衆議院

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第23号 平成30年5月8日(火曜日)

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平成三十年五月八日(火曜日)

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  平成三十年五月八日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 懲罰委員長辞任の件

 懲罰委員長の選挙

 情報監視審査会委員辞任の件

 情報監視審査会委員の選任

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 懲罰委員長辞任の件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 懲罰委員長中山成彬君から、委員長を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 懲罰委員長の選挙

議長(大島理森君) つきましては、これより懲罰委員長の選挙を行います。

田野瀬太道君 懲罰委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(大島理森君) 田野瀬太道君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、懲罰委員長に篠原孝君を指名いたします。

    〔拍手〕

     ――――◇―――――

 情報監視審査会委員辞任の件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 情報監視審査会委員井出庸生君から、委員を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 情報監視審査会委員の選任

議長(大島理森君) つきましては、情報監視審査会委員の選任を行います。

 衆議院情報監視審査会規程第六条の規定に基づき、情報監視審査会委員に渡辺周君を選任するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、選任することに決まりました。

     ――――◇―――――

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定を締結し、これを実施するため、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律について、一部の改正を行うものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、法律の題名を、環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律に改めることとしております。

 第二に、施行期日を、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定が日本国について効力を生ずる日に改めることとしております。

 このほか、環太平洋パートナーシップ協定を引用している箇所については、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の発効にも対応できるようにする等改めることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨です。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。神谷裕君。

    〔神谷裕君登壇〕

神谷裕君 立憲民主党の神谷裕です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、ただいま議題となりました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 質問に先立ち、一言申し上げます。

 本日から、やっと国会が正常化いたしましたが、この通常国会、本当に前代未聞の異常な国会だと申し上げざるを得ません。

 一月に国会が開会してからというもの、決裁文書の改ざん、データの捏造、官僚による口裏合わせ、教育現場への圧力、高級官僚によるセクハラ、シビリアンコントロールの崩壊など、目も当てられないような重大な問題が次々に起きました。

 立憲民主党を始めとする私たち野党は、再三再四、政府・与党に対して、これらの問題の全容解明のための必要かつ十分な審議と、その審議の前提となる資料の提出、調査結果の公表を強く求めてまいりました。

 繰り返します。こうしたことの審議は質疑の大前提です。行政府を厳しく監視することは立法府の重要な責務であり、充実した質疑を行う環境を整える責任は、ひとえに政府・与党にあります。

 特に与党の皆さんは、立法府の一員として、こうした行政府の不祥事を厳しく問いただすべき立場にあるはずです。野党のことを批判する時間があるなら、官邸の意向をそんたくする時間があるなら、みずからの立場を省みて、行政府に対して厳しい監視の目を向けるよう、あえてこの場で申し上げておきます。

 何やら調整の結果記憶がよみがえっただの、セクハラに対する人権侵害まがいの調査だの、断じて許されるものではありません。

 野党は結束して、改ざん、捏造、隠蔽、圧力、セクハラなど、これらの多くの重大な問題を、今後とも厳しく追及していくことを改めて宣言いたします。

 安倍総理、あなたは、うみを出し切ると何度もおっしゃっておられました。そもそも、うみとは、具体的に何のことをおっしゃっていたのでしょうか。そのうみが出ている原因は何だとお考えでしょうか。出し切らなければならないほどのうみが出る原因に御自分の言動、行動があることを、どうかしっかりとお考えをいただきたいと思います。

 それでは、本法案について質疑をさせていただきます。

 本法案は、アメリカを含む十二カ国で署名をされたTPP協定の内容をアメリカ抜きで実現しようとするCPTPP協定の国内実施法であります。

 このCPTPPの協議は、アメリカのトランプ政権成立による、アメリカ政府のTPP撤退の決定によってスタートしたものだと承知をいたしております。農業者を始め多くの国民の皆さんや、ここにいる与党の議員の中にも、アメリカ大統領のこの撤退の決断をほっとした目で見ていたのではないでしょうか。

 TPP12の議論の中で、多くの懸念が指摘をされています。ISDSや農林漁業への影響、国民皆保険制度は大丈夫なのか、食の安全は守られるのか、小さな地方自治体の入札制度に外国企業を入れるかなど、国民生活のさまざまな部分で影響が出るのではないかとの懸念のもとに、大議論が巻き起こりました。

 政府は、前回TPPの国会での議論の決着で、国民の皆さんが納得し、この大議論の結末に理解をされたとお考えなのでしょうか。まずは、TPPという枠組み自体及びTPP12についての国民皆さんの理解について、安倍総理大臣にお伺いをしたいと思います。

 私は、多くの国民の皆さんに、TPPが大変な問題を抱えた協定であると、根強い懸念と反対の声があると認識をしております。その懸念がこれまでに解消されたものであるとは思っておりません。

 そのような中でのTPP11の協議がスタートいたしましたが、協議では、アメリカのTPP復帰を考えた上での、極力形を変えない形で決着を見ようとされたようであります。しかし、そういった配慮によってアメリカの復帰が実現できるのか、多くの国民の皆さんの関心事であると思います。

 そこで、率直に、アメリカ政府のTPP復帰を現実のものとできるのか伺いたいと思います。できるのであれば、どのような道筋で復帰できるのか、説明をお願いしたいと思います。また、反対に、どこかで見切りをつけるのであれば、どういった場合に結論を出そうと考えるのか、安倍総理にお伺いをしたいと思います。

 アメリカ政府の撤退の決断を受け、TPP11の交渉がスタートしたわけですが、この間の日米交渉は、どのような話がなされたのでありましょうか。

 政府は、これまでも、アメリカの復帰を促し、日米首脳会談を含め、さまざまな場面でアメリカ政府に働きかけを行ってきたと思います。しかし、現実には復帰は実現をいたしておりません。

 むしろ、麻生副総理とペンス副大統領のもとで、日米経済対話という二国間協議を受け入れ、さらには、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することが先般の首脳会談で確認をされております。

 アメリカサイドから見れば、こういった二国間での協議を受け入れた我が国政府の態度が、TPPへの復帰ではなく、日米二国間での経済連携協定そのものを容認していると映るのではないかとも思われるのでありますが、こういった考えはないのか、安倍総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 また、三月には、アメリカ側より日米FTAの締結に向けた協議を始めたいとの意向も示されたとの報道もあります。改めて、日米経済対話とは一体何を目的としたものだったのか、あわせて安倍総理に伺いたいと思います。

 先月の四月十七日、関連するCPTPP協定本体の審議が本院でスタートいたしました。

 そもそも、政府が説明するように、TPP12とCPTPPは全く別物の協定であります。そうでなければ、新たに審議を行う必要も、そもそもございません。

 しかし、TPP12協定締結後のさまざまな国際情勢の変化によって、この協定を新たに署名し、承認を求めた上で本法案を提案したわけであります。であるとすれば、当然に、この間の変化について政府はしっかりと説明し、方針について再度議論しなければなりません。

