衆議院

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第6号 平成30年11月15日(木曜日)

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平成三十年十一月十五日(木曜日)

    ―――――――――――――

  平成三十年十一月十五日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員の選挙

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

 漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員辞職の件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 裁判官弾劾裁判所裁判員海江田万里君から、裁判員を辞職いたしたいとの申出があります。右申出を許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 裁判官弾劾裁判所裁判員及び同予備員の選挙

 裁判官訴追委員の選挙

 検察官適格審査会委員及び同予備委員の選挙

 日本ユネスコ国内委員会委員の選挙

 国土審議会委員の選挙

 国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙

議長(大島理森君) つきましては、裁判官弾劾裁判所裁判員の選挙を行うのでありますが、この際、あわせて、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員、裁判官訴追委員、検察官適格審査会委員及び同予備委員、日本ユネスコ国内委員会委員、国土審議会委員及び国土開発幹線自動車道建設会議委員の選挙を行います。

星野剛士君 各種委員等の選挙は、いずれもその手続を省略して、議長において指名され、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員の職務を行う順序については、議長において定められることを望みます。

議長(大島理森君) 星野剛士君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、裁判官弾劾裁判所裁判員に

      阿部 知子君 及び 北側 一雄君

を指名いたします。

 また、裁判官弾劾裁判所裁判員の予備員に山田美樹君を指名いたします。

 なお、予備員の職務を行う順序は第二順位といたします。

 次に、裁判官訴追委員に

      上川 陽子君    奥野 信亮君

      石原 宏高君 及び 浜地 雅一君

を指名いたします。

 次に、検察官適格審査会委員に

      平沢 勝栄君 及び 吉野 正芳君

を指名いたします。

 また、小林鷹之君を吉野正芳君の予備委員に指名いたします。

 なお、予備委員古賀篤君は平沢勝栄君の予備委員といたします。

 次に、日本ユネスコ国内委員会委員に

      大塚  拓君    丹羽 秀樹君

   及び 越智 隆雄君

を指名いたします。

 次に、国土審議会委員に福井照君を指名いたします。

 次に、国土開発幹線自動車道建設会議委員に

      竹下  亘君 及び 加藤 勝信君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

 漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、漁業法等の一部を改正する等の法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣吉川貴盛君。

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 漁業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の漁業は、国民に対して水産物を安定的に供給するとともに、水産業や漁村地域の発展に寄与するという極めて重要な役割を担っています。しかし、水産資源の減少によって生産量は長期的な減少傾向にあり、漁業者数も減少しているという厳しい課題を抱えています。

 こうした状況の変化に対応して、漁業生産力の発展を図る観点から、水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、あわせて漁業協同組合等の事業及び経営基盤の強化を図ることが必要であります。

 このため、水産資源の保存及び管理に関する制度を整備するとともに、漁業の許可及び免許等の漁業生産に関する基本的制度並びに漁業協同組合等に関する制度を一体的に見直すこととしたところであります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、漁業法の一部改正であります。

 まず、資源管理は漁獲可能量による管理を行うことを基本原則とし、資源評価が行われた水産資源について、一定の期間中に採捕することができる数量の最高限度を定め、これを船舶等ごとに割り当てるなど、水産資源の保存及び管理のための制度を整備することとしております。

 次に、大臣許可漁業について、許可の要件となる制限措置等に関する規定を整備するとともに、漁獲割当ての対象となる特定水産資源を採捕するものについては、一定の場合を除き、船舶の規模に関する制限措置を定めないものとすることとしております。

 さらに、漁業権制度について、海区漁場計画の作成の手続を定めるとともに、漁業権がその存続期間の満了により消滅した後に設定する漁業権について、漁業権の申請が重複したときは法定の優先順位に従って免許する仕組みにかえて、新たに、存続期間が満了する漁業権を有する者が漁場を適切かつ有効に活用している場合はその者に、それ以外の場合には地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者に免許することとしております。

 このほか、海区漁業調整委員会の委員の選出方法について、都道府県知事が議会の同意を得て任命する方法に改め、漁業者又は漁業従事者が委員の過半数を占めることとしております。

 また、密漁対策の強化として、財産上の不正な利益を得る目的による採捕が漁業の生産活動等に深刻な影響をもたらすおそれが大きい水産動植物の採捕を原則として禁止するなど、密漁者に対する罰則を強化することとしております。

 第二に、水産業協同組合法の一部改正であります。

 漁業協同組合の理事の一人以上を水産物の販売等に関し実践的な能力を有する者とすること、一定規模以上の信用事業を行う漁業協同組合等は会計監査人を置かなければならないこととするなど、その事業及び経営基盤の強化を図るための措置を講ずることとしております。

 第三に、水産資源保護法の一部改正など所要の改正を行うとともに、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の廃止を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。細田健一君。

    〔細田健一君登壇〕

細田健一君 自由民主党の細田健一です。

 ただいま議題となりました漁業法等の一部を改正する等の法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 日本の水産業は、国民の豊かな食生活を支える柱です。世界第六位の排他的経済水域を有する我が国の周辺には世界有数の漁場が広がっており、漁業生産の潜在力には大きなものがあります。また、世界的に水産物の消費は拡大しており、日本の水産物輸出の可能性は高まっています。日本の水産業には大きな可能性があるのです。

 しかしながら、我が国の水産業は厳しい状況に置かれています。

 世界の漁業生産量が三十年間で二倍以上に拡大する中、かつては世界第一位だった我が国の生産量は、ピーク時の約三分の一にまで減少をしてしまいました。

 世界では、養殖業が急拡大し、養殖による生産量が漁業生産量と拮抗する規模になっている一方で、我が国の養殖業は、水産業全体の二割の生産量しかありません。ノルウェーを始めとする漁業先進国に比べて、漁業の生産性も低い状況です。

 漁業者の減少に歯どめがかからず、高齢化も進んでいます。

 何とかこのような現状を打破しなければならない、これが関係者共通の認識であり、今般、水産改革の方向性をまとめ、法案化された関係者の方々に、まず、深く敬意を表します。

 いかなる水産改革を行うにせよ、それは、厳しい状況に置かれている我が国の水産業が抱える諸課題を前向きに解決するものでなければなりません。

 まず、十年後、二十年後の我が国の水産業のあるべき姿をどのように捉えているのか、そして、今般の制度改正によりそれをどう実現していくのか、政府の考えをお伺いいたします。

 本法案の大きな柱は、資源管理について、従来のインプットコントロールを中心とするものからアウトプットコントロールを中心とするものへの考え方の転換です。

 これは大きな意義を有すると考えますが、一方で、その実施に当たっては、現場と丁寧な対話を重ね、その意義やメリットについて十分な理解を得る必要があります。

 資源管理について、アウトプットコントロールへ転換するに当たり、政府として現場にどのように対応していくのか、基本的な考え方をお伺いします。

 法案の第二の柱は、沿岸、養殖漁業にかかわる海面利用制度の見直しです。

 この点については、漁業協同組合の位置づけや役割はどうなるのか、漁業権付与の優先順位の廃止により浜の現場が混乱するのではないかとの不安の声もあると伺っています。当然のことながら、今回の法改正により、現に漁業に携わっている方々が将来に向けて安心して漁業を営んでいけるようにすることが大変重要であると考えます。

 そこで、今回の海面利用制度の見直しを行う趣旨はどのようなものか、それによって、現在漁業権を持っている漁業者や漁業協同組合はどうなるのか、政府のお考えをお伺いします。

 遠洋、沖合漁業についてお伺いします。

 海外の漁業先進国では、規模が大きく設備も整った漁船により効率的な漁業が行われていると認識しています。単純な比較は困難ですが、日本の漁船漁業を若者にとって魅力あるものとするためには、安全性や居住性にすぐれ、効率的な操業が可能となる漁船を整備していく必要があると考えます。

 この点について、今般の制度改正によりどのような措置を講じていくのか、見解をお伺いいたします。

 日本の水産業には、我が国周辺の豊かな水産資源を持続可能な形で十分に活用することにより、水産物を安定的に供給すると同時に、漁村地域の経済活動や国土を保全する役割を担うことが期待されています。

