衆議院

メインへスキップ



第7号 平成30年11月20日(火曜日)

会議録本文へ
平成三十年十一月二十日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  平成三十年十一月二十日

    午後一時開議

 第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第五 特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 法務委員長葉梨康弘君解任決議案(辻元清美君外一名提出)

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

星野剛士君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 辻元清美君外一名提出、法務委員長葉梨康弘君解任決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 星野剛士君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、日程第一に先立ち追加されました。

    ―――――――――――――

 法務委員長葉梨康弘君解任決議案(辻元清美君外一名提出)

議長(大島理森君) 法務委員長葉梨康弘君解任決議案を議題といたします。

 提出者の趣旨弁明を許します。逢坂誠二君。

    ―――――――――――――

 法務委員長葉梨康弘君解任決議案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔逢坂誠二君登壇〕

逢坂誠二君 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表し、法務委員長葉梨康弘君解任決議案の趣旨の提案をさせていただきます。(拍手)

 まず冒頭に、実は、本日のこの趣旨弁明でありますけれども、ペーパーレスあるいは利便性の観点から、私は、日ごろからタブレットを利用しておりますけれども、そのタブレットを利用して説明をしたいということで、議会運営委員会に議運筆頭を通して提案をさせていただきました。ところが、今回は、タブレットの利用については議運の了解を得ることができませんでした。

 みずから実現可能な国会改革の小さな一歩かもしれませんけれども、そうした思いからの提案でしたが、タブレットを使うことすらできないとは、極めて残念なことと言わざるを得ません。

 このタブレットの利用については今後もまた提案をしてまいりたい、そう思っておりますけれども、ここで一言だけ、別の観点から、ペーパーレス、このことについて指摘をさせていただきたいと思います。

 ペーパーレスについても、いろいろなところで、どうだという声があるようです。

 私自身は、このペーパーレス、実は、ほとんどの書類を電子化し、即クラウドにアップロードし、タブレットの中で利用させてもらっています。

 ところが、このクラウド化、電子化、非常に便利な側面もある一方で、実は、複数の書類を一度に見ることができない、書類を見ながら電子的にメモをするためにはもう一台のPCやタブレットが必要になるということで、必ずしも便利でない側面もあります。

 そういった意味から、国会議員全員が全てタブレットを持てばペーパーレス化するというのは、少し難しい状況なのかなというふうに思っています。その点からすると、使えるところからタブレットを使っていく、そういうことによって少しずつこの利便性を享受していくということが大事ではないか、そう思っております。

 以上、冒頭申し上げさせていただきます。

 それでは、決議案の案文を朗読いたします。

  本院は、法務委員長葉梨康弘君を解任する。

以上であります。

 この臨時国会で唯一の重要広範議案とされているのが、入管法改正案です。この本会議で総理に対する質疑も行われました。外国人労働者受入れに関する制度の根幹を変える、移民法とも言われている法案であり、国民全体を巻き込んだ徹底的な議論が必要であることは改めて申し上げるまでもございません。

 入管法改正案は、がっちりと審議しましょう。数日間だけで審議を終わらせるのではなく。そんなことをしてしまったら、将来に禍根を残します。

 きょうは、その理由などを述べさせていただきます。

 また、一部マスコミでは、今回の委員長解任決議は審議をおくらせる野党の戦術との見方があるようです。その指摘は全く当たりません。真逆であります。なるべく多くの審議をしたい、それが私たちの思いであります。

 逆に、十分な条件整理も審議の見通しもないままに、拙速かつ強行的に審議を開始しようとしたのが葉梨委員長ではありませんか。もちろん、これが葉梨委員長の本心かどうかはわかりません。官邸の指示なのか国対の方針なのかわかりませんが、審議を回避しようとしているのは政府や与党の皆さんなのではありませんか。

 そもそも、来年四月から新しい在留資格を導入しようとする姿勢が大問題です。来年四月から導入するのであれば、今国会で成立させねばなりません。つまり、短い審議期間を設定したのは、法案提出者の政府の皆さんです。審議拒否、審議回避を画策したのは安倍総理そのものと言えるでしょう。

 国民の皆さん、だまされてはいけません。この間、審議拒否をしているのは政府・与党の皆さんです。

 昨年も、憲法五十三条の規定に基づき、野党が臨時国会の開催を要求しました。しかし、六月下旬から九月二十七日まで、そのことを拒み続けたのは政府です。そして、九月二十八日、やっと臨時国会が召集されたと思ったら、一切の審議もせずに解散です。これが究極の審議拒否ではありませんか。

 ことしの通常国会もそうです。五月下旬以降、繰り返し予算委員会の集中審議を求めてきました。しかし、与党は、それには全く応じようとはしませんでした。

 森友学園問題、加計学園問題、自衛隊の日報問題、公文書の改ざん、隠蔽、廃棄、捏造問題、裁量労働データの捏造問題、TPPなど貿易問題、日ロ、日中、日朝などを始めとする外交問題、福島原発事故の原因究明とエネルギー問題、人口減少対策、異次元の金融緩和を始めとする金融政策、財政再建問題など、あまたの課題があります。

 こうしたさまざまな問題がある、だから集中審議をしようとお願いをしても、一切それが実現することなく、七月二十二日の国会最終日を迎えました。これこそが与党の究極審議拒否ではありませんか。

 国民の皆さんには、政府や与党が行っている国会の審議拒否の現実をしっかりと確認いただきたく思います。

 一方、今国会では、予算委員会の田中和徳予算筆頭理事は、野田聖子予算委員長と全ての理事、オブザーバーが出席する予算委員会理事会の場で、今国会の予算の集中審議の実施を確約いただきました。

 そうなのです、この姿勢こそが大事なのです。審議から逃げ回ることなく、審議に真正面から立ち向かう横綱相撲をすること、それが国会で膨大な議席を占有している今の与党がとるべき態度でしょう。

 田中筆頭、臨時国会の会期も半分に達する時期です。予算委員会の集中審議の日程を決めましょう。予算の審議時間は朝の九時から夕方の五時まで、テレビ入りで、そして一日と言わず複数日にわたり、さらに、横綱与党らしく、野党の質疑時間を十分に確保して、がっちりと審議しようではありませんか。田中筆頭、よろしくお願いいたします。

 さて、入管法改正法案ですが、私たちは、この問題は国家百年の計にかかわる大きな課題と捉えています。だから、数日の審議で済まされるようなことではないと考えます。十分な審議をしましょう。国民の皆様にこの課題の重要性を理解してもらう努力、プロセスも必要です。とにかく十分に審議をすることを強く主張したいと思います。よもや、政府や与党の皆さんが審議を回避する、審議を拒否する、そのことがないように強くお願いをいたします。

 さて、三十年前のことになります。私は、ドイツを訪問する機会がありました。ベルリンの壁崩壊直後のことです。ベルリンの壁崩壊という世界史に残る一大事を自分の目で確かめたいと思って、一人でドイツ各地を歩きました。

 その際、フランクフルトで、中東からの労働者とドイツ人との殴り合いの場面に遭遇しました。二十人、三十人ほどの大人が殴り合っているのであります。私には衝撃の光景であり、背筋が凍るような恐怖を覚えたものです。

 私は、それ以来、外国人労働者問題の難しさ、問題の深さ、大きさを痛感するようになりました。だからこそ、慎重かつ丁寧な審議が必要なのです。与党の皆さん、慎重で中身のある議論をしようじゃありませんか。

 私のふるさとは、北海道、ニセコという町です。ニセコの町長も三期務めさせていただきました。

 ニセコ町は、人口五千人余りの小さな町です。小さな町のメリットを生かし、SDGsなども念頭に、環境に配慮したまちづくりを私の後の町長さんも続けてくださっていると認識をしております。本多平直さん、そうですよね。本多さんの選挙区で、私の後輩の町長も一生懸命頑張っている、そう認識をしております。

 現在、このニセコ町の人口の約一割が外国人です。現在、ニセコ地域は多くの外国人でにぎわっております。外国人の働き手もたくさんおります。来年はG20の閣僚会議もこのニセコ地域で開催されます。インターナショナルスクールもあり、私の卒業した小学校の各クラスには数名の外国人もいるというふうに聞いております。先日、このニセコ地域のあるホテルに電話したところ、第一声がもしもしではなくハローでした。理由を伺うと、日本人よりも外国の方からの電話が多いからとのことです。

 このように、多くの外国人でにぎわっているのが、今の私のふるさとニセコ地域の現状です。

 もちろん、課題もたくさんあります。地価が高騰したり、医療機関でのトラブルがあったり、契約上の紛争もあるようです。しかし、今のところ、外国人との関係が割合にうまく進んでいる地域だと思います。

 今後のことはなかなか予測がつきませんが、なぜニセコ地域は外国人との共生が比較的うまく進んでいるのでしょうか。

 発端は二十年ほど前です。

 そのころから、外国人観光客に的を絞った誘致活動をしておりました。町役場の職員も随分と海外に派遣をしました。海外の観光系のメディア、記者の皆さんにも、ニセコ地域に来ていただいて、地域のよさを知ってもらう取組もさせていただきました。

 そして、このころ、ニセコ地域で起業した二人のオーストラリア人がおりました。今でこそ多くの人が知るものとはなりましたけれども、当時としては珍しい、ラフティングやバンジージャンプなどのアウトドア体験ができる仕事を始めたのです。

 彼らは、地域とも丁寧な話合いをしながら、ニセコ地域の新しい観光の魅力を発掘する取組を開始しました。私は何度も話をさせていただきました。これが、外国人でにぎわうニセコ地域の今の出発点です。

 二〇〇一年九月十一日、ニューヨークでテロが発生しました。これがまた、ニセコ地域の一つの転機になりました。あのテロの直後、世界の旅行の動向が変化したのです。

 北米やヨーロッパに行っていたオーストラリアの方々は、テロへの恐怖から、行き場を失った格好になりました。そこに、このニセコ地域に住む二人のオーストラリア人が目をつけたのです。日本は、テロのおそれが少なく治安もよい、時差も小さい、季節が逆転しており非日常が楽しめる、こんなよい条件がそろっているのだから日本に来ない手はないというのが彼ら二人のもくろみでした。

 ところが、当時のオーストラリアでの日本に対するイメージは、東京が中心であります。気温が高い、湿度が高い、そんな印象だったと聞いております。そのイメージの転換を、ニセコ地域に在住の二人のオーストラリア人が活躍をしてイメージの転換をすることになったわけです。日本には雪の降るニセコという地域がある、その雪質は、北米や欧州に劣らないどころか、もっとよいかもしれない、アウトドアのフィールドとしての価値も高い。こんなことがきっかけとなって、ニセコ地域は、アジア各国だけではなく、オーストラリアを皮切りにして多くの外国人が来訪するようになったのです。

 もちろん、ニセコ地域には課題も山積しています。しかし、とりあえず、今のところ外国人との共生は比較的うまく進んでいるようです。でも、それはなぜでしょうか。幾つか理由を挙げてみたいと思います。

 まず、最初は少ない数の外国人とのかかわりだったこと。さらに、実際に外国人の来訪がふえる前から、町役場でも将来を見据えて、臨時職員としてオーストラリア人など継続採用をしたり、逆に町の職員をオーストラリアに二年程度派遣をするなどの取組を行っておりました。それと、ニセコを訪れる外国人にも地元に住んでいる皆さんにも、観光を軸にして地域を元気にしたいという共通の目標がありました。更に加えて、二人のオーストラリア人も地域のコミュニティーになじもうと努力をし、実際になじんでいた、こういうことも理由の一つでしょう。さらに、役場や観光協会なども彼らとのコミュニケーションを大事にしていたこと。こんなことがあって、私は、今のニセコ地域、比較的外国人との共生が今の段階ではうまく進んでいるのだと思っています。

 一方、日本の各地、外国人居住比率の高いところでさまざまなトラブルが発生しているのは御承知のとおりです。

 ニセコ地域は、この二十年余りをかけて、階段を一段一段上るようにしつつ、現在の状態になっております。このようなケースは全国的にはまれかもしれません。

 一方、今回の入管法改正であります。今回は、永住権の問題は棚上げされているものの、ある一定の規模で、日本の働き手として、ニセコのように自然発生的かつ段階的ではなく、一時的に数多くの外国人を受け入れることを想定しております。だからこそ、極めて丁寧に、丁寧に議論をしなければなりません。そのことを改めて主張させていただきます。

 さて、法律には立法事実が必要です。今回の法案では、人手不足、それが立法事実となるのでしょうか。

 私の会社は人手不足だ、だから外国人材が必要だ、確かにそうでしょう。とにかく急場をしのぐために外国人材に来てもらわなければ会社が倒産する、確かにそのような状況もあるでしょう。少子化の中で、外国人材を導入しなければ経済の維持発展がかなわない、確かにその側面もあるでしょう。

 しかし、社会の必要があるからといって、その必要に応えるだけの対応をしている、それだけでは、立法府に属する政治家の役割を果たすことはできません。政治家の政治家たるゆえんは、こうした社会の必要に対して直接応えるだけではなく、その必要を実現したら中長期的にどんな問題が発生するのか、それらの問題を引き起こさないためにはどんな対応が必要なのか、今、足元の国民の声だけではなく、中長期的な日本のあり方も念頭に置きながら対応しなければなりません。

 足元の経済の活性化、これは、経済界の皆さんだけではなく、国民の大きな願いだと思います。大企業も中小企業ももうかる、それは極めて大事なことであります。しかし、そのことによって不都合が生ずるとすれば、それへの対応策を考えねばなりません。その対応策は、経済界の皆さんの目指す方向と対立をする場合もあるかもしれません。しかし、こうした作業は政治にしかできないことなのだと思います。

 政治には、国民や社会の必要を超えた配慮、想像力が必要です。まさに、今回の外国人労働の問題には、そうした配慮、想像力が最高に求められる場面ではないでしょうか。それにもかかわらず、今回の法案を短期間で拙速に世に送り出すのは、狂気の沙汰と思わざるを得ません。

 葉梨委員長は、警察行政を経験し、法務省でも副大臣を務め、法務委員長も二度目の就任となります。法務大臣に最もふさわしい、法務行政に精通した方と私は認識をしております。今回、その葉梨委員長が拙速に審議を進めようとしているとするならば、大きな警鐘を鳴らさねばなりません。

 一方、今回の法案担当の山下大臣にも言及せねばなりません。

 衆議院当選三回で、今回、大臣に抜てきされました。もちろん、法務省の勤務経験もあり、法務行政に精通された方なのだと思います。しかしながら、この間の国会答弁を聞いておりますと、その資質は大丈夫なのかと不安に思う場面も多々あります。

 今回の外国人材の受入れに関し、受入れ数の上限規制を設けるべきとの質問に対し、山下大臣は、この一日の衆議院予算委員会で、数値として上限を設けることを考えてはいない、断言をいたしました。ところが、この十三日、衆議院本会議で安倍総理は、業種別に明らかにする受入れ見込み数について、それを上限として運用すると語っております。これは閣内の不一致ではありませんか。

 また、来年四月に改正法案の施行を急ぐ理由を問われた山下大臣は、施行が半年おくれれば、万単位の方々が帰ってしまい、我が国の経済に深刻な影響を与えると十五日の参議院法務委員会で発言されました。これは驚きの発言ではないでしょうか。これは、技能実習制度が、本国に帰国をして貢献する、そういう技能実習制度を否定する発言ではありませんか。あるいは、技能実習生を単なる労働力としか見ていない本音を吐露したものなのでしょうか。

 入管法担当の山下大臣の答弁が極めて不安定であり、こうした大臣のもとでの議論は、丁寧に議事録を確認しながら行わなければなりません。その意味でも、本法案の拙速な審議を避けなければなりません。

 この法案に対する与党内の審議も難航したのではないでしょうか。それは、この問題が一筋縄では進まない複雑な要素をはらんでいることのあらわれだと思います。

 報道からその一端を紹介したいと思います。

 法務部会は午後四時半過ぎから始まった。日本には正社員として働きたくても働けない人もいる、順番が違う、外国人の安い労働力を人権の担保なく受け入れるのか。出席議員から慎重論が相次いだ。とりわけ批判が集中したのは、新たな在留資格、特定二号だ。入管法改正案は、特に高度な能力があれば、滞在期間を延長し、家族も帯同できる新在留資格と位置づけている。永住を広く認めることになると見た議員から、本当に移民ではないと言えるのかといった発言が続いた。

 午後七時四十分、山下貴司法相と森山裕国対委員長が法務部会に登場した。国対委員長が部会の法案審査に出席するのは極めて異例だ。山下法相は、決議案をしっかり省令に盛り込む、よい法律にすると理解を求め、午後八時過ぎ、決議をして了承をとった。

 この後、記事は更に続きます。

 二十二日から審議が始まった党法務部会では慎重意見が相次ぎ、徐々に出席者もふえていった。リハーサルのない社会実験になるのではないか、国民が分断されかねない、自民党が移民受入れを認めたと有権者に思われたら、党の支持者が離れ、参院選に影響するといった意見が続出した。政府の側が二〇一九年四月からの受入れ拡大を明言していることにも、特段の理由があるのかとの批判もあった。

 これが、今回の与党内の審議の困難さ、これを象徴する報道だというふうに思います。今のは日本経済新聞から引用させていただきましたが、ほかの新聞でも同様の報道があったのは、皆さん御承知のとおりであります。

 そして、更に言うならば、閣議決定が迫っているにもかかわらず、山下大臣がこの法律について、よい法律にする、そう発言したのには、私は本当に驚きました。これはどういう意味でしょうか。現時点で内容が何も決まっていない、中がからからのすっからかんである、そのことを大臣みずからが認めた、そうとられかねない発言ではないでしょうか。

 今回の法案は、国のあり方を根本から変えかねない大変重要な法案であります。与党内にもいろいろな御意見があったのだろうと推察をします。大変結構なことだと思います。ただし、この議論を終えられた後も、この法案にあくまでも反対だと明言をしている議員までおられました。与党の皆さんの中にも、まだまだ徹底的に議論すべきだという方が実は多いのではないでしょうか。皆さんは、この入管法、このまま官邸、政府の言うとおり通してよいと本気で思っているのでしょうか。

 過日、この問題をテーマにしたテレビ番組に、ある与党の議員と一緒に出演をしました。あえて名前は伏せますけれども、外国人労働問題に精通した議員であります。その方が、この法案は修正が必要だ、それを明言するのであります。これには私も驚きました。その方は正直な方なのだと思います、この法案には問題が多いことを認めているのですから。

 こんな状態ですから、本法案の審議は拙速であってはなりません。慎重に、慎重に行わなければならない、そのことを繰り返しお話しさせていただきます。

 それでは、法案の問題点について言及したいと思います。

 まず、立法事実の確認であります。

 今回の法案は、人手不足を大きな理由として提出されています。

 確かに、現在、各地で、あるいは多くの分野で人手不足の声を聞きます。しかし、そうした声があるからといって、漫然と海外の方にお越しいただくわけにはいきません。人手不足と判断する明確な根拠がなければなりません。明確な根拠がない中で外国人材を受け入れてしまいますと、過剰な受入れとなり、日本の労働現場に混乱をもたらすおそれがあります。また、人手不足を判断する明確な根拠がなければ、人手が充足したとの判断も的確にはできません。

