衆議院

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第11号 平成31年3月12日(火曜日)

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平成三十一年三月十二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第六号

  平成三十一年三月十二日

    午後一時開議

 第一 警察法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 警察法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 警察法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、警察法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長牧原秀樹君。

    ―――――――――――――

 警察法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔牧原秀樹君登壇〕

牧原秀樹君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、警察運営の効率化を図るため、警察庁の組織について、警備局に警備運用部を設置するとともに、中国管区警察局及び四国管区警察局を統合して中国四国管区警察局を設置する等の措置を講ずるものであります。

 本案は、去る三月五日本委員会に付託され、翌六日山本国家公安委員会委員長から提案理由の説明を聴取いたしました。八日に質疑を行い、質疑終局後、討論、採決の結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。安全保障委員長岸信夫君。

    ―――――――――――――

 特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔岸信夫君登壇〕

岸信夫君 ただいま議題となりました法律案につきまして、安全保障委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、現下の厳しい財政状況のもとで防衛力の計画的な整備を引き続き実施していく必要性に鑑み、特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の有効期限を五年間延長するものであります。

 本案は、去る七日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、同日岩屋防衛大臣から提案理由の説明を聴取した後、八日から質疑に入り、同日に質疑を終局し、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 討論の通告があります。順次これを許します。青柳陽一郎君。

    〔青柳陽一郎君登壇〕

青柳陽一郎君 立憲民主党の青柳陽一郎です。

 私は、立憲民主党・無所属フォーラムを代表して、特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、反対せざるを得ないという立場で討論を行います。(拍手)

 死者一万五千八百九十七人、行方不明者二千五百三十三人。あの東日本大震災から八年が経過いたしました。大災害で自宅を失い故郷に帰れない避難生活者は今なお五万人を超え、震災の爪跡はいまだに消えていません。

 犠牲になられた方々の御冥福を改めてお祈りするとともに、一日でも早く、被災された方々の穏やかな暮らしが戻ることを願います。

 あのとき、危険を顧みず被災地の復興に全力で取り組んでくれた自衛隊のあの雄姿は、今も多くの国民の目に焼きついているのではないでしょうか。きょうもあしたもあさっても、国民の生命財産、領土、領海、領空を守り抜くために日夜最前線で任務に当たってくれている自衛隊員の皆様に、改めて敬意と感謝を表します。

 しかし、その自衛隊を所管する安倍内閣は、昨年来、公文書の改ざん、データの隠蔽、捏造、虚偽答弁、そして今般の統計不正によるアベノミクス偽装と、でたらめな政権運営、国会運営が続いていると言わざるを得ません。

 こうした政権が主導してつくる防衛大綱、中期防、防衛予算、そして本日の長期契約法による防衛装備品の調達等について、我々国会議員は、与えられた責務である行政監視機能を十分に果たしていかなければなりません。総理大臣だから、提出する法律の説明は全く正しいという政権ほど、きちんとチェックしていかなければならないのです。

 今日、我が国は非常に厳しい財政事情であり、その予算は公平公正、透明に、厳しく査定されなければなりません。この厳しい財政事情の中で、予算に聖域はありません。それは、安全保障分野、たとえ防衛費であっても、政権の都合でなし崩しに増額していくことは許されません。民主主義国家においては、防衛費も常に国民から問われているのです。

 平成三十一年度の防衛費は五兆二千五百七十四億円で五年連続過去最大を更新、会計検査院から問題をたびたび指摘されているFMSでの調達額も、安倍政権前の千三百八十億円からおよそ五倍の七千十三億円で、こちらも過去最大を更新しています。国民の理解を得る努力、国民が納得する説明が求められています。

 我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさと不確実性が格段に速いスピードで増している、安倍政権のもとで五年も前倒しして策定された防衛大綱に明記された政権の共通認識です。その方針に沿って、事実上の空母や長距離巡航ミサイルを配備し、敵基地攻撃能力を保有しながら、言いかえや書きかえにより、正面から全く説明しようとしない。また、イージス・アショアの整備費千七百五十七億円、F35六機購入費六百八十一億円と、米国兵器の購入に拍車がかかっています。国会の議論において、その妥当性や客観的な費用効果など、納得のいく説明は残念ながらありません。

 一方で、総理は、平和安全法制の成立により日米同盟はかつてなく強固になった、中国との関係は完全に正常な軌道になった、日ロ関係も、トップの信頼関係を誇示しつつ、平和条約締結を自身の手で行うとし、さらに、米朝首脳会談を全面的に支持し、次は自分自身が金委員長と向き合うと。完全に自画自賛ですけれども、七年目に突入した長期政権に具体的成果は乏しいと言わざるを得ません。外交分野で誇示していることと防衛分野で進めていることに一貫した方針があるのか、甚だ疑問が残ります。

 こうした状況で、私たち立憲民主党は、今般提案のありました長期契約法について、冷静かつ真摯な、真剣な法案審査を続けてきましたが、岩屋防衛大臣始め政府側の答弁は、全くもって説得力がありませんでした。

 以下、私たちの問題意識を具体的に申し述べます。

 第一に、長期契約法では、調達コストの縮減、調達品の安定供給、安定調達、国内防衛産業の撤退防止と生産技術基盤維持、国内産業への恩恵が立法事実とされていますが、今回、法律を改正して調達する装備品は、縮減見込み額の根拠や積算基準が明確とは言えず、防衛省の説明のまとめ買いによるコスト縮減効果が曖昧です。また、縮減前の比較対象が単年度ごとの契約との比較であり、五年超の長期にわたる契約の必要性を示すには適当ではありません。縮減効果の積算根拠は、防衛大臣自身も明確に説明できませんでした。

 更に問題は、長期契約法施行前と施行後でコストの比較ができるSH60Kについて、施行前である平成二十六年の一機当たり調達額は五十九億円、二十八年の施行後は六十億円と、長期契約法適用前の調達額の方が低いという驚きの事実も明らかになりました。

 第二に、FMSでの調達は、国内産業でできない、自前で調達できない米国の最新兵器をやむを得ず購入する場合に限るべきで、安易なFMS調達はやめるべきです。

 そもそもFMSは、納期や価格が米国次第で、安定供給、安定調達も担保できず、長期契約での調達にはなじみません。また、国内産業に恩恵はなく、立法事実との整合性がとれません。長期契約法による防衛装備品の調達はいたずらに適用してはいけないというのは、与野党を問わず、共通の認識ではないでしょうか。

 第三に、長期での装備品の調達は、装備品の陳腐化、後年度負担の膨張と財政硬直化リスクを否定できないことは、これは政府も認めています。

 実際に、平成二十七年、当時の中谷防衛大臣は、国会答弁で、現在の規定が、余りに長い年限を認めると、その後の財政状況に適応せず、財政硬直化を招くおそれがあるために適当ではないとの考えから年限を設けたものとされておりまして、この基本的考え方は制定時においても同様であったと答弁しています。この答弁は、財政法の国庫債務負担行為により支出すべき年限を五カ年以内とする規定について聞かれたもので、その点からも、今回の改正はあり得ません。

 第四に、長期契約法の効果の検証が終わっていないということです。

 当時の石川大臣政務官は、国会答弁で、本法律案が期限を迎える平成三十年度末までの時点において、長期契約による効率化等の効果の評価を私どもとして総括をしたい、こう明確に答弁をしておりますが、この効果の検証や総括はいまだ提出されていません。

 検証、評価、総括のいずれもない今の段階で、現行法を五年延長し、十年の長期装備品調達を続けるには、メリットよりデメリット、安定よりリスクの方が大きいのではないでしょうか。

 政府がみずから防衛大綱で示したのは、安保環境の不確実性のスピードが増しているという認識です。こうした政府の認識にたとえ立ったとしても、そして、委員会審査で明らかになった、今申し上げたこれらの事実を踏まえれば、今回の長期契約法の改正に賛成することはできません。

 以上申し上げて、反対討論といたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 串田誠一君。

    〔串田誠一君登壇〕

串田誠一君 日本維新の会の串田誠一です。

 私は、特定防衛調達に係る国庫債務負担行為により支出すべき年限に関する特別措置法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。(拍手)

 支出の取決めに関し、国会のあり方からすれば、単年度で完了することが原則であり、防衛装備品についてもこの原則が適用されることは当然であります。安易に長期契約を締結することは、本来の国民から信託を受けた国会の予算決定権について将来の国会の権限を制限するものであり、許されるものではありません。

 一方、装備品が豊富な在庫を対象とするものではなく、企業としても受注製造をしなければならないものがあり、場合によっては発注しても生産が不可能になる可能性もあります。その装備品が調達できないときには、我が国の防衛にも支障を来すことが考えられ、ゆゆしき事態になることも考慮しなければなりません。

 企業も、ある程度まとまった発注があれば、製造部品の調達も計画的にでき、生産コストを下げることができます。しかしながら、これを安易に認めると、国内産業は開発意欲を失い、今後、海外からの調達ができなくなったときには、ゆゆしき事態になることも考えられます。

 長期契約が必要な受注生産のものであっても、できるだけ国内産業を利用するよう努めることは、要望しておきたいと思います。

 さて、今回の主に発注するE2Dは、早期警戒機として定評があります。一方で、国内産業によって同程度のものを調達するめどは全く立っておらず、開発意欲を失わせることにはなりません。

 また、長期契約をしたとしても、その間に装備品の陳腐化が起こる可能性が低く、一方で、バージョンアップを期待されるものであります。

 安易な長期契約は厳に慎まなければなりませんが、以上の観点から、我が党としては本法案に対し賛成の立場から討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 斉木武志君。

    〔斉木武志君登壇〕

斉木武志君 国民民主党の斉木武志です。

 私は、会派を代表して、本法案、いわゆる長期契約法について、反対の立場で討論を行います。(拍手)

 反対する第一の理由は、防衛費の無秩序な増加を招きかねない点です。

 安倍総理は、防衛予算について、三十年度第二次補正予算で過去最大の約四千億円を計上した上で、三十一年度本予算では約五兆円を計上しました。三十一年度の予算ではGDP比一%以下におさまるよう見せかけていますが、実際は、予算の前倒しである三十年度補正と合わせると、一%を大きく上回っています。

 さらに、岩屋大臣が策定した中期防では、イージス・アショアなど極めて高額な装備品の購入を見込んでおり、五年の総額が過去最高の二十七兆円超えとなっています。一年に直せば五・四兆円で、過去最大の本年度防衛省予算を既に上回っています。毎年の防衛省の予算は、二・二兆円超が人件費、糧食費となっており、合わせて七・六兆円となりますが、一体どこにそんな財源があるんでしょうか。

 政府は、この法案が装備品の縮減効果と防衛産業の維持、育成に資すると言っていますが、実際は、高額装備品の借金支払いの期間を延ばし、毎年の支払いを小さくすることで、今後の爆買いを長期にわたって支えていくことに狙いがあるとしか見えません。

 既に、三十一年度の新規後年度負担は過去最大の二・四兆円となっており、防衛調達の後年度負担残高は総額で五・三六兆円と、既に本年度防衛予算の総額を上回っています。

 借金返しに相当する歳出化経費についても、来年度は五千億円ふえて二兆三千五百六十二億円となる見込みです。

 過去最大の後年度負担額の増加は、防衛費増大の既定路線化を招きます。厳しい財政状況のもと、防衛費だけが青天井という例外扱いは許されません。

 また、後年度負担は、将来の予算を縛るもので、予算の硬直化につながります。

 日本を取り巻く安全保障環境は目まぐるしく変わっており、著しく後塵を拝しているサイバー領域、宇宙領域などの防衛能力強化に資源を集中したり、ゲームチェンジャーのような武器が開発された場合、多くの資源を振り向ける必要も発生します。

 しかし、十年先まで財源の使い道を縛る硬直化した予算では、将来の変化に対応した、柔軟で効果的な対策は打てません。これ以上長期契約を増加させるのではなく、後年度負担を抑制する方針を直ちに示すべきです。

 さらに、縮減効果も疑問です。

 例えば、二十八年度に長期契約法で六年契約を行ったEC225LPについては、単年度ごとの契約を積み上げた五十九億円という数字と六年契約での総額三十三億円とを比較して、縮減額は二十六億円だと説明していますが、これは恣意的な数字です。

 政府は、二十四年度にもEC225LPについて五年契約をしており、その際は二十九億円で予算計上していました。もし比較するのであれば、この五年契約の実績額と六年契約の金額を比較すべきです。

 長期契約法の規定する縮減額公表の趣旨は、財政法が認める五年を超える契約がなぜ特措法を制定してまで必要なのか、その縮減効果を知るためです。審議を通じて、この比較方法は不適切であり、見直すようただしましたが、大臣は、単年度契約の合計と比較する方法で、縮減効果の公表義務を果たしていると強弁しています。子供だましの答弁を繰り返す大臣の資質には疑問を持たざるを得ません。

 さらに、三十一年度防衛予算では、この長期契約法の対象として、FMSで取得する早期警戒機E2D九機を含めています。

 そもそも、FMS自体が全て見積りです。価格がアメリカの言い値で膨らむことは必至で、納期も先方の言いなりです。長期契約とは名ばかりで、実際のところ、コストも納期も何らピンどめすることができないやり方です。

 いかにしてコストや納期をコントロールするのかという問いに対して、大臣の答弁は、アメリカ海軍との間で最大限努力することを確認、シャナハン国防長官との会談で協力を確認という、口約束とも言えない、説得力に欠ける答弁でした。

