衆議院

メインへスキップ



第21号 平成30年4月24日(火曜日)

会議録本文へ
平成三十年四月二十四日(火曜日)

    ―――――――――――――

  平成三十年四月二十四日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 議員請暇の件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 議員請暇の件

議長(大島理森君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。

 逢沢一郎君及び小泉龍司君から、四月二十六日から五月四日まで九日間、請暇の申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、民法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、公職選挙法の定める選挙権年齢が満二十年以上から満十八年以上に改められたことなどの社会経済情勢の変化に鑑み、民法が定める成年となる年齢の引下げ等を行うものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、現在二十歳とされている成年となる年齢を十八歳に引き下げることとしております。

 第二に、現在男性が十八歳、女性が十六歳とされている婚姻開始年齢について、男女とも十八歳にそろえることとしております。

 第三に、民法が定める成年となる年齢の十八歳への引下げに伴い、関係法律について所要の整備をすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。大塚拓君。

    〔大塚拓君登壇〕

大塚拓君 自由民主党の大塚拓です。

 ただいま議題となりました民法の一部を改正する法律案について、自由民主党を代表して質問をいたします。(拍手)

 我が国では、明治九年の太政官布告以降、約百四十年の長きにわたって、二十歳を成年年齢としてきました。戦後、公職選挙法の選挙権年齢が二十歳と定められたことも相まって、我が国の社会において、二十歳が大人と子供とを区別する年齢として深く定着をしてまいりました。

 こうした中、平成十九年に制定された日本国憲法の改正手続に関する法律においては、憲法改正国民投票の投票権年齢が十八歳と定められるとともに、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢についても検討を加えることとされました。これは、投票権年齢が二十歳とされていた当初の与党案に対し、投票権年齢を十八歳とした上で、公職選挙法及び民法についても検討を加える旨の民主党案が提出され、与党案が修正されたことによるものです。

 これを受け、平成二十年に法制審議会に対して民法について諮問がされ、翌年、成年年齢を十八歳に引き下げるのが適当であるとの答申がされました。

 また、平成二十七年には与野党六会派等提出の改正案が成立、公職選挙法の選挙権年齢も十八歳に改められ、平成二十八年の参議院議員通常選挙及び平成二十九年の衆議院議員総選挙では、十八歳、十九歳の若者が実際に選挙権を行使しました。

 世界的な潮流を見ても、平成二十年時点の調査結果によれば、調査ができた百八十七の国・地域のうち、百四十一の国・地域において成年年齢が十八歳以下とされています。また、現在、G7諸国のうち、日本を除く全ての国で成年年齢は十八歳となっています。

 このような状況の中で、今回、民法の成年年齢を十八歳に引き下げる本法律案が国会に提出されました。成立した場合には、我が国において大人とされる年齢は、社会的にも国民意識においても二十歳から十八歳に移り変わっていくことが予想されます。

 そこで、まず、本法律案で民法の成年年齢を二十歳から十八歳に引き下げることとした理由と、その引下げが我が国の社会にとってどのような意義を持つのか、法務大臣に伺います。

 また、今回の改正では少年法が改正の対象に含まれておりません。その理由についてあわせてお答えください。

 次に、民法の成年年齢の引下げによる影響に目を向けますと、十八歳、十九歳の若者が大人としての責任を分担するとともに、大人としての権利、自由を付与され、みずからの判断で契約を締結することができるようになります。これは、若者の自己決定権、社会参画の拡大という大きなメリットをもたらす一方、消費者被害の拡大につながるのではないかとの懸念も指摘されております。

 本法律案が成立した場合には、十八歳、十九歳の若者が行った契約は、未成年者であることを理由に取り消すことができなくなります。そのために、若者が不当な契約を結ばされ、被害を受けることのないよう、十分な施策を実施する必要があります。また、自立に困難を抱える若者が親権に服さなくなることによってますます困窮することのないよう、自立を促すための施策も重要な課題になるものと考えます。