 TPP12協定の際の議論では、ノリ弁と称されるような黒塗りの資料が提示され、秘密保持契約の問題があったにしても、情報公開とはとても十分なものとは言えませんでした。農林水産分野ばかりでなく、国民生活全般にわたり大きな懸念が言われる中で、しっかりとした説明、情報開示は極めて重要であります。

 また、そういった指摘に対し、四月十七日の本会議では、TPP12の合意後、三百回以上説明会を実施してきたと政府も答弁をされております。しかし、この政府の行ったキャラバン活動が十分であったとお考えなのでしょうか。

 第百九十二回国会の衆議院TPP特別委員会における参考人の発言では、その調査結果をもとに、政府の説明が十分ではなかったとの指摘が残っております。

 その参考人である東京大学の鈴木教授の説明では、都道府県知事、四十七知事に対するアンケート調査では、どちらとも言えないという答えが多いながらも、TPPに関する政府の説明は十分と答えた知事はゼロ、国会決議が守られたという知事もゼロ、試算が現実的もゼロという結果を示されております。回数を重ねても、国民の知りたい情報が十分に示されなければ、国民の皆さんも理解することができないという当たり前の結果であると思います。

 重要なのは、言うまでもなく国民の理解と納得であり、回数を何度行ったかではありません。TPP12のみならず、CPTPPについて、真に国民の理解が進み、国民の合意を進めるために、政府は説明責任を最後まで果たすべきであると考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。

 そういった国民の知りたい情報の中に、影響試算があります。また、本整備法は対策の面も含んでおり、この対策が妥当なのか検証するためにも影響試算は欠かせません。政府も、国民の要請に応える形でTPP協定及びTPP11についての試算を行い、影響の評価を示しております。

 しかし、政府が行った試算は、大綱に基づく政策対応を考慮した上で、国内対策により生産量は維持される前提として試算されたものであり、影響の実態をつまびらかにしているとは思えません。

 また、詳細に見てみれば、政府試算では、価格が一〇%下落して、生産コストが一〇%以上上がると仮定しており、GDPを増加させております。これは、価格の下落以上にコストが下がると仮定していると読めますが、どのような仮定や計算を用いて導かれたものなのでしょうか。農林水産大臣にお伺いしたいと思います。

 こういった価格の下落以上の生産性上昇などを見ても、政府の試算は恣意的であり、TPPが始まっても影響なしとの結論ありきとの姿勢が見てとれます。本来であれば、純粋にTPPによる影響及び効果の試算だけを示し、その上でどういった施策が必要なのかを示すべきであります。

 特に、最もマイナスの影響を受ける農業者の皆さんにTPPに対する大きな不安があることを考えたとき、どれくらいの価格下落が見込まれ、それによりどれくらい生産量の減少や所得への影響が見込まれるのか、その予測を明示し、その上で必要な対策を講じるべきです。

 影響がないように対策をとるから影響がないとの主張は到底理解できません。どれほどの影響があり、どういった対策によって影響の緩和が可能とされるのか、農林水産大臣の御説明を伺います。

 また、現在議題となっているTPP11は、米国を含むTPPで農産物について合意した内容を、米国抜きにもかかわらず、全く修正せずに生かしています。例えば、オーストラリア、ニュージーランド、カナダは、米国分を含めた農産品の輸入枠を全部使えることになります。しかし一方で、米国が志向する二国間での協議によって、米国への個別の輸入枠を今後求められる可能性は否定できないとも思われます。その結果、我が国への農業分野への打撃はより大きくなることが想像されます。

 そこで、日米経済対話を含め、二国間あるいは多国間での経済連携協定については、せめて重要五品目を守るとしたこれまでの考え方を踏襲し、さらなる農林漁業分野での譲歩を行わないことを安倍総理大臣に御確認いただきたいと思います。

議長(大島理森君) 神谷君、時間が過ぎております。

神谷裕君(続) はい。

 欧米では、農産物の価値や農林漁業の持つ多様な機能を評価し、国民全体で負担するシステムをとっています。グローバル化時代の農業所得の確保は、直接所得補償でやることが欧米諸国の農業政策の標準です。

 政府・与党においても、この際、我が国に直接所得補償を導入されるよう検討するべきであると思いますが、農林水産大臣の見解を求めます。

 あわせて、官邸が主導して貿易の自由化を進める中、これからの日本の農林漁業をどのように守り、国民への食の供給と安心と安全を守るのか、総理大臣の御所見をお伺いし、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 神谷裕議員にお答えをいたします。

 TPPに対する国民理解についてお尋ねがありました。

 TPP協定の大筋合意後、合計百三十時間を超える国会審議や三百回以上に及ぶ説明会を通じ、合意内容に関し、国民の皆様に丁寧に説明をしてまいりました。

 政府としては、一層の国民の理解を得られるよう、TPP協定や関連政策について、引き続き積極的な情報提供と丁寧な説明を行ってまいります。

 米国のTPP復帰への道筋についてお尋ねがありました。

 TPP11の交渉が大詰めを迎え、現実味を帯びる中、本年のダボス会議において、初めてトランプ大統領から、米国がTPPに参加する可能性について言及があったところです。そうした意味で、TPP11の早期発効を目指すことが、TPPのメリットを具体的に示し、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるとの理解を深める大きな力となるものと考えます。

 我が国としては、TPPが日米両国にとって最善であると考えており、日米両国が日米経済関係及びアジア太平洋地域の発展にいかに協力すべきか、TPPの持つ意義も含め、建設的な議論を今後とも米国と行っていく考えであります。

 TPPをめぐる日米間のやりとり及び日米経済対話についてお尋ねがありました。

 米国政府によるTPPからの離脱を受け、我が国は、日米首脳会談を含め、これまで累次にわたり、米国政府に対してTPPに復帰するよう働きかけてきました。

 そして、その結果、トランプ大統領自身も、TPPについて、よりよい合意内容ができるのであればTPPに参加する可能性がある旨述べるに至っています。

 先般の日米首脳会談では、トランプ大統領と、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意しました。茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で協議が行われ、その結果が、麻生副総理及びペンス副大統領のもとでの日米経済対話に報告されることになります。この協議は、公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するため、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させていくとの目的で行われるものです。

 米側は二国間ディールに関心を有していると承知をしておりますが、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き議論に臨んでまいります。

 なお、この協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもないことを明確にしておきます。

 国民合意を進めるための、政府の説明責任についてお尋ねがありました。

 TPPは、消費者の皆さんが域内のさまざまなよい商品をより安く、安心して手に入れることができるようになるとともに、自由で公正なルールに基づくマーケットを世界に広げることで、手間暇かけてよいものをこしらえる中小・小規模事業者、農家の皆さんに大きなチャンスが生まれてまいります。

