衆議院

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第24号 令和元年5月16日(木曜日)

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令和元年五月十六日(木曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十七号

  令和元年五月十六日

    午後一時開議

 第一 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第四 食品ロスの削減の推進に関する法律案 (消費者問題に関する特別委員長提出)

 第五 船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第六 中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第七 学校教育の情報化の推進に関する法律案(第百九十七回国会、遠藤利明君外六名提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第三 放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第四 食品ロスの削減の推進に関する法律案(消費者問題に関する特別委員長提出)

 日程第五 船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第六 中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第七 学校教育の情報化の推進に関する法律案(第百九十七回国会、遠藤利明君外六名提出)

 岩屋防衛大臣の「平成三十一年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成三十一年度〜平成三十五年度)」に関する報告及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 御報告いたします。

 天皇陛下御即位に当たり慶祝の意を表するため、去る九日の本会議において議決いたしました賀詞は、去る十四日、皇居において、天皇陛下にお目にかかり、謹んで奉呈いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第一 戸籍法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、戸籍法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。法務委員長葉梨康弘君。

    ―――――――――――――

 戸籍法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔葉梨康弘君登壇〕

葉梨康弘君 ただいま議題となりました法律案につきまして、法務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図るため、非本籍地の市区町村長に対する戸籍証明書等の交付の請求及び戸籍電子証明書提供用識別符号等の発行の制度を設けるとともに、法務大臣が、磁気ディスクをもって調製された戸籍又は除かれた戸籍の副本に記録されている情報を利用して、親子関係の存否その他の身分関係の存否に関する情報、婚姻関係その他の身分関係の形成に関する情報その他の戸籍関係情報を作成し、これを行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律による行政機関、地方公共団体等からの照会に応じて提供することができるようにする等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る五月七日本委員会に付託され、翌八日山下法務大臣から提案理由の説明を聴取し、十日、質疑を行い、質疑を終局しました。次いで、討論、採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第二、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長冨岡勉君。

    ―――――――――――――

 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔冨岡勉君登壇〕

冨岡勉君 ただいま議題となりました障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案について、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、障害者の雇用を一層促進するため、所要の措置を講じようとするもので、その主な内容は、

 第一に、国及び地方公共団体がみずから率先して障害者の雇用に努めなければならない責務を規定すること、

 第二に、国及び地方公共団体に対し、障害者活躍推進計画の作成及び公表、厚生労働大臣に通報した対象障害者の任免に関する状況の公表等を義務づけること、

 第三に、短時間労働者のうち一週間の所定労働時間が一定の範囲内にある障害者を雇用する事業主に対し、障害者雇用納付金を財源とする特例給付金を支給する仕組みを創設すること

等であります。

 本案は、去る四月二十三日の本会議において趣旨説明が行われた後、同日本委員会に付託されました。

 本委員会におきましては、翌二十四日根本厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、二十六日から質疑に入り、五月七日には参考人から意見を聴取するなど審査を行い、十日に質疑を終局いたしました。次いで、討論、採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第三 放送法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第三、放送法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長江田康幸君。

    ―――――――――――――

 放送法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔江田康幸君登壇〕

江田康幸君 ただいま議題となりました法律案につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、近年における放送をめぐる視聴環境の変化及び日本放送協会に対する信頼確保の必要性に鑑み、日本放送協会のインターネット活用業務の対象を拡大するとともに、日本放送協会の適正な経営を確保するための制度を充実するほか、衛星基幹放送の業務の認定要件を追加する措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月二十二日本委員会に付託され、翌二十三日石田総務大臣から提案理由の説明を聴取し、五月十四日、参考人から意見聴取を行い、質疑を終局いたしました。次いで、討論を行い、採決いたしましたところ、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 日程第四は、委員長提出の議案でありますから、委員会の審査を省略するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。

    ―――――――――――――

 日程第四 食品ロスの削減の推進に関する法律案(消費者問題に関する特別委員長提出)

議長(大島理森君) 日程第四、食品ロスの削減の推進に関する法律案を議題といたします。

 委員長の趣旨弁明を許します。消費者問題に関する特別委員長土屋品子君。

    ―――――――――――――

 食品ロスの削減の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔土屋品子君登壇〕

土屋品子君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。

 我が国においては、まだ食べることができる食品が日常的に廃棄され、年間六百万トンを超えると推計される食品ロスが発生しております。

 本案は、このような食品ロスの削減を総合的に推進することを目的とするものであり、その主な内容は、

 第一に、政府は、閣議決定により食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針を定めなければならないこととするとともに、この方針を踏まえ、地方公共団体は、食品ロス削減推進計画を定めるよう努めなければならないこと、

 第二に、基本的施策として、国及び地方公共団体は、食品ロスの削減について、消費者、事業者等の理解と関心を深めるための普及啓発、食品関連事業者等の取組やフードバンク活動に対する支援等の施策を講ずるものとすること

などであります。

 本案は、去る五月十四日の消費者問題に関する特別委員会におきまして、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。

 なお、委員会におきまして、食品ロスの削減の推進に関する件について決議が行われたことを申し添えます。

 何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案を可決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第五 船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第五、船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長谷公一君。

    ―――――――――――――

 船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔谷公一君登壇〕

谷公一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、燃料油条約及び難破物除去条約の締結に伴い、船舶から流出した燃料油による汚染損害及び座礁船舶等の難破物の除去に要した費用負担により生ずる損害に関し、被害者への賠償が確実に実施されるための措置を講ずるもので、その主な内容は、

 第一に、海難等により生ずるこれらの損害について、船舶所有者等に責任が発生した際に、被害者から保険者等に対して損害賠償額の支払いを直接請求できること、

 第二に、燃料油による汚染損害に係る損害賠償請求について、条約締約国の裁判所が下した判決が、我が国においても効力を有すること、

 第三に、これらの損害に対する保険契約の締結を義務づける船舶の範囲を、一定の内航船舶等にも拡大すること

などであります。

 本案は、去る五月九日本委員会に付託され、十日石井国土交通大臣から提案理由の説明を聴取し、十五日、質疑を行い、質疑終了後、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第六 中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第六、中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。経済産業委員長赤羽一嘉君。

    ―――――――――――――

 中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤羽一嘉君登壇〕

赤羽一嘉君 ただいま議題となりました法律案につきまして、経済産業委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本法律案は、昨今の自然災害の頻発や経営者の高齢化等を踏まえ、中小企業、小規模事業者の事業の継続に資するため、事業継続力強化に関する計画の認定制度を創設し、認定を受けた者について、各種の支援措置を講じることにより、中小企業等の災害対応力を高めるとともに、個人事業者の生前贈与による円滑な事業承継を促進するための措置等を講じようとするものであります。