 以上のように、消費者被害の拡大防止や若年者の自立支援という観点からの環境整備が必要だと考えますが、これまでにどのような施策が実施されてきたのでしょうか。法務大臣に伺います。

 最後に、結婚をすることができるようになる年齢、いわゆる婚姻開始年齢についてお尋ねします。

 我が国においては、明治時代の民法制定当時、婚姻開始年齢は、男性十七歳、女性十五歳と定められました。昭和二十二年、婚姻開始年齢は、男性十八歳、女性十六歳と改められましたが、男女間の二歳の差は今日に至るまで維持されてきました。本法律案においては、この差をなくし、男女ともに十八歳にそろえることとされています。

 そこで、本法律案が婚姻開始年齢について男女ともに十八歳にそろえることとしたのはどのような理由に基づくのか、法務大臣に伺います。

 我が国は今、多くの課題に直面しています。未来を切り開いていくため、若者たちが社会の中でより積極的な役割を果たしていくことが期待されます。本法律案の成立がそのきっかけとなることを切に願い、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 大塚拓議員にお答え申し上げます。

 まず、民法の成年年齢を十八歳に引き下げる理由とその意義、また、少年法が今回の改正の対象に含まれていない理由についてお尋ねがありました。

 若年者の積極的な社会参加を促すという観点から、十八歳、十九歳の者に国民投票法の投票権及び公職選挙法の選挙権が既に与えられています。このような国政上の判断がされ、それが我が国の社会に定着してきたことを踏まえると、法制度としての一貫性や簡明性といった観点からは、市民生活の基本法である民法においても、十八歳、十九歳の者を経済取引の面で一人前の大人として扱うことが適当であると考えられます。

 また、御指摘があったように、世界的にも成年年齢を十八歳と定めるのが一般的となっています。

 さらに、学習指導要領の改訂により、高等学校までの教育課程において、消費者教育、法教育及び金融経済教育の取扱いの充実が図られています。

 本法律案は、以上のような事情を考慮した上で、民法が定める成年年齢を二十歳から十八歳に引き下げることとしたものです。

 このように、成年年齢を引き下げ、十八歳、十九歳の若年者の社会参加の時期を早め、社会のさまざまな分野において積極的な役割を果たしてもらうことは、少子高齢化が急速に進む我が国の社会に大きな活力をもたらすものであり、大きな意義を有するものであると考えております。

 平成二十七年に成立した公職選挙法等の一部を改正する法律の附則において検討を加えるものとされている少年法に関しては、法制審議会において、少年の上限年齢のあり方及び若年者を含む犯罪者に対する刑事政策的措置のあり方について調査審議中であり、結論を得ていないことから、本法律案による改正の対象とはしていません。

 次に、成年年齢の引下げに向けた環境整備のためにこれまでに実施された施策についてお尋ねがありました。

 消費者被害の拡大防止のための施策としては、これまで、平成二十年及び二十一年の学習指導要領の改訂により、消費者教育、法教育、金融経済教育の充実が図られています。また、消費生活相談窓口の拡充、周知等の施策も実施されてきました。

 このほか、今国会には、若年者を中心に発生する被害事例を念頭に置いた取消し権を追加すること等を内容とする消費者契約法の一部を改正する法律案が提出されたところです。

 次に、若年者の自立を促すための施策としては、例えば、インターンシップの促進等のキャリア教育の推進、各種の就労支援の実施といったキャリア形成支援が実施されてきました。また、困難を有する子供、若者への支援の推進のため、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置といった施策を実施してきました。

 このように、これまでも、消費者被害の拡大を防止し、若年者の自立を支援するためにさまざまな施策を実施してきたところではありますが、これらの施策については、今後も引き続き、関係府省庁と連携しつつ、その充実強化を図ることが重要であると考えております。

