衆議院

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第14号 平成30年3月30日(金曜日)

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平成三十年三月三十日(金曜日)

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  平成三十年三月三十日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び生活保護法等の一部を改正する法律案(池田真紀君外九名提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び生活保護法等の一部を改正する法律案(池田真紀君外九名提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案及び池田真紀君外九名提出、生活保護法等の一部を改正する法律案について、順次趣旨の説明を求めます。厚生労働大臣加藤勝信君。

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) ただいま議題となりました生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年、単身世帯の増加や高齢化の進展、地域社会との関係性の希薄化等の中で、生活保護受給者数は減少傾向にあるものの、高齢の生活保護受給者は増加傾向にあるなど、生活に困窮する方への多様な支援の必要性が高まることが予想されます。

 こうした状況を踏まえ、生活保護に至る前の段階における支援を含め、生活に困窮する方等の一層の自立の促進を図るため、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、生活困窮者自立支援制度における自立支援を強化します。

 具体的には、生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化を図るため、福祉事務所設置自治体による就労準備支援事業や家計改善支援事業の実施を努力義務とするとともに、福祉事務所設置自治体の各部局が生活困窮者を把握したときは、自立相談支援事業等の利用勧奨を行うよう努めることとします。

 また、生活困窮世帯の子どもの学習支援事業において、生活習慣や育成環境の改善に関する助言等を行うとともに、一時生活支援事業において、その事業を利用していた方や居住に困難を抱える方であって地域社会から孤立している方に対し、訪問等による日常生活支援を行うことにより、これらの事業の強化を図ります。

 第二に、生活保護制度における自立支援の強化と制度の適正な運営の確保を図ります。

 具体的には、生活保護世帯の子どもの貧困の連鎖を断ち切るため、大学等への進学の際に進学準備給付金を支給するとともに、健康管理支援事業を創設し、データに基づいた生活習慣病の予防など、生活保護受給者の健康管理支援の取組を推進します。

 また、医療扶助について、医師等が医学的知見から後発医薬品の使用を問題ないと判断する場合、その使用を原則化します。

 加えて、一定の要件に該当する無料低額宿泊所等において、単独での居住が困難な生活保護受給者に対する日常生活支援を行う仕組みを創設するとともに、無料低額宿泊所の最低基準を設けること等により、貧困ビジネス対策を強化します。

 第三に、ひとり親家庭の生活の安定と自立の促進を図るため、児童扶養手当の支払回数を年三回から年六回に増加します。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、平成三十年十月一日としています。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

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議長(大島理森君) 提出者池田真紀君。

    〔池田真紀君登壇〕

池田真紀君 立憲民主党の池田真紀です。

 ただいま議題となりました生活保護法等の一部を改正する法律案、いわゆる子供の生活底上げ法案につきまして、提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 私は、下の子供が生まれる前に貧困状態となり、シングルマザーになりました。パートをかけ持ち、トリプルワークでも生活は厳しく、いっとき生活保護を受給し、私も子供たちも命が救われました。法の解釈と運用によって命が奪われることもある生活保護制度が、正しく運用されることで命が救われる、まさに憲法第二十五条の実現でした。

 私は、福祉事務所、生活保護行政を正したい、その思いで、福祉事務所現場で働きました。子供の貧困対策や権利擁護を行うフリーソーシャルワーカーとしても活動してまいりました。福祉の実態がまだまだ理解されていない、当事者の声や現場の声が政治にまだまだ届いていない、そのことから政治を志し、今ここにおります。

 そんな私からすれば、今回の政府の生活保護の切下げは、貧困家庭やその子供たちをますます苦しめるもので、強い怒りを感じざるを得ません。

 貧困家庭の子供たちの生活を底上げする法案こそが今必要であると考え、私たちは子供の生活底上げ法案を提出いたしました。

 それでは、法律案の提案理由について御説明いたします。

 我が国の子供の貧困率はOECD諸国の中でも高い水準にあります。特に、一人親家庭については、親の八割以上が働いているにもかかわらず、貧困率は五〇・八%に達するという特異な状況です。

 また、ことしの二月には、子どもの貧困対策センター、公益財団法人あすのばの調査によれば、低所得子育て家庭の約七割が経済的な理由で塾や習い事を諦めており、また、子供のアルバイト代を生活費や学費に充てている家庭が少なくないという厳しい生活実態が明らかになっています。

 こうした状況の中、今般、政府は、生活保護基準を見直し、生活扶助費を最大五%、平均で一・八%削減することを決定いたしました。これにより、生活保護を受けている子育て家庭のうち、四割以上で生活扶助が減額されることになります。まさに、子供の貧困対策に逆行するものです。

 例えば、児童養育加算は高校生まで拡大します、声を高らかに言いましたが、ゼロ歳から三歳までは五千円引き下がっています。学習支援費は小学生が半分に引き下げられました。乳児や小学生というみずから声を上げることができない小さい子供たちを狙い撃ちにして、言っていることもやっていることもこんなにも違う、子供だましで、国民だましで、とても不誠実であります。

 最後のセーフティーネットであるはずの生活保護は今や、過去にない、安倍政権によって、底支えのできない底抜け法となってしまいました。

 また、今回の見直しでは、学習支援費が何と実費払いになります。これは戦後例にない大変な問題です。

 小さな子供たちに、ごく少額の金額を、領収証を下さいと子供たちに言わせるんですか。どれだけ酷なことか、どれだけ心理的に影響するのか。私が母ならば、考えるだけで苦しくてたまりません。

 また、現場のケースワーカー、その事務処理も、そして専門職のソーシャルワーカーとしても、学習支援費の実費払いの運用や、人権差別でもあるジェネリック原則化などは、子供へのいじめ、子供への心理的虐待そのものであり、クラブ活動をやめる、不登校になる子供さえ出かねません。まさに、子供の心理的虐待、子供の不登校推進です。子供たちが自死に追い込まれることがないか、この先とても心配でなりません。

 安倍総理、格差の固定化は決してあってはならないと言いながら、実際には格差をますます広げる政策を進めているではありませんか。言行不一致だと思います。

 貧困の責任は子供たちにはありません。今こそ貧困の連鎖を断ち切るべきときではないでしょうか。貧困の連鎖を断ち切り、全ての子供たちが夢と希望を持って、みずからの将来を切り開いて進むことができる社会を実現するために、大学等に進学する支援を含め、子育て家庭の生活を底上げすることが必要不可欠と考え、ここに法律案を提出した次第であります。それが理由です。

 次に、本法律案の概要を御説明いたします。

 第一に、この法律の公布後一年以内に、生活保護基準の改定方法等、あり方を見直し、必要な措置を講ずることとし、この措置が講ぜられるまでの間、現行の基準に比して要保護者に不利な内容の基準を定めてはならないこととしております。

 第二に、生活保護における世帯単位の原則運用に当たっては、要保護者の世帯に属する子供が世帯を単位とする保護を受けつつ大学等に通えることができるように配慮しなければならないとしております。いわゆる世帯分離をしないということです。

 第三に、児童扶養手当の支給要件に係る児童、障害基礎年金の加算対象に係る子及び遺族基礎年金の支給対象、加算対象に係る子を、二十未満の者に拡大することとしております。

 第四に、児童扶養手当の月額を、一万円増額することとしております。

 第五に、児童扶養手当の支払い期月について、年三回から、毎月に変更することとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及び内容の概要であります。

 貧困家庭や貧困な子供たちを苦しめる政治を私たちは黙って許すわけにはいきません。貧困家庭の子供たちが、クラブ活動や塾や進学が可能になるようにしたい。子供貧困対策は、与野党が一致できるはずです。全ての子供たちのために、何とぞ御賛同いただきますようお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び生活保護法等の一部を改正する法律案(池田真紀君外九名提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。渡辺孝一君。

    〔渡辺孝一君登壇〕

渡辺孝一君 自由民主党の渡辺孝一でございます。

 ただいま議題となりました政府提出の生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案について、自由民主党を代表して質問いたします。(拍手)

 五年前、世界金融危機そして東日本大震災後の景気の低迷の中で、生活保護に陥る前の段階で生活困窮者の自立支援を行う生活困窮者自立支援法が創設されました。また同時に、生活保護法の改正により、生活保護受給者の就労支援事業の法定化などの自立支援の強化が行われました。

 この間、アベノミクスにより、政権交代後、極めて短い期間で、デフレではないという状況をつくり出す中、雇用環境は大きく改善しており、全国で経済の好循環が生まれています。安倍内閣発足後の所得格差を示す指標の動きを見ると、所得再配分後のジニ係数は、おおむね横ばいで推移しており、また、相対的貧困率は、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で、改善に転じています。

 こうした中で、現役世代の生活保護受給世帯は、政権交代後である平成二十五年二月のピーク時の約八十八万世帯から約十二万世帯減少し、現在では約七十七万世帯となっています。

 一方で、高齢の生活保護世帯は増加傾向にあり、今後一層の高齢化の進展や単身世帯の増加が予想される中で、今後も増加傾向が続くのではないかと考えられます。

 そこで、まず、本法案の改正の狙いについてお伺いいたします。

 所得格差の改善の中で、今、なぜ生活困窮者自立支援法等の改正を行う必要があるのか、生活に困窮する方を取り巻く現状についての認識と、今回の法案の趣旨、目指すべき方向性について、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、地域における生活困窮者を支援する体制づくりについてお伺いいたします。

 生活困窮状態に至る背景は多様であり、例えば、失業や健康状態の悪化、いわゆる社会的孤立などがあると聞いております。生活困窮者お一人お一人のニーズに対応し、自立に向けたきめ細かい支援を行う必要があると考えますが、地域や自治体の取組にも温度差があることが課題として指摘されており、各地域において必要な支援を行える体制づくりを更に進めていくことが急務と考えます。

 特に、一般就労に向けた準備としての基礎能力の習得を支援する就労準備支援事業、家計に関する専門的な相談などを行う家計改善支援事業については、実施自治体の実践を見ると、特にその効果があらわれており、必須事業化を求める声も大きいと伺っております。これらの事業の全国的な実施に向けた推進策について、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、生活保護の医療扶助の適正化についてお伺いいたします。

 生活保護受給者のおよそ半数は六十五歳以上の高齢者であり、今後も社会全体の高齢化の進展に伴って増加していくものと思われます。また、生活保護受給者は、疾病や障害などさまざまな要因で生活保護を受給されており、医療を必要とされる方が非常に多いと熟知しております。

 この中で、生活保護受給者に係る医療扶助費は、約三・八兆円の生活保護費に係る予算の約半分を占めており、医療を必要とする生活保護受給者に対してしっかりと医療の給付を行うと同時に、制度の適正化に向けた見直しは不断に行っていかなければならないと考えます。

 今後の改正法案において、医療扶助の適正化にどのように取り組んでいくのか、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、児童扶養手当についてお伺いいたします。

 本法案には、児童扶養手当の支払い回数について、現在の年三回から年六回にふやすことが盛り込まれております。この支払い回数の見直しについては、かねてより、一人親家庭の皆様からも数多く要望が寄せられておりました。

 今回のこの改正の意義について、改めて、広く国民の皆様に御説明いただきたく、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 最後に、総理にお伺いいたします。

 政権交代後、雇用環境が改善し、経済が好転する中で、子供の相対的貧困率は、集計開始以来初めて低下しました。

 こうした流れを一層推し進め、格差が固定化せず、全ての子供たちが夢に向かって頑張ることができる環境を整えていくことこそ、政治の大きな役割の一つであります。

 総理は、これまでも、給付型奨学金の創設を始めとして、子供の貧困への対策に次々と取り組んでこられました。

 現状では、生活保護受給世帯の子供の大学等への進学率は約三割であり、一般家庭の七割と比べて低い状況にあるということは事実であります。

 貧困の連鎖を断ち切り、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば大学等に進学できる社会へと改革していくため、生活困窮世帯の子供たちへの支援の充実にどのように取り組んでいくのか、総理の決意をお伺いし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 渡辺孝一議員にお答えをいたします。

 生活困窮世帯の子供たちへの支援の充実についてお尋ねがありました。

 子供の将来がその生まれ育った環境により左右されることのないよう、子供の貧困対策に取り組むことは極めて重要であります。

 御指摘のように、生活保護世帯の子供の大学等への進学率は一般世帯と比較して低い状況であり、貧困が世代を超えて連鎖しないようにする観点から、生活保護世帯の子供の大学等への進学を支援していくことが必要であります。

 このため、本法案では、生活保護世帯の子供について、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設するとともに、あわせて、平成三十年度予算において、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめることといたしました。

 さらに、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば大学等に進学できる社会へと改革するため、昨年十二月に取りまとめた新しい経済政策パッケージにおいて、生活保護世帯を含めた所得が低い家庭の子供たち、真に支援の必要な子供たちの高等教育の無償化を実現することとしております。

 これらの施策を通じて、格差が固定化せずに、全ての子供たちが夢に向かって頑張ることができる社会をつくってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 渡辺孝一議員より、四問御質問いただきました。

 生活に困窮する方を取り巻く現状の認識、本案の趣旨についてお尋ねがありました。

 近年、単身世帯の増加や高齢化の進展、地域社会との関係性の希薄化などの中で、生活保護受給者数は減少傾向にあるものの、高齢の生活保護受給者は増加傾向にあるなど、生活に困窮する方への多様な支援の必要性が高まることが予想されます。

 本法案は、こうした状況を踏まえ、生活困窮者自立支援、生活保護両制度における自立支援の強化、生活保護制度の適正な運営の確保、貧困ビジネス対策の強化、児童扶養手当の支払い回数の増加等を内容とするものであり、これらの改正により、生活保護に至る前の段階における支援を含め、生活に困窮する方の一層の自立の促進を図ってまいります。

 就労準備支援事業及び家計改善支援事業の全国的な実施に向けた推進策についてお尋ねがありました。

 生活に困窮している方々については、就労、家計などさまざまな面から自立に向けた支援をしていくことが重要であります。

 このため、本法案では、就労準備と家計改善の事業の実施を努力義務化し、適切な実施を図るための指針の策定を行うこととともに、自立相談支援事業に加え、両事業が一体的に行われている場合には家計改善支援事業の補助率を引き上げる等の措置を講ずることにしており、これにより自立相談支援事業を含めた一体的実施を促進していくこととしています。

 こうした方策について、自治体の実情に留意しながら、今後三年間を集中実施期間として計画的に進めてまいります。

 医療扶助の適正化についてお尋ねがありました。

 生活保護受給者の多くが何らかの疾病により医療機関を受診しており、いわゆるメタボリックシンドロームなど健康上の課題を抱える者が多いことから、その特性に応じて健康の保持増進を図る取組を進めることが重要です。

 このため、今般の改正法案では、生活習慣病の予防や重症化予防を推進する健康管理支援事業を創設し、治療中断者などに治療のための受診を促したり、健康な生活習慣に向けた支援などを行うこととしております。

 また、後発医薬品の使用促進については、使用割合は上昇しているものの、近年、伸び率は鈍化しています。このため、今般の改正法案では、後発医薬品の使用を更に進めるため、医師等が医学的知見に基づき後発医薬品を使用することができると認める場合に、原則として後発医薬品を給付することとしております。