 本案は、去る四月十六日、本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、本委員会に付託されました。

 十七日に世耕経済産業大臣から提案理由の説明を聴取し、二十四日、参考人質疑を行った後、埼玉県内の中小企業及び埼玉県事業引継ぎ支援センターの視察を行い、中小企業におけるBCPの取組状況や事業承継の現状及び課題について聴取し、質疑を行いました。五月十日及び十五日に本委員会において質疑を行い、質疑終局後、採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決いたしました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第七 学校教育の情報化の推進に関する法律案(第百九十七回国会、遠藤利明君外六名提出)

議長(大島理森君) 日程第七、学校教育の情報化の推進に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。文部科学委員長亀岡偉民君。

    ―――――――――――――

 学校教育の情報化の推進に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔亀岡偉民君登壇〕

亀岡偉民君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、全ての児童生徒がその状況に応じて効果的に教育を受けることができる環境の整備を図るため、学校教育の情報化の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとするものであり、その主な内容は、次のとおりであります。

 第一に、基本理念として、学校教育の情報化の推進に当たっては、情報通信技術の特性を生かした双方向性のある教育の実施や、デジタル教材による学習とその他の学習を組み合わせた多様な方法による学習の推進等を行わなければならないこととすること、

 第二に、学校教育の情報化の推進に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、政府は、必要な法制上又は財政上の措置等を講じなければならないこととすること、

 第三に、文部科学大臣は、学校教育の情報化の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、学校教育情報化推進計画を定めなければならないとするとともに、地方公共団体においては、同計画を基本として、その区域における推進計画を定めるよう努めるものとすること

などであります。

 本案は、第百九十七回国会に提出され、継続審査となっていたものであり、今国会においては、昨十五日、提出者盛山正仁君から提案理由の説明を聴取した後、質疑を行い、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(「平成三十一年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成三十一年度〜平成三十五年度)」に関する報告)

議長(大島理森君) 防衛大臣から、「平成三十一年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成三十一年度〜平成三十五年度)」に関する報告について発言を求められております。これを許します。防衛大臣岩屋毅君。

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 政府は、昨年十二月十八日、国家安全保障会議及び閣議において、新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画を決定いたしました。

 以下、これらについて御報告申し上げます。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、前防衛大綱の策定時に想定していたよりも、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。特に、国際社会におけるパワーバランスの変化により、国家間の競争が顕在化するとともに、グレーゾーンの事態が長期にわたって継続する傾向にあります。また、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域の利用が急速に拡大したことで、国家の安全保障のあり方は根本から変わろうとしております。さらに、我が国の周辺には、質、量にすぐれた軍事力を有する国家が集中し、軍事力のさらなる強化や軍事活動の活発化の傾向が顕著となっています。

 こうしたこれまでに直面したことのない安全保障環境の中で、我が国が平和国家として更に力強く歩んでいくためには、我が国自身が、国民の生命、身体、財産と領土、領海、領空を主体的、自主的な努力によって守る体制を強化する必要があります。このような認識のもと、専守防衛を前提に、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力のあるべき姿を見定め、新たな防衛大綱と中期防を策定いたしました。

 新たな防衛大綱では、まず、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出すること、また、我が国に脅威が及ぶことを抑止すること、そして、万が一、我が国に脅威が及ぶ場合には、確実に脅威に対処し、かつ被害を最小化することという、防衛の目標を明確に示し、この達成に必要な三つの手段をそれぞれ強化することにしています。

 第一に、我が国の防衛体制の強化です。

 防衛力は、安全保障の最終的な担保です。これまでに直面したことのない安全保障環境の現実のもとで、国家として存立を全うするため、我が国の主体的、自主的な努力によって防衛力の質、量を強化していかなければなりません。宇宙、サイバー、電磁波を含む全ての領域の能力を有機的に融合させる領域横断作戦を行うことができ、また、平時から有事までのあらゆる段階において、柔軟かつ戦略的な活動を常時継続的に実施できる、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力を構築してまいります。

 第二に、日米同盟の強化です。

 日米安全保障体制を中核とする日米同盟は、我が国のみならず、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしています。日米防衛協力のための指針のもと、日米同盟の抑止力、対処力の強化や、自由で開かれた海洋秩序の維持強化を含む幅広い分野における協力の強化、拡大を行ってまいります。

 また、在日米軍再編を着実に進め、特に、沖縄については、近年、米軍施設・区域の返還等、負担軽減を一層推進してきているところですが、引き続き、普天間飛行場の移設を含む在沖縄米軍施設・区域の整理、統合、縮小、負担の分散等により、地元の負担軽減を図ってまいります。

 第三に、安全保障協力の強化です。

 自由で開かれたインド太平洋というビジョンを踏まえ、防衛力を積極的に活用しながら、地域の特性や相手国の実情を考慮しつつ、多角的、多層的な安全保障協力を戦略的に推進してまいります。この際、日米同盟を基軸とし、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々との緊密な連携を図ってまいります。

 これらの実現に向けた防衛力の強化は、格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、従来と異なる速度で行わなければなりません。新たな防衛大綱及び中期防では、特に優先すべき事項を可能な限り早期に強化するため、既存の予算、人員の配分に固執することなく、資源を柔軟かつ重点的に配分することとしています。

 具体的には、領域横断作戦に必要な能力を優先的に強化することとしており、特に、宇宙、サイバー、電磁波の領域における能力、海空領域における能力、スタンドオフ防衛能力、総合ミサイル防空能力、機動展開能力、防衛力の持続性、強靱性を重視しております。

 同時に、人的基盤の強化、装備体系の見直し、技術基盤の強化、装備調達の最適化、産業基盤の強靱化、情報機能の強化にも優先的に取り組んでまいります。

 あわせて、訓練・演習、衛生、地域コミュニティーとの連携、知的基盤にもしっかりと取り組んでまいります。

 これらに必要な事業を積み上げた結果、令和元年度から五年間の新たな中期防における防衛力整備の水準は、おおむね二十七兆四千七百億円程度を目途としております。

 その上で、装備体系の見直しや装備調達の最適化を含め、一層の効率化、合理化を進めることによって実質的な財源の確保を図り、おおむね二十五兆五千億円を目途に、各年度の予算編成を実施することとしております。

 また、新たな中期防においては、新規後年度負担に係る国民への説明責任を果たす観点から、新たな事業に係る物件費の契約額を明確にすることとし、おおむね十七兆一千七百億円の枠内として示しております。

 以上申し述べました新たな防衛大綱及び中期防のもと、真に実効的な防衛力を構築し、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の生命、身体、財産、そして領土、領海、領空を守り抜くため、防衛省・自衛隊は今後とも全力を尽くしてまいる所存です。