 最後に、婚姻開始年齢を男女ともに十八歳にそろえることとした理由についてお尋ねがありました。

 民法が婚姻開始年齢を定めている趣旨は、未熟な段階での若年者の婚姻を禁止することにより、若年者を保護することにあります。

 社会経済の高度化、複雑化が進展した今日では、夫婦として共同生活を営むに当たって必要とされる社会的、経済的な成熟度も高度化しておりますが、社会的、経済的な成熟度といった観点からは男女間に差異はないと考えられます。

 このような理由から、本法律案では、男性及び女性の婚姻開始年齢をともに十八歳にすることとしたものです。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 國重徹君。

    〔國重徹君登壇〕

國重徹君 公明党の國重徹です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました民法の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 未来は現在にあります。今、私たちがいかなる方向へ一歩を踏み出すか、その選択が未来をつくります。

 どのような国、団体、組織であれ、次世代の成長なくして発展はありません。とりわけ、少子高齢化が急速に進む我が国では、未来を担う若者が、政治、経済、文化といったさまざまな分野にかかわり、その中心となって活躍していくことが期待されます。だからこそ、若者が安心して活躍できる社会の土台、みずからの責任を自覚し、自立できるような環境を整えていくことが必要です。

 平成十九年、憲法改正国民投票法の制定の際に、選挙権年齢や成年年齢も二十歳から十八歳に引き下げることが望ましいという政策の大きな方向性が示されました。その後、選挙権年齢は十八歳に引き下がっています。

 G7等の主要国を含め、十八歳成人は今や世界の主流です。世界の趨勢、我が国の将来を見据え、民法の成年年齢を十八歳に引き下げることは、後に述べる環境整備を前提に、適当であると考えます。

 成年年齢の引下げは、法的には、親の同意なく一人で契約をすることのできる契約年齢と親権の対象となる年齢を十八歳に引き下げることを意味します。また、一般国民の意識の上でも、十八歳をもって大人として扱うことが見込まれます。

 そこで、上川法務大臣に伺います。

 成年年齢を引き下げる積極的意義は何なのか。約百四十年ぶりの歴史的な法改正を機に、いかなる社会を目指し、若者が活躍できる社会をどのように築いていくのか、明快な答弁を求めます。

 次に、消費者被害の防止に関して伺います。

 成年年齢が引き下がり、契約年齢が引き下がるということは、消費者被害から未成年者を守る最大の防波堤である未成年者取消し権を十八歳、十九歳の者が失うということでもあり、それらの者が悪徳商法のターゲットとされる危険性が高まるということでもあります。現に、全国の消費生活センター等に寄せられる相談件数は、二十歳を境に急増しております。

 本改正により、若年者の消費者トラブルが拡大するようなことがあってはなりません。それを防ぐ鍵は、事前予防としての消費者教育と事後対応としての若年者救済制度の充実です。

 この点、政府は、社会経験が乏しい若年者などを対象として、契約取消しの範囲を拡大する消費者契約法改正案を今国会に提出しました。もっとも、これでカバーできる範囲は限られており、義務教育段階からの実効性ある消費者教育の推進が喫緊の課題です。

 そこで、今回の法改正をチャンスと捉え、教員向け研修の強化にとどまらず、生徒、学生にとって実践的でわかりやすい教材の提供や、外部講師の活用を含めた消費者教育の取組を強力に進めていくことが必要と考えます。林文部科学大臣の見解を伺います。

 若年者の自立を支える仕組みについて伺います。

 少子化が進む一方で、ニートや引きこもり、不登校など、困難を抱えた子供、若者は依然多くいます。

 自立とは、依存しなくなることではない、自立とは、依存先をふやすことだ。これは、脳性麻痺の障害を持つ小児科医の熊谷晋一郎さんの言葉です。

 自立に困難を抱える十八歳、十九歳の者に適切な支援の手を差し伸べることなく、成年年齢を引き下げ、親権の対象となる年齢を引き下げると、これらの若年者がますます困窮するおそれがあります。

 この点、政府は、平成二十八年二月に子供・若者育成支援推進大綱を決定し、若年者の自立を促す施策を講じていますが、その効果の浸透はこれからです。

 そこで、その検証や、親権の対象年齢の引下げによって新たに生じる懸念も踏まえ、若年者の自立を支える取組をより一層進めるべきと考えます。加藤厚生労働大臣、林文部科学大臣の見解を伺います。

