衆議院

メインへスキップ



第2号 平成30年10月29日(月曜日)

会議録本文へ
平成三十年十月二十九日(月曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二号

  平成三十年十月二十九日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


このページのトップに戻る

    午後一時四十七分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) この際、御紹介申し上げます。

 ただいまモンゴメリ・サンチェス・エクアドル共和国国会議員団団長御一行が外交官傍聴席にお見えになっておりますので、諸君とともに心から歓迎申し上げます。

    〔起立、拍手〕

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 立憲民主党代表の枝野幸男です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、総理の所信に対し質問いたします。(拍手)

 さきの通常国会の閉会後、大島議長は、今国会を振り返っての所感という談話を出されました。

 談話は、立法府と行政府の間の基本的な信任関係にかかわる問題や国政に対する国民の信頼にかかわる問題が数多く明らかになり、民主的な行政監視、国民の負託を受けた行政執行といった点から、民主主義の根幹を揺るがすとしています。その上で、森友問題をめぐる決裁文書の改ざん問題、裁量労働制に関する不適切なデータの提示、陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理を具体的に指摘し、立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、議院内閣制の基本的な前提を揺るがすとまで述べ、政府に対し、経緯、原因を早急に究明することと、再発の防止のための運用改善や制度構築を強く求めています。

 ところが、過日の所信演説では、議長談話について、そして、そこで指摘されている改ざん問題や文書管理について、何の言及もありませんでした。国権の最高機関とされている国会の議長が示した談話に何のコメントもないことには、強い憤りすら感じます。

 総理は、議院内閣制の前提を揺るがした最高責任者として、議長の御指摘にどう応えるのか。行政府の長として、この立法府の場において、責任を持って明確に御答弁ください。

 ことしは、大阪北部地震、西日本豪雨災害、台風二十一号、そして北海道胆振東部地震など、大きな自然災害が相次いでいます。改めて、亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた皆さんにお見舞いを申し上げます。

 ようやく、これら災害に対処するための補正予算が提出されました。北海道の地震から既に約二カ月、西日本の豪雨からは実に四カ月近く過ぎています。

 私たちは、それぞれの災害直後から、復旧に向けた補正予算を早期に編成するよう強く求め、通常国会閉会後は、臨時国会の召集を要求してきました。しかし、政府・与党はそのたびに、予備費がある、総裁選挙を行っているなどの理由で、補正予算の編成を先延ばしにしてきたのです。

 関係自治体には、補正予算の裏づけがないと、思い切った対策や計画を進めにくいという事情があります。この間の対応は遅きに失したものであり、被災地置き去りと言われても仕方ありません。

 補正予算の編成がおくれたことによって問題は生じていないと思っているのか、総理の認識を伺います。

 私は、先週、北海道の奥尻島を訪ねました。

 奥尻島は、一九九三年の北海道南西沖地震によって、百九十八名の人命が失われ、三百戸以上の家屋が全壊するなど甚大な被害を受けられました。それから二十五年が経過した今日、島は表面上、被害から立ち直っているようにも見えます。また、島の皆さんは、高齢化、人口減少が進む中、災害の記憶を胸に、地域が一体となって町おこしに取り組んでおられます。

 しかし、詳しく話をお聞きすると、国などからの予算措置があったとはいえ、この間の町の財政負担が膨大な規模に上り、防災拠点となるべき町役場を始め老朽化したインフラ整備の予算が確保できないなど、今なお災害の影響が大きく及んでいることがわかります。

 大災害が発生した直後は、世の中の注目や関心も高く、政治や行政、そしてボランティアなどの民間の対応も比較的多く行われているのに対し、復旧の段階から復興段階に移っていくにつれて、徐々に世の中の関心も薄れがちです。しかし、被災者や地域がもとの姿を取り戻すには本当に長い年月がかかることを改めて痛感いたしました。

 長期にわたる復興の取組を息長く支援していくことこそ、政治に携わる者の責任です。奥尻島や阪神・淡路大震災の被災地、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故、そして熊本地震など、常に被災地に寄り添い続けること、そして、ことしの相次ぐ自然災害に対しても息の長い支援を続けていくことを立憲民主党としてお約束するとともに、政府にもこうした姿勢を強く求めるものであります。

 この間、企業の内部留保が六年連続でふえ続け、二〇一七年度では過去最高の四百四十六兆円となりました。しかし、企業の稼ぎから働く人に回る労働分配率は、四十三年ぶりの最低水準となっています。金融緩和と円安によって大企業と輸出企業の業績は向上しているものの、六年たっても働く人たちに行き渡っていません。

 自民党総裁選挙において、総理は、企業に三%の賃上げを要請し、多くの企業が三%を引き受けてくれたと繰り返し発言しました。九月十六日のNHK討論番組では、ことしの春闘で一般企業については七割以上で三%の賃上げが行われたと一歩踏み込んだ説明をしておられます。

 しかし、企業の賃上げについて経団連が四月に公表した調査結果では、二%を超える企業が七六・三%と記載されており、三%以上で七六%の数字は見当たりません。連合の調査結果による賃上げ率は平均二・〇七%であり、厚生労働省の調査結果でも平均二・二六%です。総理の説明は、これらの実態と食い違っています。

 一般企業について七割以上で三%の賃上げという具体的な根拠について、総理の答弁を求めます。

 所信表明では、雇用情勢についても、就職率や有効求人倍率の改善を述べていましたが、同じ演説の中で、この五年間、生産年齢人口が四百五十万人減っていること、その中で女性の就業者がふえてきているとはいえ二百万人にとどまっていることも認めており、経済政策の成果ではなく、人口動態の変化こそ、雇用情勢が好転しているように見える主たる要因であります。

 このように、総理が、まやかしとも言ってよいような水増しされた成果を強調しても、多くの国民は、豊かさや経済成長、暮らし向きの改善を実感していません。都合のよい数字ばかりが並んでも、中身が伴っていない以上、多くの国民がこうした認識を持つことも当然だと思いますが、総理はこうした国民の実感についてどう考えているのか、見解を求めます。

 大企業や富裕層など強い者、豊かな者を更に強く豊かにすることで、社会全体を引っ張り上げる。そうすれば、いずれ豊かさが国民各層に滴り落ちる。こうした昭和の高度成長をもたらした上からの経済政策は、もはや時代おくれになっています。

 経済低迷の主たる原因は消費の低迷であり、その背景には、将来不安や、格差の拡大による、消費したくても消費できない貧困層の増加があります。

 私たちは、将来不安の解消に向けて、大きな需要がありながら低賃金で人手不足が慢性化している分野、象徴的には保育や介護などの分野における賃金底上げにこそ限られた財源を優先的に配分すること、そして、適切な所得再分配政策を推進することこそが新しい時代の経済政策だと一貫して主張しています。詳細は、本年七月二十日の本会議場における演説で申し上げましたので繰り返しませんが、今後の委員会審議などを通じて、この方向性に基づき、より具体的な論戦を挑んでまいります。

 政府は、来年十月に消費税率を現行の八%から一〇%に引き上げることを閣議決定しました。

 総理は、二年前、消費税率引上げを二年半延期すると表明した際、その理由について、世界経済が大きなリスクに直面していると述べています。

 そのリスクが小さくなったとは到底言えません。国内を見ても、賃金や内需の伸びはなお力強さを欠いています。足元では、日米ともに株価が急落するなど、過去の先送りを決めた時点と比べて、経済状況の見通しはより不透明になっています。

 私は、六年前、消費税引上げを決めた三党合意を構成する民主党の一員でした。しかし、その合意の前提は決定的に覆されています。

 一つは、その使い道です。

 その象徴が、保育所等の無償化に要する八千億円です。財源に余裕があれば、幼児教育の無償化を進めることに私たちも賛成です。しかし、逆進性の強い消費税を引き上げながら、高額所得者ほど恩恵が大きい保育所等の無償化を進めるというのは、到底理解できません。保育料は保護者の所得などによって既に違いが設けられており、低所得の場合には負担が免除されています。なぜ、無償化を急ぎ、より緊急性が高い待機児童解消に限られた財源を集中しないのでしょうか。

 もう一つは、格差の拡大と低所得者の増大です。

 この間、貯蓄ゼロ世帯の急増など、格差の拡大と固定化は確実に広がっていますが、総理には見たくない現実なのでしょう。逆進性対策をとったとしても、低所得者に大きな打撃を与える消費税引上げが可能な状況ではありません。

 しかも、政府は、消費税率引上げに伴い、高所得者も恩恵を受け、逆進性対策とはならない天下の愚策、軽減税率の実施を決めております。

 軽減税率となる対象品目の線引きは、なお難しいまま。中小企業者の準備も全く進んでいません。実施時の混乱は明らかです。そもそも、六千億円とも言われる恒久財源は全く確保されていません。

 これに加え、クレジットカードを利用したポイント制度やら、マイナンバーカードを利用した商品券の配付やら、さまざまな案が伝えられています。伝えられているのは、ばらまく手法ばかり。あきれて言葉もありません。

 町の魚屋で、八百屋で、肉屋でクレジット決済を利用する人など、どれだけいるのでしょうか。やむなく小規模商店が導入したとしても、導入費用やクレジット会社への手数料の転嫁が可能でしょうか。また、クレジットカードを持つには審査が必要ですから、低所得者を始め、持つことができない人がいます。結果的に、低所得者、小規模事業者、高齢者、地方経済を切り捨てるものです。クレジット決済利用率を向上させたい余り、消費税率引上げを利用しようとする姿勢は、ひきょうそのものです。

 所信表明で、引上げが経済に影響を及ぼさないよう、あらゆる施策を総動員するとおっしゃいましたが、本当にこんな愚策を考えているのか。ほかにどのような施策を検討しているのか、総理の答弁を求めます。

 総理は所信表明で、国の理想を語るものは憲法とおっしゃいました。しかし、憲法は、総理の理想を実現するための手段ではありません。憲法の本質は、理想を語るものでもありません。確かに、形式的意味の憲法に、理想を語っているとも読めるプログラム規定が含まれることはありますが、憲法の本質は、国民生活を守るために国家権力を縛ることこそにあります。

 総理の勘違いは今に始まったことではありませんが、ここでもう一度申し上げます。総理、憲法とは何か、一から学び直してください。

 国家権力の正当性の根拠は憲法にあり、あらゆる権力は憲法によって制約、拘束されるという立憲主義を守り回復することが、近代国家なら当然の前提であります。憲法に関する議論は、立憲主義をより深め、徹底する観点から進められなければなりません。

 憲法を改定することがあるとすれば、国民がその必要性を感じ、議論し、提案する、草の根からの民主主義のプロセスを踏まえて進められるべきであり、縛られる側の中心にいる総理大臣が先頭に立って旗を振るのは論外であります。

 議長の御指摘にもあるとおり、公文書は、健全な民主主義の根幹を支える国民全体の共有財産であり、国民が主体的に利用するものです。これは、公文書管理法の第一条に明記されています。その公文書を改ざんする行為は、民主主義を揺るがす重大な犯罪行為であり、国民に対する背信にほかなりません。

 政府は、内閣府の独立公文書管理監を局長級へ格上げするとともに、各府省における公文書管理状況のチェック体制を整備したなどと言っているようでありますが、深刻な改ざんの実態が明らかになったことへの対策としては全く不十分です。