 皆様の御理解と御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の発言(「平成三十一年度以降に係る防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画(平成三十一年度〜平成三十五年度)」に関する報告)に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。熊田裕通君。

    〔熊田裕通君登壇〕

熊田裕通君 自由民主党の熊田裕通です。

 自由民主党を代表して、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画に関する報告に対する質問をさせていただきます。(拍手)

 我が国を取り巻く安全保障環境は、厳しさと不確実性を増しております。こうした中、自由民主党は、日本を守り抜くとの強い決意のもと、我が国の安全保障、防衛のあり方について不断の検討を行ってまいりました。

 前大綱策定後の安全保障環境を鑑みれば、テクノロジーの進化が安全保障のあり方を根本から変えようとしつつあり、陸、海、空といった既存の領域に加え、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域における能力強化が死活的に重要となっております。

 我が党は、その中でも国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、昨年五月、多次元横断、クロス・ドメインの防衛構想の実現に向け、提言を取りまとめてまいりました。

 安倍政権は、我が党の提言を踏まえつつ、昨年十二月、新たな防衛大綱と中期防を策定し、未来の礎となる、国民を守るために真に必要な防衛力を構築していく方針を打ち出しましたが、改めて今般の防衛大綱の見直しの意義について総理のお考えをお聞かせください。

 現下の安全保障環境では、あらゆる分野での陸海空自衛隊の統合を推進するだけではなく、政府一体となった取組や地方公共団体、民間団体等との協力といった、我が国が持てる力を総合する防衛体制を構築し、また、日米同盟に基づく米国との共同も進めていく必要があり、新たな大綱ではこうした点が十分反映されているものと認識しております。

 また、新たな大綱では、真に実効的な防衛力として、多次元統合防衛力の構築を図ることとしております。この防衛力のポイントは領域横断作戦であり、そのために、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域の強化が不可欠だと考えますが、新たな領域について、具体的にどのような能力をどのような形で強化するのか、防衛大臣のお考えをお聞かせください。

 多次元統合防衛力の構築には、新たな領域だけではなく、従来の領域の能力強化も必要であり、特に、海空優勢の確保は極めて重要です。

 近年、太平洋の空域における軍用機の活動が急速に拡大、活発化している中、我が党は、列島線防衛のための平時、有事の防空任務や災害時の救援活動の拠点としての機能等、さまざまなことに用いる多用途運用母艦の導入に向けた検討を進める旨、提言をいたしました。

 政府は、この提言を踏まえ、新たな大綱、中期防の中で、短距離離陸垂直着陸が可能な戦闘機を運用できるよう、「いずも」型護衛艦を改修することを決定いたしました。

 その意義と、これが憲法に違反しない、専守防衛の範囲内であることを、改めて国民にわかりやすく御説明を願います。

 防衛力の中核は人であり、優秀な人材を確保し、その能力、士気の維持向上を図っていく必要があります。他方で、少子高齢化の急速な進展により、自衛官の募集難が続いております。

 新たな防衛大綱では、人的基盤の強化が優先事項の一つとして挙げられておりますが、人材確保や能力、士気向上のため、どのような取組を行うのか、防衛大臣のお考えをお伺いします。

 また、国内の防衛産業は、装備品の生産、運用、維持整備に不可欠な存在です。他方で、我が国の防衛産業の衰退を懸念する声も聞こえております。

 新たな大綱で掲げられた防衛産業の強靱化の方針のもと、我が国の防衛産業の競争力強化の観点から、国内産業の育成をどのように進めていくのか、基本的な考えを御説明ください。

 真に実効的な防衛力を構築するためには、自衛隊の活動や防衛力整備に必要となる経費の確保が不可欠です。

 新たな中期防では、必要な防衛力整備の水準に係る金額を、過去最大の二十七兆四千七百億円程度とされ、これにより、大綱で示された能力強化のための必要な取組が実施できると考えております。

 一方で、厳しさを増す財政状況を踏まえれば、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底し、防衛費を適切に管理することも重要であります。

 新たな中期防では、従来定めてきた防衛力整備の水準に係る金額及び各年度の予算編成に伴う防衛関係費に加えて、五年間で新規に契約する事業の総額として、おおむね十七兆一千七百億円という新たな枠を設けております。この狙いと想定される効果について、防衛大臣から御説明を願います。

 真に実効的な防衛力を構築することは急務であります。安倍総理と岩屋防衛大臣の力強いリーダーシップでこれを着実に進めていくことを期待し、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 熊田裕通議員にお答えをいたします。

 防衛大綱の見直しの意義についてお尋ねがありました。

 政府の最も重大な責務は、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことです。これは、独立国家として第一義的に果たすべき責任であり、みずからの主体的、自主的な努力によってその責任を果たしていくことが安全保障の根幹です。

 今、国際社会のパワーバランスは大きく変化しつつあり、我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。

 また、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域が死活的に重要になっており、陸、海、空での対応を重視してきたこれまでの安全保障のあり方を根本から変えようとしています。

 このような認識のもと、防衛大綱を見直し、我が国として、みずからを守る体制を主体的、自主的な努力により抜本的に強化し、みずからが果たし得る役割の拡大を図っていく考えです。

 同時に、これこそが、日米同盟の抑止力と対処力を一層強化していく道であり、各国との安全保障協力を戦略的に進めていくための基盤となるものです。

 防衛力の強化に当たっては、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力を構築するため、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保していく考えです。

 未来の礎となる、国民を守るために真に必要な防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で改革を図ってまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 熊田裕通議員にお答えいたします。

 まず、新たな領域における能力の強化についてお尋ねがありました。

 防衛省としては、新たな大綱のもと、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域における能力強化を図ることとしております。

 具体的には、宇宙領域においては、情報収集、通信、測位等の能力向上に加え、宇宙空間の状況を常時継続的に監視する体制を構築します。また、有事においては相手方の指揮統制、情報通信を妨げる能力を含め、宇宙利用の優位を確保するための能力の強化に取り組んでまいります。

 次に、サイバー領域においては、サイバー防衛能力の抜本的強化を図ることとしており、有事において相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力を含めたサイバー防衛能力を整備することとしております。

 さらに、電磁波領域においては、電磁波情報の収集、分析能力の強化や、相手方のレーダーや通信等を無力化するための能力の強化を行うこととしており、F15戦闘機の能力向上やネットワーク電子戦システムの整備等を図ってまいります。