 これまでの質疑や政府とのやりとりの中では、この点については明確な答弁はありません。すなわち、立法事実が具体的かつ論理的ではないのであります。これでは法案審査が難航することは目に見えております。

 先日、政府に何度もお願いをして、やっと受入れ見込み数が提出されました。それにおくれて、その人数算定の根拠も提出されました。この受入れ見込み数は、立法事実として重要であるばかりではなく、今後の外国人材受入れの上限ともなる重要な数値であります。したがって、それをどのように算出したのか、その根拠があやふやなものであれば、将来に大きな禍根を残します。

 後に時間があれば個別業種ごとの問題点に言及したいと思いますが、全体に共通する問題として、二点指摘させていただきます。

 生産性の向上率の問題であります。今回の人材確保の中に生産性の向上率ということが指摘されておりますが、今回の算定の根拠は、生産性の向上率が業種を問わず年一%で、ほぼ横並び状態です。本来、生産性のあり方は業種ごとに違っているはずでありますが、この点、もっと精査が必要なのではないでしょうか。

 国内人材の確保においても、高齢者や女性、若者など、それぞれが何人かが読み取れない内容です。曖昧な根拠では過大な受入れにつながり、国内雇用に影響を及ぼすおそれがあるのは指摘したとおりでございます。法案議論の出発点となる人手不足、受入れ見込みの人数など立法事実が曖昧であり、これらの点を明らかにする意味でも、慎重な審議が必要になっています。

 次に、二つの新聞記事を紹介いたします。

 政府は単純労働を含む外国人労働者の受入れを拡大する出入国管理法改正案を閣議決定した、これは日本経済新聞の十一月二日のネット記事であります。単純労働を含む外国人労働者の受入れを拡大すると記事には書いております。

 もう一つの記事です。

 政府は、二日午前、出入国管理法改正案を閣議決定した、日本経済の成長の阻害要因になっている人手不足に対応する狙い、単純労働分野での就労を認め、大学教授や弁護士など高度な専門人材に限っていた従来の受入れ政策から大きく転換する、これは産経新聞十一月二日の、同じくこれもネット記事であります。

 いずれの記事も単純労働に言及しています。ところが、先日発表された受入れ見込み数に関して政府の参考人は何と発言をしたか。受入れ見込み数には単純労働者は入っていない、こう説明をしています。一体この違い、そごはどこから来るのでしょうか。

 政府は、これまで単純労働について、例えばと留保をつけた上で、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働というだけで、具体的にどんな仕事を示すのかを明らかにしておりません。

 法務省からのヒアリングの中で、私が、特段の技術、技能、知識又は経験を必要としない労働とは具体的に何を指すのかと尋ねたところ、こんな答えが返ってきました。土を右から左に移すようなものとの答弁でありました。今、ええっという驚きの声が上がりましたけれども、私も、この発言を聞いて、跳び上がるほど驚きました。そこで、私から、土を右から左に移すだけの仕事、そういう仕事というのは世の中に存在するのか具体的に明示してほしい、お願いをいたしましたところ、法務省の職員は答弁に窮してしまったわけであります。

 すなわち、単純労働という言葉は使っていますけれども、その具体的な内容も定義をせずに使っている、これが実態ではないでしょうか。安倍総理も、十二日の衆議院本会議で単純労働者の受入れは十分慎重に対応することが不可欠と述べるだけで、単純労働者とは具体的にどんな仕事なのかについて明言を避けています。単純労働の定義も具体例も明確にできていないのに、受入れ見込み数には単純労働者は入っていないと明言するのは、詭弁に近い発言ではないですか。

 単純労働とは何かを明らかにすることがないままだと、幾ら法案の議論をしても無意味なものになってしまいます。この点が曖昧なままでは法案審査が進みません。その意味からも、極めて慎重な審議が必要になっています。

 安倍総理は、いわゆる移民政策はとらないと繰り返し述べています。その一方で、移民の定義に関しては、一概には答えられないとも答弁しています。これではまるで、独裁者とは何かはわからないけれども私は独裁者ではない、こう言っているようなものであります。法案を提出した内閣の長である総理がこんな矛盾に満ちた発言をしていることは、大問題ではないでしょうか。

 また、安倍総理は、移民政策に関し、国民の人口に比して、一定程度の規模の外国人やその家族を、期限を設けることなく受け入れ、国家を維持していこうとする政策、その政策は考えていないと答弁しております。これが安倍総理の移民の定義なのかははっきりしませんが、いずれにしても、総理はこんなことを言っているわけです。

 だけれども、皆さん、冷静に考えてみてください。今回、五年間で三十四万人の外国人を受け入れると政府は言っておりますが、これは、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人には該当しないのでしょうか。あるいは、特定技能二号であります。これは家族の帯同を認めます。しかも、期限の定めのない在留資格であります。この特定技能二号は、総理の言うところの、外国人やその家族を期限を設けることなく受け入れることではないのでしょうか。あるいは、人手不足分野へ技能を有する外国人を受け入れることは、外国人労働力で国家を維持することではないのでしょうか。

 冷静に考えてみますと、総理が導入しないと公言している政策は、今まさに閣法で実施しようとしている政策なのではないですか。

 我が国には、一九八二年に廃止されるまで、移民保護法という法律がありました。この法律における移民の定義は、労働に従事するの目的をもって海外に渡航する者、これが移民の定義でありました。労働に従事するの目的をもって海外に渡航する者、これが移民の定義であります。労働目的で海外に渡航する日本人は移民であり、労働目的で日本に来る外国人は移民ではない、こんな論が成り立つんでしょうか。

 この移民の問題に関しては、さまざま、疑問がたくさんあります。この点も確実に審議をしなければならない、そう思っております。

 さらに、医療保険、年金、労働保険などの社会保険の適用はどうなるのでしょうか。今回はこれらに関連する法案が提出されておりません。そうなりますと、現在の技能実習生と同様に、特定技能一号、二号の皆さんも、日本人と同様の条件のもとで社会保険が適用されることになります。政府は、これでよいと考えているのでしょうか。その点も極めて曖昧であります。これでは審議にはなりません。

 さらに、全国各地の外国人にまつわる課題、例えば、日本語教育、子供たちの教育、ごみの排出方法、地域の町会などコミュニティーの問題、近隣同士でのトラブルなど、こうしたことは全て自治体の現場での対応となっています。その経費の多くは自治体の負担であります。

 しかし、今後、本格的に外国人労働者の皆さんが入国されるようになっても、こうした問題を自治体任せでよいのでしょうか。私は、国と自治体との責任や経費の分担も必要になってくると考えていますが、現在はこれらのことについて何も決まっていません。このままでは自治体の混乱は増すばかりであります。

 新設される特定技能一号、二号と永住権の関係も不明確です。

 現行の技能実習を五年で修了し、特定技能一号に移行し、最大働けば、十年となります。永住権に関する政府のガイドラインによれば、原則として引き続き十年以上日本に在留していること、ただし、この期間のうち就労資格又は居住資格をもって引き続き五年以上在留との条件を満たせば、永住権取得の要件を満たすことになります。そこで問題になるのは、特定技能が就労資格なのかどうかでありますけれども、この点について、法務省は、現在検討中、これを繰り返すのみであります。

 永住権を取得できるのかどうかは、移民問題とも関連して、極めて大きな関心事であります。

 今、委員会でやれ、委員会でやれという声が飛んでいるようでありますけれども、こうした基本的な事項は、法案が閣議決定される段階には、政府の考え方としてしっかり定まっていなければならない。与党の中でも大きな議論になった、移民であるかどうかを判断する基本的な要素、どうだったら永住権が与えられるのか、そのことすら決めないで法案を出していることの方が大問題なのです。

 私は、今回のこの葉梨委員長解任決議趣旨弁明の中で、いたずらにこの趣旨弁明の時間を延ばそうなどとは思っておりません。この法案のどこに問題点があって、なぜ慎重審議が必要なのか、そのことを説明しているのみであります。特に、今回の法案で問題になるのは、法案の根幹になる基礎的事項が何も定まっていない、だから大問題なんですよ。そんな法案を国会に出して、数日の審議でお茶を濁そうなんというのは、日本の将来に大きな禍根を残す。

 さて、落ちついて、この法案の問題を更に指摘をしていきたいと思います。

 技能実習の移行対象職種、現在、七十七職種百三十九作業ありますけれども、これがどのような形で特定技能に移行できるのかも明らかではありません。技能実習のどの作業が特定技能にどのような形で継続できるのか、これがわからなければ、真の意味での人手不足や受入れ予定人数がわからないはずであります。これは、先日、法務委員会で我が党の山尾委員も指摘したとおりであります。

 この点からも、政府の受入れ予定数の把握は根拠に乏しいと言えます。こうした点からも、法案に対する結論は拙速に出すことはできないのであります。

 次に、今回の法案の改正目的、それによって目的規定が次のように変わります。外国人の在留の公正な管理を図るというふうに目的規定が改正されます。ここには、共生や支援の概念は含まれておりません。

 私は、外国人の国内への広い意味での移り住みは、入国管理政策だけで対応できるものだとは思っておりません。古い言葉で言えば統合政策、最近では多文化共生政策と呼ばれるようでありますけれども、入国管理政策と多文化共生政策が車の両輪のようにセットになって、初めて外国人の国内への移り住みに対する適切な政策の実現が可能になると思います。

 ところが、今回の法案では、その片方である入国管理政策しか明記がありません。これでは、外国人の管理だけが目的の法案になってしまいます。こんな状態で、本当に外国の皆さんから日本で働きたいと思っていただけるのでしょうか。

 このように、政府の外国人受入れに関する基本姿勢が、法案上、入国管理だけに力点を置いた中途半端なものになっています。多文化共生といった側面からも、十分な対応が必要であります。その意味からも、相当な議論、審議が必要であります。

 先ほど来、与党席から、委員会でやれ、委員会でやれとのやじが飛んでおります。私も、委員会でがっちり審議をすべきだと思っております。

 しかし、なぜ今ここで委員長解任決議を出さざるを得ないのか。それは、葉梨委員長が拙速に審議を進めようとしている、そして、与党のさまざまなところから、この法案は早期に仕上げる、そういう話が聞こえてくるから、私は、この法案の問題点、議論しなければならない論点を提出して、こういうところに十分な議論が要るんだ、その説明を単にしているだけであります。

 技能実習三年修了者は、今回、無試験で特定技能一号に移行できるとのことであります。つまり、技能実習三年修了者は、特定技能一号に必要な日本語能力を満たしているものとみなされるわけでございます。

 しかし、現在の技能実習制度では、雇用主に日本語教育に関する支援を義務づけておりません。そのために、技能実習生の中には日本語能力が十分ではない者がいる可能性はあります。こうした者を放置する、そのままにして無試験とすることで本当によいのでしょうか。

 海外から来られる皆さんへの日本語教育の機会の充実は、極めて大事なポイントであります。ドイツでは、過去の移民政策への反省から、現在、六百時間のドイツ語教育を実施しているとの情報もあります。こうした点もしっかり審議しなければなりません。一日や二日の審議では全く不十分なのです。

 今回の在留資格の拡大は、現行の技能実習制度を前提として、新たな在留資格である特定技能に無試験で継続させるもの、そういう制度であります。その意味では、現行の技能実習制度の五年間の単純延長とも言える制度改正であります。そうなれば、当然、現行の技能実習制度に問題、課題がないかを十分に検証した上でなければ、新たな制度を継ぎ足すことはできません。ここが、今回、法案審議の極めて大切な点の一つであります。

 本年一月からの半年で、技能実習元から正規の手続を経ないで去った方が四千名を超えるとのことです。平成二十九年も、七千名の実習生が正規の手続をせずに実習元を去っています。政府はこれら実習生を失踪者と呼んでいるようですが、なぜ実習元を去ったのか、その実態が明らかではありません。

 その手がかりとなるのが、政府が言う失踪者に対する聞き取り調査であります。

 二十九年は約二千八百名から聞き取りをしたと承知をしています。この調査は、衆参両院の決議に基づく調査です。しかし、政府は、実習生の実態を明らかにする手がかりとなる調査、その個票を開示しようとはしませんでした。法務委員会理事会での強い、粘りのある交渉の結果、プライバシーに関する部分を伏せて、昨日、やっと公開されました。

 しかし、その公開のあり方は余りにも理不尽であります。

 閲覧をできるのは原則理事のみで、コピーはできません。そのため、私たちは、原票一枚一枚を手書きで書き写す作業を強いられております。

 昨日、私もその作業に携わりましたが、一時間に二十枚を書き写すのがやっとの状態であります。これをもし仮に一人で行えば、百四十三時間半もかかってしまいます。百四十三時間半、飲まず、食わず、寝ずにやって六日以上もかかる、これが今政府が我々に強いている個票の公開状況であります。仮に野党が協力して四人で作業を行っても、個票全てを書き写すのに約三十六時間もかかります。

 国会の決議で行った調査結果を把握するために、なぜこんなに理不尽な作業を私たちは強いられるのでしょうか。これも、政府・与党が私たちに審議をさせないとする審議拒否なのではないでしょうか。

 さらに、総理も山下大臣も、この調査個票は、刑事訴追のおそれがあるとの理由で、公表を拒んでおりました。ところが、個票を見ると、刑事訴追とは無縁の内容なのです。総理や山下大臣は、国会での虚偽答弁をしてしまったのでしょうか。この点もはっきりさせてもらわねばなりません。

 さらに、この点に関して、政府に強く求めたいと思います。技能実習の実態解明の手がかりになる個票については、閲覧ではなく、コピーによって公開することを強く求めます。さらに、総理と山下大臣の虚偽まがいの答弁、この答弁の撤回も強く求めます。

 現在やじを飛ばしている方は、私がなぜ、この葉梨法務委員長解任決議、これを言わなければならないのか、これで多分、私、四度目ぐらいの説明になると思いますけれども、まだおわかりになっていないようであります。

 どういう重要な問題が含まれているのか、慎重な審議が必要なものである。それを、拙速にこの法案を通すことがあってはならない。だがしかし、政府・与党からは、短期間のうちにこの法案を通すという話が聞こえてくる。事実、先日も政府が公表したデータに誤りがあった、にもかかわらず、法務委員会を強行しようとしている。それは断じてならない。そのことを明らかにするために、私はここで発言をしているのであります。

 先ほど、きょうの午前中でしょうか、山下大臣が記者会見をしておられました。今回のこのデータ集計の誤りについて、極めて軽率な、けしからぬことだ、あってはならないことで、心からおわびしたいと謝罪をしました。この謝罪がもし本当であるならば、委員会の場でしっかりと、具体的な数字を出して、個票も公開して審議をする、これが当然のことだと思います。

 それと、この記者会見で、山下大臣はこうも言っておられます。今回の法案について、技能実習制度とは全く異なるものだ、こう言っているわけです。全く異なるものだ、政府はそういう説明もしているようでありますけれども、一方、十八日のNHKの「日曜討論」、自民党の田村憲久政調会長代理は、技能実習をきちんとした雇用に置きかえていくのが特定技能だと述べているわけです。一体これはどっちが本当なんでしょうか。

 このことについて、きょうの朝日新聞の社説はこう書いております。「はじめて聞く話だ。政府はこれまで、二つの制度は別のもので、技能実習は存続させると説明してきたはずだ。党の政策調整の要の地位にある人物と政府の言い分が食い違う。法案の目的さえ共有できていないことを示す事実ではないか。」。

 さて、慎重に審議をしなければならない理由、これをもう少し申し上げさせていただきます。

 それは、これまで政府が公開していた技能実習生への調査結果が全くのでたらめだったということであります。コピー・アンド・ペーストの間違いなどと法務省はつまらない言いわけをしていますが、あの数々の数字の間違いはそんな軽い話なのでしょうか。

 代表的な例を挙げれば、失踪した技能実習生の失踪理由の項目であります。

 調査票には、低賃金であること、低賃金でしかも最低賃金以下であること、低賃金でしかも契約賃金以下であることと、この三つに分けて回答できるようになっています。ところが、政府の発表の資料では、これらの三つの理由をまとめて、全て、より高い賃金を求めてと勝手に解釈をしているわけであります。これでは、なぜ技能実習生が失踪しなければならなかったのか、その理由がわからない。本当の理由を覆い隠すためにこんな丸め方をしたのではないか。悪意すら感じる蛮行と言わざるを得ません。

 これは、調査結果の捏造、改ざんの類いの話であり、言語道断であります。法案審議の前提がもはや崩壊しかねない重大な事態であります。法務省が出す資料、データに信用が置けない事態であります。どこでどんな隠蔽や捏造、改ざんが行われているのか、わかったものではありません。

 皆さん、同じようなことが前の通常国会でもございませんでしたか。あの裁量労働制のデータの改ざんであります。野党側が発見、厳しく指摘したデータの改ざんを、結局、総理も厚生労働大臣も認めざるを得なくなり、法案の修正にまで追い込まれたことは記憶に新しいところであります。

 あのていたらくを政府はまた繰り返そうというのでしょうか。正直言って、残念でなりません。内容やバックデータがずさんなまま、ぬけぬけと法案を出してくる、今の安倍政権の姿勢には改めて強い警告を発しておきたいと思います。

 入管法改正案、まだ国会での審議は始まったばかりですが、はっきり申し上げて、中身はすかすか、根拠となるデータも全くもってむちゃくちゃであります。現場の声を聞こうとしない官邸、政府の暴走の結果なのかは知りませんけれども、こんな論外の法案をただただ通すだけの国会であってはなりません。

 議場の皆さんに申し上げます。

 国権の最高機関である立法府は、官邸、政府の言うことを唯々諾々と聞くことではありません。出された法案を、言われた日程のとおりに、ただただベルトコンベヤーのように右から左へと通すことではありません。当たり前の話でありますけれども、私も皆さんも国民の信託を受けて当選した国会議員であります。政府にできの悪い法案を押しつけられる筋合いはありません。日程を言われる筋合いもありません。政府の言いなりになる必要もありません。

 私から言わせれば、この入管法改正法案、国民に対する思いもなければ、外国人労働者という重い課題への深い洞察のかけらも感じられません。技能実習生の皆さんの苦しみも見えない、すかすかで、できの悪い粗悪品としか言いようのない代物であります。官邸と法務省にのしをつけてお返ししたい代物であります。顔を洗って出直してこい、そういう類いの法案だと思います。

 さらなる検討が必要です。国民の皆さんに関心を持っていただき、十分な時間をとっての議論が必要です。さっさと国会を通すようなことが断じてあってはなりません。

 それにもかかわらず、とにかく強引に法案審査を進めるかのような葉梨委員長の姿勢は、決して許されるものではありません。立法府に身を置く者としての矜持が少しでもあれば、政府に対して、もっときちんと説明しろ、ちゃんと正確な資料を出せ、それがなければ絶対に質疑に入らない、そう厳しく物申すのが法務委員長たる者の責務ではありませんか。