 同時に、農業者や中小・小規模事業者の皆さんに対して、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、きめ細やかな対策を引き続き講じることで、それでもなお残る不安や懸念にもしっかり向き合ってまいります。

 こうした点については、これまでも、わかりやすい情報発信や説明会の開催など、丁寧に説明する努力を重ねてきたところですが、引き続き、国民の理解が得られるよう、政府として説明責任を果たしていく考えであります。

 今後の経済連携について、農林漁業分野の扱いについてお尋ねがありました。

 TPPは、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げたガラス細工のような協定であり、一部のみを取り出して変えることは極めて困難と考えています。

 米国との間では、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善であるとの考えであり、その立場を踏まえ、議論に臨んでまいります。日米両国が日米経済関係及びアジア太平洋地域の発展にいかに協力すべきか、TPPの持つ意義を含め、建設的な議論を行っていきたいと考えています。

 いずれにせよ、我が国としては、引き続き、自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済圏を世界に広げていく考えであり、いかなる国とも、農林漁業分野を含め、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、国益の観点から最善の結果を追求してまいります。

 これからの農林水産政策についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業化させ、農家の所得向上を実現するため、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。

 また、中山間地域に対しても、日本型直接支払制度による支援など、地域を元気にする施策を展開してまいりました。

 これにより、四十代以下の若手新規就農者が、統計開始以来初めて三年連続で二万人を超え、生産農業所得も、過去二年で約九千億円も伸び、直近で三兆八千億円になるなど、着実に成果があらわれ始めています。

 こうした農政改革に加え、農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかり向き合い、TPPなど新たな国際環境のもとでも安心して再生産できるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき十分な対策を講じてまいります。

 安倍内閣では、引き続き、農林水産業全般にわたって改革を力強く進めてまいります。若者が夢や希望を持てる農林水産新時代を構築し、国民への食の供給に万全を図ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 神谷議員の御質問にお答えをいたします。

 TPP11の影響試算の計算方法についてお尋ねがありました。

 TPP11における農林水産物の生産額への影響については、まず、重要品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、国家貿易の維持や長期の関税削減期間等も獲得したというTPP11の大筋合意の内容を踏まえて、定性的な影響分析を行いました。

 その上で、個別品目ごとに、国産品及び輸入品の価格を出発点として、輸入品と競合する国産品の価格は関税削減相当分下落し、輸入品と競合しない国産品については競合するものの価格低下率の二分の一まで価格が低下する可能性がある等の仮定を置き、国内対策の効果も考慮しながら、合意内容の最終年における生産額への影響を算出し、これを積み上げて試算を行いました。

 その結果、関税削減等の影響で国産品の価格低下により、約九百億円から千五百億円の生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や経営安定対策などの国内対策により、引き続き生産や農家所得が確保され、国内生産量が維持されるものと見込んだところでございます。

 TPP11の影響試算における国内対策の取扱いについてお尋ねがございました。

 農林水産物の影響試算につきましては、現実に起こり得る影響を試算すべきものと考えており、協定自体の発効による効果だけではなくて、国内対策の効果もあわせて考えることが適切であると考えております。

 国内対策なしの試算を行うことは、現実に起こり得ることとは異なることですから、これを行うことは考えておりません。

 したがって、TPP11の影響試算も、TPP12のときと同様、まず関税撤廃の例外やセーフガード等の国境措置をしっかり確保したことを明らかにして、品目ごとの定性分析を行い、その上で、国内対策も踏まえて試算を行いました。

 その結果、約九百億円から千五百億円の生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や経営安定対策などの国内対策により、国内生産量が維持されると見込んだところであります。

 直接所得補償の導入についてのお尋ねがございました。

 旧戸別所得補償制度については、全ての主食用米の販売農家を対象に交付金を支払うものであったことから、担い手への農地集積のペースをおくらせる面があったと考えています。

 さらに、十分な国境措置がある米について交付金を交付することは、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたい等の課題がありました。

 このため、旧戸別所得補償制度については平成二十九年産までの時限措置とし、他方で、強い農業の実現に向け、農地集積バンクによる農地集積や、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興による農地のフル活用を図るなど、前向きな政策を強化してまいりました。また、天候要因のみならず、農産物の価格下落等による収入減少に対応するため、経営全体の収入に着目したセーフティーネットとして、収入保険制度を導入することといたしました。

 さらに、農業、農村の多面的機能の発揮を促進するため、平成二十六年に日本型直接支払制度を創設し、草刈りや泥上げなどの地域の共同活動や、中山間地域と平地との生産コスト差に対する支援等を行っております。

 引き続き、農業を成長産業にするとともに、美しく活力ある農村の実現に向けた施策を力強く推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 山岡達丸君。

    〔山岡達丸君登壇〕

山岡達丸君 国民民主党、山岡達丸です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、政府から提出されました環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案及びその関連としてTPPをめぐる政府の考え方について御質問をいたします。(拍手)

 本題に入る前、柳瀬元首相秘書官について確認をさせていただきたいと思います。

 柳瀬氏は、これまで、加計学園幹部と面会したことについて、記憶がない、その一点張りで答弁を繰り返されてきました。この間、数々の文書記録が証拠として提示される中、最近ではその御記憶が戻られた、その御様子でございます。

 面会したことは思い出されたようでございますから、当然ながら、話した内容についてもきちんと覚えておられることと思います。会ったことは思い出されても、話した内容を覚えていないということは、この期に及んで、まさかないものだと確信をしているところでありますけれども、与党の皆様は、虚偽答弁に法的罰則がない参考人質疑にとどめたい、そんな意向だという話も聞こえてまいります。

 行政府の長の安倍総理が、うみを出し切る、こうして言っているにもかかわらず、うみを出す環境を立法府の議会として整えない、その姿勢はいかがなものでしょうか。

 総理は、こうした件に質問させていただくと、国会でお決めになることと繰り返し答弁をされます。この総理のうみを出し切るという言葉に、どうか与党の皆様は十分にそんたくをしていただき、今からでも遅くはありません、虚偽答弁を法的に許さない証人喚問の招致を行うべきだと考えます。

 与党の皆様の良識に期待を申し上げますとともに、安倍総理は自民党の総裁であります。この際、総理のリーダーシップのもと、党に、うみを出し切るためには証人喚問が必要であると強く指示されるべきではないかと考えております。野党は結束してこの問題に引き続き追及をさせていただきたいと思っておりますが、自民党を代表する安倍総裁としてのその良識にも御期待を申し上げさせていただきたいと思います。