 成人の日が一月第二月曜日であることから、大半の自治体では一月に成人式を行っています。

 成年年齢の引下げに伴い、十八歳の一月に成人式をすることになると、受験シーズンと重なります。また、同窓会的な雰囲気のあったこれまでの成人式とは様相の異なるものとなり、我が国の文化も大きく変わります。

 成人式は、人生の新たな門出であり、晴れの式典です。若者を困惑、落胆させるようなものにしてはなりません。その時期やあり方は、最終的には主催者である各自治体等の判断に委ねるとしても、政府として、成人式にかかわる関係者の意見を集約、発信するなど、必要な取組を進めていくべきと考えます。林文部科学大臣の見解を伺います。

 次に、環境整備に向けた省庁横断の取組について伺います。

 成年年齢の引下げは、積極的な意義がある反面、これまで述べたとおり、さまざまな懸念があるとも指摘されており、それらに対する施策の整備が進められています。

 しかし、その施策や効果の浸透度はいまだ十分とは言えず、成年年齢の引下げが何を意味するのかについてさえ、ほとんど知られていない状況です。

 本法案の施行日は平成三十四年四月一日と定められているところ、その適切な周知とともに、成年年齢の引下げに向けた環境整備が確実に進められるよう、政府一体となって、責任を持って取り組んでいかなければなりません。

 そこで、我が党の提案、強い主張を受けて、政府は、このたび、本件に関する省庁横断的な検討会議を設置しました。では、この検討会議はどのようなものなのか。各施策の進捗状況をどのように管理するのか。各省庁がばらばらに取り組む場合と比較し、いかなる効果が期待できるのか。検討会議の議長である上川法務大臣の答弁を求めます。

 最後に、関係法律への影響について伺います。

 若年者の年齢条項を定めた法律は二百本を超えます。本改正に伴い、その適用対象が十八歳に引き下がるものも多くありますが、例えば、飲酒や喫煙の解禁年齢は二十歳を維持しています。

 これらは、国法上の統一性より立法趣旨の違いを重視した結果であると理解していますが、その具体的理由は何なのか、国家公安委員長に伺います。

 一方、少年法の適用対象年齢については、法制審議会が、十八歳に引き下げるべきかどうか、引き続き検討しています。

 我が党は、若年者の可塑性を信頼するという少年法の立法趣旨を踏まえ、その適用対象年齢の引下げは慎重であるべきとの考えですが、少年法の保護処分は、十八歳、十九歳の者の立ち直りや再非行防止にどのように機能しているのか。その適用対象年齢を引き下げるといかなる懸念が生じるのか。十八歳、十九歳の者が少年事件の約四割を占める実態を踏まえ、上川法務大臣の答弁を求めます。

 結びに、女性の婚姻開始年齢の引上げを含め、本法案は、若者や社会に大きな影響を及ぼす歴史的な法改正です。これにかかわる立法府の一員として、その重みにたえ得る審議をしていくことを強く決意し、また期待して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 國重徹議員にお答え申し上げます。

 まず、成年年齢を引き下げる積極的意義や、民法改正によりいかなる社会を目指すのか等についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が急速に進む我が国においては、将来の国づくりの中心である若年者に早期に社会に参加してもらい、社会の構成員として重要な役割を果たしてもらうことが重要です。

 国民投票法の投票権年齢や公職選挙法の選挙権年齢が十八歳と定められ、十八歳、十九歳の者が国政に参加することになったことに加えて、十八歳、十九歳の者について経済取引の面でいわば一人前の大人として扱うことは、若年者の積極的な社会参加につながるものであり、我が国の将来を活力あるものにすることに資すると考えております。

 今回の改正は、このような社会を目指すものであり、こうした社会を築くためには、若年者が安心して経済取引を行うことができ、また、社会の中で自立することができるようにサポートすることが重要であると考えております。