 私ども与党は、今後とも浜の現場の声に謙虚に耳を傾け、水産業がその就業者にとって魅力ある産業となるよう政策を遂行する責任があります。

 将来にわたり、国民が豊かな水産資源の恩恵を享受しつつ、全国津々浦々の漁村の維持発展が図られるよう、水産改革を丁寧に行っていくことをお誓い申し上げ、私の質問の結びとさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 細田議員の御質問にお答えいたします。

 我が国水産業のあるべき姿と、今般の制度改正によるその実現についてのお尋ねがありました。

 我が国では、その周辺水域に形成された豊かな漁場を活用し、さまざまな水産物を食卓に届けてきました。

 一方、我が国の漁業生産量が長期的に減少しており、地域の漁業を担う漁業者の減少、高齢化も進んでいます。こうした状況に終止符を打ち、全国各地で個性を生かした多様な漁業が持続的に営まれていくことが、将来の我が国水産業のあるべき姿であると考えています。

 このため、水産資源の維持、回復を図るとともに、漁業者が将来展望を持って積極的に経営発展に取り組むことができるようにするため、資源管理措置と漁業の許可制度、免許制度などの漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直すこととしたところです。

 今回の制度改正も含めて水産政策を総動員することにより、漁業者の所得を向上させ、我が国の水産業を若者にとってやりがいのある魅力的な産業にしたいと考えています。

 今後の資源管理についてお尋ねがありました。

 新たな資源管理システムの導入に当たっては、関係者への丁寧な説明を行い、十分な理解を得て進めることが不可欠と考えています。

 このため、漁獲可能量の対象魚種の拡大や漁獲割当ての導入等を行う際には、資源評価の結果なども含めて漁業者等への説明を重ねていくとともに、水産政策審議会での御議論等をいただきながら、丁寧に進めていく考えであります。

 海面利用制度の見直しの趣旨についてのお尋ねがありました。

 漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。

 このため、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業権免許の優先順位を定める仕組みを改め、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者や漁協については、将来に向けて安心して漁業に取り組んでいただけるよう、優先して免許する仕組みとしたところです。

 その上で、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許するなど、水面の総合利用を進めることとしています。

 こうした改正は、漁協や漁業者の経営の安定化、新たな投資等による経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、漁業者に将来への展望を示し、地域の創意工夫を生かした浜の活性化につながるものと考えています。

 若者に魅力ある漁船漁業のための措置についてのお尋ねがありました。

 遠洋、沖合漁業については、我が国の漁業生産量の五割を占め、国民に対する水産物の安定供給に大きな役割を果たしています。

 このため、若者に魅力ある漁船漁業とするためには、収益性の高い漁業とすることはもちろん、漁船の規模にかかわる制限を見直すことによって、最新の漁業機器の搭載や漁労作業の十分なスペースの確保、居住区の充実等により、作業性、居住性、安全性の向上が図られるようにしていく必要があります。

 また、このような制度の見直しとあわせ、農林水産省としては、漁業の効率化や労働環境の改善のための漁船漁業の構造改善の取組を引き続き支援してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 神谷裕君。

    〔神谷裕君登壇〕

神谷裕君 立憲民主党の神谷裕です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表し、漁業法等の一部を改正する等の法律案につきまして質問をさせていただきます。(拍手)

 さて、本案は、我が国の歴史ある漁業制度全般を抜本的に変えようとするものであり、我が国の水産業、漁村地域、食料供給、国土保全など、国民生活全体に影響を与える大変に重要な法案であります。

 まず、率直に伺いますが、この制度改正は誰のための改正でしょうか。

 今回の制度改革は、直接の影響を受ける漁業者からの要請を受けてなされたものとは聞いておりません。

 いわゆる官邸主導、安倍総理のもとに置かれている規制改革推進会議の、あえて申し上げれば、漁業については全く素人で構成する水産ワーキング・グループにおいて、昨年九月から観念的な検討がスタートし、水産政策の改革の方向性が提示され、本年六月には、政府の農林水産業・地域の活力創造プランの中に水産政策の改革について位置づけられ、そのわずか五カ月後の十一月六日に、漁業者、漁業現場の声を聞かないまま、本案が国会に提出されたものであります。

 まさに、官邸の意向だけをそんたくした拙速な法案と言わざるを得ません。

 水産政策審議会など、関係者などの意見を聞く場もあると思いますが、水政審では、その他の項目で若干触れただけで、この改革についてまともな議論もされていないと伺っております。

 なぜ決定までにきちんと水産関係者の意向を聞いてこなかったのか、まずは農林水産大臣に伺いたいと思います。

 このため水産庁は、本年六月以降、五十カ所以上で五千人に近い漁業関係者に説明をしたと言っております。しかし、結論を決めてからの説明であり、内容がわかるにつれて、各地で働く漁業者は法律改正の犠牲になるのではないか、自分たちが働き、住んでいる浜が奪われるのではないかという不信と不安が高まっております。

 漁業者は、今現在も、それぞれの漁場で操業し、毎日生業を営み続けております。その土台が大きく変わるような制度改正は、拙速に行ってよいものとは思われません。

 そこで、本案が漁業者の理解と納得を得て出されたものなのか、理解と合意を得る努力と責任について農林水産大臣に伺います。

 総理は、さきの所信表明の中で、七十年ぶりに漁業法を抜本的に改正することを表明されました。

 現行漁業法は、七十年前の昭和二十四年に制定され、第一条の目的は、その後一度も変えられておりません。

 戦前の漁業制度のもとでは、働く漁民の方々は、羽織漁師などと呼ばれる漁業権を持つ資産家、農業でいうと地主と小作という関係の中で働かされ、収奪、搾取されておりました。戦後日本の民主化の中で、漁民の方々の解放運動と当時の水産局の職員が一緒になって、知恵を絞り、汗を拭い、かち取ったのがこの漁業法であり、その精神が第一条に書かれているのであります。

 改めてこの第一条を見ますと、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用する、漁業の民主化を図ることが明記されており、漁業者は、ようやくかち取った民主化を大事にして、漁場に近い離島、半島に住み、家族とともに漁村を守り続けてきたのが、この七十年間でありました。

 しかし、本案では、この漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整、漁業の民主化という言葉が消え、単に、漁業は国民に対して水産物を供給する使命を有すると、産業としての漁業の位置づけのみが書かれております。

 我が国の漁業の役割は、決して水産物供給ばかりではありません。我が国国土の重要な一部である漁村地域を維持し、いわば防人としての国境監視や環境保全といった多面的機能は極めて重要であります。そして、我が国漁業の役割を保持することは、いつの時代にあっても普遍的かつ中核的な政策理念であると考えます。

 そこで、現在の日本の漁業、特に沿岸漁業が果たしている役割をどのように認識しておられるのか、また、目的を抜本的に変更した漁業法が施行された後の漁業、漁業者、漁村をどのようなものにしようと考えておられるのか、農林水産大臣のお考えを伺います。

 次に、総理は所信表明の中で、漁獲量による資源管理を導入し、船のトン数規制から転換する、大型化を可能とすると述べられました。その考え方が資源管理の基本原則として本法案にも盛り込まれております。

 漁獲可能量による水産資源管理を行い、最大持続生産量を持続するという、いわゆるMSYの概念は、専門の科学者によれば、自然界と隔離された金魚鉢の中だけで成り立つ論理であり、自然界での水産資源の増減は、人間が行う漁獲量だけではなく、気象の変動や海況の変動等により大きく影響されるものであります。MSY理論は科学的ではないというのが大方の意見です。

 確かに、国連海洋法条約で採用されてはおりますが、これは遠洋の大型漁業を前提としたものであって、我が国のように南北に広がる広大な漁場に生息する多種多様な魚種、そしてこれを緻密に利用している漁業の全体に適用できるような代物では到底ありません。