 TPPに関連する議論を行うに当たっては、改めて強く指摘をしておかなければならないことがあります。それは、農林漁業者を始めとする、特に地方に暮らす国民に対する、この件をめぐる自民党の皆様の余りにも不誠実な対応についてです。

 TPPの交渉参加の是非をめぐって国論が二分され、民主党政権のもとではその議論が行われていたころ、野党の立場であられた自民党の皆様は、我が党の原口一博代表代行が調査した限りにおいても、実に八十五回にわたって審議拒否を行われるなど、それは盛んな国会活動を行っておられたころでもありました。

 その当時、自民党内にはTPP参加の即時撤回を求める会なるものが結成され、最終的に総勢二百人以上の自民党の議員の方々が所属、民主党政権においてTPP交渉参加をめぐる是非を議論している最中も、農林水産業の方々やあるいはその団体に対して、いかにもTPP交渉参加入りを断固反対するかのような姿勢をとり続けられました。

 二〇一二年冬に行われた総選挙においては、私は北海道で活動をさせていただいている身ではありますが、当時、北海道も含めて、農業地帯には、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPP交渉参加には反対します、うそつかない、TPP断固反対、ぶれないなどという自民党のポスターをそこらじゅうに張りめぐらされました。さらに、街宣車などを使ってTPP断固反対など短いワードで宣伝を繰り返す中で、地域の農林漁業者の方々、あるいは団体の皆様は自民党はTPP交渉参加には反対なんだと思うに十分な運動を展開されてこられました。

 ところが、二〇一二年の十二月の選挙が終わって三カ月です。たった三カ月です。総理は、聖域がないわけではなかったというような趣旨を述べられた後に、TPPの交渉参加へかじを切りました。

 それでは、自民党の二百人以上の議員が参加しておられたTPP参加の即時撤回を求める会は、その後どうなったのでしょうか。総理がTPP交渉参加を表明してから、その活動をぴたりとやめられて、しばらく沈黙された後、何とその名称をTPP交渉における国益を守り抜く会と変え、みずからがTPP参加の即時撤回を求めていたことを全て忘れたかのように、総理の姿勢へ追従を始められたんです。

 こうした一連の姿は、全国の有権者にどのように映るでしょうか。この間、TPPはトゥエルブからイレブンとなり、対策法もそれに合わせて一部を改正するということで今回この法案が提出されてもいます。しかし、この間、有権者を惑わし、全国の農林漁業者の期待を裏切り、政治への信頼を著しく欠いたことについて、私が調べた限りにおいて、総理から一言も謝罪をされておりません。

 TPPの関連法案の審議を求める前に、まずこの一連の経過について、全国の有権者、特に全国の一次産業に従事する方々、団体の皆様に謝罪するべきではありませんか。総理、どうか全国の農林漁業者の気持ちに思いを寄せてください。この場で答弁を求めさせていただきますので、どうかこの機会にぜひお話しください。

 TPPは、アメリカが参加することが前提の中で議論が行われました。二〇一七年一月二十日に、当時はTPPにはアメリカを含めて十二カ国の協定でしたが、日本の国内措置の完了を通報したわずか三日後、一月二十三日に、米国のトランプ大統領はTPP離脱を正式に表明しました。

 総理は、先月十七日と十八日の日米首脳会談に向けて旅立つ前、アメリカにTPP復帰を働きかけることについて、また、過日、米国によって行われた鉄鋼、アルミニウムの輸入制限から日本を適用除外させることについて、強い意欲を示しておられたと聞いています。

 しかし、初日の十七日の会議が終了するや否や、米国のトランプ大統領は、ツイッターにおいて、日本は米国のTPP復帰を望んでいるが、米国には好ましくないと早々に表明されました。

 また、二日目の十八日の会談では、通商問題について集中的に議論が交わされたようでありますけれども、終了後に行われた共同記者会見において、米国トランプ大統領は、断れないほどのよい取引を持ちかけられれば復帰もあるかもしれないが、TPPには復帰したくない、日本とは二国間の取引の方がより好ましいと、今の内容におけるTPPには復帰しない旨をはっきりと明言しました。さらに、鉄鋼、アルミニウムの輸入制限についても解決には至りませんでした。

 安倍総理は、この二日間の会談において、米国トランプ大統領に何を話されたのでしょうか。鉄鋼やアルミニウムについて、日本の立場をどのように説明されたのでしょうか。日米首脳会談において、通商問題についてどのようなことが話し合われたのか、具体的な内容について安倍総理にお尋ねを申し上げます。

 鉄鋼、アルミニウムの輸入制限について、アメリカは、米国の安全保障を脅かすおそれがあるとして、その正当性を主張しています。しかしながら、日本とアメリカは同盟国ではありませんか。安倍総理によれば一〇〇%ともにある関係であるはずなのに、安全保障を脅かすと言われるその関係はいかがなものなんでしょうか。

 そもそも、鉄鋼、アルミニウムの輸入制限というのはWTO違反ではありませんか。日本政府としてWTOに違反する行為と認識されているのかどうか、答弁を求めます。

 さらに、米韓FTAにおいて、韓国の自主的な鉄鋼、アルミニウムの輸出制限を行うことで、アメリカの規制対象から外れたということも伝えられています。しかし、輸出の自主規制もWTO協定違反ではありませんか。日本が同じことを求められてもそうした対応はしない、そのことを断言していただきたいと思います。見解を求めます。

 また、日米首脳会談においては、日米二国間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議と呼ばれる新しい貿易協議を開始することが合意されました。この新しい貿易協議について、日本側は、必ずしも日米FTA協議につながるものではない、その立場に立っておられるようでありますけれども、しかし、二国間において、この相互的な貿易取引の協議というものは、素直に読み取れば、米国側の考えは日米FTAの協議入りを指しているということは十分に考えられることではありませんか。

 事実、米国ムニューシン財務長官は、先月二十一日の記者会見において、この新たな貿易協議の場で日米FTA締結を目指す考えを明確に表明しています。

 米国トランプ大統領も、就任当初から、我々はTPPは好まない、二国間の協定を好むとの立場をとっています。この方針が変わらない限り、米国はいずれ日米FTA交渉入りを強く求めてくるということは容易に想像ができることであります。

 日米FTAでは、特に農業分野において、TPP以上の自由化を米国が求めてくることも強く懸念されます。政府は、こうした質問をさせていただくと、常々、我が国としてはいかなる国とも国益に反するような合意は行うつもりはないと繰り返し答弁をされていますが、国益に反するとは、具体的にどのようなことを指しますか。

 聖域なき関税撤廃が前提である限りとしながら、聖域がないわけではなかったという趣旨を述べてTPPに交渉参加したように、今回も、国益に反するわけではなかったとその趣旨を説明され、方針を大きく転換されることも懸念されます。

