衆議院

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第19号 平成30年4月17日(火曜日)

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平成三十年四月十七日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十六号

  平成三十年四月十七日

    午後一時開議

 第一 電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 古物営業法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とリトアニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第六 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の条約の締結について承認を求めるの件

 第七 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 第八 生産性向上特別措置法案(内閣提出)

 第九 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 古物営業法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とリトアニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第六 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第七 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 日程第八 生産性向上特別措置法案(内閣提出)

 日程第九 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまトニー・スミス下院議長を団長とするオーストラリア連邦議会議員団御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第一 電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、情報通信技術の進展に対応し、電気通信役務の円滑な提供を確保するとともにその利用者の利益を保護するため、送信型対電気通信設備サイバー攻撃又はそのおそれへの対処に係る制度、電気通信番号計画及び電気通信番号使用計画に係る制度並びに電気通信業務の休止及び廃止に係る情報の整理及び公表の制度の新設等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月四日本委員会に付託され、十日野田総務大臣から提案理由の説明を聴取し、十二日、質疑を行い、これを終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長冨岡勉君。

    ―――――――――――――

 著作権法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔冨岡勉君登壇〕

冨岡勉君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、デジタルネットワーク技術の進展により、新たに生まれるさまざまな著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、著作物の利用をより円滑に行えるようにするための措置等を講ずるものであり、その主な内容は、

 第一に、イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い、将来、新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、一定程度、抽象的に定めた規定を整備すること、

 第二に、ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、教育機関等の授業や予習、復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材を、権利者の許諾なく、ネットワークを通じて、生徒の端末に送信すること等をできるようにすること、

 第三に、視覚障害者等の著作物の利用機会促進に係るマラケシュ条約の締結に向けて、肢体不自由等により書籍等を持てない者のための録音図書の作成等についても、権利者の許諾なく行えるようにすること、

 第四に、アーカイブの利活用促進のため、美術館等の展示作品の解説用資料等を、権利者の許諾なくデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧できるようにすること

などであります。

 本案は、去る四月三日本委員会に付託され、翌四日林文部科学大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。六日に質疑に入り、十一日、参考人から意見を聴取した後、さらに質疑を行い、同日質疑を終局いたしました。十三日、討論、採決を行った結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 古物営業法の一部を改正する法律案(内閣提出、参議院送付)

議長(大島理森君) 日程第三、古物営業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長山際大志郎君。

    ―――――――――――――

 古物営業法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔山際大志郎君登壇〕

山際大志郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における古物営業の実情等に鑑み、その受けるべき許可を、営業所等の所在する都道府県ごとの公安委員会の許可から主たる営業所等の所在する都道府県の公安委員会の許可に改めるとともに、古物商の仮設店舗における古物の受取に係る営業の制限を緩和する等の措置を講ずるものであります。

 本案は、参議院先議に係るもので、去る四月十日本委員会に付託され、翌十一日小此木国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、十三日に質疑を行い、質疑終局後、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とリトアニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第五 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第六 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の条約の締結について承認を求めるの件

 日程第七 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

議長(大島理森君) 日程第四、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とリトアニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第五、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第六、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、日程第七、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、右四件を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長中山泰秀君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とリトアニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエストニア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とロシア連邦政府との間の条約の締結について承認を求めるの件及び同報告書

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とアルメニア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔中山泰秀君登壇〕

中山泰秀君 ただいま議題となりました四件につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 日・リトアニア租税条約は、平成二十九年七月十三日にビリニュスにおいて、日・エストニア租税条約は、同年八月三十日にタリンにおいて、日ロ租税条約は、同年九月七日にウラジオストクにおいて、それぞれ署名されたものであり、我が国と相手国との間で、二重課税の除去並びに脱税及び租税回避行為の防止を目的として、課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子等に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 日・アルメニア投資協定は、平成三十年二月十四日にエレバンにおいて署名されたものであり、我が国とアルメニアとの間で、投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化を図るため、投資の許可段階及び許可後の内国民待遇及び最恵国待遇の原則供与等について定めるものであります。

 以上四件は、去る四月三日外務委員会に付託され、翌四日河野太郎外務大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。次いで、十三日に質疑を行い、討論の後、順次採決を行いました結果、四件はいずれも賛成多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 四件を一括して採決いたします。

 四件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、四件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第八 生産性向上特別措置法案(内閣提出)

 日程第九 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第八、生産性向上特別措置法案、日程第九、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長稲津久君。

    ―――――――――――――

 生産性向上特別措置法案及び同報告書

 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔稲津久君登壇〕

稲津久君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、生産性向上特別措置法案は、我が国産業の生産性向上を短期間に実現するため、規制のサンドボックス制度を創設し、迅速に新しい技術等の実証ができる環境を整備するとともに、データの共有、連携を行う取組を認定する制度を創設し、設備投資減税を行うほか、中小企業の先端設備等の導入に対する支援等の措置を講じようとするものであります。

 次に、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案は、産業の新陳代謝を活性化し、我が国産業の持続的な発展を図るため、産業革新機構の組織及び運営を見直すとともに、業種を超えた事業再編や円滑な事業再生及び事業承継を支援するべく、会社法の特例措置や中小企業に対する支援体制強化等の措置を講じようとするものであります。

 両案は、去る四月三日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、四日に世耕経済産業大臣から提案理由の説明を聴取した後、六日に質疑に入り、十日参考人からの意見を聴取し、十三日質疑を終局いたしました。質疑終局後、討論、採決を行った結果、両案はいずれも賛成多数をもって可決すべきものと議決いたしました。

 なお、両案に対しそれぞれ附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣河野太郎君。

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、アメリカ合衆国が環太平洋パートナーシップ協定からの離脱を表明したことを受け、同国を除く同協定署名十一か国で同協定の内容を実現するための法的枠組みとしての協定の交渉を開始しました。その結果、平成三十年三月八日にチリのサンティアゴにおいて、十一か国の代表者によりこの協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、アジア太平洋地域において、物品及びサービスの貿易並びに投資の自由化及び円滑化を進めるとともに、知的財産、電子商取引、国有企業、環境等幅広い分野で新たなルールを構築するための環太平洋パートナーシップ協定の内容を実現するための法的枠組みについて定めるものであります。

 この協定の締結は、我が国の成長戦略に資するものであり、また世界的に保護主義的な風潮が広まる中で自由貿易の旗手である我が国から世界に向けた力強いメッセージとなり、アジア太平洋地域に二十一世紀型の貿易・投資ルールを広げていく上で大きな一歩となることが期待されます。

 以上が、この協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山川百合子君。

    〔山川百合子君登壇〕

山川百合子君 立憲民主党の山川百合子でございます。

 立憲民主党・市民クラブを代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件について質問いたします。(拍手)

 冒頭、一言申し上げます。

 各種世論調査で内閣支持率が更に下落し、安倍総理が信頼できないという人が世間に満ちあふれている中、総理はきょうから訪米されるそうです。それも、疑惑の渦中にいる昭恵夫人を連れ、証人喚問を強く要求されている、かつての総理秘書官の柳瀬氏も連れての訪米です。疑惑隠し、証人喚問逃れと言わざるを得ません。

 総理が訪米するなとは申し上げませんが、疑惑をかけられ、国会で今すぐにでもきちんと説明すべき人まで訪米に連れていく必要はありません。そんな中で、総理はアメリカで、あのトランプ大統領とまたゴルフをお楽しみなのでしょうか。そんな暇も余裕もあるとは思えません。

 そこへ今度は財務事務次官のセクハラ疑惑です。口にするのもはばかられるような音声が既に報じられ、先週のうちに次官みずからおやめになるのかと思いきや、信じがたいことに、居座り、居直った上に、女性記者に名乗り出よと言わんばかりの、恫喝ともとられかねない通達が官房長から発せられるという看過できない事態になっています。そして、それを財務大臣がかばう。まさに財務省ぐるみのセクハラ疑惑隠しです。

 もはや問題、疑惑のオンパレードの安倍政権ですが、セクハラ疑惑に加えて、公文書改ざんに口裏合わせ、誰かがうそをついている加計問題にイラク日報隠蔽、文科省からの教育現場への圧力など、もはや挙げれば切りがありません。一体この安倍政権のていたらくは何なのでしょう。もとをたどれば、全ては安倍総理とその周辺の取り巻きの皆さんに行き着くことを国民の皆様は既に感じているのではないでしょうか。総理への信頼はもはや地に落ちた感があります。

 もはや政権末期現象そのものとしか言いようがないということを厳しく指摘し、質問に入ります。

 本協定は、アメリカを含む十二カ国で署名されたTPP協定の内容をアメリカ抜きで実現しようとするものです。政府は、そのTPP協定を、アジア太平洋地域で自由で公正な経済圏を広げていくためのものであると標榜してきました。