 次に、「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。

 近年、諸外国の航空戦力の近代化が著しい状況にあり、また、我が国の南西諸島の列島線を越えて、太平洋側に進出する戦闘機や爆撃機の飛行が増加するなど、太平洋の空域における軍用機の活動が急速に拡大し、かつ活発化しております。他方、広大な太平洋におきまして自衛隊の戦闘機が使用可能な飛行場は硫黄島一カ所だけでございます。

 「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、専守防衛のもと、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりとした備えを行うものであり、今後の我が国の防衛上、必要不可欠なものでございます。

 これは、自衛のための必要最小限度のものであり、憲法上保有が許されていない攻撃型空母に当たるものではございません。

 次に、新たな防衛大綱における自衛隊員の人材確保や能力、士気向上のための取組についてお尋ねがありました。

 人口減少と少子高齢化が急速に進展する中、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力、士気の向上は防衛力の強化に不可欠であり、人的基盤の強化をこれまで以上に推進していく必要があります。

 このため、新たな防衛大綱及び中期防では、人的基盤の強化を防衛力の中心的な構成要素を強化する中での優先事項と位置づけ、採用層の拡大や地方公共団体との連携による採用の取組強化、女性自衛官の一層の活用、定年年齢の引上げ等の人材の有効活用を図ることとしています。

 また、厳しい安全保障環境に対応して部隊等の活動が長期化する中にあっても、全ての隊員がみずからの能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うできるような環境を整えることも重要です。新たな防衛大綱及び中期防では、自衛隊員の生活、勤務環境の改善や働き方改革を推進するほか、給与面の改善を含む処遇の向上等を図ることとしており、そのための取組をしっかり行ってまいります。

 次に、防衛産業の競争力強化の観点から、国内産業の育成についてお尋ねがありました。

 防衛産業は、装備品の生産、運用、維持整備に必要不可欠な基盤ですが、一方で、高コスト構造や国際競争力の不足といった課題を抱えており、こうした課題に対応するため、新たな防衛大綱及び中期防において、技術基盤の強化や産業基盤の強靱化に優先事項として取り組むこととしております。

 具体的には、防衛産業が今後必要となるすぐれた装備品をしっかり開発することができるよう、重要技術に重点的に投資を行うとともに、米国等との国際共同研究開発を推進することで、技術面での競争力の強化を図ってまいります。

 さらに、コスト競争力を強化するための契約制度の見直しや、防衛装備の適切な海外移転の推進などにも取り組むことで、これまで以上に強い危機感を持って、競争力のある強靱な防衛産業を構築してまいります。

 最後に、新中期防の所要経費についてお尋ねがありました。

 防衛装備品の調達、修理のための経費は、契約年度以降も支払いが続く場合が多く、中期防期間中に契約しても、多額の経費の歳出が中期防の期間外になってしまいます。

 新たな中期防では、この防衛装備品の調達の特性を踏まえ、五年間に新規契約する物件費の額、十七兆一千七百億円を明記し、これを上限として、明確な経費の歯どめとしたところであります。

 このように、新中期防は、防衛力の強化と防衛関係費の管理の一層の適切化という二つの目的を両立したものでございます。

 今後、この経費の枠内で、一層の効率化、合理化を徹底することにより、他の諸政策との調和を図りつつ、防衛力の強化に取り組んでまいります。(拍手)

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議長(大島理森君) 本多平直君。

    〔本多平直君登壇〕

本多平直君 立憲民主党の本多平直です。

 立憲民主党・無所属フォーラムを代表し、ただいま議題となりました防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画について、岩屋防衛大臣への一問以外、自衛隊の最高指揮官であり、国家安全保障会議の議長である安倍総理に質問いたします。(拍手)

 まず冒頭、総理は、先日、北朝鮮との無条件での対話との方針を表明されました。

 その方針に異論はありませんが、対話の動きから周辺国の中で一国だけ取り残されるなど、方針転換が遅きに失した責任をどうお感じになりますか。また、この時期に突然方針転換した理由を明確にお答えください。

 これら外交姿勢の変化など、予算委員会でお聞きしたいとの我々の要求を自民党は認めず、本日で七十六日間の審議拒否を続けています。総理は、経済情勢や外交方針転換にやましい点がないなら、正々堂々予算委員会での審議に応じるよう、改めて強く求めます。

 では、防衛大綱についての質問に入ります。

 大綱の第一の問題点は、専守防衛を逸脱、つまり憲法に抵触しかねない内容が含まれていることです。

 まず、「いずも」型護衛艦二隻の空母化です。

 攻撃型空母の保有が憲法上許されないというのは、政府の主張であります。今回、政府は、空母に国際的な定義がないとか、艦載機を常時搭載するわけではないなどの理屈で、「いずも」に戦闘機を発着可能とする改修を空母化であるとは認めていません。自民党の提言骨子では、最初、多用途防衛型空母、最終提言では、空母を若干隠し、多用途運用母艦、公明党との協議で多用途運用護衛艦になり、最終的な中期防の表現は、何と、多機能の護衛艦です。国民を欺き、憲法論議を免れるためのインチキ、欺瞞、ごまかしです。

 戦闘機の発着が可能な「いずも」を空母と呼ばない極めて不誠実な見解に変更はありませんか。総理、お答えください。

 私も横須賀で視察をさせていただきましたが、「いずも」には、災害時の対応のほか、相手国の潜水艦を哨戒するヘリを搭載するという重要な任務があります。空母化により、この重要な任務に支障が出ないという具体的な根拠をお答えください。

 そもそも、具体的な運用方法も未定のまま、岩屋大臣自身が記者会見でお認めになったように、現場、自衛隊からの要請のないあしき政治主導による決定も問題だと指摘をさせていただきます。

 自民党が繰り返し政府に提言している敵基地攻撃能力についても質問します。

 政府は一貫して、敵基地攻撃能力は、攻撃からの防御のためにほかに方法がない場合には憲法上許されるが、米国にその役割を担わせる旨答弁を続けてきました。しかし、防衛用と説明していますが、航続距離九百キロを超える長射程ミサイルは、事実上、敵基地攻撃能力ではありませんか。改めて、敵基地攻撃能力を保有しないという方針に変更はないか、お答えください。

 念のため申し上げますと、例えば北朝鮮のミサイル発射基地は移動式のものも多く、場所の探知は簡単ではありません。こうした敵基地への対応こそ米国が担うとするこれまでの政府の方針こそがリアリズムであると考えますが、いかがですか。

 第二の問題点は、防衛費の抑制なき拡大の問題です。

 安倍政権以前の大綱にあった節度ある防衛力整備との文言は既になく、日本を取り巻く安全保障環境について、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しているとされ、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化と、違和感を覚える過剰な表現のもと、防衛費の拡大が続いています。