 通常国会終了後、七月末に、大島理森衆議院議長が所感を発表されました。この議場内であの所感を熟読していない方はよもやおられないとは思います。私たちは、この所感をいま一度熟読し、この入管法改正案なるできの悪い代物をどう取り扱うか、再考すべきであります。

 所感にはこうあります。

 憲法上、国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関として、法律による行政の根拠である法律を制定するとともに、行政執行全般を監視する責務と権限を有しています。これらの権限を適切に行使し、国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提となっていることは論をまちません。これは、議院内閣制のもとの立法、行政の基本的な信任関係ともいうべき事項であります。しかるに、財務省の森友問題をめぐる決裁文書の改ざん問題や、厚生労働省による裁量労働制に関する不適切なデータの提示、防衛省の陸上自衛隊の海外派遣部隊の日報に関するずさんな文書管理などの一連の事件は全て、法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、立法府、行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがすものであると考えねばなりません。

 所感はこうつづっておるわけでありますけれども、皆さん、おわかりだと思いますが、官邸、政府はまたしても法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせようとしており、今この事態は、まさに立法府、行政府相互の緊張関係の上に成り立っている議院内閣制の基本的な前提を揺るがしているものではありませんか。

 私は、特に、これから述べる部分も重要だと思っております。

 大島議長が政府に対して、個々の関係者に係る一過性の問題として済まされるのではなく、深刻に受けとめていただきたいと強く警告をされております。それにもかかわらず、官邸、政府は、馬耳東風、馬の耳に念仏、のれんに腕押し、またしても立法府を冒涜していると言わざるを得ないのです。

 これは、与党、野党対立の問題ではありません。

 葉梨委員長は、政府に対して厳しく物を言う先頭に立つべき立場なのです。法案審議の日程を勝手に決めるなど論外であり、葉梨委員長がまず戦うべき相手は官邸、政府であります。それにもかかわらず、誰に対して何をそんたくしているのか、全く理解に苦しむ委員会運営であります。

 また、私の尊敬する自民党森山国対委員長のことにも言及せねばなりません。

 森山国対委員長は、今回の解任決議案提出後の記者会見において、いわゆるぶら下がりと言われるものにおいて、次のように述べておられます。葉梨委員長の議事運営は何一つ瑕疵はない、解任決議を出されたのは極めて遺憾なことだと考えている、こう述べているのですが、森山委員長は、きょうの私のこれまでの話を聞いて、この認識をぜひ改めるべきだと思います。

 次に、森山委員長は、記者から審議の見通しを問われると、これまた驚愕の発言をしました。委員長の解任が否決されたらいわゆるスーパー委員長になられるから、あとは、委員長が祭日だろうと土曜日だろうと日曜日だろうと委員会を開く権限があるので、委員長の判断でお決めいただく、こんな発言をされたのであります。

 これは、国権の最高機関の運営を与党として仕切る責任者の発言でしょうか。私は、この発言を聞き、あいた口が塞がりませんでした。

 皆さん、いま一度考えていただきたいのであります。

 外国人受入れの問題は、制度や仕組みが整えばよいというものではありません。外国人を受け入れる側の日本の国民の皆様の認識、心構えが大変重要であります。

 例えば、仮に外国人労働者のことを単なる賃金の安い働き手であるとの認識が国民の中に蔓延している状況の中では、どんなによい制度、仕組みをつくっても、外国人の方に来ていただいたところで、よい結果が出るものではありません。

 国会で法案を審議し、与党と野党が切磋琢磨してよい法律とすると同時に、この法案審議を通して、国民の皆様に、今回の在留資格の拡大がどういう意味を持つものであるのかを確実に認識していただき、外国の方々を迎え入れる心構えを醸成していただくことが必要であります。短期間に審議の日程を消化すればこの気持ちが醸成されるなどというものではありません。

 ある一定の期間をかけて、丁寧に国民の皆様に説明をして御理解を得るプロセス、これが大変重要なことだと私は思います。そうしなければ、将来に大きな禍根を残します。

 その意味でいうならば、来年四月に、この法案を可決、成立させて実行したいと思うのであるならば、もっと早い時期にこの法案を出していれば、審議の時間は十分あったのだと思います。

 そして、今回の法案は、先ほど来るる述べましたとおり、決まっていないことが多過ぎます。それらは法案審議の中で示されるものというふうに思いますけれども、そうなりますと、これは一々議事録の確認が必要になります。当然、大臣が発言をする、政府参考人が発言をする、その内容がどのようなものであったのか、議事録を確認した上でまた次の審議に進むというプロセスが、これほど重要事項が決まっていない法案では審議の必須のこととなるというふうに思われます。すなわち、一つの議論をやったら間を置いて次の議論に入る、このプロセスが必須なのではないでしょうか。

 大変僣越ながら、森山委員長には、委員長が祭日だろうが土曜日だろうが日曜だろうと委員会を開く権限があるので、委員長の判断でお決めいただくとの発言は撤回されるべきだと思います。また、スーパー委員長との発言も慎まれた方がよいのではないかと思います。尊敬する森山委員長には、大変僣越とは思いますけれども、付言をさせていただきます。

 改めて、政府・与党の皆さんにお願いいたします。審議の条件を整えてください。

 移民、単純労働、人手不足、これらの用語の定義など、早急に明らかにしてください。そうしなければ、どんなに審議を行っても、根拠、論拠のない議論になってしまいます。

 それから、二つ目。永住権と特定技能の関係、技能実習と特定技能一号対象職種の整理、特定技能への社会保険適用の考え方の整理など、重要事項に対する政府の考え方、これが決まっておりません。これでは法案是非の議論が極めて難しいものになります。これらに対する政府の考え方をぜひ明らかにしてください。

 次は、与党の皆さんへのお願いであります。

 今回の法案は、法務省だけではなく、外務省、厚生労働省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、総務省など、たくさんの省庁に関係し、かつ日本の将来に大きな影響を及ぼすものです。この点からすれば、特別委員会を設置して審議をすべきものと思います。しかし、それがかなわないというならば、せめて連合審査を多用する、これが絶対の条件であろうと思います。

 私が先ほど述べたように、非常に多岐にわたる省庁が関与しております。したがって、この連合審査も、一回でお茶を濁すなどということではなく、国会をまたいで繰り返しやるぐらいの覚悟を持っていただきたい、そのお願いをさせていただきます。

 加えまして、学者、専門家、技能実習生当事者、技能実習生受入れ団体や監理団体などからも、参考人として十分に話を聞く必要があります。

 さらに、技能実習の現場や現場の外国人労働者の実態、その現状を視察する必要もあります。

 これら多角的な面から議論を尽くしつつ、国民の理解が得られるようにすることが大切であります。与党の皆さんには、国会が国権の最高機関としての役割を確実に果たすことができるよう、こうした点への配慮をお願いしたいと思います。

 きょう、ここで一時間二十分ほどにわたって葉梨法務委員長解任決議提案理由の説明をさせていただきました。

 私は、きょうここで、与党の皆さんからのやじを聞いていて、本当に悲しい思いがいたします。あなたはニセコの自慢をしているだけではないか、そういうやじが聞こえてまいりました。

 そうではありません。たまたまニセコという地域が、この二十年余りかけて、外国人との共生がまあまあ今の時点ではうまくいっている、その事例を紹介させていただいたわけであります。一方で、そうではない地域というものがある。したがって、この法案の審議というものは拙速にやってはならないんだ、そういうことを繰り返し説明をさせていただく、その材料として話をさせていただいたわけであります。

 そして、私たちは委員会でしっかり審議をしたい、その気持ちには全く変わりありません。ただ、我々が困るのは何か。委員会の審議を簡単に三回や四回で打ち切る、こういうことになってしまっては審議が尽くせない。審議入り口の段階でそのことに対してしっかりとした認識を持ってもらわねばならない、その思いで私は、この一時間二十分、話をさせていただいたわけであります。

 以上、葉梨法務委員長解任決議案を提出した理由について、さまざま申し上げさせていただきました。

 繰り返します。この法案は、ある程度の期間をかけて、慎重かつ多角的な審議が必要なものであります。それにもかかわらず拙速に審議を進めようとする葉梨委員長の責任は重大であります。法務委員会に立法府としての矜持を取り戻し、できの悪い入管法改正案は政府に突き返し、法務行政に関する充実した質疑を行うために、葉梨君には法務委員長の座を退いていただくしかありません。

 以上、議員各位の賛同をお願いし、趣旨弁明といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。石原宏高君。

    〔石原宏高君登壇〕

石原宏高君 自由民主党の石原宏高です。

 私は、自民党、公明党を代表して、ただいま議題となりました法務委員長葉梨康弘君解任決議案に対して、断固反対の立場で討論を行います。(拍手)

 今回提出されている入管法等一部改正法案による新たな在留資格の創設は、深刻な人手不足の状況に対応するため、現行の専門的、技術的分野における外国人材の受入れ制度を拡充し、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れようとするものです。

 我が国の現下の人手不足は深刻な状況となっており、この課題は喫緊の問題であります。丁寧かつ充実した審議を重ねて、一日も早くこの法案を成立させるべきというふうに私は考えます。

 まず、葉梨委員長の委員会運営手続に全く瑕疵がないことを強く申し上げたいと思います。

 委員長は、審議を行うため、必要な資料の提出を政府に求めるなど、公平公正な差配に御尽力され、理事会、委員会を実に丁寧に運営されてこられました。

 例えば、葉梨委員長は、野党の要望を受け、政府から十四業種ごとの受入れ見込み数等に関する資料を提出させました。さらに、本資料に関する追加資料を求める野党の要望を踏まえ、みずから必要な事項を整理された上で、強力なリーダーシップにより、政府に追加資料を迅速に提出するように求めました。

 また、当初、与野党間で合意された他の法案の日程についても、野党の要望を受けて、柔軟に日程を変更されました。

 その後、葉梨委員長は、本解任決議案が出される直前の十一月十六日の理事懇談会においても、政府から提出させた資料につき、野党から不十分であると指摘を受けるや、その場で政府に対し、厳しく、内容を補充させ整理した資料を同日中に提出させることを指示いたしました。

 さらに、同日、委員長は、政府から提出された技能実習生の失踪に関する資料につき、野党の要望を踏まえ、法務委員会の理事等による閲覧という形で開示を決定し、必要な措置を早急にとることを強く強く政府に指示をされました。

 これは、まさに立法府が行政を監視すべき任にあることを踏まえた対応であって、本解任決議案の理由にある大島衆議院議長の談話にものっとった差配です。野党が述べる、衆議院議長の談話に真っ向から反する行動などとの批判は、およそ当たりません。

 葉梨委員長は、十一月十六日の他の法案の採決の後、一般質疑、本法案の提案理由説明、与党質疑について、委員長の職権で行うこととされましたが、野党は、この点を委員長の委員会運営として論外であると非難をされています。しかし、委員長は、この結論に至るまで、野党の意見を丁寧に、かつ丹念に聞き、必要な資料を政府に直ちに提出させるなどしてまいりました。

 さらに、委員長は、野党の立場に立って、提出された資料を踏まえて質疑を野党が行う必要があると考えられたため、金曜日の質疑は与党質疑のみの日程として、野党に配慮したスケジュールとしたところであります。

 その上に、既に本会議で提案理由説明は行われており、国民の関心も高く、速やかに委員会質疑を開始する必要があることから、職権による委員会立てとの結論に至ったものであり、私は、その判断は極めて合理的であるとともに、野党の立場にも十分配慮をしたものであるというふうに考えます。

 確かに、失踪した技能実習生の統計データのまとめに誤りがあったことについては、私も理事として政府に猛省を求めるところであります。しかし、既に修正されたデータの取りまとめが開示されている以上、そのことに基づいて委員会審議を行うべきであり、これを前提とした委員長による日程設定は、私は当然のものであるというふうに考えます。

 このように、葉梨委員長は、野党に十分配慮し、行政を監視すべき観点も十分に踏まえながら、法案審議に必要な資料をみずから差配して速やかに政府に提出させるなど、公正公平な委員会運営のために尽力されてこられました。葉梨委員長の運営、判断は、法案の審議を充実させるため、その職責を全うすべく、公平公正な立場から適正に行われたものであることは明らかであり、委員長解任に値するという主張は断じて退けられなければなりません。

 以上の理由から、私は本決議案に断固反対の思いを表明いたしまして、私の反対討論を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 松田功君。

    〔松田功君登壇〕

松田功君 国民の皆さん、こんにちは。立憲民主党の松田功です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表して、ただいま議題となりました葉梨康弘法務委員長の解任決議案に断固賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 最大の理由は、葉梨委員長の強引な委員会運営に大いに問題があると考えるからです。

 葉梨委員長は、就任挨拶において、本委員会は国民生活の根幹にかかわる重要な問題が山積しているとおっしゃった上で、公正かつ円滑な委員会の運営に努めると表明されました。その国民生活の根幹にかかわる重要な問題が山積している入管法改正案につき、具体的な制度設計も示されないまま、何をどう審議せよというのか、全く理解できません。

 しかも、十五日の法務委員会では、裁判官、検察官の給与法の質疑と採決、与野党の合意のない一般質疑、入管法改正案の趣旨説明、そして与党の質疑までと、五階建ての日程を決めるという憲政史上例を見ない暴挙に出ました。

 我が党は、審議することに反対しているのではなく、審議するための材料を出してくださいと再三お願いしたことは、与党を始め、政府も承知しているはずです。その中で、ようやく提出された技能実習生の失踪をめぐる調査結果は、間違いであることが判明しました。この状況で審議に入ることは、誰がどう考えても無理であることは明らかです。

 にもかかわらず、葉梨委員長は職権で入管法改正案の審議に入ろうとしました。これは、政府・与党が外国人労働者の受入れを来年四月一日に施行するための、日程ありきの運営としか考えられません。このことは、葉梨委員長の公正かつ円満な委員会の運営とはほど遠い内容です。

 また、今回出された調査結果は、事実を歪曲するものであります。指摘すべきは、法務省が、受入れ先に問題があるのを隠すために、実際の調査で、失踪動機の聞き取り項目にあった低賃金を始め、法令違反に当たる契約賃金以下や最低賃金以下といった項目をまとめて、新たに、より高い賃金を求めてという回答にしてしまったことです。これは、まさに改ざんに値する行為ではないでしょうか。

 森友問題について、財務省のデータの改ざんが判明し、これは安倍総理へのそんたくからではないかとされてきました。同様に、今回の調査結果も、何が何でも今国会で成立させたい安倍総理へのそんたくがあるのではないでしょうか。

 なぜならば、政府が見込む新在留資格での外国人労働者の五割は技能実習生から移行する人々を想定しているからです。そのため、技能実習制度の問題を明らかにし、制度の見直しや廃止を検討することは、到底できないからです。

 安倍総理は、十二日の政府与党連絡会議で、国民の間に不安の声がある、十分理解を得られるよう丁寧な説明を尽くすとコメントされたようですが、野党からの質問に対し、何ら具体的な説明もされず、ただ、精査中、法案成立後に省令で定めると答えるのみです。これで国民の不安が解消されると思われているのでしょうか。

 政府が閣議決定した法案の骨子によると、外国人労働者の受入れの司令塔は出入国在留管理庁とされていますが、外国人労働者が不自由なく生活していくためには、日本語教育や社会のルール、さらには社会保障制度について、手厚い支援が不可欠です。これは、出入国在留管理庁ではなく、むしろ文科省、総務省、厚労省の管轄ではないでしょうか。

 政府は、入国管理局を出入国在留管理庁に格上げをし、人員を増加させる案を示しています。しかし、それは外国人の受入れ拡大のための国境管理、在留管理のための増員であって、外国人労働者が生活する上で必要な支援を行う人員になるとは思えません。

 実際には、外国人労働者が生活をする自治体の窓口が相談を受けることになっているのではないでしょうか。しかし、現在、多くの自治体にとって、財政が厳しい状況の中で外国人へのサービスを充実させるための人員をふやすことは、現実には極めて困難であります。

 外国人を多数受け入れた都市でつくられる外国人集住都市会議が設置された当時、受け入れた自治体は当初、大変混乱したそうです。具体的な共生施策を伴わない外国人人材の受入れは、当時の各都市における地域社会の混乱を再び日本各地に広げることになると危惧するとの意見書を出されており、大いに耳を傾ける必要があると思われます。

 さらに、この法案骨子によれば、外国人人材の受入れ後のさまざまな生活支援は、受入れ機関又は受入れ機関から委託を受けた登録支援機関が責任を持つとされているようですが、果たして本当にそれが可能でしょうか。

 まず、受入れ機関である企業が支援を行う場合、企業は、例えば、日本語教育の専門スタッフを雇用しなければなりませんし、外国人労働者の居住手配などの生活支援、社会保険などへの加入費用を負担しなければなりません。

 このことは、企業に対して、人件費の増加など、追加的な支援を迫ることを意味しています。この点は、受入れ機関から委託を受けた登録支援機関が支援を行う場合も同じです。しかし、企業にとって、こうした経費の増加は決して望ましいものではありません。

 では、実際に外国人労働者を支援する機関はどこなのでしょうか。政府ですか、地方自治体ですか、それとも受入れ機関ですか。

 以上のように、政府は、事実をゆがめてきれいな絵だけを描き、現実に発生する問題を把握しているとは到底思えません。にもかかわらず、この法案を今国会で何が何でも成立させようとするのは、拙速に過ぎると言わざるを得ません。

 また、技能実習制度は、国連の人権機関やアメリカ国務省からも、現代の奴隷制などと評され、注視されております。

 今回の外国人労働者の受入れについては、与野党を問わず、我々は、時間をかけ、丁寧な議論を積み重ねていくべきではないでしょうか。

 最後に、葉梨委員長に申し上げます。

 安倍総理へのそんたくとも言える委員会運営を行い、立法府を軽んじ、おとしめたことを恥じるべきです。

 以上、法務委員会に立法府としての矜持を取り戻し、法務行政に関する充実した質疑を行うためにも、葉梨委員長の解任決議案に議員各位の御賛同をお願いし、賛成討論を終わります。(拍手)

議長(大島理森君) 足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 ただいま議題となりました法務委員長解任決議案について、反対の立場から討論いたします。(拍手)

 私たちは、委員長の解任や大臣の不信任、さらには内閣不信任等に係る決議案の提出を全て否定するものではありません。しかし、そうした攻撃的な決議案は、国会審議における最終兵器であるべきです。最終兵器は使ってしまえば終わりです。

 しかし、我が党を除く野党六会派は、そうした最終兵器を乱発します。特に、立憲民主党が誕生し、野党国対が現在のような体制になって以降、そうした傾向が強まっています。

 さきの通常国会においても、予算委員長解任決議案、経済再生担当大臣不信任決議案、厚生労働委員長解任決議案、厚生労働大臣不信任決議案、内閣委員長解任決議案、国土交通大臣不信任決議案、議院運営委員長解任決議案、そして内閣不信任決議案と、本来使っては元も子もない最終兵器を打ちまくりました。まるでミサイルを撃ちまくった北のあの国のようです。