 政府は、日本の漁獲量全体の八割についてMSYによる資源管理を行うなどと説明していますが、科学的論拠の低さ、資源量管理の実効性、漁業現場に及ぼす混乱などを考えれば、MSYによる資源管理を拡大するべきではなく、現在、我が国で行われている資源管理方式をより拡充させることが、水産資源を維持し回復させるためには適切であると考えます。

 資源管理をしっかりとやっていくことについては誰もが異論はありません。しかし、科学的に適当でない理論によって資源管理が行われることは大きな問題であります。

 また、本案では、船舶等ごとに漁獲割当てを行うとともに、漁獲割当量の譲渡を行うことができる、さらに、一斉更新制度は廃止することとしております。これでは、漁業許可が個人所有的なものへと既得権化し、漁獲割当量が資金力のある経営体に買い上げられ、特定の経営体に集中し、沿岸、沖合等の漁業資源や漁業現場に大きな影響を及ぼすことが必至であると考えます。

 我が国の水産資源の実情や漁業秩序に合わない資源管理方式は、これ以上拡大するべきではないと考えます。農林水産大臣のお考えをお聞きします。

 次に、漁業権においては、法律で優先順位を定めた現行制度を廃止し、養殖業の新規参入、規模拡大を促進することについて伺います。

 現行法にある優先順位の考え方は、働く漁民の生計の維持を基本としており、例えば、今回の改革で廃止することとされている特定区画漁業権は、漁協に優先的に免許されております。技術的、経済的にも取り組みやすい漁業であることから、その構成員である組合員が相互に調整しながら経営する仕組みとなっております。

 法律が改正されますと、適切かつ有効にという、極めて裁量範囲の広い判断基準をもって、知事が免許する仕組みに変わることとなります。その結果、従来は組合員が経営していた区画漁業の漁業権が新たな参入企業に与えられたとする場合、この企業は漁協の外側で活動することが可能であり、漁村の秩序に影響を及ぼすことも考えられるわけであります。

 したがいまして、企業が新規参入する際には、漁村の中核である漁協の同意や了解を得ることが参入企業の円滑な経営を維持するためにも必要であると考えます。

 今回、これまで前浜で漁業者の利害を調整し、合意形成を行ってきた漁協の重要なツールであった特定区画漁業権の漁協への優先的な免許が廃止されることになります。漁業者、漁協など、当事者にとっては大変に不安に思われる部分であると承知しておりますが、なぜ廃止しなければならないのか、農林水産大臣にお考えを伺います。

 企業参入に関連して更に伺います。

 現行漁業法の中には、漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配している場合には、知事は漁業権を取り消すことができるとの規定があります。

 本案では、この規定をわざわざ削除しているようです。すなわち、漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配することを可能とします。また、それは、実質上の支配者が外国資本でも構わないのであって、結果、我が国周辺の水産資源を利用して得た利益が外国に持っていかれることを許容されることになるわけです。

 さらに、日本全国にある小さな島々等で、外国資本が実質支配する企業が漁業を行い、その従業員としてその国の外国人を雇うといった事態が生じた場合、これまで地域の漁業、漁村が果たしてきた国境監視機能、国土保全機能といったものが根本から失われる可能性さえあります。

 そうした事態を招来するおそれは想定されたのでしょうか。大きく懸念がされるところであります。

 さらに、新たな制度であります沿岸漁場管理団体について伺います。

 従来、漁場環境の保全活動は地域の漁協が担ってまいりました。しかし、そのための費用の賦課をめぐっていろいろな問題が生じたため、この制度が創設されようとしているのであろうと推察いたします。

 こうした考え方に基づきますと、まずは地域の漁協が沿岸漁場管理団体に指定されるものと思うのでありますが、法案は、漁協等のほか、一般社団法人、一般財団法人も指定の対象とされております。

 漁協等以外の団体等が指定された場合、天然の水産資源を採捕する漁業や餌飼料を海にまく養殖業は、動物愛護に反し、環境汚染などにつながるなどとの理由をつけて、漁業の発展を阻害することも想定しておかなければなりません。

 これまで、シーシェパードなどの過激な団体等の行動が我が国漁業者に被害を与えたことを想起し、沿岸漁場管理団体の指定に当たっては、県議会等の承認を得るなど慎重な手続をとる必要があると思いますが、農林水産大臣の御所見を伺います。

 この七十年ぶりの漁業法等の改革は、成長産業化、輸出産業化とは何か、海区漁業調整委員会のあり方、養殖漁業の拡大と既存漁業との調整、これからの漁協の果たすべき役割など、極めて多くの明らかにすべき問題があります。

 したがって、国会においては、広く漁業関係者や国民の皆様の意見を聞き、また現場の実情を把握し、慎重に審議しなければ、立法府としての責任は到底果たせないものと考えます。臨時国会の短い会期で決めるべき課題では到底ありません。

 水産政策に造詣の深い大島議長を始め、各位の御理解と御協力をお願いして、本案に対する私の質問を終わらせていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 神谷議員の御質問にお答えいたします。

 水産関係者からの意見聴取についてのお尋ねがありました。

 今回の水産政策の改革、そして漁業法等の改正案の取りまとめに当たっては、これまで、水産政策審議会、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者等との意見交換を行っており、法案の内容についても、漁業者の全国団体の理解をいただいていると承知をしております。

 もちろん、説明会には十分過ぎるという言葉は当てはまるものではなく、今後、法案については、国会でしっかりと御審議をいただくとともに、現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にもしっかり向き合い、引き続き丁寧な説明に努力してまいりたいと考えております。

 沿岸漁業の役割についてのお尋ねがありました。

 我が国の漁業は、その周辺水域に形成された豊かな漁場を活用し、国民に対して水産物を安定供給してきました。

 特に、沿岸漁業については、少量でも多種多様な水産物を水揚げしており、四季折々の多様性に富んだ我が国の食生活をつくってきました。また、漁業者が生活する漁村地域の維持発展や、国境監視も含めた多面的機能の発揮に貢献してきたと考えています。

 こうした機能が今後も発揮されるよう、法律に、国及び都道府県は、漁業、漁村が多面的機能を有していることに鑑み、漁業者等の活動が健全に行われ、漁村が活性化するよう十分配慮すると明記しているところであります。

 新たな資源管理方式についてのお尋ねがありました。

 MSYを目標とする資源管理につきましては、その精度の向上により信頼性を高める一方で、欧米における柔軟なMSYの設定の例も参考に、我が国の水産資源の実情や漁業秩序に即した運用を行います。

 また、漁獲割当ての導入についても、我が国漁業の実態を踏まえつつ、まずは経営体数が少なく水揚げ港が比較的限定される沖合の許可漁業、その中でも一隻当たりの漁獲量が多い大臣許可漁業から順次導入していくこととなると想定しています。

 それ以外の漁業種類については、漁獲量の把握体制等の準備が整ったものから、漁業者の理解を得ながら丁寧に進めていく必要があると考えています。

 漁業権の優先順位の法定制についてのお尋ねがありました。

 漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。

 このため、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業免許の優先順位を定める仕組みを改め、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者や漁協については優先して免許する仕組みとするとともに、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許することとしております。

 こうした改正は、現に地域の水産業を支えている漁業者の経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、地域の活性化につながるものと考えております。

 漁業権者以外の者による経営の支配についてのお尋ねがありました。

 御指摘の現行漁業法の規定は、優先順位に従って形式的に免許するものであるにもかかわらず、本来免許されない優先順位の低い者が実質的に経営を支配するという状況が生じることを防ぐための規定です。

 一方、今般の改正においては、漁業権の免許について、実質的な活動内容に着目し、漁場を適切かつ有効に利用している漁業権者に優先して免許するとともに、未利用の漁場等については地域の水産業の発展に寄与する者に免許する仕組みに改めることとしております。

 これにより、地域の漁業に支障を及ぼす者に免許される事態を防ぐことが可能となるため、地域の漁業、漁村が果たしてきた機能が根本から失われるといった事態を招くことはないと考えております。