 政府としては、これまでも、成年年齢の引下げに向けた各種の環境整備のための施策に取り組んできましたが、今後も引き続き、環境整備の施策に取り組んでいきたいと考えております。

 次に、成年年齢引下げに関する省庁横断的な検討会議についてお尋ねがありました。

 民法が定める成年年齢を十八歳に引き下げる上では、消費者被害の拡大の防止などのための環境整備が必要です。

 こうした環境整備に関しては、公明党の皆様からの御要望も踏まえ、今般、法務大臣を議長とする成年年齢引下げを見据えた環境整備に関する関係府省庁連絡会議を開催しました。これは、関係府省庁相互の密接な連携協力を確保し、総合的かつ効果的な取組を推進することを目的とするものであり、今後も継続的に開催することとしております。

 この連絡会議においては、若年者の消費者教育、消費者保護、与信審査、若年者自立支援など、成年年齢引下げを見据え、対応が必要とされる課題をテーマとして取り上げます。これらの課題に関し、個別の施策ごとに工程表を作成した上で、その実施状況を連絡会議の構成員である関係府省庁が相互に共有し、施策の進捗状況を管理することを予定しております。

 連絡会議には調整役として内閣官房も参加し、関係府省庁の連携体制を整えることにより、各省庁がそれぞれ独自に施策を実施する場合と比較して、関係府省庁が足並みをそろえて、必要な施策を効果的に実施していくことができると考えております。

 最後に、少年法における保護処分の機能等についてお尋ねがありました。

 少年法の保護処分は、少年の健全な育成を期し、性格の矯正等を目的とするものであり、その再非行防止と立ち直りに機能を果たしているものと認識しています。

 少年法の少年の上限年齢を引き下げた場合、十八歳及び十九歳の者に対して改善更生に必要な処遇や働きかけを行うことができなくなるのではないか、その結果、若年者の再犯の危険性を増加させるのではないか等の懸念が指摘されています。

 法制審議会においては、これらの点も踏まえつつ、少年の上限年齢のあり方及び若年者を含む犯罪者に対する刑事政策的措置のあり方について、現在、調査審議を行っていただいているところです。

 飲酒と喫煙の年齢制限について、国家公安委員会委員長に対するお尋ねがございました。

 国家公安委員会委員長事務代理としてお答え申し上げます。

 未成年者飲酒禁止法及び未成年者喫煙禁止法が二十歳未満の者による飲酒及び喫煙を禁止している趣旨は、健康被害防止と非行防止の二点にあり、御指摘のとおり、民法の成年年齢の定め等とはその趣旨を異にしております。

 近年、国内外において、飲酒や喫煙が健康に与える悪影響を防ぐための取組が強化されているところでもあり、今回の民法改正を理由として、飲酒、喫煙を禁止する年齢を引き下げることとはしなかったものであります。(拍手)

    〔国務大臣林芳正君登壇〕

国務大臣(林芳正君) 國重議員から三つ質問がございました。

 最初に、消費者教育についてお尋ねがありました。

 成年年齢の引下げに向けて、若年者への実践的な消費者教育を一層充実していくことが重要です。

 本年二月には、消費者庁等の関係省庁と連携し、二〇二〇年度までの三年間を集中強化期間とする若年者への消費者教育に関するアクションプログラムを決定したところです。

 これを受けて、文部科学省では、小中高等学校等において、社会科や家庭科など関連する教科において学習指導要領の趣旨の徹底を図ること、消費者庁作成の高校生向け消費者教育教材の活用を促進すること、実務経験者の外部講師としての活用を推進すること、教員養成、教員研修等における消費者教育の充実を図ることなどを進めることとしております。また、大学等においても、消費生活センターとの連携の促進などを行うこととしています。