 それでも、あの国は……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

足立康史君(続) それでも、あの国は、核兵器という実力も備えていましたから、実際にアメリカのトランプ大統領を動かしました。ところが、野党六会派によるミサイル、つまり解任等の決議案には実力が伴っていません。実力とは、言うまでもなく政策であります。実際に政策で論戦を闘わす、言論の力であります。

 現在、日本の企業、産業には、人手不足という大きな課題が横たわっています。今回の入管法改正案については、賛否は別としても、全ての国民が国会での議論に注目しています。そこで、私たち維新の会は、入管法改正案を最重要法案の一つと位置づけ、外国人へのマイナンバーカードの義務化など、自民党の中からは逆立ちしても出てこない、自民党からは逆立ちしても出てこない、在留管理を抜本的に強化できる具体的な提案をしています。

 にもかかわらず、野党六会派がやみくもに最終兵器を打ちまくるものだから、それらの騒動にかき消されて、本来必要な政策論争が深まりません。逆に、野党六会派は政策論争を避けるためにミサイルを撃ちまくっているのではないかという疑念さえ生じます。

 繰り返しますが、最終兵器は使ってしまえば終わりです。野党六会派が解任等に係る決議案を乱発するために、今や、それが最終兵器であることさえ忘れられているのではないでしょうか。マスコミも、今回の法務委員長解任決議案について、自民、公明両党などの反対多数で否決されると淡々と報じており、国民はさめた目で見ています。

 私たち維新の会は、国会を混乱に陥れるために、政策論争を避けるために、毎度毎度、解任や不信任に係る決議案を提出する手法には反対であるとここに宣言をしておきたいと存じます。

 そうした手法は、かつて、五五年体制と呼ばれた時代に社会党が使った古い手法であり、当時は、選挙制度も中選挙区制、国際的にも米ソ冷戦下という特殊な時代でありましたから、まだ許せます。しかし、今の日本は、人口減少と安全保障環境の変化という内憂外患に直面しています。五五年体制下の社会党と同じような、猿芝居にうつつを抜かしている暇などないはずであります。

 この臨時国会は、入管法改正案に加え、軽減税率を伴う消費増税、さらには憲法改正について議論を深めるべき、大変に重要な国会です。

 我が党を除く野党六会派が国会を混乱に陥れるためだけに提出した法務委員長解任決議案については粛々と否決し、速やかに国会を正常化する、そして、野党六会派には真摯に政策論議に向き合うよう求め、反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 源馬謙太郎君。

    〔源馬謙太郎君登壇〕

源馬謙太郎君 国民民主党・無所属クラブを代表して、ただいま提案のありました葉梨康弘法務委員長の解任決議案に賛成の立場から討論させていただきます。(拍手)

 我が国の人手不足は深刻です。特定の分野で技能を持つ外国人に日本に来てもらい、その活力を生かすことが日本経済の後押しになり、さまざまな外国人との共生は、日本に多様性のある豊かさをもたらすことになると思います。

 しかし、その大前提として、日本が外国人の定住を受け入れるために、入管という入り口の制度だけではなく、どのように働いてもらい、どのように社会に参加してもらうかという受入れ後の制度をしっかりと整備する必要があります。

 私たちは、外国人労働者の受入れに反対しているのではなく、むしろ、積極的に受け入れるためには、拙速な制度で将来に禍根を残さないように、今ある技能実習制度の抜本的見直しを含めてしっかり議論をしたいと考えています。

 その議論を円滑に進めるべき葉梨委員長が、議論の充実よりも、とにかく性急に済ませてしまおうとする姿勢に、強く抗議をいたします。

 特に、まともな資料の提出もないまま、五階建てという異例のたてつけで審議入りを強行しようとしたことは、とても容認できません。

 私たちは、法務委員会において、再三にわたり、人手不足の分野と受入れ見込み人数の資料を提出してほしいと求めてまいりました。

 山下大臣から、議論に資するように提出するという答弁があったにもかかわらず、ようやく提出されたのは十五日の衆議院本会議で同法案が審議入りされた後。しかも、国会よりもマスコミに先に情報が渡っていました。

 その中身も、なぜ当該の十四分野が選ばれたのか、合理的な説明はなく、また、受入れ人数の積算根拠も示されないままでした。どの分野にどのぐらいの外国人を受け入れるのか、そして、その根拠や受入れによって日本人の雇用はどうなるのかといった詳細な情報は、この法案を審議する前提として不可欠です。

 加えて、現行の外国人受入れの実態を把握することが重要であるにもかかわらず、これに関するまともな資料も提出されませんでした。

 今回の新しい在留資格は、技能実習制度からの移行が事実上前提にされています。技能実習を修了した外国人が試験を免除されて特定技能に移行できることからも、これは明らかです。

 そうであるなら、現行の技能実習制度に問題はないか、改善すべきはないか、見直すことは当たり前です。限られた期間で技術を学び、その後、帰国し、技術を持ち帰ってもらうというのが技能実習制度の趣旨ですが、特定技能一号に移行すると、技能実習修了後も最長五年在留でき、さらに、二号に移行して、更新の限度なく在留期間を延ばすことができるのであれば、技能実習制度の制度趣旨から大きく逸脱することになります。

 しかも、この技能実習制度にはこれまでもさまざまな問題点が指摘されており、特に、実習生の失踪は大きな懸案となっています。この原因を究明し、対策をとることは、日本の外国人受入れ制度の重要な課題であり、法案審議の柱の一つです。

 ことし五月に法務省から提出された平成二十九年分の失踪技能実習生の現状という資料は、大まかなアンケートの集計結果のみであったため、より詳細な資料の提出を求めてまいりましたが、ようやく提出されたのは審議入りの直前、しかも、その中身が、提出されていた集計結果とは異なるものでした。

 これまで政府が説明してきたのは、失踪動機は、より高い賃金を求めてというものが最も多く、全体の八六・九%だったとしてきましたが、そんな選択肢自体が存在しなかったことが明らかになりました。低賃金、契約賃金以下の低賃金、最低賃金以下の低賃金など、他の回答を勝手にまとめて、ありもしない回答に一くくりにしてしまっていました。さらに、八六・九%という数字も誤りで、実は六七・二%であり、結果に二〇%も開きがありました。

 最低賃金以下の低賃金だったから失踪したということを、より高い賃金を求めて失踪したと、まるで自己都合で欲を出して職場から逃げ出したかのように恣意的にアンケート結果をねじ曲げられたら、実態が全くわかりません。

 データや資料は議論の土台です。私たちがデータや資料を求める際、当然ですが、最初からその真偽を疑うところから始めたくありません。しかし、その当たり前の前提すら崩れるとしたら、これは極めて深刻です。

 安倍総理や山下大臣は、この間違った数字をもとに、本会議や予算委員会でたびたび答弁されています。例えば、十一月七日の参議院予算委員会でも、山下大臣は、より高い賃金を求めて失踪する者が約八七%と答弁されていますが、これは結果的に、国会で事実と違うことを大臣が発言したということになりませんか。本来、与党の皆さんこそ容認できないものだと思います。

 昨日、政府が拒み続けてきた調査票の個票を、法務委員会の理事と代理に限ってようやく閲覧できるようになりました。私も一つ一つ閲覧しましたが、劣悪な環境に耐え切れずに失踪したという記録も多く見られました。ある失踪したベトナム人女性の技能実習生は、毎月十二万円だと聞いていた給料が実際には八万円で、しかも、そこから控除される金額が五万円、手取りが三万円という事例もありました。

 こうしたことは、生の調査結果を見るからわかることで、各項目の集計結果を、しかも手が加えられたものを見ても、全くわかりません。これでは、技能実習制度の実態は正しくわからず、その制度に連結してたてつけられる今回の特定技能という在留資格の制度設計を見誤ってしまいます。

 しかも、我々議員が手書きで二千八百七十枚を書き写すことは許可するが、コピーや写真はだめというのは、どういう合理性があるんでしょうか。

 公文書の偽造はさきの国会でも大きな問題となり、大島衆議院議長からも談話が出される異例の事態になりました。文書の改ざん、不適切なデータの提示、ずさんな文書管理などは全て、法律の制定や行政監視における立法府の判断を誤らせるおそれがあるものであり、議院内閣制の基本的な前提を揺るがすものであると議長もおっしゃっていたことがまたも繰り返されてしまいました。これこそ、葉梨委員長が率先して防がなくてはいけないことだったのではないでしょうか。

 にもかかわらず、葉梨委員長は、さらなる資料提出や経緯解明の求めに応じず、理事懇談会を打ち切り、職権で審議に入ろうとしました。私たちは、この大事な議題についてしっかり議論したいから、その前提となる必要な資料や正しい情報を出してほしいと言っているのに、それを拒否するということは、まともな議論を拒否していることにほかならないと思います。

 来年四月施行という時期ありき、政府・与党のためだけの強引な委員会運営を行う葉梨委員長には、残念ながら、委員長の資格はありません。新たな委員長のもと、外国人をどのように受け入れていくべきかをしっかりと議論させていただくことを強くお願いし、私の討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 黒岩宇洋君。

    〔黒岩宇洋君登壇〕

黒岩宇洋君 無所属の会の黒岩宇洋です。

 私は、ただいま議題となりました法務委員長葉梨康弘君の解任決議案に賛成の立場から討論をいたします。(拍手)

 葉梨委員長は、公正中立な議事運営に心がけてきたことは法務委員会オブザーバー理事の一人として承知いたしておりますが、残念なことに、先週から人が変わってしまいました。私たち野党の声に耳をかさなくなり、与党のむちゃな要求を追認し、独善的とも言える委員会日程を設定するようになったのです。

 その手始めが、先週水曜日、十一月十四日の委員会の持ち方です。

 その前日、十三日には、入管難民法改正案の総理入り本会議が予定されていました。かねてから私たち野党は、法案審議の前提となる外国人受入れ規模とその根拠、また失踪技能実習生の聴取票、この二つの開示を政府に求めてまいりました。しかし、政府は、受入れ規模については、作業がとても間に合わない、本会議質問までには開示できないとのことでした。しかし、この日、十三日の朝、各メディアは一斉に受入れ規模の具体的数字を報じたのです。私たち野党は、当然これに反発しました。立法府からの要請に応じられないものがメディアから漏れるという事態は、当然看過できないからです。

 葉梨委員長みずからも、あってはならないことだが政府にはこういうことがしばしあると、法務省側の落ち度をお認めになりました。この政府落ち度で法務委員会の混乱が、十三日定例日、暗くなるまで続いたにもかかわらず、翌日、十四日の法務委員会での裁判官、検事給与法の趣旨説明、そして、その日のうちに法案審議に入る異例の変則日程を、葉梨委員長は与党の要求どおりに決めたのです。

 そして、十五日の理事懇では、与党の要求は更にエスカレートしてきました。

 それ以前は、十六日の委員会では、給与法野党質疑、採決の通常どおりの二階建てに加え、一般質疑、入管法改正案の趣旨説明と四階建ての要求でしたが、十三日の変則階建てに味をしめたのか、与党は、四階建てにプラスして、入管法改正案の与党質疑を更に盛ってきました。想像を絶する五階建てです。絶対に認めるわけにはいきません。

 しかし、葉梨委員長は、十六日の委員会を職権で立ててしまったのです。しかも、十六日昼の理事懇で出てきた失踪技能実習生の聴取票の集計では、今までの集計が誤りで、新たな数字が出てくるではありませんか。私たちが危惧していたとおりの展開になったのです。それでも葉梨委員長は、理事懇を夕方に打ち切り、粛々と法務委員会野党一般質疑の空回しを始めました。

 このまま、職権立てどおり、入管難民法改正案の趣旨説明を強行するつもりだったのでしょう。そうは問屋が卸しません。法務委員長解任決議案を提出させていただきました。

 今述べましたように、委員会運営に支障を来させた外国人受入れ数の事前漏えい、そして失踪技能実習生集計データの誤りも政府に責があります。特に、失踪技能実習生の聴取票については、我々法務委員会野党理事、オブザーバーは、現在、二千八百枚を一枚一枚、今どき、般若心経ではあるまいし、手書きで写している始末。こんな状況下で、与党の言うがままに、なぜ立法府が強引な法案審議を押しつけられなければならないのでしょうか。

 法務委員会は、政府、ましてや与党の下請機関ではありません。この自覚の甚だ乏しい葉梨委員長に、公正中立が厳に求められる委員長職を任せるわけにはまいりません。

 法務委員長葉梨康弘君の解任決議案について賛成することを改めて申し上げ、同僚議員の賛同を得て可決あらんことをお願い申し上げて、私の賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました葉梨康弘法務委員長の解任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)

 賛成する最大の理由は、安倍政権が、入管法等改正案を今国会で何が何でも押し通そうとするもとで、葉梨委員長が、政府・与党言いなりで、職権で一方的に法案の審議入りを決めるなど、異常な委員会運営を行っていることです。

 同法案は、技能実習制度を大前提としています。

 法務省は、人手不足とされる十四業種で技能実習生からの移行が三割から八割、多い業種ではほとんど全てだと説明しています。

 来年四月の施行を急ぐ理由を問われた山下法務大臣は、施行が半年おくれれば万単位の方々が帰ってしまうからだと答弁しました。新しい制度が、実習生を安価な労働力として使い続けようとするものであることは明らかです。

 今こそ、技能実習制度の実態を明らかにすべきです。

 ところが、安倍総理や山下大臣は、今後の捜査に影響を及ぼすなどと言って、聴取票の開示を拒んでいます。

 しかし、そもそもこの調査は、実習制度の運用を改善するために、二〇〇九年の衆参法務委員会の附帯決議などで、与野党一致して求めてきたものです。制度改善のための調査であり、犯罪捜査とは何の関係もありません。捜査の影響などという答弁は撤回し、直ちに開示すべきです。

 山下大臣は、技能実習生の失踪理由について、現状の賃金等への不満から、より高い賃金を求めて失踪する者が約八七%と答弁してきました。しかし、より高い賃金を求めてという項目は、もともとの調査票にはありません。しかも、その割合が六七%から八七%に水増しされていたのです。実習生がわがままで、金目当てで失踪していると描き出す、資料の捏造を行ってきたことは極めて重大です。

 さらに、暴力などの人権侵害も実際より少なく発表されておりました。言語道断です。

 審議の前提となる資料にこれだけの誤りが明らかになった以上、これをまず正させること、そして、全ての資料を国会に提出させることこそ、委員長の責務ではありませんか。

 昨日、法務委員会理事会メンバーが聴取票個票の閲覧を行いました。

 個票には、週百三十時間の長時間労働、残業代が払われない、暴力、セクハラを受けたなど、法令違反や人権侵害を示す記述が複数見られました。さらに、月給十万円と言われたが、実は八万円、さらに、五万円控除など、最賃以下が疑われる事例が多数に上ることが明らかになりました。法務省が先日発表した、最賃以下が二十二人など、聴取票の取りまとめにも重大な疑義が生じています。

 技能実習生の実態把握のためには、個票そのものの徹底的な分析が不可欠です。限られたメンバーへの閲覧ではなく、直ちに国会に提出することを強く要求します。

 同法案については、世論調査でも、六割から八割を超える国民が、今国会の成立にこだわるべきではないと答えています。

 今、国会がやるべきことは、こうした国民の声に応えて、外国人労働者の実態を踏まえた徹底的な審議を行うことです。

 虚偽答弁を放置し、開示すべき資料も提出させないまま、今国会の成立ありきで突き進む葉梨委員長の責任は重大です。

 外国人労働者の人権侵害の実態を解明することなくして、法案を審議することなどできません。

 以上、解任決議案に対する賛成討論といたします。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 この採決は記名投票をもって行います。

 本決議案に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。――議場閉鎖。

 氏名点呼を命じます。

    〔参事氏名を点呼〕

    〔各員投票〕

議長(大島理森君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。

 投票を計算させます。

    〔参事投票を計算〕

議長(大島理森君) 投票の結果を事務総長から報告させます。

    〔事務総長報告〕

 投票総数 四百五十

  可とする者(白票)       百三十二

  否とする者(青票)       三百十八

議長(大島理森君) 右の結果、法務委員長葉梨康弘君解任決議案は否決されました。(拍手)