 沿岸漁場管理団体の指定の手続についてのお尋ねがありました。

 沿岸漁場管理制度は、漁業生産力を更に発展させるため、水産動植物の生育環境を保全する観点から創設することとした新制度でございます。

 このような保全活動を適切に実施するためには、地域の実態に精通する地元の団体による管理が重要になってまいります。このため、都道府県知事が沿岸漁場管理団体を指定しようとするときは、必ず海区漁業調整委員会の意見を聞かなければならないことを法定し、地域の漁業に支障が生じないような措置を講じます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 緑川貴士君。

    〔緑川貴士君登壇〕

緑川貴士君 秋田県に住んでいる、国民民主党の緑川貴士です。(拍手)

 私たちは、改革中道政党です。時代の変化に合わせて、枠組みや制度を変えるべき部分は変えていく、いや、しかし、現状を考えて、守っていかなければならない部分はどこまでも守り抜いていく。守り抜いていかなければならない価値が浜の現場にあります。

 この理念に立って、ただいま議題となりました漁業法等の一部を改正する法律案につきまして、国民民主党・無所属クラブを代表して質問をいたします。

 私の地元秋田県には男鹿半島があり、漁場へのアクセスにとても恵まれた地域です。

 波が高く荒れた冬の日本海、雷がとどろき始める初冬、これからの時期に接岸するハタハタは県の魚として親しまれ、このハタハタ漁を中心に各種漁業を組み合わせて営まれてきたのが、秋田伝統の漁業であります。

 そんな浜の暮らしを含め、愛着あふれる地域で汗を流し、みずからのなりわいを必死に守ってきた農林漁業者が向き合わなければならない農林水産行政の波は、真冬の荒れた海のように余りに高く、ひどくしけています。

 攻めの農林水産だ、成長産業化だといって、地域で相互に助け合いながら暮らしを成り立たせてきた人やそのコミュニティー、かけがえのない地域資源を、むき出しの市場原理や競争原理にさらし、生産性がないとか意欲がないなどと決めつけにかかり、非効率とするものを全て合理化の名のもとに一掃するこの向きを否定し切れないのが今の農林水産行政です。

 種子法の廃止で、公に管理されてきた、食の根源である種子の情報を外資に明け渡すことに道を開き、林業においては、私有林の管理について、経営意欲が低いと判断されれば、同意がなくとも経営権を剥奪され、意欲と能力があると認める経営体の参入にその実質的な制限はありません。

 農業、林業と来て、次は漁業、いよいよパターン化されてきている感がありますが、現場の切実な声とはおよそ乖離した官邸主導の安倍農政に対しては厳しい評価が下されました。

 日本農業新聞がきのう報じた意識調査では、安倍内閣の農業政策について、全く評価しないが三三・七%、どちらかといえば評価しないの三九・七%と合わせ、農政を評価していない人が七三%余りに上りました。

 TPP断固反対で選挙に勝利をしながら、舌の根も乾かないうちに交渉参加を表明し、農産物重要五品目は関税撤廃から除外するとした国会決議をほごにして、しかも、農家が再生産できるよう国内対策をするから決議は守られたと、守れなかったことを開き直ってTPPを批准し、それとセットで進めてきた、事実上のFTA交渉でしかあり得ないTAG交渉。TPP水準を超える譲歩はしないといいますが、TPP水準こそ大問題であったはずが、その水準は今や当たり前になってしまいました。

 答弁のごまかし、言葉遊びが繰り返されてきた農政を吉川大臣御自身はどのように評価をし、今回の意識調査結果で示された現場の声をどう受けとめ、政策に反映をされていくのか、まずお答えください。

 その上で、水産業の現状について伺います。

 国内漁業の生産量は、一九八四年の千二百八十二万トンをピークとして、一九九〇年代には急速に減少し、昨年は四百三十万トンと、およそ三分の一に減少しています。

 国内漁業者の数も、それに対応するように減少傾向ではありますが、そこに占める十五歳から三十九歳までの漁業者の数は、ここ十年ではおおむね三万人前後、割合にすれば一八%前後で推移をし、若手漁業者の活躍も目立っているほか、新たに就業した漁業者の数も年間千九百人前後と、こちらもかたく推移していることも見逃せません。

 何より、我が国を取り巻く海洋は、世界的にも恵まれた海洋資源、水産環境であります。世界の漁場と生産量を見れば、生産量の半分を占めるのが太平洋であり、そのうちのおよそ半分が、我が国周辺の海域が含まれる太平洋北西部海域であります。

 漁場は、黒潮や対馬海流といった亜熱帯からの暖流と、親潮やリマン海流といった亜寒帯からの寒流がぶつかって豊富な栄養がもたらされる好立地にあり、多様な種類の魚を始めとする海産物が水揚げされています。

 国内漁業を牽引していく若い担い手の将来性と、世界有数の好漁場、そこに従事する水産関係者それぞれの調和ある発展を考えたとき、我が国を取り巻く現状を踏まえ、日本の水産業を、今後どのように発展していくことが望ましいと考えているのか、大臣の御見解を伺います。

 水産政策の見直しについては、ことし六月に改定された農林水産業・地域の活力創造プランによれば、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させることによって、漁業者の所得の向上と年齢バランスのとれた就業環境を確立することを目指しています。

 そのためには、資源管理を徹底しつつ、遠洋、沖合漁業と養殖、沿岸漁業政策を見直しながら、ICT活用も組み合わせて、水産物の流通、加工までを有機的に連携させることが示されておりますが、現実に、どのようなスピード感でそれを達成していくのかがプランからは読み取ることはできません。

 特に、漁業者の所得の向上について、今の水準と比べ、どの程度の向上を目指しているのか、また、いつまでにそれを達成するおつもりなのか、お考えを伺います。

 本改正案で定める新たな資源管理システムについて伺います。

 資源管理の基本原則によれば、従来のように、船舶のトン数制限、そして各魚種の総漁獲量で制限するほか、資源評価に基づく漁獲可能量、TACによる管理を行い、持続可能な資源水準に維持、回復させることを基本とし、また、漁獲量の管理は、漁獲可能量を漁業者又は船舶ごとに割り当て、その割当て量を超える漁獲を禁止することによって漁獲可能量の管理を行う個別割当て方式、IQを採用し、その準備が整っていない場合は、従来の総漁獲量による管理を行うとしています。

 まず、改正案では、持続可能な資源水準に維持、回復させる方法として、従来から、Bリミットと言われる、乱獲を防ぐための最低ラインを基準とするこの現状の方式から、MSY、最大持続生産量と呼ばれる、漁獲資源量の自然回復力を踏まえた最適な資源量を基準とする方式へ変更するとしていますが、MSYは、現行のTAC法、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律における基本的な考え方であったはずです。

 TAC法がある中で、なぜこれまでMSYを基準とした資源管理を行ってこなかったのでしょうか。逆に言えば、なぜ今MSY方式をとるに至ったのか、その理由をお聞かせください。

 また、TACの対象となる魚種について、漁業の種類別、海区別に準備が整ったものから順次導入していくとしていますが、漁業とは、言うまでもなく、それぞれの海域に特性があり、まさに海洋自然そのものを相手にしたお仕事です。

 秋田では、初冬から始まるハタハタ漁の小型定置網のほか、真冬はタコやヒラメの刺し網、春先にはカレイの刺し網、夏から初秋にかけては採貝採藻、秋にはタイのはえ縄、キスやアマダイのこぎ刺し網、これを組み合わせ、一方、同じシーズンには、サケの小型定置網を操業する方もいたりと、通年の漁業をなりわいとしながら、操業方法の組合せや調整などを通じて、漁業者それぞれがそれぞれに配慮をしながら相互に扶助する仕組みも培われてきました。制度のさじかげん次第では、地域漁業の円滑な操業に制約が出るおそれを否定できません。

 TACの対象魚種の拡大やIQ方式の導入について、政府ではこれまでどのような検討が行われ、漁場環境が地域によって異なる、それぞれの漁業者の理解、納得をどこまで得ているのか、誰のための法案なのか、伺います。