 今後とも、関係省庁と連携し、消費者教育の充実に向けて取組を加速してまいります。

 次に、若年者の自立支援のお尋ねでありますが、成年年齢の引下げに向けた環境整備の一環として、若年者の自立支援を進めていくことは重要と認識しております。

 文部科学省としては、政府全体の大綱である子供・若者育成支援推進大綱に基づき、職場体験活動、インターンシップなど、発達段階に応じて体系的なキャリア教育を推進すること、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置促進により教育相談体制を充実すること、家庭教育に関する学習機会の提供や保護者への相談対応等、家庭教育支援を充実すること等を進めているところです。

 これらの施策の点検、評価も含め、引き続き、関係省庁とも連携し、若年者の自立支援に努める所存です。

 次に、成人式の時期やあり方についてお尋ねがありました。

 成人式の実施について法律による規定はなく、実施時期や対象年齢等、そのあり方については、各市町村が主体となって検討を行い、地域の実情に応じて企画、実施していただくものと考えております。

 しかしながら、成年年齢の引下げに伴い、各市町村が成人式の対象年齢の引下げを行う場合には、開催時期によっては、高校生の大学進学準備等との関連で考慮すべき事項が出てくることも考えられます。

 政府においては、成年年齢引下げを見据えた環境整備につきまして、関係府省庁連絡会議を設置し、検討することとしております。このため、成人式の時期やあり方等についても、改正法案が成立した後には、この連絡会議等において自治体等の関係者との意見交換を行い、必要な情報を発信するなど、関係府省庁と連絡、協力して取り組んでまいります。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 國重徹議員より、若年者の自立支援についてのお尋ねがありました。

 厚生労働省においては、若年者の自立を支援するため、キャリア形成支援や、困難を有する子供、若者への支援等を推進しております。

 具体的には、子供・若者育成支援推進大綱に沿って、ニート、フリーター等の若者の社会的、経済的自立に向けた支援、学生アルバイトの労働条件確保対策、労働法に関する教育、周知啓発、社会的養護については、児童養護施設等を退所した児童等に対する二十二歳の年度末までの必要に応じた支援などの自立支援、一人親家庭については、就業支援を基本としつつ、子供の居場所づくりなどの子育て・生活支援、学習支援など総合的な支援などを進めております。これらの施策については、親権の対象年齢が引き下げられても、支援の対象年齢は維持することとしております。

 成年年齢引下げに伴う懸念も踏まえ、施策の効果の検証を行いつつ、これらの施策のより一層の推進を通じて、若年者の自立を支援してまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 串田誠一君。

    〔串田誠一君登壇〕

串田誠一君 日本維新の会の串田誠一です。

 民法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 法律案の質疑に入る前に、一言申し上げておきたいと思います。

 ただいま、公文書に関する問題が取り上げられており、防衛省におきましても、日報に関することが問題となっております。私も、先日、安保委員会で質疑をさせていただきました。

 イラク派遣の日報に関しては、二〇〇四年の小泉内閣の際に、戦闘地域には派遣しないと国会で答弁されていましたが、最近発見された日報には、戦闘が行われていたとの記載がありました。しかし、最近、小泉総理御本人は、その当時、戦闘のことは一切報告を受けていないと発言されておられます。

 この食い違いは、民主党政権になった時期を入れて、延べ九人の総理による内閣を経ても見過ごされてきました。そして、現在の安倍内閣において、この日報問題が露見したものであります。

 この経緯からすれば、どの内閣の問題というよりも、根本的な行政文書と内閣及び国会の問題と言わざるを得ません。

 今になって露見されたことは余りに遅しという感は否めませんが、この機会に、徹底的にうみを出し切り、病巣を一掃すべく最大限の対策をとっていただくことを強く要望いたしまして、法案の質疑に入りたいと思います。

 我が国の高齢化率は二七・三%と、先進諸国の中でも最も高い水準となり、出生数は二年連続で百万人を割り込んでいます。

 人口減少が進む中、日本の将来を担う若者が、社会の一員であることを自覚し、責任を持って役割を果たしていくためにも、成年年齢を引き下げることは、社会の活力につながると考えています。