 立憲民主党は、独立性と専門性を兼ね備えた、仮称公文書記録管理庁ともいうべきものを設置すべきと考え、議員立法に向けた作業を進めています。

 独立性と専門性が高く、強い権限を持った公文書管理機関の必要性について、総理の見解を伺います。

 安倍内閣は、農林水産業など一次産業分野においても、競争万能主義の考え方、余りにも早急で硬直的な効率化と大規模化の道筋を進んでいます。今国会では水産業改革が重要な論点となっていますが、漁業権に関する大きな変化が関係者に強い不安を与えており、特に沿岸漁業に著しい悪影響を与えるのではないかと指摘されています。

 競争力強化の観点から、一次産業においても効率化、大規模化を目指すべき部分があることについては、全面的に否定するものではありません。

 しかし、農林水産業の価値は、市場で評価される金銭的なものだけではありません。農山村や漁村、離島などで生活を営んでいくことは、伝統文化の継続や国土政策や安全保障の面でも重要です。安全、安心な食べ物を求める全国の消費者、すなわち全ての国民にとっての利益にもつながります。水や土地、緑や海などの自然環境を守る役割にはかけがえのない価値があります。

 一次産業に携わる皆さんが安心して地域社会で暮らしていくことができる、そんな社会を実現するために、競争のみに偏るのではなく、地域に寄り添う視点と施策こそが必要です。そのための第一歩として、私たちは農業者戸別所得補償制度の法制化を目指しています。農業者戸別所得補償制度の提案に対する総理の見解を求めます。

 中央省庁の障害者雇用水増し問題について、第三者による検証委員会が報告書を公表し、根本原因として意識の低さを指摘しました。障害者雇用のかじ取り役となるべき省庁の不正は言語道断ですが、残念ながら、総理の所信でこの問題に対する言及はありませんでした。

 水増し問題そのものは、私が閣僚であった時期を含め長期にわたり、私自身を含め、問題を把握できなかった、この間の政治全体の責任です。この点で、安倍総理だけの責任を問うつもりはありません。

 しかし、問題が明らかになった後の総理の対応には甚だ疑問があります。総理は、所信で触れる必要のない軽微な問題との認識なのでしょうか。具体的な再発防止策、特に中央省庁の意識改革に向けた具体策を含め、見解を求めます。

 今国会では、戦後初めて、単純労働分野での外国人を受入れ可能とする入管法改正案が提出予定とされています。これまで総理自身が否定してきた移民受入れ政策への転換とどう違うのか、明確な答弁を求めます。

 あわせて、問われるのは受入れ体制です。職場環境、日本語習得体制、住宅問題、社会保障など、本格的な受入れの前提となる整備は十分とは言えません。

 総理は、所信表明で、群馬におけるベトナム人青年の成功例を取り上げました。私も先日、北海道でベトナムなどからの技能実習生を受け入れている職場を訪ね、日本に来られた方も、受け入れた方も、ともに喜んでいる成功事例に接してきました。

 他方で、多くの在日ベトナム人の方がお参りする寺院に日本で亡くなったベトナム人青年の位牌が多数安置され、日本で働いたベトナムの青年が多く亡くなっている、自殺や突然死も多い、日本は働きやすいとは言えないと言われているという指摘もあります。見切り発車では、日本の人権レベルが国際社会から問われかねず、大きな禍根を残します。受入れ体制の整備に幾ら予算をつけて、具体的に何をするのか、明確な説明を求めます。

 企業のコンプライアンス、法令遵守の機能や姿勢が著しく低下し、消費者などに不利益が生じています。最近も免震オイルダンパーの件が問題になりました。この間、品質データの改ざんや新幹線台車問題など、社会の根底を揺るがしかねない問題が次々と起こっています。タイは頭から腐るという格言どおりの状況が、政治から企業社会にも広がっているように思います。

 特に、スルガ銀行の問題は、消費者保護と金融機関の信用という両面にかかわる重大問題です。

 十分な資産や投資経験のない方がスルガ銀行から多額の融資を受け、土地を購入してシェアハウスなど賃貸用建物の建築を行いました。しかし、家賃保証をしていたサブリース会社が経営破綻し、家賃収入が途絶え、シェアハウスの管理運営も担わなければならず、深刻な事態に陥っています。

 スルガ銀行が真摯に顧客に対応し、適切な融資判断を行っていれば、むちゃな投資には歯どめがかけられていたはずです。しかし、実際には、サブリース業者に融資の審査条件を漏えいし、偽造が行われていた書類も見て見ぬふりをし、疑念を唱える審査部もトップダウンで押さえつけ、融資がなされてきたのです。

 通常であれば、投資のリスクと負債は投資を行った人自身が背負う必要があります。しかし、投資を行うに当たって、判断に必要かつ適切な情報を与えられず、信頼する銀行にだまされてしまった方々にも同じような責任を問うのは、余りに過酷ではないでしょうか。国として適切な救済のあり方について検討すべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 また、これらをチェックできなかったばかりか、むしろスルガ銀行の経営を高く評価していたと言われても仕方がない金融庁の責任をどう考えるのかもお答えください。

 東京電力福島第一原発事故から七年以上が経過しました。安倍政権は、原発事故の教訓など忘れたかのように、原発ゼロ方針をほごにして、原発再稼働へと突き進んでいます。そこに、原発被災者の皆さんに寄り添う姿勢は全く見られません。

 私たちは、原発ゼロはリアリズムであり、原発ゼロを決断することこそが政治の責任であると考え、原発ゼロ基本法案を衆議院に提出しています。

 原発ゼロ基本法案は、本年三月九日に提出されましたが、私たちの強い要求にもかかわらず、全く審議されないまま通常国会は閉じられました。このほかにも、委員長提案を除き三十七本の議員立法を提出しましたが、そのほとんどが審議されていません。特に、原発ゼロ基本法案を所掌する経済産業委員会では、政府提出法案の処理が全て終了し、時間は十分にあったにもかかわらず、委員会の開催と法案審議が拒否され続けました。

 自民党は野党の審議拒否をさんざん非難しますが、時間がありながら議員立法を審議しないことこそ究極の審議拒否であります。この臨時国会こそ、原発ゼロ基本法案を始め、立憲民主党が提出した、あるいは野党が提出した議員立法について審議を行うよう強く求めるものであります。

 さきの北海道胆振東部地震では、北海道全体がブラックアウトするという異常事態が発生しました。大規模集中型電源構成の持つリスクが顕在化したものであり、再生可能エネルギーを中心とした小規模分散型の電源構成でリスクを下げることの重要性が改めて明確になりました。

 立憲民主党は、大規模集中型の電源構成から、エネルギーの地産地消、分散型エネルギーへの転換により、災害にも強く、地域でお金が回る仕組みへの転換をすべきであると考え、分散型エネルギー社会推進四法案を今国会に提出予定です。これらの法案についても、審議拒否することなく、しっかりと審議し、成立させていただければと思います。分散型エネルギー社会の重要性に対する総理の認識を伺います。

 九月の日米首脳会議において、物品貿易協定、TAGと称するものの交渉開始で合意したそうですが、本当はどのような合意であったのか、総理のその後の発言を聞いても、日米間の認識の違いなど、疑問点ばかりであります。

 総理が幾ら自由貿易協定、FTAとは異なると言い張っても、ペンス米国副大統領などがFTAと明言しているとも伝えられています。TAGはFTAと言いたくないための詭弁という指摘もあります。これらの指摘にどうお答えになるのか、お尋ねします。

 また、そもそもFTAとTAGはどう違うと考えておられるのか、日米共同声明の本文に基づいて、改めてきちっと御説明をお願いします。

 トランプ米国大統領が、INF、中距離核戦力全廃条約から離脱するとの方針を明らかにしました。核兵器廃絶の流れに全く逆行するものであり、唯一の戦争被爆国として見過ごすことはできません。

 総理は、このトランプ大統領の方針表明にどう考えるのか。米国の条約からの離脱を我が国は黙認、容認するつもりなのか、明確な答弁を求めます。

 昨年七月、国連で百二十二もの国と地域によって採択された核兵器禁止条約に、我が国は、棄権すらせず、反対という態度をとりました。核保有国と非保有国の対話を促すといいながら、その役割を十分に果たしているとは言えません。日本政府そして総理御自身の核兵器廃絶に向けた決意を根本から疑わざるを得ない状況です。

 総理には、被爆者の皆様もお持ちであろうこうした懸念を払拭するためにも、この場で改めて核廃絶への決意を語るよう求めます。

 さきの沖縄県知事選挙では、この本会議場で席をともにした玉城デニーさんが当選をしました。那覇市長選挙なども含め、この間の沖縄での数々の選挙結果が示したものは、沖縄のアイデンティティーがイデオロギーを超えて県民の幅広い支持を得たということにほかなりません。辺野古新基地建設のこれ以上の強行は認められないという沖縄の民意は明らかであります。

 安倍総理は、玉城知事就任後すぐに面会して、沖縄県民に寄り添うと言っておきながら、わずか五日後に、沖縄県による埋立承認撤回への対抗措置に出ました。片手で手を差し伸べながら片方で頬を張るようなやり方は、人の道に反するものであります。

 所信表明で、原敬の言葉を引き、常に民意の存するところを考察すべしと高らかに宣言した総理にお聞きします。

 沖縄が明確に示した民意は、あなたにとって民意ではないのですか。あなたにとって沖縄の民意とは、辺野古新基地の建設を強行してよいと聞こえているのですか。はっきりと説明をしてください。

 北東アジア情勢を俯瞰すると、南北、米朝、中朝などがハイレベルの会談を断続的に行っている中、我が国が蚊帳の外に置かれているという懸念を払拭できません。

 日朝首脳会談について意欲をお示しになるのは結構ですが、一向に事態が進展したとの話を聞きません。拉致問題も進展の気配はなく、大変憂慮しているのは私だけではないと思います。

 最後に、日朝首脳会談実現に向け、決意だけでなく、何が実現を妨げているかという現状認識を総理にお尋ねし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 枝野議員にお答えいたします。

 大島衆議院議長の談話における御指摘についてお尋ねがありました。

 さきの通常国会においては、決裁文書の改ざんなど、行政をめぐるさまざまな問題が明らかになり、国民の皆様の信頼を揺るがす事態となってしまったことに対し、行政府の長として大きな責任を痛感しております。

 衆議院議長からいただいた御指摘については、これを重く受けとめ、真摯な反省の上に、再発の防止に向けて全力を挙げていかなければならないと考えております。

 一連の公文書をめぐる問題については、本年七月、公文書管理の適正化に向けた総合的な施策を決定し、その施策を一つ一つ実行に移しているところであり、引き続き適正な公文書管理の徹底に万全を期していく所存です。

 行政府の長として、一層身を引き締めて政権運営に当たることにより、国民の皆様の信頼を取り戻してまいりたいと考えております。

 補正予算の編成のタイミングについてお尋ねがありました。

 まず、大阪北部地震、西日本豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震など、大規模な災害が相次いで発生しました。お亡くなりになられた方々と御遺族に対し深く哀悼の意を表しますとともに、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 政府としては、一連の災害に対し、関係自治体の復旧復興事業が進むよう、十分な予備費を活用して、発災後直ちにプッシュ型支援を実施するとともに、生活やなりわいの再建に向けた支援策の実施、激甚災害の指定などの対策を迅速に講じてきたところであります。こうした対策は、今般の災害への対応として十分なものであったと考えております。

 今回、一連の災害で生じた被害の状況や地域ごとの復旧復興の進捗等に応じて、必要な財政措置を講ずるため、平成三十年度補正予算案に九千三百五十六億円を計上しているところであり、早期の成立の御理解と御協力をお願いいたします。