 相手国の真意が読めない中、防衛費には常に拡大の圧力が働きがちです。それを冷静に、適切に、節度を持って、常に抑制の可能性がないのか検証することこそ政治の役割だと考えますが、総理、いかがですか。

 一機百十億円を超えるF35戦闘機百五機の、まさに爆買いともいうべき大量購入は、米国トランプ政権の強い圧力も背景に、まさに節度が完全に失われたと言わざるを得ません。

 F35は、米国会計検査院から、八百項目以上の技術的問題や、部品不足により三割が飛行できない状況にあることなどが指摘されており、また、先日の墜落事故の原因究明も進んでいません。一旦立ちどまって、導入のあり方、導入機数などを再検討すべきと考えますが、いかがですか。

 昨年五月の自民党の提言を読んで、私は大変驚きました。NATOが防衛費の対GDP比二%を達成することを目標にしていることも参考にしつつ、必要かつ十分な予算を確保するとありますが、現在、我が国の防衛費の対GDP比は約一%です。これを二%にするということは、五兆円を十兆円に引き上げるということにほかなりません。財政上、あり得ない金額です。

 自民党がこのように非現実的な目標を掲げていることは、来る参議院選挙でしっかりと国民の皆さんに御判断いただきたいと思います。そもそも、欧州諸国の予算のGDP比を参考にするなら、公的教育予算、子育て支援の値こそ参考にすべきと考えますが、いかがですか。

 第三の問題点は、費用対効果の視点、さらに、防衛装備の実効性の問題です。

 その象徴が、秋田、山口に二基二千四百億円を超える費用で導入予定のイージス・アショアです。米朝協議などで情勢に変化があり得、運用開始は早くても二〇二四年度以降、実験施設の建設など、更に費用の増加もあり得ます。

 改めて、イージス艦を八隻体制にしても更になおイージス・アショアが必要な理由、及び攻撃対象になりやすく他の用途に転用できない陸上に固定されたイージス・アショアよりも、他の任務との併用や転用が可能なイージス艦によるミサイル防衛を隊員のシフト体制にも留意しながら充実する道は本当にないのか、お答えください。

 総理は、予算委員会での野党議員の質問に対し、イージス・アショアを置けば、明らかにプラスになりますよね、マイナスにはならないですよねという答弁をされました。二千四百億円もの巨額の予算について、マイナスにはならない、これでは余りに無責任です。明確にお答えください。

 そもそも、現在ミサイル防衛を担うイージス艦一隻には約九十発の迎撃用のミサイルが装填可能です。実際にはわずか八発しか装填されていないと言われています。我が国を射程におさめる北朝鮮の弾道ミサイルは三百発とも言われていますが、本気で防衛をする気なら、イージス・アショア導入より、今あるイージス艦への装填ミサイルをきっちりふやすはずです。発射する弾はすかすかなまま、新たな発射装置の購入をすることは、やはり米国の要求に屈したのか、又は国民へのアピールにすぎないのではないかと疑わざるを得ません。

 使用中のイージス艦に迎撃用のミサイルをフルに装填していない理由をお答えください。

 さらに、配備に地元の理解は当然の前提です。建設候補地が住宅地や学校に隣接する秋田が地元である我が会派の寺田学議員は、地元の理解なく米国と契約することはないかと委員会で質問しました。岩屋大臣は、契約時期については地元の皆様の御理解を得るというのは前提と答弁されました。

 ところが、地元の理解がまだないどころか、防衛省自身が行っている適地調査の結果も報告されない中、防衛省は四月二十六日、米国と契約を交わしたことを発表しました。答弁に反する今回の契約は国会を冒涜する行為だと考えます。虚偽の答弁をされたのか、考えが変わったのか、明確にお答えください。

 国会答弁に反する契約を強行して、今後更に交渉が必要な地元の皆さんの信頼を得られるとお考えですか。この質問のみ、岩屋防衛大臣、お答えください。

 第四の問題点は、イージス・アショア、F35などの米国製高額兵器導入の犠牲となり、本当に必要な予算が確保されていない問題です。

 昨年、私は、予算委員会で、基地のトイレットペーパーが不足し、隊員の方が自腹で購入しているという信じられない実態を指摘しました。さすがに総理も早速の改善を指示し、状況は改善したようですが、これは氷山の一角です。

 部品不足による航空機などの運用率の低下、訓練費用の抑制は、相次ぐ自衛隊機の事故の原因ではないかとの指摘もあります。海外派遣の際の医療体制、駐屯地への自家発電機の配備、こうした自衛隊員の命を守り、当然の活動を支える予算確保こそ、危険を顧みずに任務に当たっている自衛官の皆さんに報いることであり、自衛隊の大きな課題、人材確保にもつながると考えます。

 自衛官の名誉のため、さらには募集のために憲法改正が必要だと、私からすると的外れなことを総理はおっしゃいますが、まずやるべきことをしっかりやっていただきたい、このことを強く申し上げたいと思います。

 さらに言えば、最近の国会で、総理の意図はともかく、自衛隊違憲論について一番語られているのは、残念ながら安倍総理です。自衛隊違憲論が世の中に蔓延しているかのような誤解を与える発言を自衛隊の最高指揮官が安易に口にすることは、隊員の士気にもかかわりますし、さらに、自衛官の子供さんが誤解して悲しむといけませんので、おやめいただきたいと考えますが、いかがですか。

 沖縄の辺野古新基地建設についても一点お伺いします。

 民主党政権時代、県外移設を追求し、最終的に断念した経緯については率直に反省をしたいと思います。しかし、九年が経過し、選挙や住民投票で県民の建設反対の意向が繰り返し明確に表明され、さらに、建設予定地の軟弱地盤問題の発覚、それに伴う建設費用の高騰、工期の長期化など、状況は大きく変化しました。

 アメリカ海兵隊の沖縄での存在が抑止力だと主張されますが、米国公文書による朝日新聞の最近の報道で、海兵隊の中核部隊は年間百日以上海外に出動している実態が明らかになりました。

 私たちは改めて検討を積み重ね、米国との交渉は当然前提ですが、海兵隊の運用変更などにより、新基地建設によらずとも普天間基地の返還は可能ではないかと考えるに至りました。

 総理は、海兵隊が百日以上海外に出ている現実を把握されていますか。それでも常時抑止力は維持されているとお考えですか。この海兵隊の運用実態を踏まえた上でも、辺野古新基地建設が唯一の道だとする根拠をお答えください。

 結びに申し上げます。

 かつて自民党には、ハト派、リベラル派、護憲派と言われる方々が一定存在し、幅広い議論があったと思います。そうした流れの重鎮の皆さんが国会を去り、特に安倍政権以降、北朝鮮や中国の動向も背景にあるのでしょう、こうした抑制的な議論を少なく感じるのは、他党のこととはいえ、大変残念です。