 総理にお尋ねします。

 日米FTA交渉について、我が国として断固拒否するというその姿勢に変化はありませんか。国益とは何なのか、その意味するところを明確にしていただきながら、その決意について答弁をいただきたいと思います。

 日豪EPAの際、牛肉の現行の三八・五%の関税が、冷凍物で十八年目に一九・五%まで削減、冷蔵物で十五年目に二三・五%まで削減ということになったことを受けて、自民党の農林水産戦略調査会と農林部会、農林水産貿易対策委員会で、この関税率がぎりぎりの越えられない一線、いわゆるレッドラインだとする決議文をまとめた、そうした報道もなされました。

 しかし、TPPの交渉が終わってみたら、そのレッドラインはいとも簡単に破られて、牛肉の関税は現行の三八・五%から最終的には九%まで引き下げる、そのことを約束してきました。

 このほか、聖域であるはずの農林水産物の重要五品目について、我が党の玉木雄一郎代表が、二〇一六年四月十九日に行われた衆議院の特別委員会において、無傷なものはあったのか、その趣旨の質問をしたものに対し、当時の森山農林水産大臣は、あったかなかったかと問われれば、それはないなどと、無傷のものはなかったという驚きの答弁をされ、交渉の結果、聖域など守られていないことがわかりました。

 改めて、自民党の皆様が選挙のときに公約された、聖域なき関税撤廃を前提にする限り、TPPの交渉参加に反対するとは、何だったんでしょうか。それとも、聖域はあったと思ったけれども、交渉力が乏しかったがためにそれが守れなかった、そういうことなんでしょうか。

 一連の交渉の結果、農林水産大臣にまで無傷なものはなかったと言わしめた今回の農林水産業に関する交渉の結果について、総理はどのように評価されているのか、その見解を伺います。

 私は、単に批判をしたいわけではありません。ですが、このTPPをめぐる一連の件について、そしてこのTPPの行く末について、全国の農林漁業者が本当にすがる思いで、本当に固唾をのんで見守っています。

 私も、北海道の農林漁業の現場を歩かさせていただいている中で、本当にそうした皆様の痛切な声や怒りの声、こうした声を本当に聞かさせていただいてまいりました。そして、その声の向こうには一人一人の生活があります。どうか、業界団体だけを通じて聞こえる声だけではなく、そうした現場の声、そんな声を私も背中いっぱいでしょわさせていただいている中、その思いを凝縮して、今回の質問をさせていただいているところであります。

 どうぞ、総理の真摯なる御答弁に御期待を申し上げ、質問を終わらさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 山岡達丸議員にお答えをいたします。

 TPP交渉参加と全国の農林漁業者の期待についてお尋ねがありました。

 二〇一二年の衆議院選挙における自由民主党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉の参加に反対するというものでありました。

 その上で、政権発足後間もない二〇一三年二月、日米首脳会談において、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められないことを私自身が直接確認した上で、交渉参加を決断したものであります。

 実際、我が国は、交渉を主導することで、重要品目について、農林漁業者の皆さんが安心して再生産できる内容をかち取ったところであり、厳しい交渉の中で、国益にかなう結果を得ることができたと考えております。

 それでもなお、さまざまな不安を持っておられる方々がいらっしゃることは承知をしており、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、例えば、牛肉、豚肉について、省力化機械の導入や規模拡大のための畜舎整備などの体質強化対策の継続、牛・豚マルキンの補填率を八割から九割に引き上げるなど、協定発効に合わせた経営安定対策の充実などきめ細やかな対策を講じることにより、そうした不安や懸念にもしっかりと向き合ってまいります。

 農林水産業は国の基であります。今後とも、農林漁業者の皆さんの気持ちに寄り添いながら、将来にしっかりと夢や希望を持てるような農林水産業の構築に全力で取り組んでまいります。

 日米首脳会談での通商問題に関するやりとりについてお尋ねがありました。

 日米首脳会談では、経済について、トランプ大統領と時間をかけて率直な議論を行いました。

 トランプ大統領とは、公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現することで一致しました。この基盤の上に、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させていく。こうした目的で、今回、トランプ大統領と、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意をしました。

 米側は二国間ディールに関心を有していると承知をしておりますが、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き議論に臨んでまいります。

 なお、この協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもないことを明確にしておきます。

 米国の鉄鋼、アルミニウムに関する米国の措置については、私から、日本からの輸出品が米国の安全保障に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ高品質で多くが代替困難な日本製品は米国の産業や雇用にも多大に貢献しているというのが我が国の立場である旨主張しました。引き続き、この立場に立って、米国に粘り強く働きかけをしてまいります。

 自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議についてお尋ねがありました。

 先ほどもお答えしたように、この協議は、公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するため、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させていくとの目的で行われるものです。

 米側は二国間ディールに関心を有していると承知をしておりますが、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き議論に臨んでまいります。

 いかなる国とも国益に反するような合意は行うつもりはないというのは、我が国としては、攻めるべきは攻め、守るべきは守り、最善の結果を追求していくとの意味であり、この方針に変わりはありません。

 いずれにせよ、この協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でないことも明確にしておきます。

 農産水産業に関する交渉の結果についてお尋ねがありました。

 今回のTPP交渉では、重要品目については、乳製品など、関税割当てを導入することによって、枠外の関税については従来の関税を引き続き維持することや、牛肉など、十年を超えるような長期間の関税削減期間を確保することなどによって、関税撤廃の例外をしっかりと確保したところであります。

 実際に生産者に影響が出るかどうかということにしっかりと注目をしながら交渉し、結果として、生産者が再生産可能となるような措置を交渉を通じてかち取ったものと考えております。

 それでもなお、さまざまな不安を持っておられる方々がいらっしゃることは承知をしており、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、体質強化対策や経営安定対策などのきめ細やかな対策を講じることにより、そうした不安や懸念にもしっかりと向き合ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 米国による鉄鋼、アルミニウムに関する措置についてのお尋ねがありました。

 米国の鉄鋼、アルミニウムの関税措置に関し、今般の安全保障を理由とした広範な貿易制限措置は、単に米国のみならず、アジア地域を含む世界の鉄鋼、アルミ市場を混乱させる懸念があるほか、同盟関係にある日米両国の経済協力関係、ひいては多角的貿易体制全体や世界経済に大きな影響を及ぼしかねません。

 このような措置に関し、これまでさまざまなレベルで日本の懸念を米国にしっかりと説明してきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始されたことは、極めて遺憾に思います。

 我が国としては、米国の関連措置の内容及び日本企業への影響を十分に精査した上で、米国への働きかけを継続することが重要だと考えます。その上で、WTOの枠組みのもとで必要な対応を検討してまいります。