 賃上げについてお尋ねがありました。

 賃上げについては、ことしの春闘のこれまでの結果を見ると、多くの企業で五年連続となるベースアップが行われ、その水準も昨年を上回っています。また、各種手当や賞与の増額など、工夫を凝らし、三%以上の賃上げを行う積極的な動きもありました。

 また、本年五月の経済財政諮問会議において、経団連会長から、経団連首脳企業で調査した結果、年収ベースで対前年比三%以上の引上げを行った企業が全体の七六%であったとの御紹介をいただいたことも踏まえて、申し上げたものであります。

 今後とも、成長と分配の好循環の実現に向けて、こうした力強い賃上げの流れが広く波及していくことを期待したいと思います。

 経済政策の国民の実感についてお尋ねがありました。

 アベノミクスの取組により、この五年間で、生産年齢人口が四百五十万人減る中でも、名目GDPは一二・二%増加し、過去最高となりました。景気回復により仕事の数が増加したことによって、正社員の有効求人倍率は、調査開始以来初めて一倍を超えました。さらに、賃上げは五年連続で今世紀に入って最も高い水準となるなど、確実に経済の好循環が生まれています。

 平成三十年の内閣府の調査によれば、現在の生活に満足と回答した方々の割合は七四・七%と過去最高となるなど、多くの方々に景気回復を実感していただいております。

 この好機を逃さず、少子高齢化が進む中にあっても、我が国経済が力強く成長し、国民一人一人に景気回復の波が広がっていくよう、あらゆる政策を総動員してまいります。

 消費税率の引上げに関する対策についてお尋ねがありました。

 来年十月に予定されている消費税率引上げに当たっては、前回の三%引上げの経験を生かし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応してまいります。

 具体的には、消費税率引上げ分の税収のうち半分を国民の皆様に還元します。子育て世代に大胆に投資し、来年十月一日から幼児教育を無償化します。軽減税率を導入し、家計消費の四分の一を占める飲食料品については、消費税を八%のまま据え置きます。引上げ後の一定期間に限り、中小小売業に対し、ポイント還元といった新たな手法による支援を行うなど、引上げ前後の消費を平準化するための十分な支援策を講じます。自動車や住宅といった大型耐久消費財について、来年十月一日以降の購入にメリットが出るように、税制、予算措置を講じてまいります。

 二〇一九年度、二〇二〇年度の当初予算について臨時特別の措置を講ずることとしており、その具体的な内容等については、各年度の予算編成過程において検討してまいります。

 公文書管理についてお尋ねがありました。

 政府としては、一連の公文書をめぐる問題を踏まえ、本年七月、文書管理の実務を根底から立て直すべく、公文書管理の適正化に向けた総合的な施策を決定したところです。

 現在、職員一人一人のコンプライアンス意識の向上のための研修の充実強化、独立公文書管理監及び内閣府に設置した公文書監察室による実効性のあるチェック、電子的な行政文書管理の充実、悪質な事案に対する免職を含む重い懲戒処分の明示など、決定した施策を一つ一つ実行に移しているところであり、引き続き適正な公文書管理の徹底に万全を期してまいります。

 御指摘の法案については、国会に提出された後に、その取扱いも含め、国会において御議論いただくものと考えております。

 農業者戸別所得補償制度についてお尋ねがありました。

 旧戸別所得補償制度については、全ての販売農家を対象に交付金を支払うものであったことから、担い手への農地の集積ペースをおくらせる面があったと考えています。

 さらに、十分な国境措置がある米について、交付金を交付することは、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたい等の課題がありました。

 このため、安倍内閣では、旧戸別所得補償制度は廃止し、農地集積バンクの創設や、需要のある麦、大豆、飼料用米の生産振興に、農地のフル活用など、前向きな政策を強化してまいりました。

 同時に、日本型直接支払制度を創設し、地域の共同活動への支援や、中山間地域に対する直接支払いなど、地域を元気にする施策を展開しています。

 安倍内閣では、引き続き、農林漁業者の皆様と真摯に向き合い、改革の成果も丁寧に説明しながら、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に向けた施策を強力に展開してまいります。

 国の行政機関における障害者雇用についてお尋ねがありました。

 障害のある方も含めて、誰もがその能力を存分に発揮できる一億総活躍社会をつくり上げることの重要性について、私はこれまでも繰り返し表明しており、先日の所信表明演説においても、その旨述べたところであります。

 今般、国の行政機関の多くで障害者の法定雇用率を達成していない状況が明らかとなり、検証委員会からは、障害者雇用を促進する姿勢に欠けていた等、大変厳しい指摘を受けました。

 このため、去る十月二十三日に開催された関係閣僚会議において、私から、各大臣は今回の事態を重く深く反省し、真摯に重く受けとめ、組織全体として、公務部門における障害者雇用に関する基本方針に基づき、再発防止にしっかりと取り組むよう、強く指示をしました。

 基本方針に基づき、再発防止はもとより、法定雇用率の速やかな達成と障害のある方が活躍できる場の拡大に向け、政府一体となって取り組んでまいります。

 外国人材の受入れ拡充と環境整備についてお尋ねがありました。

 政府としては、いわゆる移民政策をとることは考えておりません。例えば、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策をとることは考えておらず、今回の制度改正はこの方針に沿ったものであります。

 すなわち、新たな受入れ制度は、深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、真に必要な業種に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を期限を付して我が国に受け入れようとするものであります。

 受入れの環境整備については、現在、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策として、労働環境の改善、日本語教育の充実、住宅への入居支援、社会保障の加入促進などの取組の拡充や具体化に向けて検討を進めており、関連施策を推進してまいります。

 スルガ銀行の問題についてお尋ねがありました。

 スルガ銀行に対しては、シェアハウス向け融資等における関係書類の改ざんなどの問題が認められたところから、金融庁が先般十月五日に、一部の業務停止を含む業務改善命令を発出したところです。

 その中で、スルガ銀行が、返済条件の見直しなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うよう求めており、今後、金融庁においてしっかりとモニタリングしてまいります。

 また、顧客を保護し、法令等を遵守する業務運営が金融機関において確保されるよう、金融庁による検査監督の質を更に高めてまいります。

 災害時の電力供給体制、分散型エネルギーの重要性及び議員提出法案の審議についてお尋ねがありました。

 今回の北海道胆振東部地震におけるブラックアウトと同様な事象を繰り返さないため、現在、電力インフラの総点検を実施しております。十一月中に対策パッケージを取りまとめ、災害に強い電力供給体制を構築してまいります。

 こうした中、分散型エネルギーは、非常時にも活用できるエネルギー供給源を確保する点や地域活性化にも資する点から重要と考えます。

 政府としては、これまでも地産地消型エネルギーシステムの構築に対する支援などを行ってきておりますが、今後とも、自家発電設備や蓄電設備の整備を支援するなど、分散型エネルギーの普及を後押ししてまいります。

 その上で、議員提出法案の扱いについては、国会運営に係るものであり、国会がお決めになることであると考えております。

 日米物品貿易協定交渉についてお尋ねがありました。

 これまで我が国が結んできた包括的なFTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを、交渉を開始する段階から明確に目指してきました。

 しかし、今回の日米共同声明では、サービス全般の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的なFTAとは異なるものと考えています。

 他方で、私がこれまでFFR協議についてFTA交渉でもFTAの予備協議でもないと申し上げてきた最大の理由は、国内の農林漁業者の皆さんにTPP以上の関税引下げが行われるのではないかとの懸念があったためであり、農林水産業は必ず守り抜くとの思いから申し上げたものであります。

 そして、今回、日米共同声明において、農林水産物について、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意しました。この点が最大のポイントであり、この前提の上に今後米国と交渉を行い、我が国の基である農林水産業を必ず守り抜いていく決意であります。

 核兵器の廃絶についてお尋ねがありました。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取組をリードしていく使命を有しています。これは私の揺るぎない信念であり、我が国の確固たる方針であります。

 INF全廃条約については、我が国は、この条約が軍備管理・軍縮において歴史的に果たしてきた役割を重視しており、米国が主張するところのロシアによる深刻な条約違反を契機としてこの条約が終了せざるを得ないような状況は、望ましくないと考えています。

 我が国としては、地域の安全保障に与える影響も踏まえつつ、今後の米ロ間の動きを緊密にフォローし、米国としっかり連携しつつ、ロシアとも意思疎通を図っていきたいと考えています。

 核兵器禁止条約については、この条約が目指す核廃絶というゴールは我が国も共有しています。しかし、真に核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国が実際に核兵器を削減していくことが必要です。

 核兵器禁止条約は、安全保障の現実を踏まえることなく作成されたことから、残念ながら、核兵器国は一カ国として参加していません。一方、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しく、政府には国民の生命財産を守り抜いていく責任があります。

 現在、核軍縮をめぐっては、核兵器国と非核兵器国の間、さらに非核兵器国同士の間でも立場の違いが顕在化しています。唯一の戦争被爆国として、これらの国々の間の橋渡しを行い、双方の協力を通じて、核兵器のない世界に向けて一歩一歩近づいていくという現実的なアプローチをとっていくことが必要だと考えています。

 沖縄における選挙結果と普天間飛行場の移設についてお尋ねがありました。

 選挙の結果については、真摯に受けとめています。その上で、地方自治体の首長選挙の結果について、政府の立場で見解を述べることは差し控えたいと思います。

 住宅や学校で囲まれ、世界で一番危険とも言われている普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。これが大前提であり、政府と地元の皆様の共通認識であると思います。

 今後とも、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでまいります。

 抑止力を維持しながら、沖縄の皆様の心に寄り添い、基地負担の軽減に一つ一つ結果を出していくことが、皆さん、重要であります。私たちは、しっかりと結果を出していきたいと思います。

 日朝首脳会談についてお尋ねがありました。

 六月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。次は、私自身が金正恩委員長と向き合わなければなりません。

 最重要課題である拉致問題について、御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの決意で臨みます。

 北朝鮮には、豊富な資源があり、勤勉な労働力があります。北朝鮮が正しい道を歩むのであれば、明るい未来を描くことができます。相互不信の殻を破り、拉致、核、ミサイルの問題を解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。

 北朝鮮との間では、北京の大使館ルートなど、さまざまな手段を通じてやりとりを行ってきていますが、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、詳細について明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 稲田朋美君。

    〔稲田朋美君登壇〕

稲田朋美君 自由民主党の稲田朋美です。

 私は、自民党を代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説に対し質問いたします。(拍手)

 我が党は、立党以来、国民政党として、国民一人一人に真正面に向き合い、頑張った人が報われ、頑張ろうとして努力しても困難な人を皆が支える社会、人が人として尊重され、失敗しても、いつからでも、どこからでも、何回でもやり直せる社会を目指してきました。これは、前回の代表質問で二階幹事長が指摘された、国に命を吹き込む政治という言葉に象徴されており、私たち自民党が目指すべき政治の姿であります。

 安倍総理は、再チャレンジ、そして一億総活躍社会の実現を掲げ、保守の理念を政策分野においても実行されてきました。

 我が党が下野した際、党の再生をかけた真摯な議論を行い、常に進歩を目指す保守政党として新綱領を策定しました。立党以来守り続けてきた自由と民主の旗のもとに、伝統の上に創造を、秩序の中に進歩を求め、日本らしい保守主義を取り戻すべく再出発することを国民の皆様にお誓いしたのです。