 しかし、その交渉はどのようなものであったのでしょうか。国民は、これについて知るすべがありません。なぜなら、政府は、日本が交渉入りの際に他の交渉参加国と締結した秘密保持契約を盾に、一昨年の国会審議で、TPPの交渉経過などについて、ノリ弁当と呼ばれた黒塗りの資料しか示さなかったからです。TPPの交渉経過が主権の存する国民に対して開示されていないという状態は、今も変わりません。

 そのような状態で、どうして再びTPP協定の内容について国会審議を行えるのでしょうか。TPP協定の内容について審議を行う上で重要なのは、我が国が交渉過程で何を主張し、国益に照らして何をかち取り、何を譲ったのかを検証することです。TPP11の交渉経緯でなされた我が国の主張とその結果について、茂木経済再生担当大臣の誠意ある説明を求めます。

 情報公開とあわせて、今回の協定内容が確実に日本の国益にかなったものであるという全国民的な理解を形成する責任が政府にはあります。TPPが目指す日本の国益とビジョンについて、茂木大臣御自身の言葉でわかりやすい御説明をお願いをいたします。

 次に、アメリカとの関係について伺います。

 安倍総理は、二〇一六年十一月、トランプ大統領の当選直後に、TPP協定の国会審議がまだ行われていたこともあってか、TPPは米国抜きでは意味がない、再交渉が不可能であるのと同様、根本的な利益のバランスが崩れてしまいますと発言していました。

 しかし、安倍総理は、その国会審議が終わると、翌二〇一七年一月に、米国抜きのTPPを否定しない答弁を行い、二月の首脳会談の後には、日本がTPP協定を推進する意図についてトランプ大統領から理解を得られたとして、米国の離脱表明後の日本がTPPにおいて持っている求心力を生かしながら今後どのようなことができるかを、米国以外のTPP参加国とも議論していきたいと答弁するに至り、日本は本協定の交渉に向けて進んでいきました。

 なぜ、安倍総理は、TPP協定の国会審議が終わった途端に米国抜きのTPPを考慮するようになったのでしょうか。本協定と、TPPは米国抜きでは意味がないとの発言は、全く矛盾します。米国抜きのTPPである本協定では、根本的な利益のバランスは崩れてしまうのではないでしょうか。なぜ、政府は、トランプ大統領のお墨つきを得て初めて十一カ国の交渉へと突き進んでいったのでしょうか。茂木大臣の答弁を求めます。

 食料安全保障の観点から、国内農林水産業の保護の必要性があることは言うまでもありません。

 TPP11協定の農林水産分野の合意内容は、TPP12協定と全く同じであります。特に、いわゆるTPP枠がそのまま維持されているのはなぜでしょうか。TPP枠は、オーストラリア、ニュージーランドなどの農産物輸出大国だけで満たされる可能性があります。

 TPP12協定の農林水産分野の水準をそのまま容認してTPP11協定に合意したのはなぜでしょうか。仮に、米国が将来TPP参加を決めたときに、若しくは日米FTAで日本に農林水産分野の交渉を求めたときに、米国の枠をこのTPP枠を超えて受け入れる可能性はないのでしょうか。齋藤農林水産大臣の御答弁を求めます。

 トランプ大統領は、二国間の通商交渉を志向しています。二〇一七年二月の日米首脳会談では、麻生副総理とペンス副大統領のもとで経済対話を立ち上げることが決定されました。昨年四月の第一回経済対話では、高い貿易及び投資に関する基準についての二国間枠組みを取り上げることで一致し、昨年十月の第二回経済対話では、高い貿易・投資基準を推進する上での共通の関心に係る新しい分野を特定するため、専門家レベルの作業が進行中であるというプレスリリースが出されています。

 本年三月に、アメリカのライトハイザー通商代表は、日米FTAの締結に向けた協議を始めたいとの意向を示していますが、日米経済対話で取り上げられている高い貿易・投資基準とは、実質的には日米FTAであり、FTAで取り上げる分野を決めるための準備作業が行われているのではないですか。高い貿易・投資基準とは、具体的に何を指すのでしょうか。

 また、このことは、TPP11の交渉結果を大前提として、米国が日米FTAを有利に進めようというアメリカの思惑や戦略に乗ってしまっているのではないですか。

 さらに、日米の経済交渉が、安全保障との兼ね合いで、TPP再交渉や日米FTA交渉等の中で譲歩されることがあるのでしょうか。

 アメリカは、鉄鋼とアルミの輸入制限措置に見られるように、一方的な措置を行いながら、二国間交渉で自国に有利な条件を引き出すという、WTO設立以前の日米貿易摩擦の時代をほうふつとさせるような手法を用いて各国とディールを行おうとしています。

 そのような状況でアメリカとの二国間FTA交渉に応じることが、安全保障に関しアメリカと特別な関係にある日本にとって、国益を守るため、また日本の農林水産業を含めた産業を守るために適切なのでしょうか。河野外務大臣の御答弁を求めます。

 安倍総理は、TPP協定の国会審議中には、TPPについて、再交渉はしない、仮に米国から再交渉の要望があっても、それには応じる考え方はないと答弁していました。その姿勢は今も維持されているのでしょうか。

 本年一月、本協定の署名が迫ってくるや、トランプ大統領は、以前に結んだ協定に比べ、米国にとってとてもよい内容になるならばTPPをやると述べ、二月には、復帰の可能性はあるが、かなりよい条件を得る必要がある、十一カ国はよりよい内容を提案する必要があると述べ、合意内容の再交渉を前提としたTPP復帰を示唆しました。

 加えて、今月十二日には、ライトハイザー通商代表と国家経済会議のクドロー委員長に対し、アメリカに有利な条件付で復帰を検討するよう指示をしています。

 安倍総理はこれまで、TPP12のときの合意から変えるかどうか、このガラス細工の中でそれを変えるのは極めて難しいと発言していましたが、安倍総理は、TPPの再交渉はしないという姿勢を今も堅持しているのでしょうか。茂木大臣の答弁を求めます。

 また、こうしたトランプ大統領の発言を受けて、茂木大臣は、TPP11の、まずは早期発効を目指していきたいと答弁し、三月に本協定の署名式が行われて今日に至っていますが、なぜ政府は、アメリカのTPP復帰の実現を目指すよりも、本協定の早期発効を優先させているのでしょうか。茂木大臣の答弁を求めます。

 二年前のTPP協定の国会審議では、医療制度、保険制度、薬価制度、金融制度、さらには食品の安全といった、国民の命や健康、生活の根幹にかかわる部分について、TPP協定が影響を与えるのではないかとの懸念が示されました。

 これに対して政府は、TPP協定では、公的医療保険を含む社会保障制度について、将来の制度変更も妨げられるものでは決してない、国民皆保険制度を堅持して、安全、安心な医療が損なわれることのないように取り組んでまいりたいなどと答弁し、社会保障制度への影響を否定してきました。

 政府は、今後、仮に米国との間で何らかの交渉が行われるとしても、国民生活の根幹、国民の命や健康にかかわる、医療制度、保険制度、薬価制度、金融制度、さらには食品安全の基準について、再交渉の俎上にのせることは一切ない、米国の要求に応じることは一切ないと断言できますか。加藤厚生労働大臣の明確な答弁を求めます。

 以上述べたように、政府のたび重なる方針転換、情報不開示、国民へのアカウンタビリティーの欠如もあり、TPP協定やTPP11協定を進める国民的コンセンサスは得られていません。そして、TPP11が我が国の国益を最大化させるビジョンと戦略が見られません。政府はこうした声にどう応えるのでしょうか。

 以上、茂木経済再生担当大臣にお伺いをして、私の質問といたします。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 山川議員にお答えをいたします。

 最初に、TPP交渉経過の開示及び説明についての御質問がありました。

 TPP12の大筋合意後、合計百三十三時間に及ぶ国会審議や三百回以上実施してきた説明会等で、合意内容に関しては、情報を幅広く提供して、丁寧に説明をしてまいりました。この過程において、協定の内容等に関する各種資料、分野別や中小企業向けの資料など、計四千ページ以上に及ぶ資料を公表いたしております。

 TPP11協定についても、協定文やサイドレターを全て和訳つきで公表するとともに、交渉会合ごとに情報を公表しており、ベトナム・ダナンでの閣僚会合における大筋合意後やチリ・サンティアゴでの署名時にもその概要を公表するとともに、説明会等で合意内容について丁寧に説明してきております。

 今後とも、TPP協定の内容やその趣旨、解釈等について、引き続き丁寧に説明をしてまいります。

 次に、TPPによる日本の国益とビジョンについての御質問がありました。

 TPPは、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げ、人口五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであります。昨年末に公表した経済効果分析では、日本の実質GDPを七・八兆円押し上げ、四十六万人の雇用を生み出すと試算をされております。

