衆議院

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第3号 平成31年1月31日(木曜日)

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平成三十一年一月三十一日(木曜日)

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 議事日程 第三号

  平成三十一年一月三十一日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

 渡海紀三朗君の故議員園田博之君に対する追悼演説

 伊藤信太郎君の故議員北川知克君に対する追悼演説


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    午後二時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。斉藤鉄夫君。

    〔斉藤鉄夫君登壇〕

斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、公明党を代表して、安倍総理の施政方針演説に対し、総理並びに関係大臣に質問します。(拍手)

 今、世界は、欧米を始めとする多くの国で、IT化とグローバリズムによって拡大した貧富の格差などによる潜在的な不安や不満が国民を保護主義、排外主義へと走らせ、社会の分断と対立を生み出しています。

 その中にあって、我が国も人口減少や少子高齢化という大きな不安を抱えていますが、自公政権による政治の安定と経済の好循環による雇用・所得環境の改善によって、景気、経済の堅調をもたらし、社会の安定へとつながっています。

 国民一人一人が安心でき、希望の持てる社会を築くためには社会の安定が必要であり、それをもたらす政治の安定の継続が何よりも重要ではないでしょうか。

 そのためにも、本年を、総理が言われるとおり、全世代型社会保障元年にしなければなりません。

 なぜ、全世代型社会保障が国民の安心、社会の安定のために必要なのか。全世代型社会保障とは、別の言葉で言えば、必要な人に必要な支援が行き渡り、誰も置き去りにしない共生社会という意味だからです。

 私たちの目の前には、認知症の御家族を抱えながら仕事と介護の両立に苦闘する方や、悩みながら育児に奮闘する子育て世帯の方々、大きな自然災害に遭いながらも必死に生活の立て直しを図る被災者など、厳しい現実と葛藤しながら懸命に生き抜こうとする生活者がいることを忘れてはなりません。

 子供の貧困の問題もその一つです。

 公明党が長年訴えてきた未婚の一人親世帯に対する税制上の支援措置が、二〇一九年度の税制改正に盛り込まれました。

 離婚や死別による一人親世帯の場合は、税負担を軽くする寡婦控除が受けられます。ところが、未婚の一人親には適用されません。そこで、私たちは、一人親への支援に未婚や死別などで差を設けるべきではなく、全ての子供が平等な支援を受けられるよう主張してきました。

 その結果、事実婚状態でないことを条件に、給与収入が年二百四万円以下の方の住民税を二〇二一年度から非課税にすることに加え、一九年度の臨時の予算措置として年一万七千五百円を児童扶養手当に上乗せして給付するなど、未婚の一人親への支援が大きく前進します。

 引き続き、政権与党の一翼として安倍内閣を支え、国民の安心と社会の安定を支える全世代型社会保障の充実に全力で取り組み、対立と分断のない日本を目指します。

 以下、諸課題について質問します。

 第一に、厚生労働省の毎月勤労統計問題です。

 不適切な方法による調査が約十五年間にわたって行われていたことは到底許されるものではなく、厚生労働省は猛省すべきであると強く申し上げたい。

 さらに、厚生労働省内に設置された、統計の専門家や元裁判官などで構成された特別監察委員会が先日公表した報告書の調査方法は、その中立性、客観性に重大な疑義があるものでした。徹底した追加調査を行い、国民に信頼していただける調査、原因究明、そして再発防止策を明らかにしてほしいと強く訴えておきたい。

 その上で、何より大事なのが、今回の不適切な統計によって本来よりも少ない給付となっていた方については、一日も早く不足分の追加給付を進めることです。政府は、現在給付されている方へは三月から給付を開始するとしていますが、過去に給付された方へも一刻も早い給付へ最大限努力してもらいたい。

 また、不利益を受けた国民一人一人の不安を取り除くことができるよう、相談体制を強化するとともに、テレビやラジオ等も活用して国民の皆さんに丁寧にお知らせするなど、万全を尽くすべきです。

 また、公明党の主張を受け、政府が他の基幹統計を再点検したところ、全体の約四割に当たる二十三統計で誤りが発覚しました。全くずさんと言うほかなく、言語道断です。国民の信頼回復に向け、政府全体で全力で取り組んでいただきたい。

 毎月勤労統計の問題に対する政府の姿勢と今後の基幹統計のあり方について、総理の答弁を求めます。

 次に、全世代型社会保障についてお伺いします。

 日本は、世界で最も速いスピードで人口減少、少子高齢化が進んでいます。この難問を日本がどう乗り切るのか、世界は見詰めています。全世代型社会保障の構築を成功させなければなりません。

 その社会保障の各項目について質問します。

 まず、高齢者対策です。

 全世代型とはいえ、総理の施政方針演説にあるとおり、高齢者福祉を減らすということではありません。逆です。消費増税分の財源を使って、低年金者への福祉給付金制度、介護保険料軽減など、高齢者福祉を充実してまいります。

 その上で、我が国は人生百年時代を迎えます。高齢者の皆さんが健康寿命を延ばし、住みなれた地域で安心して暮らし続けることができるよう、包括的な支援、サービス、特に訪問医療や在宅看護の重要性が指摘されています。それを支える人材の確保が必要です。

 介護現場を支える介護職員は、ことし十月から大幅な処遇改善が図られることになっています。ところが、訪問医療や在宅看護のニーズに対応する看護師不足は深刻です。

 厚生労働省の調査によると、潜在看護師は七十一万人に上ると推計されていますが、再就職に二の足を踏む方も多くいます。その理由に、急速に進む医療の進歩についていけない、責任感に耐えられないなど、不安を感じている人も少なくありません。潜在看護師の不安を取り除き、再就職に効果的な支援が求められています。

 地域での包括的な支援サービスの大きな柱である訪問医療や在宅看護の充実について、総理の答弁を求めます。

 認知症施策の推進について伺います。

 公明党の推進などにより、認知症サポーターの養成数は延べ一千万人を突破するまでにふえていますが、その役割は明確になっていません。多くは、認知症に対する正しい知識と理解を持つことにとどまっています。地域での貢献を希望する方たちが活躍できる環境整備が求められています。

 一方、早期発見、早期対応の支援体制を築くための認知症初期集中支援チームの普及啓発がおくれています。昨年、公明党が実施した百万人訪問調査において、介護に直面する人のわずか一割程度しか、その存在を知りませんでした。認知症への効果的な取組が進むよう、継続的な支援が必要です。

 認知症施策の充実について、総理の答弁を求めます。

 風疹対策について伺います。

 昨年は首都圏を中心に風疹患者が急増し、二〇一七年の約三十一倍にまで拡大しました。その患者の大半が三十代から五十代の男性です。この世代の男性は、予防接種を受ける機会が一度もなく、風疹の免疫を持たない人が大勢いると言われており、この世代への対策が不可欠です。

 厚生労働省は、新たな風疹対策として、三十九歳から五十六歳の男性を対象に、原則無料で抗体検査、ワクチン接種の実施を決定しましたが、対象となる働き盛りの男性が実際に抗体検査等を受けやすい環境を整えなければ実効性が高まりません。

 風疹対策の進め方について、厚生労働大臣に答弁を求めます。

 がん対策について伺います。

 国立がん研究センターが昨年末に発表した調査結果において、終末期のがん患者の約四割が、死亡する前の一カ月間を痛みがある状態で過ごしていたことが明らかになりました。緩和ケアが十分に行き届いていない実態が浮き彫りとなり、患者目線に立った緩和ケアの一層の推進が求められています。

 また、がん患者の三人に一人は六十五歳未満でがんに罹患しているとも言われています。治療と仕事の両立を可能とするため、短時間勤務や時間単位の休暇取得など柔軟な勤務制度の導入支援や、使い勝手の悪い傷病手当金の支給要件の見直しなどを進めるべきです。

 一方で、新しい治療法として期待が高まっているがんゲノム医療は、患者の遺伝子情報を分析し、体質や症状に応じた最適な薬や治療法を選択する最先端医療です。

 全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制整備とあわせて、分析した遺伝子情報によって差別が生じないような取組も求められています。

 そして、ゲノム医療の研究開発、特に全ゲノムの研究開発を、世界におくれることなく、早急に進めるべきです。

 がん対策の充実について、総理の答弁を求めます。

 次に、消費税率引上げの財源で行う教育の無償化について伺います。

 本年十月から、幼児教育の無償化が全面的に実施されます。認可外保育施設等も対象となります。

 しかし、指導監督の基準を満たさない施設も多く、今回の無償化を好機として、基準を満たし、さらに、認可施設へ移行できるよう、支援を充実することが不可欠です。

 また、企業が主に従業員のために設置する企業主導型保育は、制度創設から約二年半が経過し、定員割れや施設の閉鎖など、さまざまな課題が生じているため、早期の対策が必要です。

 幼児教育無償化の円滑な実施に万全を期すとともに、喫緊の課題である待機児童の解消に最優先で取り組み、保育士の待遇改善も図りながら、量の確保と質の向上を着実に進めるべきです。

 そして、公明党が独自に訴えてきた私立高校授業料の実質無償化については、総理が施政方針演説で、来年四月から実現することが明言されました。これによって、私立高校生の約四割に当たる年収五百九十万円未満の世帯に恩恵が及ぶことになります。

 さらに、低所得世帯の大学生等を対象に、来年四月から、授業料等の減免制度と給付型奨学金の大幅な支給額の拡充による高等教育の無償化が始まります。

 従来の制度に比べて格段に人数枠が拡大されるため、これまで受けられなかった在学生も、世帯年収等の要件を満たせば対象になる機会が広がります。申請が必要ですので、一人でも多くの学生がチャンスを手にできるよう、こうした情報を積極的に周知していただきたい。

 幼児教育から高等教育までの無償化は、多くの子供たち、子育て世帯に恩恵が及び、全世代型社会保障の一角を担うものです。希望すれば誰もが必要な教育を受けられる社会の構築に向けて、教育費の負担軽減を更に前進させていかなければなりません。

 教育費負担の軽減について、総理の答弁を求めます。

 さて、次に、防災、減災、復興についてお聞きします。

 まず、激甚化する自然災害に備えた防災意識社会への転換について質問します。

 昨年は、全国各地で大きな自然災害に見舞われました。復興は着実に進んでいますが、被災地では、まだ避難生活を余儀なくされ、仮設住宅での暮らしを強いられている方々がいます。

 私たち公明党は、被災者お一人お一人が当たり前の日常生活を取り戻すまで、被災者に寄り添い、復旧復興をなし遂げていくことをお誓い申し上げます。

 公明党は、命を守る、命の安全保障という観点から、防災、減災、復興という最重要のテーマを政治の主流に位置づけ、防災意識を高める教育を含めて、社会の主流へと押し上げなければならないと考えています。

 政府の中央防災会議は、昨年十二月、気象庁が南海トラフ地震の臨時情報を発表した場合の住民や自治体、企業がとるべき防災対応をまとめました。臨時情報が出された際に国民一人一人がどう行動するか、地震への備えを我が事として考えていく時代に入ったと言えます。

 昨年の西日本豪雨で多くの高齢者が犠牲になった岡山県倉敷市真備町では、浸水した地域のほとんどがハザードマップで予測されていたにもかかわらず、住民の多くがハザードマップの内容を十分に理解していませんでした。

 いざというときにハザードマップを機能させるためにも、行政が旗振り役となって住民への周知を急ぐとともに、社会全体の防災教育のあり方を改め、お互いが助け合う力を増していく必要があります。

 中長期的には、行政や住民、企業が過去の災害の歴史や教訓を学ぶなど、災害リスクに関する知識と心構えを共有し、社会全体でさまざまな災害に備える防災意識社会へと転換していかなければなりません。

 防災意識社会への転換をどう進めていくのか、総理の答弁を求めます。

 地区防災計画やマイタイムラインの推進について伺います。

 近年の災害を踏まえて、地域住民による防災コミュニティーの力が重要です。住民一人一人が災害時に何をするのかを事前にシミュレーションするマイタイムラインや、住民が主体となってつくる地区防災計画などの防災対策をいかに普及させていくかが喫緊の課題です。

 愛媛県大洲市の三善地区では、地区防災計画を作成しました。また、避難場所や危険箇所を記した災害・避難カードをつくり、地域住民に説明会を行いました。さらに、高齢者など災害弱者と支援者の体制をつくるとともに、災害時の声がけ、連絡網や避難場所などを前もって決めておき、ワークショップや避難訓練を実施してきました。その結果、昨年の西日本豪雨の際には、そうした取組が功を奏し、地区の住民全員が無事に避難をすることができました。

 地区防災計画やマイタイムラインの普及について、総理の答弁を求めます。

 東日本大震災からの復興加速、福島再生について質問します。

 復興・創生期間の終了まであと二年余り。被災地では、いまだ約五万人の方々が避難生活を余儀なくされています。特に、福島においては、中長期的課題も多く、将来への不安の声も上がっており、復興・創生期間後も、国が前面に立った支援の継続は不可欠です。

 政府は先月、復興・創生期間後の検討課題について公表しました。今年度内に復興基本方針が改定される予定と聞いていますが、必要な事業の確実な実施や後継組織のあり方など残る課題について、できる限り早期に方向性を示すべきです。

 また、明年の東京オリンピック・パラリンピック大会の聖火リレーの出発地も福島に決まっています。これまで東北復興のために支援してくださった世界じゅうの人たちに対し、活力あふれる東北復興の姿をごらんいただける絶好の機会と捉え、国を挙げてバックアップすべきです。

 復興・創生期間後の対応を含めた東北復興への総理の決意を伺います。

 次に、地方創生について伺います。

 二〇一四年に本格的な地方創生の取組が始まって以来、約四年半が経過しようとしています。

 地方創生には、構想、準備期間を含めて一定の時間が必要ですが、この間に、各地域の創意工夫により、着実に成果を上げているところがあります。

 例えば、大分県豊後高田市では、十八年前から、昭和三十年代の商店街を再現した昭和の町を創設。その後、地方創生関係交付金などの活用もあり、町の創設以来十五年で観光消費額、観光者数ともに約十倍に達しています。

 しかし、国の同交付金による事業計画は最長五年で、その先は未定です。ある地域では、まだまだ事業に取り組みたいとの不安の声もあります。地域主導の柔軟な発想を生かしつつ、それぞれの自治体が安心して継続した事業に取り組めるよう、事業計画期間の延長、拡大を検討すべきです。

 地方創生の取組について、総理の答弁を求めます。

 現在、政府は地方への移住支援策の抜本的拡充を行っていますが、それとともに、移住した方々が住み続けたいと思える地域づくりが重要です。そのためには、移住者が活躍できる環境を整えることが必要です。