 これらの取組を通じて、生活保護受給者の健康の保持増進に努めるとともに、必要な医療の給付を確保しつつ、医療扶助の適正化に取り組んでまいります。

 児童扶養手当についてお尋ねがございました。

 今回の見直しは、地方公共団体における手当の支給事務の事務負担などを考慮しつつ、議員御指摘のような、一人親家庭の皆様からの御要望や、平成二十八年の改正児童扶養手当法の附帯決議を踏まえ、支払い回数を年三回から年六回にふやすものであります。

 その際、奇数月の支払いとすることで、児童手当の支払い月との重複が避けられ、収入の波が小さくなるほか、入学準備費用が必要な三月、夏休み期間に入る七月など、支出が多くなる時期に収入が入るようになります。これにより、家計管理がより容易となり、一人親家庭の家計の安定を通じ、自立の促進に寄与するものと考えております。

 以上であります。(拍手)

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議長(大島理森君) 中谷一馬君。

    〔中谷一馬君登壇〕

中谷一馬君 立憲民主党の中谷一馬です。

 立憲民主党・市民クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 私は、自分自身が母子世帯の貧困家庭で育った原体験から、世の中の貧困と暴力を根絶したい、平和で豊かな社会がいつもいつまでも続く世の中をつくりたい、こんな思いで政治の道を志しました。

 父と母は、私が小学生のときに離婚しました。母は、私と妹二人、きょうだい三人を何とか養っていこうと早朝から深夜まで働いてくれましたが、働いても働いても、生活は厳しくなるばかりでした。

 一人親家庭のお母さんたちは、八一・八%の人が働いているにもかかわらず、平均収入は約二百万円にすぎません。そして、一人親世帯の相対的貧困率は五〇・八%に達します。この状態は、本人の努力が足りないのではなく、多数の一人親家庭のお父さん、お母さんが必死に働いても、ワーキングプア、貧困状態に陥るという社会的な構造に欠陥があることの証左です。

 そして、働き続けた母は、ある時期に体を壊し、寝込むようになりました。その後、うちは生活保護を受けることとなりました。そのとき、子供だった私は、ただ無力で、そのことに悔しさを感じながらも、母のかわりに働きに出て家計を支える力はありませんでした。

 そうした環境で育った私から見て、政府提出法案に足りないものは、市民生活に対する想像力と社会的弱者に対する共感力です。

 そこで、総理に伺います。

 総理は、今までの人生の中で、生活するお金がなくて困った経験はありますか。エピソードなどがあれば教えてください。

 国民生活に大きな影響を与える立場にある者が、生活者の声を聞くことなく、そろばんだけをはじいて、実態を踏まえない、机上の空論で政策をつくれば、苦しむのは国民です。特に、本年十月から実施しようとしている生活保護基準の見直しでは、生活保護費を総額で百六十億円カットし、子供がいる世帯の四割の生活扶助が切り下げられる内容となっており、看過することはできません。

 総理に基本認識を伺います。

 生活保護は、憲法で規定されている健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障し、自立を助ける制度ですが、この健康で文化的な最低限度の生活に対する認識を安倍総理御自身はどのように捉えているのか、見解を伺います。

 また、政府提案においては、生活保護受給者のみにジェネリック医薬品の使用を原則化するとのことでありますが、国民全体ではなく、生活保護受給者に対してのみ後発医薬品を原則化することは、明らかな差別であり、人権侵害であります。総理の所見は、これはどのように考えているのか、伺います。

 今回の生活保護基準の引下げは、所得下位一〇%層と比較して生活扶助が算定されていますが、その層の経済状況は十年前と比べて悪化しており、アベノミクスの負の要素が格差を広げ、その大部分が相対的貧困線以下の水準です。最低賃金、介護保険料、就学援助などの基準にも直結することから、国民生活に広範な悪影響を与えます。

 政府の経済政策における失敗を社会的弱者に押しつけるような政策は断じて許すことはできません。今求められているのは、切り捨てられている四割の人たちに寄り添う政策ではありませんか。

 総理、今ならまだ間に合います。今回の引下げは、子供の貧困対策、貧困の連鎖解消に真っ向から反するものであり、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が脅かされる、受給者には厳しい内容です。生活保護基準の引下げは、安倍総理の決断で、この場で撤回していただきたいと考えますが、いかがでしょうか。見解を伺います。

 また、野党提案の子供生活法案では、水準均衡方式を見直すとありますが、この御趣旨を御説明ください。

 生活保護基準を検討する部会では、利用当事者や関連制度で影響を受ける人たちからの意見聴取が全くないという専門家の指摘がありました。

 二人の子供がいるお母さんが毎月十四万円の生活扶助で暮らすことが、七十五歳以上のおじいちゃん、おばあちゃんが約六万円の生活扶助で暮らすことがどれだけ大変か、総理は本当に理解されているのでしょうか。こうした方々の声に耳を傾けていれば、こんな政策決定はできないと思います。

 そこで、安倍総理に伺います。

 生活に困っている国民の人生に更に追い打ちをかけるような政策決定をするのなら、その人たちの声をしっかりと聞くべきです。この法案を国会へ提出するに当たって、総理はみずからが、生活に困窮している方々の話を五人でも十人でも聞かれたことがあるのか、教えてください。

 また、政府として、利用当事者など影響を強く受ける人々の生活実態について大規模なインタビューや家計状況調査を実施し、現場の声に耳を傾けるべきであると考えますが、いかがでしょうか。総理の所見を伺います。

 政府提案では、ゼロ歳から三歳未満児の児童養育加算を月額五千円も引き下げます。また、母子加算は月平均一万七千円に引き下げ、学習支援費も、実費払いへの変更と、上限を現行の支給額と比較して年額一万五千円以上も減額するとしています。子供たちが塾やクラブ活動を断念することにもつながりかねません。これで子供の貧困の連鎖を断ち切ると政府が口先だけのスローガンを掲げていることは、笑止千万であります。

 子供の貧困対策を行っている公益財団法人あすのばの入学・新生活応援給付金を受け取った子供からはこんな声が寄せられております。自分は野球部のマネジャーを務めていました。けれど、母子家庭ということもあり、下に二人、妹と弟がいることもあり、部活動をやめざるを得ない状況になりました。母子家庭がこんなにつらくて苦しくて、父親がいないなんてこんなにつらいことだと初めて気づきました。母は毎日死ぬ気で働いて、朝もお昼も、お弁当も夜御飯もつくってくれて、母のありがたみが初めてわかりました。もし部活動をやめたら、家族のことを助けていこうと思います。この声を聞いて、総理はどう思われますか。

 私は、子供たちを貧困から救い、平等な教育環境を整備し、健全な成長を支えて次世代へ送り出すことは、私たち当代の大人が担う責任であると思いますが、皆様いかがでしょうか。

 総理が真に子供の貧困対策を行うのであれば、実態調査を行った上で進めてください。

 また、児童養育加算、母子加算、学習支援費の引下げと実費支給への変更を撤回すべきと考えます。いかがでしょうか。

 さらに、児童扶養手当を二十歳まで延長した上で、一世帯当たり月一万円増額し、支払い回数は、家計管理支援のため、毎月払いにすべきと考えますが、総理の所見を伺います。

 そして、野党案でも児童扶養手当の提案がされておりますが、詳細について伺います。

 全国大学生協連の調査によれば、受験や入学準備にかかる費用は、自宅生で約五十万円、自宅外生では約百三十万円程度かかるそうです。現在政府が提案している進学準備給付金は、自宅生が十万円、自宅外生が三十万円の支援であり、単純計算すれば、自宅生は四十万円、自宅外生は百万円を自分で用意しなくてはなりません。

 そもそも、月十数万円の給付で子育てをしながらぎりぎりの生活をしている生活保護世帯が、どうやってこのお金を用意するのでしょうか。総理は、もし自分の立場だったら、本当にこれで、生活をしながら、子供一人当たり四十万から百万の進学準備費用を貯金できると思いますか。私は厳しいと思います。

 安倍総理が、子供の貧困の連鎖を断ち切るため、大学、専門学校等への進学支援を本気で行うつもりなら、進学準備費用をしっかりと試算した上で進学準備金を給付すべきと考えますが、いかがでしょうか。総理の所見を伺います。

 現行制度では、生活保護世帯の子供が高校を卒業すると、世帯分離が行われ、生活保護費の支給額が下がることから、大学等への進学の妨げとなります。

 私も、専門学校に進学した際、授業や研修を受け、国家試験勉強をしながら、入学金の借金返済と卒業までにかかる授業料と生活費を確保しなければならず、平均して月五百時間程度を学業と労働関係に費やすといった生活環境でした。

 給付型奨学金に関しては、成績不問とした上で、学ぶ意欲のある子供たちに範囲を拡大すべきと考えます。また、高校生への給付型奨学金は、格差をなくし、入学準備金制度を新設すべきです。授業料は減免制度を大幅に拡充するなどして、教育費用の無償化を推進し、経済的理由で進学を断念する子供をゼロにするような取組を進めるべきであると考えますが、いかがでしょうか。

 また、高校卒業後も世帯分離をしなくてよいと総理がこの場で明言すれば、貧困に苦しむ多くの子供たちが大学や専門学校などに進学できるようになります。

 総理、貧困の連鎖を断ち切る、この言葉が本気なら、運用改善をこの場で御決断ください。見解を伺います。

 そして、野党案においても世帯分離の運用改善について提案されておりますので、詳細について伺います。

 与野党を超えた、皆様に訴えます。

 今もなお、昔の我が家と同じような厳しい家庭環境で苦しんでいる親子がいます。特に子供たちは、自分の努力だけでは貧困から抜け出すことはできない。だからこそ、どんな家庭に生まれた子供であったとしても健やかに成長できる環境をともにつくりましょう。それが、私たち政治に携わる者へ与えられている使命です。

 最後に、総理が御出席されている貴重な機会でありますので、森友問題について伺います。

 刑事訴追のおそれを理由とした証言拒否が繰り返され、真相解明がされず、大変残念でありました。誰の言葉かと思ったら、籠池氏証人喚問後の総理御自身の答弁です。

 しかし、先日、総理は、佐川氏の証人喚問について、政府の立場として一貫してコメントは述べないとうそぶきました。都合がよいとぺらぺらしゃべり、都合が悪いと逃げ回る。スーパー御都合主義ではないですか。

 刑事訴追を理由にした証言拒否は、籠池氏は七回ほど、佐川氏は五十回にも及ぶとされます。

 総理、籠池氏の証人喚問では、真相解明されないと明確に述べながら、籠池氏の何倍も刑事訴追を理由に証言拒否をした佐川氏の場合には、真相解明されないとなぜおっしゃれないのですか。納得できる理由をお示しください。

 また、森友問題に総理や昭恵夫人は巻き込まれた、だまされた、私たちは被害者なのだとお思いですか。それとも、財務官僚が決裁文書の改ざんにまで手を染め、亡くなられる方まで出た、前代未聞のこの大問題の当事者の一人であるとお考えですか。御認識を伺います。

 以上で私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中谷一馬議員にお答えをいたします。

 生活するお金がなくて困った経験があるかとのお尋ねがありました。

 私には、お尋ねのような経験はありません。想像力と共感力が欠如しているのではないかとの御批判は、甘んじて受けなければならないと思います。

 しかし、それでもなお、私たち政治家は責任を果たさなければなりません。子供たちの無限の可能性が、家庭の経済事情に左右されることはあってはならない。これは政治家としての私の信念であります。

 その強い思いのもとに、総理大臣就任後も、私は、地元や東京の児童養護施設などを訪問し、厳しい環境にある子供たちの声に直接耳を傾け、そして、それを政策に反映させてまいりました。

 これまでに、児童扶養手当については、一人親家庭の第二子は三十六年ぶり、第三子以降は二十二年ぶりに加算を倍増しました。さらに、本年からは、所得制限を引き上げ、五十万を超える世帯で支給額をふやします。返還不要、給付型の奨学金制度も新しく創設しました。

 また、今回の法案においても、生活保護世帯の子供たちの大学進学を援助する新しい制度を創設します。

 政治は結果です。子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる日本をつくる。そのために、今後とも、教育の無償化を始め必要な政策を立案し、そしてしっかりと実現していく決意であります。

 健康で文化的な最低限度の生活に対する認識についてお尋ねがありました。

 生活保護制度は、全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると規定した憲法第二十五条の理念に基づく、最後のセーフティーネットとしての制度です。

 この生活保護の基準については、健康で文化的な最低限度の生活を保障する観点から適正な水準となるよう、専門的、科学的見地から定期的に検証し、決定するべきものであると考えています。

 そうしたことを通じて、今後とも、最後のセーフティーネットとして、生活保護制度をしっかりと機能させていくことが必要と考えております。

 後発医薬品の使用についてお尋ねがありました。

 後発医薬品は、先発医薬品と有効性及び安全性が同等であるものとして承認されているものであり、政府としては、医療全体においてその使用を促進しているところです。

 これまでも、生活保護制度においては、平成二十五年に、後発医薬品を患者に可能な限り促すことを法律に規定して、使用促進に取り組んでいます。

 この取組を更に推進するため、今回の改正により後発医薬品の使用を原則化しますが、医師等が医学的知見に基づき後発医薬品を処方することが適当でないと判断する場合は、先発医薬品による給付が行われることになります。

 生活保護基準の見直しについてお尋ねがありました。

 今般の生活保護基準の検証では、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性によって、一般の低所得世帯の消費の実態より生活扶助基準額が高い場合と低い場合の双方があると確認されました。

 今回、実態と乖離のある基準を世帯類型ごとに是正したため、その結果、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じています。

 その上で、モデル世帯で比較すると、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。

 なお、減額となる世帯への影響を緩和するため……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛にお願いします。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) 減額幅を最大でも五%以内としつつ、三年をかけて段階的に実施することにしています。

 今般の生活保護基準の見直しについては、専門的かつ科学的に検証を行った結果に基づき、最低限度の生活を保障する適切な生活保護基準となるよう行うものであり、見直しを撤回することは考えておりません。

 生活に困窮する方の声についてお尋ねがありました。

 生活保護を受給されている方やその関係者からは、日ごろから、生活保護制度を所管する厚生労働省において、要望書等をいただいたり直接御意見をいただいたりしていると承知しております。今回の生活保護基準の見直しについても、先週は担当局長が、今週は高木副大臣が受給者の方々に直接お会いするなど、さまざまな機会に御意見等をいただいていると聞いております。

 受給者の方々の御意見等については、制度を所管している厚生労働大臣、あるいは役所からしっかりと承りたい、このように考えております。

 また、生活保護受給世帯の家計の状況や生活意識を把握するための調査を実施し、多角的に生活実態の把握に努めているところです。

 子供の貧困対策についてお尋ねがありました。

 子供、若者こそが我が国の未来であり、世代を超えた貧困の連鎖を断ち切り、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちが夢に向かって頑張ることができる日本をつくってまいります。

 今回の生活保護基準の検証においては、子供がいる世帯に対する加算や教育に関する給付について、全国消費実態調査等のデータに基づき、子供の貧困対策の観点を踏まえて検証を行っております。