 具体的な効果について申し上げれば、日本以外の参加国における工業製品の九九・九%の関税が撤廃されることになり、日本の中小企業等にとっても、輸出拡大が期待されます。また、農業者にとっても、品質が高く、海外で人気の高い日本の農産物の販路を拡大する新たなチャンスをもたらします。さらに、日本の消費者は、域内のさまざまな商品を安く手軽に入手することが可能になります。

 また、TPPには、進出先での技術移転要求の禁止といった投資ルールの強化、関税手続の迅速化、知的財産の一層の保護、コンビニなどサービス業の出店規制の緩和等が盛り込まれております。この結果、中小企業を含む日本企業の海外展開が後押しされるわけであります。

 TPP11の早期発効を実現するとともに、TPP等関連政策大綱で取りまとめた中小企業の海外展開支援、農林水産業の体質強化策など、着実に実施することで、これらの効果、最大限の実現を図ってまいりたいと考えております。

 次に、十一カ国でTPPを推進した理由について御質問がありました。

 TPP11は、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げ、人口五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり上げていくものであります。そこでは、関税削減だけではなく、投資先で技術移転などの不当な要求がなされない、知的財産が適正に保護されるなどのルールが共有されることから、我が国の中堅・中小企業にとっても多くのビジネスチャンスが広がるものと考えられます。

 米国がTPPからの離脱を宣言した後、十一カ国は、議論を重ね、米国抜きでもTPPを早期に署名、発効させることの重要性について一致、結束を維持し、この三月八日にはチリ・サンティアゴで署名式に至ったわけであります。

 自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制こそが世界経済発展の源泉であります。TPP11により、日本が二十一世紀型の新しいルールづくりをリードすることの意味合いは非常に大きいものがあります。これは、我が国にとっても、またアジア太平洋地域にとっても画期的な成果であると考えております。

 次に、TPP協定の再交渉について御質問がありました。

 政府としては、TPPは参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げられた、ハイスタンダードかつバランスのとれた、いわばガラス細工のような協定であり、一部のみを取り出して再交渉する、変えることは極めて困難であると認識をいたしております。

 チリでの署名式において発表された閣僚声明にあるとおり、十一カ国としては、TPP11の早期発効に全力を挙げる考えであります。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 次に、米国のTPP復帰よりもTPP11の早期発効を優先させるのかとの御質問がありました。

 昨年末に公表したTPP11の経済効果は、二〇一五年に公表したTPP12の経済効果の約六割となっております。これは、TPP参加国の中で米国が抜けると、貿易額の規模で見ると半減をいたしますが、他の参加国との間で関税手続の簡素化や透明化、物流改善による取引コストの低下などが進むことの効果が見込まれることから、効果は四割減という分析結果となっております。

 また、各国とも、TPPのバランスのとれた成果や戦略的、経済的意義を確認し、チリでの署名式では、全ての閣僚が、本協定の迅速な発効と円滑な実施に向けて最大限の努力をすることについて合意をしたところであります。

 我が国としては、まずはTPP11の早期発効を実現するとともに、米国に対しても、TPPの戦略的、経済的重要性を改めて説明し、復帰を促してまいりたいと考えております。

 最後に、これまでのTPPに対する御批判への対応についての御質問がありました。

 これまでお答えしてきたとおり、政府としては、TPPの内容等の丁寧な説明を行い、また、TPPが日本やアジア太平洋にもたらす利益についてもしっかりと説明していると考えております。

 実際、TPPの発効を見据えて既に動き出している地方の中小企業が多数あります。例えば、平成二十八年二月に設立をした新輸出大国コンソーシアムを通じて、これまで全国六千社を超える中堅・中小企業等に支援を行っているところであります。

 また、TPP11や日・EU・EPAの大筋合意を踏まえ、昨年十一月には、総合的なTPP等関連政策大綱を改定し、中小企業等の輸出促進の支援や農林水産業の体質強化対策等、万全の対策を講じているところであります。引き続き、中堅・中小企業及び農林水産業の海外展開を全力で支援をしてまいります。

 国民の皆様のさまざまな不安の声に対しては、こうした対策を万全に講じるとともに、引き続き国民の皆さんに丁寧な説明を心がけてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 日米経済対話で取り上げられている高い貿易・投資基準と日米FTAの関係についてお尋ねがありました。

 日米経済対話で取り上げられている高い基準の貿易・投資基準とは、アジア太平洋地域において、知的財産、国有企業、政府調達、電子商取引などの貿易・投資に関連する各種ルールやマーケットアクセスを高いレベルのものとしていくことを意味しております。

 今後、アジア太平洋地域における高い基準のルールづくりを日米が主導するために、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって最善であるかについて、TPPの持つ意義を含め、建設的に議論をしてまいります。

 日米FTAについてのお尋ねがありました。

 米国が二国間でのFTAを選好していることは承知していますが、アジア太平洋地域におけるハイスタンダードな貿易・投資の枠組みの重要性は、米国に繰り返し伝えてきています。政府としては、TPP11協定の早期発効に全力を挙げたいと考えます。

 米国に対しては、引き続き、TPPの持つ経済的、戦略的重要性、特に、最もグローバル化や技術革新が進んでいるのが米国であることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることを引き続き訴えていきたいと考えます。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはなく、米国の思惑や戦略に乗ってしまっているとの御指摘は当たりません。

 TPP再交渉や日米FTA交渉等についてのお尋ねがありました。

 経済と安全保障は当然分けて考えるべきであり、この考え方は米側にも共有されていると考えております。このような考えのもと、これまでも、トランプ政権とは緊密に意思疎通を図ってきました。

 仮定の御質問にお答えすることは差し控えますが、アジア太平洋地域の現状をよく踏まえた上で、地域のルールづくりを日米が主導していくことが重要であり、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって最善であるかについて、TPPの持つ意義を含め、引き続き建設的に議論を行っていきたいと考えます。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 山川議員の御質問にお答えいたします。

 TPP12協定の水準をそのまま容認して、米国が将来TPP参加を決めたとき、若しくは日米FTAで農林水産分野の交渉を求めてきたときのTPP枠の取扱いについてのお尋ねがありました。

 TPPの再交渉については、TPPは参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げたガラス細工のような協定でありまして、どの国にとっても、一部のみを切り出して修正することは極めて困難であります。

 また、日米FTAとなった場合という仮定の御質問に対しては、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、農林水産省としては、我が国の農林水産業の維持発展を旨として適切に対応してまいります。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 山川百合子議員より、米国との再交渉と、TPP協定の日本の社会保障分野等への影響などについてのお尋ねがございました。

 TPP11協定については、TPP12協定と同様に、公的医療保険制度や食の安全を脅かすようなルールは一切ありません。

 また、米国との再交渉及び日米FTAに係る政府全体の方針については、既に関係大臣から答弁申し上げたとおりであります。

 厚生労働省としては、引き続き、日本が誇る国民皆保険を始めとした社会保障制度を堅持するとともに、国民の命や生活の安全、安心が損なわれることのないよう、適切に対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 稲富修二君。

    〔稲富修二君登壇〕

稲富修二君 希望の党の稲富修二でございます。

 私は、希望の党・無所属クラブを代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件につきまして質問いたします。(拍手)

 安倍総理は、昨年二月、トランプ大統領就任後初めての日米首脳会談直後の本院予算委員会において、日米が主導し、アジア太平洋地域に自由で公正な経済圏をつくる必要性について一致することができたと思います、そして、日米主導で自由で公正な市場を世界に広げていくという日米共通の目標のもと、最善の方策を探求すると答弁されました。

 しかし、その米国は先月二十三日に、国内法に基づいて、鉄鋼、アルミニウム製品の輸入制限措置を一方的に発動しました。カナダ、メキシコ、オーストラリア、EU等は輸入制限措置の対象から除外されましたが、我が国は除外されておりません。そして、ライトハイザー通商代表は、我が国と二国間のFTAの締結に向けた協議を始めたいとの意向を示しております。

 そもそも、こうした一方的な措置がWTO協定に違反していると考えますが、いかがでしょうか。WTOへの提訴は考えないのか、政府の答弁を求めます。

 安倍総理とトランプ大統領が自由で公正な市場を世界に広げていくということで一致したとされておりますが、我が国にとって公正な市場とは一体どういうことを意味するのでしょうか。数値目標を設けることは公正な市場と言えるのか、政府の基本的見解を求めます。

 次に、米国への対応について伺います。

 トランプ大統領は、選挙でTPP撤退を主張し、大統領に就任し、大統領就任直後には、これからは二国間でディールを行うとし、TPPからの永久の離脱を表明しました。これ以降、米国は我が国に対し、二国間交渉、さらには二国間FTAを求め続けてきております。