 特に、若者や女性、障害者など、働きたい方が最大限に力を発揮できるよう、テレワーク導入企業の増加や、大都市で働く人たちが地方に住みながらでも滞りなく働けるサテライトオフィスなどの環境整備が急務です。

 さらに、都市のコンパクト化や地域連携の強化も必要不可欠です。

 中でも、富山市では、公共交通を充実させ、市内の複数の拠点を結ぶ多極的なコンパクトシティーを形成。各拠点の利便性が向上し、人口集約などにより民間投資も活発化しています。

 将来にわたって住み続けたいと思える地域づくりこそが地方創生のかなめです。

 地方への移住支援策について、総理の答弁を求めます。

 農林水産業の振興について質問します。

 昨年末、TPP11が発効しましたが、農林水産業の現場では、生産額の減少など懸念の声があります。政府は、国内経営安定対策に万全を期すとともに、農林水産物等の輸出額を二〇一九年までに一兆円とする目標の達成に向けて、輸出促進を後押しする施策が求められています。

 そのためには、新しい農林水産業のスタイルを構築し、所得向上や担い手の育成を一層加速させなければなりません。

 その最大の施策が、スマート農業の推進です。ロボット技術やICTを活用することで作業の効率化を目指すものです。具体的には、ドローンを活用した農薬の散布や、収穫物の上げおろしに活用するアシストスーツなどが挙げられます。

 こうした働き方改革により、新規就業者の早期育成や女性活躍の推進など多大な効果が期待できます。

 さらに、就農前後に補助金を交付する農業次世代人材投資事業も着実に進め、担い手確保を進めるべきです。

 農林水産業の振興について、総理の答弁を求めます。

 観光立国の推進について質問します。

 昨年末、我が国では訪日外国人旅行者数が三千万人を突破し、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が迫る中、訪日外国人のさらなる増加が見込まれています。観光産業が日本経済の成長とともに地方創生に果たす役割は、ますます大きくなっています。

 一方で、訪日外国人急増に伴う地域住民の生活への影響や観光の満足度の低下、交通事故、違法民泊、さらには災害時の対応などが課題となっています。特に、人気の高い観光先進地などはその影響が顕著で、対策が急がれます。

 我が国全体の観光施策として、観光集客の偏在是正、地方分散化を推し進め、地方の活性化につなげていくことも重要です。

 また、一月から徴収が始まった国際観光旅客税については、観光庁の来年度予算の七割以上を占める財源となっており、新たな観光振興の諸施策に充てるとしています。

 大事なことは、税の使い道に無駄がないか、現場の多様なニーズを的確に押さえた効果的な観光施策になっているかどうかです。旅行者や観光事業者へのヒアリング、現場の実態調査なども通じて、将来的な税収増も見据えた検証も必要です。

 観光立国の推進について、総理の答弁を求めます。

 我が国にとって喫緊の課題である外国人材受入れの新制度が本年四月より開始されます。

 昨年末に決定した政府基本方針、分野別運用方針などは、公明党の提案が多く反映されており、評価しています。しかし、具体的な方策については今後決定する政省令に委ねられている部分も多く、不安の声が上がっているのも事実です。

 そこで、日本人と同等額以上の報酬や適正な労働条件の確保、悪質なブローカーの排除、安心して生活相談が受けられる一元的な支援窓口の設置、技能実習など既存制度の実態把握とその改善などに実効性ある具体策が求められています。

 また、昨年十一月の有効求人倍率が、福井、富山、岐阜県が二倍を超えるなど、地方の深刻な働き手不足解消のため、外国人人材が大都市圏に過度に集中しない仕組みづくりも重要です。

 外国人材が安心して働き、国民とともに生きていける真の多文化共生社会の実現に向けて、これらの課題にどう取り組むのか、総理の答弁を求めます。

 次に、科学技術政策について伺います。

 近年、我が国の研究力の低下が憂慮されています。日本人研究者の論文発表数も減少傾向で、特に引用される度合いが高い論文、いわゆるトップ一〇%論文数の順位はここ十年で世界四位から九位へと大きく後退し、研究力に関する国際的な地位が下がっています。

 その原因を端的に申し上げると、一つは、研究費が少ないこと、二つ目に、若手研究者の身分が不安定で、多くの優秀な若者が研究者の道を選ばないこと、この二つと言っても過言ではないでしょう。

 まず、研究費の問題について質問します。

 昨年、京都大学の本庶佑特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。二十八年前の免疫学の基礎的な研究成果が受賞対象になったものです。

 基礎研究は、物事の真理、仕組みを知りたいという動機が本質であって、何の役に立つかわからない面を持っているのは確かです。反面、思わぬ成果や発見につながることがあり、それがよりよい社会づくりに大きく貢献する側面を持っています。

 本庶先生の研究を見ても、免疫細胞の働きを明らかにしようという目的で行われたものが、結果としてがんの新しい治療法につながり、多くの患者を救っています。同じように、日本人がノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードやiPS細胞なども、基礎研究の中の予期せぬ発見が実ったものです。科学技術立国を目指す我が国にとって、基礎研究を支援することは国の重要な役割の一つと考えます。

 基礎研究を支えているのが、国立大学や国立研究機関に交付されている運営費交付金です。これは、どこから芽が出てくるかわからない研究という畑全体に薄く広く水をまくようなお金です。

 この交付金は、二〇〇四年に一兆二千四百十五億円あったのが、毎年減額され続け、現在、約千五百億円も減らされています。これが日本の基礎研究の体力を奪ったとの指摘があります。二年前から減額はストップさせましたが、運営費交付金を今以上に充実させるべきと考えます。

 もう一つのお金は、いわゆる科研費などの競争的資金と呼ばれるもので、研究テーマを掲げて、このテーマにお金を下さいと研究費をとってくるものです。研究費の主体をなしています。

 この競争的資金を含む科学技術関係予算は、主要諸国で軒並み大きく増額されているにもかかわらず、日本はここ二十年間停滞しています。

 研究力向上のため、科学技術基本計画に定められた政府研究開発投資の目標、対GDP比一%まで予算の拡充に努めるべきと考えます。

 畑全体に薄く広くまいて基礎研究を促す運営費交付金、その畑から出てきた芽の中で大きく成果が得られそうな芽に集中的に注ぐ競争的資金を含め、研究開発投資の充実を図ることは日本の浮沈にかかわることと考えますが、総理の考えを伺います。

 もう一つの問題、若手研究者の身分の不安定について伺います。

 今月二十一日、国立研究開発法人理化学研究所へ視察に行ってまいりました。

 日本の名を冠した百十三番目の元素、ニホニウムをつくり出した加速器施設など、世界を先導する最先端の研究現場を見学し、日本人として大変誇りに思いました。

 その一方で、日本の科学技術を支える基礎研究分野の雇用環境は、とても厳しい現実を抱えています。今回の視察先でも、若手研究者から、有期雇用で将来が不安、安心して研究できる環境をつくってほしいといった、将来を心配する声を聞きました。

 昨今、大学や国立研究機関などの研究現場では、若手研究者の安定したポストが十分になく、ほとんどが有期雇用で将来的なキャリアパスが不透明であるため、将来を期待されながらも研究以外の道を選ぶ若い人がふえているとも言われています。

 これからの科学技術立国を担う若手研究者に不安を与えることなく、伸び伸びと研究に打ち込める環境づくり、例えば民間研究機関との人材交流など、国としてしっかり支援していくべきと考えます。

 また、視察の際に、女性研究者から、研究と出産、育児の両立が難しいとの不安の声もお聞きしました。

 出産や育児にかかわらず、安心して研究ができるよう、施設内保育所や女性研究者への支援をより一層充実させていくべきです。

 科学技術の振興は未来への投資です。若手研究者が身分、雇用の心配なく研究に打ち込める環境づくり、ひいては科学技術立国に向けた今後の取組について、総理の答弁を求めます。

 最後に、一言申し上げます。

 新元号の新しい時代の幕あけとなる本年、公明党は結党五十五周年を迎えます。

 公明党は、いかなる時代にあっても、「大衆とともに」の立党の原点に立ち、現場第一主義で、困難と闘う人々に寄り添い続けてまいります。

 国民が何を求めておられるのか。公明党は常に、多様なニーズに耳を傾け、国民の暮らしに安心と希望をお届けできるよう更に努力をしてまいりますことをお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 斉藤鉄夫議員にお答えをいたします。

 毎月勤労統計の事案に対する政府の姿勢と今後の基幹統計のあり方についてお尋ねがありました。

 毎月勤労統計について、不適切な調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様に深くおわび申し上げます。

 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめます。

 また、今般、その他の基幹統計についても緊急に点検を行いましたが、手順の誤り等の問題があったことは遺憾であり、速やかに是正の措置を講ずることとしています。

 いただいた御批判は真摯に受けとめ、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要です。

 厚生労働省の特別監察委員会は、事務局機能も含め、より独立性を高めた形で更に厳正に調査を進めていただくとともに、統計委員会には、新たに専門部会を設置いただき、基幹統計に加えて一般統計についても徹底した検証を行っていただきます。こうした取組を通じて再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 また、雇用保険、労災保険などの給付の不足分については、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう、相談体制の徹底及びその周知に努めるなど、必要な対策を講じていきます。

 現に雇用保険等の給付を受給している方については、三月中には本来支給すべき金額での支給を順次開始できるよう、準備を進めているところです。

 訪問医療や在宅看護の充実についてお尋ねがありました。

 訪問医療や在宅看護の推進に当たって、中心的な役割を担う看護職員の人材確保が重要な課題であると考えます。

 このため、新たに訪問看護に従事しようとされる方を対象に都道府県ナースセンターにおいて実際の職場体験や研修の実施により支援を行うとともに、既に訪問看護に従事している方については資質向上のための研修を実施するなど、各般の取組を行っていきます。

 引き続き、訪問医療や在宅看護の充実を図るため、必要な人材確保に努めてまいります。

 認知症施策の充実についてお尋ねがありました。

 認知症は、誰もがかかわる可能性のある身近な病気です。認知症の方ができる限り住みなれた地域で暮らすことができる取組を進めていく必要があります。

 平成十七年に始めた認知症サポーター研修の受講者数は、延べ一千万人を超えています。来年度からは、認知症の方の困り事などの支援ニーズとサポーターをつなげていく事業を創設することとしており、更に活躍の場を広げていただけると考えております。

 また、認知症の方やその家族を訪問支援する認知症初期集中支援チームについては、ほぼ全市町村に設置されました。今後、チームのさらなる質の向上と周知を図っていきます。

 昨年末には認知症施策推進関係閣僚会議を設置しました。新たな体制のもと、夏までに新オレンジプランを改定することとしており、政府一丸となって、更に踏み込んだ対策を検討し、速やかに実行してまいります。

 がん対策の充実についてお尋ねがありました。

 国民の二人に一人がかかると言われるがんは、国民の関心が高く、早期発見、早期治療とともに、療養中の生活の質の向上が重要であると考えます。

 このため、議員の御提案にあるように、平成三十年三月に閣議決定した第三期がん対策推進基本計画に基づき、質の高い緩和ケア提供のための医療従事者に対する研修の推進、傷病手当金制度の見直しの検討を含む治療と仕事の両立支援、がんゲノム医療提供体制の構築を図るための中核となる拠点病院の整備、全ゲノムを含むがんゲノム医療の研究推進などに取り組んでいます。

 また、分析した遺伝情報によって差別を生じさせることなく、安心してがんゲノム医療を受けていただくために、個人情報保護の徹底を図りつつ、カウンセリング体制の充実などにも取り組んでいきます。

 今後とも、がん対策の充実に努めてまいります。

 教育費負担の軽減についてお尋ねがありました。

 子供たちこそ、この国の未来そのものであります。家庭の経済事情にかかわらず、子供たちの誰もがみずからの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる社会をつくり上げることが重要です。

 このため、本年十月から、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育を無償化します。同時に、待機児童の解消を強力に進めるとともに、保育士等の皆さんのさらなる処遇改善、認可を目指す認可外保育施設への支援、企業主導型保育施設の質の改善など、質と量の両面から、子供たち、子育て世代に大胆な投資を行います。

 また、御党から御提案をいただいた私立高校の授業料の実質無償化について、来年四月からの着実な実施に向け、しっかりと取り組んでまいります。

 さらに、真に支援が必要な低所得者世帯の子供たちの高等教育も無償化し、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型奨学金を支給するため、今国会に関連法案を提出することとしております。新たな制度について、支援が行き渡るよう、周知に取り組んでまいります。

 人への投資に力を入れてきた御党とともに、子供たちの誰もが自信を持って学び、成長できる環境の実現に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 防災意識社会への転換についてお尋ねがありました。

 近年、災害が激甚化する中、行政による公助はもとより、国民一人一人がみずから取り組む自助、そして、地域、企業、学校、ボランティアなどが互いに助け合う共助を組み合わせていくことが極めて重要です。

 このような観点から、政府としては、南海トラフ地震を始めとする災害リスクやハザードマップ、避難行動計画等についての住民の方々の理解を促進するとともに、防災教育や避難訓練の充実、災害等に際しての避難に関する情報のわかりやすい提供に努めてまいります。

 このような取組を通じて、御指摘のとおり、社会全体の防災意識を高め、さまざまな災害に備える防災意識社会の構築に取り組んでまいります。

 防災・減災対策についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、昨年の西日本豪雨に際して、愛媛県大洲市の三善地区においては、事前に地区防災計画を策定し、災害・避難カードによる避難訓練等を実施していたことが役に立ち、住民全員が無事に避難することができたと承知しております。

 政府としては、地域の防災リーダーを中心に市町村や住民等が地区防災計画や避難計画等の策定に取り組みやすくなるよう、アドバイザーの派遣やシンポジウムの開催、優良事例のホームページでの公開など、地域防災力の向上に向けた取組を今後も支援してまいります。

 また、住民みずからが洪水発生時の行動を事前に時系列的に整理するマイタイムラインの作成は、平成二十七年の関東・東北豪雨を契機に各地の自治体で取組が始められていると承知しております。マイタイムラインの作成は、住民による的確な避難を担保する上で有効であると承知しており、政府としても、自治体等とも連携し、全国への普及に努めてまいります。

 東日本大震災からの復興加速、福島再生についてお尋ねがありました。

 東日本大震災からの復興は、政権発足以来、安倍内閣の最重要課題です。発災から間もなく八年が経過し、復興の総仕上げ、福島の本格的な復興に向けて、確固たる道筋をつける重要な局面を迎えています。引き続き、切れ目のない被災者支援、住まいと町の復興、なりわいの再生、原子力災害からの復興再生に全力で取り組んでまいります。