 ことしは明治維新百五十年、明治の精神ともいうべき五カ条の御誓文は、松平春嶽、横井小楠、由利公正などによる改革の集大成ですが、広く会議を興し、万機公論に決すべし、更に歴史をさかのぼれば、聖徳太子の和をもってたっとしとなすという多数な意見の尊重と徹底した議論による決定という民主主義の基本は、我が国古来の伝統であり、敗戦後に連合国から教えられたものではありません。

 この臨時国会の場では、野党の皆様との議論はもちろんのこと、与党も、ただすべきはただし、決したことは責任を持って断固として行動するという精神を持って、国民の皆様の負託に応えてまいります。

 ことしに入ってから、三十七年ぶりの福井豪雪、大阪北部地震、平成三十年七月豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震、台風二十四号など、全国各地で数多くの激甚災害に見舞われ、三百名を超えるとうとい命を失い、莫大な経済的、社会的、文化的損失をこうむりました。

 これらの災害により亡くなられた方々に心からの哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 東北や熊本もいまだ復興の途上にあり、それぞれの被災地の生活や経済が一日も早く再建されるよう、政治の使命として復旧復興に全力を尽くすことをお誓いいたします。

 地球温暖化の進展により、短時間にかつてない豪雨や異常気象が多発し、首都直下型地震や南海トラフ地震などが発生する可能性も高まっています。

 このような大規模自然災害に対して、自民党は、ハード、ソフトの両面において、我が国を強くしなやかにするため、政府とともに、国土強靱化に取り組んでまいりました。例えば北陸新幹線は、本年の豪雪において道路、鉄道が麻痺している中も運行し、リダンダンシーの有用性を証明しました。

 内政の基本は、国民にとって安全、安心な社会をつくることであり、大災害から国土を守り抜き、国民の生命と生活を守ることなしに日本の未来はありません。

 緊急の復旧対応等に万全を期すとともに、国土強靱化を加速するため、必要な予算確保を含めて、総理はどのように取組を進めるのか、伺います。

 次に、外交、安全保障について伺います。

 去る十月二十三日、政府主催の明治百五十年記念式典が開催されました。明治以降の百五十年は、欧米から学び、欧米と戦い、欧米と協力して自由世界を築いてきた百五十年であったと思います。

 自民党は、今後百五十年の日本にも責任を持ち、真の保守政党として、我が国及び世界の平和と繁栄に尽力する決意です。

 世界はますます複雑な情勢に直面しており、法の支配、人権の尊重、民主主義等を基本的価値とする国際秩序に対する挑戦はふえています。力による現状変更を排し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を広げていくことが必要であり、そのための戦略的な外交と安全保障政策の策定が求められています。

 安倍内閣は着実に外交の成果を上げ、国際会議の場では安倍総理と話そうとする各国首脳が列をつくる状況も見られ、この六年間で世界における日本のプレゼンスは格段に向上しました。総理の掲げる秩序による平和と繁栄の理念は、確実に世界に広がっているのです。

 こうした中で、あえて懸念を指摘するとすれば、同盟国米国の動向です。トランプ大統領は、これまでの米国大統領とは異なるアメリカ・ファーストという世界観を有し、従前の米国外交の延長線上では予測困難な言動も見られます。

 総理はこれまでのところ、世界の指導者の中で、トランプ大統領との個人的信頼関係の構築に最も成功しておられますが、今後、トランプ政権との間でどのように同盟強化を図られるのか、米国が朝鮮半島を含む東アジアでのプレゼンスを弱める懸念はないでしょうか。また、日米物品貿易協定、TAGをFTAとどのように差別化するのか、総理のお考えを伺います。

 日中関係についてお尋ねします。

 日本と中国とは、地域の平和と安定と繁栄に大きな責任を有する特別な二国間関係です。ことしは日中平和友好条約四十周年の節目の年。大局的な観点から友好関係を安定的に発展させる必要があります。

 一方で、みずからの軍事力、経済力を背景に国際社会の秩序を変えようとするかのような中国の行動に対し、多くの国々が懸念しています。

 そんな中で、自民党は、日中関係の改善に最善を尽くしてきました。

 例えば昨年五月、一帯一路国際協力ハイレベルフォーラムが開かれましたが、政府からは閣僚が一人も参加できない中、我が党の二階幹事長が出席されました。その際、習近平主席は、外国首脳以外では極めて例外的に個別会見を行い、日本重視の姿勢を強く示しました。さらに、中国共産党と与党間交流は、二〇〇六年に第一回会合を開催して以来、着実に回数を重ね、今月、北海道と東京で通算八回目を開催することができました。

 政府と連携しながらも、党独自の外交が大きな契機となり、さらには、政府と党を挙げての外交努力が現在の日中関係の改善の流れにつながっています。

 今回の総理の訪中は約七年ぶりの公式訪問であり、北朝鮮問題についての緊密な連携の確認、インフラを含めた第三国協力、青少年交流イニシアチブの打ち上げなどの成果が上がったと聞いております。

 訪中の具体的成果について、そして、習近平国家主席の訪日を含め、今後の日中関係にどのような戦略で臨んでいくのか、総理のお考えを伺います。

 朝鮮半島の問題は、北東アジア全体の安全保障の問題でもあります。史上初の米朝首脳会談が開催されましたが、北朝鮮の核廃棄の見通しは立たず、日本海を隔てたすぐそこに、我が国を射程に入れた数百発もの弾道ミサイルをいつでもどこでも発射できる状況が存在することに何ら変わりはありません。

 北朝鮮の核、ミサイル、そして我が国の主権侵害であり最重要課題である拉致問題の解決に向けて、日本としても主体的に対応していく必要があります。

 韓国に目を転じると、先般の韓国海軍の国際観艦式で、海上自衛隊の護衛艦が自衛艦旗を掲げないように求められるという事態が起きました。この自衛艦旗の掲揚は我が国の法令上の義務であること等から、遺憾ながら国際観艦式への参加を見送りました。しかし、結果として、軍艦旗を持つ他国の艦船は全て軍艦旗を掲げていました。しかも、あろうことか、主催国の韓国海軍の艦船には、秀吉朝鮮出兵時の李舜臣将軍を象徴する旗が掲げられていたのです。

 さらに、あす、韓国の大法院は徴用工の問題で判決を下します。日韓両国の基本的関係を規定した条約に反する内容になることが強く懸念されますが、これは国際法の正義にもとるものです。

 また、去る二十二日には、我が国固有の領土であり、韓国が不法占拠を続ける竹島に韓国国会議員十三名が上陸しました。

 これら韓国の対応は、先月、日韓首脳会談において、日韓パートナーシップ宣言二十周年を契機に、改めて日韓関係を未来志向で発展させていくことを確認した姿勢と明確に矛盾するものであり、強く抗議しなければなりません。

 こうした朝鮮半島の動きにどのように取り組んでいくのか、総理の見解を伺います。

 ロシアは、日本にとって戦略的に重要な隣国です。

 安倍総理は、プーチン大統領との個人的な信頼関係に基づいて、日ロ関係を力強く牽引してこられました。

 我が党の党外交としても、ことし四月、ロシアを訪問し、党として、メドベージェフ首相らに対し、両国の交流促進の必要性を訴えました。そして、先日、自民党観光立国調査会の訪ロが実現しました。

 日ロ関係のさらなる発展のためには、議員交流を含む日ロ間の人的交流の促進が重要です。

 一方で、ロシアからは、領土問題を先送りして、年内に平和条約を締結しようではないかという声も聞こえています。

 北方領土四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これが日本の基本的立場であると考えますが、プーチン大統領との交渉に臨まれる総理の決意を伺います。

 次に、安全保障についてお伺いいたします。

 年末までに防衛計画の大綱を見直し、防衛力を抜本的に強化すると安倍総理は明言されました。

 まず認識すべきは、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることです。世界の超大国である米国と、それを追う中国を始めとする新興国のパワーバランスの変化が加速しています。それに拍車をかけているのが、サイバー、宇宙などの新たな領域の活用と人工知能などの最先端技術です。そして、これらを使用することで、防衛の質も大きく変わってきています。

 党の綱領では、「日本の主権は自らの努力により護る。」と明記されていますが、今こそ、自分の国は自分で守る気概を持つべきです。

 なぜ今、防衛力を抜本的に強化する必要があるのか、防衛計画の大綱見直しに向けての総理の決意を伺います。

 次に、岩屋防衛大臣に、大綱の見直しに当たり重視すべき次の二点について伺います。

 第一に、我が国の平和と安全を守るため、平素から、外交と防衛が一体となって、日本にとって望ましい安定した安全保障環境をつくり出すことが重要になっているのではないかという点についての見解を伺います。

 第二に、防衛費拡充の前提は、防衛省内における自助努力として、組織、装備品の最適化、研究開発、防衛調達の合理化を最大限まで追求することと考えますが、大臣の見解を伺います。

 さて、日本が、IWC、国際捕鯨委員会の商業捕鯨モラトリアムを受け入れ、商業捕鯨を停止してから三十年がたちました。この間、政府は商業捕鯨モラトリアム解除に向け交渉してきましたが、残念ながら、本年九月のブラジルでの総会で、IWCは、科学的根拠に基づいた日本の提案を、具体的根拠を示すことなく拒否しました。

 商業捕鯨の再開に向けた取組について、総理の決意を聞かせてください。

 近年、海洋プラスチックごみによる生物や生態系、漁業や観光への影響が世界じゅうで懸念されています。安倍総理は、来年六月大阪で行われるG20でこの問題を取り上げることを表明されました。

 自民党は、党の会議で使用する年間二万二千本のプラスチックストローを廃止しましたが、今後、他党や政府、企業等に意識の転換を促し、循環型社会に向けた動きを加速させなければなりません。

 海洋プラスチックごみに関する国際的な議論をどのようにリードするのか、総理のお考えを伺います。

 次に、アベノミクス重要課題であります地方創生について伺います。

 地方創生に重点を置いて、アベノミクスを進めることで日本全体の経済を再生させなければなりません。私は、地方創生を成功させ、飛躍させるキーワードは、組む、すなわちコラボレーションであると考えます。

 私の地元の例ですが、ある企業では、伝統的な繊維産業の高度な技術を最先端の炭素繊維材料づくりに応用し、世界初の航空機エンジンの炭素繊維製部品の開発に成功しました。

 また、曹洞宗大本山永平寺は、福井県、永平寺町、企業と組み、昔の参道の修復や再開発、民間の知恵と発想を生かした宿坊をつくることなどで、インバウンド誘引の強力なコンテンツとなっています。

 さまざまな主体が新たな分野に臆せず挑戦することで化学変化が生じ、課題の解決に結びついたり、思いも寄らないイノベーションが生まれたりするのです。中央によるばらまきのような上から目線ではなく、現場のニーズに根差した意欲あるチャレンジを政府がしっかりと応援していくことが重要です。

 真の地方創生に向けた総理のお考えを伺います。

 農業は国の基です。稲作は日本文化の原点であり、水田は日本の美の象徴であり、お米は日本人の主食です。農業を守ることが日本を守ることであります。

 しかしながら、農業従事者の減少や高齢化を始め、今日の農業は多くの課題に直面しています。農業政策は、かつて、基盤整備予算を大幅に削減し、戸別補償によるばらまきを行い、真の改革が停滞しました。

 政権交代後、自民党は、必要な基盤を着実に整備するとともに、さまざまな改革を進めてきました。その結果、若い新規就農者が増加するなど、改革の成果が実を結びつつあります。

 諸外国で日本の食は高く評価されており、大きなチャンスが広がっています。人工知能やドローンを始め、他分野での革新的な技術を農業分野に応用する動きが広がっており、さまざまなイノベーションが起きる環境も整ってきています。