    ―――――――――――――

辻元清美君外一名提出法務委員長葉梨康弘君解任決議案を可とする議員の氏名

阿久津 幸彦君   阿部  知子君   青柳 陽一郎君   荒井   聰君

池田  真紀君   石川  香織君   今井  雅人君   生方  幸夫君

枝野  幸男君   小川  淳也君   尾辻 かな子君   大河原 雅子君

逢坂  誠二君   岡島  一正君   岡本 あき子君   落合  貴之君

海江田 万里君   神谷   裕君   亀井 亜紀子君   川内  博史君

菊田 真紀子君   近藤  昭一君   佐々木 隆博君   櫻井   周君

篠原   豪君   末松  義規君   高井  崇志君   高木 錬太郎君

武内  則男君   辻元  清美君   手塚  仁雄君   寺田   学君

中谷  一馬君   長尾  秀樹君   長妻   昭君   西村 智奈美君

長谷川 嘉一君   初鹿  明博君   福田  昭夫君   堀越  啓仁君

本多  平直君   松田   功君   松平  浩一君   道下  大樹君

宮川   伸君   村上  史好君   森山  浩行君   矢上  雅義君

山内  康一君   山尾 志桜里君   山川 百合子君   山崎   誠君

山花  郁夫君   山本 和嘉子君   横光  克彦君   吉田  統彦君

早稲田 夕季君   青山  大人君   浅野   哲君   伊藤  俊輔君

泉   健太君   稲富  修二君   小熊  慎司君   大島   敦君

大西  健介君   岡本  充功君   奥野 総一郎君   吉良  州司君

城井   崇君   岸本  周平君   源馬 謙太郎君   小宮山 泰子君

後藤  祐一君   近藤  和也君   斉木  武志君   階    猛君

篠原   孝君   下条  みつ君   白石  洋一君   関  健一郎君

玉木 雄一郎君   津村  啓介君   西岡  秀子君   原口  一博君

平野  博文君   古川  元久君   古本 伸一郎君   前原  誠司君

牧   義夫君   緑川  貴士君   森田  俊和君   山岡  達丸君

山井  和則君   渡辺   周君   安住   淳君   江田  憲司君

大串  博志君   岡田  克也君   金子  恵美君   黒岩  宇洋君

玄葉 光一郎君   田嶋   要君   中川  正春君   中村 喜四郎君

野田  佳彦君   広田   一君   もとむら賢太郎君   赤嶺  政賢君

笠井   亮君   穀田  恵二君   志位  和夫君   塩川  鉄也君

田村  貴昭君   高橋 千鶴子君   畑野  君枝君   藤野  保史君

宮本  岳志君   宮本   徹君   本村  伸子君   照屋  寛徳君

吉川   元君   小沢  一郎君   日吉  雄太君   青山  雅幸君

赤松  広隆君   井出  庸生君   柿沢  未途君   佐藤  公治君

重徳  和彦君   樽床  伸二君   中島  克仁君   柚木  道義君

否とする議員の氏名

あかま 二郎君   あきもと 司君   安倍  晋三君   逢沢  一郎君

赤澤  亮正君   秋葉  賢也君   秋本  真利君   麻生  太郎君

穴見  陽一君   甘利   明君   安藤  高夫君   安藤   裕君

井野  俊郎君   井上  信治君   井上  貴博君   井林  辰憲君

伊東  良孝君   伊藤 信太郎君   伊藤  忠彦君   伊藤  達也君

伊吹  文明君   池田  道孝君   池田  佳隆君   石川  昭政君

石崎   徹君   石田  真敏君   石破   茂君   石原  伸晃君

石原  宏高君   稲田  朋美君   今枝 宗一郎君   今村  雅弘君

岩田  和親君   岩屋   毅君   うえの賢一郎君   上杉 謙太郎君

上野  宏史君   江崎  鐵磨君   江渡  聡徳君   江藤   拓君

衛藤 征士郎君   遠藤  利明君   小倉  將信君   小此木 八郎君

小里  泰弘君   小田原  潔君   小野寺 五典君   小渕  優子君

尾身  朝子君   越智  隆雄君   大岡  敏孝君   大串  正樹君

大隈  和英君   大塚  高司君   大塚   拓君   大西  英男君

大西  宏幸君   大野 敬太郎君   大見   正君   岡下  昌平君

奥野  信亮君   鬼木   誠君   加藤  鮎子君   加藤  勝信君

加藤  寛治君   梶山  弘志君   勝俣  孝明君   門   博文君

門山  宏哲君   金子  俊平君   金子 万寿夫君   金子  恭之君

金田  勝年君   上川  陽子君   神谷   昇君   神山  佐市君

亀岡  偉民君   鴨下  一郎君   川崎  二郎君   河井  克行君

河村  建夫君   神田  憲次君   神田   裕君   菅家  一郎君

木原  誠二君   木原   稔君   木村  次郎君   木村  哲也君

木村  弥生君   城内   実君   黄川田 仁志君   岸   信夫君

岸田  文雄君   北川  知克君   北村  誠吾君   工藤  彰三君

国光 あやの君   熊田  裕通君   小泉 進次郎君   小泉  龍司君

小島  敏文君   小寺  裕雄君   小林  茂樹君   小林  鷹之君

古賀   篤君   後藤  茂之君   後藤田 正純君   河野  太郎君

高村  正大君   國場 幸之助君   左藤   章君   佐藤  明男君

佐藤   勉君   佐藤 ゆかり君   齋藤   健君   斎藤  洋明君

坂井   学君   坂本  哲志君   櫻田  義孝君   笹川  博義君

塩崎  恭久君   塩谷   立君   繁本   護君   柴山  昌彦君

下村  博文君   白須賀 貴樹君   新谷  正義君   新藤  義孝君

菅   義偉君   菅原  一秀君   杉田  水脈君   鈴木  馨祐君

鈴木  俊一君   鈴木  淳司君   鈴木  貴子君   鈴木  憲和君

鈴木  隼人君   関   芳弘君   薗浦 健太郎君   田所  嘉徳君

田中  和徳君   田中  英之君   田中  良生君   田野瀬 太道君

田畑   毅君   田畑  裕明君   田村  憲久君   平   将明君

高市  早苗君   高木   啓君   高木   毅君   高鳥  修一君

高橋 ひなこ君   竹下   亘君   竹本  直一君   武井  俊輔君

武田  良太君   武部   新君   武村  展英君   橘  慶一郎君

棚橋  泰文君   谷   公一君   谷川  とむ君   谷川  弥一君

津島   淳君   辻   清人君   土屋  品子君   寺田   稔君

とかしきなおみ君   冨樫  博之君   渡海 紀三朗君   土井   亨君

冨岡   勉君   中曽根 康隆君   中谷   元君   中谷  真一君

中根  一幸君   中村  裕之君   中山  展宏君   中山  泰秀君

永岡  桂子君   長尾   敬君   長坂  康正君   二階  俊博君

丹羽  秀樹君   西田  昭二君   西村  明宏君   西村  康稔君

西銘 恒三郎君   額賀 福志郎君   根本  幸典君   野田  聖子君

野田   毅君   野中   厚君   葉梨  康弘君   萩生田 光一君

橋本   岳君   馳    浩君   鳩山  二郎君   浜田  靖一君

林   幹雄君   原田  憲治君   原田  義昭君   百武  公親君

平井  卓也君   平口   洋君   平沢  勝栄君   福井   照君

福田  達夫君   福山   守君   藤井 比早之君   藤丸   敏君

藤原   崇君   船田   元君   船橋  利実君   古川   康君

古川  禎久君   古田  圭一君   古屋  圭司君   穂坂   泰君

星野  剛士君   細田  博之君   堀井   学君   堀内  詔子君

本田  太郎君   牧島 かれん君   牧原  秀樹君   松島 みどり君

松野  博一君   松本   純君   松本  剛明君   松本  文明君

松本  洋平君   三浦   靖君   三谷  英弘君   三ッ林 裕巳君

三ッ矢 憲生君   三原  朝彦君   御法川 信英君   宮内  秀樹君

宮川  典子君   宮腰  光寛君   宮澤  博行君   宮路  拓馬君

宮下  一郎君   武藤  容治君   務台  俊介君   宗清  皇一君

村井  英樹君   村上 誠一郎君   茂木  敏充君   盛山  正仁君

森   英介君   森山   裕君   八木  哲也君   簗   和生君

山際 大志郎君   山口  俊一君   山口  泰明君   山口   壯君

山下  貴司君   山田  賢司君   山田  美樹君   山本  幸三君

山本   拓君   山本ともひろ君   山本  有二君   吉川  貴盛君

吉野  正芳君   義家  弘介君   和田  義明君   若宮  健嗣君

渡辺  孝一君   渡辺  博道君   赤羽  一嘉君   井上  義久君

伊佐  進一君   伊藤   渉君   石井  啓一君   石田  祝稔君

稲津   久君   浮島  智子君   江田  康幸君   大口  善徳君

太田  昭宏君   太田  昌孝君   北側  一雄君   國重   徹君

佐藤  茂樹君   佐藤  英道君   斉藤  鉄夫君   高木 美智代君

高木  陽介君   竹内   譲君   遠山  清彦君   富田  茂之君

中野  洋昌君   浜地  雅一君   濱村   進君   古屋  範子君

桝屋  敬悟君   鰐淵  洋子君   足立  康史君   井上  英孝君

浦野  靖人君   遠藤   敬君   串田  誠一君   杉本  和巳君

谷畑   孝君   馬場  伸幸君   丸山  穂高君   森   夏枝君

井上  一徳君   中山  成彬君   長島  昭久君   笠   浩史君

細野  豪志君   鷲尾 英一郎君

     ――――◇―――――

 日程第一 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長岸信夫君。

    ―――――――――――――

 防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔岸信夫君登壇〕

岸信夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、一般職の国家公務員の例に準じて防衛省職員の俸給月額等を改定するものであります。

 本案は、去る十三日本委員会に付託され、同日岩屋防衛大臣から提案理由の説明を聴取いたしました。十六日、質疑を行い、採決を行いました結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、日程第三、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長葉梨康弘君。

    ―――――――――――――

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔葉梨康弘君登壇〕

葉梨康弘君 ただいま議題となりました両法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 両案は、一般の政府職員の給与改定に伴い、裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額の改定を行おうとするものであります。

 両案は、去る十一月十四日本委員会に付託され、同日、山下法務大臣から提案理由の説明を聴取し、質疑に入り、十六日、質疑を終局し、討論、採決の結果、いずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 両案を一括して採決いたします。

 両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第四 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第五 特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第四、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案、日程第五、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長牧原秀樹君。

    ―――――――――――――

 一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び同報告書

 特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔牧原秀樹君登壇〕

牧原秀樹君 ただいま議題となりました両案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 まず、一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案は、本年の人事院勧告に鑑み、一般職の国家公務員について、俸給月額及び勤勉手当等の額を改定するものであります。

 次に、特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案は、一般職の国家公務員の給与改定に準じ、特別職の職員の給与の額を改定するものであります。

 両案は、去る十一月十四日本委員会に付託され、同日宮腰国務大臣から提案理由の説明を聴取しました。十六日、質疑を行い、質疑終局後、討論を行い、順次採決いたしましたところ、両案はいずれも賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) これより採決に入ります。

 まず、日程第四につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

 次に、日程第五につき採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

星野剛士君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 議院運営委員長提出、国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。

議長(大島理森君) 星野剛士君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案(議院運営委員長提出)

議長(大島理森君) 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。議院運営委員長高市早苗君。

    ―――――――――――――

 国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔高市早苗君登壇〕

高市早苗君 ただいま議題となりました国会議員の秘書の給与等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、人事院勧告に基づく一般職の国家公務員の給与改定に伴い国会議員の秘書の給料月額及び勤勉手当の支給割合の改定を行おうとするものであります。

 本法律案は、本日、議院運営委員会において起草し、提出したものであります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣河野太郎君。

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、平成二十五年四月以来、欧州連合との間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年七月十七日に東京において、安倍内閣総理大臣とトゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国と欧州連合との間において、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を増大させるとともに、電子商取引、政府調達、競争政策、知的財産、中小企業等の幅広い分野での枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において経済上の連携が強化され、そのことを通じ、我が国及び欧州連合の経済が一段と活性化し、また、我が国と欧州連合との関係が一層緊密化することが期待されます。

 次に、日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、平成二十五年四月以来、欧州連合との間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年七月十七日、東京において、安倍内閣総理大臣とトゥスク欧州理事会議長及びユンカー欧州委員会委員長との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国と欧州連合及び欧州連合構成国との間で、幅広い分野における協力を促進し、戦略的パートナーシップを強化するための枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、我が国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の将来にわたる戦略的パートナーシップを強化するための法的基礎が設けられ、対話、協力等が一層促進されることが期待されます。

 以上が、これらの協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定の締結について承認を求めるの件及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。櫻井周君。

    〔櫻井周君登壇〕

櫻井周君 立憲民主党の櫻井周です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表しまして、ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定案と日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定案について、外務大臣、農林水産大臣、経済産業大臣及び経済再生担当大臣に質問いたします。(拍手)

 昨今、自国第一主義と保護主義が広がりを見せています。しかし、保護主義は、自国の利益になるように錯覚しますが、長い目で見れば自国の産業競争力を弱めてしまいます。このことは経済学で明らかにされているとおりです。自国第一主義と保護主義は、世界の交易を停滞させ、世界経済をシュリンクさせます。このことも歴史が示すとおりです。世界経済の発展を通じて人類社会の幸福を実現していくためには、自由な経済活動こそが重要です。

 一方で、拙速な自由化には社会と人々がついていけず、反感を買ってしまいます。そして、人々の心を保護主義へと向かわせてしまいかねません。したがって、自由化は社会と人々が対応可能なスピードで進めるべきです。

 以上のことを端的に申し上げれば、貿易の自由化は大事だが丁寧に進めるべきということになります。

 こうした観点から質問いたします。

 まず、個別具体的な課題から質問いたします。

 乳製品について、EU諸国からの輸入増加による我が国の酪農、乳業への悪影響が懸念されています。特にチーズについては、EUにTPP11のメンバーであるオーストラリアとニュージーランドを加えると、輸入量の九割近くになります。全面的な開放に近い状況となります。

 こうした懸念に対しては、政府は、チーズを中心とする乳製品対策につきましては、国産チーズ等の競争力を高める、原料乳の低コスト、高品質化の取組の強化、製造面でコストの低減と品質向上、ブランド化等を推進すると答弁しております。

 そこで、農林水産大臣にお尋ねいたします。

 平成二十九年度補正予算などで酪農、乳業の競争力強化策が進められておりますが、一年たってどのような成果が上がっているか、競争力維持、確保ができているのか、具体的にお答えください。

 北海道では酪農が盛んです。国内において、チーズなどの乳製品の多くは北海道で生産されています。しかし、欧州や豪州からの輸入チーズ増加によって北海道産チーズが減産を余儀なくされる。そうなりますと、北海道の酪農がチーズなどから飲料向けの牛乳へシフトし、本州などへの出荷を増加させるようになる可能性があります。そうすると、飲料向け牛乳を中心に生産している日本全国の酪農へも影響してくる可能性があります。

 農林水産省は、生産コスト削減等の体質強化対策を進めます、加工原料乳生産者補給金制度など経営対策を講じていると答弁しています。このような対策で本当に十分であるとはとても思えません。

 そこで、農林水産大臣にお尋ねいたします。

 日本全国の酪農の生産基盤が崩れてしまうという可能性について、政府はないと言い切れますでしょうか。これらの対策で本当に十分なのでしょうか。

 酪農、乳業と同様、林業及び林産加工業への悪影響も懸念されています。

 農林水産省は、木材加工施設の生産性向上支援、競争力のある品目への転換支援、効率的な林業経営が実現できる地域への路網整備、高性能林業機械の導入等の集中的な実施のほか、木材製品の国内外での消費拡大対策などについて平成二十九年度補正予算などで取り組むと答弁しました。

 そこで、農林水産大臣にお尋ねいたします。

 一年たってどのような成果が上がっていますでしょうか。具体的にお答えください。この対策によって輸入木材製品に対して競争力を維持、確保できているのでしょうか。

 次に、原産地手続についてお尋ねをいたします。

 これまで原産地手続について、経済協定では主として第三者証明制度を活用してまいりました。しかし、第三者証明制度では、輸出のたびに政府などから証明書の発給を受ける手間、費用、時間がかかり、輸出業者の負担が大きいという課題がありました。本EPA案では自己申告制度を採用し、こうした課題を解消しようとしています。ただし、我が国の経済協定ではオーストラリアとのEPA、TPPで採用されているだけでありまして、我が国企業には余り経験がないところです。

 そこで、経済産業大臣にお尋ねをいたします。

 日本・オーストラリアEPAのもとでの自己申告制度の利用状況や企業の自己申告制度への対応状況はどのようになっていますでしょうか。

 一方で、日本企業において製品の品質データの改ざんなど不祥事が相次いで発覚しております。万が一、一部の不届きな企業が虚偽申告をしてしまった場合、我が国企業全般が信用を失うことになりかねません。

 そこで、経済産業大臣にお尋ねをいたします。

 改ざんはだめは当たり前のことではありますが、企業にコンプライアンスを徹底していただくためにどのような取組を進めていますか。

 ところで、安倍政権では、データの改ざんや隠蔽が相次いで起こっています。企業に対して改ざんはだめと言う前に、安倍内閣で改ざんと隠蔽は絶対にだめだということを徹底させるべきであることを付言しておきます。

 投資保護規律及び紛争解決についても質問いたします。

 本EPAでは、投資保護規律及び紛争解決については継続協議となりました。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 本EPA案のみならず、今後の経済協定において、投資保護は重要な論点となりますので、有識者などの意見を聞いた上で政府の方針を決定すべきと考えますが、政府の見解を求めます。

 イギリスのEU離脱の扱いについてもお伺いいたします。

 イギリスは、来年三月にEUを離脱するということになっております。しかし、EU及びイギリスにおいて、そのための準備が整っているとは言いがたい状況です。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 離脱後のイギリスの扱いはどのようになるのでしょうか。また、我が国の企業がEU域内の拠点としてイギリスに多数進出しておりますが、これらの企業の不安と懸念に対して政府はどのような対応を行っていますでしょうか。

 次に、経済効果についてお伺いいたします。

 政府は、本EPA案がもたらす国内総生産、GDPの押し上げ効果を約五兆円と試算しています。先ほど申し上げたイギリスのEU離脱はどのように盛り込まれているのか、気になるところでございます。

 すなわち、我が国の多くの企業がEU域内の拠点をイギリスに設けています。工場などは、イギリスのEU離脱に伴って速やかにほかのEU域内へ移転できるというようなことはできません。イギリスのEU離脱の形態によって前提が大きく変化すると考えられます。すなわち、GDP押し上げ効果については、イギリスの動向という不確定要素の分の幅があってしかるべきでございます。

 そこで、経済再生担当大臣にお尋ねいたします。

 この試算には、先ほど申し上げたイギリスのEU離脱はどのように盛り込まれていますでしょうか。

 また、政府は、約二十九万人の雇用が増加すると試算しています。

 一方で、ちょうど一週間前にこの場において行われました出入国管理法改正案における審議において、安倍総理大臣は、人手不足は早急に対応すべき喫緊の課題、生産性の向上や国内の人材確保の取組を行っても労働力が不足すると答弁しています。

 しかし、仕事があっても人材不足ならば、雇用はふえようがありません。そもそも、政府は、一方で人材不足といいながら、他方では雇用をふやす政策を打ち出しています。真逆の方向に同時にアクセルを踏んで、効果を相殺させるような無駄な政策をやっているようにも見えます。

 加えて申し上げれば、安倍総理大臣は、この六年間、デフレ脱却と言い続けていますが、一向にデフレから脱却できておりません。デフレ脱却には実質賃金の上昇が必要であり、そのためには生産性向上が必要です。

 そこで、経済再生担当大臣にお尋ねいたします。

 本EPA案を含め、経済政策は生産性向上につながる方向で実施すべきと考えますが、政府は一体どちらの方向を目指しているのでしょうか。

 安倍総理大臣は、本EPA案の署名に際して、保護主義的な動きが世界で広がる中、日本とEUが自由貿易の旗手として世界をリードしていくとの揺るがない政治的意思を世界に鮮明に示すものと述べました。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 本EPA案の締結は、保護主義的や自国第一主義的な動きに対してどのような効果があるでしょうか。

 また、政府がTAGと称している日米FTA交渉にどのような影響があるのでしょうか。

 EUは、環境や人権を守るために高い基準を設ける傾向にあります。このこと自体は、理想を実現しようとする意欲的な取組として評価すべきであります。しかし、時には、そうした高い基準が、結果として非関税障壁として機能することもあります。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 EUの環境や人権を守るという名目で高い基準を設けるという戦略に対して、我が国はどのように対抗していこうとお考えでしょうか。

 最後に、本戦略的パートナーシップ協定案についてお尋ねいたします。

 本戦略的パートナーシップ協定案では、共通の価値及び原則、特に、民主主義、法の支配、人権及び基本的自由の促進に共同で貢献することを約束しています。

 一方で、先週から審議が始まっております出入国管理法改正案の審議に際して、外国人労働者に関する諸問題が改めてクローズアップされているところです。

 外国人技能実習制度においては、技能実習を通じた国際貢献という建前と国内の労働力不足の埋め合わせという実態との乖離、移動の自由の否定、中間搾取と人権侵害を許容する受入れ制度などが明らかになっています。

 したがって、我々は、こうした問題を把握するために、国会の附帯決議に基づいて、政府が実施した技能実習制度の実態調査結果の提出を求めてきました。到底審議に資する内容のものでは、残念ながらありませんでした。