 復興・創生期間後の復興の進め方については、今後、復興施策の進捗状況や、原子力災害被災地域の復興再生には中長期的な対応が必要であり、国が前面に立って取り組む必要があるといった観点を踏まえ、組織のあり方も含め、具体的に検討していく考えであります。三月には復興の基本方針を見直し、その中で復興・創生期間後の復興の基本的方向性についても示してまいります。

 また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、被災地復興を世界に発信する絶好の機会です。被災地での聖火リレーやホストタウン等の機会を捉え、世界じゅうからいただいた支援への感謝を伝えるとともに、復興の姿を国内外に発信してまいります。

 今後とも、東北の復興なくして日本の再生なしとの強い決意のもと、東北の復興に政府一丸となって取り組んでまいります。

 地方創生関係交付金の事業計画期間の延長、拡大についてお尋ねがありました。

 それぞれの地方が持つ特色を存分に生かす発想が安倍内閣の地方創生です。そして、地方のことを一番よく知っているのはその地方にお住まいの皆さんであり、そうした皆さんの情熱、独自の創意工夫を、一千億円規模の地方創生推進交付金を活用し、全力で後押ししてまいります。

 御指摘のあった事業計画期間の延長等についても、そうした観点から、地方ごとの実情に応じた柔軟な対応が可能となるよう、本年の第二期総合戦略の策定に向けた準備の中で前向きに検討してまいりたいと考えています。

 地方への移住支援策についてお尋ねがありました。

 若者を中心に、地方への人の流れをしっかりとつくり上げることが、伝統あるふるさとを守り、次の世代に引き渡していくための鍵であると考えます。

 そのためには、誰もが将来にわたって住み続けたいと思えるような魅力ある地域づくりが重要です。御指摘のような、サテライトオフィスの整備、都市のコンパクト化など、各自治体の創意工夫を、地方創生推進交付金などを活用し、支援してまいります。

 同時に、本年四月から、東京から地方へ移住し、起業、就職する際には最大三百万円を支給する、新しい制度をスタートします。

 地方にこそチャンスがある、そう考える若者たちの背中を力強く後押しすることで、全国津々浦々、活力ある地方創生を進めてまいります。

 農林水産政策についてお尋ねがありました。

 安倍内閣においては、農林水産業を成長産業化させ、所得の向上を実現するため、農地バンクによる農地集積や輸出促進など、農林水産業全般にわたってさまざまな改革を進めてまいりました。

 これにより、生産農業所得は三年連続で増加して九千億円も拡大し、四十代以下の新規就農者も四年連続で二万人を超えています。農林水産品の輸出目標一兆円も、もう手の届くところまで来ました。

 こうした動きを確かなものとするため、新たな挑戦も進めてまいります。ロボット、AI、IoTなど、身近になってきている先端技術は農業でも大いに活用できます。こうした技術を活用し、生産性を飛躍的に向上させるスマート農業を強力に推進してまいります。若者の新規就農の支援など、担い手の確保に向けた施策も引き続き着実に推進してまいります。

 また、TPP11や日・EU・EPAに対しても、農林漁業者の皆さんの不安にもしっかり向き合い、総合的なTPP等関連政策大綱に基づき、きめ細かな体質強化策と経営安定対策を講じてまいります。

 今後とも、生産現場の皆さんの声に耳を傾けながら、将来にしっかりと夢や希望を持てる農林水産新時代の構築に全力で取り組んでまいります。

 観光立国の推進についてお尋ねがありました。

 観光は、我が国の成長戦略の柱であり、地方創生の切り札です。安倍内閣では、できることは全て行うとの方針のもと、観光立国の実現に向け、精力的に取り組んでまいりました。

 この結果、昨年、日本を訪れる外国人観光客は三千万人の大台に乗り、その消費額は四兆五千億円となるなど、観光は、全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業となりました。

 今後は、国際観光旅客税も活用しながら、観光地における町ぐるみでの観光客受入れの取組を支援するなど、地方への誘客を進めてまいります。

 あわせて、災害時における適切な情報提供など、外国人観光客が安心して日本を旅行できるよう万全の対策を講じるとともに、観光客の急増に伴う混雑といった課題に対しても、地域と連携しながら適切に対処してまいります。

 また、国際観光旅客税の使途については、その時々の課題や現場のニーズに応じ、民間有識者の意見も踏まえつつ検討を行い、予算を編成するとともに、行政事業レビュー等をしっかり活用して、効果的かつ効率的に使用されるように取り組んでまいります。

 新たな外国人材の受入れに向けた取組についてお尋ねがありました。

 まず、本年四月の新たな外国人材の受入れに向け、受入れ機関や登録支援機関、支援計画等に関する政省令に関して、パブリックコメントを実施し、国民の皆様から幅広く御意見を伺ったところです。今後制定する政省令においては、今回いただいた御意見も踏まえつつ、日本人と同等額以上の報酬を始めとする適正な労働条件の確保や、悪質な紹介業者を排除するための規定を設ける方向です。

 また、生活者としての外国人を支援するため、外国人の相談等の一元的な窓口であるワンストップセンターを地方公共団体が設置することを政府として支援するほか、技能実習制度についてもその適正化に努めてまいります。

 大都市圏等に外国人が過度に集中することを防止する観点から、政府としては、地方で就労するメリットの外国人への周知、外国人の地方定着を促進する優良事例の受入れ機関や地方自治体への紹介、地方自治体の外国人受入れに係る先導的な取組に対する地方創生推進交付金による支援などの取組を行ってまいります。

 また、受入れ機関が参加する分野別の協議会を設け、地域ごとの外国人の就労状況を把握するとともに、過度な集中が認められた場合には、受入れ機関に対して受入れ自粛の要請を行うなどの措置を講じてまいります。

 これらの取組を推進することにより、国民と外国人とがお互いに尊重し合えるような多文化共生社会の実現を目指してまいります。

 研究開発投資の充実についてお尋ねがありました。

 イノベーションをめぐって各国が覇権争いを繰り広げる中、民間の研究開発投資の呼び水ともなる政府研究開発投資の充実は不可欠であり、現在の第五期科学技術基本計画においても、対GDP比一%を目指して取り組むこととしております。

 こうした観点から、来年度予算においては、科学技術関係予算を今年度と比べて一〇%以上増加し、四兆二千億円余りを計上しているところです。

 運営費交付金についても、民間企業との連携に積極的な大学を後押しすることなどにより、官民を合わせた研究開発投資全体の充実につながるよう、そのあり方を大きく改革してまいります。

 今後とも、世界最先端の科学技術立国を目指し、基礎研究を始め、我が国の研究力の向上に政府を挙げて取り組んでまいります。

 若手及び女性研究者の支援についてお尋ねがありました。

 我が国が成長を続け、新たな価値を生み出していくためには、科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成、確保が重要です。

 特に、若手研究者には、安定かつ自立した研究環境を整えることが極めて重要です。このため、科研費において、若手研究者への配分を大幅に拡充するとともに、運営費交付金のあり方を見直し、若手を積極的に雇用する国立大学や研究機関を支援することなどを通じて、未来ある若手研究者の研究環境を更に充実してまいります。

 女性研究者には、研究と出産、育児等のライフイベントとの両立を図ることが極めて重要です。このため、支援員を配置するなど、育児中の女性研究者を積極的にサポートする大学への支援、出産、育児後に女性研究者が円滑に復帰するための奨励金の支給など、女性研究者の活躍を後押ししてまいります。

 政府としては、科学技術イノベーションを推進するため、今後とも、若手や女性研究者の活躍を力強く後押ししてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣根本匠君登壇〕

国務大臣(根本匠君) 斉藤鉄夫議員にお答えをいたします。

 風疹対策についてお尋ねがありました。

 風疹の発生状況等を踏まえ、風疹の感染拡大防止のため、速やかに対応することが国民生活の安心にとって極めて重要です。

 厚生労働省としては、昨年十二月、風疹に関する追加的対策を取りまとめ、現在三十九歳から五十六歳の男性を対象として、三年間、全国で原則無料で抗体検査と予防接種を実施することを決定いたしました。

 議員御指摘のとおり、現在三十九歳から五十六歳の男性の多くは働く世代であることから、抗体検査と予防接種を受けていただきやすい環境を整えることが重要です。そのため、抗体検査を、お住まいの近くの医療機関だけでなく、毎年の事業所健診の機会などを利用して受けられるようにすることを考えています。

 その実現に向け、現在、地方自治体、医療関係者等と調整を進めており、円滑な事業実施のためのガイドラインも可能な限り速やかに作成しながら、スピード感を持って環境整備を進めてまいります。(拍手)

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議長(大島理森君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。(拍手)

 質問に入る前に、一言申し上げます。

 総理は施政方針演説で明治天皇が詠んだ歌を引用しましたが、引用された歌は、一九〇四年、日露戦争のさなかに詠まれ、国民と軍の戦意高揚に使われた歌です。日露戦争は日露双方が朝鮮半島などへの支配を争った侵略戦争であり、この歌を施政方針演説の中に位置づけることは、日本国憲法の平和主義に反するものであって、看過できません。強く抗議するものです。

 まず、国政を揺るがす大問題となっている厚生労働省の毎月勤労統計の不正問題について、総理の基本認識を伺います。

 第一は、統計不正による被害と影響の甚大さをどう認識しているのかという問題です。

 統計不正の結果、雇用保険や労災保険などで、二千万人、五百六十七億円の被害が生まれています。

 また、毎月勤労統計という基幹統計で不正が行われたことで、政府の経済認識、景気判断、税、社会保障、労働にかかわる政策判断にも影響が及んでいます。来年度政府予算案の審議の前提を揺るがす事態が起こっているのであります。

 さらに、政府が発表する統計は国民が検証しようがないものであり、そこでの不正は国民の政府への信用を根底から破壊するものとなっています。

 以上の諸点について、総理の認識をまず伺います。

 第二は、厚生労働省による統計不正の組織的隠蔽という問題です。

 統計不正は二〇〇四年以来のものですが、厚労省は二〇一八年一月から不正調査を修正する措置を秘密裏に行っていました。厚労省が設置した特別監察委員会の報告書では、局長級幹部が担当室長から不正調査の報告を受け、修正を指示し、指示に基づいて修正が行われたとしています。

 不正調査の事実を知りながら、国民に報告せず、国民に隠れて修正を行う。これを組織的隠蔽と言わずして何と言うのか。にもかかわらず、報告書は、隠蔽の意図は認められなかったと組織的隠蔽を否定しています。

 総理、報告書のこの結論は当然撤回されるべきだと考えますが、いかがですか。明確な答弁を求めます。

 第三に、統計不正が引き起こされた温床は何か。

 厚労省が不正調査の修正を始めた一八年一月から不正が発覚する十二月までの間は、裁量労働制のデータ捏造、森友疑惑をめぐる虚偽答弁や公文書改ざん、外国人労働者のデータ捏造など、安倍政権による隠蔽、改ざん、うそが次々と明らかになり、大問題になった時期であります。

 安倍政権によって引き起こされた政治モラルの大崩壊が統計不正の温床となった。総理、あなたにはその自覚と反省がありますか。しかとお答えいただきたい。

 統計不正の真相解明は、予算案審議の大前提であります。日本共産党は、徹底的な真相解明を最優先で行うことを強く求めるものであります。

 消費税増税問題について質問します。

 総理は、十月から消費税を一〇%に増税する方針を表明しています。

 私は、今回の消費税一〇%増税には四つの大問題があると考えます。

 第一は、こんな深刻な消費不況のもとで増税を強行していいのかという問題です。

 二〇一四年の消費税八%への増税を契機に、実質家計消費は年額二十五万円も落ち込んでいます。GDPベースで見ても、実質家計消費支出(帰属家賃を除く)は三兆円も落ち込んでいます。家計ベースで見ても、GDPベースで見ても、日本経済が深刻な消費不況に陥っていることは明らかではありませんか。

 こうした状況下で五兆円もの大増税を強行すれば、消費はいよいよ冷え込み、日本経済に破滅的影響を及ぼすことは明瞭ではありませんか。

 第二は、総理が増税の延期を決めた二年半前、二〇一六年六月時点と比べても、日本経済は格段に悪化し、世界経済のリスクも格段に高まっているという問題です。

 増税延期を決めた二年半前、直近の四半期のGDPは、年率換算でプラス一・六%でした。ところが、昨年十二月に発表された七―九月期のGDPは、年率換算でマイナス二・五%となっています。個人消費も設備投資も輸出も総崩れ。八%増税強行直後の二〇一四年四―六月期以来の大きな落ち込みとなっているではありませんか。

 二年半前の増税延期の際、総理は世界経済の不透明感を延期の理由にしました。しかし、今日、世界経済は、米中貿易戦争、イギリス離脱問題とEUの経済不安など、二年半前とは比較にならないほど不安定となり、リスクが高まっているではありませんか。

 日本経済の現状という点でも、世界経済のリスクという点でも、二年半前の総理の言明がごまかしでなければ、ことし十月に増税などできるはずがないではありませんか。お答えいただきたい。

 第三は、毎月勤労統計の不正によって、昨年の賃金の伸び率が実態よりもかさ上げされていたという問題です。

 かさ上げされた数値をもとに、政府は、昨年七月以降の月例経済報告で、賃金は緩やかに増加しているとしてきました。総理が、昨年秋、消費税一〇%の実施を宣言した際に、賃金が増加しているという認識があったことは明らかです。

 しかし、二十三日、厚労省が公表した修正値では、昨年の賃金の伸び率は全ての月で下方修正され、実質賃金は一月から十一月の月平均でマイナスになる可能性があることが明らかになりました。賃金は増加しているという政府の認識は虚構だったのであります。

 総理、この点でも、消費税増税の根拠は崩れているではありませんか。少なくとも統計不正の事実解明抜きに増税を強行することは論外だと考えますが、いかがですか。

 第四は、安倍政権の消費税増税に対する景気対策なるものが、前代未聞の異常で奇々怪々なものになったことへの強い批判が広がっていることです。

 特に、ポイント還元は、複数税率とセットになることで、買う商品、買う場所、買い方によって税率が五段階にもなり、混乱、負担、不公平をもたらすものとして怨嗟の的となっています。日本スーパーマーケット協会など三団体は、混乱が生じることへの懸念を表明し、見直しを求める異例の意見書を政府に提出しています。

 総理は、国民の批判も現場の意見も無視して、このような天下の愚策を強行するというのですか。

 ことし十月からの消費税一〇%は、どこから見ても道理のかけらもありません。日本共産党は、その中止を強く求めます。

 増税するなら、空前の大もうけを手にしている富裕層と大企業への優遇税制にこそメスを入れるべきです。富裕層の株のもうけに欧米並みの課税を行い、大企業に中小企業並みの税負担を求めるだけで、消費税一〇%増税分の税収は確保できます。消費税に頼らない別の道を選択するべきではありませんか。