 さらに、安倍総理の指揮のもと、米政策の見直しに向けた取組が進められてきました。各地において主体的に作付を判断し、取り組んだ結果、米価はこの四年で一俵当たり四千円近く評価を上げるなど、成果もあらわれています。

 今後とも、これまでの施策の定着を図り、改革を進めていく中で、農業者の所得の確保に努めていくことが重要です。

 また、我が国の食料自給率は先進国で最低ですが、世界的な異常気象の頻発や人口増加により、食料確保が更に難しくなるおそれがあります。食料確保は安全保障でもあります。

 食料確保の観点も踏まえつつ、農業を成長産業にするための政策、いかにして日本の農業を守り、発展させるのか、総理の見解を伺います。

 政府は、新たな外国人在留資格制度を設けるため、入管法の改正等を準備していますが、これはなし崩し的な移民政策につながるのではないかとの指摘もあります。

 一定の専門性、技能を有する外国人の受入れを拡充することは、地方創生の足かせになりかねない人手不足の解消に寄与すると期待する地方及び業界団体の要望もある一方で、例えば、治安、雇用、社会保障等への影響など、懸念もあります。

 これらの不安、懸念をどのように払拭されるのか、総理のお考えを伺います。

 我が国の財政や社会保障の将来を考えたとき、社会保障において、これまで支えられる側だった高齢者の増加はもとより、支え手である現役世代の減少は大きな問題です。

 高齢者の増加は、いずれ二〇五〇年ごろには頭打ちを迎えると言われていますが、支え手である現役世代の減少は、このままでは歯どめがかかりません。世界に冠たる我が国の社会保障制度を維持し、全世代型社会保障制度に発展させていくには、元気で活躍できる高齢者に支え手の側に回ってもらうといった視点での改革が不可欠と考えます。

 総理は、全ての世代が安心できる社会保障制度に向けて、三年かけて大改革を行いたいとおっしゃられています。その具体的な方向性についてのお考えを伺います。

 現行憲法は、占領下に制定されました。法治国家の基本法たる憲法が、主権が制限されていた時代につくられたことは、厳然たる事実です。一方で、現行憲法のもとで、戦後の平和で豊かな日本が築かれてきました。

 我が党は、憲法の自主的改正を党是とする改憲政党です。総理は、自民党総裁として、憲法改正を歴史的チャレンジと位置づけ、憲法九条改正の方向性も示されました。

 憲法九条については、二項を維持することによって、集団的自衛権はフルサイズでは認めないが、自衛隊を明記することによって自衛隊違憲論に終止符を打つということだと理解しています。

 私も防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温五十度を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は、現地の人々から、世界から称賛されていました。自衛隊の、現地の方々に寄り添った、誠実で丁寧で親切な活動は、まさに日本らしいものとして誇りに感じます。災害において、みずからの危険を顧みず救助、復興作業に当たっているのも自衛隊の皆さんです。

 自衛隊を誰からも憲法違反などとは言わせない、そのためにも憲法改正は急務だと思いますが、総理の御所見を伺います。

 冒頭申し上げました自民党の新綱領では、他への尊重と寛容をうたっております。これは保守政党の基本であり、寛容で多様性のある社会をつくらなければなりません。私たちは、党内外で議論を徹底して行い、多様な意見の存在を尊重しつつ、国民のために最善の選択を行い、実行していく責務を有しています。

 この選択と実行のため、果断な決定が必要です。民主主義の原理に立ち、徹底した議論を経て、最後は多数決で決める。しかし、多数決は、少数であったり、声を上げたくても上げられない人々の意見を十分にすくい上げることが難しいという側面もあります。であるからこそ、私たち政治家一人一人がさまざまな国民の皆様の声を聞き、政治に生かしていかなければなりません。

 昨今、女性、障害者、LGBTなど、社会的にマイノリティーとされる方々に対する国民の関心が高まっており、社会の多様性の確保が重要な課題となっています。

 また、これらは何よりも人権にかかわる問題であり、世界から尊敬される道義大国を目指すため、そして希望にあふれた社会をつくるため、与野党の垣根なく、政治家として取り組むべき最も基本的な課題です。

 安倍総理が、今日の世界の首脳の中で、また日本の憲政史上においてもトップクラスのリーダーシップを発揮されていることは、紛れもない事実です。他方、世界に目を転じれば、白か黒かという二分法的な考え方が目立ち、各国の社会にさまざまな分断を生じさせていることを私は大変憂慮しています。

 我が国は、寛容な保守の思想を国民が広く共有してきた、歴史ある民主主義国家です。我が国における多様性の尊重はますます重要となってきています。

 安倍総理におかれては、新時代にふさわしい新たな保守の国家像を世界に示すべく、国づくりの先頭に立っていただきたいと考えますが、最後に総理の決意のほどを伺い、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 稲田朋美議員にお答えをいたします。

 国土強靱化の取組についてお尋ねがありました。

 この夏、大阪北部地震、西日本豪雨、台風二十一号、北海道胆振東部地震など、大規模な災害が相次いで発生しました。私自身、被災現場を視察し、自然災害の猛威を改めて実感しました。

 災害から人命、財産を守るため、防災・減災、国土強靱化は喫緊の課題であると痛感しています。

 政府としては、一連の災害に対し、関係自治体の復旧復興事業が進むよう、十分な予備費を活用して、発災後直ちにプッシュ型支援を実施するとともに、生活やなりわいの再建に向けた支援策の実施、激甚災害の指定などの対策を迅速に講じてきたところです。

 また、一連の災害の被災地の復旧復興を更に加速し、ブロック塀改修等に対応するため、平成三十年度補正予算案に九千三百五十六億円を計上しているところであり、早期の成立の御理解と御協力をお願いいたします。

 今後は、現在進めているインフラの総点検の結果を始め、これまでの災害を通じて培ってきた経験や教訓を踏まえ、国土強靱化基本計画を年内に見直すとともに、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策を年内に取りまとめ、三年間集中で実施するなど、必要な予算を確保した上で、強靱なふるさと、誰もが安心して暮らすことができるふるさとをつくり上げてまいります。

 日米同盟の強化及び日米物品貿易協定についてお尋ねがありました。

 米国は、日本が攻撃を受けた場合、日本と共同対処することを条約上の義務として約束している唯一の同盟国です。私は、トランプ大統領の就任以降、首脳会談や電話会談を合わせ三十回以上に及ぶ会談を通じて個人的信頼関係を築いており、日米同盟はかつてないほど盤石であります。

 引き続き、朝鮮半島を含む東アジアにおける米国のプレゼンスを確保しつつ、平和安全法制に基づく取組等を通じて日米同盟の強化を図るとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け協力し、地域や世界の平和と繁栄に貢献してまいります。

 これまで我が国が結んできた包括的なFTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを、交渉を開始する段階から明確に目指してきました。

 しかし、今回の日米共同声明では、サービス全般の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的なFTAとは異なるものであると考えています。

 他方、FTAについて国際的に確立した定義が存在しないことも事実であるため、言葉遣いの問題として、今回の交渉について、FTAの一種ではないかとの御意見があることは承知しています。

 そうした中で、私がこれまでFFR協議についてFTA交渉でもFTAの予備協議でもないと申し上げてきた最大の理由は、国内の農林漁業者の皆さんにTPP以上の関税引下げが行われるのではないかとの懸念があったためであり、農林水産業は必ず守り抜くとの思いから申し上げてきたものであります。

 そして、今回、日米共同声明において、農林水産物については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意いたしました。この点が最大のポイントであり、この前提の上に今後米国と交渉を行い、我が国の基である農林水産業を必ずや守り抜く決意であります。

 日中関係についてお尋ねがありました。

 今回の私の訪中は、日中平和友好条約の締結四十周年という節目の年に日本の総理大臣として七年ぶりの公式訪問となり、習近平主席や李克強総理との間で、長い時間をかけて大変率直で有意義な会談を行うことができました。

 国際スタンダードの上に、競争から協調へ。隣国同士として、互いに脅威とならない。そして、自由で公正な貿易体制を発展させていく。習近平主席、李克強総理と、これからの日中関係の道しるべとなる三つの原則を確認しました。そして、この原則の上に、ともに世界の平和と繁栄に建設的な役割を果たしていくことで一致しました。

 隣国ゆえにさまざまな課題はありますが、大局的な観点から首脳同士が率直に語り合うことでそうした課題もマネージしていく。日中関係の新しい時代を開く訪中となったと思います。

 具体的な成果としては、朝鮮半島の非核化に向けて引き続き緊密に連携することを確認したこと、国際スタンダードに合致し、第三国の利益となるウイン・ウイン・ウインの企業間協力を推進することで一致し、日中の企業間で五十二の覚書が交わされたこと、青少年交流を推進するため、五年間で三万人規模の交流を実施することで一致したこと、イノベーション及び知的財産分野に関する新たな対話の創設で合意したこと、日中海上捜索救助協定に署名したことなど、幅広い分野で数多くの具体的な成果が上がりました。

 五月の李克強総理の訪日、今回の私の訪中、そしてその次は習近平主席を日本にお招きし、首脳同士の相互訪問を通じて、あらゆる分野の交流、協力を推し進め、日中関係の新しい時代を切り開いてまいります。

 北朝鮮問題については、六月の歴史的な米朝首脳会談によって、北朝鮮をめぐる情勢は大きく動き出しています。この流れにさらなる弾みをつけ、日米、日米韓の結束のもと、国際社会と連携しながら、朝鮮半島の完全な非核化を目指します。

 次は、私自身が金正恩委員長と向き合わなければなりません。最重要課題である拉致問題について、御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃さないとの決意で臨みます。相互不信の殻を破り、拉致、核、ミサイルの問題を解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指してまいります。

 日韓関係については、九月の国連総会の際の文在寅大統領との会談を始めさまざまな機会に、本年が日韓パートナーシップ宣言二十周年であることを踏まえ、未来志向の日韓関係構築に向けて協力していくことを累次確認してきているにもかかわらず、御指摘の韓国主催国際観艦式における自衛艦旗掲揚の問題、そして韓国国会議員の竹島上陸等、それに逆行するような動きが続いていることは遺憾です。

 政府としては、日韓間の困難な問題に適切に対応しつつ、未来志向の日韓関係構築に向け引き続き努力していく考えであり、韓国側の適切な対応を強く期待しています。

 日ロ関係についてお尋ねがありました。

 日ロ間の活発な議員交流は、日ロ関係のさらなる発展のために大変重要であり、四月に二階自由民主党幹事長がロシアを訪問し、メドベージェフ首相と会談したことや、先日の観光立国調査会によるロシア訪問等、活発な党外交の展開に敬意を表します。

 政府としても、人的交流の促進は重要と考えており、ロシアにおける日本年、日本におけるロシア年の相互開催などを通じ、人的交流の促進を積極的に推進してまいります。

 北方領土の問題については、これまで二十二回にわたりプーチン大統領と首脳会談を行い、二人だけで相当突っ込んだ議論をしてきました。北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉を進めてまいります。

 防衛力の抜本的強化の必要性と、防衛大綱の見直しに向けた決意についてお尋ねがありました。

 政府の最も重要な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすることであり、安全保障政策の根幹となるのは我が国みずからの努力です。

 今、国際社会のパワーバランスは大きく変化しつつあり、我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで不確実性を増し、厳しいものとなっています。