 こんな状況で、長期契約だ、三百二十五億円の縮減効果が出るんだと主張するのは滑稽です。FMS調達は長期契約法にはなじまず、対象に加えるべきではありません。

 また、目的の一つに国内防衛産業の保護も挙げていますが、将来にわたってアメリカからのFMSに我が国の財源を使い続けることは、逆に日本の防衛産業の衰退を招きます。FMS調達を長期契約法の対象にすることは、この点からも不適切です。

 十年前、FMS調達は六百四十五億円でしたが、本年度の予算では七千億円を超えています。さらに、後年度負担に占めるFMSの割合も、四・八%から二五%超にまで、安倍政権になって急伸しました。日本の防衛予算はアメリカに対する借金漬けになり、今後もFMSの支払いはふえ、我が国の防衛産業はその分縮小していくと懸念されます。

 岩屋大臣は、重要なことは、我が国がみずからを守る体制を主体的、自主的な努力により抜本的に強化することだと答弁されておられました。しかし、大臣が策定された中期防からは、その道筋が全く見えてきません。防衛政策のアメリカへの依存、一体化が進み、日本の主体性、自主性の発揮がますます困難になることは必至です。

 安倍総理は、トランプ大統領と会うたびに、武器購入というお土産を持参しています。

 総理は、FMS調達の決定を、国会や国民に伝える前にトランプ大統領に耳打ちされました。日本政府がF35を追加購入することを、ブエノスアイレスでの日米会談後、大統領の発言で我々は初めて知りました。政府は、新たな購入が決定した事実はないと否定しましたが、結局、直後に中期防衛計画を閣議決定し、百五機の追加調達を閣議了承しました。

 イージス・アショアも同じです。二〇一七年に、総理とゴルフを楽しんだ後、トランプ大統領は、日本が膨大な兵器を追加で買うと明言しました。そして、総理は直後の閣議で、中期防にもなかったイージス・アショアの導入を、国会での議論も経ずに決定してしまいました。

 イージス・アショアの必要性や有効性、百五機というF35の算定根拠に対しても疑問を持たざるを得ない姿勢です。

 以上のように、本法案で防衛費の縮減効果が認められず、逆に、我が国の防衛産業の衰退、日本の防衛政策の自主性の低下、高額装備品の無責任な爆買いにつながることが予測されるため、我々は、本法案の延長に反対するものであります。

 厳しい財政状況の中、効率的で効果的な防衛体制を築くため、安倍政権の一方的な防衛費の増加、FMSの増加に今後も厳しく対峙していきます。

 最後に、トランプ大統領は、総理が大統領をノーベル平和賞に推薦したことを世界に公表しました。五ページにわたる美しい手紙だったとのことですが、これは我が国の国益を損ないました。

 安倍総理は、戦後日本外交の総決算を進めるとおっしゃっていますが、外交的な成果はほとんどないまま、安全保障環境は厳しくなる一方です。総理は、安保法制の改正も含め、覚悟を決めてアメリカへの依存を高め、一体化を進めておられるのでしょうが、これが安倍総理が目指す戦後総決算の方向性なのでしょうか。

 日本の長い歴史と文化、そして国民の努力で築き上げてきた国際社会からの信頼や尊敬の念。かけがえのない資産を壊さぬよう御忠告し、反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 重徳和彦君。

    〔重徳和彦君登壇〕

重徳和彦君 社会保障を立て直す国民会議の重徳和彦です。(拍手)

 会派を代表して、長期契約法に賛成の立場から討論いたしますが、何点か指摘しておきます。

 まず、長期契約法による経費の縮減効果についてです。

 岩屋大臣は、適切に算定をしたと答弁されていますが、野党各党から指摘があるとおり、積算根拠の曖昧さへの疑問が審議の中で十分拭い切れませんでした。

 そもそも、防衛装備品の価格決定は原価計算方式になっており、その価格水準の適正化について、防衛省は、製造コストにおける一般管理販売費などの間接経費も含め、各企業に対し、不断に改善を求めていくべきです。

 次に、FMSについてです。

 FMS調達によるF35A戦闘機の導入は、民主党政権下で判断されたものですから、当時政権にあった野党議員も否定できないはずですが、その金額は現政権になってから急増し、平成三十一年度予算は七千億円を超える中で、支払い額、納期が不透明なFMS調達に十年先までの長期契約を適用することは、我が国の財政の見通しに支障を来すことになりかねないという不安感も否定できません。

 また、長期契約法の趣旨の一つは、調達の安定化と効率化を通じて国内産業を育成することにもあるはずなのに、このFMS偏重の傾向が続けば、これまで歯を食いしばって防衛装備品の製造を続けてきた国内企業が撤退し、海外のライセンスや調達への依存度がますます高まってしまいかねません。

 以上を指摘した上で、社会保障を立て直す国民会議としては、次の点を提案します。

 まず、現行中期防における長期契約法の適用対象は、機種ベースで一三・二%、金額ベースで七・七%と限定的であると言えますが、今後も、対象となる装備品を適切に選択した上で、間接経費などの積算根拠を含め、その効果についても適切に評価するべきです。

 次に、FMS調達における米国内と対日本の売り値の差について要因分析を徹底的に行い、米国から割高な買物を強いられないよう、最大限の努力をすべきです。

 その上で、FMS調達への依存度を抑制するため、研究開発への投資をふやし、F2後継機などの開発を国内企業が主導できるよう、最新技術を育てていくべきです。

 さらに、国内の防衛産業の再編、強化を進めるため、唯一の発注者である防衛省が、防衛産業のビジョンを示しながら、各企業との対話を積極的に行うべきです。

 最後に、技術の国外流出を防ぎ、日本国内の技術を保持することをもって、経済上も安全保障上も国際的地位を高める技術安全保障を国家戦略として進めるべきです。

 以上を申し上げ、賛成討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) 宮本徹君。

    〔宮本徹君登壇〕

宮本徹君 日本共産党の宮本徹です。

 私は、日本共産党を代表し、防衛調達特措法一部改正案に反対の討論を行います。(拍手)

 反対理由の第一は、法案の定める長期契約が財政に対する民主的統制を掘り崩すものだからであります。

 日本の財政は、予算の単年度主義が原則です。国庫債務負担行為は、その例外として、次年度以降にわたる債務契約を行う権限を国会の議決により政府に付与するものであり、安易に拡大されることがあってはなりません。

 そもそも、財政法の制定当時、国庫債務負担行為の年限が三年とされたことは、国会議員の任期を踏まえてのことです。それが理由の一つであったことは、麻生財務大臣も本会議での私の質問に認めました。

 にもかかわらず、それを、五年はおろか十年にまで延長し、将来の軍事費を先取りすることは、国会の予算審議権を侵害し、憲法の定める財政民主主義に真っ向から反するものであります。

 第二は、長期契約を含む防衛装備の大量調達が財政の硬直化を招いているからであります。

 政府は、現行法を審議した四年前、財政の硬直化を招くことがないように実施すると説明しましたが、現実には、兵器調達に伴う後年度負担が急増し、補正予算へのツケ回しが常態化する、極めて深刻な事態に立ち至っています。政府の責任は重大であります。

 ところが、政府は、みずからの責任には頬かむりし、昨年末、史上最大の軍拡計画を閣議決定しました。そのもとで長期契約を継続し、それによる縮減額も原資にして、イージス・アショアやF35戦闘機などの米国製兵器を大量購入しようとしているのであります。

 しかも、来年度からは、価格も納期も米国次第という仕組みは変わらないことを認めながら、長期契約によるFMS調達に踏み出そうとしております。

 これらは財政のさらなる硬直化を招き、国民生活の関連予算を圧迫することは明らかであり、到底許されるものではありません。

 憲法に財政民主主義の原則が定められたのは、過去の侵略戦争で、戦費調達のために大量の国債を発行するなどし、国家財政と国民生活を破綻させた痛苦の経験があるからです。政府は、その歴史の教訓こそ思い起こすべきであります。

 以上を指摘し、私の反対討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

議長(大島理森君) これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣宮腰光寛君。

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) ただいま議題となりました子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国における少子高齢化という国難に正面から取り組むため、消費税率の引上げによる財源を活用し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと転換していくこととしております。

 そうした中で、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性に鑑み、子育てを行う家庭の経済的負担の軽減を図るという少子化対策の観点から、幼児教育、保育の無償化の取組を加速することとしており、市町村の確認を受けた施設等の利用に関し、新たな給付制度を創設する等の措置を講ずる必要があります。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、子育てのための施設等利用給付を創設し、その支給に係る施設等として、子どものための教育・保育給付の対象外の幼稚園、認可外保育施設等を市町村が確認するものとしております。

 第二に、市町村が認定した三歳から五歳までの子供又はゼロ歳から二歳までの住民税非課税世帯の子供が対象施設等を利用した際に要した費用について、その保護者に対し、施設等利用費を支給するものとしております。

 第三に、施設等利用費の支給に要する費用は、原則として、市町村が支弁することを基本とし、国はその二分の一を、都道府県はその四分の一を負担するものとしております。なお、平成三十一年度に限り、都道府県及び市町村の負担相当分について、全額国費で補填する措置を講ずるものとしております。

 最後に、この法律案は、一部の規定を除き、平成三十一年十月一日から施行するものとしており、これに伴う必要な経過措置について定めるとともに、所要の規定の整備を行うものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。牧島かれん君。

    〔牧島かれん君登壇〕

牧島かれん君 自由民主党の牧島かれんです。(拍手)

 昨日で、東日本大震災から八年を迎えました。改めて哀悼の誠をささげますとともに、引き続き、力を合わせ復興に取り組んでまいりたいと思います。

 それでは、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。

 子供は国の宝といいながら、これまで効果的な施策が十分ではなかったように思います。いま一度、国民全体で子供を育てるという意識を共有することが大切です。

 我が国が直面する最大の課題の一つが少子高齢化です。昨年十二月に公表された出生数は過去最少の九十二万一千人となっており、三年連続で百万人を割っているのが現実です。

 私は、一人一人にさまざまな生き方があると考えており、日本は、それぞれの価値観を尊重する、多様性のある社会であってほしいと願っています。その上で、子供を産みたい、育てたいと願っている方々の希望がかなうようにするには、政治がどのような責任を果たすべきなのかを考えなければなりません。

 これまでも、希望出生率一・八を実現するための調査や議論が積み重ねられてきました。

 少子化にはいろいろな要因が考えられますが、国立社会保障・人口問題研究所が二〇一五年に発表した調査結果によると、二十代、三十代の若い世代に理想の子供の数を持たない理由を聞いたところ、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからが最大の理由となっていました。ほかの調査結果からも、教育費への支援を求める声が多いことが示されており、子育てや教育に係る費用の負担が重いことが我が国の少子化問題の一因になっていると考えられます。

 少子化を克服するには、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入することで、希望する方が子供を産み育てやすい国へと転換させていかなければなりません。

 幼児期の教育は、知識などの認知能力だけではなく、根気強さ、注意深さ、意欲などの非認知能力の育成においても大きな役割を果たしていることが知られています。私も、地元で幼稚園児の音楽会や保育園児のおさらい会を見せていただくたびに、子供が持っている大きな潜在力に改めて気づかされます。幼児教育は、人生百年時代にあって、生涯にわたる人格形成の基礎を培っているとも言われ、これまで以上に幼児期の教育に力を入れ、国としてしっかり支援することが大切です。

 これまでの段階的取組を一気に加速して、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育を無償化する、これは少子化に真っ正面から立ち向かう画期的な政策です。改めて、この幼児教育の無償化がなぜ必要なのか、その基本的な考え方や意義について、総理の御説明をお願いします。

 また、今なお、認可保育所に入ることを希望しながら、やむを得ず認可外保育施設に通う子供がいるのも事実です。この幼児教育の無償化と待機児童の解消を、どちらか片方ではなく、両立させながら進めていくことが重要です。待機児童解消に向けた取組を引き続き強力に進めていただきたいと思いますが、根本厚生労働大臣の御決意をお伺いします。

 現在、働き方は多様化しており、子育てをしながら夜間に勤務をされている方もいらっしゃいます。保護者はあらゆる形態の施設を活用されています。認可外保育施設であっても、子供の命を守り、育む上で、しっかりとした質の担保がされなければならないはずです。認可外保育施設の質の確保、向上について、どのような取組を進めていくつもりか、根本厚生労働大臣の御見解をお伺いします。

 また、今回の幼児教育の無償化を円滑に実施するには、地方自治体の皆様から丁寧に意見を伺いながら取り組んでいくことが重要だと考えていますが、今回の無償化に伴う地方自治体の事務負担や財政負担について、政府としてどのように支援していくのか、宮腰担当大臣にお伺いします。

 神奈川県では、市町村と連携して保育の受皿を整備してきましたが、保育士不足により定員まで子供を入所させることができない保育所もあり、保育士の確保、保育士の皆さんの処遇改善は継続して実施していただきたい政策です。

 幼稚園や保育園の先生方が子供たちの異変に気づくことも多々あります。自民党女性局では、これまでも、全国で子供虐待防止オレンジリボン運動を展開してきました。もしかして虐待かなと思ったときや子育てに悩んだときには一八九、「いちはやく」のダイヤルを更に多くの方に知っていただくよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