 また、技能実習制度だけでなく、留学生が長時間労働に従事せざるを得ない状況に追い込まれているのではないのか、更に言えば、実習や留学との名目で奴隷的な搾取を行われている構造と実態があるのではないのかという疑念と懸念があります。

 こうした我々の問題提起に対して、政府・与党は、国会では数の力でごまかせるというふうに思っているのかもしれません。しかし、国際社会においてはそのような手法は通用いたしません。人権及び基本的自由の促進に共同で貢献することを国際社会に対して約束しておきながら、国内において、技能実習生など、外国人労働者の人権と基本的自由をじゅうりんしているということになれば、我が国への信頼は大きく損なわれてしまいます。

 そこで、外務大臣にお尋ねいたします。

 人権及び基本的自由について、国際的な取組以前に、日本国内での問題について、実態を直視し、正直に取り組むべきと考えますが、政府の見解を求めます。

 そして、その取組の第一歩として、誤りのあった法務省の技能実習生の失踪動機をまとめた実態調査データの資料のもととなった調査データについて、閲覧だけでなく、ちゃんとコピーもとることを認めるよう改めて求めまして、私の代表質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 投資の保護に関し有識者の意見を聞く必要性についてお尋ねがありました。

 我が国は、投資の保護を確保するため、投資紛争の解決手続について、投資家の保護と国家の規制権限との適切なバランスの確保などに努めつつ、我が国が締結する投資関連協定にISDS条項が盛り込まれるように取り組むとともに、国際的なISDS改革の議論にも建設的に貢献してきました。

 その際、有識者や専門家とも適時に意見交換を実施しながら方針の策定に当たってきています。例えば、国連商取引法委員会でのISDS改革に関する議論には、我が国から有識者を含む代表団が参加しているところ、今後もこのような取組を続けてまいります。

 EU離脱後の英国の扱い及び日系企業への対応についてお尋ねがありました。

 EU離脱後の英国の扱いについては、英・EU間の離脱交渉及びそれを受けた英国議会、欧州議会の対応等の結果次第であり、現時点で予断することは困難です。

 政府としては、英国のEU離脱が我が国経済及び日系企業の経済活動に及ぼす影響を最小化すべく、英・EU双方に働きかけるとともに、関係省庁横断で情報を集約、分析し、在外公館などを通じて日系企業への情報提供等に努めてきているところです。

 引き続き、日系企業の声にしっかりと耳を傾け、必要な支援を行っていきます。

 日・EU・EPAによる保護主義的な動きに対する効果及び日米物品貿易協定交渉への影響についてお尋ねがありました。

 世界で保護主義的な動きが広がる中、本協定は、基本的価値を共有する日本とEUが自由貿易の旗手としてその旗を高く掲げ、自由貿易を力強く前進させていくとの揺るぎない政治的意思を全世界に示すものであります。

 日米交渉はこれからであり、本協定による日米交渉への影響について一概にお答えすることは困難ですが、いずれにせよ、日米間で自由で公正な貿易を一層促進し、双方が利益を得られるよう、政府一体となり米国との交渉を行ってまいります。

 EUの環境や人権に係る立場についてお尋ねがありました。

 政府として、EUが環境や人権を守る名目で非関税障壁を設ける戦略をとっているとは認識しておりません。他方、EUが貿易制限的な非関税措置をとるような場合には、本協定に規定される協議、協力のための仕組みなどを通じ、問題の解決に向けてEU側と協議していくことになります。

 人権及び基本的自由に関する国内の取組についてお尋ねがありました。

 人権及び基本的自由は普遍的価値であり、我が国は、EUを含む各国との対話などを通じ、国際的な人権規範の発展、促進を始め、世界の人権状況の改善に貢献してきています。

 我が国国内においても、外国人を含め、人権や基本的自由を尊重することは当然です。

 御指摘の技能実習生や留学生に関する問題については、外務省としても重く受けとめており、国内、国外双方での取組が重要と認識しています。こうした技能実習生、留学生の状況を改善するため、引き続き、関係省庁及び送り出し国とも協力してまいります。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 櫻井議員の御質問にお答えいたします。

 酪農、乳業の競争力強化対策についてのお尋ねがありました。

 日・EU・EPAを踏まえた競争力強化対策については、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、施設整備等の酪農の体質強化対策に加え、チーズ向け原料乳の低コスト化、高品質化や、チーズ工房の施設整備などの対策を講じているところです。

 これらの対策により、例えば、搾乳ロボットを導入した経営体において一頭当たりの生乳生産量が増加するなど着実に成果があらわれ始めている取組や、チーズ工房の施設整備によりチーズの増産や生産コストの低減を図ろうとする取組などが行われているところです。

 引き続き、このような取組を進め、国産乳製品の競争力の強化を支援してまいります。

 酪農の生産基盤強化対策についてのお尋ねがありました。

 中長期的な生乳需給の状況を見ると、飲用牛乳需要が減少傾向である一方で、乳製品の消費は今後も増加が見込まれており、消費者ニーズに対応すれば、我が国の酪農は発展の可能性があります。

 このような中で、近年、生乳生産量は減少傾向にあるものの、今後の生乳生産の核となる二歳未満の雌牛の飼養頭数は、北海道で二年連続、都府県で四年ぶりの増加となり、全国でも対前年比約一万二千頭増の四十二万一千頭となるなど、回復の兆しが見え始めています。

 こうした傾向は、畜産クラスター事業等の支援策を活用し、増頭に取り組んできた結果であり、このような動きが確固たるものとなるよう、引き続き生産基盤の維持強化に取り組んでまいります。

 木材製品の国際競争力強化に向けた対策の成果についてお尋ねがありました。

 木材製品の国際競争力強化対策としては、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、木材加工施設の生産性向上対策、原木の低コスト生産のための路網整備、高性能林業機械の導入等の集中的な実施、国内外での消費拡大対策など講じております。

 これらの事業の成果については、その実績を検証できる平成二十八年度の生産性の向上や路網整備などについて申し上げれば、生産性向上については、事業の対象となった木材加工施設一日当たりの原木処理量は、平均で一八%増で、目標の二割増をほぼ達成しています。また、路網は千六百五十五キロメートルを整備、高性能林業機械は百三十七台が増加しているところです。

 このように成果は着実に上がっており、事業効果の検証と必要な見直しを行いつつ、事業を継続し、引き続き木材製品の国際競争力強化に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣世耕弘成君登壇〕

国務大臣(世耕弘成君) 櫻井議員にお答えいたします。

 日豪EPAのもとでの自己申告制度の利用状況や企業の自己申告制度への対応状況についてお尋ねがありました。

 自己申告制度とは、EPAの特恵関税の適用を受けるために、輸出を行う企業がみずから輸出産品の原産性を判断し、申告する制度です。

 日豪EPAでは、自己申告制度と第三者証明制度が併用されています。日本企業が輸出の際に用いる自己申告については、豪州側の税関においてその利用数が非公表のため、具体的な利用状況は承知していませんが、併用制であることもあり、これまでの利用度は必ずしも高くないものと承知しております。

 各企業において、具体的な手続内容やコストを第三者証明制度と比べつつ、輸出拡大を図ろうとする企業を中心に、自己申告制度の利用を検討している状況にあると認識をしております。

 自己申告制度における企業のコンプライアンスの徹底に向けた政府としての取組についてお尋ねがありました。

 自己申告制度は、輸出を行う企業がみずからの判断に基づき輸出産品の原産性を申告する制度であり、御指摘のとおり、各企業のコンプライアンスの徹底が重要であると認識しております。

 政府といたしましても、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、自己申告に係る書類の作成方法や関連書類の保存、輸入国税関からの確認への対応や当該対応が不十分な場合の否認リスク等について、各業界への説明のほか、ジェトロや税関による説明会等を通じ、丁寧に情報提供を進めてまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 櫻井議員から、経済効果分析に英国のEU離脱をどのように盛り込んでいるかとのお尋ねがございました。

 昨年十二月に内閣官房が行った経済効果分析では、その時点で英国がEUから離脱していない状況であり、英国を含めたEUを対象として実施いたしました。

 英国のEU離脱による日・EU・EPAの経済効果への影響は、離脱交渉の結果、将来いかなる英・EU関係が構築されるか次第であり、現時点で客観的に予測することは困難と考えております。

 次に、日・EU・EPAを含む経済政策の方向性についてお尋ねがございました。

 御指摘の日・EU・EPAの経済効果については、関税削減等の直接的な効果だけではなく、貿易・投資が拡大することで我が国の生産性が高まり、それによって賃金が押し上げられ、現状の非労働力から労働力への新たな移行が起こり、労働供給も増加するというように、まさに海外への経済連携の推進が生産性の向上等を通じて国内経済の拡大につながる成長のメカニズムを定量的に明らかにしたものであります。

 また、デフレからの脱却についても、その実現に向けた鍵は、生産性の向上に基づく持続的な経済成長を実現し、賃金が更に上昇していくことだと考えております。

 政府としては、日・EU・EPAなど経済連携の推進、第四次産業革命による技術革新の取り入れなど、日本経済の生産性向上に向けた取組をしっかりと進めてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 山岡達丸君。

    〔山岡達丸君登壇〕

山岡達丸君 国民民主党、山岡達丸です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定及び日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定、そして、関連して、昨今の経済連携や外交のあり方を含めて質問をいたします。(拍手)

 昨夜、日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕されたという衝撃の一報が伝えられました。日・EUのEPAでは、自動車関税においても議論がなされましたが、日産自動車は、フランスの大手自動車メーカー、ルノーとのパートナーシップを結ぶ関係の中で、EUとの経済的な関係性への影響も懸念されます。世耕経済産業大臣、ゴーン会長逮捕についての所感を伺います。

 日・EUのEPAは、とりわけ国内の一次産業への影響が懸念されます。その一次産業が基幹産業となる北海道では、九月六日、最大震度七の北海道胆振東部地震が発生し、甚大な被害が発生しました。この地震だけで四十一人の方がお亡くなりになり、多くの方が被災をされました。お亡くなりになられた方々に心から御冥福をお祈りいたしますとともに、被災地で活動する議員として、一日も早い復興の実現に向け行動してまいりますので、皆様には格段なる御理解をお願い申し上げます。

 とりわけ一次産業においては、その基盤となる土地が壊れ、山が崩れました。政府は三年が復興の集中期間だと説明しますが、山崩れによってむき出しになった岩肌が白く光り、地表一面がまだら模様になってしまった山を見たとき、とてもそんな短期間で復興がなし遂げられるものではないということは明らかであります。

 国家百年の計といいますが、三年という復興期間に集中的に対応しつつも、百年を見据え、被災の中心地である北海道厚真町、安平町、むかわ町を始めとする北海道の農林水産業について粘り強く施策を行い、完全な復興を実現すべきだと考えております。北海道選出の吉川農林水産大臣にその決意をお伺いいたします。

 日本は、対外貿易を通じて大きな発展を遂げてまいりました。二十一世紀に入っても、世界経済は貿易を通じて年々拡大し、アジアの国々などは、その恩恵もあり、高い成長率を維持しています。

 健全な自由貿易、そして、各国の事情に配慮をしながらも高いレベルの経済連携を目指していくことは、世界全体の発展のためにも必要なことだと考えます。

 一方で、農林水産業における技術や地域のコミュニティーは、一度失われると取り戻すことが非常に難しいものでもあります。国の食料安全保障を守る観点からも、一定程度の保護をすることは各国の権利であり、交渉の中でも堂々と主張すべきことだと考えています。

 仮に交渉で押し込まれ、マイナスの影響が避けられないのであれば、そのことを曖昧にしたり、ごまかしたりせずに、国民に真摯に説明をするとともに、必要な国内対策を打っていかなければなりません。

 以下、その視点をもって質問をさせていただきます。

 農林水産物の重要五品目における、乳製品、とりわけチーズについて伺います。

 今回のEPAの合意では、ハード系チーズの関税は段階的に撤廃され、ソフト系チーズについては、二九・八%を基本に種類ごとに異なっていた関税を、一まとめにして最大三・一万トンのEU枠を設けて、十六年目にはこの数量枠内の関税をゼロにすることとしています。

 政府は、EPA協定発効の一年目については、二〇一六年のEUからの輸入量である二万一千トンと同程度の枠に押しとどめたということを強調しますが、それはあくまでも一年目のことであります。この後、枠はどんどん拡大され、最終的にはEUからの輸入量ほぼ全量が無税になり、関税割当て制度についても時間とともに撤廃されることになることが見込まれます。

 TPP交渉では関税を維持し守った品目までも、今回関税撤廃の対象となってしまいました。ソフト系チーズについては、TPP以上に押し込まれたというのが紛れもない事実ではないでしょうか。

 政府は、国産の生産拡大と両立できるようにしたと説明しますが、国産チーズにとってマイナスの影響が出るのは明白であります。

 国民に対して曖昧な説明やごまかしなどをせず、国産チーズへのマイナスの影響について政府として真摯に説明されるべきではありませんか。答弁を求めますので、この機会にぜひお話しください。

 国内のバター、クリーム、直接消費用チーズのおよそ九〇%は北海道で生産されています。そもそも飲用牛乳に比べて価格が安く不利な条件のもとでも、北海道では限界までの規模拡大、効率化、機械化、付加価値の向上など、ぎりぎりの努力を続けてきました。それでもなお、多額の借金や重労働の中で苦しい生活を強いられているというのが、多くの酪農家の方々の実態であります。

 ことしについては、前年の補正予算においてチーズ対策予算が組まれ、国産チーズに対して約百五十億円の競争力強化対策が行われていますが、単年度のばらまきで済ませてよいものではありません。

 EUは、農家所得を支える直接支払い政策が充実しています。これを機に、中長期にわたって農業経営の安定が見込める乳製品版の所得補償制度の創設を進めるべきではありませんか。北海道選出の吉川農林水産大臣ならばその重要性を理解していただけるものと期待し、答弁をお願いいたします。

 次に、日米の二国間の貿易交渉と日・EUの交渉結果の関係について伺います。

 日・EUの交渉の結果、TPP以上に押し込まれてしまったソフト系チーズについて、米国の二国間交渉でも同じ水準の譲歩を要求されるおそれがあります。

 なぜなら、安倍総理は、九月二十六日の日米首脳会談で約束した米国との二国間交渉の開始に当たっての共同声明で、農林水産品は過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるとして、逆に言えば、過去に約束した水準までは譲歩の範囲であるというような立場を表明してしまいました。

 さらに、米国に対しては、自動車産業の製造と雇用の増加を目指すものである米国の立場を尊重するとして、日本の農林水産品における譲歩と米国の自動車産業の製造や雇用増加をお互い尊重し合うという位置づけにしてしまいました。

 これでは、仮に交渉結果が米国の自動車産業の製造や雇用増加につながらないものとなった場合、その代償として、日本の農林水産物も過去の経済連携で約束した市場アクセスよりも更に深掘りをした水準で妥協することがあり得ると読めるものになってしまっています。これは余りにもアンバランスでひどい交渉の始まりではありませんか。

 米国との二国間の交渉において、日・EU・EPA並みにソフト系チーズの関税を譲歩することになれば、国内の酪農家はさらなる危機にさらされます。そんな結果には絶対にしないと断言していただけませんでしょうか。農林水産大臣に答弁をお願いいたします。

 そして、日米首脳会談後の共同声明においては、物品の交渉のみならず、サービスなどの重要分野も交渉するとしています。物品交渉とサービスや投資の交渉、これらを包括してFTAと呼ぶのではないんですか。政府は、米国側が一切使わないTAGなる言葉を使い、日米FTAではないというむちゃなごまかしを国民にしようとしていますが、国際社会に対しても同じ説明をするつもりでしょうか。

 日本はWTOに加盟しています。WTOでは、最恵国待遇、つまり、一つの国に適用した関税削減はほかの全ての加盟国に適用するという原則があります。その例外として、ガット第二十四条にある自由貿易地域をつくる協定としてのFTAが規定されているのではありませんか。

 この日米間の貿易交渉がFTAではないと説明されるのであれば、このWTOの例外に当てはまらず、最恵国待遇の原則にのっとって、日米における交渉結果をほかの全てのWTO加盟国にも適用し、関税を下げるということになってしまいますが、それでよろしいのでしょうか。ごまかしの説明を続けることで深刻な影響が出るのではありませんか。河野外務大臣に明確な答弁を求めます。

 ここまで、日・EU・EPAの結果と日米の二国間の貿易交渉についての関係を質問しましたが、次にTPPとの関係について伺います。

 政府のごまかしの姿勢により、TPPにおいてもさらなるマイナスの影響が出かねない、そうした状況です。

 安倍政権は、TPPにはアメリカが加わると再三の説明を繰り返し、アメリカが加わることを前提に、生乳換算七万トンの乳製品低関税輸入枠を許容しました。

 しかし、現実にはアメリカはTPPに加わらず、日本もそれを容認するかのように二国間交渉を開始する約束をしてしまいました。その結果、TPPの七万トンの枠はアメリカ抜きで各国に割り当てられることになり、アメリカからは更に別の枠を要求される可能性が濃厚となっています。

 政府は、アメリカが完全にTPPに参加しないとわかった時点で、TPPにおける乳製品の枠を再交渉したいと説明しているようですが、完全に参加しないと認めるのはいつになるのでしょうか。

 TPPは十二月三十日に発効してしまいます。この問題を曖昧にし、ごまかしたままにすれば、結果として想定以上の乳製品が輸入されることになり、国内の乳製品関係者を更に苦しめることになります。

 TPP発効は目前に迫っています。前提が違うのですから、TPPの乳製品の七万トン枠の撤回に向け、TPP発効までに各国との再交渉の協議を進めると、この場で決断していただけませんか。TPPが発効してしまってからでは遅いのです。御答弁をお願いいたします。

 次に、牛、豚についても触れさせていただきます。

 日・EUにおける牛、豚の合意内容はTPPとほぼ同じ内容になっており、結論から言えば、こちらも相当程度のマイナスの影響は避けられないと考えます。

 たった数年前まで、農林水産物の重要五品目、守るべきものは守るなどと胸を張っていたのに、いつの間にかTPPの交渉結果が当然の妥協ラインになってしまいました。政府は、過去の説明との整合性をどのように考えますか。曖昧にしたり、ごまかしたりせず、農作物における交渉の妥協ラインが過去に比べて大きく下がっているという事実を認め、真摯に国民に説明するべきではありませんか。農林水産大臣の答弁を求めます。

 日・EU・EPA協定とILO基本条約の関係についてお尋ねします。

 日・EUのEPA協定では、第十六章における、労働基本権に係るILO八条約を批准するために努力を払う旨を規定しています。

 日本は、この八つの条約のうち、強制労働の廃止に関する条約と雇用及び職業についての差別待遇に関する条約が未批准です。国連加盟国の大多数が批准しているこの八条約について批准できていないのは、国際的にも異常ではないでしょうか。

 なぜこれまでこの状況を解消してこなかったのですか。政府に説明を求めます。

 また、EUは、EPAの説明書の中で、日本には批准に向けての努力を行う義務が発生するとしていますが、日本政府はこのことに真摯に向き合うものという理解でよろしいでしょうか。まさかEUに対してまで、曖昧にしたり、ごまかしたりするような行動はされないものと理解しますが、今回の発効を受けて、日本政府は具体的にどのような努力を行っていくのか、外務大臣に答弁を求めます。