 近隣諸国の動きに対する国民の自然な不安を受けとめる必要は当然ありますが、そうした感情を利用したり、ましてやあおったりすることは厳に慎むべきです。安全保障環境が厳しいときほど、我々政治家は、抑制的で冷静、そして当然、現実的な安全議論をすべきです。

 自民党の中でそうした流れが残念ながら弱まっていると感じる今、我々立憲民主党こそがそうした議論の先頭に立つことを国民の皆様に申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 本多議員にお答えいたします。

 北朝鮮問題についてお尋ねがありました。

 二〇〇二年に五名の拉致被害者の方々が帰国されて以来、一人の拉致被害者の帰国も実現しておりません。拉致問題の解決に当初から取り組んできた政治家として、痛恨のきわみであります。

 北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は自分自身が金正恩委員長と向き合うとの決意を私は従来から述べてきました。条件をつけずに会談の実現を目指すとは、そのようなことをより明確な形で述べたものです。

 我が国として、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指すとの考えであり、この方針に変わりはありません。

 第二回米朝首脳会談において、初日の最初のいわゆるテタテの会談で、トランプ大統領が金正恩委員長に私の考え方を明確に伝え、また、その後の少人数夕食会でも提起をしていただいたことは、大変有意義でありました。先日の日米首脳会談でも、トランプ大統領から、今後も全面的に協力するという力強い言葉がありました。

 拉致問題の解決に向けては、我が国自身が主体的に取り組むことが重要です。御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動してまいります。

 「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。

 空母については、一般的には、米空母のように、専ら航空機の運用機能に特化した艦船を指すものと考えています。

 他方、「いずも」型護衛艦は、ヘリコプター運用機能、対潜水艦作戦機能、指揮中枢機能、人員や車両の輸送機能、医療機能等を兼ね備えた多機能な護衛艦であり、今後、これに航空機の運用機能が加わっても、引き続き多機能な護衛艦として活用していく考えです。

 このため、不誠実な見解との御指摘は当たりません。

 また、改修後における航空機の運用は、有事における航空攻撃への対処、警戒監視、訓練、災害対処など、必要な場合に行うこととしています。

 「いずも」型護衛艦については、今後とも、多機能な護衛艦として、対潜水艦作戦や災害対処を含め、さまざまな事態に応じて、保有する機能を十全に発揮できるよう、適切に運用していく考えです。

 敵基地攻撃能力の保有についてお尋ねがありました。

 スタンドオフミサイルは、我が国の防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、隊員の安全を確保しつつ、我が国の安全を確保するものであり、敵基地攻撃を目的とするものではありません。

 政府としては、新たな大綱及び中期防のもとでも、いわゆる敵基地攻撃を目的とした装備体系を整備することは考えていません。

 いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しており、今後とも、こうした日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。

 防衛費のあり方についてお尋ねがありました。

 変化する安全保障環境や技術進歩を冷厳に見きわめ、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な防衛費を確保する、これが何よりも重要な視点だと考えています。

 その際、経費の抑制の可能性については常に検証を行いつつ、防衛力整備の一層の効率化、合理化を徹底していくことは当然のことと考えています。

 また、F35の百五機の追加導入は、現有のF15のうち、非近代化機九十九機全体を代替するものです。

 御指摘の米国会計検査院の報告書における指摘については、既に米国防省が改善のための取組を開始していると承知しており、我が国としても必要な確認を行っているところです。

 先般の事故については、防衛省において事故原因等について調査を進めているところであり、現時点で、F35に係る今後の方針について、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

 防衛関係費のあり方については、従来より、GDPと機械的に結びつけることは適切ではないと申し上げているところです。

 今回も、GDPと比較して何%にするかという考え方はなく、あくまで施策の実施に必要な経費を見きわめ、所要額を積み上げた上で中期防を策定しています。

 御指摘の教育や子育て支援については、今回の消費税率引上げにより生み出される財源を思い切って投入し、本年十月からの幼児教育、保育の無償化に加えて、二〇二〇年度からは真に必要な子供たちの高等教育を無償化するなど、これまでとは次元の異なる政策を実行することにより、子育てや教育に係る負担を大幅に軽減し、日本を子供を産み育てやすい国へと大きく転換してまいります。

 イージス・アショアの必要性とイージス艦の関係及びイージス艦の迎撃用ミサイルの数についてお尋ねがありました。

 弾道ミサイルの発射兆候を早期に把握することは困難となってきているなど、状況の変化を踏まえれば、今後は、二十四時間三百六十五日の常時継続的な体制を一年以上の長期にわたって維持することが必要であり、これまでの我が国の弾道ミサイル防衛のあり方そのものを見直す必要があると考えています。

 現状のイージス艦のみでは、整備、補給で港に戻るすき間の期間が生じることは避けられず、たとえシフト制の改善を行ったとしても、切れ目のない防衛体制を構築することは困難です。

 これに対し、イージス・アショア二基の導入により、我が国全域を二十四時間三百六十五日、長期にわたり切れ目なく防護することが可能となり、また、隊員の負担も大きく軽減されると考えています。

 イージス艦に搭載している各種のミサイルの数については、我が国の手のうちを明らかにすることになるため、お答えを差し控えます。

 必要な予算の確保や自衛隊違憲論に関するお尋ねがありました。

 新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画においては、装備品の導入だけでなく、装備品の可動率の確保や、より実践的で効果的な訓練、演習の実施、衛生機能の強化などを進めることとしており、同時に、栄典、礼遇に関する施策の推進、給与面の改善など処遇の向上、生活、勤務環境の改善を行うこととしています。

 このように、我が国の防衛に真に必要な施策を総合的に推進していく考えであります。

 また、自衛隊は憲法に合致したものであり、これは政府の一貫した見解です。

 一方で、近年の調査でも、自衛隊は合憲と言い切る憲法学者は二割にとどまります。これは客観的な事実であり、誤解との御指摘は当たりません。

 私は、自民党総裁として、このような現実について問題を提起していることであります。

 沖縄の海兵隊の運用の実態と普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 沖縄に駐留する海兵隊のうち、第三十一海兵機動展開隊については、年により一律ではないものの、一定期間、訓練や演習等のため、海外に展開していることは、民主党政権は御存じなかったかもしれませんが、私は承知しております。

 このような海兵隊の活動は、その練度の維持向上等により、我が国と地域の平和と安全に貢献するものと考えています。

 その上で、すぐれた機動性、即応性を有する海兵隊が、地理的に重要な位置にある沖縄を拠点として、そのプレゼンスを維持し、さらに、大規模作戦が必要となる場合には、来援する部隊の基盤となることによって、あらゆる事態に対して迅速かつ柔軟な対応が可能となります。