 少子化の問題は、長時間労働や男性の育児休業の取得率や家事分担率の低さなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っており、きめ細やかな対策を網羅的に推進することが重要です。さらに、産科の医師不足や分娩できる病院の不足なども深刻な問題となっています。切れ目のない支援をお願いいたします。

 最後に、今回の幼児教育の無償化は、少子高齢化、そして人生百年時代にある我が国において、社会保障を全世代型へと抜本的に変えるための大きな一歩です。総理は、この二〇一九年を全世代型社会保障元年にすると述べておられましたが、全世代型社会保障への転換に向けて、総理の意気込みをお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 牧島かれん議員にお答えをいたします。

 幼児教育、保育の無償化の基本的な考え方についてお尋ねがありました。

 我が国最大の課題である少子高齢化を克服するため、消費税率引上げ分の使い道を変更し、本年十月より、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育を一気に無償化することとしました。

 これは、生涯にわたる人格形成の基礎やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性と、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策に鑑み行うもので、小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革であります。

 子供たち、子育て世代に大胆に投資し、これまでとは次元の異なる政策を実行することにより、子育てや教育に係る負担を大幅に軽減し、日本を、子供たちを産み、そして育てやすい国へと大きく転換してまいります。

 全世代型社会保障への転換に向けた意気込みについてお尋ねがありました。

 少子高齢化が急速に進む中で、これまでの社会保障システムの改善にとどまることなく、システム自体の改革を進めていくことが不可欠です。

 議員御指摘のとおり、本年十月からの幼児教育、保育の無償化、そして来年四月からの真に支援が必要な子供たちの高等教育の無償化は、社会保障を全世代型に転換するための重要な一歩であります。

 同時に、人生百年時代の到来を見据えながら、元気で意欲あふれる高齢者の皆さんが、年齢にかかわらず、学び、働くことができる環境を整えることが必要です。既に、未来投資会議において、七十歳までの就業機会の確保や、中途採用、キャリア採用の拡大など、生涯現役時代の雇用制度改革に向けた検討を開始しており、この夏までに実行計画を決定する考えです。

 その上で、生涯現役社会を前提に、予防、健康へのインセンティブ措置の強化や、年金の受給開始のタイミングをみずから選択できる範囲を広げるなど、医療、年金も含めた社会保障全般にわたる改革を行う考えです。こうしたシステム全般にわたる改革を進める中で、給付と負担のバランスについてもしっかりと検討してまいります。

 こうした取組により、子供から若者、子育て世代、現役世代、高齢者まで、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣根本匠君登壇〕

国務大臣(根本匠君) 牧島かれん議員にお答えをいたします。

 待機児童解消に向けた取組と決意についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化は、少子高齢化という国難に正面から取り組むため、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型に変えていくという考え方に基づき、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策と、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育、保育の役割の重要性の観点から実施するものであります。

 同時に、待機児童の解消は待ったなしの課題であり、最優先で取り組んでまいります。

 二〇一八年四月時点の待機児童は、前年より約六千人の減少となり、十年ぶりに二万人を下回りました。しかしながら、現在も保育所等に預けられない親御さんがまだまだいらっしゃる事実を真摯に受けとめ、引き続き、待機児童の解消に向けた取組を推進させることが必要です。

 このため、待機児童の解消を図るとともに、女性の就業率八割に対応できるよう、子育て安心プランに基づき、二〇二〇年度末までの三十二万人分の保育の受皿確保に全力で取り組んでまいります。

 認可外保育施設の質の向上、確保についてお尋ねがありました。

 待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても、負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない施設が基準を満たすために、五年間の猶予期間を設けることとしています。

 無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上が図られるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、巡回支援指導員の配置の拡充や、指導監督基準を満たさない認可外保育施設が基準を満たし、さらに、認可施設に移行するための運営費の補助等の支援などの取組を行います。

 さらに、待機児童の状況等が地域によって大きく異なることを踏まえ、今回の法案では、市町村が条例により対象施設の範囲を定めることを可能とする仕組みを盛り込んでいます。

 未来を担う子供たちの安全が確保されるよう、地方自治体の御意見をしっかり伺いながら、十月からの施行に向けて検討を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) 地方自治体への支援についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化は、実務を担う地方自治体と国がよく連携して進めていくことが大変重要であると認識しております。

 財政負担のあり方については、現行制度の保育所等に係る負担割合と同様とし、その上で、初年度に要する経費について全額国費により負担をいたします。また、初年度と二年目の導入時に必要な事務費について全額国費により負担します。さらには、総務省と連携し、必要な地方財政措置をしっかりと講じてまいります。

 これらについては、昨年、全国知事会、全国市長会、全国町村会と丁寧な協議を行い、それぞれの団体における所要の手続を経て、組織として御了解をいただきました。

 事務負担についても、これまで、国と地方自治体とで一緒になって事務フローを検討しているなど、その軽減に努めています。

 昨年十二月には、関係閣僚と地方自治体の代表から成るハイレベルでの協議の場を設置したところであり、十月からの円滑な実施に向け、引き続き地方自治体とよく連携して準備を進めてまいります。(拍手)

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議長(大島理森君) 岡本あき子君。

    〔岡本あき子君登壇〕

岡本あき子君 立憲民主党・無所属フォーラムの岡本あき子です。

 会派を代表し、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。(拍手)

 冒頭に、昨日は三月十一日、東日本大震災から八年がたちました。改めて、犠牲になられた方々並びに御遺族の皆様に哀悼の意を表します。

 発災直後から、国内外から数多くの支援をいただき、被災地仙台の一市民として心から感謝を申し上げます。

 一方、今なお現地や避難先の地で困難な生活を送っている方々がいます。高齢化する被災地、長期化する生活再建、人口が激減する中でせっかく再建した事業も縮小せざるを得ないなど、新たな課題に直面しています。

 復興期間終了後の必要事業を責任持って遂行できる体制を含め、誰もが取り残されることなく平穏な暮らしを取り戻すことができる日を目指して、長期化する課題に果敢に取り組んでいただくことを求めます。

 さて、前回私が登壇の機会をいただいたのは、昨年の五月二十五日、当時の厚生労働大臣に対する不信任決議案に対する賛成討論のときでした。働き方改革に対する根拠データがずさんなまま、また、過労死が起きている事例を報道されるまで公表せず、命を軽んずるような幹部の言動まで出る始末のときでした。

 通常国会閉会後に、大島議長の談話が発表されました。民主的な行政監視、国民の負託を受けた行政執行といった点から、民主主義の根幹を揺るがす問題であり、行政府、立法府は、ともに深刻に反省をし、改善を図らねばなりませんとおっしゃっています。議長の談話を受け、内閣、国会は、それぞれ深刻な自省と改善はされたのでしょうか。

 今国会でも、消費税増税の判断の根拠にもなる毎月勤労統計に不正が発覚し、国民に対する不利益を講じています。勤労統計は、調査方法や算出基準が変更され、ごまかすためにこっそり三倍復元、一連の行為は報道で指摘をされるまで公表せず、問題の指摘があると記憶がなくなり、対前年比較ができる参考値の実質賃金を今もって示しません。特別監察委員会の追加報告書の、うそはついたが隠蔽ではないなど、身内に甘いと指摘をされています。

 今回の子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案の対象となる子供たちは、生涯にわたる人格形成の基礎を培う時期でもあります。今の内閣は、子供たちに、うそはついてはいけない、不正はしてはいけない、ごまかしてはいけないと胸を張って言えるでしょうか。

 与党の皆さんにこそ申し上げます。国会の矜持を持って、内閣とは異なる独立した機関として、行政監視を徹底して行いませんか。

 さて、本法律案について、総理御自身、幼児教育、保育の無償化の目標とする全体像はどうなっているのでしょうか。

 一昨年の経済政策パッケージでは、ゼロから二歳児についても、当面、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めるとしておりましたが、閣議決定の骨太方針二〇一八では、当面という言葉がなくなりました。将来にわたり、ゼロから二歳児は住民税非課税世帯のみを対象とするということでしょうか。お答えください。

 そもそも、提案理由に、消費税率の引上げによる財源を活用しと前提を置いていますが、消費税の引上げがなされなければこの法律は施行しないということになるのでしょうか。総理御自身のお考えをお聞かせください。

 二〇一四年度からこの間、幼児教育の段階的無償化に一般財源で取り組んできました。それは、負担感の大きい低所得者や多子世帯という順での無償化であり、そこには合理性があります。

 一方、今回、消費税増税分を財源とする設計となると、増税分の保育料無償化予算四千六百五十六億円のうち、住民税非課税世帯以下の世帯にはわずか一%しか還元されず、一方で、年収六百四十万円を超える世帯には五〇%の二千三百二十億円、年収四百七十万円以上で、実に三千八百四十億円と、八三%が配分されることになります。低所得の方からも御負担をいただく消費税の配分先は、圧倒的に高所得者層になります。消費税増税の財源としてはかえって不公平感を招きます。

 総理にお聞きします。引き続き、認可保育所の低所得の方々、あるいは負担感の大きいゼロから二歳から段階的に対象としていくべきではないでしょうか。

 私たち立憲民主党は、無償化よりも保育所全入と質の確保を求めています。保育所に入れた入れないで、保護者と子供の人生が大きく異なるからです。保育園落ちたのハッシュタグがことしも立っています。これを毎年の風物詩にしてはなりません。

 政府は、二〇二〇年度末までに三十二万人の受皿整備を進めています。しかし、民間の試算では全く足りていません。改めて、第一に取り組むべきは、受皿を三十二万人増よりも拡大して待機児童解消を行うことです。総理、いかがでしょうか。

 並行してやるべき仕事は質の向上です。今回の法律案では、認可外保育所も対象となっており、経過措置とはいえ、認可外指導監督基準を満たしていない施設やベビーシッターも届出さえすれば無償化の対象となります。

 届け出たところの監査は自治体となりますが、既に責任が負えないという意見も出ています。幼児教育無償化を急ぐ余り、質が担保されず、リスクが排除されないままに公金投入の対象とすることは避けるべきです。

 さらに、質の確保には保育士の処遇改善も不可欠です。この間、政府の政策を従順に反映していれば、二〇一二年度から五年間で、保育士の給料は年収で三十一から三十八万円増になっているはずです。しかし、実態は年収平均で二十七万円余と乖離しています。

 総理、なぜ政府の考えどおりに保育士の給料は上がらないのでしょうか。このように保育の受皿を用意し、保育士の処遇改善を含め、質も確実に担保した上で無償化を行っていくべきと考えます。御所見を伺います。

 今回の改正では、幼児教育、保育の無償化といいますが、実質は無料にはなりません。認可保育所における給食費については、その全部又は三から五歳児の副食材費は、今までは保育料に含まれていましたが、今後、食材費は保育料から外され、自己負担となります。保育料を無償と言っていながら、一方で新たな負担を求めることは逆行していませんか。

 また、共同通信社の調査では、全国にある私立幼稚園百園の約四割が、無償化と合わせて保育料を値上げする可能性を示しており、一部は便乗値上げの可能性があることが報道されました。

 幼稚園、保育所運営者にとって、焼け太りするようなことはあってはなりません。料金設定の適正化をどのように把握していくおつもりでしょうか。宮腰大臣の答弁を求めます。あわせて、指摘のような便乗値上げの可能性はないのか伺います。

 認可外保育施設といえば、現在さまざまな課題を抱えている企業主導型保育事業も無償化の対象です。国会で指摘があり、現在、企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会で改善策をまとめると聞き及んでいます。

 事業がスタートして三年。良質な保育で頑張っている施設がある一方で、休園や廃園のほか、二十八施設が譲渡されています。まるで転売のようですが、それによる利益は当然返還を求めるべきです。反社会的勢力の関与の排除も、事業開始の二年間は確認をしていませんでした。子供のことを考えて開設したとは思えないような事業者も存在し、憤りを感じます。

 この事業は事業主拠出金で賄われていますが、助成金額及び内訳については、事業を運営している児童育成協会が公表をしていません。整備費の水増し請求の可能性もある中で、児童育成協会自身による適切な審査、交付決定、監査が行われていたのか、見きわめる重要な点です。

 また、当協会は、インターネット審査で、直接事業経営者に会うことはなく、現場もほとんど見ることをせず、次々と交付決定を行ってきました。

 このように、簡単に審査が通り、認可並みの補助金がもらえるため、企業主導型保育は簡単にもうかるといううわさも相まって、昨年は五万人分の申込みが殺到しました。審査会で全てを審議したとは思えず、大方、実態を把握しないまま採択、不採択を決定しています。こちらも、審査方法、内容、結果も公表していません。当協会の仕事ぶり、公正な立場で行っていたのかも疑問です。

 統計不正問題と同様、予算委員会及び内閣委員会の審査にも、児童育成協会は参考人出席を渋っています。

 総理、事実を明らかにするため、政府がみずから率先して児童育成協会に公表を求めるべきではないですか。お答えください。

 当協会が再委託をしている事業があります。全国の企業主導型保育施設の九割以上の施設の監査です。株式会社パソナに委託をしています。一方、グループ企業、株式会社パソナフォスターが運営をする保育園が幾つか採択され、保育事業を展開しています。また、保育施設の運営コンサルティングも行っており、加えて、保育士の派遣事業や研修も請け負っています。

 利益相反からは一部排除されていると伺っていますが、コンサルティングしている保育施設あるいは保育士を派遣している保育施設についても、身内を監査していることにはなりませんか。宮腰大臣の答弁を求めます。