 その結果、子供のいる世帯については、母子加算の見直しを行う一方で、児童養育加算の給付対象者を高校生に拡大することなどにより、その約六割では基準額が増額となる見込みとなっています。

 さらに、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設します。また、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめるなど、生活保護世帯の子供に対する支援を強化します。

 加えて、生活保護以外では、一人親家庭に対する児童扶養手当について、所得制限を引き上げ、五十万を超える世帯で支給額をふやす、生活困窮者自立支援制度においても高校生世代や小学生への学習支援を強化するなど、子供の貧困対策を強化することとしています。

 また、児童扶養手当に関する御提案がありましたが、政府としては、先ほど申し上げた所得制限の引上げのほか、本法案において、支給回数について、現行の年三回から年六回に増加させる見直しを行うこととしております。

 進学準備給付金についてお尋ねがありました。

 本法案においては、生活保護世帯の子供について、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設します。

 この給付額については、民間団体が実施した調査等を参考に、総合的に勘案して決定したものであり、この給付のほかに、必要に応じて、奨学金や高校生時代の預貯金なども合わせて、進学に向けた準備を行うことになると考えています。

 また、平成三十年度予算においては、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめることにいたしました。

 さらに、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば大学等に進学できる社会へと改革するため、昨年十二月に取りまとめた新しい経済政策パッケージにおいて、生活保護世帯を含めた所得が低い家庭の子供たち、真に支援の必要な子供たちの高等教育の無償化を実現することとしております。

 これらの施策を通じて、格差が固定せず、全ての子供たちが夢に向かって頑張ることができる社会をつくってまいります。

 教育費用の無償化についてお尋ねがありました。

 どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば高校、高専にも、専修学校、大学にも行くことができるようにすることが重要です。

 このため、政府としては、本年度、給付型奨学金を創設するとともに、無利子奨学金について、低所得者世帯の子供に係る成績基準を実質的に撤廃するとともに、残存適格者を解消しました。また、高校生等奨学給付金についても、その充実を図ったところです。

 さらに、この四月からは、新たに一万七千人の授業料を減免するとともに、給付型奨学金についてその対象を二万人に拡充するなど、教育費負担の軽減策の充実を図ることとしています。

 加えて、生活保護世帯の子供について、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設するとともに、自宅から大学等に進学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめることとしました。

 新しい経済政策パッケージにおいては、真に必要な子供たちに限った高等教育無償化など、人への投資を拡充することとしており、その詳細な制度設計について、この夏までに結論を出してまいります。

 教育費負担の軽減については、優先順位をつけて諸施策の充実を図っていくことが重要であり、必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組んでまいります。

 森友学園への国有地売却についてお尋ねがありました。

 二十七日に行われた証人喚問は、書換え問題の真相を明らかにする重要な機会でありました。しかし、書換え問題については、いまだ政府として調査中であります。そういう意味で、証人喚問におけるやりとりについて、政府側としてコメントすることは適当でないと考えたものです。

 いずれにせよ、今般の書換え問題により、行政全体の信頼が損なわれました。行政の長として、責任を痛感しております。行政の最終責任は、総理大臣たる私にあります。国民の皆様に対し、深くおわびを申し上げます。

 国民の皆様から厳しい目線が向けられていることを真摯に受けとめながら、なぜこのようなことが起こったのか、全てを解明、明らかにするために、徹底的に調査を行い、全容を解明し、再発防止に全力を挙げてまいります。

 また、私の妻が一時期名誉校長を務めていたこともあり、国民の皆様から疑念の目を向けられたとしても、もっともだと思っております。

 今から思えば、妻は名誉会長を受けるべきではなかったと思っており、その点は反省しております。現在は、名誉職は基本的に辞退しています。

 森友学園への国有地売却に関しては、今後ともしっかりと説明責任を果たしていきたいと考えております。(拍手)

    〔池田真紀君登壇〕

池田真紀君 中谷一馬議員より、水準均衡方式の見直しについてお尋ねがありました。

 社会保障審議会生活保護基準部会の委員からも、現行制度の検証方式には限界が来ている、大幅に見直さなければいけないという議論がたくさんあったなど、現行方式についての疑問が呈されています。生活保護基準の決め方、引下げによって低所得世帯の暮らしがどう変わったかは大変重要なポイントであり、これらについて、前回も、そして前々回も報告で指摘をされていたにもかかわらず、この五年間、何も行われず、前に進まず、同じ方式が使われていることには、大きな問題だと考えております。

 今回の見直し後の生活保護基準は、本当に憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を営むのに足るものなのか、極めて疑わしいと言わざるを得ません。

 そこで、本法案では、平成二十九年に行われた生活保護基準の検証の際に用いられた手法による基準の改定によっては、要保護者の最低生活の需要を満たすに十分なものでなくなることが懸念されていることに鑑み、法律の公布後一年以内に、生活保護基準の改定方法等のあり方を見直し、生活保護基準の改定等の必要な措置を講ずるとし、この措置が講ぜられるまでの間、現行の基準に比して要保護者に不利な内容の基準は定めてはならないとしております。

 そして、この基準を決める際の相対的貧困率でございますけれども、総務省の調査によりますと、中央値が下がっております。平成二十六年でもこれまでになく下がっておるというのが、相対的貧困率の実態でございます。

 また、子供の貧困率でいいましても、総務省の調査によりますと、子供の相対的貧困率の推移は過去で最低になっております。そして、世界で比較をしても、OECD三十四カ国のうち三十三番目という大変低い数値であります。

 このような話の中で、貧困家庭の七割が大変厳しいというアンケート調査があったという発言がございました。それに対して、国会の中で首相は、そんなことはないということで、貧困悪化を否定しております。

 しかし、可処分所得の中央値が下がっているという状況の中で、貧困は確実に悪化していると思います。もしそうでないのであれば、そのデータをもう一度見返す必要がある。そして、今の生活保護受給世帯、あるいはそれよりも低い生活困窮者の方々の実態を調査すべきだと考えています。

 日本学生支援機構の奨学金の返済者のうち、この中で、返済ができなくなった、自己破産を行った人たちというものが、この間、過去最高になっています。さらには、貯蓄ゼロ世帯も過去最高になっており、単身世帯では半数近くになっている。これでこの国の、日本が本当に豊かになってきたと言えるのでしょうか。

 消費実態が下がる中で、この基準値に合わせて基準改定を行うということではなくて、きちっとした、基準を見直すということを今回の法案で提起をさせていただいております。

 そして、二つ目になりますが、児童扶養手当の毎月の支払いについてお尋ねがありました。

 これは、御指摘のとおり、毎月支払いにすることによって、毎月の決まった支出に備えるということができます。月ごとに大きな収入の波のある一人親家庭の家計の安定を図ることができると考えています。これは、関係団体、子どもの貧困対策センターからも要望があるところでございます。本来であれば、これらを把握している行政がしっかりと把握をしなければならない課題でもございます。

 また、生活保護に限って言えば、毎月の支払いにすることによって、生活保護受給者の所得あるいは保護費といったものが一定になります。これは、現場の中でも、返還が出たり、過払いが出たり、それは負担が当事者にかかっていく、自治体によっても負担がかかっていく、こういうことからも、毎月払いにすることを提起しております。

 そして、問い三番でございますが、世帯分離についての運用改善についてお尋ねがございました。

 実際に、生活保護世帯の子供の大学進学率では、答弁がありましたとおり、全世帯の七三・二%の半分以下です。このような実態を踏まえて、関係団体の子どもの貧困対策センターあすのばからは、貧困の連鎖を断ち切るためには、大学、専門学校への進学における世帯分離を廃止し、生活保護を受けていても進学できる制度にしてほしいという要望を受けております。

 大学進学率が七割を超えている状況、民間のほかの調査によると、八割を超えるというデータもございます。こういう状況下であれば、高校の授業料を対象とする生業扶助を創設したときと同様の時代背景があると考えています。新たな扶助費を創設しないのであれば、せめて世帯分離をせずに、大学等に進学できるように環境を整備することが必要と考えております。

 そこで、本法案では、要保護者の世帯の自立の助長を図るため、世帯単位の原則に係る規定の運用に当たっては、要保護者の世帯に属する子供たちが世帯を単位とする保護を受けつつ大学に通うことのできるよう配慮しなければならないとし、世帯分離の運用改善を図っています。

 そもそも、世帯分離を始めとする生活保護法の運用については、さまざまな問題があります。

 昭和三十八年の運用通知には、世帯分離要件は、保護を継続中にも常に満たさなければならない、世帯分離要件を満たしているかどうかについて、少なくとも年に一回は検討を行う必要があるとされています。しかし、このような検討の前提となる世帯分離の件数について、あるいはその方々の収支報告、今の政府は把握をしておりません。

 直近でも、昨日のニュースにございますけれども、この運用の問題でいえば、生活保護相談で来られている方々の、妊娠すれば直ちに保護を廃止する可能性があるというような誤った運用、給付型奨学金でさえ収入認定をしている、こういうような実態も明らかになっています。

 そのような法の運用の過ちを防ぐためにも、必要なことであるのであれば世帯分離を行わないということが今回の中身になっております。

 また、医療扶助におけるジェネリック医薬品の使用の原則化も問題です。一般の患者に対するジェネリック医薬品の使用の原則化は行われていない中で、医療扶助に限って原則化する合理性や必要はないと考えております。

 このように、生活保護法の運用等にはさまざまな問題があり、生活保護基準とその運用のいずれも根本から見直す必要があると考えています。今般の閣法のように、生活困窮者自立支援法改正案と生活保護法改正案を束ねて一括で審議すること自体が無理があり、個別に時間をかけて慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

 以上になります。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 岡本充功君。

    〔岡本充功君登壇〕

岡本充功君 希望の党の岡本充功です。

 ただいま議題となりました内閣提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案及び池田真紀君外九名提出の生活保護法等の一部を改正する法律案について、希望の党・無所属クラブを代表して質問いたします。(拍手)

 冒頭、答弁が不十分であれば再質問させていただくことを申し述べさせていただきます。

 まず、国民の皆様の大変関心事でもあります、今月二十七日に行われた佐川氏の証人喚問に関して、総理は、政府として一貫してコメントは述べないと発言をされましたが、昨年三月に行われた籠池氏に対する証人喚問については、真相が解明されず大変残念とか、事実と反することが述べられたことは大変遺憾とコメントをしているわけであります。

 改めてお聞きします。

 佐川氏の証人喚問に対する総理の感想をお話しください。コメントができないのであれば、昨年は意見を述べながら、ことしは述べない理由をお話しください。

 安倍総理は、国会答弁に関して、これまで今井秘書官から答弁や政策などの背景の説明を受けた、また、他の者の答弁との整合性を図る、若しくは政治的決定をするために協議したことはあるのか。

 また、今井秘書官は、秘書官就任以来、財務省の職員から国会答弁について説明を受けたり協議をしたことはあったのでしょうか。

 さらに、安倍昭恵氏は、第二次安倍内閣発足以降に財務省職員とメールや電話などで連絡をするなど接触することはあったのでしょうか。お尋ねいたします。あったとすれば、森友学園や籠池夫妻に関する話をしたことがあるのか、お尋ねをいたします。

 さて、第二次安倍政権誕生以来の経済政策は、貧困層にどういう影響を及ぼしているのでしょうか。

 相対的貧困率が昨年六月に公表され、その改善をもって総理はアベノミクスの成果と喧伝されていますが、そもそも、全人口の世帯所得から算出される等価可処分所得が、物価を考慮した実質値で下がり続けています。実質値の等価可処分所得が下がった結果、これ以下が相対的貧困とされるライン、いわゆる貧困線が下がり、結果として、これまで貧困とされていた方が、年収はふえていないにもかかわらず、貧困から脱したとされる人が出てきただけではないでしょうか。

 この考察を補強するデータもあります。

 国民生活基礎調査によれば、子育て世帯の有業人員一人当たりの勤労収入の実質値は、二〇一二年と二〇一五年で比較をすると約五万円下がっています。失業率や有効求人倍率の改善もアベノミクスの成果とされていますが、低賃金での有業者数がふえているだけなのかもしれません。総理の見解を求めます。

 ことしの春闘で安倍総理は賃金上昇を経済界に要請されましたが、貧困層は大手企業の賃上げで所得がふえるわけではありません。こうした貧困世帯の可処分所得の増加が、今後、いつどのようにしてもたらされるのか。まさかトリクルダウン理論ではないとは思いますが、その過程を説明願います。

 一方、池田真紀君外九名提出の生活保護法の一部を改正する法律案は、通称子供の生活底上げ法案と呼んでいます。そもそも、子供の生活を底上げしなければならない立法事実は何であるのか、提出者に答弁を求めます。

 生活保護についてお尋ねします。

 そもそも、生活保護の基準の算出に用いられる年収階級第一・十分位のデータはどのようにして集められているのでしょうか。本当に苦しい生活をしていて調査にも応じられない世帯はないと言えるのでしょうか。厚労大臣にお尋ねします。

 ことしの秋から生活保護費が引き下げられます。生活保護基準の見直しによって直接影響を受け得る国の制度は何項目ありますか。また、それらの制度の利用者にできる限りその影響が及ばないように対応する方針であるとのことですが、ここで言う、できる限りその影響が及ばないとはどのような対応なのか、具体的に総理にお答えをいただきたい。

 また、個人住民税の非課税限度額を参照している医療保険等の自己負担限度額の軽減など、間接的な影響も考えられます。今回の生活保護基準の見直しが間接的に影響を与える制度は何項目あり、平成三十一年度以降の税制改正において影響が出ないようにする方針なのか、総理に答弁を求めます。

 加えて、地方単独事業は何項目が生活保護基準の見直しにより影響を受け得るのか、総理に答弁を求めます。

 これらの事業に対して、国はどのような方針で地方に要請をしていくのでしょうか。まさか、その趣旨を理解した上で各自治体において御判断いただくよう依頼するなどと、地方任せにはしないでしょうね。もし地方任せだとすると、後ほど指摘をする準要保護者への就学支援事業などにばらつきが出ることも予想されます。住むところによって、満足に義務教育を受けられない子供が出ることは許されません。総理から明確な対応方針について説明を願います。

 こうして見ると、生活保護基準の減額は、現在生活保護を受給していない人にも影響を及ぼします。さらなる生活困窮者が出てくるのではないかと考えますが、総理の見解を求めます。

 年収階級第一・十分位による丈比べで基準額を決め、基準額の減額をする。その結果は、先ほど述べたように、さまざまな制度への影響から、さらなる貧困層を生み出す。貧困層がふえれば、保護基準が下がり、また第一・十分位が下がるという負のスパイラルが発生し、結果として保護基準の切下げが続くことになるのではないかと考えます。新たな手法で生活保護基準の作成を検討するべき時期だと考えますが、総理の見解を求めます。

 また、生活保護基準を下回り、本来は生活保護を受給することができる方が、生活保護を受給していない事実もあるのではないかと考えます。総理は、なぜ生活保護を受給できるのにしない人がいるのだとお考えですか。こうした実態を調査し、その理由を考察することが制度改正につながると私は考えます。こうした調査の必要性について、総理の見解を求めます。