 このような中、大切なことは、国民の生命財産、そして領土、領海、領空は我が国の主体的、自主的な努力によって守る体制を抜本的に強化していくことです。同時に、これこそが日米同盟の抑止力、対処力を一層強化するものであり、各国との安全保障協力のさらなる深化にもつながるものです。

 防衛大綱の見直しに当たっては、現実に真正面から向き合い、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保することが不可欠であると考えています。専守防衛は当然の前提としながら、これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる、防衛力のあるべき姿を追求してまいります。

 商業捕鯨の再開についてお尋ねがありました。

 IWC、国際捕鯨委員会では、捕鯨を支持する国と反捕鯨国とが対立し、二十年以上にわたり、実質的に資源管理に関する決定がなされていません。

 この状況を打開するため、本年のIWC総会において、我が国は、捕鯨に対する立場の違いを超えて、IWCの機能回復を目指す改革案を提出しましたが、反捕鯨国の反対で否決されました。捕鯨国に対する異なる意見や立場が共存する可能性すら否定されたことは、極めて遺憾であります。

 政府としては、国際法に従い、科学的根拠に基づく資源管理を徹底しつつ、商業捕鯨を再開することを目指すという方針に変わりはありません。一日も早い商業捕鯨の再開のため、あらゆる可能性を追求していく決意です。

 海洋プラスチックごみについてお尋ねがありました。

 海洋プラスチックごみによる汚染は、生態系などへの悪影響も懸念される地球規模の課題であり、人類の責任として防止していかなければならないとかたく決意しています。そして、そのためには、G7のような先進国のみならず、プラスチックごみを多く排出する途上国も含めた世界全体での取組が不可欠です。

 我が国は、スリーRの考え方に基づき、国内の法制度を整え、技術を磨き、循環型社会を築いてきました。

 まず、我が国としては、今後策定するプラスチック資源循環戦略では、限られた資源を最大限有効利用するための総合的かつ先進的な対策を盛り込み、プラスチックごみ対策に一層積極的に取り組む考えです。

 同時に、重要なことは、我が国のこのような経験と技術をアジアの近隣国を始め世界各国と共有し、世界全体の取組へとつなげていくことであると考えます。

 来年のG20大阪サミットも見据えながら、廃棄物処理インフラの導入支援など実効性のある国際協力を推進し、海洋の汚染防止という目的の実現に向けた国際的取組を主導してまいります。

 地方創生についてお尋ねがありました。

 日本の地方には、それぞれ豊かな自然、特色がある。ふるさと名物、地場企業のオンリーワンの技術力、固有の歴史、文化、伝統など、さまざまな強みがあります。その地方ならではの強み、魅力を生かし、全国、さらには世界を目指すことで、地域が活性化するとともに、日本全体の成長につながるものと考えます。

 全ての地方が金太郎あめのように同じことをするのではなく、それぞれの地方の強みを生かす発想が、安倍内閣の地方創生であります。

 そして、みずからの魅力や強みを一番わかっているのは、その地方におられる皆さんです。政府として、そうした地方の皆さんの情熱、独自の創意工夫を、一千億円の地方創生推進交付金などにより後押ししてまいります。

 さらに、これまでも地域おこし協力隊の拡充などに取り組んでまいりましたが、今後、地方にこそチャンスがあると感じる若者のUIJターンを力強く支援していく考えです。外国から来た新しい発想を持つ人々と地域におられる皆さんとの融合を通じて化学反応を起こし、地方に新しい活力と次なる成長の可能性を生み出していくことで、地方創生にさらなる弾みを加えてまいります。

 農業の成長産業化についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農業を成長産業化させ、農業の所得向上を実現するため、米の生産調整の見直しや輸出促進など、農政全般にわたる抜本的な改革を進めてまいりました。

 これにより、農林水産物の輸出は五年連続で過去最高を更新し、昨年は八千億円を超え、四十代以下の若手新規就農者も、統計開始以来、初めて四年連続で二万人を超えました。また、生産農業所得も、この十八年間で最も高い、三兆八千億円まで拡大するなど、着実に成果があらわれ始めています。

 こうした農政改革に加え、農業の生産性を飛躍的に高める先端技術の開発や現場での活用を強力に進めるなど、新たな課題にも挑戦してまいります。

 安倍内閣では、引き続き、農政全般にわたって改革を力強く進めます。農業の成長産業化を実現し、食料の安定供給の機能を強化することで、食料安全保障の確立を図りつつ、若者が夢や希望を持てる農林水産新時代を構築してまいります。

 外国人材の受入れ拡充についてお尋ねがありました。

 新たな受入れ制度は、深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を我が国に受け入れようとするものです。

 制度の運用に当たっては、できる限り客観的な指標により人手不足の状況を確認し、真に必要な業種に限り、外国人材の受入れを行うこととしております。

 また、現在、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の検討を進め、在留のための環境整備についても関連施策を積極的に推進するとともに、不法滞在者、偽装滞在者対策を含む犯罪防止の取組も的確に進めてまいります。

 体制面においても、出入国在留管理庁を新たに設置し、管理体制を抜本的に強化し、国民の皆様に不安や懸念を与えることがないよう、政府全体として適切に取り組んでまいります。

 言うまでもなく、安倍政権として、いわゆる移民政策をとる考えはありません。

 全世代型社会保障制度の具体的な方向性についてお尋ねがありました。

 少子高齢化が急速に進む中で、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠であります。

 まず、消費税の使い道を見直し、子供たち、子育て世代に大胆に投資します。二兆円規模の予算により、来年十月から幼児教育無償化を行うとともに、再来年四月から真に必要な子供たちへの高等教育の無償化をいたします。

 同時に、人生百年時代の到来を見据えながら、元気で意欲あふれる高齢者の皆さんが、年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境を整えることが必要です。既に、未来投資会議において、七十歳までの就業機会の確保や、中途採用、キャリア採用などの拡大、生涯現役時代の雇用制度改革に向けた検討を開始しており、来年の夏までに実行計画を決定する考えです。

 その上で、生涯現役社会を前提に、予防、健康へのインセンティブ措置の強化や、年金の受給開始年齢を自分で選択できる範囲を広げるなど、医療、年金も含めた社会保障全般にわたる改革を行う考えです。こうしたシステム全般にわたる改革を進める中で、給付と負担のバランスについてもしっかりと検討してまいります。

 今後三年かけて、子供から若者、子育て世代、現役世代、高齢者まで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めてまいります。

 自衛隊と憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、お尋ねですので、あえて、私が自民党総裁として一石を投じた考えの一端を申し上げたいと思います。

 今や、国民の九割は、敬意を持って自衛隊を認めています。六十年を超える歩みの中で、自衛隊の存在は、かつては厳しい目で見られていたときもありました。それでも自衛隊の諸君は、隊員諸君は、歯を食いしばり、職責を全うしてきました。まさに、自衛隊諸君は、みずからの手で国民の信頼をかち得たのであります。

 それにもかかわらず、近年における調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は二割にとどまり、多くの教科書に合憲性に議論がある旨の記述があります。

 このような状況に終止符を打ち、全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、今を生きる政治家の責任であります。

 同時に、国民のため命を賭して任務を遂行する隊員諸君の正当性を明文化し、明確化することは、国防の根幹にかかわることであります。

 いずれにせよ、憲法改正は、国会が発議し、最終的には国民投票により決められるものです。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ね、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています。

 社会の多様性の尊重についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、女性、障害者や、LGBTと言われる性的少数者などに対する不当な差別や偏見はあってはならないことであります。

 多様性が尊重され、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、そして、支え合い、誰もが生き生きとした人生を享受できる共生社会を実現するため、教育や啓発の充実、適切な相談対応、人権侵害の疑いのある事案への迅速な救済等にしっかりと取り組んでまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 稲田議員にお答えいたします。

 まず、防衛計画の大綱の見直しに関して、日本にとって望ましい安全保障環境についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、我が国の平和と安定のためには、平素から、我が国にとって望ましい国際秩序や安全保障環境を創出することが極めて重要であります。

 大綱の見直しにおいても、諸外国との防衛協力を積極的かつ戦略的に推進するなど、外交努力と相まって、防衛省・自衛隊としても、望ましい安定した安全保障環境を創出することを一層重視してまいります。

 次に、防衛費拡充の前提となる自助努力についてお尋ねがありました。

 現在の厳しい安全保障環境を踏まえ、我が国の防衛力を大幅に強化することが不可欠であると考えておりますが、同時に、防衛力整備に際しては、一層の効率化、合理化に努めていくことが必要であると考えております。

 このため、自衛隊の装備体系の最適化を常に追求していくことはもちろんのこと、研究開発につきましても、将来的に有望な技術分野への重点的な投資を行うべく検討を深めてまいります。

 また、防衛装備品の調達に当たりましては、プロジェクト管理の強化や調達の効率化等の各種取組を通じて、一層の合理化を徹底してまいります。また、契約制度の改善等を通じた効率化、合理化に向けた取組を促すことで、防衛産業の強靱化を図るべく検討してまいる所存です。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 玉木雄一郎君。

    〔玉木雄一郎君登壇〕

玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 安倍総理の所信表明演説に対して質問します。(拍手)

 来年四月末で、平成の世が幕をおろします。しかし、その先の将来が見えず、多くの国民が将来不安を抱えています。

 私たち国民民主党は、未来を先取りする改革中道政党として、国民の声に耳を傾け、現実的な答えをつくり出していきます。経済には改革を、社会には多様性を、生活には温かさを、外交、安全保障には現実的な安定感を目指します。政府・与党の理不尽な行為に対しては、他の野党とも力を合わせて厳しく追及します。同時に、国民のための新しい道を示す、それが私たち国民民主党です。

 冒頭、大阪北部地震、西日本豪雨災害、台風二十一号、そして北海道胆振東部地震でお亡くなりになられた皆様に心から哀悼の意をささげます。あわせて、今なお苦しい中で生活をされている被災された皆さんに心からお見舞いを申し上げます。

 しかし、今回の安倍政権の災害対応は遅過ぎます。

 あの豪雨災害の最中の破廉恥な赤坂自民亭、そして、全国各地の皆さんが復興のために補正予算を求めていたのに、なぜ、臨時国会、そして補正予算の審議をここまでやらなかったんでしょうか。

 私たち国民民主党は、復旧のための補正予算の編成には賛成です。しかし、安倍政権の災害対策は遅過ぎるし、私たちは、もっと迅速な対応が可能だったと考えます。被災者に寄り添った速やかな対応を強く求めます。

 まず、日米地位協定について伺います。

 沖縄県知事選挙で当選された玉城デニーさんだけでなくて、与党の皆さんも推薦された佐喜真候補も、日米地位協定の改定を公約に掲げていました。

 日米地位協定は、イタリアやドイツの地位協定と比べても、日本の主権や国内法の適用が広く制限されています。日米地位協定が我が国の主権や国内法よりも上位にある、異常な状態です。

 実際、ことし一月に相次いだ米軍機のトラブルを受け、防衛省は、普天間基地への自衛官の派遣を要請しました。しかし、八カ月以上、今に至るまで、この派遣が拒否されたままです。

 また、東京オリンピックや増加する外国人のインバウンドに対応するため、羽田空港への新しい飛行ルートの開設協議が行われてきましたが、いわゆる横田空域を通過するため、米軍に拒否されたまま、開設の見込みが立っていません。

 議場の同僚議員の皆さん、こんなおかしなことはそろそろやめにしませんか。独立国とは言えない惨めな状況を改めずして、総理の言う新たな国づくりなどできるはずはありません。