 さて、希望出生率一・八の実現という言葉がひとり歩きをしています。諸外国にも希望出生率というものはございません。数値を目標に掲げている国は、日本と韓国以外、見当たりません。産めよふやせよとは言えず、かわりにつくり上げた数値ではと疑いたくなります。

 数字ありきではなく、子供を持ちたいと思っている方の気持ちをかなえる施策をでき得る限りそろえることこそ大事であり、生まれる前の段階での不妊治療や子供の命を守り抜くための虐待防止策など、あらゆる子ども・子育て支援でなければなりません。なぜ数値目標の必要があるのか、宮腰大臣、お答えください。

 今回提出されている法律案で幼児教育の重要性を強調されていますが、子供たちによい影響を与える一番は、大人、特に責任がある者が手本となる行動をとることです。

 大人がうそをつかない、不都合が生じたときに隠蔽やはぐらかしをしない、示し合わせたように同じ日の記憶を失うことがない、正しいデータをもとに議論を尽くす、当事者、特に弱い立場の声を聞くことこそ、幼児に対して最もよい教育になると信じております。

 人を出し抜き、うまくやった者勝ちではなく、自分を大切にするとともに他人も大切にし、誠実に、責任ある行動をとられる人間になることを子供たちに期待するものです。

 最後に、安倍総理に子供たちに対する思いをお聞かせいただき、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡本あき子議員にお答えをいたします。

 無償化の対象年齢や消費税引上げとの関係についてお尋ねがありました。

 ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、まずは、その解消に取り組みつつ、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしました。

 さらなる支援については、少子化対策及び乳幼児期の成育の観点から、安定財源の確保とあわせて検討することとしています。

 なお、幼児教育、保育の無償化は、消費税率の引上げを前提として実施することとしており、政府としては、引上げに向けて十二分な対策を講ずるなど、経済財政運営に万全を期してまいります。

 無償化の対象についてお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化は、生涯にわたる人格形成の基礎やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性と、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策に鑑み、三歳から五歳の子供たちに、所得制限を設けることなく実施することとしたものです。

 なお、ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、まずは、その解消に取り組みつつ、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしました。

 幼児教育、保育の無償化による配分先が高所得者中心であるとの御指摘については、もともと、所得の低い方の保育料は既に公費を投じて負担軽減を図っており、さらに、安倍政権では、低所得世帯を中心に、先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきていることから、今回の無償化による公費負担額のみをもって配分先が高所得者中心であるとする御指摘は当たらないと考えています。

 保育の受皿整備と質の確保についてお尋ねがありました。

 待機児童の解消は待ったなしの課題であり、幼児教育、保育の無償化とともに最優先で取り組んでいます。

 その裏打ちとなる子育て安心プランにおける保育の受皿整備三十二万人分については、女性の就業率が他の先進国並みの八割まで上昇することを想定して必要な整備量を推計したものであり、保育ニーズの増加に十分対応できるものと考えています。

 また、保育士の処遇改善については、政権交代以降、月額約三万八千円に加え、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきました。さらに、ことし四月からは、月額約三千円の処遇改善の実施を含め、引き続き、キャリアアップの仕組みの構築を支援するなど、着実に取組を進めてまいります。

 加えて、今般の幼児教育、保育の無償化は、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がいることから、こうした方々も、負担軽減の観点から無償化の対象としています。

 子供の安全が確保されるよう、無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図ってまいります。

 児童育成協会の審査等についてお尋ねがありました。

 企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献する重要な事業です。

 他方で、事業の実施状況についてさまざまな指摘もあることから、現在、有識者から成る検討委員会において改善策の検討を行っていただいており、事業の透明性の確保のため、各施設の助成金収入を含めた決算情報を公開することや、児童育成協会の行う審査について、基準や着眼点の公表のみならず、不採択理由を事業者に通知することなどの具体策が議論されているものと承知しています。

 こうした検討結果を踏まえ、しっかりと改善を行ってまいります。

 子供たちに対する思いについてお尋ねがありました。

 子供たちこそ、この国の未来そのものであり、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちの誰もがみずからの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる社会をつくり上げることが重要です。

 このため、生涯にわたる人格形成やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性と、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策に鑑み、本年十月から、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育を無償化することとしています。

 また、質の高い幼児教育を提供するため、昨年四月から、健康な心と体、思考力の芽生えなど、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を、新しい幼稚園教育要領や保育所保育指針において明確化したところであり、そのために必要な推進体制の整備に向けた取組を充実してまいります。

 今後とも、子供たちの誰もが自信を持って学び、成長できる環境の実現に向けて、国として責任を持って支えてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) 食材料費の負担や無償化を契機とした保育料の引上げについてお尋ねがありました。

 食材料費については、これまで保育料の一部又は施設が徴収する形で保護者が負担していたものを、引き続き、保護者に御負担いただき、各施設に徴収いただくことにしました。負担方法が変わるだけで、新たな負担を求めるものではありません。

 この取扱いについては、各施設や保護者の方々の混乱を招かないよう、給食費の目安額等をお示ししてまいりたいと考えております。

 また、子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園や認可外保育施設において、無償化を契機に、質の向上を伴わない、理由のない保育料の引上げが行われることは、公費負担で事業者が利益を得ることにつながり、決して許されません。

 このため、文部科学省、厚生労働省と連携し、関係団体に働きかけを行うとともに、保育料の変更理由を届け出させたり、保護者へ説明させたりすることなどにより、料金設定の適正化を図ってまいりたいと考えております。

 企業主導型保育施設の監査のあり方についてお尋ねがありました。

 企業主導型保育施設の監査に当たりましては、公正性を確保することが極めて重要だと認識しており、議員御指摘の点も課題の一つであると認識しております。

 検討委員会で先週に示された、当面、早急に改善すべき事項についての取りまとめ案においても、指導監査業務の一部を外部に委託する場合は、中立性、専門性の確保が必要であること、また、指導監査を行う者が、施設の顧問を務める、資本関係がある等の一定の関係性を有する場合は、利益相反が生じないような必要な措置を講じることなどが示されております。

 公正性について疑念が持たれないよう、今後、取りまとめられる検討結果を踏まえ、内閣府としてしっかりと改善を図ってまいります。

 希望出生率一・八の数値目標の必要性についてお尋ねがありました。

 少子化対策における基本的な目標は、個々人が結婚や子供についての希望を実現できる社会をつくっていくことであります。

 希望出生率一・八は、こうした若者たちの結婚や出産の希望がかなう場合に想定される出生率であり、数字ありきではなく、また、結婚したくない人や産みたくない人にまで国が結婚や出産を推奨しようとしているものでは決してありません。

 今後とも、結婚や出産を希望する方々がその希望をかなえられるような環境整備に全力を尽くしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 山岡達丸君。

    〔山岡達丸君登壇〕

山岡達丸君 国民民主党の山岡達丸です。

 私は、国民民主党・無所属クラブを代表して、ただいま提案されました子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案について、あわせて関連する課題について質問をいたします。(拍手)

 冒頭、申し上げます。

 東日本大震災から八年、また、その後も各地で震災、被災、相次いでおります。私の地元北海道におきましても、胆振東部地震が発災してから、三月六日で半年となりました。犠牲になられました方々に心からの哀悼の意を改めて表させていただきますとともに、未来ある子供たち、そうした将来のためにも、復興に全力で取り組んでいきたい、そのことを皆様とともに、思いをともにさせていただきたく、まずもって決意をお伝えをさせていただきます。

 審議の前提として確認をさせていただきます。

 今、国家の信用を大きく揺るがす大変深刻な問題が起きています。いわゆる統計不正問題です。

 毎月勤労統計をめぐる厚生労働省の特別監査委員会の樋口委員長は、その調査結果として、隠蔽に当たらないと驚きの結果を報告しました。

 樋口委員長は、その理由として、隠蔽の定義を狭めて解釈した上で、虚偽の報告はあったが深刻な不正とは考えなかったから隠蔽とは認められないなど、言葉遊びのような説明をされています。

 これに対し、総理をもってしても、一般の感覚では隠蔽ではないか、そうした答弁を述べられ、そのおかしさを否定されませんでした。

 ならば、今からでも、新たな第三者委員会をつくり、誰の目から見ても第三者と言える人をリーダーに据え、再調査を行い、一般の感覚を伴う本当の意味での真相究明を行うべきだと考えますが、総理の見解を伺います。

 今回の法律案の策定に当たって、各種の政府の調査統計データを用いていることと思います。そうしたデータが果たして信頼に足るものなのか、大変残念なことでありますが、この点についても審議の前に確認をさせていただかなければなりません。

 そこで伺いますが、今回の法案の審議にかかわる調査統計等について、省庁による調査方法の勝手な変更やデータの改ざんなど、統計不正はないと断言していただけますでしょうか。

 公文書の改ざんや統計不正など、政府の信頼が失墜する中で、安倍政権として最重要政策の一つとも位置づけるこの法案審議において、万が一にも不正が発覚した場合には退陣をする覚悟を持って臨んでいただきたい、そのように考えておりますが、総理の決意を伺います。

 子育てを社会全体で支援するために、必要な予算を拡充していく、その考え方については賛同するところです。

 民主党政権時代には、子ども手当や高校無償化など、そうした考えに基づいてさまざまな施策を打ち出しました。私も、二〇〇九年初当選でありましたので、その末席におりました。

 私はよく覚えておりますが、当時、所得制限なしで措置しようとしたそれらの施策に対して、ばらまきだと述べ、子供は社会全体ではなく家庭で育てよ、所得制限を設けよ、費用対効果を考えよなどと唱え、大反対の論陣の先頭に立っておられたのが自民党の皆様でありました。

 委員会における関連法案の採決時には、室内に多くの委員以外の自民党の先生方も集まり、質疑の持ち時間が大幅に超え、委員長に再三注意をされても論を張り続けるなど、徹底反対の運動をされておられました。その熱量は圧巻とも思えるものでした。

 二〇一〇年の参議院選挙の結果、衆議院と参議院でいわゆるねじれが生まれ、以後の制度設計に自民党の皆様の同意をもって進めるという政権運営を行うようになりました。そして、その御意見を取り入れる中で、子ども手当は児童手当と変え、所得制限が導入をされました。また、高校無償化についても、現政権下の二〇一四年四月より所得制限が導入をされました。

 これらの歴史を振り返りますと、自民党の皆様の考えは、自助を基本とし、子育て支援政策には所得制限を設けることが基本的な理念であるかと思っておりました。しかし、今回の無償化に当たりましては、三歳から五歳までの子を持つ世帯には所得制限を入れないとしています。

 総理にお伺いします。かねてより所得制限の導入を主張し、制限なしに反対をしてこられた自民党の歴史をどのように振り返りますか。今回の制度では、その思想は変わったのでしょうか。基本的な議論をする上で重要な論点だと考えますので、御答弁をお願いいたします。

 民主党政権時代、なぜ、子育て政策の支援について、控除から給付を基本とし、また所得制限をなしとしたのか。所得の高い人にも低い人にも同額の給付を行う、そして所得の高い人にはより多くの税金を納めていただく。このように制度設計をシンプルにすることによって、余計な事務経費がかからないようにしながら、結果として、所得の高い人よりも低い方々に手厚い支援が行き届くようにする、そんな考えに至ったからでありました。

 ところで、幼児教育、保育に係る費用というのは、所得の低い方々の負担は既に低く、高い人たちには応分の負担をお願いするという制度設計が、各自治体の御努力の中で、多くの地域で実施をされているところであります。

 単純に現行のままで無償化を進めれば、自治体が進めてきた格差の縮小政策の上書きをしてしまい、無償化のより大きな恩恵は所得の高い人が得てしまうという批判は免れません。

 さらには、その財源とされる消費税は逆進性が強く、政府が検討するポイント還元制度では、お金に余裕がある人がぜいたく品を買うことでより得をするという仕組みであるなど、低所得の方々を優遇するようなものになっていないことも事実です。

 保育の無償化にはおよそ五千億円の予算がかかるとされていますが、その五〇%が年収六百四十五万円以上の方々のために使われる、年収が二百六十万円以下の方々には全体の一%しか使われない、そんな見通しであります。

 具体的に言いますと、年収千五百万円の年収の方は、消費税増税で年間七万円程度の負担増とされていますが、三歳から五歳の子供がいて、保育園に預けたとき、無償化の恩恵による負担減は六十六万円。一方で、年収三百万円以下の方は、無償化の恩恵は一万五千円ぐらいしかないとされています。

 安倍総理は、これらの事実をどう考えますか。所得の高い人がより得をするという制度設計をよしとしますか。今回の無償化をめぐるこうした批判に対して、どのような考えなのか、答弁をお願いいたします。

 また、無償化といいながら、給食費の実費負担を別とするということにしました。給食費は所得に関係なく同額でありますから、消費税と同じように、低所得者に負担が重くなる逆進性が働きます。これではますます高所得者の優遇ではないか、そんな批判が生まれます。無償化を進めるという方針ながら、給食費について除外したのはなぜでしょうか。国民からすれば、無償化と喧伝されながら、やはりお金を取られるじゃないか、そういうことがわかれば政治不信のもとになりませんか。給食費も含めた無償化の検討をするべきだ、そのように考えますが、総理の考えを伺います。