 加えて、気になるのが物価です。安倍政権は物価上昇目標を二%に定めています。この目標が毎年達成されたならば、五年に一回の生活扶助の見直しを行うと、次の見直しまでに生活扶助費は実質一割以上下がることになります。平成二十六年四月の消費税増税時には、生活保護費を二・九%引き上げました。安倍政権の目標の物価上昇が達成された場合には、生活扶助部分を含む生活保護基準は見直すのか、厚労大臣に見解を求めます。

 さて、こうして見てきた生活保護基準ですが、一方で、生活保護からの離脱、いわゆる廃止に至る道のりは長くなっています。廃止に至る理由の第一、これは死亡、第二位はその他となっています。そして、第三位が働きによる収入の増加です。四分の一以上を占めるその他が多いのが気になります。その他とはどんな理由が含まれるのか、厚労大臣に、入り得る理由、幾つか例示をしていただきたい。その他の内訳をしっかり調べ、生活保護廃止に至るヒントを得ることが必要と考えます。その他には何が当たるのか、事実と、そしてその他の内訳を調査することについて、厚労大臣の見解を求めます。

 さて、生活保護世帯が生活保護廃止により生活を営むと幾らぐらいの費用がかかるのか、試算を厚生労働省にお願いをしています。平均的な医療費がかかる中、通院をする四十代の夫、三十代の妻、そして小学校低学年と保育園に通う二人の子供がいる四人世帯が東京二十三区で生活保護を受けながら生活をしている場合、この生活保護で受ける現金、現物給付に相当する賃金を得るために、ボーナスなしの年俸制の会社員だとすると、一体幾らの額面での年収が必要となるのか。つまりは、幾ら以上稼げば生活保護より豊かな生活ができるのか、厚労大臣に答弁を求めます。

 子供の貧困は深刻です。義務教育といえどもかなりの費用がかかります。平成二十八年度、文部科学省の実施した子供の学習費調査報告によれば、公立小学校の学校教育費の平均は年間六万円、学校給食費は約四万四千円、ランドセルが影響しているのでしょうか、一年生の通学用品費は約五万円もかかっています。中学生は、塾などの学校外での活動費も入れれば、年平均四十八万円です。

 こうした費用を支援する就学援助は、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者には必要な制度です。この制度は保護者みずからの申告が必要とされているようですが、周知徹底ができていないのではないでしょうか。担任からの情報なども含めて、該当する対象者に丁寧な説明ができるようにするべきです。文科大臣の見解と対応を求めます。

 あわせて、高等学校等奨学給付金についても同様に、周知と漏れのない対象者への説明をするべきと考えますが、答弁を求めます。

 今回議員立法で提出された、いわゆる子供の生活底上げ法案で提案された児童扶養手当などの支給対象の拡大は高校卒業後の支援につながると考えますが、その必要性と効果をどのように考えたのか、提出者に答弁を求めます。

 また、児童扶養手当について、支給額の増額を提案されています。この必要性と想定される効果についても提出者に答弁を求めます。

 児童養護施設等への入所措置を受けていた者に対して生活や就労を支援する社会的養護自立支援事業は、まだ実施率は低いようです。特に就労相談支援事業は、児童養護施設設置自治体、全国六十九自治体のうち、幾つの自治体が実施をしているのか。また、コーディネーターを配置している自治体は同じく幾つであるのか、厚労大臣に答弁を求めます。

 また、低くなっている理由、そして今後の対策、さらには、いつまでに全ての自治体で実施されるようになるのか、その見通しも答弁を求めます。

 二〇〇六年に貧困のない世界を目指す取組でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏は、暴力の根源には貧困があると訴えています。広がる格差は疎外感を生み、そこにテロや暴力主義が入り込むすき間をつくってしまう。貧困は根本的な問題で、目を背けることは許されないとも訴えています。

 そんな中で彼が注目するのが、企業のソーシャルビジネスです。企業が本業を通じて利潤を上げると同時に、貧困など社会の課題解決に取り組むビジネスのことです。貧困家庭が求める商品やサービスについて専門的な知見のある企業が支援に乗り出すことは、最初は負担ですが、やがて、企業イメージのアップなどを通じて、その投資は回収できるものになるでしょう。また、国の支援とは違った視点での支援も可能となるでしょう。

 安倍総理も、春闘の賃上げだけでなく、こうした要請をぜひ経済団体にお願いをしていただけないかについてお答えを求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡本充功議員にお答えをいたします。

 佐川前長官の証人喚問についてお尋ねがありました。

 二十七日に行われた証人喚問は、書換え問題の真相を明らかにする重要な機会でありました。しかし、書換え問題については、いまだ政府として調査中であります。そういう意味で、証人喚問におけるやりとりについて、政府側としてコメントすることは適当でないと考えたものであります。

 私の国会答弁等についてお尋ねがありました。

 総理答弁の勉強会には、基本的には総理秘書官全員が同席しており、質問の内容により、それを担当する秘書官から説明を受けています。そういう中で私が最終的に判断をしております。

 また、今井秘書官からは、財務省の職員から国会答弁について説明を受けたり協議をしたりしたことはなかったと聞いており、また、妻からは、森友学園や籠池夫妻に関し、財務省職員とメールや電話などで会話をしたことはないと聞いております。

 経済政策の貧困層への影響についてお尋ねがありました。

 安倍内閣が進めている政策は、成長と分配の好循環をつくり上げていくというものです。成長し、富を生み出し、それが国民に広く均てんされ、多くの人たちがその成長を享受できる社会を実現します。そして、格差が固定化しない、同時に、許容し得ない格差が生じない社会を構築してまいります。

 相対的貧困率は、これまで長期的に上昇傾向となっていましたが、政権交代後、雇用が大きく増加するなど経済が好転する中で改善に転じました。こうした動きが持続できるようにしていくことが重要だと考えています。

 そして、雇用の状況については、正規雇用者数は、三年前、八年ぶりにプラスに転じ、平成二十七年から平成二十九年、三年間で合わせて百三十五万人増加、この増加幅は非正規を上回っています。また、就業者数は、生産年齢人口が減少する中にあっても、二百五十一万人増加をしました。

 そうした中で、賃上げについては、ことしの春闘のこれまでの結果を見ると、多くの企業で五年連続となるベースアップが行われ、その水準も大半で昨年を上回っています。また、各種手当や賞与の増額など、工夫を凝らし、三%以上の賃上げを行う積極的な動きもあります。

 成長と分配の好循環の実現に向けて、こうした力強い賃上げの流れが広く波及していくことを期待したいと思います。

 国民の皆さんの働く場をしっかりと確保し、国民の皆様の生活をよくしてまいります。そのために、アベノミクスの政策を続け、経済の好循環を加速してまいります。

 生活保護基準の見直しに伴う他制度への影響についてお尋ねがありました。

 生活保護基準の見直しに伴い、保護基準を参考とするなど、影響が生じる可能性のある他制度については、直接影響を受け得る国の制度の一覧を公表しており、合計で四十七項目となっています。

 生活保護基準の見直しに伴う他制度への影響については、一月十九日の閣僚懇談会において政府の対応方針を確認しており、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分に考慮しながら、できる限りその影響が及ばないようにするなど対応してまいります。

 また、個人住民税の課税、非課税の別を活用している国の制度は約四十項目あると承知しています。この個人住民税の非課税限度額については、平成三十年度の影響はなく、平成三十一年度以降の税制改正において、与党の税制調査会における議論も踏まえ、対応を検討してまいります。

 一方、地方自治体が独自に実施する事業については、全国の地方自治体によってさまざまなものがあると考えられているところであり、その内容や生じる影響を網羅的に把握することは困難です。

 今回の生活保護基準見直しに当たっても、地方自治体に対し、政府の方針の趣旨を十分に理解した上で適切に判断、対応いただけるよう、引き続き、さまざまな機会を捉えて丁寧に説明してまいります。

 生活扶助基準の見直しについてお尋ねがありました。

 今般の生活保護基準の検証では、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性によって、生活保護世帯以外の一般低所得世帯の消費の実態より生活扶助基準額が高い場合と低い場合の双方があると確認されました。

 今回、実態と乖離のある基準を世帯類型ごとに是正したため、その結果、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じています。

 一方、モデル世帯で比較すると、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。

 今後とも、専門的かつ科学的に検証を行った結果に基づき、最低限度の生活を保障する適切な生活保護基準となるよう、審議会の指摘も踏まえつつ、次回の検証に向け、検証手法も含めて検討を行ってまいります。

 また、生活保護基準以下の収入で生活されている方が生活保護を受給しない理由については、保護の相談や申請がなされなければ正確に把握することは困難であると考えております。

 しかしながら、次回の検証に向けて、生活保護を受給していない方も含めて、低所得世帯の生活実態について多角的に分析できるよう、その手法も含めて検討してまいります。

 ソーシャルビジネスの推進についてのお尋ねがありました。

 ビジネス手法の活用は、貧困対策のほか、環境保護、高齢者福祉や介護など、さまざまな社会課題を解決する上で世界的にも注目されています。

 こうしたソーシャルビジネスについては、政府として、これまでも先進的な事例の周知や補助金による支援などに取り組んできたところです。

 今後とも、経済界とも十分に連携しながら、ソーシャルビジネスの可能性について研究を進めていく考えであります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 岡本充功議員より、五問頂戴いたしました。

 生活保護基準の比較対象とする一般低所得世帯についてのお尋ねがありました。

 生活保護基準に関する五年に一度の定期的な検証においては、一般世帯の消費の実情に関する大規模な統計調査である全国消費実態調査を用いて、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか検証を行っています。

 全国消費実態調査は、総務省において、二人以上世帯と単身世帯の別に抽出された約五万六千世帯の調査世帯に記入していただく家計簿を調査員が回収する形で行われていると承知をしております。

 今回の検証では、例えば、生活扶助基準の年齢、世帯人員、居住地域別の検証には、全国消費実態調査の約五万六千サンプルの中から、世帯人員一人当たり年収で見た下位一〇%に当たる約六千サンプルの世帯データを選定して検証を行ったものであります。

 このほか、生活保護受給世帯の生活状況を把握するため、家計の状況や生活意識に関する調査も実施をしております。

 しかしながら、社会保障審議会の報告書でも、データに基づいて国民の生活実態を把握する上での今後の課題が指摘されており、今後、検証手法の改善、開発に取り組む中で、こうした課題への対応についても検討してまいります。

 物価上昇目標が達成された場合の生活保護基準の見直しについてお尋ねがありました。

 生活保護基準は、一般国民生活における消費水準との比較による相対的なものとして設定しており、その検証に用いることとなる全国消費実態調査の消費のデータには物価の変動の影響も織り込まれていると考えております。

 また、生活保護基準については、物価も含め生活、経済情勢などの大きな変動があった場合には、最低生活保障の水準が急激に低下することがないよう、その際のさまざまな事情を総合的に勘案した上で、どのような対応が必要か検討することとなるものと考えております。

 生活保護の廃止理由の内訳についてお尋ねがありました。

 生活保護の廃止理由のうち、その他の具体的な内訳については把握しておりませんが、世帯員の減少によって保護を必要としなくなった場合、就労収入や仕送り以外の臨時収入があった場合、拘置、拘留された場合などが考えられるところであります。

 その他の具体的な内訳の調査については、実務を行う地方自治体の負担なども考慮する必要はありますが、まずは、サンプル調査を行うことなどを含め、検討したいと考えております。

 生活保護の給付に相当する年収についてお尋ねがありました。

 東京二十三区で、四十代夫、三十代妻、小学校低学年、保育園の子供の四人の生活保護受給世帯について、収入がない場合に、その受給する金額を一定の仮定のもとで試算をすると、平成三十年四月時点で年額約三百四十万円となります。

 一方、この生活最低費と同額の支出を行い、かつ、税や社会保険料、医療保険の自己負担分を支払うために必要な年収について一定の仮定のもとで試算すると、年額は四百万円を超える水準となりますが、この金額は保育料などを考慮しておらず、また、社会保険制度の加入状況など、世帯の状況によってさまざまとなるものであり、更に精査が必要であると考えております。

 社会的養護自立支援事業についてのお尋ねがありました。

 平成二十九年度において、児童相談所を設置する六十九の自治体のうち、就労相談支援は十六自治体で実施され、就職後のフォローアップを含めた施設退所後のアフターフォローを統括する支援コーディネーターを配置しているのは十自治体となっております。

 この支援コーディネーターを配置し、施設入所措置終了後の居住支援や生活支援を組み合わせた総合的な支援としての事業を再編したのは平成二十九年度であり、こうしたことが実施率にあらわれているものと考えております。

 この事業は国の補助事業であり、いつまでに全ての自治体が取り組むようになるのかお答えすることは困難でありますが、本年三月の全国会議においても、自治体担当者に対し本事業の実施を働きかけるなど、各自治体に積極的な事業の実施を促し、必要とする方々に支援が行き届くように取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 岡本議員から、就学援助及び高校生等奨学給付金の周知についてお尋ねがありました。

 経済的に就学困難な児童生徒に対する支援については、支援を必要とする児童生徒の保護者に対して十分に周知し、必要な支援がしっかりと行われることが必要であると考えております。

 義務教育段階の児童生徒を支援する就学援助については、文部科学省の調査によりますと、毎年度の進級時に学校で就学援助制度の書類を配付するなど、各市町村の周知の取組は強化されており、文科省としては、引き続き、市町村ごとの周知の実施状況を調査、公表、周知徹底を促す通知の発出や各種会議での呼びかけなど、教育委員会に対し積極的な働きかけをしてまいります。

 また、高校生等奨学給付金については、これまでも、通知の発出、リーフレットの作成、配付、都道府県の周知状況の調査を行うなどの周知に努めてきたところですが、来年度の支給に向けたさらなる周知徹底のため、本年二月に、中学三年生向けリーフレットを作成し、学校を通じて百十五万人の全ての生徒に配付をしたところであります。

 文科省としては、今後も、中学生段階からの周知を含め、実施主体である都道府県と連携し、対象となる方々が確実に支援を受けることができるよう、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔白石洋一君登壇〕

白石洋一君 子供の生活を底上げする必要についてお尋ねがありました。

 我が国の子供の貧困率はOECD諸国の中でも高い水準にあります。特に、一人親家庭については、親の八割以上が働いているのにもかかわらず、貧困率は五一%という特異な状況です。

 高校卒業者の大学、短大、専門学校への進学率を見てみると、全体の進学率は七割を超えているのに対して、一人親の子供の進学率は四割ほどです。三割もの大きな格差です。一人親家庭の子供は、経済的な理由により、進学の希望が実現できていないのです。

 こうした状況の中、今般、政府は、告示により生活保護基準を見直し、生活扶助費を最大五%、平均で一・八%削減することを決定しました。これにより、生活保護を受けている子育て家庭のうち、四割以上が生活扶助が減額されることになります。これはまさに、子供の貧困対策に逆行するものです。