 こうした状況の中で、安倍総理は、多国間の自由貿易圏の重要性を強調する一方で、我々も決して日米FTAを否定しているわけでは全くないとの答弁を行っております。

 そもそも、政府は、米国との間で、二国間、多国間を問わず、FTAやEPAを締結することを志向しているのでしょうか。基本的な認識について答弁を求めます。

 TPPからの永久離脱を表明したはずのトランプ大統領は、このTPP11の署名の時期が近づいてくると、本年一月に、以前に結んだ協定に比べ米国にとってとてもよい内容になるならばTPPをやるなどと述べ、合意内容の再交渉を前提としたTPP復帰を示唆する発言をしました。

 TPPの再交渉について、安倍総理は、TPP協定の国会審議中には、再交渉はしないと明言していらっしゃいます。こうしたトランプ大統領の態度の変化を受けて、安倍総理は、本年一月、本院予算委員会でこう答弁しています。TPP11はガラス細工のようなものでございますから、我々、それを変更するということは現在考えていない、TPP12のときの合意から変えるかどうか、このガラス細工の中でそれを変えるのは極めて難しい。

 そこで、質問いたします。

 将来におけるTPP協定の内容の変更を必ずしも否定しないのか、再交渉しないとする答弁を今後も維持するのか、明快な答弁を求めます。

 仮に、米国がTPP11への加入を希望した場合には、二十二の凍結項目をどうするかについては、当然協議されることになると思います。それ以外の規定については、米国と交渉しないと断言できるのでしょうか。これらについても、あわせて政府の明快な答弁を求めます。

 また、先週トランプ大統領は、ライトハイザー通商代表に対し、我々の条件でTPPに復帰することを検討せよと指示しました。この指示について、トランプ大統領が議員や州知事らと行った貿易をめぐる会合で突然決断を下したとも報道されております。

 これに対し、茂木大臣は、TPPの意義や効果について正しく評価するものであれば歓迎したいとコメントしています。政府は、こうした米国の動きをどこまで把握しているのか、答弁を求めます。

 次に、農林水産品について伺います。

 政府は、TPPにせよ、日米FTAにせよ、米、牛肉、豚肉等の農林水産品について、二〇一六年二月署名のTPP協定の内容を超える対米譲歩を行うことはしないということでよろしいでしょうか。こうした譲歩は、かつての安倍総理の再交渉しないという答弁に照らしても許されず、我が国の農林水産業を守るためにも、すべきではないと思います。

 また、数値目標は絶対に受け入れないという理解でよろしいでしょうか。米国との交渉において、自由貿易に完全に反する、輸入数量を約束するような取引はしないと確約していただきたいと思います。これらについても答弁を求めます。

 次に、TPPの拡大について伺います。

 本協定については、署名国十一カ国以外の国においても、韓国、タイ、インドネシア、さらには英国等が加入に関心を示していると報じられております。政府は、米国以外のこれらの国について、TPP11に加入できるよう積極的に働きかけていくのでしょうか。また、その加入交渉に当たってはどのような姿勢で臨むのでしょうか。答弁を求めます。

 次に、本協定の経済効果について伺います。

 政府は、昨年十二月に公表した日・EU・EPA等の経済効果分析において、本協定については、我が国の実質GDPを約一・五%押し上げるとしました。一方で、政府がTPP12について二〇一五年十二月に公表したTPP協定の経済効果分析では、米国を含むTPP協定が発効した場合、我が国の実質GDPを二・六%押し上げるとしていました。つまり、このTPP11のGDP押し上げ効果は、TPP12が発効した場合の想定の六割弱の水準に落ち込んでいることになります。

 米国は、TPP原署名国のGDP合計額の約六〇%を占めるとともに、同国には、高度な技術力を有する企業が多数立地しております。

 そこで、伺います。

 政府は、本協定に米国が不参加であることが、我が国企業の海外直接投資、国際的な事業展開等にどのような変化をもたらすと想定しているでしょうか。また、米国が不参加であることにより、貿易開放度の上昇、域内投資の環境整備による国際分業体制の構築を始めとするグローバルバリューチェーンの形成、深化がもたらす経済効果は大きく損なわれたのではないでしょうか。茂木大臣の答弁を求めます。

 次に、凍結項目について伺います。

 本協定では、TPP協定のうち二十二項目を凍結することとしております。凍結項目は、米国の意向を強く反映した知財保護関連の規定が半分を占め、まさに米国の要求を反映して盛り込まれたため、その実施が棚上げされたと言われております。

 政府は、本協定の交渉に当たり、特定の凍結項目を設けることを主張したのでしょうか。しなかったとすれば、その理由は何でしょうか。また、他の十カ国の凍結の主張を認めるかを検討するに当たって、政府が考慮した要素はどのようなものだったのでしょうか。答弁を求めます。

 この凍結項目について、茂木大臣は、米国のTPP復帰を促すインストルメントとなっていると発言したと報じられていますが、政府は、凍結項目の存在が、いかなる理由で米国のTPP復帰を促す手段となっていると認識しているでしょうか。答弁を求めます。

 次に、著作権保護の期間について伺います。

 本協定では、TPP協定における著作権の保護期間に関する規定を凍結することとしております。それにもかかわらず、政府は、著作権の保護期間を、現行の原則著作者の死後五十年から七十年へと延長することとしております。したがって、既に成立した、いわゆる整備法による著作権法の関連改正部分は維持されたままであります。

 そこで、伺います。

 政府は、この五十年と七十年という期間について、なぜこのような期間になっているのか、期間の延長の意味も含めて、明快に御答弁ください。

 また、保護期間の延長は利用者側に不利益をもたらしかねないものであり、著作権者等と利用者側との利益の調和という観点からは慎重な検討が求められますが、政府は、利用者側などに、もはや延長に対する懸念は存在しないとお考えなのでしょうか。そうでなければ、我が国における保護期間の延長も一旦凍結するのが筋だと思いますが、政府の答弁を求めます。

 最後に一言申し上げます。

 安倍総理は、日米は一〇〇%ともにあるという発言を何度かされております。友人関係でも、夫婦関係ですら一〇〇%ともにあることが難しいのに、国同士で一〇〇%ともにあるなどというのは絵そらごとでしかありません。あるのは国益の追求であります。米国の一方的な関税引上げなどを見ても、日米は一〇〇%ともにあるという基本認識がいかに空虚で、軽薄で、内実を伴っていないか明らかであります。この基本認識をまず変えていただきたい。変えないのであれば、政権がかわるしか方法はございません。

 財務省の文書改ざん、事務次官のセクハラ疑惑、厚生労働省のデータ改ざん、防衛省の日報隠蔽、日がわりメニューで、改ざん、隠蔽のオンパレードであります。政権に対する国民の信頼は、回復するどころか底なし沼の状況であります。霞が関をリードすることもできず、国民をリードできない政権が、難しい外交交渉をリードすることなどできるはずがございません。当然ながら、外交交渉において、そんたくを期待することなどはできないものであります。

 国益を背負う難しい交渉だからこそ、国民の信頼を背景にした強い布陣で臨まなければ、力強い交渉を望むことはできません。国民の信頼を回復するよう、徹底的な原因究明と、政治的、道義的責任をとることを政府に求め、私の質問といたします。

 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 米国の一方的な措置についてのお尋ねがありました。

 米国の鉄鋼、アルミニウムの関税措置に関し、今般の安全保障を理由とした広範な貿易制限措置は、単に米国のみならず、アジア地域を含む世界の鉄鋼、アルミ市場を混乱させる懸念があるほか、同盟関係にある日米両国の経済協力関係、ひいては多角的貿易体制全体や世界経済に大きな影響を及ぼしかねません。

 このような措置に関し、これまでさまざまなレベルで日本の懸念を米国にしっかりと説明してきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始されたことは、極めて遺憾に思います。

 我が国としては、措置の内容及び日本企業への影響を十分に精査した上で、まずは米国への働きかけを継続することが重要だと考えます。

 その上で、WTOの枠組みのもとで必要な対応を検討していく所存でございますが、現時点で具体的に決まっていることはありません。

 公正な市場と数値目標についてのお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、日米両首脳は、自由で公正な市場をつくる必要性で一致しております。我が国としては、WTOに基づく共通ルールのもとで、各国が比較優位を生かす形で経済活動を営める経済圏こそが、自由で公正な市場であると考えます。

 なお、政府による輸出入の数量枠設定については、原則として、関税及び貿易に関する一般協定第十一条の数量制限の一般的廃止に該当し、自由で公正な市場を損なうものと考えます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 稲富議員にお答えをいたします。

 まず、TPP協定の再交渉について御質問がありました。

 TPP12協定の合意後から、政府としては、TPPは参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げられた、ハイスタンダードかつバランスのとれた、いわばガラス細工のような協定であり、一部のみを取り出して再交渉する、変えることは極めて困難であると説明してきております。

 TPP11の十一カ国としては、チリでの署名式において発表された閣僚声明にあるとおり、今回、合意、署名に至ったTPP11の早期発効に全力を挙げる考えであります。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 次に、米国がTPP11協定への加入を希望した場合の凍結項目以外に関する交渉についての御質問がありました。