 消費税に関連し伺います。

 総理は、リーマン・ショック級の事態が起こらない限り、ことし十月に消費税の増税をする、そんな発言をされています。言いかえれば、リーマン・ショック級とされる事態が起こった場合には消費税増税を延期するという含みを残しておられるということです。あわせて、無償化は消費税の一〇%への増税が前提という趣旨の答弁をされています。

 先ほども同様の質疑がありましたが、十分にお答えをいただいていないようなので改めて伺いますが、リーマン・ショック級の事態によって消費税の増税を延期した場合には無償化の実施も見送りになる、この理解でよろしいでしょうか。明確な答弁をお願いいたします。

 無償化による格差拡大という視点で見たときに、そもそも保育園に入ることができず、無償化の恩恵を受けられないという方々が多数いることにも注目しなければなりません。

 かつて、保育園落ちた、日本死ねという言葉が世間で大きな話題になりましたが、それからおよそ二年が過ぎた二〇一八年四月の時点において、依然として待機児童はおよそ二万人となっています。保育へのニーズに対し受入れ環境が圧倒的に足りていない実態は変わっていません。

 そこで伺いますが、総理は、ことし十月には幼児教育の無償化等を始めることとしていますが、その前までにこの待機児童の問題を解決するべきではありませんか。それとも、恩恵を受ける人と受けない人の格差が広がることを承知の上で、十月に開始するということを是としますか。この点について明確に御答弁をお願いいたします。

 待機児童問題は、特に大都市の問題と考えられがちでありますが、地方都市などでも深刻な増加をしている現状もあります。

 例えば、私の地元の北海道登別市では、人口四万八千人ほどでありますが、待機児童は昨年ゼロ人だったのに対し、ことし四月には三十六人に上る見通しになっています。市では臨時の保育士十一人の公募をしていますが、まだ見つかっておりません。

 また、人口十七万の苫小牧市では、昨年一月には百六人だった待機児童数が、ことし一月には百七十二人と、一・六倍にふえました。

 無償化の実施によって、更に保育へのニーズが拡大することが考えられます。人材などが集まりにくい地方の都市では、そこに十分な対応ができないおそれがあります。

 総理は、先日の玉木代表の代表質問に対し、女性の就業率について、ほかの先進国並みに上昇することを想定して必要な整備の推計をしているから保育ニーズの拡大に十分対応可能であるという答弁をされていますが、その対応が地方の都市まできめ細やかになされるのか、強い懸念を持つところです。

 総理に伺いますが、こうした地方の現状をどのように考えますか。地方を含めて待機児童問題を解消すると断言していただけますか。見解を伺います。

 人手不足を解消し、保育を担う方をふやしていくために、大胆に処遇の改善を進めていくことも必要です。

 国民民主党を含む野党は、待機児童問題の解消に向け、保育士の処遇改善策として、一人当たり月額五万円の向上を進める法案を既に提出しています。

 政府が進めている処遇の改善は、月額四万円の処遇改善の対象を経験年数七年以上の方とするなど限定的なものであり、二〇一九年度に実施しようとしている処遇改善も、わずか一%、月三千円程度の改善にすぎない、そんな状況であります。

 人材の確保のためにも、全ての保育士に対し抜本的な処遇改善を行う必要があると考えますが、総理の見解を伺います。

 次に、無償化に伴う保育の安全性の確保について伺います。

 認可外保育施設の多くは真面目に経営しているところだとしても、保育士の配置数や保育室の面積など、国の指導監督基準を満たさない施設があるというのも事実です。

 また、政府は、ベビーシッターの利用者に対しても補助金を出すこととしていますが、ベビーシッターについて、現在のところ公的な資格、免許制度はありません。ベビーシッターの方々にさらなる役割を期待するならば、その質を保証するという意味を込めて、政府として責任ある制度を設けるべきではありませんか。

 これらの課題を踏まえた中で、子供の安全性の確保についてどのように対応する考えなのか、見解を伺います。

 国と地方の費用負担のあり方について、その合意形成のあり方について伺います。

 本法律案では、幼児教育無償化における国と地方の負担割合は、国二分の一、都道府県四分の一、市町村四分の一、公共施設については市町村十分の十としています。

 しかし、これら負担割合について、最終的には国と地方自治体が合意をしたものの、政策形成過程において、事前に地方自治体の声を十分に聞かなかった、地方自治体の意見が反映されなかった、そうした声が市町村から上がったのも事実です。また、地方自治体に大きな事務負担が生ずるなどの問題も残されたままとなっています。

 今後の各自治体との合意形成のあり方をどのように考えますか。特に、食材料費の実費徴収や償還払いによる給付等、自治体に生じる新たな事務負担については、国として十分配慮すべきものだと考えますが、見解を伺います。

 最後に申し上げます。

 無償化というと聞こえはいいわけでありますが、しかし、そこにかかる経費がただになるわけではありません。例えば、そこで働く方々もいるわけでありますから、人件費なども含めて必要な経費はかかります。

 では、そうした経費をどこから捻出するのかといえば、それは国民の皆様から納めていただいた税金からということになります。無償化とは、言いかえれば、税金支払い化であるとも言えるわけであります。それゆえ、その税金はどのような方々の負担によって生じ、どのような方々の支援のために使われるのかという、所得再配分という視点が非常に重要であろうと思っております。

 私たち国民民主党は、チルドレンファーストとして、子供たちを第一に考え、全ての子供たちが夢を持ち、チャンスに恵まれる社会を目指すという思いのもと、子ども・子育て支援の充実のために国の予算を拡充するという方向性には賛同するものですが、しかしながら、その制度設計を間違えれば、格差の拡大を助長し、多くの子供たちを不幸にしてしまうことも十分にあり得ることであります。

 本法案は、日本社会にとって大変重要な考え方が含まれている一方で、懸念も多くあり、慎重審議が求められるものと考えます。審議を充実したものとするためにも、本質問に対しても真摯なる御答弁をお願い申し上げ、質問を終わらさせていただきます。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 山岡達丸議員にお答えいたします。

 統計問題についてお尋ねがありました。

 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめています。

 特別監察委員会の樋口委員長は、統計や労働経済研究の専門家であること等から、その個人の資質に着目して委員長をお務めいただいているものと承知しています。

 また、委員会のもとに、元最高検検事の方を事務局長に迎え、独立性を強めた上で追加報告書が取りまとめられたところであり、その内容については、中立的、客観的な立場から検証作業を行っていただいた結果であると考えています。

 統計不正と今回の法案についてお尋ねがありました。

 毎勤統計の問題については、真摯な反省の上に、二度とこうしたことが起こらないように、全力を挙げて原因を究明し、再発の防止に努めることで、政治として責任を果たしてまいります。

 他方、今回御提案させていただいた法案は、子供たちに質の高い幼児教育、保育の機会を保障するためのものであり、統計不正とは何ら関係のないものですが、御審議に当たっては、その背景等についても政府として丁寧かつ正確な説明を心がけてまいりたいと考えております。

 今般の無償化において所得制限を設けない点についてお尋ねがありました。

 児童手当や高校無償化については、家庭生活の安定や教育における機会均等を目的としているものであり、一定の所得以下の方に対する給付としているところです。

 一方、幼児教育、保育の無償化は、少子高齢化という困難に正面から取り組むため、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、社会保障制度を全世代型へと変えていくという新たな考え方に基づくものです。

 特に、幼児教育の役割の観点からは、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎やその後の小中学校における義務教育の基礎を培うものであり、保護者の所得にかかわらず、全ての子供にとって重要なものであります。

 さらに、少子化対策の観点からは、調査によれば、全ての世代において、理想の子供数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかり過ぎることが最大の理由とされており、また、どのような支援があればあなたは子供が欲しいと思いますかとの質問に対して、所得階層にかかわらず、将来の教育に対する補助との回答が最も多いとの結果が得られています。

 このため、これまで段階的に進めてきた幼児教育、保育の無償化を一気に進め、所得制限を設けることなく、三歳から五歳までの全ての子供たちを対象に無償化を実施することにしました。

 幼児教育、保育の無償化やポイント還元制度が高所得者優遇ではないかとのお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化が高所得者を優遇した政策であるとの御指摘については、低所得世帯を中心に、先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきており、今回の無償化による公費負担額のみをもって、高所得者層ほど大きな恩恵を受けるとする御指摘は当たらないと考えています。

 さらに、今般の教育、保育の無償化は、ゼロ歳から二歳までの子供たちについて、住民税非課税世帯を対象として進めるほか、二〇二〇年度からは真に支援を必要とする低所得世帯を対象とした高等教育の無償化を実施することとしており、所得の低い世帯に十分配慮したものとなっていると考えています。

 また、ポイント還元については、誰でも簡単に加入できるプリペイドカードなど多様な選択肢を用意することで、クレジットカードを持たない方々も含め、幅広い消費者がポイント還元のメリットを受けとめられるようにするため、高所得者優遇との御指摘は当たりません。

 このほか、軽減税率の導入や、低年金者への給付等の社会保障の充実策を実施することも総合的に勘案すれば、政策全体として、所得の低い世帯に手厚く、逆進性に対して十分な緩和策になるものと考えています。

 給食費の取扱いについてお尋ねがありました。

 保育所等を利用する子供の食材料費については、現行制度において、実費又は保育料の一部として保護者に御負担をいただいてきたところですが、在宅で子育てをする場合でも生じる費用であること、既に無償化されている義務教育においても実費相当の御負担をいただいていることから、その考え方を維持し、無償化に当たっても、通園送迎費等と同様に、原則として保護者に引き続き御負担をいただくこととしました。

 同時に、副食費を免除する保護者の範囲を拡充することとしており、低所得世帯にも十分配慮しつつ、幼児教育、保育の無償化を実施してまいります。

 消費税率の引上げと無償化の実施についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化は消費税率の引上げを前提として実施することとしており、政府としては、引上げに向けて十二分な対策を講ずるなど、経済財政運営に万全を期してまいります。

 幼児教育、保育の無償化と待機児童問題についてお尋ねがありました。

 待機児童の解消は待ったなしの課題であり、幼児教育、保育の無償化とともに最優先で取り組んでまいります。

 二〇一八年四月時点の待機児童は、前年より約六千人の減少となり、十年ぶりに二万人を下回りました。引き続き、子育て安心プランに基づき、二〇二〇年度末までに待機児童を解消するため、全力で取り組んでまいります。

 他方、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がいることから、今般の無償化では、こうした方々も、負担軽減の観点から対象としています。

 地方を含めた待機児童解消に向けた取組についてお尋ねがありました。

 保育の受皿の整備については、市町村が地域の実情を踏まえて、その必要量の把握から、計画の策定、実施等に至るまで主体的な役割を担っています。国としても、子育て安心プランに基づき、保育人材確保を含め、市町村を積極的に支援し、二〇二〇年度末までに待機児童を解消するため、全力で取り組んでまいります。

 保育士の処遇改善についてお尋ねがありました。

 待機児童問題の解消、保育士確保のためにも、保育士の処遇改善は重要な課題であると認識しております。

 これまでも、財源を確保しながら着実に処遇改善を行ってきたところであり、政権交代以降、月額三万八千円に加え、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施してきました。さらに、ことしの四月からは、月額三千円の処遇改善を実施するなど、引き続き着実に取組を進めてまいります。

 認可外保育施設における安全性の確保についてお尋ねがありました。

 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても、負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない施設が基準を満たすために、五年間の経過措置期間を設けることとしています。

 無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上が図られるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充し、また、特にベビーシッターについては、保育従事者の資格や研修受講などについて新たな基準の策定を行うこととしています。

 こうした取組を通じ、認可外保育施設においても未来を担う子供たちの安全が確保されるよう、支援を行ってまいります。

 国と地方の財政負担割合や自治体との合意形成のあり方についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化の財源については、消費税率引上げに伴い国と地方へ配分される増収分を活用することとしており、国の責任において必要な地方財源をしっかり確保します。

 地方の財政負担について、昨年、教育の無償化に関する国と地方の協議において国から地方団体に提案し、その内容について御了解をいただいたものです。

 また、導入時に必要な事務費については、全額国費による負担とすることとし、事務のあり方についても、手続負担に配慮した簡素化を図ってまいります。

 さらに、昨年十二月には、関係閣僚と地方団体の代表から成るハイレベルの協議の場を設置し、幼児教育、保育の無償化の円滑な施行に向けた諸課題について検討を進めてまいります。

 引き続き、実務を担う地方自治体の皆様の御意見をしっかりと伺いながら、本年十月からの実施に向け、準備を進めてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 岡本三成君。

    〔岡本三成君登壇〕

岡本三成君 公明党の岡本三成です。

 私は、公明党を代表し、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに宮腰大臣に質問いたします。(拍手)

 公明党は、子供の幸福こそが教育の目的だと確信をしております。一人の子供をどこまでも大切にし、無限の可能性を開くことは政治の責任です。

 公明党は、二〇〇六年に発表した少子社会トータルプランで幼児教育の無償化を掲げ、一人親世帯や多子世帯を中心に、財源を見つけながら段階的に対象を拡大させ、今日まで着実に保護者の教育費負担軽減を実現してまいりました。

 さらに、昨年は子育てなどのテーマで百万人訪問・調査運動を実施。その結果、教育費の経済的負担に関して何らかの不安を抱えている方が全体の七割を超え、公明党が取り組んできた教育費負担の軽減に対するニーズの高さが改めて明らかとなりました。

 今回の幼児教育、保育の無償化は、子供たちの未来に対して国全体で責任を持つ政策として大きな意味を持つと考えますが、本法案の意義につきまして安倍総理に答弁を求めます。