 特に、異常に軽い富裕層への証券課税については、二〇一六年の経済同友会の提言でも、一七年のOECDの対日経済審査報告書でも、税率引上げが提案されています。総理はこの提案をどう受けとめますか。答弁を求めます。

 安倍政権が進める大軍拡と憲法九条の改定について質問します。

 「いずも」型護衛艦をF35B戦闘機を搭載できるように改造する空母化が進められようとしています。相手の射程圏外から攻撃できる長距離巡航ミサイルが導入されようとしています。総理、これらは、これまで政府がいかなる場合でも保有は憲法上許されないとしてきた攻撃型兵器、すなわち攻撃的な脅威を与えるような兵器そのものではありませんか。

 F35を百四十七機体制にする、二兆円を超える兵器購入計画が進められようとしています。対日貿易赤字の削減のためとして、米国製の兵器購入を繰り返し迫ってきたトランプ大統領の求めに応じたものにほかなりません。これに対して、航空自衛隊の元幹部からも、百機以上も買って、一体何をするのか、目的が全く見えないとの批判が寄せられています。

 総理、トランプ大統領に言われたから買う、目的は不明、これでは浪費的爆買いとしか言いようがないではありませんか。専守防衛の建前すらかなぐり捨て、浪費的爆買いに走る、一かけらの道理もない大軍拡計画はきっぱり中止すべきです。軍事費を削り、国民の大事な税金は福祉と暮らしに優先して使うことを強く求めるものであります。

 総理は、施政方針演説で、国会の憲法審査会の場において各党の議論が深められることを期待しますと述べ、九条改憲に固執する姿勢を示しました。

 しかし、昨年の国会でも、総理は、憲法改定を繰り返し呼びかけ、自民党の改憲案を憲法審査会に提案することを目指しましたが、そのもくろみはかないませんでした。総理はその原因をどう考えていますか。

 ある大手紙は、社説で、昨年の憲法をめぐる動きを振り返って、憲法に縛られる側の権力者がみずから改憲の旗を振るという上からの改憲がいかに無理筋であるかを証明したと述べました。総理がみずから改憲の旗振りをすること自体が、憲法九十九条が定めた閣僚の憲法尊重擁護義務に反し、立憲主義に反する無理筋な行為であるという自覚が、総理、あなたにはありますか。しかとお答えいただきたい。

 日本共産党は、海外での無制限の武力行使に道を開く九条改憲を断念に追い込むために、引き続き全力を挙げて奮闘するものであります。

 沖縄の米軍基地問題について質問します。

 安倍政権は、昨年十二月、辺野古の海を埋め立てる土砂投入開始を強行しました。法治主義、民主主義、地方自治を踏みつけにした無法な暴挙に、沖縄県民の怒りが沸騰しています。さらに、総理がNHKのインタビューで、土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植していると平然とうそをついたことに強い怒りが集中しています。

 総理は口を開けば沖縄県民の心に寄り添うと言いますが、あなたのこうした言動のどこに寄り添う姿勢がありますか。強権とうそしかないではありませんか。

 政府は、埋立予定海域の大浦湾に存在するマヨネーズ状の軟弱地盤の改良工事のため、設計変更に着手しようとしています。しかし、軟弱地盤の存在を示す政府報告書は二〇一六年三月にまとめられたもので、政府はそれを二年間も隠してきました。県民に真実を隠し、新基地建設の既成事実を先行させ、県民の諦めを誘った上で、設計変更に着手する。詐欺師同然の、余りに卑劣なやり方ではありませんか。

 設計変更には県知事の承認が必要ですが、玉城デニー知事は新基地建設を許さない断固たる決意を繰り返し表明しています。辺野古新基地は決してつくれません。総理はこの事実を受け入れるべきであります。

 辺野古新基地建設はきっぱり中止し、普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と交渉することを強く求めます。

 二月二十四日に行われる県民投票は、県議会で自民党を含む全ての会派の賛成で投票条例が改正され、全県実施に向けて大きく前進しています。私は、総理に、今回ばかりはその結果を尊重することを強く要求します。総理の答弁を求めます。

 原発問題について質問します。

 総理が成長戦略の目玉に位置づけ、トップセールスを行ってきた原発輸出が、米国、ベトナム、台湾、リトアニア、インド、トルコ、英国と総崩れに陥っています。安全対策のためのコストが急騰したことが総崩れの原因であります。総理、原発はもはやビジネスとしても成り立たない、この現実を認めるべきではありませんか。

 そして、輸出できないものを、国内では、コストが安いとうそをついて再稼働を行うなど、論外ではありませんか。答弁いただきたい。

 原発ゼロの日本の実現、再生エネルギーへの大転換を強く求めるものです。

 最後に、日ロ領土問題について質問します。

 総理は、日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させる、みずからの任期中に日ロ領土問題に終止符を打つと繰り返しています。

 私は、これは極めて危うい方針だと考えます。

 総理の方針を歯舞、色丹の二島先行返還と見る向きもありますが、二島先行ではなく、二島で決着、すなわち、国後、択捉の領土要求ははなから放棄し、最大でも歯舞、色丹の二島返還で平和条約を締結して領土問題を終わりにしてしまう、これがあなたの方針ではありませんか。

 そうであるならば、歴代自民党政府の方針すら自己否定する、ロシア側への全面屈服となります。そうでないというならば、国後、択捉の領土要求を放棄して平和条約を結ぶことは決してないとこの場で明言していただきたい。

 総理は、七十年間、領土問題が動かなかったと強調しますが、日本政府は国際的道理に立った領土交渉を戦後ただの一回もやっていません。

 日ロ領土問題の根本には、一九四五年のヤルタ協定で、ソ連のスターリンの求めに応じて米英ソが千島列島の引渡しの密約を結び、それに縛られて、五一年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が国後、択捉を含む千島列島を放棄したという問題があります。これは、領土不拡大、戦勝国も領土を拡大しないという第二次世界大戦の戦後処理の大原則に背く不公正な取決めでした。

 この不公正を正す立場に立ち、千島列島の返還を求めてこそ、解決の道は開かれると私は強調したいと思うのであります。総理の見解を求めます。

 今や安倍政権はあらゆる問題で深刻な破綻に陥っています。市民と野党の共闘の力で安倍政権を倒し、国民が希望の持てる新しい政治をつくるために全力を挙げる決意を述べて、私の質問といたします。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 志位議員にお答えをいたします。

 毎月勤労統計事案による雇用保険や労災保険への影響、政策判断への影響、政府への信用についてお尋ねがありました。

 毎月勤労統計について、不適切な調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわび申し上げます。

 雇用保険、労災保険などの給付の不足分については、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう、万全を期して必要な対策を講じていきます。

 正しい統計に基づく適切な景気判断をもとに政策判断を行っていくことは、経済財政運営の基本です。この点、高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任について、重く受けとめています。

 今回の事案によってGDP等については影響がないことが確認されていますが、それ以外のどのような経済指標に影響が及び得るかについては、現在、関係省庁において調査を行わせており、まとまり次第、公表させる方針です。

 いずれにせよ、予算案や法案の審議に際しては、政府として誠実に対応してまいります。

 今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 組織的隠蔽の有無についてお尋ねがありました。

 厚生労働省の特別監察委員会においては、先般、それまでに明らかになった事実等について報告書を取りまとめていただいたところですが、さらに、独立性を強めた形で検証作業を進めていただいているものと承知しています。

 今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 政治のモラルと毎月勤労統計事案の真相解明についてお尋ねがありました。

 さまざまな問題について、国民の皆様から指摘があれば、内閣、与党、野党かかわらず、しっかりと説明を尽くすことが政治家としての責任であると考えます。

 毎月勤労統計の問題については、高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめています。

 いただいた御批判は真摯に受けとめながら、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 家計消費の動向についてお尋ねがありました。

 世帯当たりの消費を捉える家計調査の家計消費支出は、世帯人員の減少などから長期的に減少傾向となっています。

 一方で、一国全体の消費を捉えるGDPベースで見ると、二〇一八年七―九月期については、自然災害の影響もあり、一時的に押し下げられましたが、消費の基調としては、二〇一六年後半以降、増加傾向で推移しており、持ち直しています。

 また、今回の消費税率引上げについては、前回の八%への引上げの際に耐久消費財を中心に駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応することとしています。

 いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じ、景気の回復軌道を確かなものとしてまいります。

 世界経済のリスクについてお尋ねがありました。

 二〇一六年度の当初は、アジア新興国や資源国の経済の減速など、世界経済がさまざまなリスクに直面し、需要が腰折れしかねない状況となっていました。

 他方、現在は、通商問題の動向、中国経済の先行き等によるリスクに留意する必要がありますが、世界経済は米国を中心に緩やかな回復を続けており、我が国経済も内需を中心とした緩やかな回復が続いています。

 なお、二〇一八年七―九月期のGDP成長率がマイナスとなったのは、相次いで発生した自然災害により、一時的に個人消費が押し下げられたことや輸出がマイナスになったことが大きく影響していると考えており、景気の回復基調に変化があったとは考えていません。

 毎月勤労統計の事案と消費税についてお尋ねがありました。

 毎月勤労統計について、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしていきたいと考えています。

 他方、消費税率の一〇%への引上げについては、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために必要なものです。

 これまでも、反動減等に対する十二分な対策を講じた上で、法律で定められたとおり十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定であると繰り返し申し上げており、この方針に変更はありません。

 なお、連合の調査においては、五年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが継続しており、所得環境は着実に改善しているとの判断に変更はありません。

 ポイント還元についてお尋ねがありました。

 前回、八%への引上げの際には、予想以上に消費の低迷を招き、その後の景気回復にも力強さを欠く結果となりました。

 また、大企業は、消費税の引上げ後、自己負担でセールなどを実施できるのに対し、中小・小規模事業者は、大企業に比べて体力が弱く、競争上の不利もあります。

 このため、中小企業団体からは、消費税率の一〇%への引上げに当たり、強力な需要喚起策などを講じるよう、強い要望が寄せられています。

 今回のポイント還元は、こうした現場の声を踏まえ、中小・小規模事業者に限定した上で、消費をしっかりと下支えするため実施することとしたものであります。

 その実施に当たっては、現場の混乱を回避するため、ポイント還元の対象となる店舗に還元率を明記したポスター等を張り、消費者の皆さんが一目でわかる工夫を講じてまいります。

 同時に、中小・小規模事業者の皆さんの決済端末の導入を全面的に支援し、その負担をゼロとします。キャッシュレス決済の導入を通じて、中小・小規模事業者の皆さんの現場の生産性向上にもつなげてまいります。

 消費税率の引上げと、富裕層と大企業に対する税制のあり方についてお尋ねがありました。

 今回の消費税率の引上げは、全世代型社会保障の構築に向け安定財源を確保するために必要なものであり、法律で定められたとおり、十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定です。

 企業に対する税制については、企業が収益力を高め、より積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から、成長志向の法人税改革に取り組んでまいりましたが、その中でも、租税特別措置の縮減、廃止等による課税ベース拡大により、財源をしっかり確保しております。

 また、これまで、再分配機能の回復を図るため、所得税の最高税率の引上げや金融所得課税の見直し等の施策を既に講じてきたところです。

 各種の提案に言及していただきましたが、今後の税制のあり方については、これまでの改正の効果を見きわめるとともに、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ、検討する必要があるものと考えています。

 「いずも」型護衛艦の改修、スタンドオフミサイル、F35、防衛費に関するお尋ねがありました。

 専守防衛は、憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針であり、今後とも堅持してまいります。

 「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりとした備えを確保するものです。

 また、スタンドオフミサイルは、我が国の防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国の安全を確保するものです。

 いずれも、自衛のための必要最小限度のものであり、憲法上保有が許されないものではありません。

 今般、追加取得を決定したF35については、老朽化した現有のF15を代替するものであります。老朽化するに任せ、放置することは、国民の命を守る責任を持つ我々としては、無責任な姿勢と言わざるを得ないわけであります。我が国の防衛に万全を期すため、我が国の主体的な判断のもと、その取得を決定したものであり、浪費的爆買いとは、全く的外れな間違いであります。

 防衛費に係る三十年度補正予算案と三十一年度予算案、新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画は、いずれも国民の命と平和な暮らしを守り抜くため必要不可欠なものであり、削減や計画の中止は考えていません。

 我が国の平和と安全の維持は、国民の命と自由、そして幸せな暮らしの不可欠の前提であり、安全保障と社会保障は決して相対立するものではありません。

 防衛力の整備に当たっては、今後とも、国民生活にかかわる他の予算の重要性を勘案し、一層の効率化、合理化を図り、経費の抑制に努めるとともに、国の他の諸施策との調和を図ってまいります。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 まず、憲法審査会の運営については、国会でお決めいただくことであり、内閣総理大臣としてお答えすることは差し控えますが、今後、憲法審査会の場において各党の議論が深められ、国民的な理解も深まっていくことを期待しています。

 次に、内閣総理大臣は、憲法第六十三条の規定に基づき議院に出席し、国会法第七十条の規定に基づき、議院の会議又は委員会において発言しようとするときは議長又は委員長に通告した上で行うものとされています。憲法第六十七条の規定に基づき国会議員の中から指名された内閣総理大臣である私が、議院の会議又は委員会において、憲法に関する事項を含め、政治上の見解、行政上の事項等について説明を行い、国会に対して議論を呼びかけることは禁じられているものではありません。

 加えて、憲法第九十九条が憲法遵守義務を定めているのは、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法で定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えます。

 沖縄の米軍基地問題、特に普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は、絶対に避けなければなりません。

 普天間の全面返還に向け、現在、米軍キャンプ・シュワブの南側海域について、周囲の海域に影響を与えないよう、埋立海域を全て護岸で閉め切った上で埋立てを進めていますが、サンゴに関しては、護岸で閉め切ると、周囲の海と切り離され、海水の出入りがとまってその生息に影響が生じるため、海域を閉め切る前に、南側の埋立海域に生息していた保護対象のサンゴは移植したと聞いております。

 なお、サンゴ類の保護基準は、那覇第二滑走路の工事に伴う埋立ての際の基準よりも厳しいものであると承知しています。

 また、国指定の天然記念物であるオカヤドカリ類や絶滅危惧種に指定されている貝類、甲殻類などについても、専門家の指導助言を得ながら、南側の工事区域の海岸や海底から他の地域への移動を適切に実施していると聞いております。