 子供たちの将来と我が国の未来を一層よいものにする、そのためには、子供たちがみずからの将来を切り開いていけるようにすることが重要です。

 そこで、本法案は、生活保護のシングルマザーへの母子加算の減額を阻止し、また、大学等への進学の妨げとなる生活保護家庭の子供の世帯分離の運用改善をします。そして、一人親家庭の子供向けの児童扶養手当の支給対象期間の拡大、支給額の増額、毎月支払いの実現をします。これら一人親家庭の子供の生活支援を中心とした措置を講じることにより、貧困世帯の子供の生活を安定させ、育ちを応援し、我が国の貧困の連鎖を断ち切ることを図ります。

 児童扶養手当の支給対象などを二十歳未満まで拡大する必要性と効果についてのお尋ねがありました。

 現行制度では、一人親家庭の子供に対する児童扶養手当が、高校を卒業すると支給されなくなってしまいます。それにより大学進学を断念する人がおり、一人親家庭の子供の進学率は四割しかありません。また、一人親家庭に多い貧困家庭の中には、高校卒業後、浪人生活で困窮し、苦しむ子供たちが多くいます。

 そこで、本法案では、児童扶養手当の支給対象などを二十歳未満の者に拡大することとします。これにより、貧困状態にある一人親家庭の子供たちが大学等へ進学しやすくなると考えます。

 児童扶養手当の支給額を増額する必要性と効果についてのお尋ねがありました。

 平成二十五年に子どもの貧困対策推進法が成立してから五年が経過しようとしていますが、残念ながら、子供の貧困の状態は依然として深刻です。また、児童扶養手当の支給額については、平成二十八年八月分から多子加算が増額されたものの、それだけでは十分な改善とはなっていません。

 そこで、本法案は、児童扶養手当の支給額を一世帯当たり最大で月額一万円引き上げることとしています。これにより、一人親家庭の子供の生活の底上げが図られるものと考えます。

 私の経験に照らしますと、二〇一二年に落選してから昨年の総選挙までの五年間、いわゆる選挙浪人をしていました。四人家族で、その時期、ちょうど子供が二人とも中学、高校から大学への進学をする時期でもありました。子供の希望をできるだけかなえてやりたいながらも、経済的な制約を抱えての苦しい子育てでありました。

 しかし、世の中には、より厳しい環境に置かれている子供と、そして子育てをしている方がたくさんいます。経済的な厳しさから、夢を追うことや進学を諦める子供。さらには、夢の追求や進学自体、最初から望まない子供たち。つまり、よく支援対象の枕言葉で使われる意思と能力の意思自体を、その子の責任ではなく育ちの環境が原因で持つことができない子供たちです。そのような厳しい環境のもとにある子供たちの育ちを社会全体で支えるのが本法案です。

 この法案は、政府提出の生活困窮者自立支援法の改正案を子供に焦点を当てて補完し、加えて、現行の生活保護法の運用を改善、改良するものです。与野党を超えて、本法案を審議し、成立されることを強く望みます。(拍手)

議長(大島理森君) 岡本充功君から再質疑の申出がありますから、これを許します。岡本充功君。

    〔岡本充功君登壇〕

岡本充功君 先ほど総理から答弁をいただきました点につきまして、再質問をさせていただきます。

 私から質問をさせていただきましたのは、大手企業の賃上げをする、賃上げをしたその成果、GDPがふえたんだ、こうおっしゃるこの成果がどのようにして貧困世帯に波及をするのかということを具体的に説明をしてくれと言っているわけであります。

 特に、トリクルダウンという考え方を否定をするのかどうか、ここが重要です。富める者がまず富んでから、みんな口をあけて待っていてくれ、やがてあなたのところにも来るから待っていてくれ、こういう話ではなくて、皆さんにどのように届くのでしょうか。

 均てん理論とも言われていますこのトリクルダウン、OECDの実証検証では、格差の拡大は経済成長を大幅に抑制するとも言われています。そういう意味で、この富の波及をトリクルダウン理論でない方法で御説明されるのであれば、それを具体的に説明していただきたい。

 二つ目以降は、生活保護制度がどういう制度に波及をするのかということであります。

 数こそ答えていただきましたけれども、直接影響が出るこのさまざまな制度にどのような対応をするのか、できる限りその影響が及ばない、これは具体的にどういうことなのかということを聞いています。

 間接的に影響が出る制度は四十あると言われました。間接的に影響が出る制度については、税制改正において与党と相談していくという答弁でありましたが、影響が出ないようにしていくのかどうかという最も重要なところが答えてもらっていません。影響が出ないように取り組んでいくのか。先ほどの直接的な制度のところでは、できる限りその影響が及ばない、こういう対応と言ったのに、間接的な影響のところでは、このできる限りその影響が及ばないという言葉すらありませんでした。これについて答弁を求めたいと思います。

 最後に、地方にも影響するんです。地方に影響した結果、地域での大きな貧困対策へのばらつきが出ることが想定をされます。これでは、私は、地域によって十分な教育が受けられない子供が出てくるのではないかと本当に危惧しています。

 そういう意味で、もしかしたらこの時間も、今春休み、給食がない中、お昼御飯も食べられない子供がいるかもしれないんですよ。そういう子供をつくらないようにするためにも、地方でのばらつきをこの施策ではなくしていくことが重要ではないか。地方にお任せするということではなくて、政府としてどういうイニシアチブをとるのか、明確に御答弁を願いたいと思います。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいまの再質問は、まずは、トリクルダウンではないかどうか、どういう経済理論なのかどうかという再質問でございましたが、先ほど既に説明をしているつもりでございますが、もう一度お話をさせていただきたい、このように思っております。

 私たちの進めている経済政策、これは、経済の好循環を回していくということであります。まさにその中で、私たちはこの五年間、いわゆるアベノミクスを進めてきた結果、経済は一一・七%成長をしました。

 そして、まず富める者から富ましていくということではなく、その中で私たちは、経済界に対して賃上げをお願いをしたところでございます。今回は、具体的に三%以上ということをお願いをさせていただいたところでございますが、多くの企業でそれが実現したことを大変うれしく思っております。

 そしてまた、この五年間において大幅に最低賃金が引き上げられたわけであります。そして、それによって消費が喚起され、また、それに対応するため設備投資が起こり、経済が成長し、そしてまた、それによって給与が上がりという循環、これを我々は経済の好循環と呼んでいるわけでありまして、先ほどはその意味でお話をさせていただいたはずでございます。

 次には、第二、具体的にということでございましたが、それは、個人住民税の課税、非課税の別を活用している国の制度は約四十項目あると承知をしています。この個人住民税の非課税限度額については、平成三十年度の影響はなく、平成三十一年度以降の税制改正において、与党の税制調査会における議論も踏まえ、対応を適切に検討してまいります。

 そして、次の三問目の御質問でありましたが、生活保護基準の見直しに伴う他制度への影響については、一月十九日の閣僚懇談会において政府の対応方針を確認しており、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分に考慮しながら、できる限りその影響が及ばないようにするなど、対応してまいります。

 地方自治体が独自に実施する事業については、全国の地方自治体によってさまざまなものがあると考えられるところであり、今回の生活保護基準見直しに当たっても、地方自治体に対し、政府の方針の趣旨を十分に理解した上で適切に判断、対応していただけるよう、引き続き、さまざまな機会を捉えて丁寧に説明をしていく考えであります。

 以上、追加質問三問にお答えをさせていただきました。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 桝屋敬悟君。

    〔桝屋敬悟君登壇〕

桝屋敬悟君 公明党の桝屋敬悟でございます。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 初めに、本法律案に入る前に、生活保護基準の見直しについて、改めて伺います。

 生活保護基準については、五年に一度の見直しの年に当たりますが、生活保護費が下げられるのではないかとの不安の声が聞こえてまいります。

 今回の見直しは、世帯における家族の人数、地域あるいは年齢によって、生活扶助の基準額が一般の低所得世帯の生活水準より高い場合、低い場合などばらつきがあったため、それを是正し、実態に合ったものにするものだと承知をいたしております。

 しかしながら、その実態ベースに合わせると一〇%以上の大幅な減額になるケースもあり、多大な影響を受ける方もいるため、公明党は、減額幅に上限を定め、段階的に実施することなどの緩和措置を強く要望し、あわせて、子供のいる世帯への十分な配慮も求めてきました。

 現に、ただいまの生活保護基準で生活をされておられる生活保護世帯の方々がいらっしゃるわけで、政府は今回の見直しをどのように行うのか、安倍総理の答弁を求めます。

 さて、平成二十五年に制定されました生活困窮者自立支援法により、公的扶助であります生活保護制度と、その周辺制度として生活困窮者の自立支援を図る生活困窮者自立支援制度が整備され、生活困窮者に対する重層的な支援体制が構築されました。

 私自身、厚生労働副大臣の任にありました平成十三年、国会における公明党の強い要請を受け、当時の坂口大臣のもと、厚労省内に低所得者の生活支援システムを検討するプロジェクトチームを立ち上げて、検討を開始した経緯がありまして、まさに生活困窮者自立支援制度は公明党の精神を体現する制度であると考えているところであります。

 この生活困窮者自立支援制度によりまして、施行後二年間で約四十五万人の相談を受け、約六万人が就労、増収を果たしており、生活困窮の深刻化を予防する効果が着実にあらわれてきております。

 一方で、地域の中で感じるのは、まだ適切な支援を受けることができていない生活困窮者が数多く存在するということであります。また、地域により取組に温度差があるのも事実であります。

 生活困窮者に対する包括的な支援体制を強化し、一層の自立の促進を図るためにも、本法律案は極めて重要であるとの立場から、以下、具体的な質問をいたします。

 初めに、生活困窮者の定義の問題であります。

 現行の法律では、生活困窮者とは、経済的な困窮に着目した規定になっているところであります。しかし、自立支援制度を利用した新規相談者のデータを検証すると、経済的困窮だけでなく、就職活動が困難、住まいが不安定、家族の問題、病気、メンタルヘルスといった多様な課題を抱え、更にそれらの問題が複雑に絡み合ったケースが数多く存在します。

 この制度で支援すべき人は、単なる経済的な困窮状態に置かれた人だけではないはずであります。このたびの改正で、生活困窮者の定義がどのように見直され、それによりどのような効果が期待できるのか、厚生労働大臣の答弁を求めます。

 本法案では、生活困窮者に対する包括的な支援体制の強化が盛り込まれています。現在、生活困窮者が就労に必要な基礎能力を身につける就労準備支援事業と、自力で家計管理ができるようにする家計相談支援事業は任意事業となっており、実施自治体は半数に至っておりません。こうした任意事業を積極的に行う意欲のある自治体に対して、さらなる支援が必要であり、必須事業となっている自立相談支援事業と一体的な実施を促進する方針と聞いております。

 そこで、加藤厚生労働大臣に伺います。

 今後、地域の実情に応じて両事業の実施を促すことになるかと思いますが、具体的にどのような対応をとることが一体的な実施に当たるのでしょうか。また、一体的実施をすることによりどのような効果があるのでしょうか。あわせて、国の支援策などをどのように考えているのか、大臣の見解を伺います。

 貧困の連鎖を防ぐための支援強化について伺います。

 近年、家庭の経済的事情による教育格差が拡大しつつあり、子供の貧困の問題も深刻であります。公明党は、経済的な事情に関係なく、希望すれば誰もが必要な教育を受けられる社会の構築を目指し、貧困の連鎖を断ち切るための取組を全力を挙げて進めてまいりました。

 かねてより公明党も粘り強く訴え続けてきた生活保護世帯の子供の大学進学に対する支援として、進学準備給付金が創設されたことは喜ばしいことであります。

 経済的な事情を抱えつつも大学進学を希望する子供たちが進学の道を選択するためには、ケースワーカーの後押しも必要であることに加え、支援策などの普及啓発も大切であります。

 生活保護世帯の子供の大学進学支援について、厚生労働大臣の見解を伺います。

 次に、生活困窮者の住まいの確保について伺います。

 このたびの改正案では、無料低額宿泊所の質を確保するための施策が柱の一つに掲げられています。劣悪な施設に生活保護受給者を住まわせ、生活保護費から利用料を徴収する、いわゆる貧困ビジネスの横行を封じる規制強化が求められています。

 一方で、こうした無料低額の宿泊所は、社会的に孤立している生活困窮者の受皿として役割を担っているのも事実であり、日常生活における支援を行いながら、地域で生活を送ることを可能としている宿泊所も存在しております。

 悪質な事業に対する規制の強化を図るとともに、支援サービスの質が担保された良質な生活支援事業に対する支援も重要であります。

 生活困窮者や高齢者など支援の必要な人が安心して地域で暮らせる体制の構築に向けて、本改正ではどのように変わるのか、加藤厚生労働大臣の答弁を求めます。

 今回の法改正の準備を行っている最中、一月三十一日でありましたが、札幌市において共同住宅の火災事故が起き、十一名の方が亡くなるという不幸な出来事がありました。

 私も直ちに現地に行ってまいりましたが、こうした高齢者や生活保護受給者の生活の場となっている共同住宅の火災事故は、これまでも、群馬県渋川市の事例を始めとして繰り返されてきたところであります。

 今回の事案においても、一番悩むことは、この施設が今回の法律事項である無料低額施設でもない、有料老人ホームでもないということであります。

 しかしながら、聞けば、事業所みずから自立支援事業所と称しており、支援スタッフがいて、食事の提供をしており、また、この事業所は、市内に二十七の物件、二百十五世帯の被保護者が利用している。

 加藤大臣、この状況をこれからも放置していていいのでしょうか。今回の法改正によっても何ら改善されないのではと危惧をするわけであります。

 こうした共同住宅の不幸な火災事故に対して、今後どのように対処されるのか、加藤大臣の御所見をお伺いいたします。

 生活困窮者自立支援制度は、世代や背景などが異なっていたとしても、生活に困窮しているという状態を捉えて、地域の中で全ての人を包括的に支援する制度であります。この理念は、地域共生社会を実現する観点からも極めて重要であると考えます。

 地域共生社会の実現に向けた改革工程において、二〇一八年度は、介護・障害報酬の改定や本生活困窮者自立支援制度の強化を行った後、二〇一九年度にはさらなる制度の見直しを行うこととされております。

 地域共生社会の実現に向けて、生活困窮者自立支援制度の果たす役割と今後の見通しについて、安倍総理の見解を伺います。

 我が国は、いよいよ本格的な少子高齢化、人口減少社会に突入しようとしております。あらゆる人がこの厳しい時代を生き抜くためには、人と人とのつながりが不可欠であり、そのかなめとなるのが生活困窮者自立支援制度であると感じております。

 私ども公明党は、改めて、地域で暮らす一人一人と対話をしながら、百万人訪問調査活動を実施しながら、全国でそうした取組を行いつつ、地域で暮らす一人一人が希望を持って活躍できる社会の実現を果たしてまいりたいと決意を申し上げ、私の代表質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 桝屋敬悟議員にお答えをいたします。

 生活保護基準の見直しについてお尋ねがありました。

 生活保護基準については、健康で文化的な最低限度の生活を保障する観点から適正な水準となるよう、専門的かつ科学的見地から定期的に検証を行っています。

 今回の見直しでは、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性ごとに、一般低所得世帯の消費の実態と生活扶助基準額との乖離を是正するため、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じるものです。