 本法案は、小学校、中学校の普通教育無償化以来、七十年ぶりの大改革です。

 我が党は、無償化の対象施設として、幼稚園、認定保育所、認定こども園のほか、認可外保育施設や幼稚園の預かり保育、さらには通園や入所による障害児の発達支援も無償化の対象にすることを主張してまいりました。本法案にはそれが反映されている点を評価いたします。

 本法案では、対象年齢が三歳から五歳の子供などとなっていますが、現場では、子供が六歳になったら無償ではなくなるのかといった不安の声もあります。今回対象となる年齢の範囲や施設、サービスについてわかりやすく説明していただきたく、宮腰大臣にお伺いをいたします。

 さて、幼児教育、保育の無償化よりも待機児童の解消を優先すべきではないかという声があります。また、今回の無償化により入園希望者がふえ、待機児童問題が更に深刻になるのではないかという懸念の声もあります。

 公明党は、これまで待機児童の解消に粘り強く取り組んでまいりました。そして、政府は、我が党の主張を踏まえ、二〇一七年までの五年間で五十四万人分の保育の受皿を拡大。この結果、待機児童数は昨年四月時点で十年ぶりに二万人を下回りました。今後も施設の整備や保育士の処遇改善を進めて、二〇二〇年度までに二十九万三千人分の新たな受皿が確保される見込みです。

 幼児教育、保育の無償化と待機児童の解消は二者択一ではなく、どちらも最優先で取り組むことが重要だと考えますが、この点につきまして安倍総理の答弁を求めます。

 幼児教育、保育の無償化は、三歳から五歳までの子供に対し、親の所得制限を設けずに全世帯を対象としていますが、このことについて、低所得者に比べ高所得者の方が恩恵が大きく不適切だという指摘があります。

 所得制限を設けない理由は、義務教育である小中学校につながる幼児教育の重要性を鑑み、そこにも国が責任を持つという考え方のもとで行われる政策であるからだと理解をしておりますが、なぜ所得制限を設けなかったのか、安倍総理の答弁を求めます。

 今回の幼児教育、保育の無償化は、ゼロ歳から二歳の子供について、住民税非課税世帯のみを対象としています。

 しかし、公明党としては、子育ての基本的な経済的負担は社会全体で支え、個々人に過大な負担を求めないという原則を確立すべきだと考えています。

 したがって、本法案成立後も、公明党議員のネットワークを駆使して、各自治体で独自に助成を上乗せするなど各地域でできることはないかなど、新たな挑戦をしたいと考えております。その上で、国としてもいずれは無償化の対象を拡大すべきだと考えますが、安倍総理の御見解を伺います。

 今回、無償化の対象となる認可外保育施設等における質の確保、向上に向けた取組について伺います。

 現在、指導監督の基準を満たさない施設も多いため、今回の無償化を好機として、基準を満たすように導き、さらに、認可施設へ移行できるように支援を充実させることが重要だと考えます。

 質の確保、向上に向けて、具体的にどのような対策を行うのか。また、無償化給付の実施主体となる市町村における、対象施設の把握、保護者への償還払い手続、無償化給付に必要な範囲での施設への関与等については不可欠だと考えますが、法制上どのように措置するのか、宮腰大臣の答弁を求めます。

 認可外保育施設等において、無償化を見越した、質の伴わない便乗値上げの可能性があるとの懸念があります。無償化に伴い保育料を国が負担するため、保護者の理解を得やすいことが背景にあるようですが、この問題に対してどのように取り組むのか、宮腰大臣の答弁を求めます。

 企業主導型保育事業について伺います。

 企業主導型保育は、待機児童解消に向け、新たな受皿として期待をされています。一方で、制度開設から三年が経過し、一部に、定員割れや施設の閉鎖など、継続性に関する問題が発生しています。さらには、自治体と施設の間で、運営状況の情報が十分に共有されていなかったり、指導監督の連携が不足しているのではないかなどの課題も生じています。

 重要な事業であるがゆえに、改善すべき点については早期の対策が必要だと考えますが、今後の運用に関して、どう取り組むのか、宮腰大臣の答弁を求めます。

 三歳から五歳の幼稚園、保育所等における給食費について、現在、一人親世帯や生活保護受給世帯などに限定して副食費の免除がなされていますが、本法案は、公明党の主張を受け、低所得世帯への負担軽減措置が大幅に拡大されると認識しております。具体的に法案の中でどのように反映されているのか、宮腰大臣の答弁を求めます。

 幼児教育、保育の無償化は、地方自治体がその事務を円滑に実施することができるよう、国が地方からの御意見をしっかりと伺いながら進めていくことが重要です。また、地方の声を踏まえると、今回の幼児教育、保育の無償化における地方の財政負担について、適切に国が支援することが必要であると考えますが、宮腰大臣の答弁を求めます。

 乳幼児期の保育、教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を築く重要なものです。公明党は、親の経済状況に関係なく、全ての子供たちに質の高い教育の機会を提供することにより子供の未来を開いていきたいと訴えてまいりました。

 しかしながら、就学前段階における教育支出に占める公費の割合が日本では四八%程度にとどまり、OECD加盟国で最低水準です。

 本格的な少子高齢化、人口減少社会の到来という構造変化の中で、子供に対する教育支援のいかんで日本の未来は決まると言っても過言ではありません。教育への投資は未来への投資です。最後に、安倍総理に、国として子供たちをどう守り育てていくのか、その決意をお伺いいたします。

 公明党は、全ての子供たちの幸福を目指し、安心して子育てができる環境を整えること、そして、子供たち一人一人が、自分で選んだ道を自分らしく希望を持って進み、それぞれに幸福な人生を謳歌できる未来を開くために、今後も全力で取り組むことをお約束し、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 岡本三成議員にお答えをいたします。

 幼児教育、保育の無償化の意義についてお尋ねがありました。

 我が国最大の課題である少子高齢化を克服するため、消費税率引上げ分の使い道を変更し、本年十月より、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育を一気に無償化することとしました。

 これは、生涯にわたる人格形成の基礎やその後の義務教育の基礎を培う幼児教育の重要性と、子育てや教育に係る費用負担の軽減を図るという少子化対策に鑑み行うもので、小学校、中学校九年間の普通教育無償化以来、実に七十年ぶりの大改革であります。

 人への投資に力を入れてきた御党とともに、子供たち、子育て世代に大胆に投資し、これまでとは次元の異なる政策を実行することにより、子育てや教育に係る負担を大幅に軽減し、日本を子供たちを産み育てやすい国へと大きく転換してまいります。

 幼児教育、保育の無償化と待機児童の解消の重要性についてお尋ねがありました。

 待機児童の解消は待ったなしの課題であり、幼児教育、保育の無償化と二者択一ではなく、どちらも最優先で取り組んでまいります。

 二〇一八年四月時点の待機児童は、前年より約六千人の減少となり、十年ぶりに二万人を下回りました。

 引き続き、幼児教育、保育の無償化とあわせて待機児童の解消を図るため、子育て安心プランに基づく二〇二〇年度末までの三十二万人分の保育の受皿確保や保育士の処遇改善に取り組んでまいります。

 今般の無償化において所得制限を設けない点についてお尋ねがありました。

 まず、幼児教育の役割の観点からは、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎やその後の小中学校における義務教育の基礎を培うものであり、保護者の所得にかかわらず、全ての子供にとって重要なものです。

 さらに、少子化対策の観点からは、調査によれば、全ての世代において、理想の子供数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかり過ぎることが最大の理由とされており、また、どのような支援があればあなたは子供が欲しいと思いますかとの質問に対し、所得階層にかかわらず、将来の教育費に対する補助との回答が最も多いとの結果が得られています。

 このため、所得制限を設けることなく、三歳から五歳までの全ての子供たちを対象に無償化を実施することとしました。

 ゼロ歳から二歳児までのさらなる支援についてお尋ねがありました。

 ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、まずは、その解消に取り組みつつ、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしました。

 さらなる支援については、少子化対策及び乳幼児期の成育の観点から、安定財源の確保とあわせて検討することとしています。

 引き続き、子育てや教育に係る負担の軽減、待機児童の解消に全力を尽くしてまいります。

 国として子供たちをどう守り育てていくかの決意についてお尋ねがありました。

 子供たちこそ、この国の未来そのものであり、家庭の経済事情にかかわらず、子供たちの誰もがみずからの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができる社会をつくり上げることが重要であります。

 そのため、今回の消費税率引上げにより生み出される財源を思い切って投入し、幼児教育、保育の無償化に加えて、来年度からは、真に必要な子供たちの高等教育を無償化するなど、これまでとは次元の異なる政策を実行することにより、子育てや教育に係る負担を大幅に軽減し、日本を子供たちを産み育てやすい国へ大きく転換してまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) 幼児教育、保育の無償化の対象範囲についてお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化は、小学校入学前の三年間分の利用料を無償化することを基本的な考え方としています。また、ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、その解消に最優先で取り組むこととし、住民税非課税世帯を対象とすることといたしました。

 幼稚園や認可保育所、認定こども園に通っている子供たちに加え、やむを得ず待機児童となっている子供もいることから、保育の必要性のある子供については、幼稚園の預かり保育や認可外保育施設等を利用する場合でも無償化の対象とすることとしております。また、障害のある子供たちの発達支援についても無償化されます。

 これらの点について、十月の実施に向けて更に丁寧な説明に努めてまいります。

 認可外保育施設における質の確保、向上に向けた取組と、給付の主体となる市町村の権限についてお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化を契機に、認可外保育施設の質を確保、向上させることは重要であると認識しています。

 このため、厚生労働省を中心に、認可外保育施設が守るべき基準の内容について助言などを行う巡回支援指導員の配置の拡充や、指導監督基準を満たさない認可外保育施設が認可施設に移行するための運営費の補助等の支援の拡充といった取組を進めてまいります。

 また、実施主体である市町村の役割は極めて重要であると考えておりまして、改正法案においては、市町村長に対し、対象となる施設を特定する確認や、必要に応じた施設への報告徴収、勧告、命令、確認の取消し、さらには、都道府県知事に対する必要な協力要請などの権限を与えるための規定を設けております。

 無償化を契機とした保育料の引上げについてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化は、子育てに係る費用負担の軽減を目的としています。このため、子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園や認可外保育施設において、今般の無償化を契機に、質の向上を伴わない、理由のない保育料の引上げが行われることは、公費負担により事業者が利益を得ることにつながり、決して許されません。

 こうした便乗値上げを防ぐため、関係団体への働きかけを行うことや、保育料の変更の理由を届け出させたり、保護者に説明させることなどを検討しております。

 文部科学省、厚生労働省と連携し、事業者を含めた国民の皆様に丁寧に説明してまいります。

 企業主導型保育事業の改善についてお尋ねがありました。

 企業主導型保育事業については、議員御指摘のとおり、保育の質の確保や自治体との連携などの課題が生じており、実施体制の強化が急務となっております。

 このため、有識者から成る検討委員会において検討を行い、先週、三月八日に、当面、早急に改善すべき事項について取りまとめの案が示されました。

 近いうちに報告書を取りまとめることとしておりまして、内閣府として、お示しいただいた方向性に沿って、できることから早急にかつ着実に改善を図ってまいります。

 給食費の低所得世帯への負担軽減の拡大についてお尋ねがありました。

 議員御指摘のとおり、今般の幼児教育、保育の無償化に当たり、三歳から五歳までの子供の食材料費のうち、副食費の免除対象を、これまでの生活保護世帯と一人親世帯から、年収三百六十万円未満相当の世帯に拡充いたします。

 法案への反映に関しましては、子ども・子育て支援新制度に移行している幼稚園や認可保育所等については、現行制度の中で給付を拡充するため法改正は必要ありませんが、子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園については、本改正案において副食費を新たに助成対象に位置づけております。

 地方自治体の事務や財政負担についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化は、事務を担う地方自治体と国がよく連携して進めていくことが大変重要であると認識しております。

 地方自治体の事務負担については、これまで、国と地方自治体とで一緒になって事務フローを検討しているなど、その軽減に努めています。

 財政負担のあり方については、現行制度の保育所等に係る負担割合と同様とし、その上で、初年度に要する経費について全額国費により負担します。また、初年度と二年目の導入時に必要な事務費について全額国費により負担します。さらには、総務省と連携し、必要な地方財政措置をしっかりと講じてまいります。

 これらについては、昨年、全国知事会、全国市長会、全国町村会と丁寧な協議を行い、それぞれの団体における所要の手続を経て、組織として御了解をいただきました。

 昨年十二月には、関係閣僚と地方自治体の代表から成るハイレベルでの協議の場を設置したところであり、十月からの円滑な実施に向け、引き続き地方自治体とよく連携して準備を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法改正案について質問します。(拍手)

 安倍総理は、二〇一七年九月、幼児教育の無償化を一気に進めると打ち出し、その財源に消費税増税分を活用するとして、解散・総選挙の口実としました。

 消費税は、所得が低くなればなるほど負担が重くのしかかる逆進性を持つ税です。私の予算委員会での質問に、総理もそのことを認めました。国が子育て世帯を応援するのに、なぜ逆進性を持つ消費税を財源にしなければならないのですか。

