我が国の森林整備の加速化は、今この時期を逃してはならないと思います。

 川下においても、合板などの用材やバイオマス燃料チップを始め、需要の増加に応じて、生産量、自給率ともに増加傾向にあります。

 また、輸出においても、昨年は前年比三七%増を示し、三十八年ぶりに三百億円を超えております。

 昨年末には、最大の木材輸入国である中国が杉やヒノキなどを構造材として利用できるよう法改正を行っており、今後、製材や合板の輸出にも力を入れることにより、さらなる追い風が期待できる状況であります。

 今、担い手の確保、人材の育成、森林所有者への利益配分の実現による森林・林業の発展に向け、国を挙げて積極果敢な攻めの林業への挑戦が求められていることを前提に、以下、質問をしてまいります。

 現在、実際に利用できている森林資源は、年々新たに増加するうちの約四割にとどまっており、さらなる有効活用が求められます。また、林野庁の調査では、市町村の約八割が、管内の人工林が手入れ不足であると回答をしており、さらに、経営管理への意欲が高いと考えられる森林所有者はわずか一六%にとどまるという現状でもございます。

 林業従事者の高齢化や担い手不足もあり、山が荒廃していく例は少なくないとの指摘もあります。相続未登記等により、全体の三割にも上る所有者不明山林の問題や、地籍調査の進捗にも課題がございます。

 以上のような状況を踏まえ、本法律案の果たし得る効果、提出の意義について、まず御見解を伺いたいと思います。

 さて、本法律案は、森林経営の管理については、第一義的に森林所有者がみずからの責務において実施することを定めていますが、森林所有者による適切な経営管理を実行できない場合には市町村が必要な措置を講じることとし、経営管理権の集積及び経営管理実施権の配分に係る計画作成などを行うことが求められております。

 これら極めて複雑な業務が求められることが想定されますが、その規模や財政力などにはかかわらず、該当する市町村には必要十分な体制の整備が求められ、かつ、担当職員等には森林・林業行政に関する専門性や一定の経験が求められることとなります。

 こうした市町村の体制整備や人材の確保、育成については、市町村に主体性を持って取り組んでもらえるよう、制度的インセンティブも含め、国や都道府県等から十分な支援を講じていくことが必要と考えます。

 まず、国としてどのような支援を行うのか、大臣の見解を伺いたいと思います。

 次に、経営管理実施権の設定を受ける民間事業者について、その該当性と選定の仕組みについてお伺いいたします。

 経営管理実施権の配分を受ける者については、効率的な施業を行うとともに、持続的に事業を行うことができる意欲と能力のある者が望ましいのは言うまでもありません。しかし、その該当性について、十分な意欲が認められたとしても、間伐や主伐、造林、保育といった広範な取組が単独では十分に行えない事業者もあると考えます。

 事業者の複数が共同で応募し施業を実施するケースを認めるなど、柔軟な経営管理実施権の設定を実現し、地域の実情や雇用に十分配慮した事業者選定が必要と考えますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

 一方、林業経営者は、市町村域を越えて活動する人も多く、実際の森林の多くが市町村域をまたいで存在することを考えれば、個々の市町村だけでの対応は、現実的には負担も大きく、財政面や体力的にも困難なケースも少なくないと考えます。

 こうしたことを踏まえ、単独の市町村での対応に加え、複数自治体での取組や、都道府県の能力を生かした業務分担も必要と考えます。

 また、本法律案では、民間事業者の募集や公表においては都道府県が実施することとしておりますが、そうした場合においても、経営管理権を有する市町村の意向に最大限の配慮を欠いてはならないと考えます。

 都道府県による業務の分担や、その市町村への配慮、さらに複数の市町村の共同による事業の推進について、大臣の見解を伺います。

 また、本法律案による新しい森林管理システムの成否を分けるのは、何といっても、担い手の確保、育成によるところが大きいと言わざるを得ません。

 この担い手対策については、平成十五年より強力に推進してきた緑の雇用事業が大きな成果を上げてきております。

 国内の全産業が、三十五歳未満の労働者の割合を示す若年者率で年々低下の傾向を示し、六十五歳以上の高齢化率が毎年上がり続ける中、林業においては、一九九〇年に六%までに落ち込んだ若年者率を大幅に改善、高齢化率では、二〇〇〇年の三〇%をピークとして、これまでに着実に減少傾向を維持しているのであります。

 しかし、林業従事者数自体は既に五万人を下回り、担い手問題は決して楽観できる状況ではありません。

 今後、緑の雇用事業についてより一層の充実を図り、労働安全環境の抜本的な改善や生産性向上のための機械化の促進などを目に見える形で大きく前に進めていく必要があります。

 森林国日本を支える担い手となる意欲と能力のある林業経営者、林業従事者の確保、育成について今後どのように進めていかれるのか、大臣の見解を伺います。

 最後に、森林は、土壌保全による湛水機能と相まって、水害や土砂災害を防止し、土地の劣化や干ばつ、砂漠化をも防ぎます。保水と気温調整の機能も持ち、気候変動を抑制し、陸域の生物の八割に生息と生育の場を与え、陸上最も豊かな生態系と生物多様性を維持しています。森の豊かさは、水源涵養、食料、燃料、木材の供給にとどまらず、海や川の豊かさを生み出し、何よりも、生命にとって不可欠な酸素をつくり出しております。