 また、漁獲割当て量を他者に移転する場合、漁獲割当て、IQそれ自体の売買はできず、漁獲割当ての移転は、船舶を譲渡した場合などにしか認められていませんが、当の船舶の譲渡自体には制限がありません。

 例えば、漁獲権を手にするために、高齢で引退を考えている船主から、有利な条件で船の売買を持ちかけて、船舶を不当に買い集められるような多額の資本を持った業者も参入することができるなど、結果として、その地域の漁業権が寡占化していくことも許容される内容です。

 これでは法的な規制が余りにも欠けていると考えますが、大臣の御見解を伺います。

 また、政府は、都道府県が公表する海区漁場計画の策定プロセスを透明化することや、海区漁業調整委員会で、漁協など関係団体との間で調整をすることで、こうした参入に対処していくとしていますが、確かな防波堤、歯どめになるとは言えず、不十分ではないでしょうか。お答えください。

 さらに、本改正案で定める、漁業権を付与する者の決定方法は極めて不明確です。

 沿岸の漁業権の種類について、共同漁業権、定置漁業権、区画漁業権という従来の種類は維持されますが、特定区画漁業権を区画漁業権に一本化し、さらに、定置漁業権、区画漁業権に従来まで設定されていた法定の優先順位は廃止するとしています。

 法定順位の廃止に伴う新たな判断基準に、漁業者が水域を適切かつ有効に活用している場合は、継続利用を優先し、その者に免許を与え、既存の漁業権がない場合には、地域水産業の発展に最も寄与する者に免許を与えるとしています。

 ここで伺いますが、まず、従来の漁業法において優先順位を示した法定制がこれまで果たしてきた役割をどのように考え、また、なぜ今回法定制を廃止したのか、その理由をお聞かせください。

 その上で、今回の改正で、既存の漁業権者が権利を継続する前提にある、漁場を適切かつ有効に活用しているという条文について、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。

 政府は、この条文の定義について、省令で定めることすらも検討しておらず、現場への技術的助言、つまり通達のみで対応するとしていますが、頼みのその通達でも、適切かつ有効とは、過剰な漁獲を避けて漁業を行いつつ、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように活用することという文言が想定され、およそ浜の現場に配慮した中身であるとは言えず、これでは白紙同然の法案であると言わざるを得ません。

 何らかの判断基準を国として示すお考えはあるのか、それは具体的にどこまで示すのか、吉川大臣の真摯な御答弁を求めます。

 あわせて、既存の漁業権がない場合などについて、免許の内容たる漁業による漁業生産の拡大並びにこれを通じた漁業所得の向上及び就業機会の確保その他の地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者ともありますが、こちらについても、認められる主体が明らかではありません。具体的な判断基準を明確にするべきであり、このような条文にしたのはなぜでしょうか。明確にお答えください。

 浜で進む人口減少、少子化、それに伴う人手不足、また漁業関連施設の老朽化といった時代の変遷、そのあおりを受けながらも、秋田では、漁業者の年齢やその操業方法、労働の手間に見合う魚種、その漁獲量を資源管理との兼ね合いで最適化し、絶妙に保たれてきたそのバランスは、なりわいとして受け継いできた漁業者自身の経験と浜の暮らしに基づいています。

 民間活力の最大限の活用が大切なことは言うまでもありませんが、漁業権のつけかえの前に、浜に長らく根差してきた地元漁業者が、共同管理で年間計画をつくり、それを幾度も見直すなど、きめ細かい調整をした上で浜全体が有機的にまとまって管理されていく、このことこそが、コミュニティーの維持に欠かせない、持続可能な浜づくり、地域づくりの大前提であることを強く申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 緑川議員の御質問にお答えいたします。

 農政の評価についてのお尋ねがありました。

 御指摘の報道は承知をいたしておりますが、特定の報道機関が独自に行った調査一つ一つについてコメントすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、我が国の農業は、人口減少に伴うマーケットの縮小、高齢化の進行、耕作放棄地の増加など、大きな曲がり角に立っており、その活性化は待ったなしの課題と認識しています。

 この認識のもと、安倍内閣では農政全般にわたる改革を行い、その結果、生産農業所得が過去十八年で最高となり、四十代以下の新規就農者が四年連続で二万人を超えるなど、着実に成果があらわれ始めています。

 引き続き、現場の農業者の皆様と真摯に向き合い、政策の内容も丁寧に説明しながら、農業の成長産業化の実現に向けて取り組んでまいります。

 日本の水産業の発展についてのお尋ねがありました。

 我が国では、その周辺水域に形成された豊かな漁場を活用し、さまざまな水産物を食卓に届けてきました。

 一方、我が国の漁業生産量が長期的に減少しており、地域の漁業を担う漁業者の減少、高齢化も進んでいます。こうした状況に終止符を打ち、全国各地で個性を生かした多様な漁業が持続的に営まれていくことが、将来の我が国水産業のあるべき姿であると考えています。

 このため、水産資源の維持、回復を図るとともに、漁業者が将来展望を持って積極的に経営発展に取り組むことができるようにするため、資源管理措置と漁業の許可制度、免許制度などの漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直すこととしたところです。

 今回の制度改正も含めて水産政策を総動員することにより、漁業者の所得を向上させ、我が国の水産業を若者にとってやりがいのある魅力的な産業にしたいと考えています。

 所得向上の目標についてのお尋ねがありました。

 今般の水産政策は、我が国周辺の水産資源や漁場を十分に活用することを通じて、意欲ある漁業者や漁業従事者を確保し、漁業、漁村の活性化や漁業所得の向上を目指していける環境をつくることを目指すものです。

 我が国の漁業は多種多様であり、農林水産省としては、漁業所得の具体的目標や達成年限は定めておりませんが、多様な漁業種類等の特性を踏まえた漁業生産力の向上の取組や流通機構の改革等を進めることにより、漁業者の所得の向上を目指す考えです。

 資源管理の目標とする水準についてお尋ねがありました。

 現行の資源管理法においても、漁獲可能量の設定に当たっては、MSYを実現できる水準に資源を維持し又は回復させることを目的とすべきと定められております。今回の法改正においては、より確実にこの実現を図るため、目標管理基準等を導入することとしています。

 なお、MSYの設定については、その精度の向上により信頼性を高める一方で、欧米における柔軟なMSYの設定の例も参考に、我が国の水産資源の実情や漁業秩序に即した運用を行います。

 TACの拡大や漁獲割当ての導入についてのお尋ねがありました。

 TAC対象魚種の拡大や漁獲割当て制度の導入については、昨年四月の水産基本計画においても検討の必要性を位置づけるとともに、これまで、水産政策審議会、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者等との意見交換を行っており、法案の内容についても、全国漁業協同組合連合会や大日本水産会等の全国団体の理解をいただいていると承知をしております。

 法案が御審議の上、成立した暁には、現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にもしっかり向き合い、引き続き丁寧な説明に努力をしてまいりたいと考えます。

 漁獲割当ての移転による寡占化の可能性についてお尋ねがありました。

 本法案では、船舶等とともに設定された漁獲割当てを譲り渡す場合等であって、農林水産大臣や都道府県知事の認可を受けたときに限り、漁獲割当ての移転をすることができることとしたところです。

 また、このような船舶の譲渡が行われる場合、漁業の許可の承継についても、農林水産大臣や都道府県知事の許可を受ける必要がありますが、本法案では、許可の不当な集中に至るおそれがある場合には、この許可をしてはならないこととしています。

 漁業権の寡占化について、歯どめが不十分ではないかとのお尋ねがありました。

 本法案については、海区漁場計画の策定プロセスの透明化や海区漁業調整委員会における意見聴取などに加え、既存の漁業権者が水域を適切かつ有効に活用している場合には、その者に優先して免許することを法律で定めることとしています。