 TPP11の各国は、現在、TPP11協定について国内手続を進めようとしているところであり、既に署名したTPP11協定について、見直しや修正を行うことなく、早期発効を目指しております。

 次に、米国のTPPへの復帰に関する報道について御質問がありました。

 トランプ大統領は、米国時間の四月十二日、中西部の議員や知事との会合の場で、ライトハイザー通商代表、クドロー国家経済会議委員長に対して、TPPについて、テーク・アナザー・ルック、再考するようにとの指示を出したと承知をいたしております。こうした発言が、米国としてTPPの意義や効果について正しく評価するものであれば、歓迎したいと考えております。

 米国に対しては、TPPの経済的、戦略的重要性、特に、最もグローバル化や技術革新が進んでいるのがアメリカであることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることを訴えてきております。このことについては今までも申し上げてきたとおりでありますが、今週予定されている日米首脳会談においても、米国の通商政策に対する考え方を確認するとともに、建設的な議論がなされることを期待したいと考えております。

 次に、米国との関係で、農林水産品についての御質問がありました。

 TPPの発効による国内の農業への影響については、生産者等関係者の間に不安の声があることは十分に認識しているところであります。

 そのため、昨年十一月には、総合的なTPP等関連政策大綱を改定し、農林水産業の体質強化対策等、引き続き万全の対策を講じているところであります。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。

 次に、輸出入の数値目標、数量枠についての御質問がありました。

 政府による輸出入の数量枠設定については、原則として、関税及び貿易に関する一般協定、ガットの第十一条の数量制限の一般的廃止に該当し、WTOに非整合であると考えております。

 次に、TPP拡大についての御質問がありました。

 TPPは生きている協定、リビングアグリーメントで、新たな国、地域の加入を通じて、TPPのハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくことが参加国共通の思いであります。

 この意味で、コロンビア、タイ、英国、台湾など、さまざまな国、地域がTPPへの参加に関心を示していることを歓迎したいと思います。我が国としては、そうした関心国、地域に対して必要な情報提供を行っていきたいと考えております。

 なお、新たな参加国については、一般的には、正式協議が開始される前に予備的な協議が行われることになりますが、その際の対応方針について、十一カ国の間でも事前に共有しておく必要があります。この作業についても、我が国が主導して、必要な調整を行ってまいりたいと考えております。

 次に、日系企業への影響と経済効果についての御質問がありました。

 日系企業への影響につきましては、既に日米経済関係は貿易・投資面で深化が進んでおり、本協定に米国が不参加であることが直ちに日系企業の活動に影響を与えるものではないと考えております。

 経済効果については、昨年末に公表したTPP11の経済効果は、二〇一五年に公表したTPP12の経済効果の約六割となっています。TPP参加国の中で米国が抜けると、貿易額の規模で見ると半減をいたしますが、他の参加国との間で関税手続の簡素化や透明化、物流改善による取引コストの低下などが進むとの効果が見込まれることから、効果は四割減という分析結果になっております。

 まずは、TPP11の早期発効に取り組むとともに、この効果の実現を図るため、TPP等関連政策大綱で取りまとめた中小企業の海外展開支援、農林水産業の体質強化策などを着実に実施をしてまいります。

 次に、交渉に当たっての凍結項目の議論について御質問がございました。

 米国がTPPから離脱を表明した後、TPPのハイスタンダードを維持しつつ、早期にTPPを発効させるため、各国が考慮したのは、一つは物品市場アクセスの内容を含めた協定の修正は行わない、もう一つは一部のルールのみを凍結することで、早期合意を目指すということでありました。

 TPPのハイスタンダードを維持しつつ、早期に十一カ国での合意を実現するとの二つの目標の両立は大変難しい課題でありましたが、日本が主導して粘り強く交渉を行った結果、七月に箱根で開催された首席交渉官会合からわずか半年で実質的に合意し、三月八日に署名することができたわけであります。

 なお、我が国としてはTPPのハイスタンダードを維持する必要があると考えたこと、また、日本の主張に沿って、発効後必要となった場合の見直し規定、協定の第六条になるわけでありますが、これが設けられたことなどから、凍結の主張は行わなかったところであります。

 次に、凍結項目と米国復帰の関係性について御質問がありました。

 凍結項目の多くは、米国が強い関心を有する項目、その意味では復帰を促すインストルメントと考えますが、TPP協定の交渉においては、十一カ国は、米国が離脱したことに伴う一部のルールを凍結することで早期合意を目指したものでございます。

 いずれにしても、十一カ国としては、TPP11を早期に発効させ、引き続き米国への復帰を働きかけていくという考え方であります。

 最後に、著作権等の保護期間の延長についての御質問がありました。

 著作権等の保護期間の延長については、TPP11協定の凍結項目に含まれているものでありますが、凍結事項は各国がそれぞれの判断でそれを上回るレベルの内容を実施することを妨げるものではないこと、そして、一昨年のTPP12締結に伴う国内法整備では、我が国として七十年にすることが国際基準の観点から重要であるとの判断をしたこと、さらに、日・EU・EPAにおいても、著作権等の保護期間を著作者の死後七十年とすることでEU側と合意しており、著作権等の七十年の保護は、このように国際基準となっているものと認識をいたしております。

 内外における著作権等の保護期間の延長によって長期にわたり得られる収益によって、新たな創作活動や新たなアーティストの発掘、育成が可能となり、文化の発展にも寄与することが期待されることから、TPP12協定どおりに実施すべきものと考えております。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 稲富議員から、米国との間の自由貿易協定について、一問お尋ねがあっております。

 日本は、自由貿易の旗手として、現在、世界で最もダイナミックに成長いたしておりますアジア太平洋地域において、あらゆる手段を通じて、自由で公正な貿易ルールを構築していく考えであります。

 米国との関係では、アジア太平洋地域の現状をよく踏まえた上で、地域のルールづくりを日米が主導していくことが重要であり、どのような枠組みが日米経済関係及びアジア太平洋地域にとって重要であるかについて、引き続き建設的に議論をしてまいりたいと考えております。

 その上で、TPPは、米国とともに、日米がリードして、世界に二十一世紀型の世界秩序をつくり上げるという観点からやってきたものであります。日本としては、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるということを引き続き説明してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 稲富議員から、著作物の保護期間についてのお尋ねがございました。

 著作物等の保護期間につきましては、ベルヌ条約など著作物等に関する国際条約上、原則として、著作権者の死後五十年とすることとされておりますが、OECD加盟国では、三十五カ国中三十二カ国では、保護期間を原則として七十年以上としております。

 保護期間を延長することは、長期間にわたり得られる収益によって、新たな創作活動や新たなアーティストの発掘、育成が可能となるなど、文化の発展に寄与するという意義があるものと考えております。

 さらに、我が国の著作物が海外においてより長期間にわたり保護されることとなるため、特に、我が国のコンテンツの国際的な競争力が高い漫画やアニメといった分野を中心に、長期にわたり人気コンテンツが利用されることで、中長期的な著作権料収入の増加が期待されるところでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 福田昭夫君。

    〔福田昭夫君登壇〕

福田昭夫君 民進党の福田昭夫です。

 私は、無所属の会を代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定について質問いたします。(拍手)

 安倍総理はかねてより、TPPは成長戦略のかなめであり、切り札であると訴え続けておりました。しかし、TPPは、トランプ大統領が安倍総理の説得の努力もむなしく脱退を表明し、十二カ国でのTPPが絶望的になりましたが、十一カ国での締結を急ぎ、その結果、二十二項目が凍結され、その締約国全体の経済規模も経済連携のレベルも当初と随分変容し、とるものがますますとられておらず、守るべきものがますます守れなくなっている、問題の多い内容となっています。

 TPPについては、そもそも先進国にとっては益のない協定だと言われております。

 米国のタフツ大学が二〇一六年二月に出した、TPPの現実コスト、雇用喪失、収入低下、格差拡大によると、全体では七十七万一千人の雇用喪失、そのうち米国だけで四十四万八千人、日本が七万四千人の雇用喪失となる、また、全ての国において格差が拡大する、労働者の購買力の低下は総需要を低下させ、経済成長を減速させると指摘されています。

 トランプ大統領はこれを知っていてTPPから離脱したのではないでしょうか。もし再交渉を求められたら大変になることは明らかであります。

 さて、安倍総理は訪米中であり、あすにでもトランプ大統領との首脳会談を行い、三回目のゴルフを予定されていると仄聞しています。表面上はお二人の関係は深まっているように見えるかもしれませんが、しかし、実際には、日米首脳間、政府間の信頼は深まるどころか、会談を重ねるごとに溝が広がっているようにしか思えません。