 また、総理は、幼児教育無償化などに加えて、軽減税率を実施することで逆進性を緩和できると答弁しました。

 保育料は、既に所得に応じて段階的になっており、住民税非課税の一人親世帯などの低所得者層では免除されています。幼稚園でも低所得者層には減免制度があります。このような世帯には、消費税増税分が重くのしかかるだけで、今回の無償化による恩恵はありません。これのどこが逆進性を緩和できるというのですか。

 切実な教育、子育ての願いを逆手にとって、消費税増税を国民に押しつけることはやめるべきです。

 今回の無償化措置は、保育の方向性を根本からゆがめる問題が潜んでいます。

 第一に、保育は安心、安全に利用できることが大前提でなければなりません。

 しかし、経過措置期間の五年間、国の基準を下回る施設であっても無償化の対象としています。こうした施設を対象とすることは、保育士が一人もいないような施設であっても、国が保育施設として一定のお墨つきを与えることになるのではありませんか。

 保護者や保育関係者の願いは、公立を始めとした認可保育所を整備し、配置基準や保育士の処遇を改善し、安心、安全の保育をというものです。今回の無償化はこうした方向となるのでしょうか。安心、安全の保育と無償化を一体で進めなければ、保育制度は更にゆがみが生じ、現場に大きな混乱をもたらすことになるではありませんか。

 第二に、市町村負担の問題です。

 私立保育所には国が二分の一補助しますが、公立保育所は一〇〇%市町村負担です。公立を多く抱える市町村ほど負担がふえることになります。このことが、公立保育所の廃止、民営化を一層加速させることになるのではありませんか。

 二〇〇〇年の企業参入解禁以降、政府は、〇四年には公立保育所の運営費に対する国庫負担金を廃止して一般財源化し、〇六年には施設整備費補助金を公立施設には適用しなくしました。これによって、二十年間で公立保育所は三割も減っているのです。

 政府は、公立保育所を減らすという方針なのですか。これでは、自治体が保育に責任を負う公的保育制度を更に後退させるだけではありませんか。

 第三に、無償化の範囲についてです。

 今回、ゼロ―二歳児については一部に限定したのはなぜですか。また、給食費などの保護者負担は残しています。給食は保育の一環であり、公費で負担すべきです。給食費を実費化し、保育の給付から外すことは、公的保育の後退ではありませんか。

 保育施設の現場からは、給食費が実費化される理由を利用者にどう説明するのか、給食費の未納分を施設が立てかえることにならないかなど、強い懸念の声が上がっています。このような現場の声にどう応えるのですか。

 待機児童問題は、ますます深刻な事態です。

 この間の待機児童対策として安倍政権が進めてきたことは、保育士配置基準の緩和、企業主導型保育事業の拡大などの規制緩和策でした。その上、自治体が行っている上乗せ基準を引き下げるよう圧力までかけています。

 企業主導型保育事業は、保育士の一斉退職や定員割れによる閉園、助成金の不正受給など、相次いで問題が発生しています。政府の調査でも約七五%が基準違反となっているにもかかわらず、今後も企業主導型保育事業を保育の受皿としてふやし続けようというのですか。

 待機児童の解消のためには、認可保育所の増設とともに、保育士の処遇改善に緊急に取り組むことが必要です。

 子供が好きで、誇りを持って保育の仕事をしているのが保育士さんたちです。保育士の配置基準は低いままで、ある保育士さんは、自分が六つ子の一歳児を育てる姿を想像してみてほしいと訴えていました。保育の仕事は、子供の育ちを見通し、その成長と発達を援助するという専門性を必要としています。ところが、給与は労働者全体より月額七万円も低い水準で、過密労働や長時間残業となっているのです。

 総理は、保育の専門性をどのように認識していますか。保育士の配置基準の抜本的な改善と大幅な賃上げが必要ではありませんか。答弁を求めます。

 全ての子供が豊かな保育、幼児教育を受けられる体制を整えることと一体に保育、幼児教育の無償化を図ることを求め、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。

 幼児教育、保育の無償化への消費税財源の活用についてお尋ねがありました。

 消費税は、負担が特定の世代に集中せず、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していることから、社会保障に係る費用を賄うための財源としてふさわしいと考えています。

 幼児教育、保育の無償化については、その財源負担を未来の世代に回すことなく、安定財源を確保した上で進めるため、消費税率引上げの増収分を活用することにしております。

 高所得者優遇施策であるとの御指摘については、低所得者世帯を中心に、先んじて段階的に無償化の範囲を拡大してきており、今回の無償化による公費負担額のみをもって高所得者ほど大きな恩恵を受けるとする御指摘は当たらないと考えています。

 このほか、軽減税率の導入に加え、真に支援が必要な子供たちの高等教育無償化や低年金者への給付等の社会保障の充実策を実施することも総合的に勘案すれば、政策全体として、所得の低い世帯に手厚く、逆進性に十分な緩和策になるものと考えています。

 認可外保育施設を無償化の対象とすることや保育の質の向上についてお尋ねがありました。

 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々についても、負担軽減の観点から無償化の対象とし、指導監督基準を満たさない認可外保育施設が基準を満たすために、五年間の猶予期間を設けることとしています。

 この経過措置期間においても子供の安全が確保されるよう、児童福祉法に基づく都道府県等の指導監督の充実を図るとともに、認可施設に移行するための運営費の支援を拡充することとしており、無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図っていきます。

 また、幼児教育、保育の無償化とあわせて、待機児童対策や保育士の処遇改善、保育の質の確保、向上なども重要な課題であると認識しており、これらの取組も進めてまいります。

 幼児教育、保育の無償化の財政負担と公立保育所の民営化についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化の財源については、消費税率引上げに伴い国と地方へ配分される増収分を活用し、国の責任において、必要な地方財源をしっかり確保します。

 さらに、地方負担分については、公立、私立にかかわらず、地方財政計画の歳出に全額計上し、一般財源総額を増額確保した上で、個別団体の地方交付税の算定に当たっても、基準財政需要額に全額算入することとしています。

 また、保育の受皿整備に当たっては、保育の実施責任がある市町村が、公立、私立の役割分担も含め、地域の実情に応じて取り組むことができるよう、国としては市町村を積極的に支援してまいります。

 ゼロ歳から二歳児までの無償化の範囲及び給付費の取扱いについてお尋ねがありました。

 ゼロ歳から二歳児については、待機児童の問題もあることから、まずは、その解消に取り組みつつ、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めることとしました。

 また、保育所等を利用する子供の食材料費については、現行制度において、実費又は保育料の一部として保護者に負担いただいてきたところですが、在宅で子育てをする場合でも生じる費用であること、既に無償化されている義務教育においても実費相当の負担をいただいていることから、その考え方を維持し、低所得者の副食費の免除範囲を拡充した上で、引き続き保護者に御負担をいただくことにいたしました。

 施設や保護者の方々に御理解いただけるよう、行政の責任において、丁寧に周知、説明を行ってまいります。

 企業主導型保育事業についてお尋ねがありました。

 企業主導型保育事業は、従業員の多様な働き方に応じた保育を提供する企業等を支援するとともに、待機児童解消に貢献する重要な事業です。

 制度創設から三年目を迎え、さまざまな問題が生じていることから、現在、有識者から成る検討委員会において改善策の検討を行っていただいており、保育の質の確保や事業の継続性、安定性の観点から、具体策が議論されているものと承知しています。

 こうした検討結果を踏まえ、しっかりと改善を行ってまいります。

 保育士の配置基準と処遇改善についてお尋ねがありました。

 保育士の処遇改善については、政権交代以降、月額三万八千円に加え、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善を実施しており、さらに、ことし四月からは、月額約三千円の処遇改善を実施することとしています。

 あわせて、保育士の勤務環境の改善を図るため、保育業務のICT化や保育士配置基準の改善、業務補助者の雇い上げの支援などに取り組んでいます。

 高い使命感と希望を持って保育の道を選んだ方々が長く働くことができるよう、引き続き支援に努めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 浦野靖人君。

    〔浦野靖人君登壇〕

浦野靖人君 日本維新の会の浦野靖人です。

 私は、我が党を代表して、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 日本は、少子高齢化が進んでおり、昨年の出生率は九十二万人まで下がり、安倍総理は新三本の矢として希望出生率を一・八にする目標を掲げながらも、それ以降も年々出生率が下がり、少子化には全く歯どめがかかっておりません。

 労働力不足が現実化している現在、本来であれば少子化対策をもっと以前から積極的に進めていかなければならなかったにもかかわらず、必要な対策がとられることなく、その場しのぎとして外国人労働者の受入れを進めざるを得なかったことは大いに反省すべきです。

 日本維新の会は、少子高齢化の抜本対策として、憲法改正の項目として教育無償化を掲げています。憲法に書き込むことにより、政権交代があっても安定して教育無償化が進められることが、私たちの主張です。

 本法案の幼児教育の一部無償化の趣旨自体は理解しますが、我が党は、行財政改革を行うことによる財源の捻出を主張しており、増税による安易な無償化には疑問を感じております。

 また一方で、全国各地において児童虐待の事件が相次ぎ、子供の生命を守る児童相談所を始めとした関係機関の連携の不十分さが顕在化しています。子ども・子育ての問題は、日本の将来につながる重要なポイントであると言えます。

 そのような立場から、質問をいたします。

 幼児教育の無償化は、自民党が平成二十九年十月の衆議院選挙に掲げた公約ですが、本法案は拙速であり、十分練り上げられていない部分が散見されます。選挙公約の実現を優先する余り、後々問題を起こしてしまうことになるような内容が盛り込まれています。与党が選挙に勝つためのばらまきの政策に思えてなりません。

 大阪においては、幼児教育の無償化に既に取り組んでいるところですが、増税によることなく、行財政改革によって実現してきた実績があります。こうした成功事例を踏まえるならば、増税に頼ることのない取組は十分に実現可能ではないでしょうか。総理、お答えください。

 今回の政府案には、幼児教育の一部無償化の対象には認可外保育が含まれています。厚生労働省は、認可外保育の現状調査の結果を公表していますが、平成二十八年度に立入検査を行った認可外施設のうち約半数が指導監督基準に適合しないことを明らかにしており、ここ数年、約半数が不適合という、変わらない現状を危惧しています。

 保育の現場において一定の質が担保されるためには、実効性の高い監査体制が確立されることが必要です。自治体においては、監査に必要な人員だけでなく、人事異動により専門性が十分ではない職員が業務に従事せざるを得ない状況の中、政府として公費を投入することで、監査対象先も大幅に増加する中、監査体制の充実に向けてどのような取組や支援が必要とお考えでしょうか。総理、お答えください。

 また、ベビーシッターについても、全国市長会からは、五年間となる経過措置に対する反対意見やベビーシッターに関する基準の整備を求める声も上がっています。自治体側から、実務が進めにくいという問題点を指摘しているにもかかわらず、国はその意見にまともに取り合ってこなかったわけであり、適切な運営が見込めるとは到底思えません。

 このような状態では、法律をつくったとしても、実施段階でさまざまなトラブルが起こることは目に見えており、安心して子供を預けられる環境が整備できるのか、また、必要な立入調査と、それを踏まえた改善が行われるのかは疑問です。

 総理に質問します。自治体から上げられている実務が進めにくいという声に対し、政府はどのように対処するのでしょうか。自治体の声を反映させないで、幼児教育の一部無償化のような生活に密着した制度の改正をうまく進めることができるとお考えでしょうか。お答え願います。

 幼児教育の無償化は、本年十月一日から実施することになっています。この四月から幼稚園、保育園に子供を通わせようとしている保護者は、現段階で、本制度についての質問がたくさんあるにもかかわらず、決定されていない事項が多く、現場の保育園、幼稚園も極めて不安を抱えています。

 総理に質問します。なぜ、今回の幼児教育の無償化は、年度始まりではなく、ただ現場に混乱をもたらすだけの十月始まりなのでしょうか。このまま見切りで新制度が進められてしまうのでしょうか。明確にお答えください。

 私たち日本維新の会は、地方の声、現場の声を反映させていない今回の幼児教育の一部無償化の進め方に大いに疑問を持っています。日本の将来を決める重要な問題こそ現場の声を重視すべきであることを主張いたしまして、私からの質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 浦野靖人議員にお答えをいたします。

 増税に頼らない幼児教育、保育の無償化についてお尋ねがありました。

 少子高齢化、そして人生百年の時代にあって、我が国が誇る社会保障のあり方もまた大きく変わらなければなりません。お年寄りだけでなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで、広く安心を支えていく全世代型社会保障への転換をなし遂げなければなりません。

 本年十月より実施する幼児教育、保育の無償化はその重要な第一歩であり、そのため、消費税率引上げによる増収分の使い道を見直し、子育て世代、子供たちに大胆に投資することがどうしても必要であります。

 御指摘の行財政改革についても、安倍内閣においては、これまで改革努力や歳出削減努力を積み重ねてきたところであり、今後とも、徹底的な重点化、効率化などに取り組むことで、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。

 認可外保育施設への指導監査体制の充実についてお尋ねがありました。

 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々も、負担軽減の観点から無償化の対象としています。

 そのため、認可外保育施設の質の確保、向上を図る観点から、職員の増員等の措置により、都道府県等の指導監督の充実を図ることとしております。

 未来を担う子供たちの安全が確保されるよう、支援を行ってまいります。

 地方自治体における無償化に係る実務についてお尋ねがありました。

 幼児教育、保育の無償化の円滑な実施に当たっては、国と地方が適切に役割分担しつつ、連携、協働していくことが重要であると考えており、これまで担当府省と地方自治体とで実務に関する議論を行いながら検討を進めてまいりました。