 輸出自主規制についてのお尋ねがありました。

 政府による輸出自主規制や輸出入の数量枠の設定については、関税及び貿易に関する一般協定第十一条の数量制限の一般的廃止や、セーフガードに関する協定第十一条の特定の措置の禁止及び撤廃において禁止されている措置に該当するものと考えます。

 政府としては、引き続き、米国の関連措置の内容や日本企業への影響を十分に精査した上で、米国への働きかけを継続することが重要だと考えます。その上で、WTOの枠組みのもとで必要な対応を検討してまいります。

 いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反する合意を行うつもりはありません。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、まず、安倍政権が引き起こしている異常事態について問いたい。(拍手)

 公文書改ざん問題、森友、加計疑惑、自衛隊日報問題、働き方改革に関するデータ捏造、さらには財務事務次官のセクハラなどなど、いずれも民主主義の土台を根底から突き崩すものであります。しかも、どの問題も安倍総理自身に直結しています。

 とりわけ、公文書を改ざん、捏造して国会に提出し、虚偽の答弁が行われてきたという前代未聞の事態は、国権の最高機関たる国会を冒涜し、立法、行政監視という国会の果たすべき機能を危うくするものであります。総理は、事の重大性をどう認識しているのですか。

 一連の疑惑の全容解明は、国民多数の声であり、国会審議の当然の前提です。今こそ、国民の代表たる国会が、与野党を超えてその責務を果たさなければならない。このことを政府・与党に強く求めるものであります。

 TPP協定関連法案に関して質問します。

 日米首脳会談において、トランプ大統領が、アメリカ第一の立場から、一方的な鉄鋼、アルミニウムの輸入制限を行いながら、TPPに戻りたくない、二国間協議がいいと明言しているもとで、安倍総理が、日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは極めて重大です。

 総理は、米通商拡大法二三二条に基づくアルミと鉄鋼の日本に対する輸入制限の適用除外を求めました。これに対しトランプ大統領は、新しい合意をアメリカと日本の間で模索していくと言いました。新しい合意の具体的中身は何ですか。

 また、トランプ氏は、アルミと鉄鋼に関し、二五%、三〇%、一〇〇%という関税をそれぞれかけていく、これは多くの国との交渉材料となっていると述べましたが、この交渉材料とは具体的に何を意味するのですか。

 総理はこの会談で、米国のTPP復帰を求めると言いましたが、トランプ氏は、米国にとってよほど都合のいい条件でなければTPPに復帰しないと言い、結局、より高いハードルを示されただけではありませんか。トランプ大統領は二国間取引を連発しましたが、結局、この取引でさまざまな要求をのまされるのではありませんか。

 しかも、総理はみずから進んで、茂木経済再生担当大臣とライトハイザー米通商代表部代表が交渉のテーブルに着く、貿易、通商問題の新たな協議機関の設置で合意しました。これは、トランプ大統領の二国間交渉を重視する姿勢に迎合したもので、身勝手な対日要求の受皿とされるのではありませんか。

 ハガティ駐日米大使は、日米会談後の会見で、新たな日米交渉について、現状の関税率では農業の優先順位は高いと指摘しています。農業のいかなる分野に対して優先的に要求を突きつけられるのですか。米国は、特に乳製品と牛肉の関税削減や無税枠拡大について、どのような要求をしてくるのですか。また、今後、日本に対してどのような分野の関税撤廃や規制緩和を要求してくるのですか。明確な答弁を求めます。

 TPP11は、日本がTPPで国際約束した関税撤廃と非関税措置撤廃の出発点です。これをベースに米国からは譲歩を迫られ、また、TPP11の発効後は、再交渉条項で加盟国からさらなる措置を求められないと断言できますか。

 TPP、TPP11、日米二国間交渉が日本経済と国民生活に大打撃を与えることは必至です。きっぱりやめるべきです。自由貿易の名で格差と貧困を広げる多国籍企業優先をやめ、今こそ、各国の食料主権、経済主権を尊重する平等互恵の経済関係を確立することが強く求められていることを強調するものであります。

 米国製兵器の導入拡大も重大です。

 外務省が公表した日米首脳会談の概要によると、安倍総理から、今後とも、米国装備品を含め、高性能な装備品を導入することが重要であることを伝え、トランプ大統領はこれを歓迎したとしています。これは、総理の側からさらなる米国製兵器の購入を持ちかけたということですか。具体的に何を購入するというのですか。米国からの巨額の兵器調達が及ぼしている国民生活へのしわ寄せをどう認識しているのですか。

 今回の日米首脳会談は、朝鮮半島情勢の大激動の中で行われました。トランプ大統領は、朝鮮半島の非核化とともに、朝鮮半島の永続的な平和への道筋をつけることへの意欲を示しました。その後の南北首脳会談では、核のない朝鮮半島の実現と、朝鮮戦争の終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制を構築するための南北米三者、又は中国を加えた四者による会談を推進することを盛り込んだ、歴史的な板門店宣言に署名しました。

 総理が今やるべきことは、こうした努力を後押しし、日朝平壌宣言に基づく核、ミサイル、拉致、過去の清算など、諸懸案の包括的解決につなげるための外交努力ではないのですか。

 総理は、沖縄の米軍新基地建設を着実に実施することを改めて約束していますが、戦後、米軍基地の重圧に苦しめられてきた沖縄に新たな基地を押しつける計画は直ちに撤回すべきです。

 朝鮮半島で起こっている大激動を地域の緊張緩和と平和体制構築につなげ、米軍基地の抜本的な縮小、撤去に踏み出すべきではありませんか。

 以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 笠井亮議員にお答えをいたします。

 決裁文書に関する問題等についてお尋ねがありました。

 行政をめぐるさまざまな問題について、行政全体に対する国民の信頼を揺るがす事態となっており、行政府の長として、また自衛隊の最高指揮官として、その責任を痛感しております。行政に対する最終的な責任は内閣総理大臣たる私にあり、改めて国民の皆様におわびを申し上げます。

 特に、今般の決裁文書に関する問題については、国民の皆様から厳しい目を向けられていることを真摯に受けとめながら、なぜこのようなことが起こったのか、全てを明らかにするために徹底的に調査を行い、全容を解明し、再発防止に全力を挙げてまいります。国民の信頼回復に向けて、総理大臣として、その責務を果たしていく決意であります。

 米国の鉄鋼、アルミニウムに関する措置についてお尋ねがありました。

 トランプ大統領の発言にある新しい合意や交渉材料の意味するところについては、私の立場でコメントすることは差し控えたいと思います。

 いずれにせよ、日米首脳会談では、私から、日本からの輸出品が米国の安全保障に悪影響を及ぼすことはなく、むしろ高品質で多くが代替困難な日本製品は米国の産業や雇用にも多大に貢献しているというのが我が国の立場である旨主張しました。引き続き、この立場に立って、米国に粘り強く働きかけを行ってまいります。