 ただし、モデル世帯では、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。

 この見直しに当たっては、御党の御指摘も踏まえ、減額幅を最大でも五%以内としつつ、三年をかけて段階的に実施することにしています。

 また、子供のいる世帯については、貧困の連鎖を断ち切るため、児童養育加算の給付対象者を高校生に拡大することなどにより、その約六割では基準額が増額となる見込みです。

 地域共生社会と生活困窮者自立支援制度についてお尋ねがありました。

 人口減少、地域社会の脆弱化等の変化の中で、人々がさまざまな課題を抱えながらも住みなれた地域で暮らしていくためには、地域住民の方々や地域の多様な主体がそれぞれ役割を持ち、支え合う、地域共生社会の構築が重要と考えています。

 こうした地域共生社会の実現に向けては、人々が抱えるさまざまな課題に対して、関係機関が協働して包括的に支援し、解決につなげていく体制が必要であり、生活困窮者自立支援制度はその中核的な役割を果たしていくものと考えています。

 本年四月から、改正社会福祉法に基づき、自治体は包括的な相談支援体制の整備を推進していくこととなります。これに加えて、本法案により、自立相談、就労基準、家計相談に関する支援を一体的に実施する自治体への支援を強化するなど、生活困窮者自立支援制度の相談支援機能の充実を図ります。

 これらが相まって、今後も地域の皆さんが支え合う地域共生社会を実現できるよう、取組を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 桝屋敬悟議員からは、五問の御質問をいただきました。

 生活困窮者の定義の見直しについてお尋ねがありました。

 生活困窮者の定義は、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者でありますが、本法案では、経済的困窮に至る背景事情として、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情を明示することとしております。

 この見直しは、これまでの生活困窮者自立支援の実践を踏まえ、生活困窮に至る背景事情を入念的に明示し、関係者間において共有を進めるためのものであり、これにより、早期的、予防的な視点からの支援を含め、適切かつ効果的な支援の展開につなげてまいります。

 就労準備支援事業と家計改善支援事業の一体的実施についてお尋ねがありました。

 一体的実施の具体的な内容としては、自立相談支援事業とあわせて、両事業を実施していることに加え、生活困窮者に対する個別支援計画の協議に両事業の実施者も参画することなどを想定しており、これにより、一層効果的、効率的な支援実施体制を確保することが可能になると考えております。

 また、一体的実施を推進していくために、本法案では、両事業の実施の努力義務化や指針の策定、自立相談支援事業に加えて、両事業が一体的に行われている場合の家計改善支援事業の補助率の引上げ等の措置を講ずることとしています。

 こうした方策について、自治体の実情に留意しながら、今後三年間を集中実施期間として計画的に進めてまいります。

 生活保護世帯の子供の大学進学支援についてお尋ねがありました。

 生活保護世帯の子供の大学等進学率は一般世帯の子供と比較して低い状況であり、貧困が世代を超えて連鎖しないようにする観点から、生活保護世帯の子供の大学等への進学を支援していく必要があります。

 このため、本法律案では、生活保護世帯の子供の大学等への進学支援のための一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設することとしております。

 さらに、自宅から大学等に通学する場合の住宅扶助費の減額を取りやめる措置を平成三十年度予算に計上しており、こうした取組について、ケースワーカーが的確に認識し、進学を希望する子供やその家庭に対ししっかりと周知や進学の後押しをすることを通じて、生活保護世帯の子供が希望する進路に向け適切な支援が受けられるようにしてまいります。

 生活困窮者等の住まいの確保についてお尋ねがありました。

 生活保護受給者や生活困窮者が必要な支援を受けながら安心して暮らせる地域体制づくりを進めることが重要です。

 このため、今回の法案では、無料低額宿泊所について、最低基準や改善命令の整備等の規制の強化を行うとともに、単独での居住が困難な生活保護受給者への日常生活上の支援を、福祉事務所が良質な無料低額宿泊所等に委託できる仕組みを創設することとしております。

 さらに、現行の一時生活支援事業を拡充し、シェルター等の利用者や居住に困難を抱える方で社会的に孤立している生活困窮者に対して、一定期間、訪問等による見守りや生活支援を行う事業を開始することとしております。

 共同住宅の火災への対処についてお尋ねがありました。

 札幌市の火災を受けて、地方自治体の福祉部局、消防部局や建築部局が連携し、生計困難者等が居住する施設の防火上の安全性を確保する取組を推進するため、三月二十日に全自治体に通知しております。

 一方で、無料低額宿泊所、有料老人ホームのいずれにも該当しないと判断されている施設があることは承知をしており、今般、無料低額宿泊所に対する規制の強化と良質な事業所への日常生活上の支援の委託を行うこととあわせて、この事業としての届出が必要な事業所について、居住期間の長短を問わないこととする等の観点も含め、今後、関係者の意見を聞きながら、判断基準の明確化を図ることを検討してまいります。

 さらに、有料老人ホームについても、その判断基準がより明確となるよう整理し、近日中にお示しすることとしており、これらの対応によって、各施設の範囲が明確化され、地方自治体が届出の勧奨や防火安全対策の助言などを適時適切に実施することができるようになると考えております。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 金子恵美さん。

    〔金子恵美君登壇〕

金子恵美君 無所属の会の金子恵美です。

 会派を代表し、ただいま議題となりました政府提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案及び野党提出、生活保護法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 質問に先立ち、申し上げます。

 森友学園の公文書改ざん問題で佐川前国税庁長官の証人喚問が行われましたが、疑惑は更に深まったと言えます。一体誰が、何の目的でこのような前代未聞の公文書改ざんを行ったのか、真実が明らかにされなければ、行政だけでなく国会に対しての国民の皆様の信頼を回復することはできず、民主主義が崩壊してしまいます。引き続き、我々野党は、一致結束して真相解明に向けて取り組んでまいります。

 それでは、まず、政府提出法案のうち、生活困窮者自立支援法の改正について伺います。

 そもそも、生活困窮者自立支援法の内容は、民主党政権で検討した生活支援戦略を踏襲したものであり、生活保護受給に至っていないものの生活にお困りの方に対するセーフティーネットとして一定の役割を果たしています。

 生活困窮者自立支援法の制定により、自治体でさまざまな支援事業が展開されることになりました。しかし、その多くは自治体の任意事業にとどまっており、実施率については、年々上昇してはいるものの、二割から五割台にとどまっています。

 任意事業のうち、特に子供の学習支援事業は、貧困の連鎖を断ち切るために必要不可欠な事業です。政府提出の法案には学習支援事業を強化することが盛り込まれていますが、それだけでなく、自治体に対する支援策を講じることを前提に、必須事業にすべきであると考えます。この点について、安倍総理の見解を伺います。

 民主党政権で検討した生活支援戦略には、改革の方向性として、初期段階から谷間のない総合相談や、待ちの姿勢ではない訪問型支援、チームアプローチによる支援を展開し、包括的かつ伴走型の支援態勢を築くことが掲げられています。

 政府提出の法案には、自治体の各部局において生活困窮者を把握した場合に、自立相談支援事業等の利用勧奨を行うことを努力義務化することが盛り込まれていますが、生活支援戦略の方向性に沿った改正であると考えます。ただし、人材を確保しないまま利用勧奨を行って支援対象者がふえれば、支援が滞ってしまうおそれがあります。支援事業を担う人材を確保するためにどのような対策を講じるのか、加藤厚労大臣に伺います。

 次に、生活保護法の改正について伺います。

 大学進学率は、全世帯では約七三%となっている一方、生活保護世帯では約三三%と著しく低い水準にとどまっています。

 政府提出の法案には、生活保護世帯の子供が大学等に進学した際に一時金を支給することが盛り込まれていますが、一時的な支援でどのぐらい進学率を向上させることができるのか、総理に伺います。

 次に、児童扶養手当法の改正について伺います。

 二〇一六年の児童扶養手当法改正の際、私たち野党は、児童扶養手当の毎月支払いを議員立法で提案しました。児童扶養手当の支払い回数の増加について、当時の塩崎厚生労働大臣は、自治体における円滑な支給事務の実施体制の確保との関係で難しいと答弁されました。

 今回、政府は、年三回の支払いを六回にふやすことを法案に盛り込んでいますが、わずか二年の間に急に、年六回までの実施体制が自治体で確保されたのでしょうか。具体的にどのような変化があったのか、御説明ください。厚労大臣の明確な答弁を求めます。

 また、政府提出の法案で支払い回数がふえるといっても、年六回にとどまっています。毎月の決まった支払いに対応する家計管理の観点からは、児童扶養手当を毎月支払いにすることが必要です。なぜ毎月支払いができないのか、明確にお答えください。厚労大臣の答弁を求めます。

 また、二〇一六年の法改正の際に、私たち野党は、第二子以降の多子加算を一律に一万円に引き上げることを議員立法で提案しました。そのときの政府提出法案によって、第二子は一万円に引き上げられたものの、第三子以降については引上げが小幅で六千円にとどまりました。法改正の際、児童扶養手当の加算額を含む支給額のあり方について検討し、検討結果に基づき適切な措置を講ずることとの附帯決議が付されていますが、今回の政府提出法案に多子加算の引上げは盛り込まれていません。附帯決議に基づいて、政府は多子加算についてどのような検討を行い、どのような判断で見直さないことにしたのか、御説明ください。総理の答弁を求めます。

 議員立法の提案者には、今回は多子加算を引き上げるのではなく、児童扶養手当本体を一万円引き上げることにした理由を伺います。

 また、二〇一六年に野党が提出した議員立法では、二十未満まで対象を拡大するものの、対象を学生等に限定していましたが、今回の野党案では、学生等に限定せずに二十未満まで拡大することとしています。議員立法の提案者にその理由を伺います。

 次に、今般の生活扶助基準の引下げについて伺います。

 今般の引下げは、厚労省の生活保護基準部会の報告書でも懸念が示された水準均衡方式を前提としたものです。基準部会の報告書は、新たな検証方法を開発することを求めていますが、どのような方向性で、いつまでに検討するのか、御説明ください。総理の見解を伺います。

 最後に、私たちは、国民生活を向上させるため、親から子に引き継がれる貧困の連鎖を断ち切るための対策やセーフティーネットの拡充に引き続き全力で取り組んでいくことを申し述べ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 金子恵美議員にお答えをいたします。

 子供の学習支援についてお尋ねがありました。

 子供の学習支援事業については、地域の実情に応じ、高校進学に向けた学習支援などに加え、学校や家庭以外の居場所の提供、親を対象にした子育てに関する相談支援を行うなど、自治体ごとに創意工夫のある取組が行われています。

 このような自治体における実態を踏まえ、今回の見直しでは、まずは、子供の生活習慣の改善に関する助言や高校生世代等に対する多様な進路選択に向けた支援など、子供の学習支援事業の強化を図るとともに、教育部門における学習支援施策との連携規定を創設するなどの措置を講ずることで、自治体における積極的な取組を促してまいります。

 生活保護世帯の子供の大学進学支援についてお尋ねがありました。

 本法案では、生活保護世帯の子供について、大学等への進学準備の一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外から通学の方は三十万円の給付を創設することとしております。

 あわせて、平成三十年度予算においては、自宅から大学等に通学する場合に行っていた住宅扶助費の減額を取りやめることとしました。

 さらに、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば大学等に進学できる社会へと改革をするため、昨年十二月に取りまとめた新しい経済政策パッケージにおいて、生活保護世帯を含めた所得が低い家庭の子供たち、真に支援の必要な子供たちの高等教育の無償化を実現することとしております。

 進学率について具体的な試算を行っているわけではありませんが、これらの施策が相まって進学率の向上を目指していきたいと考えております。格差が固定せずに、全ての子供たちが夢に向かって頑張ることができる社会をつくってまいります。

 児童扶養手当についてお尋ねがありました。

 政府としては、児童扶養手当の支給額のあり方について、御指摘の附帯決議も踏まえ、一人親家庭の所得状況や生活実態、経済状況の変化等を見つつ、これまで検討を行ってまいりました。

 検討の結果、平成三十年度予算においては、限られた財源のもと、全国ひとり親世帯等調査の最新の調査結果を踏まえ、児童扶養手当の所得制限を引き上げ、五十万を超える世帯で支給額をふやすこととしました。

 こうしたことを通じて、一人親家庭の自立を支援し、子供たちの未来が家庭の経済状況によって左右されることのないよう、支援の充実を図ってまいります。

 生活扶助基準の見直しについてお尋ねがありました。

 今般の生活保護基準の検証では、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性によって、一般の低所得世帯の消費の実態より生活扶助基準額が高い場合と低い場合の双方があると確認されました。

 今回、実態と乖離のある基準を世帯類型ごとに是正したため、その結果、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じています。

 その上で、モデル世帯で比較すると、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡しており、生活扶助基準を全体として引き下げるものではありません。

 なお、減額となる世帯への影響を緩和するため、減額幅を最大でも五%以内としつつ、三年をかけて段階的に実施することにしています。

 今後とも、専門的かつ科学的に検証を行った結果に基づき、最低限度の生活を保障する適切な生活保護基準となるよう、審議会の指摘も踏まえつつ、次回の検証に向け、検証手法も含めて検討を行ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 金子恵美議員より、二問頂戴をいたしました。

 生活困窮者支援を担う人材の確保についてお尋ねがありました。

 生活困窮者自立支援制度による相談支援がしっかりと機能するためには、さまざまな課題に関する相談に対し包括的に対応できる相談員を配置することが重要であると考えております。

 このため、本法案において、都道府県による市町村の相談員に対する研修の実施等に関する事業を法定化した上で、その費用に対する補助の仕組みを設けることとしております。

 また、相談員の配置を含む相談支援の体制づくりについては、支援実績の高い自治体を補助に当たって適切に評価するとともに、人員配置の状況を全国との比較で客観的に把握できる仕組みを設けることにより、人員配置の手薄い自治体の底上げを促すこととしております。

 児童扶養手当の支払い回数についてお尋ねがありました。

 児童扶養手当の支払い回数の見直しについては、平成二十八年の児童扶養手当法改正法の成立後、その附帯決議を踏まえ、支給事務を行う自治体に対し、回数増の可否や回数増のために必要な運用の見直しについて調査やヒアリングを行い、それを踏まえた地方三団体との調整を行った結果、現行の年三回から年六回にふやすことが可能となり、今回の法案に盛り込んだところであります。

 毎月支払いとすることについては、児童手当の支払い月と重なる月の支払い事務が過重になるなど、自治体の事務負担の増加を考慮し、困難であると考えております。(拍手)

    〔白石洋一君登壇〕

白石洋一君 児童扶養手当を一万円引き上げることにした理由についてのお尋ねがありました。

 平成二十五年に子どもの貧困対策推進法が成立してから五年が経過しようとしております。しかし、残念ながら、子供の貧困の状況は依然深刻です。中でも一人親家庭の子供たちの生活底上げは最優先課題です。

 児童扶養手当の支給額については、平成二十八年八月分から多子加算が増額されたものの、そうした子供の貧困の状況に鑑みれば、第一子についても増額することが必要と考えます。