 このような海兵隊の特性等から、その抑止力は維持されていると考えており、この抑止力の維持と危険性の除去、この二つを考え合わせて検討を重ねた結果が現行の日米合意です。この方針は、米国政府との間で累次にわたり確認しており、トランプ大統領との間でも改めて確認したところです。

 政府としては、現行の日米合意に基づき、抑止力を維持しながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、引き続き全力で取り組んでいく考えです。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 本多平直議員にお答えいたします。

 イージス・アショアの契約と地元の理解についてお尋ねがありました。

 イージス・アショア本体二基の取得に係る契約を本年四月二十六日に米国政府と締結をいたしました。

 今回の契約で取得するイージスシステムは、配備先の地形等、個別の事情に影響されるものではなく、配備先が決定していない中でも製造可能なものでございます。また、本年度の予算に特定の配備先を前提とした予算は組まれておりません。

 イージス・アショアの可及的速やかな配備を目指す防衛省といたしましては、五年間ほどを要するイージスシステムの製造に早期に着手する必要があると考えております。

 こうした考え方について、御指摘の衆議院安全保障委員会の私の答弁も踏まえまして、契約前に関係自治体に伝達をしておりまして、その際、特段の御異論はなかったものと承知をしております。したがって、虚偽答弁との御指摘は当たりません。

 いずれにいたしましても、地元の皆様の御懸念を払拭すべく、各種調査の結果も踏まえ、具体的でわかりやすい説明ができるよう、一層努めていく考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 渡辺周君。

    〔渡辺周君登壇〕

渡辺周君 国民民主党・無所属クラブの渡辺周です。

 ただいま議題となりました防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画について質問をいたします。(拍手)

 まず、我が国を取り巻く外交・安全保障環境について幾つかお尋ねをいたします。

 まずは、北朝鮮についてであります。

 私は、五月の二日から四日まで、拉致議連の一員として、家族会や救う会の皆様たちとワシントンを訪問しました。

 言うまでもなく、拉致問題は、核、弾道ミサイルの廃棄と同様、同列の重要な課題です。我が国はこれまで、北への圧力を背景に対話を引き出す姿勢を貫き、対話のための対話では意味がない、行動対行動、拉致を始め問題解決に資するものでなければならないとの基本姿勢を総理も国の内外に主張をしてきました。

 しかし、この五月四日、総理は唐突に、私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない、前提条件をつけずに向き合わなければならないと表明し、これまでの方針を転換。私どもは大いなる疑問と違和感を抱きました。

 そこで、伺います。

 二度の米朝首脳会談を受けて、何らかのシグナルを受け取った、その上での戦術、戦略の転換なのでしょうか。お答えください。

 また、向き合うという意味は、一体どういう意味なのでしょうか。成果を求めず、まずは顔合わせをするということなのでしょうか。この向き合うという意味についてもお答えください。

 また、前提条件をつけないということは、よもやあり得ないとは思いますが、拉致を議題にしなくても会うということなのでしょうか。この点も確認をいたします。

 今回のミサイル発射は二〇一七年以来ですが、国連安保理決議違反である弾道ミサイルを発射した状況下でも、安倍総理は会談するという姿勢に変わりはないのでしょうか。この点についてもお答えください。

 また、北朝鮮が、会談の条件として、一部報じられたように、北朝鮮国籍を持つ人間の入国を認めさせる制裁解除を求めることや人道援助を求めてくる可能性は十分にあります。

 ストックホルム合意において、日本は先に制裁解除を決めたものの、北朝鮮は、拉致問題は解決済み、誰も関心がないと許しがたいことを言い放ち、核・ミサイル開発を進め、結局、成果はゼロでありました。

 ここで国民にお約束をしていただきたいと思いますが、制裁の解除は、北朝鮮からの核、ミサイル、拉致問題の解決に資する具体的な行動を確認しなければあり得ない、そのことをここで、それ抜きにして制裁の解除はないということを、ぜひ総理、ここでお約束をしていただきたいと思います。

 次に、ロシアとの平和条約締結、北方領土問題についてお尋ねします。

 ことしの北方領土返還要求の式典、あるいは予算委員会でのやりとりでも明らかになったように、我が国がこれまで当然主張してきた、北方四島は我が国の固有の領土、不法占拠という主張が使われなくなり、外交青書にも記載されなくなりました。我が国のこれまでの立場に変わりはないと幾ら総理が国会の委員会等で言ってみたところで、世界の国から見れば、主張を変えたと捉えられます。

 いわば歴史修正的な安倍政権の言動は、これまで四島の返還を国民運動として取り組んできた我々日本人としては理解に苦しみます。言いかえれば、箝口令のような気遣いは本当に功を奏すのでしょうか。

 そこで、伺います。

 北方領土は第二次世界大戦の結果の戦利品というロシア側の主張をラブロフ外相は発言をしましたけれども、これを認めることからまず交渉は始まる、このようなロシア側の主張に同意できるのでしょうか。お答えください。

 北朝鮮との交渉にも言えることですが、こちらが変われば相手も変わるという日本特有の美徳は、冷徹な外交の場では通用しません。

 総理はG20でプーチン大統領と会談をされるということでありますけれども、日ソ共同宣言に立ち返るとこれまでも繰り返し発言をしております。これは二島先行返還を求めることと同義語なのか、その点について改めて確認をしたいと思います。お答えください。

 続いて、急速に緊張が高まっているアメリカとイランについてお尋ねをします。

 米国は既に空母打撃群と爆撃機部隊を中東に派遣しており、ペルシャ湾で今月十二日、サウジ船籍二隻を含むタンカー四隻が船底に攻撃を受け、イランは関与を否定していますけれども、米国などではイラン傘下のイスラム教シーア派武装勢力の関与との見方もあります。アメリカ国務省はイランとの対立を差し迫った脅威と位置づけ、隣国イラクのアメリカ大使館職員に出国を指示したとCNNが報じています。

 我が国でも十四日、河野外務大臣は記者会見で、ホルムズ海峡の封鎖も想定して対応を検討していくと述べられました。

 そこで、伺います。

 日本政府は、現在そしてこれから、アメリカとイランの緊張をどのように分析をしているのでしょうか。ホルムズ海峡の封鎖の可能性は、一体どれぐらい現実のものとして考えているのでしょうか。お答えください。

 安保法制の議論の際に、立法事実として、ホルムズ海峡の緊張状態が高まったことを例示されました。イランと我が国は悪い関係ではありませんが、万が一、海峡封鎖によって我が国のエネルギー供給に大きな影響が出た場合、ホルムズ海峡が封鎖されることになった場合、存立危機事態として機雷除去などの自衛隊の出動はあり得るのでしょうか。その点についてお答えください。