 今後とも、沖縄の方々の気持ちに寄り添い、基地負担の軽減に全力を尽くすとの方針に何ら変更はありません。

 沖縄防衛局が平成二十六年度から平成二十七年度にかけて行った地盤の調査に係る報告書の取扱いについては、同局において法令に基づき対応したものと承知しています。

 米軍キャンプ・シュワブの北側海域については、地盤改良工事が必要であるものの、一般的で施工実績が豊富な工法により、護岸や埋立て等の工事を所要の安定性を確保して行うことが可能であることが確認されたと聞いており、地盤改良工事の追加に伴い、沖縄県に対して変更承認申請を行う必要があるため、まずは沖縄防衛局において必要な検討を行っていくものと承知しております。

 政府としては、現行の日米合意に基づき、抑止力を維持しながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでまいります。

 なお、地方自治体における独自の条例にかかわる事柄について、政府として見解を述べることは差し控えたいと思います。

 今後とも、抑止力を維持しながら、基地負担の軽減に一つ一つ結果を出してまいります。

 原子力政策についてお尋ねがありました。

 徹底した省エネ、再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減する、これが政府の一貫した方針であります。

 その上で、原発の建設などに伴うコストについては、国ごとの立地環境や国内制度、経済情勢などによって異なるものであり、一概に申し上げることはできません。

 同時に、我が国においては、現在、多くの原発が停止している中で、震災前に比べ、一般家庭で平均約一六%電気代が上昇し、国民の皆様に経済的に大きな御負担をいただいている現実があります。

 資源に乏しい我が国にとって、こうした経済的なコストに加え、気候変動問題への対応、エネルギーの海外依存度を考えれば、原発ゼロということは責任あるエネルギー政策とは言えません。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 北方領土は、我が国が主権を有する島々です。この立場に変わりはありません。

 日ロ間では、これまで、多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これらの諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきています。

 その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有しています。

 一九五六年の日ソ共同宣言の第九項は、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しています。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場です。

 その上で、交渉内容にかかわることや我が国の交渉方針、考え方については、交渉に悪影響を与えないためにも、お答えすることは差し控えます。

 いずれにせよ、政府として、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉していきます。

 千島列島の返還についてお尋ねがありました。

 我が国の戦後処理の法的な基礎であるサンフランシスコ平和条約において、我が国は、千島列島に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しており、千島列島の返還を求めることはなし得ません。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 馬場伸幸君。

    〔馬場伸幸君登壇〕

馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。

 我が党を代表して質問をいたします。(拍手)

 あの悪夢の三年三カ月とも言われた民主党政権に終止符を打ち、第二次安倍政権が発足してから六年、アベノミクス三本の矢に次ぐ新三本の矢が発表されてから早くも三年余りが経過をしました。

 安倍総理が、日銀総裁に係る人事権を行使し、早期にデフレではないという状況をつくるとともに、雇用環境を劇的に改善させてきたことは、一定評価をしています。無責任野党たちは、統計不正をもってアベノミクス偽装などとあおっていますが、アベノミクスの成果と統計不正の問題とは切り離して評価すべきです。

 その上で、日本経済のデフレという病を退治した上で、本当の意味で国民が待ち望んでいるのは、日本にふさわしい経済の活力と生活の豊かさだと考えます。だからこそ、安倍総理も、強い経済、子育て支援、安心の社会保障の三つを新三本の矢として打ち出されたのではないでしょうか。

 しかし、現実はどうなっているのでしょうか。

 平成二十九年のGDPは五百四十七兆円でしたが、平成三十年度の四半期を見ると、一―三月期と七―九月期にはGDPはマイナス成長でした。平成三十年度の名目GDPは、前年度に対して横ばいがよいところでしょう。目標の名目GDP六百兆円にはほど遠い状況です。

 また、新三本の矢の一つとして希望出生率一・八の実現を打ち出して以降、合計特殊出生率は二年連続して下がっており、人口減少に歯どめがかかっていません。

 さらには、介護離職については、平成二十九年の最新データと第二次安倍政権が発足した平成二十四年のデータとを比較しても、介護を理由とする離職数は横ばいであり、介護離職ゼロとはほど遠い現状と言わざるを得ません。

 そこで、総理に質問いたします。

 アベノミクス新三本の矢について、思ったような進捗が得られない要因をどのように分析し、目標を達成する見通しについてどのような認識をお持ちですか。お答え願います。

 次に、厚生労働省による毎月勤労統計、賃金構造基本統計等に係る長年の不正調査が発覚しました。統計制度は、言うまでもなく、国のかじ取りをしていく上で極めて重要な制度インフラであり、こうした不正は絶対にあってはなりません。

 そうした中、維新以外の野党各党はひたすら政府・与党を批判するばかりですが、不思議なのは、権力を掌握している間に不正を見つけることができなかった旧民主党の方々が、不正を見つけた安倍政権を叱り飛ばしていることです。加計学園が問題になった際に、野党の面々が、ゴルフをした安倍総理をなじっていたのと全く同じ構図です。そもそも、不正を見つけたらたたかれるというのでは、誰も真実を語らなくなるでしょう。

 今回の事案は厚労省の中に長く埋もれていたわけですが、数十年の長きにわたって不正を見抜けなかったのはなぜでしょうか。そして、今回、見つかったのはなぜなのでしょうか。深刻な不正が行政府の広い範囲にわたってはびこってきた、その根本原因は何なのでしょうか。総理の御見解をお聞かせください。

 今回の統計不正事件を受けて、本当に必要なことは、長年にわたって不正が行われてきた根本原因を明らかにし、二度とこうした不祥事が起きないよう、対策を講じ、仕組みを整備することです。

 ところが、統計不正が明るみに出た後の安倍政権の対応は余りにずさんです。

 まず、厚労省が設置した特別監察委員会の第三者性が問題になっています。

 特別監察委員会が幹部職員にヒアリングする際に厚労省の官房長が同席していたことは言語道断ですが、財務省的にはそうやるかねという感じがすると、厚労省の調査のあり方に疑問を呈した麻生財務大臣は、財務省理財局で公文書偽造事件が起こった際に、内部調査で幕引きを図った張本人ですから、あきれて物も言えません。

 一般的に、第三者委員会というのは、調査対象から独立した委員のみをもって構成され、独自に徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言する委員会です。例えば、十年近く前に、日弁連が第三者委員会ガイドラインを公表し、第三者委員会が備えるべき要件を提示しています。

 そこで、総理に質問いたします。

 政府は、不祥事が起こるたびに調査委員会を立ち上げてきましたが、不祥事を厳正に調査するための第三者委員会は、どのような要件を備えるべきでしょうか。第三者委員会が備えるべき要件について、政府統一の考え方はないのでしょうか。ないのであれば、今回の統計不正を機に、第三者性の確保のための規範となる統一的なガイドラインを作成し、政府各部に徹底するべきではないでしょうか。

 問題は、毎月勤労統計だけではありません。賃金構造基本統計でも、数十年にわたって、調査員が行うべき調査用紙の配付、回収を郵送で行っていたと報じられています。

 昨年三月に閣議決定された公的統計の整備に関する基本的な計画でも、ICT技術を活用したオンライン調査の導入等が打ち出されているように、前時代的な調査方法を抜本的に見直し、新しいテクノロジーを活用すべきなのです。

 縦割り行政の中で、それぞれの調査所管部局の判断で統計調査が実施され、その信頼性が揺らいでいるのであれば、中央省庁再編も視野に入れるべきです。

 ただし、厚労省分割といった懲罰的で安直な方法では、混乱を拡大するだけです。

 私たち維新の会は、各府省に散らばっている調査統計部門を切り離し、独立して統計調査を専門的に実施する国家統計局を創設すべきと考えます。イギリスでは、高い専門家集団としての国家統計局が政府の統計業務を一元的に取り仕切り、統計業務の不断の見直しや民間委託等、抜本的な統計改革を続けています。

 我が国でも、イギリスの国家統計局をモデルに、合理的で先進的な統計行政を根本から再構築すべきと考えますが、総理の見解をお伺いします。

 また、この不正問題を受け、厚労次官らが訓告等の処分となりましたが、過少給付の総額が約五百四十億円に上るにもかかわらず、その処分内容は国民が納得できるものではありません。

 公務員による不祥事の再発防止策の観点からも、不正にかかわった責任者について、さかのぼって厳正な処分を行うことが必要なのではないでしょうか。総理の御所見をお聞きいたします。

 基幹統計に係る不正調査の問題は、政府に対する信頼を大きく揺るがすものであり、問題の広がりは政府統計にとどまるものではありません。

 例えば、我が党は、公務員給与に係る人事院勧告のあり方について、改善の必要性を以前から幾度となく指摘してきました。

 言うまでもなく、国家公務員の給与水準は、民間準拠、すなわち民間企業の従業員の給与水準と均衡させることを基本に人事院が勧告を行っていますが、その官民比較における比較対象の事業所規模は五十人以上です。平成三十年の調査では五万八千三百五十一事業所が調査対象母集団となっていますが、これは全事業所の一%にすぎません。

 総理、国家公務員の人件費は五兆二千億円にも及びます。国民の血税から成っているこの莫大な国家公務員人件費のベースとなる民間給与実態調査の対象が、大企業の上澄みの部分だけ、一%のいいところだけと比較しているのは、やはり公務員天国との批判を逃れ得ないと考えますが、いかがでしょうか。この際、人事院も含む政府全体の統計調査について、それぞれの調査対象、調査方法などを調査目的に沿って精査し、それこそ、漫然と継続してきただけの諸統計の棚卸しと近代化、合理化を図るべきと考えます。統計調査の抜本改革の必要性に関する総理の見解を伺います。

 我が党は、議員歳費の約二割、一人月十八万円の身を切る改革をみずから行っている唯一の政党です。平成二十八年五月から始めたこの取組により、総額一億円近くを被災地等に寄附することができました。私たち小さな政党でもこれだけのことができるのですから、自民党や立憲民主党が同じ取組をすれば、莫大な財源を生み出すことができるでしょう。

 もちろん、私たちが身を切る改革に取り組んでいるのは、単に直接的な被災地支援のための財源を生み出すためだけではありません。増税の前に政治家が身を切る改革を行い、率先して覚悟を示すことで、必要な行財政改革へのリーダーシップを発揮することができます。そして、徹底した行財政改革をやり切った上で、それでも財源が足りないのであれば、そのときに初めて国民の皆様に負担をお願いする。これが、正しいというよりも、当たり前の筋道であると思います。

 自民党が野党であった平成二十四年衆議院選挙マニフェストには、議員定数の削減など国民の求める改革を必ず断行するとありました。しかし、政権をとった後に行われたことは、参院議員定数の六増です。選挙では身を切る改革を真顔で訴え、権力を掌握すると、手のひらを返したように議員特権の維持拡大に奔走し、国民には増税を押しつける。余りに身勝手であると断じざるを得ません。

 維新の会は、こうした国民を愚弄する消費増税に断固として反対します。

 総理、国会議員自身の身を切る改革という国民との約束をないがしろにしたまま、本当に消費増税を実施されるのでしょうか。私たちには到底理解できませんが、改めて総理御自身のお考えをお聞かせください。

 自民党による議員特権の維持拡大は、参議院定数の六増だけにとどまりません。自民党は、地方議員年金制度の復活に向けた作業を着々と進めています。

 地方議員年金は、制度破綻を来し、平成二十三年に廃止されましたが、その後も全国の地方自治体はそのツケを支払わされており、その額は一兆一千億円にも上ります。

 自民党は地方議員のなり手がいないことを理由に挙げていますが、地方の特色に合わせて地方議会のあり方を見直せばよいのです。地方議員は兼職が許されているのですから、働きながら議員活動を行うこともできるし、職業を持ちながらボランティア精神を持って働く人材の方が望ましいとの指摘もあります。

 総理に伺います。

 人口減少社会における地方議員のあり方を、柔軟かつ大胆な発想で見直す時期が来ているのではないでしょうか。御所見を伺います。

 我が党は、今国会が開会した今月二十八日から、政策目安箱や、政党初の取組となる未来共創ラボというネットサロンを開設したところですが、瞬く間に、非常に多くの皆様から多数の御意見、政策提案などをいただいております。

 そこに寄せられたコメントの中で一番多いのが、韓国外交に関する意見です。慰安婦問題、徴用工問題、そして韓国海軍による火器管制用レーダーの照射問題等への安倍政権の対応に国民は不満を募らせているのです。

 特にレーダー照射問題については、国の安全保障にかかわる深刻な問題であり、中途半端で妥協的な決着を図ることは絶対にあってはなりません。

 事案が発生した当初こそ、安倍政権は厳しい姿勢で臨んでいたようですが、河野外相や岩屋防衛大臣から出てくる言葉は、早期決着、未来志向といった曖昧な幕引きを示唆する言葉ばかりです。安倍総理に至っては、施政方針演説で韓国にほとんど触れないという戦略的無視を決め込みました。

 慰安婦問題への対応でも同様でしたが、言うべきことを言わない自公政権の姿勢では、必ず禍根を残します。実際、海上自衛隊の哨戒機が低空で威嚇飛行をしたと言われ、いつの間にか攻守が逆転しているではありませんか。

 総理、売られたけんかは買わねばなめられます。国民の生命と財産、国の平和と安全を守るためには、日韓防衛協力の見直しを含めた毅然とした対応が不可欠と考えますが、総理の見解を伺います。国民が安心するよう、明確な御答弁をお願いいたします。

 ことしは、世界の首脳が集まるG20サミットが大阪で開催されます。さらに、二〇二五年大阪・関西万博の開催が決まりました。大阪・関西から日本の魅力を世界に発信していくため、引き続き力を尽くしてまいる決意です。

 そして、万博の会場となる舞洲への統合型リゾート誘致に向けた期待と相まって、大阪・関西では、早速、私鉄各社を始め民間の投資が大きく動き始めています。こうした民間の積極的な投資意欲に水を差すことなく、万博開催とIR開業の相乗効果を最大化するためには、少なくとも二〇二四年までに大阪・夢洲にIRを開業することが不可欠です。

 法施行の加速化に向けた安倍総理の御決意を伺います。

 最後に、憲法改正について質問いたします。

 日本維新の会は、現行の日本国憲法が国民投票を経ていないことを大変深刻な問題であると考えています。日本国憲法は、第一条に主権の存する日本国民とあるとおり、国民主権をうたっていますが、国民主権の行使としての憲法に係る国民投票は、まだ一度も行われていません。国民投票を行わないで国民主権と呼べるのでしょうか。

 大阪では、大阪都構想の住民投票を行うことにより、住民の一人一人が大阪のあるべき姿を考え、民主主義に対する理解を深める貴重な機会となっています。同じように、憲法改正についても、国民投票の実施を目指すことは、国民の手に憲法を取り戻すための当然の取組であると考えますが、憲法改正に向けた安倍総理の御決意を伺います。