 認可外保育施設については、今般の無償化を契機に、その質の確保、向上を図ることとしており、そのうち、特にベビーシッターについては、保育従事者の資格や研修受講などについて新たな指針の策定を行うこととしています。

 引き続き、地方自治体の御意見をしっかり伺いながら、本年十月からの実施に向け、準備を進めてまいります。

 無償化の実施時期と実施に向けた準備についてお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化は、消費税率引上げによる増収分を活用して行うことから、その引上げ時期に合わせて二〇一九年十月から実施することとしました。

 無償化に当たっては、保育者や現場に混乱を生じさせることなく、円滑に実施できるよう、これまで担当府省と地方自治体とで実務に関する議論を行いながら検討を進めてきました。

 引き続き、関係者の皆様の御意見をしっかり伺いながら、本年十月からの実施に向け、準備を進めるとともに、順次、現場の皆様や保護者の皆様へ必要な情報をお伝えしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 中島克仁君。

    〔中島克仁君登壇〕

中島克仁君 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。

 会派を代表して、子ども・子育て支援法改正案について質問をいたします。(拍手)

 増税の前にやるべきことがある。二〇一二年、初当選した総選挙で、必死に訴えてきた言葉です。その主眼は、医療制度改革を中心とする社会保障制度の抜本改革です。

 その後、消費税率は八%となり、更に一〇%への引上げが予定されておりますが、肝心の社会保障制度改革は立ちおくれています。既得権益と戦い、国民に必要な改革を断行すべきという思いはより強くなり、信頼する仲間と政策グループGO―NAISを結成し、先週には児童虐待について緊急医療提言を行うなど、活動を続けております。

 少子高齢化、人口減少社会に突入した我が国の社会保障、特に医療制度は、疾病構造の変化、国民ニーズの変化に加え、財政的にも限界が来ております。増税するならば、同時に医療制度を始めとする社会保障制度全般の抜本的な見直しを始めなければ、間に合いません。

 疾病構造、人口構造の変化、国民の不安解消のために、医療財政の構造改革、抜本的な医療制度の見直し、再構築が必要と考えますが、総理の見解を求めます。

 医療制度改革の中心は、かかりつけ医の制度化。かかりつけ医を登録制、包括報酬制度にしていくことと考えております。

 この件に関して、我が会派の重徳和彦議員が二月十四日の本会議で根本厚生労働大臣に質問をしたところ、かかりつけ医の普及、定着に取り組んでまいりますと答弁をされました。

 現在、我が国にかかりつけ医とされる医師は何人いて、今後、何人を目標としているのか。政策効果の評価をどう認識しているのか、お尋ねをいたします。

 我々は、医療の民主化を掲げ、医療と福祉、予防、介護、それぞれの壁を打ち破り、信頼される医療制度に再構築するための具体的な政策を提案してまいります。

 児童虐待について、児童相談所への相談件数は年々増加し、重大な児童虐待事件も後を絶たないなど、深刻な状況です。社会全体でこの現実を受けとめ、向き合っていかなければなりません。

 通報、相談件数がふえているのはこれまでのさまざまな取組の結果とも言えますが、そもそも、日本全体で児童虐待はふえているのか、減っているのか。政府として現状をどう捉えているのか、お尋ねをいたします。

 加えて、総理御自身は児童虐待の本質的課題はどこにあると考えておられるのか、お尋ねをいたします。

 児童虐待については多くの要因が入り組んでいることから、さまざまな角度からアプローチが必要だと考えられます。虐待の予防、発生リスクへの対応も重要です。経済的困窮など、貧困問題も重要なリスク要因であります。

 介護離職ゼロ、待機児童ゼロというならば、総理、ぜひこの場で、子供貧困ゼロ、児童虐待ゼロを実現すると国民に向け明確に宣言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 児童虐待対応においては、言うまでもなく、子供の人権、命が最優先されなければなりません。目黒区、野田市の事案において、虐待の身体的兆候を診る医師の第三者的な所見が軽視されたことが重大事件に発展した要因となっていることから、我々は、医療的観点からの取組が重要と考えております。

 虐待の身体的兆候を見逃さないよう、専門的知見のある医師が第三者的に児相の判断に関与することを制度上位置づけることが必要と考えますが、見解を求めます。

 加えて、早期発見から迅速な対応がされるよう、医師に対して研修を義務化し、医療の重層的な虐待対応体制を実現する必要があると考えますが、御見解をお尋ねいたします。

 幼児教育無償化は、一昨年の衆議院選挙に、突如、総理の独断で決められ、政争の具として利用されました。待機児童対策や保育の質の確保に関する議論を置き去りに、なぜ幼児教育無償化が優先なのか、いまだ理解できません。保育士の処遇改善、児童虐待問題など、喫緊の課題は数多くあります。

 社会保障、福祉の目指すべき全体像、グランドデザインを示された上で、優先順位を決め、対応していくべきだと考えますが、消費税の増収分の使い道に幼児教育無償化が最優先される明確な理由をお示しください。

 今回の法律案では、無償化の上限額が全国一律で設定されているなど、費用負担の地域への配慮が不十分です。実態として、保育に投入されている補助金は自治体によって大きく異なっており、それぞれ独自に上乗せ補助が広く行われております。

 幼児教育の重要性や子育て世帯の経済的負担軽減の観点から無償化を進めるのであれば、まず、市区町村間で保育の費用負担や質にどの程度差があるのか、他の自治体と比べて保育料負担が重い自治体や保育の質が悪い自治体を把握し、それぞれに対する支援のあり方を検討することが必要と考えますが、見解を求めます。

 今回の無償化の対象には認可外施設も含まれています。昨年、内閣府が公表した保育施設等における事故報告集計において、入所児童数の比率を考慮した比較では、認可外保育施設の死亡事故発生率は認可保育所の十倍を超える率となっております。

 安全が確保されていない認可外保育施設を無償化の対象にするのは、保育の質を無視し、なし崩し的に子供の命を危険にさらすことになりかねません。子どもの権利条約にも反するものだと考えますが、見解を求めます。

 教育の質のチェック、施設ごとの監査結果の公表、不適切な施設の閉鎖などの仕組みを設けるなど、新たな基準や監査制度を構築することが優先だと考えますが、見解を求めます。

 最後に、今回の幼児教育無償化は、待機児童問題や保育士不足が一層深刻化することが予想されること、幼児教育の質が向上するという展望が見えないこと、無償化の恩恵が高所得者層に偏るなど構造的な問題があることを指摘し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 中島克仁議員にお答えをいたします。

 医療制度の見直しについてお尋ねがありました。

 少子高齢化の進展や疾病構造が大きく変化する中で、我が国の医療制度についても、こうした時代にふさわしい制度へ進化していくことが求められています。

 このため、地域における医療ニーズなどに適応した医療提供体制の再編や、地域包括ケアの推進、予防、健康づくりに対するインセンティブの強化により、健康寿命を延ばし、生涯現役社会をつくり上げていくとともに、給付と負担の見直しにより医療保険制度の持続可能性を確保することなど、人生百年時代を見据えた改革を進め、全ての世代が安心できる制度の構築に努めてまいります。

 児童虐待の現状と課題についてお尋ねがありました。

 平成二十九年の児童相談所における児童虐待相談対応件数は、過去最多の約十三万件であり、前年度に比べて約一万件の増加となっています。

 増加の要因については、引き続き分析が必要だと考えていますが、国民、関係機関の児童虐待に対する意識が高まったことや、警察などの関係機関との連携が強化されたことに伴う通告件数の増加も影響しているのではないかと考えています。

 児童虐待防止に関しては、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援を切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要であると考えており、その一環として、去る二月八日にも新たな対応を指示したところです。

 また、今国会に提出を予定している児童福祉法等の改正法案において、体罰禁止の法定化、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、一時保護等を行う介入の担当者と保護者支援の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化など、実効性のある対策を盛り込むよう、準備を急がせているところであります。

 何よりも子供の命を守ることを最優先に、あらゆる手段を尽くし、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。

 子供の貧困対策や児童虐待防止対策についてお尋ねがありました。

 子供の貧困対策については、これまで、子供の貧困対策に関する大綱に基づき、子供への学習支援や居場所づくりといった生活支援、保護者に対する就労支援、養育費の確保といった経済的支援などの総合的な施策を展開してまいりました。

 また、平成三十一年度内を目途に新たな大綱を作成することを目指し、具体的な検討を開始しています。

 また、児童虐待防止対策については、先般指示した在宅児童の安全確認や通告元の情報秘匿といった緊急的な対策を講じるとともに、今国会に提出予定の児童福祉法等の改正案に実効性のある対策を盛り込むことにより、児童虐待の根絶に向けて総力を挙げてまいります。

 消費税の増収分の使い道に無償化が優先される理由についてお尋ねがありました。

 少子高齢化、そして人生百年の時代にあって、我が国が誇る社会保障のあり方もまた大きく変わらなければなりません。お年寄りだけではなく、子供たち、子育て世代、さらには現役世代まで、広く安心を支えていく全世代型社会保障への転換をなし遂げなければなりません。

 その重要な第一歩として、今般、消費税率引上げ分の使い道を見直し、子育て世代、子供たちに大胆に投資し、幼児教育、保育の無償化に取り組むこととしたものであります。

 今後、生涯現役時代の雇用制度改革や、医療、年金も含めた社会保障全般にわたる改革を始めとして、全ての世代が安心できる社会保障制度を構築するため、改革を進めてまいります。

 なお、幼児教育無償化について、自民党においては、政権を奪還したときから公約の中に幼児教育の無償化を進めていくということを申し上げてきており、私の独断あるいは政争の具といった指摘は全く当たりません。

 各自治体における子育て支援についてお尋ねがありました。

 我が国最大の課題である少子高齢化を克服するため、消費税率引上げ分の使い道を変更し、本年十月より、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育を一気に無償化することとしました。

 地方自治体によっては、既に独自の取組により保育料の負担軽減を行っていると承知しています。こうした自治体独自の財源による取組と、今般の幼児教育、保育の無償化が相まって、質の向上やサービス量の拡大など、子育て支援の充実につながるよう、自治体ともよく連携してまいります。

 認可外保育施設に対する指導監督の仕組みの構築についてお尋ねがありました。

 本年十月から実施する幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がおり、こうした方々も、負担軽減の観点から無償化の対象としています。

 無償化を契機に、認可外保育施設の質の確保、向上を図るため、児童福祉法に基づく施設閉鎖命令など、都道府県等が指導監督権限を適切に執行することが重要です。

 このため、指導監督基準等の明確化を図るとともに、特にベビーシッターについては、保育従事者の資格や研修受講などについて新たな基準の策定を行うこととしています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣根本匠君登壇〕

国務大臣(根本匠君) 中島克仁議員にお答えをいたします。

 かかりつけ医の人数とその目標数及び政策効果の評価についてお尋ねがありました。

 患者が身近な地域でかかりつけ医を持つことができるよう、環境整備を進めることが重要と考えております。

 行政がかかりつけ医の認定等を行っているものではないため、御指摘の人数の把握や目標数の設定は困難ですが、かかりつけ医の普及のプロセスに着目し、二〇二〇年度までに全ての都道府県においてかかりつけ医の普及に資する事業を実施することを目標に、今年度より、事業の実施、未実施を把握して、政策評価を行っております。

 平成三十年度の事業の実施状況については、二十九道府県にとどまっており、厚生労働省としては、都道府県や医師会等の関係団体と連携しながら、引き続き、かかりつけ医の普及、定着に取り組んでまいります。

 医師が児童相談所の判断に関与することについてお尋ねがありました。

 児童相談所において、医学的な知見を踏まえたケースにケース対応ができるよう、児童相談所における意思決定に医師が日常的に関与をし、児童福祉司等とともに対応できるような体制整備を推進することは重要であると考えております。

 このため、今般提出予定の児童福祉法等の一部改正法案においては、児童相談所における医師の配置の義務づけなどの内容を盛り込む方向で検討中であります。

 児童虐待対応に携わる医師に対しての研修義務化についてお尋ねがありました。

 児童虐待について早期に気づき、的確な支援につなげていくため、地域における医師などの医療関係者や医療機関との連携体制を構築することは重要と考えております。

 政府としては、医師等の医療関係者の研修費用に対する補助等を行っており、まずは、こうした取組を進めることにより、児童虐待にかかわる医師の確保等の体制整備を進めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣宮腰光寛君登壇〕

国務大臣(宮腰光寛君) 認可外保育施設の質や安全の確保についてお尋ねがありました。

 今般の幼児教育、保育の無償化に当たっては、待機児童問題により、やむを得ず認可外保育施設を利用せざるを得ない人がいることから、こうした方々についても、負担軽減の観点から対象とすることといたしました。

 認可外保育施設の質を確保、向上させることは重要であると認識しておりまして、厚生労働省を中心に、指導監督基準を満たすための支援や認可施設に移行するための支援を進めてまいります。

 あわせて、重大事故の防止に関する取組にも力を入れてまいります。

 児童の権利に関する条約の趣旨も踏まえ、引き続き保育施設における安全性や質の確保についてしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十六分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣   安倍 晋三君

       厚生労働大臣   根本  匠君

       防衛大臣     岩屋  毅君

       国務大臣     宮腰 光寛君

       国務大臣     山本 順三君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官  西村 康稔君

       内閣府副大臣   左藤  章君


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