 国民民主党は、年内をめどに、地位協定改定の具体案をまとめます。今こそ、与党、野党といった政治的立場を超えて、地位協定の改定に踏み出すときです。総理の決意を伺います。

 次に、北方領土交渉について伺います。

 先月の東方経済フォーラムで、プーチン大統領は、これまでの我が国の主張とは異なる、前提条件を抜きにした年内の平和条約締結を提起しました。総理は、その後の柔道の大会で、日本の原則的立場を述べて反論したと報道されています。

 私も、これまでの原則的立場は重要だと思います。しかし、七十年間、何も動かなかったことも事実です。

 先日、根室を訪れて、元島民の皆さんと話をいたしました。既に六割の方が亡くなられ、平均年齢は既に八十三歳を超えています。彼らが望んでいるのは、早く島が返ってきてほしい、そして、島に自由に行けるようにしてほしい、このことです。総理、今のままで果たして彼らの希望に応えることはできるんでしょうか。

 そこで、総理に伺います。

 一九五六年の日ソ共同宣言を土台にしながら、まず二島の先行引渡しを四島返還の突破口として実現することは、選択肢として考えられないでしょうか。

 両国の議会が批准した正式な文書は日ソ共同宣言だけです。法的拘束力を持つ条約です。ここに、平和条約を締結した後、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことが明記されています。歯舞群島と色丹島の面積は、確かに全体の七%。しかし、その周りには、広く豊かな海が広がっています。二島が戻れば、漁業だけでなく、関連産業を含めた地域経済の活性化も期待できます。

 ただし、平和条約を先に結んだ場合に、領土問題を棚上げしないとの確約が得られるのか、疑問が消えません。しかし、もしそれが可能なら、日ソ共同宣言を土台にして、平和条約を締結して、歯舞群島と色丹島の二島の先行引渡しを実現することが可能性としてあるのか、総理のお考えにあるのか、総理の見解を伺います。

 さらに、五月の党首討論で総理に申し上げたとおり、返還された島に米軍の施設や基地を置かないことについて、アメリカを説得することも必要です。

 しかし、外務省機密文書「日米地位協定の考え方」増補版によれば、あらかじめ基地を設けないと約束することは、安保条約、地位協定上問題があり、認められないとされています。今でもこの機密文書の内容は有効ですか。

 アメリカの説得の可能性はあるのか、総理の所見を求めます。

 次に、憲法について伺います。

 本年一月の代表質問で、いわゆる安倍九条改憲について私は質問しました。そのとき総理は、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないと答弁されました。しかし、総理、この答弁は国民を欺くうそです。

 というのも、今春に示された自民党の改憲案は、必要な自衛の措置をとることを妨げずとされています。このことで、いわゆる七二年見解に示された必要最小限度という制約がなくなり、何の限定もない集団的自衛権の行使さえできる可能性があります。自衛権の範囲を大幅に拡大する改憲案をつくっておいて、何も変わらないと言い切るのはうそつきであり、こうしたごまかしの九条改憲案に私たち国民民主党は反対です。

 総理、それでもなお何も変わらないと言い切れますか。お答えください。

 他方、現行の九条は、高い理想を掲げている一方で、権力のつけ入るすきのある条文でもあります。すなわち、時の政権の解釈で自衛権の範囲が自由に伸び縮みする余地があり、軍事的公権力の行使を縛る規範としての力が弱いからです。それは、安保法制の議論の際、九条があっても、九条があるにもかかわらず、地球の裏側で武力行使できる憲法解釈の変更を防ぎ切れなかった事実からも明らかです。

 そこで、自衛権の範囲を憲法上明確にし、平和主義の定義を国民自身によって行う平和的改憲の議論を行っていくべきだと考えます。

 すなわち、さきの大戦の教訓と憲法の平和主義の原則を踏まえ、例えば、武力行使の三要件を一つのベースにして、我が国にとっての急迫不正の侵害がある場合であって、これを排除する他の適当な手段がない場合には、必要最小限度の実力行使が可能である旨憲法に明記し、海外派兵はしない、他国の戦争に参画することはないということを条文上明らかにする、これこそが立憲主義に魂を吹き込む正しい改憲の方向性だと考えます。

 制約のない自衛権を掲げる自民党案と、平和主義に整合的な、制約された自衛権を掲げる案とを比較して議論すれば、自民党憲法改悪案の問題点が国民に浮き彫りになっていくでしょう。

 ただし、憲法改正は、国民の広範な理解と協力が大前提です。自民党には、数におごることなく、少数派の意見にも耳を傾けながら、丁寧に議論を進めることを強く求めます。

 その意味でも、憲法審査会において、まずは国民投票法の議論を行い、とりわけCM、広告規制を導入することが憲法改正案の中身について議論する大前提であり、条件です。

 国民投票法にCM、広告規制を盛り込むことについて、総理の見解を求めます。

 次に、米国との間で交渉入りを合意した日米貿易協定について伺います。

 まず、この協定を日米物品貿易協定と訳し、原文にはないTAGという略語まで捏造しているのは悪質です。総理のFTA交渉につながる交渉はやらないとの発言が虚偽答弁とならないための苦肉の策で、まるで財務省の決裁文書の改ざんを思い出します。

 そもそも、二国間の貿易協定はガットに整合的な自由貿易地域しか認められません。その場合、実質上全ての貿易について関税を撤廃することが条件とされています。

 今回、アメリカと交渉する貿易協定も当然ガット二十四条に言う自由貿易地域であると思いますが、念のため総理に確認します。もしそうなら、幾ら詭弁を弄しても、TAGは、法律上、協定上、FTAそのものだと証明できます。明確な答弁を求めます。

 残念なのは、ここまで策を弄したのに、一昨日、トランプ大統領は日本車に二〇%の関税をかけると発言しています。自動車への高関税を回避するとの目的が全く果たされていません。安倍政権のトランプ追随外交は失敗が明白です。自動車について一体裏で何を約束してきたのか、不安は消えません。

 今、むき出しの自由貿易や過度なグローバリズムが世界で問題を引き起こしています。これから自由貿易を推進するに当たっては、国連の持続可能な開発目標であるSDGsに整合的であるべきだと考えますが、総理の所見を伺います。

 農家は今、安倍農政の、特に米政策に大きな不安を感じています。一方、総理は、米の取引価格は着実に回復していますと胸を張りました。しかし、皆さん、これは、十アール当たり最大十万五千円もの税金を使って飼料用米の作付に政策誘導し、人が食べる主食用米の生産を抑制した結果、米の値段が上がっているだけの話です。

 つまり、税金を使って米価を人為的に引き上げる古臭い農政に逆戻りしているだけなんです。にもかかわらず、所信表明演説で胸を張れるのは、農政改革の本質がわかっていないか、わかっていながらごまかしているかのどちらかです。

 税金を使って米価をつり上げる政策、特に飼料用米、餌米の政策に持続可能性はあるのか、総理の認識を伺います。

 私たちは、税金を使って価格をコントロールする価格政策ではなくて、営農継続可能な所得を農家に直接補償する所得政策の方が、消費者にもメリットのある効率的、効果的な制度だと考えます。

 国民民主党は、農業者戸別所得補償制度をもとにした、安心して営農継続できる新たな直接支払いの制度を提案してまいります。名前を変えて、昨年まで半額にして戸別所得補償制度を続けてきたのは自民党安倍政権です。

 漁業権の付与についても、安倍政権は漁協に優先順位を定めた現行制度を廃止しようとしていますが、浜の現場には混乱が広がっています。

 改革のための改革では、浜の皆さんの所得は上がりません。一部の企業のための改革ではなく、漁民、漁村のための改革となるよう、当事者の声を十分反映させるべきです。総理の見解を求めます。

 次に、消費税について質問します。

 急速に高齢化が進む中、社会保障の安定財源として消費税は重要です。給付と負担をセットで考える一体改革の理念も大切です。ただ、税金の負担がふえることは、誰にとっても嫌です。

 だからこそ、国民に税負担を求める際には、国民が納得できる環境を整備しなければなりません。しかし、安倍政権の取組はでたらめです。

 最も許せないのは、二〇一二年十一月十四日、皆さんも覚えていらっしゃるでしょう、あの党首討論で定数削減を約束しておきながら、それから五年たったら、逆に定数を六つもふやす法案を通して開き直っていることです。

 こんな国民をだますようなことばかりしていては、とても税負担への国民の理解は得られません。党首討論の約束をほごにしていることについて良心の呵責はないのか、総理に伺います。

 次に、軽減税率という名の複数税率の導入は、公平、中立、簡素という税の三原則に反しています。国民民主党は反対です。

 低所得者対策として生活必需品は八%に据え置くとの理屈ですが、では、なぜ新聞、しかも、宅配の新聞だけ八%の軽減税率で、同じ新聞を駅やコンビニで買ったら一〇%、しかも、同じものを電子版で読んだら一〇%。このことに合理的な理由を見出すことはできません。公平性のかけらもないし、業界と安倍政権の癒着を疑わざるを得ません。

 さらに、インボイスを発行できない免税事業者は取引から排除されるので、中小企業、小規模事業者の廃業促進税制になります。廃業が続出したら、与党の議員の皆さん、責任がとれますか。将来に禍根を残す複数税率の導入は、絶対にやめるべきです。

 そもそも、財務省で前代未聞の公文書の改ざんが行われ、多くの幹部職員が財務省を去りました。そして、職員の中にはみずから命を絶った職員もいます。それなのにみずからは何の責任もとらずにいる麻生財務大臣に増税を語る資格はありません。

 アベノミクスの限界が見えてきました。最大の弱点は、個人消費が伸びていないことです。好調な企業業績も、個人の所得増には結びついていません。今こそ、企業だけでなく、家計を直接豊かにする経済政策に転換するときです。

 私たち国民民主党は、我が国が直面する最大の課題を少子化、人口減少と捉え、子供や子育て世帯への徹底した支援策を講じることで、少子化、人口減少という構造問題の解決と、経済の活性化、特に消費の活性化を同時に実現する、コドモノミクスという政策を進めていきます。

 私は、国民民主党の代表選挙で、第三子に一千万円給付するとの政策を提案しましたが、子育て世帯には一人最高一千万円給付するぐらいの大胆な政策が必要です。このままでは、社会保障だけでなく、日本社会そのものが成り立たなくなります。国家存亡の危機です。まさに静かなる有事が進行しています。

 だからこそ、今必要なのは、異次元の金融緩和ではなくて、異次元の子ども・子育て政策です。

 国民民主党は、未来を生きる子供たちに大胆に投資するコドモノミクスで、日本を覆う人口のデフレマインドを払拭し、明るい日本の未来を切り開いていきます。人づくりなくして国づくりなし、この精神で、人を大切にする国づくりを推し進めてまいります。

 アベノミクスの効果は、中小・小規模事業者、そして地方にも及んでいません。法人税の減税を幾らしても、中小企業には社会保険料の負担が重くのしかかります。

 そこで、国民民主党は、正社員を採用した場合には、その社会保険料を国で負担し、中小・小規模事業者の社会保険料負担を大幅に引き下げ、正社員の採用促進にもつなげる政策を推し進めていきます。今国会にも関連法案を提出するので、成立に向けた関係各位の協力をお願いします。

 今、ガソリンの値段が上がっています。先日、全国平均でリッター百六十円を超えました。

 そこで、国民民主党は、ガソリンの値段を安くする経済政策を提案します。

 今、三カ月連続してリッター百六十円を超えた場合には、暫定税率の一部、二十五・一円を減免する、その分ガソリンの値段が下がるトリガー税制が、東日本大震災を機に凍結されたままになっています。