 平成から新しい時代へ、御代がわりの重要な年が始まりました。今国会では、維新の会として、全政党に憲法改正原案を提示するよう呼びかけてまいりたいと考えています。安倍総裁にも、ともに前進していただくようお願いして、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 馬場伸幸議員にお答えをいたします。

 新三本の矢の進捗についてお尋ねがありました。

 名目GDP六百兆円については、政権交代後、極めて短い期間でデフレではないという状況をつくり出す中で、名目GDPは一割以上増加しました。この流れをより確かなものにするため、引き続き、人材投資や生産性向上など、あらゆる政策を総動員していくことで、潜在成長率を押し上げ、名目GDP六百兆円経済の実現を目指します。

 希望出生率一・八については、本年十月より、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育を無償化し、子供たちの教育に係る負担を大幅に軽減します。同時に、待機児童の解消を強力に推し進め、昨年は十年ぶりに二万人を下回り、今年度も十七万人分の保育の受皿を整備します。子供たちを産み育てやすい日本へと大きく転換していく、そのことによって、希望出生率一・八の実現を目指します。

 介護離職ゼロについては、介護離職者は、総務省の前回調査の十・一万人から、直近は九・九万人と二千人減少し、その間、介護しながら働く方は五十五万人増加しています。二〇二〇年代初頭までに五十万人分の介護の受皿の整備を進めていくと同時に、介護人材確保への取組を強化するなど、各種取組を総合的に進めることで、仕事と介護が両立できる環境を整備し、介護離職ゼロを目指していきます。

 安倍内閣は、これからも、必要な政策を果断に実行し、成長と分配の好循環を更に推し進め、結果を出すべく取り組んでいきたいと考えています。

 今般の毎月勤労統計の事案の原因についてお尋ねがありました。

 毎月勤労統計について、不適切な調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわび申し上げます。

 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめています。

 今回の事案においては、平成三十年のサンプルがえの影響を調査している中で判明したものと承知しておりますが、厚生労働省の特別監察委員会において、さらに、より独立性を強めた形で検証作業を進めていただいております。

 今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要です。再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 毎月勤労統計の問題の発生防止策と第三者委員会の要件についてお尋ねがありました。

 厚生労働省の特別監察委員会において、先般、それまで明らかになった事案等について報告をまとめていただいたところですが、さらに、より独立性を強める形で厳正に検証作業を進めていただいております。

 いただいた御批判は真摯に受けとめた上で、今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 なお、第三者委員会の設置、運営に関し、一般論として申し上げるならば、客観性、中立性が疑われるような委員構成、会議運営をなすべきではないと考えています。

 統計行政の再構築と統計の抜本改革についてお尋ねがありました。

 我が国の統計機構では、各府省が所管行政に関連する統計作成を担い、統計委員会が統計整備の司令塔機能を果たしてきたところです。

 さらに、統計機構の一体性を確保するために、昨年の統計法改正により、統計委員会の機能が強化され、各府省の所管する統計調査について自律的、機動的に政策提言やそのフォローアップを行うことができるようになりました。こうした機能を十分に活用していくことが重要であると考えています。

 また、今日の統計をめぐる問題を受けて、昨日の統計委員会において点検検証部会を設置し、各府省が所管する統計について、調査対象、調査方法等が妥当かを含め、再発防止や統計の品質向上といった観点から徹底した検証を行うこととしましたが、そうした結果も踏まえつつ、総合的な対策を講じてまいります。

 責任者に対する処分についてお尋ねがありました。

 今回の毎月勤労統計調査に関する問題では、常に正確性が求められる政府統計についての信頼を毀損するとともに、雇用保険等について追加給付が必要となり、国民の皆様に御迷惑をおかけする事態となったこと等を厳正に受けとめ、厚生労働大臣を始め政務三役が、けじめとして、就任時から本年一月分まで閣僚給与等を自主返納するとともに、事務方も、過去の担当部長等を含め、厳正な処分を行ったものです。

 今回のような事態が二度と生じないよう徹底して検証を行い、信頼を取り戻すことが何より重要であり、再発防止に全力を尽くすことで、政治の責任をしっかりと果たしてまいります。

 国家公務員の給与についてお尋ねがありました。

 国家公務員の給与については、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢のもと、民間の水準を踏まえて決定されております。

 人事院が行っている官民比較の手法については、調査対象企業の規模も含めて、人事院において専門的見地から判断されるものであると考えております。

 身を切る改革及び消費税率引上げについてのお尋ねがありました。

 我々政治家は、政策を実現するため、真摯に努力を続け、国民の負託に応えていかなければなりません。国民の皆さんにさまざまな御負担を求めている以上、我々政治家も常にみずからを省みる必要があることは当然であります。日本維新の会がそうした観点から率先垂範して身を切る改革をみずから実行に移しておられることについては、敬意を表したいと思います。

 他方、議員定数については、政権交代後、まず、平成二十五年に衆議院の定数の〇増五減が実現し、さらに、さまざまな困難を乗り越え、調査会の答申や各党各会派の議論等を踏まえ、平成二十九年には衆議院の定数十削減が実現しました。国民との約束をないがしろにしているとの指摘は当たりません。

 さきの国会で成立した参議院の選挙制度改革については、参議院特有の事情も踏まえ、投票価値の平等とともに、都道府県の単位がどれぐらい尊重されるべきかという点も含めて、各党各会派による検討がなされ、結論が出されたものであると承知をしております。

 また、附帯決議として、この定員増に伴う参議院全体の経費の増大を生じないよう、しっかりとその節減に取り組んでいくという参議院としての決意が示されているものと承知をしております。

 政治に要する費用や議員定数にかかわる問題は、議会政治や議員活動のあり方、すなわち民主主義の根幹にかかわる重要な課題であることから、国会において国民の代表たる国会議員が真摯な議論を通じて合意を得る努力を重ねていかなければならない問題であると考えております。

 本年十月の消費税率の一〇%への引上げについては、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策や社会保障に対する安定財源を確保するために必要なものです。

 これまでも、反動減等に対する十二分な対策を講じた上で、法律で定められたとおり十月に現行の八%から一〇%に引き上げる予定であると繰り返し申し上げており、この方針に変更はありません。

 地方議員のなり手不足についてお尋ねがありました。

 地方議員のなり手不足については、政府としても、これまで、通年会期制の創設など、より幅広い層が議員として参画しやすい環境の整備に努めてきたところであり、また、各議会においても、夜間、休日を基本とした議会運営など、議員の裾野を広げることに資する自主的な取組を進めていると承知しています。

 引き続き、各地方議会における自主的な取組とあわせ、政府としても、議員のなり手の確保のための環境整備に努めてまいります。

 韓国軍におけるレーダー照射事案などの日韓関係に関するお尋ねがありました。

 韓国軍艦によるレーダー照射事案等については、専門的、技術的観点から防衛当局間で協議が行われたところであり、この事案等に関する認識及び今後の対応については、これまで岩屋防衛大臣や防衛省が累次明らかにしているとおりです。

 朝鮮半島出身労働者の問題を始め、これまで日韓両国が築き上げてきた関係の前提すら否定するような動きが続いていることは大変遺憾です。政府としては、国際法に基づき毅然として対応していく考えであり、我が国の一貫した立場に基づき、主張すべきは主張し、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。

 その上で、韓国との間では、北朝鮮問題を始め、連携すべき課題についてはしっかりと連携していくことが必要であると考えています。

 IR整備法に係る法施行の加速化についてお尋ねがありました。

 IRは、国際会議場や家族で楽しめるエンターテインメント施設と、収益面での原動力となるカジノ施設とが一体的に運営され、これまでにないスケールとクオリティーを有する総合的なリゾート施設を整備するものであり、我が国を観光先進国へと引き上げる原動力となると考えております。

 政府としては、今後、できるだけ早期に日本型IRを実現できるよう、政省令の制定や基本方針の策定など、所要の準備作業を進めてまいりたいと考えております。

 憲法改正についてお尋ねがありました。

 憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります。新しい時代の幕あけに当たって、私たちはどのような国づくりを進めていくのか、この国の未来像について骨太の議論を行うべきときに来ています。

 言うまでもなく、憲法改正は、国会が発議し、最終的には主権者である国民の皆様が国民投票で決めるものです。今後、国会の憲法審査会の場において各党の議論が深められ、国民的な理解も深まっていくことを期待しています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 野田佳彦君。

    〔野田佳彦君登壇〕

野田佳彦君 社会保障を立て直す国民会議を代表して質問いたします。(拍手)

 社会保障と税の一体改革が決まったのは二〇一二年ですが、今後三年間で社会保障改革をなし遂げると今になって総理が発言するほど、社会保障改革はおくれています。この現状に危機感を持ち、医療制度を始めとする社会保障制度を立て直そうという点で考えが一致した同志が集まり、新しい会派の結成に至りました。

 国民会議と名にあるとおり、医療や介護の現場で国民との対話を重ね、政策を練り上げることを会派運営の基本としてまいります。

 社会保障に対する将来不安が大きくなっている今日、社会保障の立て直しを野党結集のための政策の旗印として掲げる決意です。

 国会においても、党派を超えて御理解を得られるよう、これからの日本の有力な選択肢となる社会保障政策を提案してまいる覚悟ですので、高い壇上から恐縮でございますが、皆様の御指導、御理解を賜るよう、心からお願いを申し上げます。

 それでは、順次質問に入ります。

 社会保障の将来に不安を抱く国民が多い中、セーフティーネットへの不信を募らせる問題も発覚しました。賃金や労働時間の動向を示す毎月勤労統計の不正調査です。

 この不正が十五年間も続いていたということは、民主党政権下でも見過ごしていたということであります。猛省しなければなりません。その上で、しっかりと襟を正し、他の野党とも連携して、不正調査問題の全容解明に取り組む決意です。

 平成の、その先の時代に向かう前に、与党の皆さん、さほど大きな問題はないとうやむやにせず、ともに全容を解明しようではありませんか。

 毎月勤労統計の手抜き調査と、手抜き調査の長年の引継ぎは、統計法六十条二号に該当し、刑事罰に問われる行為ではないでしょうか。政府の見解を求めます。

 今回の事案が統計法違反、刑事罰に当たるという見解であれば、刑事訴訟法二百三十九条第二項、公務員の告発義務に沿って刑事告発する意思、告発義務を履行する意思が政府にあるか、見解を求めます。

 逆に、今回の事案が統計法違反、刑事罰に当たらないという見解であれば、その理由と、では一体、統計法違反の刑事罰に当たるような事例はどのようなものなのか、具体的に挙げてください。

 政府が五十六の基幹統計を点検したところ、全体の四割に当たる二十三統計に問題があったことも明らかになりました。信用できない政府統計を基礎に、政策立案も国会審議もできません。市場調査も学術研究もできません。

 二〇一〇年一月、欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘したことが報道され、ギリシャの財政状況の悪化が表面化しました。それが南欧に飛び火し、欧州全体に債務危機を連鎖したことは記憶に新しいところです。

 政府統計への不信は亡国への道につながりかねません。総理には、もっと強い危機感を持って、統計の信頼回復に向け全力を尽くすよう要請をいたします。

 計算ずくで法外な要求を突きつけてくる国もあれば、ポピュリズムにあおられ道理が通じない国もあります。二国間外交は本当に難しいと思いますが、総理は戦後日本外交の総決算を高らかに宣言されました。その一つが日ロ平和条約交渉です。

 領土問題の解決に向けて意欲的であることは結構なことですが、基本姿勢に疑問がありますのでお尋ねいたします。

 総理は、昨年十一月の日ロ首脳会談後、平和条約の締結後に歯舞、色丹の引渡しを明記した一九五六年の日ソ共同宣言を今後の交渉の基本とすると明言しました。これは、歴代政権が粘り強く交渉してやっとかち得た、北方四島を明記して帰属の交渉を継続するとした一九九三年の東京宣言から後退したスタンスです。

 総理、なぜ、四島返還からわざわざ二島返還へと軸足を移したのですか。明確に御説明ください。

 歯舞、色丹の二島先行返還なら理解できますが、二島で最終決着という可能性もあります。全面積の七%の返還で妥協し、残り九三%を断念すれば、先人の苦労が全て無駄になります。

 総理は、過去の交渉を振り返り、昨年十一月二十六日の衆議院予算委員会で、七十年間全く変わらなかったと言い切りました。一ミリも動かなかったと表現したこともあります。歴代政権の粘り強い努力に対して、敬意を欠いているのではないでしょうか。御説明ください。

 日本側が二島返還へと大きくかじを切っても、ロシア側に変化の兆しは見られません。交渉責任者であるラブロフ外相は、第二次大戦の結果、ロシア領になったと、相変わらず我が国が到底受け入れることのできない歴史観を主張しています。

 一方、河野外相は、国会審議においても記者会見においても、日本側の交渉に臨む基本的な立場を明確にしていません。この彼我の差を見ると、二島返還どころか、石ころ一つ返ってこないかもしれません。ラブロフ外相については、北方領土という呼称も使うなと言っているそうなので、あえて総理にお尋ねいたします。

 北方領土は我が国の固有の領土であるが、現時点ではロシアによる不法占拠が続いているという法的立場に変わりはありませんね。昨日は小さな声でごそごそ言っていましたのでわかりませんでした。不法に占拠し続けていればいつか日本は諦めるという誤ったメッセージを周辺国に与え、竹島問題で韓国にエールを送りかねませんので、明確な答弁を求めます。

 さて、施政方針演説で総理は全く言及しませんでしたが、日韓関係は過去最悪です。特に、哨戒機へのレーダー照射はあってはならないことであり、明らかに非は韓国にあるはずですが、我が国の抗議に対して、韓国内の反日感情が高まっています。双方の言い分が真っ向からぶつかっているとき、日本は大人の対応と称して協議を打ち切ることにしました。私は、この対応に疑問を持っています。

 外交の本質は、国益をかけた戦いです。武力という手段を用いることなく、知識、情報、説得力、発信力など、総力を結集して、国益をかけて戦う真剣勝負です。厳しい東アジア情勢を鑑み、我が国が大人の対応で自己抑制しようということでしょうが、途中で投げ出すことは外交敗北です。

 何事につけ、日韓の最大の問題は事実の認識ができないことです。ですから、今回、日本は、けんかではありませんから、冷静かつ明晰にファクトを示し続け、みずからの正当性を明らかにしていくべきです。理不尽な主張にはきちっと反論することも肝要です。そして、しっかりと国際社会にアピールしていくべきです。総理の御所見をお聞かせください。