 そこで、本法案は、児童扶養手当の支給額を一世帯当たりで最大で月額一万円引き上げ、一人親家庭の子供の生活の底上げを図ることといたしました。

 児童扶養手当の支給対象等を学生等に限定せずに二十未満まで拡大する理由についてのお尋ねがありました。

 一昨年に提出した野党法案では、一人親家庭の子供たちが大学へ進学しやすくなるように、児童扶養手当の支給対象を学生等に限定していました。しかし、貧困家庭の中には、高校卒業後も受験浪人生活で困窮したり、経済状況が浪人することを許さないため進学を断念し、また、就職を希望しても十分な収入が得られる安定した職につけずに苦しむ子供たちが多くいます。これらの子供たちは、学生ではありませんが、支える必要があります。

 そこで、本法案では、児童扶養手当の支給対象を学生に限定せずに二十未満の者に拡大することとし、貧困家庭の子供の生活底上げを確たるものとしました。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 高橋千鶴子さん。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、生活困窮者法改正案並びに野党提出法案について、総理及び提出者に質問します。(拍手)

 生活保護法第一条は、「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」と定めています。第二条、「国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる。」とあるように、誰でも必要なときは保護を受ける権利があると思います。総理に確認いたします。

 生活保護は、二〇〇四年から老齢加算の段階的廃止、前回、二〇一三年からは、平均六・五%、最大一〇%の引下げが行われました。同時に、年末一時扶助、冬季加算、住宅扶助の削減も行われました。これまでの削減が被保護者の生活にどう影響を与えたのか、伺います。

 基準は、憲法が保障する健康で文化的な生活とはこの程度と国が示すことになります。だからこそ、引下げは、被保護者はもちろん、国民生活全体に影響します。住民税の非課税限度額、就学援助、最低賃金、国保、介護の負担減免、公営住宅の家賃減免などが考えられますが、前回の基準改定による他制度への影響をどれだけつかんでいるか、お答えください。

 三年間で最大五%の引下げであり、七割近い世帯が引下げの対象となります。生存権を脅かすもので、絶対に認めることはできません。

 前回の見直しの影響については、基準部会でも評価するまでには至らなかったといいます。なぜ引下げができるのですか。当事者の声を聞いたのですか。

 食費や水光熱費も削り、これ以上何を削れというのか、死ねということかと声が上がっています。二〇一三年の引下げに対し、二十九都道府県でおよそ千人にも上る被保護者が憲法違反だと提訴しました。これだけ多くの人が裁判に訴えている状況を総理はどう認識していますか。

 司法の判断もまだ出ていない中で、今回の引下げは行うべきではありません。

 野党提出法案は、基準の引下げについてどのように考え、法案がどのような効果を生むのか、提出者にお伺いします。

 基準は、前回と同様、世帯収入十分位の下位一〇%と比較する水準均衡方式をそのまま当てはめたものです。しかし、その前までは、一般国民の消費水準の六割を下回らない格差縮小方式が基準の要件の一つでした。

 高齢者世帯の見直し後は、基準額では五割台になってしまうことが見込まれることに留意が必要と基準部会の報告は指摘しています。これまで一般国民の消費水準の六割としていた理由と、なぜ今回五割台になるほどの削減をするのか、明確にお答えください。

 二月五日の衆議院予算委員会で、我が党の志位和夫委員長は、相対的貧困率の貧困ラインが下がり続けていると指摘しました。総理は高齢者世帯がふえているからだと答弁しましたが、その高齢者世帯の五割台という基準では、健康で文化的な最低限度の生活とは言えないことは明らかではありませんか。

 母子加算の平均五千円の引下げ、また、三歳未満の児童養育加算が一万円に引き下げられます。そもそも児童養育加算は、児童手当が創設された際に同額の加算が設けられ、児童手当に連動して加算されてきたのではありませんか。なぜ今回切り離して引き下げるのですか。

 貧困の連鎖を解消することは与野党共通の思いではないでしょうか。被保護世帯の子供の大学進学率が他の世帯と比べても低いのは、世帯分離が迫られるからです。そのため、生活扶助、住宅扶助が減らされ、被保護世帯の生活をますます苦しめてきました。今回は、被保護世帯の子供が大学等に進学した際は一時金を支給し、住宅扶助は減額しないとしました。しかし、世帯分離は同じ扱いのため、生活扶助は減額され、効果は限定的です。世帯分離そのものを見直すべきです。お答えください。

 今回、被保護者は原則ジェネリックとすることが生活保護法に明記されます。治療のために必要なときは先発薬の使用を認めるのに、なぜ被保護者に限ってジェネリックの使用を法定化する必要があるのですか。

 生活困窮者法について聞きます。

 同法は、二〇一五年四月に施行されました。法の基本理念が新たに設けられ、対象は、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者に加え、就労の状況、心身の状況、地域社会との関連性その他の事情によりと明記した趣旨を伺います。

 断らない相談支援の必要性が部会報告でも強調される一方で、自治体間に大きな格差があります。必要な人員をどのように確保していくのか、お答えください。

 生活困窮者が生活を立て直す上でも、住宅の確保が絶対に必要です。

 一月末、札幌の施設で火災が発生し、被保護者十一人含め、多くの死亡者を出しました。私は、札幌の現場に立ち、建物の構造上、一気に火が拡大したこと、懸命な消火、救助活動にもかかわらず、助け出せなかった無念さも聞きました。他の支援団体の方々は、スプリンクラーを設置したいのはやまやまだが、金銭的にとても無理だと訴えていました。

 この法人は長くホームレス支援などに取り組んでおり、本来は無料低額宿泊所に位置づけられるものではありませんか。国はどう調査し、援助してきたのか、伺います。今回の改定でこうした宿泊施設についてどうするつもりなのか、お答えください。

 生活困窮者の支援のために、市役所の窓口が連携することは重要です。それでも必要な人には確実に生活保護につなげていくべきです。生活困窮者支援の相談窓口から保護に結びついた実績はどのくらいあるか、伺います。

 困窮者支援の窓口があるからといって、必要とする人が保護を受けられないことがあってはならないと思いますが、大臣の見解を伺います。

 最後に、今ほど国そして国会に対する信頼が揺らいでいるときはありません。公文書改ざんやデータ捏造、教育現場への不当関与、年金情報など、次々と問題になるさなか、憲法改正を与党が議論しているとは本当に驚きです。今やるべきは、国民の信頼を取り戻すこと、憲法二十五条を始め、憲法の精神が政治と社会に生かされ、国民が主権者であることを実感できるように努力することです。

 日本共産党もその立場で全力を尽くすことを表明し、質問とします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 高橋千鶴子議員にお答えをいたします。

 生活保護を受ける権利についてお尋ねがありました。

 生活保護制度は、全ての国民に対して無差別平等に国がその最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットとしての制度です。

 引き続き、保護を必要とする方には確実に保護を適用しつつ、今回の生活保護法の改正等を通じて、生活保護制度における自立支援の強化と適正な運営の確保を図ってまいります。

 生活保護基準の見直しについてお尋ねがありました。

 平成二十五年からの生活保護基準の見直しに関しては、二十九都道府県で裁判が提起されていると承知しています。

 しかしながら、生活保護基準については、健康で文化的な最低限度の生活を保障する観点から適正な水準となるよう定期的に検証し、見直しを行っていく必要があると考えております。

 その上で、今回の見直しでは、専門的かつ科学的見地からの検証を行い、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性ごとに、一般低所得世帯の消費の実態と生活扶助基準額との乖離を是正するため、必要な見直しを行うものです。

 高齢者世帯の生活扶助基準についてお尋ねがありました。

 今回の見直しにおいては、高齢者世帯も含めて、年齢、世帯人員、地域を組み合わせた世帯特性ごとに、一般低所得世帯の消費実態と基準額との乖離を是正するため、基準額が上がる世帯、下がる世帯が生じるものであります。

 今後とも、専門的かつ科学的に検証を行った結果に基づき、最低限度の生活を保障する適切な生活保護基準となるよう、次回の検証に向けて、検証手法も含めて検討を行ってまいります。

 生活困窮者支援制度の人員確保についてお尋ねがありました。

 生活困窮者自立支援制度による相談支援がしっかりと機能するためには、さまざまな課題に関する相談に対して包括的に対応できる相談員を配置することが重要であると考えております。

 このため、本法案において、都道府県による市町村の相談員に対する研修の実施等に関する事業を法定化した上で、その費用に対する補助の仕組みを設けることとしています。

 また、相談員の配置を含む相談支援の体制づくりについては、その支援実績を財政支援に反映させるなど、自治体に対して支援を行ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 高橋千鶴子議員から、十一問質問をいただきました。

 過去の基準見直しの影響についてお尋ねがありました。

 生活保護基準については、平成十六年以降、定期的に検証を行うこととしており、これまで、平成十九年、平成二十四年に検証を行い、最低限度の生活を保障する水準となるよう見直しを行ってきました。

 平成二十五年八月、二十六年四月及び二十七年四月に三段階で実施した生活保護基準の見直しについては、見直しの前後に当たる平成二十四年度と二十七年度の生活扶助基準額をもとに見直しの影響を推計したところ、平成二十六年四月の消費税率の引上げに対応するために行ったプラス二・九%の改定の影響を含め、基準額が増額となった世帯が二七%、基準額の減額が二%未満だった世帯が三六%、基準額の減額が二から五%だった世帯が二五%、基準額の減額が五%以上だった世帯が一二%となっております。

 また、平成二十七年に行った冬季加算の見直しの前後で、冬季の光熱費の支出割合に低下が見られるものの、その料金の下落や季節要因の影響も考えられ、冬季加算の見直しによる家計への影響を評価するまでには至らなかった旨、審議会報告書に記載をされております。

 平成二十七年七月に行った住宅扶助の見直しの影響については、住宅扶助の限度額が減額となった約六十一万世帯のうち、実際に転居がなされた世帯は約二万世帯となっております。

 平成二十五年の期末一時扶助の見直しの影響については、十二月のみの給付であるため、その影響を切り出して評価することは困難ですが、年間を通じた家計の状況を見る限り、大きな影響は確認できておりません。

 生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響についてお尋ねがありました。

 前回の生活扶助基準の見直しによる他制度への影響に関しては、国の制度については、それぞれの制度の趣旨や目的、実態を十分考慮しながら、できる限りその影響が及ばないように対応がなされたものと承知をしております。

 また、個人住民税の非課税限度額やこれを参照している制度については、前回の生活扶助基準見直しに伴い非課税限度額は変更されておりません。

 それ以外の地方自治体が独自に実施する事業については、国の取組の趣旨を理解していただいた上で、各地方自治体において適切に判断し、対応いただいたものと考えております。

 生活保護基準の見直しの影響と当事者の声についてお尋ねがありました。

 生活保護受給世帯の家計の状況に関する調査を実施しており、その調査結果を活用して、生活扶助基準の見直しが家計に与える影響について検証しました。

 この点に関しては、生活保護基準部会の報告書において、生活保護受給世帯と一般世帯における平成二十四年度から平成二十六年度にかけての各支出費目の比較については、支出割合が生活保護受給世帯と一般世帯との間では異なるものの、経年の支出割合の推移は大きな変化が見られず、生活扶助基準の見直しによる家計への影響を評価するまでには至らなかったとされております。

 その上で、全国消費実態調査等のデータを用いて専門的かつ科学的な見地から行った検証結果を踏まえ、今回、生活保護基準の見直しを行うものであります。

 また、生活保護受給世帯の生活実態及び意識に関する調査を実施しているほか、生活保護を受給されている方やその関係者から要望書等をいただいているなど、さまざまな機会を通じて、直接当事者や関係者の方から御意見等をいただいているところでございます。

 生活扶助基準の見直しについてお尋ねがありました。

 生活保護基準の見直しについては、昭和五十八年まで、一般国民の消費水準との格差縮小を目指す格差縮小方式を採用しており、昭和五十八年の検証では、一般勤労者世帯と生活保護勤労世帯の消費支出の比率が六割であることを確認いたしております。

 しかし、それ以降は、一般国民の消費水準との均衡を図る観点から、生活扶助基準の水準を調整する水準均衡方式を採用しており、今回の見直しにおいても、この考え方に基づき検証を行っております。

 なお、今回、生活保護基準部会の報告書に掲載した数値は、夫婦子一人世帯や高齢単身世帯など個別の世帯類型ごとに一般世帯の消費支出と生活扶助基準額とを比較していることに対し、昭和五十八年当時は、一般勤労者世帯の一人当たり消費支出と被保護勤労者世帯の一人当たり消費支出を比較しており、考え方が異なるものであります。

 児童養育加算の考え方についてお尋ねがありました。

 児童養育加算については、現行では児童手当と同額の加算を行っていますが、費用の必要性や設定根拠が不明確であるという指摘があったことを踏まえ、今回の見直しによって、生活保護制度において保障すべき、子供の健全育成のために必要な社会文化的な活動に係る費用として位置づけることといたしました。

 その際、一般低所得世帯との均衡という考え方ではなく、子供の貧困対策の観点から、中位所得層の標準的な家庭と同程度の学校外活動費用が賄えるよう、書籍の購入費用や補習教育の月謝額などの費用として月額一万円を支給することといたしました。

 あわせて、学校外活動の費用については高校生にも必要と考えられることから、支給対象をこれまでの中学生までから高校生までに拡大することとしております。

 生活保護費を受給しながら大学等に就学することについてお尋ねがありました。

 生活保護費を受給しながら大学等に就学することについては、高校卒業後就職する方や、生活保護を受給されていない方とのバランスを考慮して、慎重に検討すべき課題と認識をしております。

 一方、生活保護世帯の子供の大学等への進学を支援するため、本法案において進学準備のための一時金の給付制度を創設する、平成三十年度予算で自宅から大学等に進学する場合の住宅扶助費の減額を取りやめるなど、取組を進めることにしております。

 さらに、どんなに貧しい家庭に育っても、意欲さえあれば大学等に進学できる社会へと改革するため、昨年十二月に取りまとめた新しい経済政策パッケージにおいて、生活保護世帯を含めた所得が低い家庭の子供たち、真に支援の必要な子供たちの高等教育の無償化を実現することとされていると承知をしており、文部科学省と連携して、生活保護世帯の子供の大学等への進学支援に取り組んでまいります。

 生活保護受給者への後発品の使用の原則化についてお尋ねがありました。

 後発医薬品については、医療全体においてその使用を促進しており、生活保護においても、平成二十五年の生活保護法の改正で法律上の定めを設けること等により、その使用促進に取り組んでおります。

 しかしながら、医療扶助における後発医薬品の使用割合の伸び率が鈍化傾向にあり、地方自治体からも、運用ではなく制度的対応として、後発医薬品の原則化が必要との要望が出されております。

 このため、今般の改正法案では、後発医薬品の使用を更に進めるため、医師又は歯科医師が医学的見地に基づき後発医薬品を使用することができると認める場合に、原則として後発医薬品を給付することとしたものであります。

 生活困窮者自立支援法の基本理念や生活困窮者の定義の見直しについてお尋ねがありました。

 今回の改正案に先立ち御議論いただいた社会保障審議会の報告書では、生活困窮者自立支援制度について、多様な関係者の間で共有を一層図るため、法令において生活困窮者の定義や目指すべき理念を明確化すべきとされました。