 ここまで、政府のごまかしの姿勢が国民を苦しめ、国益を失うことになるという視点をもって質問をさせていただきました。

 せっかくの機会ですので、それと同じ質問のもと、日ロ外交についてもお伺いいたします。

 北方領土の交渉について、日ソ共同宣言を基礎に交渉を加速させる旨、安倍総理が表明されました。これについてプーチン大統領は、二島の引渡しといっても、その主権についての議論は別だという趣旨の発言をしています。

 確認のために伺いますが、歯舞、色丹の二島引渡しの際には、両国の間でその主権は日本にあるということを明確にすることが絶対の条件であるということでよろしいですか。この件は、曖昧にしたり、ごまかしたりすることが決して許されません。外務大臣の明確な答弁を求めます。

 以上、質問は多岐にわたりますが、いずれも国民生活と国益にとって非常に重要なものと考えています。どうぞ、明確なる答弁をお願いさせていただきますとともに、最後に申し上げます。

 先ほど、法務委員長の解任決議案が提出され、採決においては反対多数で否決をされました。

 与党議員の皆様におかれましては、そのお立場から、反対という投票行動をされたものと理解しますが、一般論で言って、議論の前提となる必要なデータを示さず、また、出してきたものも誤っている、あるいは改ざんの疑いがある、そんな政府の姿勢を容認し、そのまま審議入りを行うという委員会運営は、立法府の尊厳と存在意義の放棄につながるものになりかねない、そのことは与党議員の皆様も十分御理解されているものと思います。

 間違っても、数の力で押し切って否決したからこれでよしなどと考えておられることはないと思いますが、何とぞ、今後は良識のある委員会運営が行われていくことを強く望ませていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 日米物品貿易交渉についてお尋ねがありました。

 これまで我が国が結んできた包括的なFTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを、交渉を開始する段階から明確に目指してきました。

 しかし、九月の日米首脳会談の際の日米共同声明では、交渉の対象として、全てのサービス分野の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的なFTAとは異なるものであると考えます。

 FTAについて、国際的に確立された定義があるわけではありません。ガット第二十四条では自由貿易地域について定められていますが、いわゆるFTA、すなわち自由貿易協定についての定義はありません。ガット第二十四条への適合性と、その協定をFTAと呼ぶかどうかについては、直接的には関係はありません。

 その上で申し上げれば、日米間の交渉はこれからであり、現時点で交渉結果について予見することは困難ですが、いずれにせよ、我が国として、いかなる貿易協定もWTO協定と整合的であるべきと考えています。

 ILO基本条約に関する我が国の対応についてお尋ねがありました。

 我が国においては、個々のILO条約について、条約を批准することの意義などを十分に検討し批准することが適当と考えられるものについて、国内法制との整合性をきめ細かく確保した上で批准してきたところです。

 お尋ねのあった、いわゆるILO第百五号条約及び第百十一号条約に関しては、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があり、現在、批准の可能性について慎重に検討を行っているところです。

 ILO基本条約に関し、日・EU・EPAの規定を踏まえた取組についてお尋ねがありました。

 日・EU・EPAは、各締約国が自己の発意により批准することが適当と認めるILO基本条約等の批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払うことを規定しています。

 この協定は、我が国に対し、未批准のILO基本条約の批准を義務づけるものではありませんが、当該規定の趣旨も踏まえつつ、引き続きILO基本条約の批准の可能性について慎重に検討していきます。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 御指摘のプーチン大統領と記者とのやりとりの一つ一つについてコメントすることは差し控えます。

 今回の日ロ首脳会談で、両首脳は、一九五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意しました。

 今後、この合意に基づいて交渉を加速させようとしているところであり、我が国の交渉方針や考え方について交渉以外の場で言うことは交渉に悪影響を与えることになり、お答えすることは差し控えます。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 山岡議員の御質問にお答えいたします。

 北海道の農業、林業、水産業についての復興への決意についてお尋ねがありました。

 今般の北海道胆振東部地震により甚大な被害を受けた北海道は、我が国最大の食料供給基地であり、その復旧復興は喫緊の課題であると認識しています。

 十月七日には、私自身が被災三町を訪問し、被害状況を調査するとともに、道庁やJA等の関係者と意見交換を行いました。

 このような状況を踏まえ、農林水産省としては、災害復旧事業による農地、農業用施設等の早期復旧のほか、応急的な用水手当て等により、できる限り多くの農地において来年の営農が可能となるよう全力で支援を行うとともに、森林関係については、早期の災害復旧、被災した林業者等の経営安定化に向け、森林内における被害木の伐採、搬出への支援を行うなど、被災状況に応じたきめ細かい支援対策をできる限り早期に決定しました。

 被災された農林漁業者が意欲を持って経営再建できるように、今後も万全を尽くしてまいります。

 日・EU・EPAの発効によるチーズへの影響についてのお尋ねがありました。

 チーズに関する日・EU・EPAの合意結果においては、ソフト系は横断的な関税割当てとし、枠量は国産の生産拡大と両立できる三万一千トンの範囲にとどめるとともに、ハード系は十六年目までという長期の関税撤廃期間を確保したことから、当面、輸入の急増は見込みがたく、国内需給への悪影響は回避できると見込んでいます。

 他方、長期的には、国産チーズの価格下落が生じることにより、生産額の減少が見込まれると試算したところです。

 このため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、既存の体質強化対策に加え、特にチーズの競争力強化対策を図る対策を講じているところです。

 乳製品版の所得補償制度についてのお尋ねがありました。

 農業は食料の安定供給や農村社会の維持等に重要な役割を果たしており、各国はそれぞれの課題に応じ必要な農業政策を実施していますが、御指摘のEUでは、共通農業政策として、作付面積や過去の支払い実績に基づく直接支払い等が実施されています。

 我が国では、酪農の実情を踏まえ、酪農家の経営の安定を図るため、平成二十九年度には、生クリーム等の液状乳製品を加工原料乳生産者補給金の対象に追加する等の見直しを協定発効に先立って実施し、平成三十年度からは、同制度を畜産経営安定法に位置づけ、恒久化するとともに、乳製品向け乳価の下落に備える加工原料乳生産者経営安定対策、いわゆるナラシ対策を実施しているところです。

 農林水産省としては、酪農家の方々の不安や懸念を払拭し、新たな国際環境のもとでも安心して再生産に取り組めるよう、引き続き対応してまいります。

 日米物品貿易協定交渉についてのお尋ねがありました。

 日米共同声明では、農林水産品については、過去の経済連携協定で約束した内容が最大限との日本側の立場が明記されました。首脳間でこの点について確認したことは非常に重たいものと認識しています。

 米国との交渉はこれからであることから、個別品目についてお答えすることは差し控えます。

 いずれにいたしましても、日米共同声明を大前提に、将来にわたって我が国の農林水産業の再生産が確保されるよう、農林水産省としても最大限の努力をしていく考えです。

 農産物における交渉の妥協ラインが下がっているのではないかとのお尋ねがありました。

 TPP及び日・EU・EPAでは、牛肉については十六年目に最終税率九%という長期間の関税削減期間としたほか、豚肉の差額関税制度を維持するなど、農林水産業の再生産が引き続き可能となる国境措置を確保いたしました。

 TPPや日・EU・EPAについてさまざまな不安を持っておられる方がいらっしゃることは承知をしており、体質強化対策や経営安定対策などのきめ細やかな対策を講ずることにより、そうした不安や懸念にもしっかりと向き合ってまいります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 山岡議員から、TPPにおける乳製品枠についてのお尋ねがございました。

 九月の日米首脳会談で、米国との間で日米物品貿易交渉を開始することで合意いたしましたが、米国との具体的な交渉はこれからやります。現時点で、TPPワイド枠の扱い等、個別の事項については何ら決まっておりません。

 したがって、現在、我が国としては、TPP11協定第六条の見直しが可能となる場合、すなわち、米国を含むTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合に当たるとは考えておりません。

 いずれにしても、さまざまな面で、農林漁業者に懸念がないように、しっかりと対応してまいります。(拍手)

    〔国務大臣世耕弘成君登壇〕

国務大臣(世耕弘成君) 山岡議員にお答えいたします。

 報道されているゴーン会長逮捕とEUとの経済的な関係性への影響についてお尋ねがありました。

 日産のカルロス・ゴーン会長が逮捕されたとの報道については、このような事態に至ったことをまことに遺憾であると考えております。

 詳細については東京地検特捜部が捜査中であるため、現段階でそれ以上の所感を述べることは差し控えさせていただきます。

 なお、現在の日産、ルノー、三菱のアライアンスについては、本事案と関係なく、安定的な関係を維持していくことが重要と認識しております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 遠山清彦君。

    〔遠山清彦君登壇〕

遠山清彦君 公明党の遠山清彦でございます。

 私は、公明党及び自民党を代表し、ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定及び戦略的パートナーシップ協定に関し質問させていただきます。(拍手)

 本年七月、日本が二十八カ国加盟の欧州連合との間で、約五年間の交渉を経て、経済連携協定、EPAと包括的な戦略的連携協定、SPAを署名するに至ったことは、極めて画期的なことであります。

 日欧EPAは、一部で保護主義が台頭する現在の国際社会の中で、日欧が協力して自由貿易を守り前進させる強固な決意を示すものであります。同時に、本協定が早期に発効すれば、人口約六億人、世界のGDPの約二八%、世界貿易の約三七%を占める巨大な自由貿易経済圏が誕生することとなります。

 本年十二月三十日に発効予定のTPP11とあわせ考えれば、安倍政権のもと、日本が世界の自由貿易体制を守る最前線で主導的な役割を果たしていることは明白であり、私たち国会議員もその責任を自覚しつつ議論することが重要と考えます。

 一方、日欧SPAは、法的拘束力のある協力枠組みであり、国際的な課題等について日欧間で政治的協力や共同行動を促進することを定めています。

 今後、SPAが日欧協力関係の法的基盤となり、民主主義、法の支配、人権と基本的自由の推進等、両者が共有する価値と原則を尊重し、日欧ともに世界の平和と安定に貢献していくことになります。これも早期発効のために一日も早く国会承認を与えるべきと考えます。

 以下、日欧EPAを中心に、重要な論点について具体的に質問をいたします。

 まず、日欧EPAの経済効果について伺います。

 本協定に基づき、関税を、EU側は約九九%、日本側は約九四%、撤廃をいたします。政府が昨年十二月に公表した文書には、本協定によって、日本の実質GDPが約一%、額にして約五・二兆円押し上げられ、雇用は約〇・四五%、人数にして約二十九・二万人増加するとの試算結果が示されております。さらに、本協定がもたらす経済効果は一時的なものではなく、生産力の拡大を伴う恒久的な需給両面の増加によるため、直接投資効果や企業活動の活性化が拡大すれば、更に大きなGDP押し上げ効果もあり得るという認識も示されております。

 確かに、日欧間の貿易量は我が国と米中等との間より少ないですが、日本への直接投資残高二十三兆円のうち、投資元地域のトップは約十兆円のEUであり、その意味で、より大きな効果を期待することは可能です。しかし、この試算の前提が、所得増が需要増と生産性向上へつながり、さらに、実質賃金上昇と雇用拡大につながる内生的成長メカニズムであることから、人口減少等のマイナス影響が大きい場合、本当に試算どおりの経済効果が出るのか疑問視する声もあります。

 このことも踏まえつつ、日欧EPAの経済効果についての茂木経済再生担当大臣の見解を改めて伺います。

 英国のEU離脱問題と本協定の関係について伺います。

 英国は来年三月二十九日にEU離脱予定であり、現在、英国・EU間で交渉中でありますが、最終的に双方の議会承認を経て合意形成できるか、全く不透明であります。仮に合意なき離脱になった場合、英国に拠点を置く日系企業への影響が懸念されるとともに、EU経済全体が混乱に陥る可能性も指摘されています。

 英国のEU離脱が本協定並びに試算されている経済効果に与える影響について政府はどう考えているのか、また、EU離脱後の英国の本協定における取扱いはどうなっているのか、河野外務大臣の答弁を求めます。

 本協定発効を受けての農林水産業の国内対策について伺います。

 日欧EPAで、日本は農林水産品の関税をTPPと同等の八二%で撤廃することになります。政府の守るべきものは守る姿勢があらわれたものとして高く評価いたしますが、EUが市場開放を求めた一部品目ではTPPを超えることになります。とりわけカマンベールチーズなどのソフト系チーズは三・一万トンの輸入枠を設け、関税撤廃。また、構造用集成材やSPF製材など、主な林産物十品目の関税は全て撤廃です。高品質で安価な木材がEUから輸入されることで、国産材は厳しい競争にさらされることが懸念されます。

 これらのことに立ち向かい、農林水産業を引き続き成長産業化するためには、国内の対策が急務です。既に総合的なTPP等関連政策大綱に基づく補正予算等での対策が始まっておりますが、チーズについての原料乳の低コスト化、高品質化、また、製造コストの低減と品質向上、ブランド化、国産材についての構造用集成材等の木材製品競争力強化について、今後の対策を農水大臣に伺います。あわせて、輸出の強化など、農林水産業の成長産業化の加速について、吉川農林水産大臣に今後の取組を伺います。

 投資保護に関する規定及び紛争解決手続、ISDSについては、本協定の交渉過程で最後まで難航した結果、切り離され、継続協議となりました。この背景には、日本が過去に締結した多くの投資協定等において盛り込まれてきたISDSについて、EU側に、制度が乱用され、国家の規制権限が侵害されるとの強い懸念があることがあります。

 EUが近年、カナダやベトナムと締結したFTAや投資保護協定には、投資分野の紛争解決のための二審制の常設投資裁判所を設置することが規定をされています。さらに、EUは、将来的には多国間による常設投資裁判所の設置も視野に入れています。

 日本として、今後継続協議をしていく中で、二審制の常設投資裁判所設置の主張を容認していくことはあり得るのか、また、将来的な多国間の常設投資裁判所の設置についてどのような考え方で臨むのか、河野外務大臣に見解を伺います。

 本年七月、日・EU間の相互の円滑な個人データを図る枠組み構築に係る最終合意が個人情報保護委員会から発表され、年末までに枠組みが成立する予定です。

 これは、日欧EPAから得られる利益を補完、拡大するものとうたわれていますが、個人データの取扱いについては、近年、大手SNS事業者による個人情報漏えい事件が明らかになるなど、事業者に対する規制のあり方について内外で関心が高まっている問題があります。

 このことも踏まえ、政府として、日・EU間で個人データの相互移転が可能となることの意義をどう評価し、また、本協定に基づく今後の電子商取引に関するルールのあり方と運用についてどのような方針を持っているのか、宮腰内閣府特命担当大臣に説明を求めます。

 世界で保護主義的な動きが広がっている背景には、米国トランプ政権が貿易交渉において、自国にとって有利な条件を二国間交渉の枠組みで確保しようとする姿勢を維持していることがあります。

 EUは、本年七月に米国との交渉開始に応じ、日本も九月に日米物品貿易協定、TAGの交渉開始に応じることを決めました。

 安倍総理の、自由で開かれた国際経済体制こそ、日本を始めとする国際社会の繁栄を約束するものであるとの信念は揺るがないものであると信じておりますが、日欧がともに米国との新たな貿易交渉に臨む現状の中で、改めて、政府の今後の貿易政策についての基本方針を河野外務大臣に伺いたいと思います。

 最後に、政府におかれては、今後更にRCEPや日中韓FTAなどの実現を力強く推進し、世界の自由貿易体制を確固たるものにすべく、日本が主導的役割を果たすことを切に要望申し上げ、私の代表質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 遠山議員から、日・EU・EPAの経済効果についてのお尋ねがございました。

 我が国が人口減少局面にあるにもかかわらず、GDP及び雇用の増加は達成できるのかとの御指摘でありますが、日・EU・EPAの経済効果分析では、将来の人口減少を所与のものとした上で、日・EU・EPAにより貿易・投資が拡大することで、我が国の生産性が高まり、それによって賃金が押し上げられ、現状の非労働力から労働力への新たな移行が起こり、労働供給も増加するというマクロ経済全体の効果を見込んでおります。この結果、日・EU・EPAがない場合と比較して、遠山議員御指摘のとおり、恒常的にGDPが約一%、雇用が約〇・四五%増加するという分析結果になっております。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 英国の離脱が日・EU・EPAに与える影響等についてお尋ねがありました。

 英国のEU離脱が本協定及びその経済効果に与える影響については、現時点で予断することは困難です。

 政府としては、英国のEU離脱が我が国経済及び日系企業の経済活動に及ぼす影響を最小化すべく、英・EU双方に働きかけてきました。

 本協定における離脱後の英国の扱いについては、必要に応じ、英・EU間の離脱交渉及びそれを受けた英国議会、欧州議会の対応等を見つつ、EU側と協議を行っていく考えです。

 EUが提唱している常設投資裁判所構想に係る我が国の立場についてお尋ねがありました。

 日・EU間の投資紛争解決手続については、日・EU・EPAと切り離して別途行われている日・EU投資交渉において協議が続けられています。現在交渉中であることから、同協議における我が国の具体的立場についてお答えすることは差し控えたいと思います。

 他方、我が国としては、投資家と国との間の投資紛争解決手続としては、中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に与えるISDS制度が、投資家にとって海外の投資先の国におけるビジネスへのリスクを軽減できるツールであり、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効な制度であると考えています。

 貿易政策の基本的方針についてもお尋ねがありました。

 戦後、我が国は、自由貿易体制の最大の受益者として現在の繁栄を実現してきました。TPP11や日・EU・EPAを相次いで合意に至らせたことは、自由貿易体制を更に推進していくとの揺るぎない意思を全世界に示すものです。また、WTO改革を通じた多角的自由貿易体制の維持強化にも積極的に貢献しています。

 現在、世界において保護主義の懸念が高まる中、我が国としては、今後とも自由で公正なルールに基づく貿易体制の強化を推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 遠山議員の御質問にお答えいたします。

 日・EU・EPAの発効によるチーズ、木材製品の対策についてのお尋ねがありました。

 農林水産省では、これらの国際競争力強化を図るため、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、チーズ向け原料乳の低コスト化、高品質化、チーズ工房等の施設整備や国産チーズの品質向上、ブランド化、構造用集成材等の木材製品の競争力を高めるための加工施設の効率化、競争力のある製品への転換、原木供給の低コスト化等の対策を講じているところです。

 引き続き、農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかり向き合い、新たな国際環境のもとで安心して再生産できるよう、十分な対策を講じてまいります。

 農林水産業の成長産業化についてのお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、我が国の農林水産業の活力を取り戻し、魅力ある成長産業にしていくため、農林水産業全般にわたる改革を推進してきました。

 引き続き、これまでの改革を推進するとともに、意欲ある農林漁業者の方々が安心して再生産できるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づく国内対策に万全を期してまいります。