 元徴用工問題における韓国の対応も常軌を逸しています。同じ内容で日本と請求権協定を結んだアジアの国はほかに四カ国ありますが、条約を覆しているのは韓国だけです。

 この元徴用工問題についても、法と正義にのっとり、日韓請求権協定に基づき、粛々と政府間協議の受入れを求め続けるべきだと思いますが、総理のお考えをお聞かせください。

 昨年十一月二十日、財政制度等審議会が麻生財務大臣に対して、平成三十一年度予算の編成等に関する建議を提出しました。その中で、平成を、常に受益拡大と負担軽減、先送りを求めるフリーライダーのゆがんだ圧力に税財政運営があらがい切れなかった時代と厳しく総括しています。先人たちや、新たな時代そして更にその先の時代の子供たちに、平成時代の財政運営をどのように申し開くことができるであろうかと政策の失敗まで認めています。そして、平成という時代における過ちを二度と繰り返してはならないと指摘した上で、平成三十一年度予算は新時代の幕あけにふさわしいものになることを期待したいと結んでいます。

 ところが、国会に提出をされた平成三十一年度予算案は、一般会計総額が百一兆四千五百七十一億円、昨年度よりも三兆七千億円も増加し、当初予算として初めて百兆円の大台を超えました。

 総理、この過去最大規模予算案は、財政審の期待に沿ったものであると胸を張って言えますか。御答弁ください。私には、財政審の建議を黙殺してしまったように思えます。

 前年度に比べて歳出総額が大幅に膨らんだ主な理由は、手厚い消費増税対策です。総理は、いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な対策をと語られました。しかし、余りにもあれもこれも盛り込んだばらまき対策になっていないでしょうか。

 軽減税率はポピュリズムの極致であり、逆進性対策として効果がありません。プレミアム商品券も効果がないことは実証済みです。そのほか指摘したいことは山ほどある消費税対策でありますけれども、キャッシュレス決済でのポイント還元策にポイントを絞って質問いたします。

 税率一〇%の商品を大手フランチャイズチェーンでクレジットカードなど現金以外で購入すると、二ポイント還元ですから税率は実質八%になります。中小小売店でキャッシュレスで購入すると、五ポイント還元ですから税率は実質五%です。軽減税率対象の食品を現金で買えば税率は八%ですが、カードで買えば、大手チェーン店なら税率は六%、中小小売店なら税率は三%になります。十月から、実質的に消費税率が三、五、六、八、一〇パーと複数税率が併存することになりますが、総理は店頭で大混乱が起こると思いませんか。

 就学援助を受けている子供が学用品を買ったり、お年寄りが日用品を買う場合、カードを持っていないので現金払いでしょうから、税率は一〇%です。一方、お金持ちが個人経営の店で高級和牛やキャビアを買っても、支払いがカードなら税率は三%です。現金で買物をする子供や高齢者は増税、カードを利用する富裕層は減税です。総理、キャッシュレス決済でのポイント還元策は逆進性を助長するのではないでしょうか。

 ポイント還元策は、本年十月から来夏の東京オリンピック前まで九カ月間実施されます。五ポイント還元の恩恵を受けてきた人たちは、廃止後は実質的に五%増税になります。我が国で経験したことのない大幅な引上げです。

 ポイント還元策は消費税引上げ前後の消費の変動を平準化する目的であったはずですが、東京オリンピック前後に大きな駆け込み需要と大きな反動減を惹起するのではないでしょうか。景気の先食いによって起こるオリンピック後の不景気をオリンピックの崖といいますが、ポイント還元策により相当に急傾斜な崖になるのではないでしょうか。総理の御所見をお伺いいたします。

 最後に、私が最も憂慮していることを質問いたします。

 過剰なばらまき対策に予算を使うことは、社会保障の充実、安定と財政健全化のためなら増税もやむを得ないと考えていた国民を裏切る行為です。何のための増税かという根源的な政策不信を招きます。少なくとも、究極の愚策ともいうべきポイント還元策は撤回すべきではないですか。答弁を求めます。

 還元率五%というアイデアは総理じきじきのものだと仄聞しています。さまざまな弊害をもたらすような思いつきを、政府も与党もなぜ黙認してしまったのでしょうか。

 絶対権力は絶対に腐敗します。そして、絶対権力は絶対に独善に陥ります。私たちは少数精鋭の七人の侍ですが、独善と断固戦っていくことをここに宣言して、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 野田佳彦議員にお答えをいたします。

 今般の毎月勤労統計に関する事案と統計法についてお尋ねがありました。

 統計法第六十条第二号違反の罪は、基幹統計の作成に従事することで、基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした場合に成立するものと承知しています。

 厚生労働省の特別監察委員会においては、先般、それまでに明らかになった事実等について報告書を取りまとめていただいたところですが、さらに、独立性を強めた形で検証作業を進めていただいているものと承知しております。

 野田議員も総理を務めておられましたので御承知のこととは思いますが、具体的にどのような事例であれば統計法違反となるかについては、犯罪の成否は、捜査機関により、法と証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であり、政府としてお答えすることは差し控えます。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 先般もお答えをさせていただきましたが、一部議員のやじがうるさくて、よく聞き取れなかったかもしれません。

 また、領土問題の解決に向けて意欲的であることは結構なことですがと、お褒めの言葉をいただきましたが、意欲的であることは総理大臣としては当然のことではないか、このように思います。

 北方領土は、我が国が主権を有する島々です。この立場には変わりはありません。

 日ロ間では、これまで、一九九三年の東京宣言を始め、多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これらの諸文書や……(発言する者あり)済みません、ちょっとまた聞こえにくくなりますから。済みません、議長。

 日ロ間では、これまで、一九九三年の東京宣言を始め、多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これらの諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきています。

 その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有しています。

 一九五六年の共同宣言の第九項は、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しています。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場です。

 その上で、交渉内容にかかわることや我が国の交渉方針、考え方については、交渉に悪影響を与えないためにも、お答えすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、政府として、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉してまいります。

 日韓関係についてお尋ねがありました。

 韓国軍艦によるレーダー照射事案等については、専門的、技術的観点から防衛当局間で協議が行われたところであり、この事案等に関する認識及び今後の対応については、これまで岩屋防衛大臣や防衛省が累次明らかにしているとおりです。

 旧朝鮮半島出身労働者の問題については、国際法に基づき毅然として対応していく考えであり、我が国の一貫した立場に基づき、主張すべきは主張し、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。先般行った日韓請求権協定に基づく協議の要請については、韓国側に対し、誠意を持って協議に応じるよう粘り強く働きかけてまいります。

 平成三十一年度予算についてお尋ねがありました。

 平成三十一年度予算は、全世代型社会保障制度への転換に向け、消費税の増収分を活用して、幼児教育の無償化を始め、社会保障の充実にしっかり対応するとともに、消費税率引上げに伴い臨時特別の措置を講じることにより、予算規模は百一・五兆円となっております。

 特に、今般の消費税率引上げに当たっては、前回の八%への引上げの際に耐久財を中心に駆け込み需要と反動減といった大きな需要変動が生じた経験を踏まえ、いただいた消費税を全て還元する規模の十二分な対策を講じることとしました。

 同時に、財政健全化も着実に進めています。

 国の税収は過去最高、六十二兆円を超えるとともに、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分におさめるなど、歳出改革の取組を継続することで、新規国債発行額が政権交代前と比較して約十二兆円減少し、安倍内閣発足以来七年連続で減少しています。

 引き続き、経済再生なくして財政健全化なしの基本方針のもと、平成の、その先の時代に向かって、しっかりと取組を進めてまいります。

 ポイント還元についてお尋ねがありました。

 前回、八%への引上げの際には、予想以上に消費の低迷を招き、その後の景気回復にも力強さを欠く結果となりました。

 また、大企業は、消費税の引上げ後、自己負担でセールなどを実施できるのに対し、中小・小規模事業者は、大企業に比べて体力が弱く、競争上の不利もあります。

 こうした点を踏まえ、今回、中小・小規模事業者に限定した、消費をしっかりと下支えするため、大胆なポイント還元を実施することとしたものであり、ばらまきとの御指摘は当たりません。

 また、逆進性を助長するといったことのないよう、誰でも簡単に加入できるプリペイドカードなど多様な選択肢を用意し、クレジットカードを持たない幅広い消費者がポイント還元のメリットを受けられるようにします。

 むしろ、雇用の七割を占める中小・小規模事業者の売上げが伸びることとなれば、従業員の方々の所得拡大など、裾野の広い波及効果も期待されると考えます。

 その実施に当たっては、混乱を回避するため、ポイント還元の対象となる店舗に還元率を明記したポスター等を張り、消費者の皆さんが一目でわかる工夫を講じます。

 また、来年の夏は、東京オリンピック・パラリンピックに伴うインバウンド消費など、需要の拡大が見込まれることから、今回のポイント還元はその手前の来年六月までの時限措置とすることで、反動減による景気への悪影響は最小限に抑えることができるものと考えております。

 今回のポイント還元を始め十二分の対策を講じることで、一〇%への引上げによる景気の腰折れを防ぎ、その回復軌道を確かなものとしてまいります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) ただいま議場内交渉係が協議中でございますので、しばらくこのままお待ちください。

 これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

    〔副議長退席、議長着席〕

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 御報告することがあります。

 議員園田博之君は、昨年十一月十一日逝去されました。痛惜の念にたえません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 園田博之君に対する弔詞は、議長において昨年十二月十二日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力され 特に院議をもってその功労を表彰され さきに法務委員長の要職にあたられた議員従三位旭日大綬章 園田博之君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

    ―――――――――――――

 故議員園田博之君に対する追悼演説

議長(大島理森君) この際、弔意を表するため、渡海紀三朗君から発言を求められております。これを許します。渡海紀三朗君。

    〔渡海紀三朗君登壇〕

渡海紀三朗君 ただいま議長から御報告がありましたとおり、本院議員園田博之先生は、昨年十一月十一日、御逝去されました。

 前回の総選挙後に体調を崩され、都内の病院に入院されましたが、昨年の四月には一時復調され、さきがけ時代の仲間との食事会で旺盛な食欲も見せておられました。

 その後、夏の初めから入退院を繰り返されておると聞き、一度お見舞いに行こうと三原先生と話をしていたところでした。そんなやさきの突然の訃報を、私はにわかには信じることはできませんでした。

 翌日、赤坂宿舎をお訪ねすると、先生は静かに眠るように横たわっておられました。奥様の幸子様は、主人は最後まで、俺は必ず復帰すると言っておりましたと話しておられました。

 まだまだ政治家としてやりたいことがあったのだと思います。志半ばに倒れられたことは、まことに痛惜の念にたえません。

 私は、ここに、ありし日の園田博之先生の面影をしのび、皆様の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。

 園田先生は、昭和十七年二月十九日、熊本県天草郡河浦町でお生まれになりました。お父様は、厚生大臣、内閣官房長官、外務大臣、そして衆議院副議長を務められた園田直先生であります。

 河浦町は、天草の下島の南部に位置する、山に囲まれた自然豊かな地域であり、先生はそこで中学生まで伸び伸びと過ごされました。そのころから、新聞を毎日精読され、激動する世界情勢を自分なりに読み解き、理解されていたそうであります。

 都会に出て誤解だとわかったが、自分は神童かと思っていたと、後に当時を思い浮かべながら苦笑されておりました。先生の冷静な分析力と大局に立った識見は、このころに育まれたのでありましょう。

 先生は、その後、千葉県に移られ、創立されたばかりの習志野市立習志野高校に進学、後に強豪となった野球部の創設時のメンバーでもあったと聞いております。習志野高校はことしの選抜にも出場しており、先生はOB会長であったということだと、このことも皆さんに御報告をさせていただきたいというふうに思います。

 大学は日本大学経済学部に進まれ、卒業後は、水産の名門である日魯漁業に入社されました。

 日魯漁業では労働組合の委員長も務められております。当時の日本経済はオイルショックに襲われておりました。銀行管理下に置かれた日魯の経営陣は、倒産を免れるために、工場閉鎖や従業員のリストラという方針を出したそうです。先生は、それだけは何としても避けなければならないと連日の労使交渉に立ち向かわれ、一人の解雇者も出されずに難交渉を乗り切られました。まさに、先生の調整力の片りんをのぞかせた一場面と言えるでしょう。

 昭和五十八年、病に倒れられたお父上のたっての願いに応え、先生は園田直事務所に入られました。お父上が亡くなられたのは、その一年後のことであります。

 後援会からの強い出馬要請を受けた先生は、昭和六十一年七月の総選挙に立候補、見事にトップ当選で初陣を飾られたのであります。以来、連続して当選すること十一回、在職三十二年六カ月の長きに及び、平成二十三年五月には、永年在職議員として栄誉ある表彰を受けられました。

 本院に議席を得てからは、逓信委員会、環境委員会、予算委員会など多くの委員会で理事を務め、各般にわたる国政審議に卓越した調整力を発揮されました。

 また、法務委員長をお務めになられた際には、持ち前の円満な人柄により、公平かつ円滑な委員会運営に尽力されました。

 自由民主党においては、幹事長代理、副幹事長、政務調査会長代理、行政改革推進本部長代理等々を歴任され、諸般にわたる政策の立案、調整などに精力的に取り組んでこられました。

 特に、平成十七年四月、郵政改革関係合同部会で、民営化賛成派と反対派が激しく対立し、出口の見えない議論が連日連夜続いた際、先生は、座長としてどこかで判断して結論を出さないといけないと腹をくくり、座長一任を取りつけたのであります。

 激しく怒号が飛び交う中での決着ではありましたが、何事にも動じない先生の毅然とした姿勢が事態の収拾を可能にしたのだと思います。あのときの先生の姿は神々しくさえありました。

 一方、先生は、長年にわたる議員活動を通じ、一貫して二大保守政党による政治体制を追求されてこられました。

 平成五年四月の政治改革に関する調査特別委員会において、宮沢喜一総理への質問の中で、先生は次のように述べられております。

 国際情勢が変わりました。国内では、自民党と社会党を中心とする野党が緊張感を持って対立した時代もありました。しかし、それは世界のある意味では縮図であったわけで、世界が変わったのであれば日本の政治体制というのは変わるのは当然でありまして、そうじゃなければこれからの日本の、次の世代に向けての豊かで自由な日本を引き継ぐことはできません。自民党の皆さんも、制度改革と同時に、やはり政権党である自民党を活性化させる、こういうことでぜひ御認識いただけたらありがたいと述べられ、日本の政治体制が緊張感を持った政治体制でなければならないと主張されたのであります。

 この質問から二カ月後の平成五年六月、政治改革関連法案の協議が調わず、宮沢内閣不信任決議案が可決されました。

 園田先生や私は、不信任案には反対票を投じましたが、理想の政治体制を追求していくため、武村正義先生ら総勢十名で自民党を離党、新党さきがけを結成しました。

 一方、不信任決議案に賛成票を投じた自民党議員からも離党者があり、政界再編への大きな流れが生まれました。そして、その後の総選挙を経て、非自民連立政権への動きが加速化し、細川政権が誕生するのであります。