 また、漁業権の不当な集中に至るおそれがあるときには、漁業権の免許をしてはならないことを法定することとしています。

 漁業権の優先順位の法定制についてお尋ねがありました。

 現行法の優先順位制度については、羽織漁師とも言われた、みずから漁業を営まない者による漁場利用の固定化を防止する観点から導入されたものですが、こうした法制定当時の課題は既に解消されています。

 一方、現行制度については、漁業権の存続期間満了時に、優先順位のより高い者が申請してきた場合には、再度免許を受けられないため、経営の持続性、安定性を阻害しかねません。

 また、漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後どのような沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。

 このため、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業権免許の優先順位を定める仕組みを改め、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者については優先して免許する仕組みとするとともに、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許することとしております。

 こうした改正は、現に地域の水産業を支えている漁業者の経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、地域の活性化につながるものと考えております。

 漁業の免許における、適切かつ有効の判断基準についてのお尋ねがありました。

 適切かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用している状況と考えております。

 具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁場に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的助言を定め、適切かつ有効の考え方を示していく考えであります。

 地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者の判断基準についてのお尋ねがありました。

 地域の水産業の発展に最も寄与するとの判断は、例えば、漁業生産がふえて、地域の漁業者の所得向上につながる、地元の雇用創出や就業者の増加につながるなど、地域の水産業の発展に寄与する度合いによって判断されることとなりますが、地域の実情に応じて総合的に行われるものと考えております。

 実際には、各地域のさまざまな条件のもとで多様な漁場の活用実態があり、地域の漁業に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的な助言として考え方を示していくこととしました。

 密漁対策の強化についてのお尋ねがありました。

 沿岸地域での密漁対策については、都道府県、海上保安庁、警察及び水産庁等の関係機関が関係漁業者等と連携して実施することが効果的であると認識しています。

 今般の罰則の強化による密漁の抑止効果を最大限生かすためにも、関係者が密接に連携し、情報共有、合同取締り等の漁業取締りの強化、漁業者による監視、パトロール等を行うとともに、密漁対策への支援を行うことで、総合的な密漁対策を推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 金子恵美君。

    〔金子恵美君登壇〕

金子恵美君 無所属の会の金子恵美です。

 ただいま議題となりました漁業法等の一部を改正する等の法律案につきまして、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 安倍総理は、所信表明演説で、七十年ぶりに漁業法を抜本的に改正すると述べました。漁業を取り巻く環境は厳しく、抜本的な対策の必要性は誰もが認めるところだと思います。しかし、今回の漁業法改正の真の目的は、漁業者や漁協への漁業権の優先的付与を廃止し、企業の新規参入を促すことにあります。

 水産政策の改革については、これまでの農協改革等と同じで、規制改革推進会議において議論、策定されました。まるで、現在の漁業、水産業は効率が悪いので、効率重視の大資本にお願いし、漁業を再生していただき、成長産業にしたいと言っているようです。水産改革の重要な方向性は、漁業者、漁村、地域社会を守ることであるべきです。

 以下、吉川農林水産大臣に質問いたします。

 まず、漁業権の継続についてお伺いします。

 既存の漁業権者が漁場を適切かつ有効に活用している場合は、その者に免許されることになっております。現場では、この適切かつ有効に漁場を活用しているのはどのようなことか、自分は該当するのか不安を抱いているという声があります。

 具体的にどのような場合に適切かつ有効に漁場を活用していると判断されるのか、明快にお答えください。

 次に、新たな漁業権の設定についてお伺いします。

 既存の漁業権がない等の場合は、地域水産業の発展に最も寄与する者に免許することとされております。現場では、新規に参入される方々と既存の漁業者との漁業調整がうまくいくのか、共存していけるのかといった不安の声があります。

 漁場計画の策定に当たっては、漁業者等利害関係人の意見を聞くこととされておりますが、どのような方法で意見を酌み上げ、そして、もし対立する場合にはどのような方針で調整するのでしょうか。答弁を求めます。

 漁獲割当ての導入についてお伺いします。

 船舶等ごとに漁獲割当て、いわゆるIQを設定することとされています。沿岸漁業の現場では、来遊する多種多様な資源を漁獲対象とする沿岸漁業の特性を踏まえれば、資源評価の精度向上、管理手法の開発、経営への影響緩和の措置等、さまざまなハードルをクリアする必要があるとの声があります。政府は、準備の整ったものから順次IQを導入するとしていますが、沿岸漁業への導入はどのような条件が整った場合に導入することになるのでしょうか。答弁を求めます。

 本法律案では、漁船の安全性、居住性の向上に向けて、船舶の規模に係る規制を撤廃するとしています。沿岸漁業の現場では、一方的な沖合漁船の大型化により、前浜の資源に悪影響を及ぼすのではないかといった懸念があります。沖合漁船の大型化について、地元沿岸漁業者、漁協等との調整の場は設けられるのでしょうか。答弁を求めます。

 福島県では、平成二十四年六月下旬から試験操業、販売が実施されており、その後、順次、漁業種類、対象魚種、海域が拡大されております。しかし、いまだ漁業の本格的な再開に至っておりません。このような状況にある福島県において、本法律案をどのように適用しようと考えているのでしょうか。

 また、他の被災地の漁業、漁業者にどのような影響があると考えられるのか、お答えください。

 最後に、今回の七十年ぶりの漁業法改正は、我が国の漁業、水産業をどのように変えるのか、そして、誰のために、何を目的として改正するのか、しっかり時間をかけて議論し、慎重に審議する必要があるということを強く申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 金子議員の御質問にお答えいたします。

 漁業の免許における、適切かつ有効の判断基準についてお尋ねがありました。

 適切かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用していける状況と考えております。

 具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁業に精通する都道府県知事が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的助言を定め、適切かつ有効の考え方を示していく考え方です。

 新たな漁業権の設定についてのお尋ねがありました。

 法律案においては、都道府県知事が、漁業を営む者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加え、その結果を踏まえて海区漁場計画案を策定しなければならないこととしています。

 また、計画については、海面の総合的な利用を推進するとともに、それぞれの漁業権が漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定されなければならないこととしています。

 新たな漁業権の設定に当たっても、周辺で操業する他の漁業への影響を考慮した上で判断がなされるものと考えております。

 船舶ごとの漁獲割当ての導入についてのお尋ねがありました。

 船舶ごとの漁獲割当てを導入するためには、船舶ごとの漁獲量を迅速に把握する体制が整えられていること等が必要と考えており、操業の隻数が比較的少なく、水揚げ港も限定されている大臣許可漁業から先行して導入していくことになると考えています。

 一方、沿岸漁業については、漁船の隻数も多く、多数の港で少量ずつ水揚げしている実態にあり、魚種別の漁獲量を迅速に把握する体制が整っていない港も多い状況にあることは認識しています。

 したがって、沿岸漁業において漁獲割当てを導入する場合は、迅速に漁獲量を把握できる体制を整える必要がありますが、ITの飛躍的発展により、低コストで漁獲量や操業状況を把握することは技術的に可能となりつつあることから、沿岸漁業についても、準備が整った漁業種類、漁業区域等の管理区分から、関係者の意見を聞きつつ、順次漁獲割当て方式を導入してまいる所存です。

 沖合漁船の大型化についてのお尋ねがありました。

 漁船の大型化については、生産コストの削減や、安全性、居住性、作業性を向上させるため、これを進めていくことは必要と考えております。

 大型化に当たっては、これまでも、適切な資源管理措置を講ずることにより資源への悪影響がないことを確認し、関係する漁業者からも理解を得ながら進めてきているところです。

 今回の法案では、漁獲量の相当部分に漁獲割当てが導入された漁船については、トン数規制等の規模の制限を定めないこととしていますが、操業期間や区域、体長制限などの措置を講じていくなど、適切な資源管理の実施や紛争防止のため、関係漁業者と丁寧に調整しつつ適切に進めてまいります。

 本格的な操業に至っていない福島県での本法律案の適用についてのお尋ねがありました。

 お尋ねのとおり、福島県においては、被災前の主たる漁業種類の全てが漁業者の自主的な取組として試験操業、販売に参加をしている状況にありますが、漁業法については通常の適用がされております。