 一方、輸出に関して、牛肉、水産物、茶等の輸出重点品目を含め、ほぼ全ての品目でEU側の関税が即時撤廃されます。これを輸出拡大のチャンスと捉え、畜産物、加工食品等の輸出条件の改善、輸出拠点の整備、需要開拓のためのプロモーション等に取り組んでまいります。

 こうした施策を積極的に推進し、農林水産業の成長産業化を加速化してまいります。(拍手)

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) 遠山議員から、日・EU間の個人データの相互移転等の意義等についてお尋ねがございました。

 日・EU間で個人データの相互移転枠組みが構築されることで、両者の間で、高いレベルの個人データの保護を確保しつつ、データの自由な流通が実現することになります。

 これは、日・EU・EPAから得られる利益を補完、拡大することとなり、日・EU間の戦略的なパートナーシップにも寄与するものと考えております。

 また、電子商取引分野については、本協定において、当局の間で協力を行うことの重要性や、電子商取引の利用者の個人情報を保護するための措置を採用し、又は維持することの重要性が規定されており、この趣旨を踏まえ、EUとしっかり協力して取り組んでいくこととされております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 笠井亮君。

    〔笠井亮君登壇〕

笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、日欧EPA等について質問します。(拍手)

 今、世界各地で、多国籍企業本位の歯どめなき自由化への批判が高まっています。

 貿易交渉では、各国が互いの経済主権を尊重しながら、民主的で秩序ある経済の発展に結びつけることが求められています。

 ところが、日米間の貿易交渉ではどうでしょうか。

 政府は、日米物品貿易協定、TAGであり、FTAではないと説明しています。しかし、日米共同声明の英語版にも、在日米国大使館の日本語訳にも、TAGなる表現はありません。

 米国のペンス副大統領は、十一月十三日、安倍総理との共同記者発表で、二国間貿易に関する交渉を開始する決定を歓迎すると述べ、この交渉には、物品だけでなく、サービスなど主要分野が含まれると明言しました。政府は、この発言を否定するのですか。

 日米貿易協定は、まさに日米FTAそのものです。外交文書や米国側の発言をねじ曲げてまでTAGだと強弁する政府の姿勢は、国会と国民を欺くものであり、断じて許されません。

 さきの日米首脳会談で、トランプ大統領から巨額の貿易赤字は嫌だと迫られ、米国製兵器の爆買いを確約したことも重大です。

 米国の貿易赤字解消のために、日本車の関税引上げを認め、米や牛肉など重要五品目を含む農産物市場を差し出すのですか。あらゆる分野の対日要求の丸のみになるではありませんか。答弁を求めます。

 日欧EPAは、農林水産業を始め国内産業をかつてない自由化にさらす、一連の貿易交渉を一層加速させるものです。

 本協定が、農産品でTPPに匹敵する八二%もの関税撤廃を約束していることは重大です。

 最も影響を受けるのが酪農です。TPPでハード系チーズの関税が撤廃された上、EUからソフト系チーズの関税撤廃まで迫られ、受け入れました。北海道を始め、懸命に努力を続けている全国の酪農産地から、これでは先行きやっていけないと、不安や危惧が広がるのは当然です。

 EUのような農業支援策もないまま競争にさらすのではなく、小規模・家族農業の役割を再評価し、農業政策の基本に据えるべきではありませんか。

 本協定が関税撤廃、市場開放の連鎖をもたらすことも重大です。

 パーデュー米農務長官は、十月、日米貿易交渉について、日本がEUに与えたものと同等か、それ以上の市場開放を期待すると述べています。日欧EPAでTPPを超える譲歩を行えば、米国がTPP以上の市場開放を求めてくることは明白です。

 総理は、農林水産品の関税引下げはTPP水準が最大限との前提をアメリカと合意した、これこそ共同声明の最大のポイントと繰り返していますが、そのようなごまかしはもう通用しません。

 そもそも、TPP自体、自民党が、TPP断固反対、うそをつかないという選挙公約を投げ捨てて結んだものです。国会決議にも国民世論にも背を向けて強行した史上最悪の市場開放を前提にして、どうやって農林水産業を守り抜くというのですか。明確な答弁を求めます。

 日豪EPAには、日本が他国の協定で特恵的なアクセスを認めた際は、豪州に対しても同等の待遇を与えるための見直し規定が置かれています。今後、豪州からもさらなる市場開放を迫られかねません。結局、行き着く先は、日本が際限なく譲歩を重ねる芋づる式の市場開放ではありませんか。

 政府は、自由貿易を成長戦略の重要な柱に掲げ、国境を越えて利益の最大化を追求する多国籍企業に経済主権、食料主権を売り渡してきました。日欧EPAが、この間、国内の産業や雇用、国民生活に犠牲を強いてきた矛盾を一層深刻にすることは明らかです。

 以上、明確な答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 日米物品貿易協定についてお尋ねがありました。

 これまで我が国が結んできた包括的なFTAでは、物品貿易に加え、サービス貿易全般の自由化を含むものを基本とし、さらに、知的財産、投資、競争など、幅広いルールを協定に盛り込むことを、交渉を開始する段階から明確に目指してきました。

 しかし、九月の日米首脳会談の際の日米共同声明では、交渉の対象として、全てのサービス分野の自由化や幅広いルールまで盛り込むことは想定しておらず、その意味で、これまで我が国が結んできた包括的FTAとは異なるものであると考えます。

 具体的な交渉はこれからですが、いずれにせよ、我が国として、国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 日豪EPAの見直し規定についてお尋ねがありました。

 日豪EPAの言う見直しとは、豪州産の一部の品目について、我が国が第三国に対して特恵的な市場アクセスを与えた結果として豪州の原産品の我が国市場における競争力に重大な変化が生じた場合に、両国による見直しの対象とするものです。

 協定上、第三国に与えた特恵的な市場アクセスの結果として豪州産品の日本市場における競争力に重大な変化がない限り、見直し協議の対象となりません。仮に見直し協議が実際に行われることとなったとしても、その結果は協議次第であり、何ら予断されていません。

 したがって、同規定が芋づる式の市場開放であるとの御指摘は当たりません。

 日・EU・EPAが国内産業等に与える影響についてお尋ねがありました。

 本協定については、包括的で高い水準の協定を目指し、ぎりぎりの交渉を行ってきました。

 その結果、二十一世紀におけるモデルとなる、自由で開かれ、かつ公正な貿易・投資のルールを規定するとともに、物品市場アクセスについては、農林水産品の再生産が引き続き可能となる国境措置を確保しました。さらに、交渉で獲得した措置とあわせて万全の対策を講ずる考えです。

 本協定は、貿易・投資の活発化、雇用創出、企業競争力の強化等を通じ我が国の経済成長に資するものであり、国内産業等に犠牲を強いるものではないと考えております。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 笠井議員から、米国のペンス副大統領の発言に関して、日米物品貿易協定交渉の対象にはサービス貿易も含まれるのではないかとのお尋ねがありました。

 今回、交渉開始で合意した協定については、共同声明の三で述べているとおり、対象は物品貿易でありますが、それに加え、今後、交渉結果によって早期に結果を生じ得るものも対象になり得るとしております。

 これは、例えば通関手続など貿易円滑化に関する措置など、物品貿易と同じタイミングで結論を出せる分野に限定されると考えており、金融、保険など、制度改正を要するものは、交渉に時間がかかり、交渉の対象には想定されておりません。

 いずれにせよ、日米間の交渉については、九月の日米共同声明に従って行うことで一致しており、この点について日米間の認識にそごはございません。

 次に、日米物品貿易協定の交渉内容についてお尋ねがありました。

 九月の日米合意に際し、日米は今後、信頼関係に基づき議論を行うこととし、協議が行われている間は共同声明の精神に反する行動をとらないことで合意をしております。この趣旨は、我が国の自動車に米国通商拡大法二三二条に基づく追加関税が課されることはないということであり、このことは、安倍総理とトランプ大統領との間で直接確認されております。

 また、農林水産品については、共同声明に、過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限であるとの日本の立場が明記されました。

 さらに、今後の交渉でもこの立場は変わらないと米国に伝えております。

 いずれにせよ、我が国として、いかなる国とも、国益に反するような合意を行うつもりはありません。

 次に、日米物品貿易協定における農林水産品の扱いについてのお尋ねがありました。

 農林水産品については、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限であるとの日本の立場が共同声明に明記をされました。そして、過去の経済連携協定で最大限のものはTPPだと考えており、その旨も米側に説明をいたしております。

 また、我が国としては、最終的にもこの立場を維持する旨を米国に対して明確に伝えているところであり、農業者の方々にも御懸念がない形で今後の交渉を行える環境を整えたものと考えております。

 御指摘のパーデュー農務長官の発言も、全体の文脈からして、この共同声明に沿ったものと考えております。

 いずれにせよ、我が国として、いかなる国とも、国益に反するような合意を行うつもりはございません。(拍手)

    〔国務大臣吉川貴盛君登壇〕

国務大臣(吉川貴盛君) 笠井議員の御質問にお答えいたします。

 日・EU・EPA交渉の合意内容への懸念についてのお尋ねがありました。

 日・EU・EPAの牛乳・乳製品の国境措置については、チーズは、ソフト系は関税撤廃を回避し、横断的な関税割当てを設定、ハード系は長期の関税撤廃期間を確保、バター、脱脂粉乳等は国家貿易制度を維持し、関税割当てを設定、ホエーは関税削減にとどめる等としたことから、当面、輸入の急増は見込みがたく、乳製品全体の国内需給への悪影響は回避できると見込んでいます。

 他方、長期的には、競合する国産の脱脂粉乳、チーズの価格下落等により生産額の減少が見込まれることから、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、畜産クラスター事業等の体質強化対策、生クリーム等を加工原料乳生産者補給金制度の対象に追加するなどの充実した経営安定対策等、万全の対策を講ずることで、引き続き国内生産は維持されると見込んだところです。

 農林水産省としては、全国の酪農家の方々の不安や懸念を払拭し、新たな国際環境のもとでも安心して再生産に取り組めるよう、引き続き対応してまいります。

 日・EU・EPAと小規模・家族農業についてのお尋ねがありました。

 日・EU・EPAにおいては、農林水産分野について、重要五品目を中心に、関税撤廃の例外をしっかり確保しました。

 それでもなお残る農業者の不安や懸念に向き合い、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、万全の国内対策を講じてまいります。

 その際、他の施策と同様、意欲と能力のある農業者であれば、経営規模の大小、家族経営、法人経営の別にかかわらず、地域農業の担い手として幅広く支援してまいります。

 また、こうした施策とともに、日本型直接支払制度により、草刈りや水路の管理など、地域の営農継続等に必要な支援を引き続き行ってまいります。

 これらの取組を総合的に推進することにより、多様な農業者の意欲的な取組を後押ししてまいります。

 TPP協定と農林水産業についてのお尋ねがありました。

 TPP協定においては、農林水産分野について、重要五品目を中心に、関税撤廃の例外をしっかり確保しました。

 それでもなお残る農林漁業者の不安や懸念に向き合い、安心して再生産に取り組めるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、万全の国内対策を講じているところです。

 引き続き、政府一体となって、必要な施策を講じ、農林水産業が新たな国際環境のもとで成長できる産業となるよう、全力で取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 杉本和巳君。

    〔杉本和巳君登壇〕

杉本和巳君 日本維新の会、略称維新の杉本和巳です。

 私は、党を代表して、日・EU経済連携協定及び日・EU戦略的パートナーシップ協定について質問いたします。(拍手)

 本年六月に、米国政府は、中国から米国に輸出される自動車や情報技術製品など一千百二品目に対する追加関税措置の実施を発表し、保護主義的傾向を見せています。その一方、環太平洋パートナーシップ協定は、米国の離脱があったものの、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定として、参加十一カ国が自由貿易の重要性を理解して、来年早々に発効すべく手続が進められています。

 一九三二年のオタワ会議に端を発したブロック経済は、結果として世界大戦という惨禍をもたらしました。自由貿易は平和構築への道であり、その大切さは言うまでもありません。そのことを確認して、質問に入ります。

 現在、保護主義的傾向と自由貿易体制の維持の動きが同時に進んでいます。我が党は、日本は自由貿易の旗手であると理解していますが、日本とEUとの経済連携協定は、世界の自由貿易体制の維持という側面でどのような役割を果たすものであり、どのような意義があり、どのような影響を世界に与えることを想定しているのでしょうか。外務大臣にまず確認させていただきます。

 次に、投資分野の紛争解決手続について伺います。

 本協定締結に当たり、投資の保護と紛争解決手続については、切り離されて継続協議となっています。EUは投資に関する紛争解決手続について常設の投資裁判所の設置を主張していますが、投資裁判所を設置した場合の投資への影響及び問題点はどのようなものがあるのでしょうか。そして、日本政府はEUにどのような主張をしてきたのでしょうか。外務大臣、お答えください。

 EUによる日本への投資は米国より多く、対日投資の約四〇%がEUからのものです。しかしながら、その額を見ると、二〇一六年においては、日本がEUに行っている投資は三十四兆六千億円であるのに対し、EUからの対日投資は八兆八千億円にすぎません。四倍もの投資の差異があり、大きなアンバランスがあると言わざるを得ません。本協定の締結を機に、EUによる対日投資の呼び込みを促進すべきであると考えます。

 経済産業大臣に質問します。

 経済連携協定によってEUによる対日投資をふやす方策について、特に日本を魅力的な投資相手国とするために、具体的にどのような方策をお考えでしょうか。

 また、経済再生担当大臣にお伺いします。

 両経済圏にとって、比較優位が機能することが望ましいわけであります。そこで伺いますけれども、GDP押し上げ効果五兆円、約一%、及び雇用増加二十九万人、〇・五%程度の算出根拠を明示してください。

 企業統治に関して伺います。

 本協定では、我が国が結んだEPAとしては初めて、コーポレートガバナンスに関する規定が設けられました。EU諸国はコーポレートガバナンスの整備に早くから取り組んでおり、日本は比較的おくれています。このような規定が設けられると、日本に不利になることが懸念されます。

 外務大臣に伺います。

 本協定のコーポレートガバナンスに関して、規定を設けた理由をお答えください。また、日本企業に対する影響にどのようなものがあるかをお答えください。

 米中で関税の引上げ合戦が続いていますが、その原因に、中国がWTOの規定を遵守していないことが背景にあります。

 外務大臣と経済産業大臣、それぞれに伺います。

 中国が現在WTOに反している行為として、どのようなものがあるのでしょうか。また、日本政府はそれに対してどのような対応をとってきたのでしょうか。お答えください。

 以上、維新を代表して、世界各国が自由貿易を推進していくことを切に願って、私からの質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣河野太郎君登壇〕

国務大臣(河野太郎君) 日・EU・EPAの役割等についてお尋ねがありました。

 本協定は、世界で保護主義的な動きが広がる中、基本的価値を共有する日本とEUが貿易自由化を力強く前進させていくとの揺るぎない政治的意思を示す戦略的意義を有するものです。

 また、本協定の内容は、高いスタンダードを定めるものであり、自由で開かれ、かつ公正な貿易・投資ルールの二十一世紀におけるモデルとなるものと考えております。

 EUが提唱している常設投資裁判所構想についてお尋ねがありました。

 国と投資家との間の投資紛争解決手続について、中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に与えるISDS制度と、EUが提唱している常設投資裁判所構想には、仲裁人又は裁判官の選任手続や上訴審を認めるか否かについて相違点があるという意見があると承知しております。

 現在行われている日・EU投資交渉における我が国の具体的立場についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、我が国としては、ISDS制度が、投資家にとって海外の投資先の国におけるビジネスへのリスクを軽減できるツールであり、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効な制度であると考えており、かかる考え方に基づき対応していく考えです。

 日・EU・EPAにおける企業統治章についてお尋ねがありました。

 本協定の企業統治章は、健全な企業統治の発展を通じて貿易・投資関係の円滑化を図るとの観点から、企業統治に係る一般原則や基本的要素を規定したものです。

 企業統治章の内容は、我が国の制度の変更を必要とするものではありません。日・EU双方が企業統治の枠組みを発展させるための適当な措置をとることで、投資の活発化、企業競争力の強化等を後押しするものと考えております。

 WTO協定との関係で話題となる、中国による措置についてお尋ねがありました。

 我が国としては、過剰生産につながる補助金など、市場の歪曲につながる措置については、WTO協定との関係で疑義があり、中国側が具体的な措置をもってさらなる改善を図っていくことが重要であると考えております。

 先般の安倍総理の訪中やWTOの各種委員会を含め、さまざまな場面において中国側には指摘をしてきております。

 引き続き、問題意識を共有する関係国・地域と意思疎通を行いつつ、中国にさらなる改善を働きかけてまいります。(拍手)

    〔国務大臣世耕弘成君登壇〕

国務大臣(世耕弘成君) 杉本議員にお答えいたします。

 EUによる対日投資をふやす方策についてお尋ねがありました。

 まず、日・EU・EPAにおいては、投資自由化規律確保や営業秘密保護強化などにより、事業環境の予見可能性確保やその向上を通じて、日・EU間の一層の投資促進が期待されます。

 さらに、対日投資促進のため、これまでも、法人実効税率大幅引下げ、日本版高度外国人材グリーンカード制度、規制のサンドボックス制度などにより、ビジネス環境整備に取り組んでいます。

 こうしたビジネス環境整備と日・EU・EPAの相乗効果で、EUにとっての日本への投資の魅力が増し、対日投資拡大につながると期待をしております。

 WTO協定に違反している中国の行為についてお尋ねがありました。

 日本として、中国の個々の施策のWTOへの整合性について断定的評価は差し控えたいと思いますが、六月に公表された不公正貿易報告書においては、WTOルール上懸念のある中国の政策や措置として、過剰生産能力につながる補助金、知的財産の侵害や各種の内外差別的な措置などが挙げられております。

 政府は、こうした政策や措置について、WTOの各種委員会や二国間協議などの場を通じて懸念を伝えるとともに、その是正を求めているところです。

 今後とも、WTOルールに従って適切な対応をとるよう、中国に対し求めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 杉本議員から、日・EU・EPAの経済効果の算出根拠についてのお尋ねがありました。

 日・EU・EPAの経済効果については、GDPの押し上げ効果が五・二兆円、二十九万人の雇用増と、大きな効果が見込まれると試算されております。これらの算出は、経済連携の効果を分析する際に世界で広く使われているGTAPモデルを用いて分析したものであります。

 具体的には、経済連携協定による関税削減等の直接的な効果だけではなく、貿易・投資機会の拡大が国内の生産性向上、雇用の拡大につながることを示したものであり、まさに海外への経済連携の推進が国内経済の拡大につながる成長メカニズムを定量的に明らかにしたものであります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       法務大臣    山下 貴司君

       外務大臣    河野 太郎君

       農林水産大臣  吉川 貴盛君

       経済産業大臣  世耕 弘成君

       防衛大臣    岩屋  毅君

       国務大臣    宮腰 光寛君

       国務大臣    茂木 敏充君

 出席副大臣

       外務副大臣   佐藤 正久君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.