 細川連立政権下、先生は新党さきがけの代表幹事として連立与党と官邸の間の仲裁役を担われました。当時の日本新党幹部をして、連立と官邸が何とかもっているのは園田氏によるところが大きいとも言わしめたものであります。

 平成六年、自民、社会、さきがけの連立による村山内閣が誕生した際には、先生は総理の強い要請により、内閣官房副長官に就任されました。

 村山内閣では、阪神・淡路大震災による被災地の復旧復興、サリン等を取り締まる特別立法の制定など難題が続出しましたが、先生は、事務担当の副長官との連携のもと、政府内や与野党間の調整に奔走され、まさに黒子として連立政権を支えられたのであります。

 当時、そんな先生に、村山富市総理は絶大なる信頼を寄せておられました。

 自社さ連立政権下、少人数ながら与党の一員として活動を続けてきたさきがけでしたが、党勢拡大は思うように進まず、平成十一年、解散に追い込まれ、先生は政界再編の意欲を秘めつつ、自民党に復党されるのであります。

 復党後、先生は、党の政調会長代理のポストを得て、盟友与謝野馨先生を党の財政改革研究会の会長に担ぎ出されました。この研究会では、社会保障財源を賄うために、消費税率を一〇%程度まで引き上げる提言を取りまとめました。提言の趣旨は、平成二十一年度の税制改正法の附則に盛り込まれ、その後の社会保障と税の一体改革の実現へとつながっていくのであります。

 先生のお通夜の席で、私の両隣が谷垣元総裁と野田元総理でありましたが、お二人は、園田さんがいたから三党合意もできたんだよなあと感慨深げに話しておられました。

 民主、自民、公明の三党交渉の裏で、当時、たちあがれ日本に所属しておられた先生でありますが、幅広い人脈を駆使し、各党有力者に対して水面下で粘り強い説得を繰り返しておられたのであります。

 まさに先生は、鋭い直観力を有し、人を説得して、正しいと思った政策を形にできる方であったのです。

 こうした国政の中核での御活躍の傍ら、先生は初当選以来一貫して地元熊本県の水俣病被害者の救済にも精力的に取り組まれました。

 官房副長官在任の平成七年には、与党三党により、長らく続く水俣病紛争を終結させる新たな救済案がまとめられ、関係当事者間の合意もなされました。

 これにより、問題は一旦終息したかに見られましたが、平成十六年の関西訴訟において損害賠償の対象者拡大を認める最高裁判決が出され、それ以降、認定申請者が急増いたします。そのため、先生は、再度政治的解決を目指されるのであります。

 平成十九年十月、先生は、与党のプロジェクトチームの座長として、提訴した人たちの気持ちを酌み、更に幅広い救済案を取りまとめられました。この案を実行する法律が平成二十一年に成立し、救済の拡大を求める多くの人々の声に応える制度ができ上がりました。

 被害者の声に真摯に耳を傾け、どうすればその声に応えられるかを考え抜き、粘り強い交渉を重ねて、政治決着によるぎりぎりの公平な救済案をまとめられたのであります。まさに、水俣病の問題解決は先生なくしては実現し得なかったと言っても過言ではありません。(拍手)

 園田先生は、公害問題から社会保障、財政、金融、法務まで、幅広く政策に通じておられる政治家でありました。また、表舞台で目立つことを好まず、手柄は人に譲り、いつも仲間のことを気遣っておられる方でした。数度にわたり入閣の要請を断られたとも言われております。

 飾らない気さくな人柄で、与野党を問わず、幅広い議員の方々と交流がありました。誰の話もバランスよく聞かれる一方で、本質を見きわめられる洞察力があり、広く慕われると同時に、多くの尊敬を集めた政治家でありました。

 内外ともに政策課題が山積している今の日本。我が国の政界は、識見に富む先生の力をまだまだ必要としておりました。まことに残念でなりません。

 しかし、先生の思いや理念は多くの政治家の心の中に生き続け、先生を慕っていた多くの後輩たちが日本の未来を切り開く道しるべとしていくことでしょう。

 ここに、謹んで園田博之先生の生前の御功績をたたえ、その人となりをしのび、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 御報告することがあります。

 議員北川知克君は、昨年十二月二十六日逝去されました。痛惜の念にたえません。謹んで御冥福をお祈りいたします。

 北川知克君に対する弔詞は、議長において去る二十四日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力され さきに環境委員長の要職にあたられた議員正四位旭日重光章 北川知克君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

    ―――――――――――――

 故議員北川知克君に対する追悼演説

議長(大島理森君) この際、弔意を表するため、伊藤信太郎君から発言を求められております。これを許します。伊藤信太郎君。

    〔伊藤信太郎君登壇〕

伊藤信太郎君 ただいま大島議長から御報告がありましたとおり、本院議員北川知克先生は、去る平成三十年十二月二十六日、六十七歳で御逝去されました。

 昨年十二月十日、第百九十七回臨時国会の会期終了日に先生はこの議場にいらっしゃったにもかかわらず、今はそのお姿を拝見することはできません。政治家として一層の御活躍が期待されていたやさきの、思いも寄らぬ訃報に、ただただ言葉を失うとともに、今もって信じがたい思いであります。ましてや、御遺族皆様のお悲しみはいかばかりかと察するに余りあり、お慰めの言葉もございません。

 私は、ここに、皆様の御同意を得て、議員一同を代表し、謹んで哀悼の言葉を申し述べたいと存じます。

 北川先生は、昭和二十六年十一月八日、大阪府寝屋川市において、衆議院議員六期、環境庁長官を務められた父石松先生と母愛子さんの御次男としてお生まれになりました。北川石松先生と私の父伊藤宗一郎は、同じ政治グループに属し、長年の盟友でした。北川家と伊藤家は親子二代の深い関係にございます。

 先生は、地元の中学校から関西大学第一高等学校を経て、父君、そして現寝屋川市長の兄君と同じ関西大学に進学されました。学生時代から地理や歴史に興味を持たれ、夏、冬問わず、スポーツを通じて自然との触れ合いを大切にしていらしたと伺っております。

 先生は、昭和四十九年に関西大学法学部法律学科を卒業され、その後、衆議院議員であった父君の秘書につかれ、約十七年もの間、父君をお支えになり、政治の世界での経験を積まれました。先生は、政治家である父君のお姿から、誰かのために働くということの意義を痛感されたと聞いております。

 先生は、平成二年、父君の環境庁長官就任の際、秘書官につかれました。それは、地球環境問題が国際的な政治のテーマとなり始め、日本でも環境問題が大きく取り扱われ始めた時代でありました。そのような中、環境庁長官秘書官として、長良川河口堰建設計画をめぐる問題や水俣病国家賠償請求訴訟の対応に当たる父君を支え続け、現場を視察し、人々の声に耳を傾けました。

 このような経験を通じて、環境問題の重要性を認識し、よりよい環境創造のために自分が率先して行動しなくてはならないという強い思いを持たれたのであります。

 平成八年、父君が政界を引退。翌年、先生は、父君の志を引き継ぎ、国政の舞台を目指すことを決断されます。

 平成十二年、第四十二回衆議院議員総選挙への立候補が先生の国政への初挑戦となりました。このときは、次点、惜敗に終わりました。しかし、先生は決してくじけることなく地道な活動を続けられたのであります。

 最初の挑戦から三年後、国政への再挑戦のため準備を本格化させたやさきの平成十五年七月、先生のもとに、突如、近畿ブロック比例代表繰上げ当選の知らせが届いたのです。

 「生まれ来て受け拓かれし道ありき道つなげしは人の道なり」、これは、短歌を詠むのが御趣味であった先生が初当選のときの心境を詠まれた歌です。こうして先生は信念を持って政治家としての第一歩をスタートさせたのであります。

 私たちは補選と繰上げで初当選した議員同士の親睦のため「ほくの会」を立ち上げ、先生にも会長を引き受けていただいた時期があります。先生おなじみのおでん屋での「ほくの会」で政治の未来を語り合ったことが、まるできのうのことのように感じられます。

 議席を得られてからの先生は、厚生労働、経済産業、環境、財務金融、青少年、郵政民営化等の各委員会の委員又は理事として、卓越した識見と行動力を発揮されました。

 とりわけ、環境問題に熱意を傾けられ、環境委員会に長く籍を置く中で環境委員長まで務められたのであります。さらに、環境委員会の理事として、誠実なお人柄と環境問題に対する情熱を持って各党との調整、交渉に当たられ、生物多様性、地球温暖化問題、生活環境に関連した諸問題に粘り強く取り組まれました。

 特に、最近、マイクロプラスチックの海洋流出が問題となっている中、昨年の第百九十六回通常国会で、議員立法として初めてこの問題を取り上げた海岸漂着物処理推進法改正案の成立に向けて、与野党の調整など大変な御尽力をされました。

 さらに、気候変動の抑制に関するパリ協定の具体策の検討状況を確認するため、平成二十八年の国連気候変動枠組み条約締約国会議、COP22と翌年のCOP23の両年における議員会議の日本国会代表団の団長として参加され、環境問題についての日本の現状認識、気候変動対策における立法化の取組について発言されるとともに、各国の議員団に対して地球規模で取り組むべき課題について強力に発信されたのであります。

 党にあっては、文部科学副部会長、国会対策副委員長、環境部会長、副幹事長、広報戦略局長、環境・温暖化対策調査会長を歴任されるなど、幅広い分野を担われました。

 特に、環境・温暖化対策調査会長として、気候変動の影響の適応策の法制化について、議論を重ねて党の見解を取りまとめて環境省に提言され、環境省はその提言をベースにした法案を策定することとなりました。法案は気候変動適応法案として昨年の通常国会に提出され、成立したのであります。まさにこのことは、先生が気候変動適応対策に大きな道筋をつけられたことであると言えましょう。

 平成十八年九月二十七日、先生は第一次安倍内閣の環境大臣政務官に就任されました。環境問題の解決には、一人一人の意識改革が必要との観点から、環境教育が重要であると考えられた先生は、環境教育に関する日中韓の環境教育シンポジウムに積極的に参加されるとともに、みずから横須賀市の小学校に出向いて、子供たちに環境教育特別授業を行うなど、将来を担う子供たちが地球温暖化等の環境問題を正しく理解し、環境に配慮した行動に取り組むよう、地道に努力を積み重ねられたのであります。

 その後、平成二十五年九月三十日に第二次安倍内閣において環境副大臣に就任後、その翌日深夜に日本を出発、ポーランドで開会された国連気候変動枠組み条約締約国会議閣僚級準備会合、プレCOP19に日本政府代表として出席し、環境先進国として温暖化問題に積極的に取り組んでいくという力強いメッセージを発しつつ、平成二十七年のCOP21で採択され、世界の大半の国が受け入れることとなるパリ協定に向けた事前交渉にかかわられました。そして、帰国後すぐに、熊本市及び水俣市で開催された水銀に関する水俣条約外交会議に出席するなど、就任早々、世界を駆けめぐっての御活躍がありました。

 さらに、地球温暖化対策に向け、喜びを分かち合うという意味のファン・ツー・シェア、「みんなの知恵で、低炭素社会へ。」という標語を積極的に推進されました。先生は、資源や幸せをひとり占めするのではなく、分かち合いの心が大切だと考えられ、環境への必要性を国民に訴えかける国民運動を展開すべく、全力で邁進されたのであります。

 先生は常に弱い立場の方々に心を寄せられておりました。水俣病対策では、しばしば現地に赴き、みずから進んで患者の方々と面会されました。厳しいことを言われることもありましたが、先生はその言葉に謙虚に耳を傾けられていました。副大臣をやめられた後も水俣病犠牲者慰霊式に出席され、患者の方々への思いを忘れることは決してありませんでした。

 環境問題は、先生のライフワークでした。先生は、水俣を始めとする国内問題、地球温暖化や海洋汚染等の国際的問題を、今何をすべきか、どうすれば後世に美しい地球を残せるのかという視点で考えられておりました。また、教育と環境を一体的に捉え、次世代の育成に向けた環境教育などの地道な活動を長年こつこつと積み重ねられてきたのであります。先生は、富士山清掃活動にも一般募集として参加して汗を流されていたとのことです。このように、個人でできるリサイクルや清掃活動にも日常から積極的に参加し、実行する人でもありました。これまでの先生の地道で堅実な取組が、いつの日か、必ず大きな成果となって花開くことを確信しております。

 先生は、世界全体の未来を考え、遠い将来の世代の人々を見据えた大きな理念を持った政治家であったと言えるでしょう。

 先生は、「志曲げず挫けず貫けば必ず拓く一筋の道」とみずから詠まれたとおり、国益を考え、地球に貢献するという大きな志を持ち、地道に政策を練り、揺るぎない決意を持って行動を起こし、諦めることなく粘り強く、大きな理想に向かって愚直に取り組まれた政治家でありました。

 先生は、ことし、御地元の大阪で開催されるG20サミットで提案される環境政策をよりよいものにするべく、みずから取り組んでいくことに強い意欲を持ち、そして、来年開催される東京オリンピック・パラリンピック大会を、復興に加えて環境五輪として、環境という観点から、日本のすばらしさや地球温暖化などの環境問題に対する積極的な姿勢を世界に示すべく、強い思いを述べられていました。

 先生は、常に冷静沈着、温厚にして公平無私、まさに政治家としても人間としても範となる存在でした。しかし、まさにこれからだというときに、先生は忽然と私たちの前から去ってしまわれました。もう先生のお知恵をお聞きすることも、先生のお力を頼ることもかないません。

 しかし、私たちはここでとどまっているわけにはいきません。先生の志、思いを受け継いでいくことが、残された私たちの使命と考え、全力を尽くしてまいりますことをお誓い申し上げます。

 ここに、ありし日の北川知克先生の面影をしのぶとともに、その御功績をたたえ、心から御冥福をお祈りして、追悼の言葉といたします。(拍手)

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    石田 真敏君

       法務大臣    山下 貴司君

       外務大臣    河野 太郎君

       文部科学大臣  柴山 昌彦君

       厚生労働大臣  根本  匠君

       農林水産大臣  吉川 貴盛君

       経済産業大臣  世耕 弘成君

       国土交通大臣  石井 啓一君

       環境大臣    原田 義昭君

       防衛大臣    岩屋  毅君

       国務大臣    片山さつき君

       国務大臣    櫻田 義孝君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    平井 卓也君

       国務大臣    宮腰 光寛君

       国務大臣    茂木 敏充君

       国務大臣    山本 順三君

       国務大臣    渡辺 博道君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 西村 康稔君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 横畠 裕介君


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