 米国のTPP復帰についてお尋ねがありました。

 TPP11の交渉が大詰めを迎え、現実味を帯びる中、本年のダボス会議において、初めてトランプ大統領から、米国がTPPに参加する可能性について言及があったところです。そうした意味で、TPP11の早期発効を目指すことが、TPPのメリットを具体的に示し、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるとの理解を深める大きな力となるものと考えます。

 米国のTPP十一カ国への輸出額は、日本への輸出額の十倍であり、米国がTPPに入れば米国のマーケットは飛躍的に拡大するなど、我が国としては、TPPが日本だけでなく米国にとっても最善であると考えており、こうした点について、引き続き米国に説明していきたいと考えております。

 いずれにせよ、TPPは、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げたハイスタンダードかつバランスのとれた、いわばガラス細工のような協定であり、一部のみを取り出して再交渉する、変えることは極めて困難であると考えています。

 自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議についてお尋ねがありました。

 日米首脳会談では、トランプ大統領と、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意しました。この協議は、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で行われ、その結果が、麻生副総理及びペンス副大統領のもとでの日米経済対話に報告されることになります。この協議は、公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現するため、日米双方の利益となるように、日米間の貿易や投資を更に拡大させていくとの目的で行われるものです。

 米側は二国間ディールに関心を有していると承知しておりますが、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き議論に臨んでまいります。

 なお、この協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもないことを明確にしておきます。したがって、トランプ大統領の二国間交渉を重視する交渉姿勢に迎合したものであるとの御指摘は当たりません。

 ハガティ駐日大使の発言や、米国の要求分野等についてお尋ねがありました。

 ハガティ駐日大使の発言の意味するところについては、私の立場でコメントすることは差し控えたいと思います。

 日米首脳会談で開始することに合意した、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議は、日米FTA交渉と位置づけられるものではなく、その予備協議でもなく、今後の米側の要求をこちらから予断するようなコメントは差し控えたいと思います。

 米側は二国間ディールに関心を有していると承知をしておりますが、我が国としては、TPPが日米両国にとって最善と考えており、その立場を踏まえ、引き続き協議に臨んでまいります。

 いずれにせよ、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 今後、米国や他の加盟国から譲歩等を求められないのかとお尋ねがありました。

 将来の協議等について予断を持ってお答えすることは困難ですが、いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。そのことを明確にしておきます。

 米国製の防衛装備品の購入についてお尋ねがありました。

 国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、我が国の防衛力について、質及び量を必要かつ十分に確保することが不可欠であります。

 こうした観点から、高い性能を有する装備品を導入することは、我が国の防衛力を強化するために非常に重要であり、F35A戦闘機、イージスシステムなど、米国製装備品の導入を進めています。さきの日米首脳会談では、このような我が国の考え方を説明したものです。

 防衛装備品については、平成二十五年に閣議決定した防衛大綱及び中期防に基づいて、米国製の装備品を含め、計画的に取得しており、防衛関係費についても、中期防に定める五カ年間の経費総額の枠内で計画的に計上しているところです。

 国民生活へのしわ寄せといった御指摘は当たらないものと考えており、今後とも計画的な整備に努めてまいります。

 北朝鮮問題についてお尋ねがありました。

 先般行われた南北首脳会談が、朝鮮半島の完全な非核化に向けた重要な一歩となったことを評価します。この重要な一歩を、来る米朝首脳会談等を通じ、北朝鮮の具体的な行動につなげていくことが極めて重要であります。

 我が国として、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルの諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮との間でその不幸な過去を清算し、国交正常化を目指していくとの方針は一貫しています。

 あす開催される日中韓サミットの機会には、北朝鮮の問題について突っ込んだ意見交換を行いたいと思っています。日米韓で緊密に協力し、中国、ロシアを始めとする国際社会とも緊密に連携し、拉致、核、ミサイルの諸懸案の解決に向け、最大限の努力を積み重ねてまいります。

 沖縄の基地負担の軽減についてお尋ねがありました。

 学校や住宅に囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を一日でも早くなし遂げなければなりません。そのために、最高裁判所の判決に従い、辺野古への移設を進めてまいります。

 移設は、普天間の三つの基地機能のうち一つに限定するとともに、飛行経路が海上となることで安全性が格段に向上し、普天間では一万数千戸必要であった住宅防音がゼロとなります。

 なお、北朝鮮の完全な非核化については、その実現に向け、北朝鮮の具体的な行動へとつなげていくため、全力を挙げてまいります。

 いずれにせよ、今後とも、沖縄の基地負担の軽減に全力を尽くし、一つ一つ確実に結果を出してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 森夏枝君。

    〔森夏枝君登壇〕

森夏枝君 日本維新の会の森夏枝です。

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 アメリカの態度が不透明な中、TPP11については、日本政府がイニシアチブを発揮し、年内締結、来年早期に条約発効に向け、各国において準備が進められていることについては評価をしています。

 一方で、先行発効が予想されるTPP11にアメリカが加入した場合、TPP12が横並びとなるために、その影響が国民にとってはわかりにくい仕組みとなります。複雑な形で発効を進めなければならなくなったことは残念に思います。

 まず初めに、TPPの経済効果について伺います。

 TPP関連予算は、平成二十七年度補正予算以降、総合的なTPP等関連政策大綱を実現するため、累計一・七兆円が計上され、今後も予算が投入されていくことと思います。

 TPP11が今想定されるペース、例えば平成三十一年度からTPP11が発効されたとした場合について、どの程度の経済効果があり、これまで投入した予算を上回る経済効果については、いつごろから見込むことができるのでしょうか。安倍総理、お答え願います。

 次に、セーフガードの発動基準値について質問いたします。

 アメリカからの農産物の急激な輸入増加に対するセーフガードの発動基準値がTPP11でもそのまま残されています。そのため、ニュージーランド、オーストラリア、カナダなどの農業大国にとっては、対日輸出枠が実質的に増加したことで、一方的に有利な条件を与えているのではないでしょうか。交渉のあり方として、本来であれば、アメリカ離脱で予測される部分についての枠は引き下げるべきだったのではないでしょうか。

 もしアメリカ参加に向けた交渉が行われた場合においては、更にこの発動基準値の拡大を押し込まれる可能性が懸念されます。その点についてはどう想定しているのでしょうか。安倍総理、お答えください。

 次に、TPPに対する農業保護政策について質問いたします。

 政府の説明では、国内農業については、体質強化対策による生産コストの低減、品質向上や経営安定対策などの国内対策を講ずることによって国内生産量が維持されると説明されています。