 世界じゅうの森林が、十七世紀以降、驚くほどの速度で消滅していく中、我が国が森林国であるという事実は、まことに誇るべきことであると思います。

 この日本の森林の豊かさを守る上で、主務大臣たる農林水産大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 佐藤議員の質問にお答えをいたします。

 森林経営管理法案の効果についてのお尋ねがありました。

 我が国の森林は、国土の保全、水源の涵養、温暖化防止などの公益的機能を有しているほか、資源が充実し、主伐期を迎えつつあることから、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理を両立していく必要があります。

 しかしながら、森林所有者の経営意欲が低下している中、所有者不明の森林の増加も相まって、適切な森林整備が進まず、林業の発展のみならず、公益的機能の維持にも支障が生ずることが懸念されているところであります。

 このため、本法案においては、森林所有者みずから経営管理できない森林のうち、経済ベースに乗る森林については、その経営管理権限を市町村を介して意欲と能力のある林業経営者に集積、集約化するとともに、経済ベースに乗らない森林については、市町村が公的に管理するという仕組みを創設することとしております。

 このような仕組みにより、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図り、次世代に豊かな森林を引き継いでまいります。

 国が市町村に対して行う支援についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、市町村には、地域の森林の経営管理が円滑に行われるように主体的に取り組むことが求められるため、実施体制の整備が重要な課題と認識しております。

 具体的には、市町村が林業技術者を地域林政アドバイザーとして雇用する取組を推進するとともに、本法案においては、都道府県による市町村の事務の代替執行ができる制度を導入するなど、必要な体制整備に向けた取組を進めることとしております。

 民間事業者の選定についてのお尋ねがありました。

 経営管理実施権の設定を受ける民間事業者については、森林所有者の所得向上につながるよう効率的かつ持続的に林業経営を行うことが可能な者を考えており、複数の事業者が連携する場合も想定しています。

 市町村が経営管理実施権を設定する民間事業者を選定する際には、地域の雇用に貢献する民間事業者を優先するなど、地域の実情に配慮することができるように柔軟な運用とする考えであります。

 都道府県と市町村の業務分担や事業推進のあり方についてのお尋ねがありました。

 森林経営管理法を実施していくためには、都道府県と市町村の業務分担や近隣市町村との連携が重要と認識しています。

 このため、本法案では、民間事業者の選定に当たっては、民間事業者が市町村域を越えて活動することを想定して、都道府県が民間事業者の募集、公表を行い、市町村は公表されている者の中から選定した事業者に経営管理実施権の設定を行うよう業務分担を定めています。

 この際、都道府県の募集、公表に当たっては、市町村の意向が反映されるように柔軟な運用とする考えであります。

 また、市町村による実行体制が整わない場合には、本法案では、都道府県による市町村の事務の代替執行により市町村の実行体制を補完できることとしていますが、近隣市町村と連携して共同で事業を行うことも可能である旨指導していきたいと考えています。

 担い手の確保、育成についてのお尋ねがありました。

 森林管理実施権の設定を受ける意欲と能力のある林業経営者や、現場で森林施業を行う林業従事者の役割は、新たな森林管理システムにおいて大変重要と考えています。

 意欲と能力のある林業経営者としては、森林所有者の所得向上につながるよう効率的かつ持続的に林業経営を行うことが望ましいと考えており、このような林業経営者を育成していくため、路網整備や高性能林業機械導入のほか、主伐、再造林の一貫作業の推進、製材業者との直接的な取引など、川下との連携強化などの取組を支援してまいる考えです。

 また、林業従事者については、新規就業者を確保し、現場を支える技能者として育成していくため、林業に就業するための基礎知識等を林業大学校で学ぶための経費を就業準備給付金として支給するほか、緑の雇用事業により、安全かつ効率的な森林施業に必要な知識、技術を実地で習得するために事業体等が行う研修への支援などに取り組んでまいる考えであります。

 こうした施策により、新たな森林管理システムの円滑な運用に向け、現場の担い手の育成、確保を図ってまいります。

 日本の森林の豊かさを守る決意についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、森林は、国土の保全、水源の涵養を始めとする、国民生活を支える重要な多面的機能を有しており、これらの機能を持続的に発展させていくことが大切であると考えております。

 我が国は、国土の約七割を森林が占める世界有数の森林国であり、特に近年は、戦後造成された人工林が本格的な利用期を迎えております。このような状況を踏まえ、我が国の森林資源を守りつつ、切って、使って、また植えるといった循環利用を進めていく必要があると考えております。

 私自身、林業の現場視察に何度も行きましたけれども、あの山奥に、私どもの先輩や先祖が小さな苗木を持ってあれだけの広大な面積を私たちのために植えて、その後、五十年、六十年たって、またその山奥からあの重いものを持ち出して、加工をして、そしてきれいにして、初めて私たちの目の前にあるんだなというものに思いをいたしますと、私は、正直、木材や木製品に対していとおしさを感じるようになりました。

 こうした思いから、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の確立を確実に進めていき、本法案を始めとする、川上から川下に至る施策を総合的に推進することにより、豊かな森林を今度は次世代に引き継いでまいりたいと考えております。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       財務大臣     麻生 太郎君

       外務大臣     河野 太郎君

       厚生労働大臣   加藤 勝信君

       農林水産大臣   齋藤  健君

 出席副大臣

       農林水産副大臣  礒崎 陽輔君


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