 福島県においては、将来を見据えた復興、創生に全力を挙げて取り組み、本格的な漁業再開に向けた取組につなげてまいりたいと考えています。

 また、他の被災地においては、既に本格的な操業が行われていますが、今回の改革により資源の維持、回復が図られることや、密漁対策が強化されることにより、より力強い復興につながっていくと考えています。(拍手)

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議長(大島理森君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 日本共産党の田村貴昭です。

 私は、日本共産党を代表して、漁業法等の一部を改正する等の法律案について質問します。(拍手)

 安倍総理は所信表明演説で、漁業法を七十年ぶりに抜本的に改正し、漁業の生産性を高めると述べました。しかし、法案は、水産の専門家が一人もいない規制改革推進会議が持ち出したものであり、官邸主導で進めてきたものであります。

 だから今、多くの単位漁協から、漁民の声を聞け、漁協の役割を潰すなとの声が上がっているのです。全国の沿岸地区の単位漁協一千組合。漁業者十四万人の声をしっかり聞くべきではないですか。

 現行の漁業法は、漁民の総意によって漁場を民主的に運用するため、地元の漁業者が全員加入する漁協を沿岸漁業権の一括した受け手とする仕組みとしています。これは、戦前の不在地主的な企業による支配で、漁業の利益が都市へと流出していったことへの反省からつくられた制度です。

 全国の沿岸では、地元優先の漁業権のもと、その地域に暮らす人々が漁業に携わり、漁村社会の豊かな文化と海の資源、環境を守ってきました。この漁業法の根幹を変えてしまうことは許されません。

 法案は、その漁業権を、知事が直接企業に与えることを可能とし、地元優先のルールは廃止するとしています。

 既にこの制度を先取りした宮城県の水産業復興特区では、知事が漁業者や漁協の反対を押し切って企業に漁業権を付与したため、浜に無用の混乱が引き起こされました。ようやく今、地元漁協と企業が、知事の持ち込んだ対立を乗り越え、協調して復興への道筋を探っているのです。ここから酌み取るべき教訓は、企業に漁業権を付与することでしょうか。

 水産庁は、地元漁業者が漁場を適切、有効に活用している場合は継続して地元に漁業権を与えると説明していますが、適切かつ有効とは一体何ですか。知事による恣意的な運用にならない保証はありますか。

 水産資源を管理することは、漁業にとって非常に重要です。法案は、魚種ごとの漁獲量の上限を計算し、個々の漁船ごとに漁獲枠を割り当てる制度を導入するとしていますが、広大な海に囲まれた日本は、三千以上の魚種を季節ごとに複雑多様な方法で漁獲し、利用しています。この制度で個々の漁獲量を正確に把握することができるのでしょうか。

 また、漁獲割当ての配分に沿岸漁業者の意見を反映する仕組みはあるのですか。浜の自主的な資源管理を支援することこそ必要ではありませんか。まき網などの資源に最もダメージを与える大規模漁業から順次制限していくべきではありませんか。

 禁漁を余儀なくされた場合、どのような補償をするのですか。

 クロマグロの資源管理では、政府が沿岸漁業者の意見を聞くことなく、一方的に大規模漁業を優先し、小規模な漁業者が生活できない事態に陥りました。同じことがほかの魚種でも起こるのではないですか。

 さらに、法案では、漁船の大きさを制限するトン数規制を撤廃することとしています。大資本が大型船に投資した金額に見合う漁獲枠を要求し、結果的に乱獲と小規模漁業者の割当て削減が進むのではないですか。

 また、漁業権について審議する海区漁業調整委員会の公選制も廃止し、知事による任命制にするとしています。これは漁業者の声を封じるものではありませんか。第一条の目的から漁業の民主化を図るの文言を削った理由とあわせて答弁を求めます。

 最後に、日本の漁業は九四%が小規模沿岸漁業です。全国の小規模漁業者には、俺たちこそ海の資源と環境を守ってきたという自負があります。今、漁業政策に求められているのは、小規模沿岸漁業を中心に据えることであり、地元から漁業権を奪って企業に明け渡すことではありません。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 田村議員の御質問にお答えいたします。

 全国の漁協及び漁業者の声を聞くべきではないかとのお尋ねがありました。

 今回の水産政策の改革、そして漁業法等の改正案の取りまとめに当たっては、これまで、水産政策審議会、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者との意見交換を行っており、法案の内容についても、漁業者の全国団体の理解をいただいていると承知をしております。

 もちろん、説明会には十分過ぎるという言葉は当てはまるものではなく、今後、法案については、国会でしっかりと御審議をいただくとともに、現場の漁業者の皆さんの不安や不満の声にもしっかり向き合い、引き続き丁寧な説明に努力してまいりたいと考えております。

 企業への漁業権の付与についてお尋ねがありました。

 漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。

 このため、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業権免許の優先順位を定める仕組みを改め、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者や漁協については優先して免許する仕組みとするとともに、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許することとしております。

 こうした改正は、現に地域の水産業を支えている漁業者の経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、地域の活性化につながるものと考えております。

 漁業の免許における、適切かつ有効の判断基準とその運用についてのお尋ねがありました。

 適切かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用している状況と考えております。

 具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁業に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的助言を定め、適切かつ有効の考え方を示していく考え方です。

 また、免許付与のプロセスにおいては、都道府県知事は海区漁業調整委員会の意見を聞くこととしており、知事が恣意的に運用できない仕組みとしております。

 漁獲量の把握についてもお尋ねがありました。

 ITの飛躍的発展により、低コストで漁獲量や漁業状況を把握することは技術的に可能となりつつあります。

 このため、漁獲量の把握体制等の準備が整った漁業種類、漁業区域等の管理区分から順次漁獲割当て方式を導入してまいりたいと考えております。

 沿岸漁業者の意見を反映する仕組みについてお尋ねがありました。

 漁獲可能量の配分については、水産政策審議会での諮問やパブリックコメントにより沿岸漁業者の意見を反映できる仕組みとなっており、これらの手続を丁寧に進めてまいりたいと考えております。

 浜の自主的な資源管理への支援についてお尋ねがありました。

 現在、漁業者の皆様には、資源管理計画を作成し、自主的な資源管理に取り組んでいただいております。

 今後とも、これらの取組の重要性は変わらないと考えており、このような取組の高度化に対する支援を継続してまいります。

 資源管理措置導入の順序についてお尋ねがありました。

 漁獲割当てを導入するためには、船舶ごとの漁獲量を迅速に把握する体制が整えられていることなどが必要と考えており、操業の隻数が比較的少なく、水揚げ港も限定されている大臣許可漁業から先行して導入していくことになると考えています。

 禁漁時の補償についてもお尋ねがありました。

 法案では、漁業調整の円滑な実施を確保するため、水産資源の状況及び当該水産資源の採捕の状況に照らし、当該水産資源の採捕に使用される船舶の数又は操業日数の削減その他の漁業者による漁獲努力量の調整を図るために必要な措置を講ずるものとすると規定されています。

 クロマグロの資源管理についてお尋ねがありました。

 クロマグロの第四管理期間における漁獲可能量の配分に当たっては、漁業者の意見を聞く時間が十分でなかったことを反省し、水産政策審議会資源管理分科会のもとにくろまぐろ部会を設置し、多くの漁業者からの意見を聞いて、配分の考え方について議論を行ったところです。

 クロマグロ以外の魚種の管理においても、クロマグロの経験を踏まえ、漁業者の意見を十分に聞きながら、適切な対応を進めてまいります。

 漁船のトン数規制の撤廃についてお尋ねがありました。

 本件は、漁獲割当てが導入され、漁獲割当てにより採捕する数量が一定割合を超えている場合、船舶のトン数制限等の措置を定めないとしたものであります。

 したがって、御指摘のような、船を先に大型化し、これに見合う漁獲割当てを認めるという制度ではありません。

 海区漁業調整委員会及び目的規定についてお尋ねがありました。

 海区漁業調整委員会については、漁業者を主体とする組織の性格や機能を維持した上で、実態に即した選任方法に改めるものであり、漁業者の声を封じるようなものではありません。