 これからを担う若い力を活用し、根本的な改革を進めるためにも、若い世代の考えを政治の場により積極的に取り入れることは、国政及び地方政治にとって欠かせません。そのために、若い世代に政策決定に直接参画する機会を保障するべきです。

 特に、今回、成年年齢の引下げで、公認会計士などの資格の取得年齢も引き下げられます。一方で、政治家になれる被選挙権の年齢が引き下げられないのは、バランスを明らかに欠いていると思います。

 我々日本維新の会は、成年年齢の引下げに合わせ、若者の政治参加を更に拡大する必要もあると考えており、国会において、被選挙権の年齢十八歳引下げ法案を提出しています。

 今回、公職選挙法及び地方自治法に関し、被選挙権年齢の引下げが行われなかった理由について、総務大臣、お答えください。

 喫煙年齢、飲酒年齢など、健康保全に係る成人年齢が従来どおり二十歳以上に維持されたこと、そして、公営ギャンブルについても成人年齢が引き下げられなかった点については、高く評価をしています。

 ただ、未成年者の子女のいる離婚のケースでは、親権者同士で、成年に達するまで養育費を支払うとの内容で、子女の養育費について合意書を作成しているケースがよく見られますが、こうした場合の取扱いはどう考えるのか、法務大臣、お答えください。

 また、扶助料の年額に係る加算の特例を規定した恩給法十四条一号では、十八歳から二十歳未満の子にあっては重度障害の状態にある者に限るとなっていますが、改正ではこの規定が削除されています。

 十八歳から二十歳未満で重度障害の状態にある者に対する従前の保護は今後どのようになるのかについて、総務大臣、お答えを願います。

 我が党は、多様な価値観を相互に認め、一人一人が自分らしく生きる社会の実現を目指していくことを国民の皆様にお約束いたします。これを実現するために、与えられた機会にはしっかり国会の場に出席をして、主張させていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 串田誠一議員にお答え申し上げます。

 現行法のもとで作成された、成年に達するまで養育費を支払う旨の合意書の取扱いについてお尋ねがありました。

 お尋ねのような合意書の取扱いについては、最終的には裁判所の判断によることになりますが、一般論として申し上げれば、その合意内容の解釈に当たっては、合意が成立した時点での父母の意思を推測することになると考えられます。

 現行法のもとで合意が成立した場合の父母の意思は、その当時の成年年齢である二十歳に達するまで養育費を支払うというものであることが多いと思われますので、お尋ねのような合意書では、子が二十歳に達するまで養育費の支払い義務が生じると解される場合が多いものと考えられます。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣野田聖子君登壇〕

国務大臣(野田聖子君) 串田議員にお答えいたします。

 まず、被選挙権年齢の引下げについてお尋ねがありました。

 被選挙権年齢については、社会的経験に基づく思慮と分別を踏まえて設定されていると考えられており、諸外国の例を見ても、成年年齢と必ずしも一致していないなど、被選挙権年齢のあり方にはさまざまな考え方があると承知しています。

 被選挙権年齢の取扱いについては、民主主義の土台である選挙制度の根幹にかかわる事柄であり、国民の代表である立法府において、各党各会派で御議論いただくべきことであると考えています。

 次に、扶助料の年額に係る加算の特例についてのお尋ねがありました。

 恩給法等の一部を改正する法律附則第十四条第一項は、普通扶助料受給者である妻に未成年の子がある場合等に、一定額を加算する旨を定めています。ただし、十八歳以上二十歳未満の子の場合は、重度障害の状態にある者に限られています。

 この規定は、今回の民法改正により十八歳以上の者が成年となることに伴い不要となるため、削除することとしています。

 ただし、今回の改正時に十八歳以上二十歳未満の重度障害の子を有する妻については、従前どおりに加算するよう経過措置を設けています。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十四分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣    野田 聖子君

       法務大臣

       国務大臣    上川 陽子君

       文部科学大臣  林  芳正君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

 出席副大臣

       法務副大臣   葉梨 康弘君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.