 国民民主党は、特に、車を使って仕事や生活をせざるを得ない地方の個人や企業の方の負担を軽くするため、このトリガー条項の凍結解除の法案を提出したいと思います。トリガー条項の凍結解除について、総理の所見を伺います。

 最後に、今国会の重要法案である入管法の改正案について伺います。

 安倍政権は外国人材の受入れを急いでいますが、全体像が全く見えません。少なくとも、幾つの業種にどのくらいの規模で外国人がふえるのか見通しを示してもらいたい。定住も可能というなら、どれぐらいの人数が定住すると見込んでいるのか示してもらいたい。また、新たに医療保険の対象となる外国人はどのくらいで、保険料の収入と国庫負担はどの程度増加するのか示してもらいたい。

 そもそも、こんな大事な法案を重要広範事案になぜしないんですか。総理は逃げているんですか。日本社会の根幹にかかわる問題です。総理、正々堂々議論しようではありませんか。

 今、新入生の七割以上が外国籍という小学校も出てきています。皆さんの地元もあるかもしれません。日本社会の変化は既に始まっています。私たち国民民主党は、現実から目を背けることなく、多様性を受け入れ、外国人と共生できる社会づくりに正面から取り組んでいきます。欧米で問題となっているような、いわゆる移民問題を発生させないためにも、包括的な外国人受入れ政策が必要です。

 まず、人道的観点から、家族の帯同には柔軟に道を開くことや、働く人の権利保護の観点から、同一労働同一賃金の具体的仕組みづくりが必要です。あわせて、円滑な社会定着を図り、社会の分断を生まないためには、日本語教育が極めて重要です。

 そこで、総理に伺います。

 長期滞在を前提とした外国人には日本語教育を義務づけるべきだと考えますが、総理の所見を伺います。

 第二次安倍政権発足から六年がたちました。森友学園、加計学園の問題に見られるように、長期政権のうみが行政全体に広がっています。統治機構の信頼ががらがらと音を立てて崩れ落ちています。こうした事態を打破し、緊張感のある政治を取り戻すためにも、やはり野党が力をつけて、国民に安倍政権にかわる選択肢を示していかなければなりません。

 今の政治に閉塞感やいら立ちを感じておられる国民の皆さん、皆さんの期待に応えることができるよう、未来を先取りする改革中道政党として、私たちは、国民の皆さんの声に耳を傾け、現実的な答えをつくり出していきます。これまでの考えやルールにとらわれず、日本が進むべき新しい道を示してまいります。

 本日の質問でも、新しい解決策や政策を幾つか提案しました。このほかにも、選択的夫婦別姓、尊厳死、そして、女性宮家、女性天皇の問題など、自民党には主張できない政策や社会像を議論し、示しながら、日本が進むべき新しい道を示してまいります。

 もはや、過去の単純な延長線上に日本の未来を描くことはできません。この国会にも新しい息吹を吹き込む決意と覚悟を申し上げまして、私の代表質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 玉木議員にお答えいたします。

 日米地位協定についてお尋ねがありました。

 日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府として、事案に応じて、最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応してきています。

 安倍政権のもとでは、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。国際約束の形式で得たこの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのことであります。

 また、例えば、日本側に第一次裁判権がある犯罪の被疑者たる米軍人軍属の拘禁についても、日米合意に基づき、実際に、起訴前に日本側への移転が行われてきています。

 今後とも、このような目に見える取組を一つ一つ積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。

 いずれにせよ、日米地位協定を含めた日米間のさまざまな課題について、政府としてしっかりと取り組んでまいります。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 一九五六年の日ソ共同宣言が両国の立法府が批准した唯一の正式な文書であるというのは御指摘のとおりであります。

 北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのが我が国の一貫した立場です。政府としては、この基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉を進めてまいります。

 安全保障に関する問題を始め、ロシアとの平和条約締結交渉の内容等について明らかにすることは、今後の交渉に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えます。また、御指摘の文書についてお答えすることも差し控えます。

 憲法九条の改正と自衛隊の任務、権限についてお尋ねがありました。

 憲法改正の内容について、私が内閣総理大臣としてこの場でお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、お尋ねですので、あえて、私が自民党総裁として一石を投じた考え方を改めて申し上げるとすれば、現行の憲法第九条第一項及び第二項の規定を残した上で、自衛隊の存在を憲法に明記することによって、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないものと考えています。

 他方、現在、自民党の党内において行われている憲法改正をめぐる議論の状況や方向性についてお答えすることは差し控えたいと思います。

 いずれにせよ、憲法改正は、国会が発議し、最終的には国民投票により決められるものであります。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ね、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています。

 国民投票における広告宣伝活動の規制についてお尋ねがありました。

 広告放送を含め、国民投票運動のあり方については、国民投票法が平成十九年に議員立法で制定された際に、各党各会派でさまざまな議論がなされた結果として、基本的に自由なものとし、投票の公正さを確保するための必要最小限の規制のみを設けるとの結論に至り、現在の制度となったものと承知しています。

 いずれにせよ、国民投票運動のあり方については、国民投票制度の根幹にかかわる事柄であり、国会において御議論いただく事柄と考えております。

 日米物品貿易協定交渉とガットとの関係についてお尋ねがありました。

 米国との交渉は今後行われるものであり、その結果について現時点で予断を持って申し上げることは差し控えますが、我が国として、いかなる貿易協定もWTO協定と整合的である必要があると考えています。

 その上で申し上げれば、ガット二十四条では自由貿易地域について定められていますが、いわゆるFTA、すなわち自由貿易協定についての定義はありません。そのため、ガット二十四条への適合性とその協定をFTAと呼ぶかどうかについては、直接的には関係ありません。

 他方、FTAについて国際的に確立した定義が存在しないことも事実であるため、言葉遣いの問題として、今回の交渉について、FTAの一種ではないかとの御意見があることは承知しています。

 そうした中で、私がこれまでFFR協議についてFTA交渉でもFTAの予備協議でもないと申し上げてきた最大の理由は、国内の農林漁業者の皆さんにTPP以上の関税引下げが行われるのではないかとの懸念があったためであり、農林水産業は必ず守り抜くとの思いから申し上げてきたものであります。

 そして、今回、日米共同声明において、農林水産物については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限である、この大前提を米国と合意をいたしました。この点が最大のポイントであり、この前提の上に今後米国と交渉を行い、我が国の基である農林水産業を必ずや守り抜いてまいります。

 自由貿易の推進とSDGsについてお尋ねがありました。

 戦後、天然資源に乏しい我が国が目覚ましい経済成長を遂げることができたのは、自由貿易体制のおかげです。今後とも、我が国は自由貿易の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済秩序の強化を推進していきます。

 自由貿易の推進に当たっては、その恩恵が社会の全ての人々に広く行き渡ることがなければ持続可能なものとはなりません。そのために、労働や環境など幅広いルールを打ち立て、公正な貿易を推進することが必要です。そして、そのことが世界の持続的な発展に寄与するものと考えます。

 今後とも、我が国は、自由で公正なルールに基づく貿易体制の強化に積極的に取り組むことを通じて、貿易の恩恵を世界の人々に広く及ぼすことで、SDGsの実現に貢献してまいります。

 米政策についてお尋ねがありました。

 安倍内閣では、主食用米の需要が年々減少している中で、食料自給率等の向上を図るため、主食用米から飼料用米などへの転換により、農地のフル活用を進めています。

 こうした中、水田活用の直接支払交付金において飼料用米などに対する支援を実施しているところですが、これについては、農業者による生産コストの低減等の取組を促しながら、引き続き、不断に施策の点検を行いつつ、必要な支援を行ってまいります。

 水産政策の改革についてお尋ねがありました。

 かつて世界一を誇った我が国の漁業生産量は、今やピーク時の半分以下にまで減少するなど、我が国水産業の改革は待ったなしであります。

 漁獲量による資源管理を導入し、漁船の大型化を可能とすることで、漁業の生産性を高めます。漁業権については、漁場を有効活用している漁業者には継続利用していただくことを前提に、法律で定めた優先順位を廃止し、新規参入や規模拡大を促す新たな仕組みを設けます。

 こうした改革を、漁業者の皆様の声を真摯に伺いながらじっくりと進めていくことで、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させ、漁業者の所得向上と若者に魅力ある水産業を実施していく決意です。

 議員定数についてお尋ねがありました。

 御指摘の党首討論の後、政権交代後、まず、平成二十五年に衆議院の定数の〇増五減が実現し、さらに、さまざまな困難を乗り越え、調査会の答申や各党各会派の議論等を踏まえ、平成二十九年には衆議院の定数十削減が実現しました。

 これは、言うのは簡単であります。しかし、実行に移すのは、まさに大いなる決意と決断が必要だったことは申し添えておきたいと思います。党首討論の約束をほごにしているとの指摘は全く当たりません。

 一方で、さきの国会で成立をした参議院の選挙制度改革については、参議院特有の事情も踏まえ、投票価値の平等とともに、都道府県の単位がどれくらい尊重されるべきかという点も含め、各党各会派による検討がなされ、結論が出されたものであると承知しています。

 また、附帯決議として、この定員増に伴う参議院全体の経費の増大を生じないよう、しっかりとその節減に取り組んでいくという参議院としての決意が示されているものと承知しています。

 いずれにせよ、議員定数のあり方を含め、選挙制度改革については、議会政治の根幹にかかわる重要な課題であり、各党各会派において真摯に議論が行われるべきものであると考えております。

 ガソリン税等のトリガー条項についてお尋ねがありました。

 現在凍結中のトリガー条項については、発動した場合のガソリンの買い控えや、その反動による流通の混乱や、国、地方の財政への多大な影響等の問題があることから、その凍結解除は適当でないと考えております。

 外国人材の受入れ拡充の規模、環境整備等についてお尋ねがありました。

 新たな受入れ制度は、深刻な人手不足に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人の受入れ制度を拡充し、真に必要な業種に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を我が国に受け入れようとするものです。

 受入れの規模や医療保険への影響に関しては、現在、十四の業種について、外国人材受入れの希望が示されており、受入れの見込み数を精査しているところです。

 受入れに当たっては、一定の日本語能力を備えることを要件としており、また、日本人と同等の報酬をしっかりと確保するとともに、社会の一員として、その生活環境を確保するため、現在、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の検討を進めており、日本語教育の充実など、環境整備についても、関連施策を一層積極的に推進してまいります。(拍手)

     ――――◇―――――

星野剛士君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明三十日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(赤松広隆君) 星野剛士君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(赤松広隆君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       財務大臣     麻生 太郎君

       総務大臣     石田 真敏君

       法務大臣     山下 貴司君

       外務大臣     河野 太郎君

       文部科学大臣   柴山 昌彦君

       厚生労働大臣   根本  匠君

       農林水産大臣   吉川 貴盛君

       経済産業大臣   世耕 弘成君

       国土交通大臣   石井 啓一君

       環境大臣     原田 義昭君

       防衛大臣     岩屋  毅君

       国務大臣     片山さつき君

       国務大臣     櫻田 義孝君

       国務大臣     菅  義偉君

       国務大臣     平井 卓也君

       国務大臣     宮腰 光寛君

       国務大臣     茂木 敏充君

       国務大臣     山本 順三君

       国務大臣     渡辺 博道君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  西村 康稔君

       財務副大臣   うえの賢一郎君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官  横畠 裕介君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.