 TPP脱退は公約だったので仕方ないとしても、先月には、トランプ大統領みずからが同盟国には制裁を科さないとツイートしていた鉄、アルミに対する輸入制限措置が、主要同盟国の中で唯一、日本が制裁対象となったまま発動されました。米国の鉄の輸入の五%しか占めない、しかもアジア最大の同盟国である日本が除外されていなかったことは明らかに不自然であり、日米関係を考える上で深刻に受けとめるべきではないですか。外務大臣の所見を求めます。

 安倍総理は、日米同盟はこれまでになく強固だと何度も答弁されてきましたが、本当にそうでしょうか。

 今回、トランプ大統領は、制裁発動の記者会見で、明らかに総理の名前を引いて、こんなに長くだませたなんて信じられないと彼らは笑みを浮かべている、そういう日々は終わると発言しました。国内向けのアピールという見方もありますが、いずれにせよ、まるでおどしであり、同盟国である我が国に対する言いぶりとしては、失礼きわまりありません。

 安倍総理はトランプ大統領との間に本当に確たる信頼関係があるのでしょうか。また、今回日本を制裁対象としたことに対して、大統領に総理みずから、面と向かってきちっと抗議すべきだと思いますが、外務大臣はどうお考えですか。外交ルートを通して、今回の制裁措置に関して正式に抗議をされたのか、お伺いをします。

 ことし三月十六日に、河野外務大臣は、カウンターパートナーであるティラーソン国務長官が解任された直後ではありましたが、予定を変更することなく訪米、マクマスター安全保障担当大統領補佐官やライトハイザー通商代表と会談し、鉄、アルミを輸入制限措置の除外対象にすることについて働きかけてこられました。世耕大臣もまた働きかけを続けてこられました。

 にもかかわらず、なぜこのような結果になったのか。ひたすら例外扱いを求めるのではなく、EUのように、保護主義は認められないと毅然とした態度をとった方がよかったのではないでしょうか。外務大臣、経産大臣にお伺いします。

 総理のリーダーシップに振り回されていることもあるでしょうが、安倍政権では、拉致問題ではストックホルム合意で北朝鮮にだまされ、パリ協定は出おくれ、トランプ大統領誕生に面食らい、TPPではしごを外され、ロシアには、北方領土での進展を見るどころか、北方領土の軍事拠点化を強化され、北朝鮮非核化、ミサイル開発問題では、日本は蚊帳の外で、米中韓が対話にハンドルを切るなど、安倍総理なのか、外務省なのか、どちらが原因かわかりませんが、ことごとく読みが甘く、日本政府の外交力が落ちてきているのではないかと危機感を感じざるを得ません。

 外務省の情報収集能力、交渉能力の相対的な低下を感じますが、河野外相は問題を感じていられるのか、お伺いをします。

 さて、終わりに一言申し上げます。

 英国の政治家が、絶対的な権力は絶対腐敗すると名言を残しました。国民の貴重な財産である公文書の捏造、改ざん、隠蔽等が次々と明らかになっています。天知る、地知る、我知るとの名言もあります。どんなに繕ってみても、森友、加計学園問題の真実を知っているのは安倍総理と昭恵夫人でしょう。安倍独裁政権の腐敗きわまれりです。米国やロシアとの首脳会談を花道に総辞職することが本人のためでもあり、国民と日本のためだ、それが日本の国益だということを申し上げて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 鉄、アルミに対する輸入制限措置から我が国が除外されていないことについてのお尋ねがありました。

 今般の安全保障を理由とした広範な貿易制限措置は、単に米国のみならず、アジア地域を含む世界の鉄鋼、アルミ市場を混乱させる懸念があるほか、同盟関係にある日米両国の経済協力関係、ひいては多角的貿易体制全体や世界経済に大きな影響を及ぼしかねないと考えます。

 このような措置に関し、これまでさまざまなレベルで日本の懸念を米国にしっかりと説明してきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始されたことは、極めて遺憾であります。

 いずれにせよ、政府といたしましては、引き続き、輸入制限措置の内容や日本企業への影響を十分に精査した上で、WTOの枠組みのもとで必要な対応を検討していくとともに、対象からの除外を米国に働きかけを行ってまいります。

 安倍総理とトランプ大統領の信頼関係、また、米国の鉄鋼及びアルミニウムに関する貿易制限措置について抗議すべきではないかとのお尋ねがありました。

 トランプ大統領就任以降、二十五回に及ぶ日米首脳会談を通じて構築された安倍総理とトランプ大統領の強固な信頼関係のもと、日米同盟はかつてないほどに盤石です。

 来る日米首脳会談の個別具体的な方針を予断することは差し控えますが、日米双方の関心事項について率直な意見交換が行われるものと考えます。

 米国による鉄鋼及びアルミニウムに関する今般の広範な貿易制限措置は、世界市場を混乱させ、WTOルールに基づく多角的貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾です。こうした日本の立場については、私や世耕経産大臣から、米国に対して繰り返し表明してきました。

 日本の鉄鋼、アルミ製品は、高品質で代替できないものが多く、米国の産業や雇用にも多大な貢献をしています。こうした点をしっかりと踏まえながら、今後ともしっかり対応していきます。

 鉄、アルミについて、働きかけを行ったにもかかわらず、輸入制限措置の対象から除外されないのはなぜか、毅然とした対応をとった方がよかったのではないかとのお尋ねがありました。

 既に述べましたように、日本の立場については、私から米国に対して繰り返し表明してきました。そうしたやりとりの詳細についてこの場で申し上げることはできませんが、米国が国別除外を各国との通商交渉のてこに使っているとの側面も慎重に見ておく必要があります。トランプ大統領が、鉄鋼とアルミへの関税について、新しくかつ公平なNAFTA協定が署名されない限り、カナダとメキシコを除外しないとツイートしているのもそのあらわれです。

 その上で申し上げれば、WTOルールにのっとらない対抗措置の応酬は、どの国の利益にもなりません。問題の本質はあくまで鉄鋼やアルミニウムの世界的な過剰生産に対処することです。我が国としては、自由貿易を堅持する立場から、WTOルールにのっとった解決を図ることが適切であると関係国に訴えてまいります。

 外務省としては、我が国及び国民の安全を守り、また、国際社会におけるその利益を増進するため、在外公館等を通じて、日々、関連情報の収集、分析に努め、外交交渉を行っております。

 今後とも、適時適切な外交政策を策定し実施していくためには、正確かつ時宜を得た情報を広範に収集、分析し、不断に外交交渉を行うことが不可欠であります。情報機能、交渉機能の強化に更に力を入れてまいりたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣世耕弘成君登壇〕

国務大臣(世耕弘成君) 福田議員にお答えいたします。

 米国による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限措置についてお尋ねがありました。

 今回のような広範な貿易制限措置は、世界市場を混乱させ、多角的貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾です。こうした日本の立場については、私や河野外務大臣からも、米国に対して繰り返し表明してまいりました。

 やりとりの詳細をここで申し上げることはできませんが、米国が国別除外を各国との通商交渉のてこに使っているという側面も慎重に見ておく必要があると考えます。

 日本の鉄鋼、アルミ製品は、高品質で代替できないものが多く、米国の輸出や雇用にも多大な貢献をしています。こうした点も踏まえ、今後ともしっかり対応してまいります。

 また、WTOルールにのっとらない対抗措置の応酬は、どの国の利益にもならず、問題の本質はあくまで鉄鋼やアルミニウムの世界的な過剰生産に対処することであり、日本としては、自由貿易堅持の立場から、WTOルールにのっとった解決こそが重要であると関係国に訴えてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 日本共産党の田村貴昭です。

 私は、日本共産党を代表して、TPPに関する包括的協定について質問します。(拍手)

 まず、日米首脳会談について聞きます。

 トランプ大統領が米通商拡大法二百三十二条を発動し、鉄鋼に二五%、アルミニウムに一〇%の関税を課す輸入制限を行ったことをめぐり、安倍総理は日本の除外を求めるとのことです。

 そもそも安倍政権は、一〇〇%アメリカとともにあるとして、貿易自由化の道を突き進んできました。しかし、今、貿易制裁に直面しています。安倍政権の米国言いなりの路線の破綻は明白ではありませんか。

 今回の会談は、日米双方の関心事項について突っ込んだやりとりが行われると菅官房長官が述べました。一体、トランプ大統領から新たにどういう関心事項が持ち出され、安倍総理が譲歩し、約束させられようとしているのですか。

 米国がアメリカ・ファーストを掲げ、日本に対して、TPP復帰に向けた再交渉の可能性をちらつかせながら、バイ・アメリカン、米国製を買えと全分野にわたる要求をぶつけてきていることは極めて重大です。政府の見解を伺います。

 安倍総理は、昨年二月の訪米で、日米経済対話をみずから進んで提案しました。総理の提案は、結局、TPPの離脱宣言をしたトランプ大統領の二国間交渉重視の姿勢に迎合したものだったのではありませんか。日米経済対話は、今や、米国からのさまざまな分野にわたるとめどもない対日要求の実現の場になっているではありませんか。