 これを受けて、今回の改正案では、基本理念として、生活困窮者の尊厳の保持や生活困窮者の状況に応じた包括的、早期的な支援、地域における関係機関等との緊密な連携を明記するとともに、生活困窮者の定義について、生活困窮に至る背景事情として、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情を明示し、関係者間で共有を図り、適切かつ効果的な支援の展開につなげていくこととしたものであります。

 無料低額宿泊所についてお尋ねがありました。

 生活保護受給者が居住する施設の防火安全体制については、従来から、福祉事務所による居住環境等の確認と消防への協力等について、地方自治体に対し依頼をしてまいりましたが、今回の札幌市の火災を受けて、今月、新たに、地方自治体の福祉部局、消防部局及び建築部局が連携して施設に助言する等の取組を依頼いたしました。

 また、生計困難者が多数居住しているが無料低額宿泊所には該当しないと判断されている施設があることは承知をしており、今般、無料低額宿泊所に対する規制の強化と良質な事業所への日常生活上の支援の委託を行うこととあわせて、届出が必要な事業所について、居住期間の長短を問わないこととする等の観点も含め、今後、関係者の意見を聞きながら、判断基準の明確化を図ることを検討してまいります。

 生活困窮者支援の相談窓口から生活保護に結びついた実績についてお尋ねがありました。

 平成二十七年度と二十八年度の二年間において、生活困窮者自立支援制度の相談窓口に新規に相談に来られた方は約四十五万人となっており、そのうち推計で約五万人の方が生活保護の福祉事務所の窓口につながっております。

 生活保護を必要とする人が保護を受けられないことがあってはならないとの御意見に対する見解についてお尋ねがありました。

 生活保護が必要な方については、生活保護が適切に受けられるようにすることが重要であり、これまでも、生活困窮者支援の相談窓口に来られた方の中で、要保護状態と見込まれる方や、支援途中の要保護状態となった方については、福祉事務所につなぐよう周知をしております。

 さらに、本法案において、要保護者となるおそれが高いと判断する段階で、生活保護制度に関する情報提供等の措置を講ずる旨を規定しており、必要な方には確実に保護を実施するという生活保護制度の基本的な考え方をより実効的なものとしてまいります。

 以上です。(拍手)

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 高橋千鶴子議員より、政府による生活保護基準の引下げと野党提出法案の効果についてお尋ねがありました。

 生活保護は、憲法二十五条に明記された国民の生存権を保障する最後のセーフティーネットです。ところが、安倍内閣は、生活保護基準を見直し、生活扶助費を最大五%、平均で一・八%削減することを決定しました。これにより、生活保護を受けている全世帯の七割で、また生活保護を受けている子育て家庭の四割以上で、それぞれ生活扶助が減額されることになります。

 前回、二〇一三年の、最大一〇%、平均六・五%の削減に続く連続削減となります。

 現在の生活扶助基準でも、憲法が保障する健康で文化的な生活の水準とはとても言えません。さらなる生活保護基準の引下げは、貧困に苦しむ家庭の生活に深刻な影響を与え、憲法二十五条を踏みにじるものになると言わざるを得ません。

 そもそも、我が国の生活保護の捕捉率は極めて低いという問題があります。また、この間、安倍内閣のもとで、所得の最も少ない一〇%の層の実質所得は下がり続けています。こうしたもとで、低所得者世帯との均衡に着目して生活保護基準を改定する水準均衡方式は、際限のない生活保護基準の引下げにつながり、極めて大きな問題があります。

 そこで、本法案では、法律の公布後一年以内に、生活保護基準の改定方法等のあり方を見直し、生活保護基準の改定等の必要な措置を講ずることとし、この措置が講ぜられるまでの間、現行の基準に比して要保護者に不利な内容の基準を定めてはならないこととしています。つまり、生活保護基準の引下げはできないこととなります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 井上英孝君。

    〔井上英孝君登壇〕

井上英孝君 日本維新の会の井上英孝です。

 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案に対して、党を代表して質問いたします。(拍手)

 我が党は、国民が納得して納税できる社会の実現に向け、被保護者が保護費をギャンブル等で費消することを禁止する生活保護法改正法案を提出したほか、国民年金額と生活保護費の逆転現象について問題提起を続けてまいりました。

 まず、生活保護のあり方について質問いたします。

 生活保護費を、扶助別の加算方式ではなく、給与や年金と同じように一定額を支給するワンバスケット方式として、保護世帯が自主的に管理するという方式への変更が、家計管理能力を高める上でも合理的であると考えます。

 世帯特性に合わせた支給水準の積み上げが難しいと予算委員会での答弁がありました。しかしながら、住民税非課税世帯の給与収入をベースとしたり、現物支給などを含めた検討が可能ではないでしょうか。

 また、保護費をギャンブル等に費消してしまう実態も見られる中、生活保護法第三条が規定する健康で文化的な最低限度の生活を保障するの考え方に沿った生活保護基準について、納税者の目線に立った見直しが必要とも考えます。最低生活費に係る金額算定の考え方について、厚労大臣に御所見をお伺いいたします。

 次に、平成二十九年十二月の被生活保護世帯は百六十万世帯を超え、高齢者世帯が占める割合は五二・九%と、年々増加しております。

 二〇一七年の金融広報中央委員会の調査によりますと、二人以上の世帯で、金融資産を保有していないと答えた世帯は三一・二%、単身世帯では四六・四%に上っております。非正規雇用比率が上昇し、貯蓄がない世帯が今後ふえる可能性も非常に高いことから、保護を必要とする高齢者は今後もふえていくと推察されます。

 現在の生活保護制度の枠組みでは、制度として機能不全に陥っているのではないでしょうか。高齢者を対象とした新たな社会保障制度の創設や、保護制度全体の見直しの必要性について、総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、生活保護受給者に対する就労支援について質問いたします。

 平成二十八年度の就労支援事業への参加率は三六%、就労・増収率は四二・四%にとどまっているとの報告があります。また、高齢保護世帯が半数を占めている以上、大半は就労支援になじまないとも考えられますが、就労可能な受給者については事業参加への義務化などについて検討し、参加率、就労率、それぞれ向上に向けた取組を推進すべきではないでしょうか。必要な改善策について、厚労大臣にお答えいただきます。

 次に、医療扶助の適正化について質問いたします。

 生活保護費三・八兆円の半分を医療扶助費が占めています。社会保障費の膨張が深刻な中、医療扶助費の適正化に向けた提案は一定の評価をいたしております。しかしながら、後発医薬品の使用の原則化に関し、後発薬を選択する割合が七割しかない現状に対し、実効性ある手段となり得るかは甚だ疑問であります。

 被保護者が利用する薬局を指定するモデル事業が今年度実施されましたが、この実績をどのように全国に展開し、適正化に向けたスケジュールも含めて、厚労大臣にお聞きいたします。

 また、明らかに過剰な頻回受診を抑制するためにも、福祉事務所における指導だけでなく、医療機関の窓口等での水際対策が必要であります。適正受診を受けても、改善割合は四五%との報告もあります。

 受診の適正化に向けて、窓口での一部自己負担も検討すべきとの指摘に対しては、必要な医療の受診抑制の可能性もあるなど、反対意見が多く出たことから、償還払いの試行等も含めた方策のあり方を検討するとの答弁にとどまっております。

 過剰な頻回受診対策に対して、扶助費の抑制だけでなく、保護を受けていない世帯との公平性の観点からも、一部自己負担制度の導入の必要性について、総理に御所見をお伺いいたします。

 次に、生活困窮者の自立支援について質問いたします。

 生活困窮者自立支援制度により、さまざまな主体が支援ニーズを把握し、自立支援に取り組んでいることは一定の評価をいたします。

 生活保護業務が増大する中、ケースワーカーを始めとした現場の負担は増加する一方であり、きめ細やかな対応のためには、地域や住民活動との連携が欠かせません。また、ケースワーカーに対する相談ニーズが高い大都市部と比較的相談事案の少ない地方との間で地域事情差があることを踏まえ、国庫補助等のあり方についても改善が必要と考えます。

 厚労省の報告書には、住民に近い民生委員が生活困窮者に気づき、地域で支える取組を行っていく意義は大きいとあります。しかしながら、民生委員の役割は多岐に及び、負担が増大していることから、民生委員のなり手不足や欠員が課題となっており、制度疲労は増すばかりです。

 現状を踏まえて、今後どのように進めていくのか、厚労大臣にお聞きいたします。

 次に、子供の貧困対策についてお伺いします。

 子どもの貧困対策の推進に関する法律が施行され、四年が経過しましたが、生活保護世帯に属する子供の大学進学率及び専修学校等への進学率は合わせて三三・一%であり、全世帯の進学率七三・二%と比較すると半分以下という現実があります。これでは貧困対策の推進となっていないと言わざるを得ませんが、厚労省としてどのような対応が必要と考えるか、厚労大臣にお聞きいたします。

 最後に、地方議員の年金制度につきましては、生活保護費との逆転現象が存在するなど、国民年金制度の脆弱性により、高齢者の方々が老後を安心して暮らせる制度にはまだまだほど遠く、真の充実を実感してもらっていない現状にもかかわらず、地方議員だけを、単年度で約二百億円もの公的資金を投入し厚生年金に加入させることは、事実上の議員年金制度の復活であり、言語道断と考えます。我が会派は、改めて反対とつけ加えさせていただきます。

 我が党は、一人一人の能力を最大限発揮できる社会を実現すると同時に、本当に支援が必要な人へのサポートを手厚くし、将来世代への思い切った重点投資を可能にすることを目指していくことをお約束し、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 井上英孝議員にお答えいたします。

 高齢者を対象とした制度についてお尋ねがありました。

 高齢者の方々の中には、低所得、低年金などにより厳しい生活を送られている方がいらっしゃることも事実であります。

 そうした中で、生活保護制度については、高齢者を含む全ての国民に対して最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットであり、今後ともしっかりと機能させていくことが必要と考えております。

 また、低所得の高齢者の方々への対策については、社会保障と税の一体改革において、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮や、医療、介護の保険料負担軽減を既に実施しています。

 今後、年最大六万円の年金生活者支援給付金の創設、介護保険料のさらなる負担軽減を実施するなど、社会保障全体で総合的に支援してまいります。

 加えて、将来に向けて老後の所得保障を厚くするため、高齢期の就労機会の確保、女性の就労支援、厚生年金の適用拡大等にも取り組みます。

 こうしたさまざまな施策により、できる限り高齢者の方々の暮らしが安定するよう支援していくことが重要と考えています。

 医療扶助についてお尋ねがありました。

 医療扶助に一部自己負担を導入することについては、子供を対象外としたり、上限額を設けたりするなどの工夫により実現可能との御意見がある一方、最低生活保障との両立の難しさ、必要な医療の受診まで抑制され、むしろ長期的には医療費がふえるという懸念などから反対する御意見も多くあります。

 このため、頻回受診者に対する一部の自己負担については、頻回受診対策に向けたさらなる取組の必要性、最低生活保障との両立の観点なども踏まえつつ、いわゆる償還払いの試行も含めた方策のあり方について、引き続き検討することとしています。

 一方で、生活保護受給者の中には、必要以上に医療機関を受診する方がいるのも事実です。その適正化を図るため、新たに、福祉事務所の職員等が医療機関の受診に同行する事業に取り組むなど、頻回受診対策の強化に取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 井上英孝議員より、五問質問をいただきました。

 生活保護における最低生活費の金額算定の考え方についてお尋ねがありました。

 生活保護制度が保障する最低限度の生活については、生活保護法の第三条で「健康で文化的な生活水準を維持することができるもの」とされ、第八条第二項で「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」とされており、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか定期的に検証を行い、基準額を設定しております。

 また、現物支給については、福祉事務所における実務が可能なものは、実費相当額を支給する方法を取り入れているところであります。

 今後とも、新たな検証手法の開発などを通じ、生活保護基準が最低生活を保障する水準としてより妥当なものとなるよう取り組んでまいります。

 生活保護受給者に対する就労支援についてお尋ねがありました。

 生活保護受給者の就労支援については、平成二十五年の生活保護法改正において法定化した被保護者就労支援事業などの就労支援関連の事業に関して、全ての福祉事務所設置自治体で、事業参加率等の目標を定めて取り組んでいただいております。

 平成二十八年度においては、約十二万人が就労支援関連の事業に参加し、そのうち約五・二万人が就労、増収につながるなど、一定の効果を得ております。

 しかしながら、これらの就労支援関連事業への参加率の目標が平成三十年度までに六〇%とされていることに対し、平成二十八年度の参加率は約三六%と、目標までさらなる努力が必要であることや、地方自治体間でその取組状況に差があるなど課題も見えてきており、今後、有識者や地方自治体の参画を得て、より効果的な就労支援のあり方を検討するなど、更に生活保護受給者の就労促進に取り組んでまいります。

 生活保護受給者の利用する薬局に関する取組についてお尋ねがありました。

 薬局において、複数の医師から処方された医薬品の重複等を確認し、必要に応じて照会等を行うことは、重複調剤の適正化や併用禁忌薬の使用のチェックにつながり、被保護者の健康管理に寄与するとともに、医療扶助費の適正化効果も見込まれます。

 このため、生活保護受給者が利用する薬局をできるだけ一カ所にするモデル事業を平成二十九年度から大阪市と青森県で実施しているところであります。

 薬局を一カ所にすることについては、地方自治体から、地域の医療機関、薬局の所在や交通事情などにも十分配慮すべきとの意見をいただいており、今後、モデル事業の結果も踏まえつつ、どのような方法で推進を行うこととするか検討してまいります。

 生活困窮者の自立支援についてお尋ねがありました。

 生活困窮者の自立支援のためには、民生委員や社会福祉法人を始めとした地域の多様な主体が、課題のある方に気づき、解決につなげていく地域での取組と、生活困窮者自立支援制度などによりさまざまな機関が協働し、生活困窮者が抱える課題の解決に取り組む体制とが連携した包括的な支援が重要であります。

 そのため、昨年の通常国会において社会福祉法を改正し、包括的な支援体制の整備を推進するとともに、自治体の創意工夫ある取組を支援するモデル事業を実施しております。

 本法案においては、生活困窮者自立支援制度の各事業の機能強化を行うこととしており、改正社会福祉法と相まって、生活困窮者の自立支援に向けて、包括的な支援体制のさらなる強化を図ってまいります。

 生活保護世帯の子供の大学進学支援についてお尋ねがありました。

 生活保護世帯の子供の大学等進学率は一般世帯の子供と比較して低い状況であり、貧困が世代を超えて連鎖しないようにする観点から、生活保護世帯の子供の大学等への進学を支援していく必要があります。

 このため、本法案では、生活保護世帯の子供の大学等への進学準備のための一時金として、自宅から通学の方は十万円、自宅外からの通学の方は三十万円の給付を創設することとしております。

 さらに、平成三十年度予算においては、自宅から大学等に通学する場合の住宅扶助費の減額を取りやめることとしており、こうした取組について、進学を希望する子供やその家庭に対ししっかりと周知をし、生活保護世帯の子供が希望する進路に向け適切な支援が受けられるようにしてまいります。

 以上であります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       文部科学大臣   林  芳正君

       厚生労働大臣   加藤 勝信君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  西村 康稔君

       厚生労働副大臣  高木美智代君


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