 また、目的規定については、漁業法の制定から約七十年の間の運用によって、当時の課題であった封建的な漁業慣行は解消され、当初の目的である民主的な漁場の利用形態の構築は既に実現されております。

 このため、現時点でなお漁業の民主化を法の目的とする必要はないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 森夏枝君。

    〔森夏枝君登壇〕

森夏枝君 日本維新の会の森夏枝です。

 私は、我が党を代表して、漁業法等の一部を改正する等の法律案について質問いたします。(拍手)

 漁業分野における外国人労働者についてお尋ねします。

 現在、漁業就業者数は約十五万人であり、年々減っています。そして、政府が今、臨時国会で進めようとしている、新しい在留資格である特定技能の受入れを要望している十四業種の中に、漁業が含まれています。

 今回の漁業法の改正においては、船舶のトン数制限を緩和し、それによって、船舶の大型化を図り、一人当たりの漁獲高をふやすことを狙いとしています。

 漁業先進国であるニュージーランドやアイスランドの漁業者一人当たりの生産量は、日本に比べて八倍から九倍もあります。ニュージーランド並みとは言えないまでも、漁業者の生産性を二倍以上に引き上げて、若者にとって魅力のある産業にすることが今回の法改正の目的であるとすれば、漁業への外国人労働者の導入は、一人当たりの生産性向上を阻害するのではないでしょうか。日本の若者が日本の漁業の発展のために漁業というなりわいを選択するための漁業法の改正であるべきです。

 農林水産大臣に伺います。

 政府は、新しい在留資格である特定技能について、年間四万七千人の外国人労働者が必要であるとしていますが、本改正法案で一人当たりの生産量を上げる中、漁業分野では年間何人の外国人労働者が必要であるとお考えでしょうか。お答えください。

 そして、今回の漁業法の改正は、日本の若者のためではなく、新たに受け入れることになる外国人労働者の収入向上を目的とした法改正なのでしょうか。お答え願います。

 個別割当て方式、いわゆるIQ方式の導入について伺います。

 平成二十年のTAC制度等の検討に係る有識者懇談会の取りまとめにおいて、IQ方式の導入は、多大な管理コストがかかることなどを理由にして、公的管理制度としての導入が見送られました。

 農林水産大臣に伺います。

 十年前にIQ方式の導入が見送られた理由について御説明ください。そして、今回、IQ方式が導入されるに当たり、その問題が解決されたのかどうか。導入してもよいと判断された理由をお答えください。

 漁業権について質問します。

 本法案では、都道府県が漁業権を付与する際の優先順位の法定制を廃止することとしています。規制緩和は望ましいことと考えますが、これまで行われてきた規制の効果について確認します。

 これまでの優先順位の制度には、どのような利点があったのでしょうか。そして、どのような問題があるのでしょうか。また、規制を撤廃する利点はどのようなことでしょうか。農林水産大臣、お答え願います。

 水産業協同組合法の改正について質問いたします。

 現在は、全漁連による監査が実施されていますが、本改正案では、移行期間をもって公認会計士監査へ移行することになります。

 農林水産大臣に伺います。

 現行の全漁連監査には、どのような解決すべき課題があるのでしょうか。そして、公認会計士による監査によって、どのような効果を想定しているのでしょうか。お答え願います。

 東シナ海においては、中国の漁船による乱獲によって、漁業資源の確保が危ぶまれています。

 先日、安倍総理が訪中し、十一の当局間文書の覚書を含むさまざまな約束が取り交わされ、いろいろな分野における協力関係が確認されました。

 このことに関連して、農林水産大臣に伺います。

 東シナ海における漁業資源の確保の方策についてはどのようにお考えでしょうか。漁業資源の管理について、中国との協議を進める考えはあるのでしょうか。お答えください。

 日本維新の会は、日本の若者がよい条件で漁業に携われる仕組みをつくるべきであると改めて主張しまして、私からの質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 森議員の御質問にお答えいたします。

 漁業分野における外国人労働者についてのお尋ねがありました。

 漁業につきましては、農林水産省といたしましても、設備投資、技術革新、新規就業者の育成、確保などによる生産性向上や国内人材の確保を引き続き強力に推進していくこととしておりますが、なお人手不足の状況を直ちに解消することは困難であると考えております。

 このため、現時点で、制度導入初年度が六百人から八百人、その後五年目までの累計で七千人から九千人の受入れを見込んでおります。

 漁業法の改正の目的についてのお尋ねがありました。

 今回の漁業法の改正は、我が国の漁業生産量が長期的に減少し、漁業者の減少、高齢化も進む中で、漁業者の所得を向上させ、我が国の水産業を将来を担う若者にとってもやりがいのある魅力的な産業とするため、水産資源の維持、回復を図るとともに、漁業者が将来展望を持って積極的に経営発展に取り組むことができるようにすることを目指すものであります。外国人労働者の収入向上を目的とするものではありません。

 IQの導入についてお尋ねがありました。

 IQ制度は、確実な数量管理が可能となるとともに、効率的な操業と経営の安定が促されるといったメリットがあると認識しており、漁業法案において、今後進めていく資源管理の大きな方向性として位置づけております。

 お尋ねの平成二十年に開催されたTAC制度等の検討に係る有識者懇談会においては、IQ制度を全面的に我が国に導入した場合には、漁獲量の迅速かつ正確な把握のため多数の人員が必要となり、管理コストが多大なものとなる等の課題が考えられることから、漁船隻数や水揚げ港数が多い我が国の漁業実態を踏まえ、その時点では適切ではないとの結論に至ったものであります。

 その後、ITの飛躍的発展により、低コストで漁獲量や操業状況を把握することは技術的に可能となりつつあることから、漁獲量の把握体制等の準備が整った漁業種類、漁業区域等の管理区分から順次IQ方式を導入するという方針に転換するものであります。

 漁業権の優先順位の法定制についてのお尋ねがありました。

 現行法の優先順位制度については、羽織漁師とも言われた、みずから漁業を営まない者による漁場利用の固定化を防止する観点から導入されたものですが、こうした法制定当時の課題は既に解消されています。

 一方、現行制度については、漁業権の存続期間満了時に、優先順位のより高い者が申請してきた場合には、再度免許を受けられないため、経営の持続性、安定性を阻害しかねません。

 また、漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。

 このため、本法案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業権免許の優先順位を定める仕組みを改めて、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者については優先して免許する仕組みとするとともに、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許することとしております。

 こうした改正は、現に地域の水産業を支えている漁業者の経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、地域の活性化につながるものと考えております。

 漁協の監査についてのお尋ねがありました。

 全漁連においては、これまで、公認会計士や水産業協同組合監査士を設置した上で信漁連等の会計監査を実施しており、漁協系統の信用事業や事業運営の健全性の確保に貢献してきたものと考えています。

 一方で、今後、国際的な金融規制の強化や会計基準の高度化等にこれまで以上に適切に対応していくためには、より専門的な知識、ノウハウを持つ監査体制が求められています。

 また、他の金融機関については既に公認会計士監査が導入されている中で、全漁連監査から公認会計士監査への移行により、より一層の信用事業や事業運営の健全性の確保に資することとなると考えております。

 東シナ海における資源管理についてのお尋ねがありました。

 東シナ海では、多数の中国漁船が操業し、水産資源に影響を及ぼしています。このため、日中漁業協定に基づき毎年開催している漁業交渉において、中国漁船の操業隻数や漁獲量上限の削減などを強く求めています。

 中国政府は漁船隻数や漁獲量を段階的に削減しつつありますが、依然として過剰な状況にあると認識をしており、引き続き、資源の回復に向け、毅然とした姿勢で対応してまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       農林水産大臣   吉川 貴盛君

 出席副大臣

       農林水産副大臣  小里 泰弘君


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