 次に、TPP11についてです。

 米国を除く十一カ国が署名した本協定では、日本語訳でわずか六ページですが、二〇一六年の国会で強行採決したTPPの五千ページの条文と附属書のほとんどが組み込まれており、いわばTPPの化身ではありませんか。事実、関税の撤廃と削減、輸入特別枠の設定など、市場開放の取決めは、TPPと比べて何ら変化がありません。

 TPP11は、多国籍企業や国際競争力の強い国の利益を優先し、投資を自由化し、加盟国が関税を原則撤廃するものです。

 とりわけ日本の農産物輸入では、加盟国全体に対するバターと脱脂粉乳の低関税輸入枠の七万トンがそのまま残ります。仮に米国が三万トンの枠を新たに要求するならば、十万トンという大型の輸入枠となるではありませんか。

 ニュージーランド、オーストラリア、カナダなどの農産物輸出大国は対日輸出の増加を狙っています。これらが仮に実行された場合、日本の農林畜産と漁業、国民の食料に大打撃を与えるのは明らかです。

 加えて、協定は、非関税障壁撤廃の名のもと、食の安全、医療、雇用労働、金融、保険、官公需など、国民生活のあらゆる分野で規制を取り払います。

 本協定の交渉過程で加盟国は、知的財産、政府調達、ISDSなど、米国から押しつけられ譲歩した八十項目の削除や凍結、再交渉を求めました。この交渉で安倍政権は、被害を受ける農林畜産分野を含め、どういう分野の削除や凍結を要求したのですか。あるいは、しなかったのですか。

 凍結した二十二項目は有害条項リストであり、復活は許されないと考えますが、見解を求めます。

 TPP11は、日本がTPPで国際的に約束した関税自由化や非関税措置の到達点であり、米国が日本に対して大幅な譲歩を求めていく出発点になることは明白です。にもかかわらず、安倍政権が、関税自由化と非関税措置の撤廃による国民へのリアルな悪影響を一切明らかにせず、批准にひた走っています。断じて許されません。

 最後に、各国の食料主権と経済主権を守り、平等互恵の経済関係と投資のルールこそ必要であることを強調し、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 鉄鋼、アルミニウムの関税引上げについてのお尋ねがありました。

 今般の安全保障を理由とした広範な貿易制限措置については、これまでさまざまなレベルで日本の懸念を米国にしっかりと説明してきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始され、極めて遺憾に思います。

 引き続き、輸入制限措置の内容や日本企業への影響を十分に精査した上で、WTOの枠組みのもとで、必要な対応を検討していくとともに、対象からの除外を米国に働きかけを行ってまいります。

 このように、我が国としては、これまで同様、主張すべきは主張してきており、米国の言いなり路線との御指摘は当たりません。

 日米首脳会談におけるトランプ大統領の関心事項についてのお尋ねがありました。

 米側の関心事項を含め、今後行われる日米首脳会談の議題について、現時点で予断することは差し控えます。

 その上で申し上げれば、まず、北朝鮮に関し、両首脳の間で、北朝鮮による完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での核、ミサイルの廃棄の実現に向け、最大限の圧力を維持していくことを確認したいと考えています。

 経済については、自由で公正な貿易・投資を通じ、インド太平洋地域の経済成長を日米で力強くリードしていくとの観点から、両首脳間でじっくりと意見交換を行う予定です。

 米国によるTPPに関する検討と経済分野における日本への要求についてお尋ねがありました。

 我が国は、これまでもさまざまな機会に米国に対し、TPPについての我が国の取組を説明するなどしてきています。先般のTPPに関する大統領の指示がTPPの意義や重要性への認識を示すものであれば、外務省としても歓迎したいと思います。

 さらに、既に二回の会合が開催された日米経済対話では、農業分野や自動車分野を含む日米双方が関心を有する分野について、相互的な成果を得るべく対話を行ってきています。

 引き続き、米側の一方的な主張にはしかるべく反論し、我が国の国益を確保してまいります。

 日米経済対話の立ち上げの提案についてお尋ねがありました。

 日米が、互いに利益をもたらすウイン・ウインの経済関係を一層深めるため、総理から、麻生副総理とペンス副大統領のもとで新たな経済対話の枠組みを立ち上げることを提案し、トランプ大統領の賛同を得ました。その中で、貿易・投資に関するルールについても議論することとなったものであります。

 日米経済対話のもとでの貿易及び投資のルールや課題に関する共通戦略は、単に二国間の課題を議論するのではなく、アジア太平洋地域における高い基準のルールづくりを日米が主導するために、どのような枠組みが最善であるかについて建設的な議論を行うことを企図したものであり、米国の二国間交渉重視の姿勢に迎合したものとの御指摘は当たりません。

 日米経済対話は、米国からのとめどもない対日要求の実現の場になっているのではないかとのお尋ねがありました。

 日米経済対話では、既に二回の会合が開催され、農業分野や自動車分野を含む日米双方が関心を有する分野について、相互的な成果を得るべく対話を行ってきています。

 例えば、自動車市場について、外国からの自動車輸入に関税を課しておらず、非関税障壁を設けるような差別的な取扱いも行っていないことを説明するなど、米側の一方的な主張にはしかるべく反論してきました。

 したがって、同対話がとめどもない対日要求の実現の場になっているとの御指摘は当たりません。

 TPP11協定とTPP12協定の関係についてお尋ねがありました。

 TPP11協定は、離脱を表明した米国以外の十一カ国の間でTPP12協定の内容を実現するための法的枠組みです。我が国は、アジア太平洋におけるハイスタンダードな貿易・投資の枠組みの早期確立を図る観点から、米国の離脱宣言後も十一カ国でTPPを早期に実現させるべく議論を主導してきました。

 TPP12協定が有しているハイスタンダードな水準を維持しつつ、十一カ国全てが合意に参加できるバランスのとれた協定を実現した結果、現在の内容となったものです。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 田村議員にお答えいたします。

 最初に、TPP11交渉に当たり、我が国が削除や凍結を主張したのか、こういう御質問でありましたが、十一カ国は、米国がTPPから離脱を表明した後、TPPのハイスタンダードを維持しつつ、早期にTPPを発効させるため、物品市場アクセスの内容を含めた協定の修正は行わず、一部のルールのみを凍結することで早期合意を目指すこととしました。

 TPPのハイスタンダードを維持しつつ、早期に十一カ国で合意を実現するとの二つの目標の両立は大変難しい課題でありましたが、日本が主導して粘り強く交渉を行った結果、昨年七月に箱根で開催された首席交渉官会合からわずか半年で実質的に合意し、三月八日に署名することができました。

 なお、我が国としてはTPPのハイスタンダードを維持する必要があると考えたこと、また、日本の主張に沿って、発効後必要となった場合の見直し規定、協定の第六条でありますが、これが設けられたことなどから、凍結の主張は行わなかったところであります。

 次に、凍結項目の復活について御質問がありました。

 TPP11協定の交渉では、十一カ国は、米国が離脱したことに伴う一部のルールを凍結することで早期合意を目指したものでございます。

 十一カ国としては、TPP11を早期に発効させ、引き続き米国へ復帰を働きかけていくという考え方でありまして、凍結項目の扱いについても、この考えに従って対応していくものであります。

 なお、凍結を終了させるには締約国全体の合意が必要である規定、協定の第二条、そのようにされているところであります。

 最後に、TPPに関する国民への説明についての御質問がございました。

 TPPに関する国民のさまざまな不安の声に対しては、国会審議や説明会等を通じて、これまで丁寧に説明を行ってまいりました。さらに、昨年十一月に改定した総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、中小企業及び農林水産業に対する万全の対策を講じてきているところであります。

 今後も、TPP協定の内容や趣旨、解釈等について、国民や関係事業者等に引き続き丁寧に説明をしてまいります。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 田村議員の御質問にお答えをいたします。

 将来、仮に米国がバターと脱脂粉乳の低関税輸入枠を新たに要求してきた場合の影響についてのお尋ねがありました。

 仮定の御質問に対して、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきます。

 なお、TPPの再交渉については、TPPは参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げたガラス細工のような協定でありまして、どの国にとっても、一部のみを切り出して修正することは極めて困難であります。

 いずれにいたしましても、農林水産省としては、我が国の農林水産業の維持発展を旨として適切に対応してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 杉本和巳君。

    〔杉本和巳君登壇〕

杉本和巳君 日本維新の会の杉本和巳です。

 本日の議案について質問いたします。(拍手)

 日本維新の会は、環太平洋パートナーシップ協定については、早期に批准し、それをてこに、RCEPやEUとのEPAなどの経済連携協定を日本主導で進めていくべきものと考えています。