 しかしながら、食料自給率の観点から見てみますと、昭和四十年度の七三%から、平成元年度に五〇%を切り、直近では三八%と、長期的な下落が続いています。農林水産省からも、食の外部化の進展に伴う加工、業務用需要の高まりに国内農業が十分対応し切れていないことも影響との指摘があるにもかかわらず、農業政策は、農業保護を理由に補助金漬けにし、国内農業の競争力を奪ってきたのではないでしょうか。

 TPPによって国内農業が大打撃を受けるという理由で保護政策も行われますが、ガット・ウルグアイ・ラウンドの際に六兆円もの予算がつけられながら、対象事業が従来の延長線のままであったために、農業の国際競争力の強化には全く寄与しませんでした。再び同じ事態となることを危惧しています。

 今回のTPP対策予算は何が違うのか、齋藤農林水産大臣、お答え願います。

 チェックオフ制度について質問します。

 TPP対策として導入を検討されているチェックオフ制度ですが、国内にはない新たな取組であり、しかも、農業生産者から強制的に徴収する形で検討されており、心配の声も上がっております。具体的な事業効果についての評価体制や、生産者に対する公平性をどのように担保するのでしょうか。齋藤農林水産大臣、お答え願います。

 アジア太平洋自由貿易圏、FTAAPに向けた取組について質問いたします。

 安倍総理は、TPP11について、将来においてはRCEP、その後FTAAPへと進んでいくことが期待されるとしています。

 自由貿易体制の維持ということにおいては、貿易量の多い中国が自由貿易体制の基本であるWTOのルールを守らずに自国の輸出をふやしている問題があり、自由貿易を守らないことが自国にとって不利になることを中国にわからしめることが、TPP11の大きなポイントであると思います。その上で、RCEP、FTAAPへと、二十一世紀型の包括的かつ先進的な貿易ルールを広げていくことが重要であると考えます。

 十一月に行われたAPEC首脳会議の会期中に、経済統合や貿易ルールの議論をロシアが中国とともに主導したい思惑を表明しています。中ロを牽制しつつ、自由貿易の枠組みの中にどのように中国やロシアを引き込むのか。この点は非常に重要なことと考えますが、その手段についてどのようにお考えでしょうか。安倍総理大臣、お答え願います。

 私たち日本維新の会は、自由貿易の拡充を支持します。TPP11が自由貿易の拡充に寄与するかどうかは、これから先、参加各国が自由貿易から得られる優位性をいかに維持するかにかかってくると思います。国内農業への補助についても、単なる補助金にするのではなく、国際競争力を育て上げるものでなければなりません。

 その点を指摘した上で、私からの質問を終わりにいたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 森夏枝議員にお答えをいたします。

 TPP11の経済効果についてお尋ねがありました。

 TPP11の経済効果については、最終的に我が国のGDPを毎年八兆円押し上げ、四十六万人の雇用増につながるという大きな効果が見込まれています。

 効果発現の時期について、一概には言えませんが、日本の工業品輸出額の約九割の関税は即時撤廃されるなど、発効直後から大きな経済効果が見込まれると期待されています。

 政府としては、TPP協定の発効を視野に、農業者や中小・小規模事業者の皆さんの海外販路開拓や体質改善、商品開発などを支援し、経済効果ができる限り早期に発現されるよう、全力を挙げてまいります。

 セーフガードの発効基準についてお尋ねがありました。

 TPPは、八年間に及ぶ粘り強い交渉を経てつくり上げた協定であり、ゼロから再交渉を行う場合は、途方もない時間を要することとなります。

 他方、近年、世界で保護主義への懸念が高まる中、このアジア太平洋地域に自由で公正なルールに基づく経済圏をつくり上げるとの意思を世界に示すことは、自由貿易を推進する観点から画期的な意味があります。

 十一カ国全てがこうした思いを共有する中で、TPP交渉で生まれたモメンタムを維持すべく、御指摘のセーフガードなど、物品市場アクセスの内容を含めた協定の修正は行わず、米国が離脱したことに伴う一部のルールのみを凍結することで、早期合意を目指したものであります。

 ただし、米国を含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合等には、協定第六条において、締約国の要請に基づき、協定の見直しを行うと規定しています。

 この点、米国からの輸入量も念頭にTPP協定で合意された個別のセーフガードについては、第六条に基づく見直しの対象と考えています。こうした我が国の考えについては、閣僚会議の場も含め、繰り返し各国に明確に伝えており、これに対し各国からも特段の異論がなかったものであり、十分各国の理解を得ていると考えています。

 なお、TPPは、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げたハイスタンダードかつバランスのとれた、いわばガラス細工のような協定であり、一部のみを取り出して再交渉する、変えることは極めて困難であると考えています。いずれにしても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 アジア太平洋地域における自由貿易の推進についてお尋ねがありました。

 我が国は、自由貿易の旗手として、アジア太平洋地域における自由貿易推進の流れを確固たるものとするための取組をリードしていく決意です。

 我が国の主導でTPP11が合意に至ったことは、FTAAP実現に向けた大きな一歩であり、アジア太平洋地域での自由貿易推進に対する我が国の強いリーダーシップを示すものです。FTAAP実現へのもう一つの道筋であるRCEPについても、質の高い協定を早期に妥結できるよう、精力的に交渉を進めてまいります。同時に、APECにおいて、我が国は、FTAAPのための能力構築の取組も引き続き実施してまいります。

 我が国としては、中国やロシアを含むAPECメンバーと、引き続き、自由貿易の意義について率直な議論を深め、アジア太平洋地域における自由貿易の推進、そして質の高いFTAAPの実現のため、尽力してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 森議員の御質問にお答えをいたします。

 ガット・ウルグアイ・ラウンド対策とTPP対策予算の違いについてのお尋ねがございました。

 ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策は、担い手の規模拡大やコスト削減など、農業の体質強化に一定の効果を上げたものの、集落排水施設や温泉施設の整備など、農業の生産性向上や成長産業化には直接関係ない事業を対象としていたのも事実であります。

 一方、今般のTPP対策は、こうした経験を踏まえまして、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく攻めの農業への転換のための体質強化に必要な対策を集中的に措置しているところでございます。

 例えば、産地パワーアップ事業や畜産クラスター事業といった施設整備や機械の導入を支援する事業では、地域一丸となった戦略に基づいて、産地を支える担い手が中心となって行う収益力強化に直接資する取組を後押しすることといたしております。

 加えて、農業農村整備事業については、農業の体質強化に直結する生産基盤の整備、具体的には、意欲ある担い手への農地集積、集約化を加速し、生産コストを大幅に削減するための農地のさらなる大区画化などに特化して支援することとしております。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       外務大臣     河野 太郎君

       農林水産大臣   齋藤  健君

       国務大臣     茂木 敏充君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  西村 康稔君

       内閣府副大臣   越智 隆雄君


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