 アメリカがTPP12から離脱を表明してから一年余りがたちましたが、先月、TPP11協定の署名に至ったことは、交渉を主導してきた日本政府の御尽力のたまものであり、敬意を表します。

 直近、TPPの再検討を意図するトランプ大統領の発言も表出していますが、この多国間協定は、経済成長が著しいアジア諸国が含まれる上、自由で公正な二十一世紀ルールであることなど、本条約の早期発効は日本経済の活性化につながるものと考えています。

 昨年十一月に行われたAPEC首脳会議において、経済統合や貿易ルールの議論に関し、アジア太平洋自由貿易圏の最終的な実現に向けたプロセスを包括的かつ系統的な形で進展させることへのコミットを再確認されました。RCEPやFTAAPはTPP11の更に先の位置づけであり、TPP11で形成された国際ルールを発展させることがアジア太平洋地域の発展をもたらすものと考えます。

 今後、アジア太平洋地域において、中国、ロシアによる主導権争いが激しさを増す中、FTAAPの実現に向けて、日本としてどのような戦略を立て、どのような役割を果たしていくことが必要とお考えでしょうか。河野外務大臣にお伺いいたします。

 トランプ政権は、対中貿易赤字の縮小を目的に強硬な通商政策を打ち出しており、中国政府も報復関税を発動するなど、貿易摩擦をめぐる対立から、両国における保護主義的傾向が拡大しています。両国の対抗措置が、日本国の立脚点、そして世界情勢に与える影響についてどのようにお考えでしょうか。これも河野外務大臣にお伺いいたします。

 また、保護主義色を強めつつある米中両国に対して、TPP11はどのような影響を与えると見込んでいますか。茂木大臣にお伺いいたします。

 TPP11においては、著作権等の保護期間や医療品承認審査に基づく特許期間延長など、主にアメリカ側が要求していた二十二項目を凍結事項としました。アメリカを再度交渉の場に戻すための材料として凍結が行われていますが、日本にはどのような影響が見込まれるのでしょうか。茂木大臣のお答えを求めます。

 政府は、昨年十一月二十四日に決定した総合的なTPP等関連政策大綱において、TPP11と日・EU・EPAを合わせて、二〇二〇年までに中堅・中小企業等の輸出額を二〇一〇年度比で二倍、二〇一九年の農林水産物・食品の輸出額一兆円、二〇二〇年に約三十兆円のインフラシステムの受注、二〇一八年度までに、少なくとも計四百七十件、大型投資案件の六十件を含む、のジェトロによる外国企業誘致を目指すといった、幾つもの目標を掲げましたが、これらの目標は、どのような品目をどのような国々に輸出することを想定し、どのような分野の企業誘致を想定しているのでしょうか。茂木大臣の答弁を求めます。

 交渉中のFTA、EPAがいずれも成立すると、日本のFTAカバー率は、現在の二二・三%から、二〇一八年までにFTA比率七〇%を目指すとされています。今後も更にその比率は高まるとの試算があり、将来的に国内企業は、海外取引を軸にせざるを得ない状況となります。

 TPPの特恵関税を活用する場合、原産地規則等の条件を満たすなどが必要となりますが、政府においては、国内企業におけるTPPルールのコンプライアンス整備に対して、今後どのような取組が必要と考えますか。茂木大臣の答弁を求めます。

 我が党、日本維新の会は、自由で公正な貿易ルールの構築について、日本が積極的に関与することで国際的地位を向上させていくべきであると考えています。貿易は、自由かつウイン・ウインであり、また、比較優位が生かされるべきであります。そして、双方の利点があるからこそ、自由貿易によって国際的な友好関係が深まっていくものと考えています。

 我が日本維新の会もそのために努力を続けてまいりますことをお約束して、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) FTAAP実現に向けた政府の考えについてのお尋ねがありました。

 我が国は、自由貿易の旗手として、アジア太平洋地域においても自由貿易推進の流れを確固たるものにしていく考えです。自分も、昨年十一月のAPEC閣僚会議でそのような発言をいたしました。

 我が国の主導でTPP11が合意に至ったことは、FTAAP実現に向けた大きな一歩です。同様に、FTAAP実現への道筋でもあるRCEPも、質の高い協定を早期に妥結できるよう精力的に交渉を進めています。また、APECにおいて、我が国は、FTAAPのための能力構築の取組も実施しています。

 我が国としては、質の高いFTAAP実現のため、中国やロシアを含むAPECのメンバーと引き続き議論を深めていく考えです。

 貿易をめぐる米中両国の対立についてのお尋ねがありました。

 戦後、日本は、自由貿易体制の最大の受益国として現在の繁栄を実現してきました。自由で開かれた国際経済体制こそ、日本を始めとする国際社会の繁栄を約束するものであると確信しています。

 対抗措置の応酬はどの国の利益にもなりません。GDP世界第一位、第二位の経済大国である米中両国が世界経済の安定的な成長と発展につながる関係を構築することは、我が国を含むアジアのみならず、世界全体にとっても重要です。引き続き米中間での事態の推移を注視していきたいと思います。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 杉本議員にお答えをいたします。

 米中両国に対してTPP11はどのような影響を与えるかについての御質問がありました。

 TPP11は、二十一世紀型の自由で公正な新たな共通ルールをアジア太平洋地域につくり上げ、人口五億人、GDP十兆ドル、貿易総額五兆ドルという巨大な一つの経済圏をつくり出していくものであります。

 米国に対しては、自由で公正な貿易体制の重要性を共有するとともに、TPPの経済的、戦略的重要性、特に、最もグローバル化や技術革新が進んでいるのが米国であることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになることをしっかりと訴えていきたいと考えております。

 また、アジア太平洋地域にTPPのような我々が重視する価値やルールを定着させていくことは、一帯一路などを進める中国に建設的な行動を促していくという点でも大きな意味があると考えております。

 次に、著作権等の保護期間等、二十二項目の凍結事項について、日本にどのような影響が見込まれるかについてお尋ねがありました。

 二十二項目の凍結項目の多くは、米国が強い関心を有する項目と考えられますが、十一カ国は、TPP11をハイスタンダードかつバランスのとれた協定とするため、米国が離脱したことに伴う一部のルールを凍結するものとしたものであります。

 例えば、知的財産分野では、医薬品や著作権に関する項目を含め、十一の項目を凍結することとしております。

 他方、営業上の秘密、第十八の七十八条でありますが、これを含む知的財産の強力な権利行使に関する規定など、我が国が高い関心を有する知的財産の高い保護水準を担保する規定は維持されており、我が国が必要とする措置は確保されたと考えております。

 次に、総合的なTPP等関連政策大綱において定められた目標について、どのような品目をどのような国々に輸出すること、また、どの分野の企業誘致を想定しているかについてお尋ねがありました。

 それぞれにつきお答えをいたしますと、まず、二〇二〇年までに中堅・中小企業等の輸出額を二〇一〇年度比で二倍との目標については、工業品だけではなく、農産品・食品も含む幅広い品目について、TPP参加国やEUなどへの展開を図る中堅・中小企業を支援してまいります。

 二〇一九年の農林水産物・食品の輸出額一兆円の目標については、TPP11と日・EU・EPAでは、水産物、緑茶、牛肉等を含め、我が国の輸出重点品目のほとんど全てについて関税撤廃を獲得したところであります。これにより、TPP参加国及びEUに向け、輸出の拡大が期待をされます。

 二〇二〇年に約三十兆円のインフラシステムの受注の目標については、機材の輸出のみならず、インフラの設計、建設、運営、管理を含むシステムとしての受注や、現地での事業投資の拡大などを想定しており、具体的には、エネルギー、交通、情報通信、生活環境等の分野の企業の多様な海外展開を想定しております。

 二〇一八年までに、少なくとも計四百七十件のジェトロによる海外企業誘致との目標については、六つの分野、ライフサイエンス、観光、環境・エネルギー、サービス、ICT、製造・インフラの六分野が外国企業誘致におけるジェトロの重点分野と位置づけており、日本経済や地域経済への貢献度の高い企業誘致を目指しているところであります。

 最後に、TPPルールのコンプライアンスの整備に関する今後の取組についてお尋ねがありました。

 TPP12の合意以降、広範囲にわたるTPPのルールに関しては広く周知を図ってきたところです。引き続き、全国各地での説明会等による丁寧な情報提供や、TPPの内容や活用方法に関する相談窓口整備等を通じ、国内企業においてTPPルールのコンプライアンスの整備が適切に図られるよう取り組んでまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    野田 聖子君

       外務大臣    河野 太郎君

       文部科学大臣  林  芳正君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  齋藤  健君

       経済産業大臣  世耕 弘成君

       国務大臣    麻生 太郎君

       国務大臣    小此木八郎君

       国務大臣    茂木 敏充君

 出席副大臣

       外務副大臣   中根 一幸君


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