 今、幾つか具体的に、北朝鮮、ロシア、中東情勢と質問しました。我が国を取り巻く安全保障環境は複雑かつ多様化し、パワーバランスも変化を続けています。その上で、この防衛大綱、中期防が議題となり、今こうして議論をしているわけです。我々国民民主党も、国民の生命財産、我が国の領土、領海、領空を守り抜き、平和で安定したアジア太平洋周辺を維持するため、日米同盟を基軸としながらも、しかし、我が国の厳しい財政状況を鑑みた効率的な防衛力の整備を求めております。

 サイバー、宇宙などの新たな領域における能力強化が喫緊の課題であることは周知の事実であり、今回打ち出された領域横断的、クロス・ドメインな防衛力の強化は、民主党政権が基盤的防衛力から動的防衛力にかじを切った平成二十三年度の防衛大綱の統合運用態勢と即応態勢の流れを継ぐものと受けとめながらも、専守防衛の原則と財政規律との整合性から大きな懸念を持たざるを得ません。

 まず、財政との関係について申し上げます。

 第二次安倍政権発足から、防衛費は歯どめなく増加を続けており、本年度予算は過去最高額の五兆二千九百二十六億円となっております。さらに、今般の中期防計画では、五年間で二十七兆四千七百億円と過去最大になっており、国家の厳しい財政状況のもと、財政規律を無視して防衛費だけが青天井という例外扱いは許されません。

 安倍総理とトランプ大統領が会談した際、トランプ大統領は、日本はF35などたくさんの我々の戦闘機を購入しており、とても感謝をしていると発言しました。日本がF35百機の購入を約束したと報道されていましたが、その場では政府は否定をしています。しかし、その二週間後には、百五機のF35の購入を閣議決定いたしました。

 日本の防衛装備について、国会での議論もなしに米国大統領との間のディールを結んで、国会で議論することなく防衛装備を決めていたということであるならば、国民軽視、国会軽視も甚だしいと言わざるを得ません。

 また、FMSを通した武器の取得が、貿易不均衡解消の総額ありきのものではないか、あるいは日米FTA交渉を有利に進めるための前払い金なのではないかなど、防衛装備取得の判断が貿易交渉に影響されているとすれば、これは言語道断であります。

 そこで、お尋ねをいたします。

 韓国やNATO諸国に次々負担増を求め、バイ・アメリカンを声高に叫ぶトランプ大統領にさらなる武器の購入や米軍駐留経費の負担増を求められた場合、安倍総理は受け入れるのでしょうか。その点については明確にお答えください。

 次に、FMSの適正化についてお尋ねします。

 FMSの購入は、前中期防の期間のF35A調達について、会計検査院が行った調査で、購入を決めてから値段が膨らんだり、仕様の誤ったものが納入されたり、納入が大幅におくれたり、さまざまな問題が指摘されました。この問題は、安保委員会等でもこれまでも累次議論をされてまいりました。

 そこで、お尋ねをいたしますけれども、このような指摘のある調達額の膨張、納入のおくれなどに対して、アメリカとどのような交渉をし、どのようなFMSの調達改善が行われているのか、お答えください。

 そしてまた、今回の中期防で調達するとしたF35Aは、耐用年数がどれぐらいの見込みで、ライフサイクルコストは幾らぐらいと見積もられているのか、この点についてもお答えください。

 次に、イージス・アショアについてお尋ねをいたします。

 そもそも、現在、BMD能力を付加したイージス艦八隻体制の整備を進めており、二〇二一年度ごろには日本を常時警戒する防護体制が強化されると防衛省は説明をしてきました。

 しかし、陸上イージスは地上に固定されており、標的になりやすいことは当然な上、効果的に迎撃できる範囲も限られています。北朝鮮は、日本を狙えるノドン、中距離弾道ミサイルを何百発も持っており、イージス・アショアを狙った飽和攻撃をしかけられたら、陸上イージスは機能不全に陥ることが想定されます。

 総理は、我が党泉健太議員が予算委員会にてイージス・アショアの必要性を質問した際、自衛隊員が自宅から通えることを利点として説明をされましたけれども、我が国のミサイルディフェンスに資する論理的な答弁を期待しただけに、拍子抜けをしました。

 そこで、あえてもう一度伺いますけれども、抗堪性の低いイージス・アショアを整備する必要がある理由をお答えください。

 そしてまた、敵意を持った国がイージス・アショアを最初又は同時に狙った場合に、イージス・アショア及び周辺住民をどのように守るか、総理の決意をお聞かせください。

 次に、サイバー防衛能力の強化についてお尋ねをします。

 サイバー防衛隊が増員されたといっても三百人程度で、総定員も変化ありません。我が国として、防衛分野、行政、民間でも圧倒的に人材が不足している状況であります。

 防衛大綱では、特に優先する事項としながら、サイバー領域における防衛力をどう強化するのか、戦略性が見えません。

 政府全体で、どのように人材を育成、確保し、どのような戦略でサイバーセキュリティー部隊を構築していくのか、その点についてもお答えください。

 あわせて、サイバー攻撃と武力攻撃の関係についてお尋ねします。

 国際的なルールや規範づくりが課題となっており、サイバー攻撃への明確なルールが確立されておりませんが、先般の2プラス2で、一定の場合にはサイバー攻撃が日米安全保障条約第五条に言う武力攻撃に当たり得ることを確認したと合意しました。

 そこで、伺います。

 どのようなサイバー攻撃が武力攻撃に当たるのでしょうか。

 そして、他国に対するサイバー攻撃が存立危機事態上の他国に対する武力攻撃に該当し、他国に対するサイバー攻撃により日本の存立が脅かされるというのはどういう状況に陥ったときなのか、具体的に例示してください。

 そして、サイバー攻撃に対する反撃を武力で行うことはあり得るのか、この点についても確認をしたいと思います。

 最後に、日米地位協定の改定についてお尋ねします。

 現行の日米地位協定は、一九六〇年の締結以来、今日まで一度も改定されないまま、まさに不平等な形で、我々が享受をしている主権にかかわる問題です。

 国民民主党は、昨年暮れに、航空法など国内法の適用、訓練に関する事前通報、航空機の事故等の捜査権限、基地内への立入り権限など、イタリア、ドイツでは当然行使できている主権を日本にも取り戻そうという内容で既に考え方をまとめました。まさに戦後外交の総決算であります。全国知事会も地位協定の改定を訴えています。

 トランプ大統領に地位協定の改定を提起するつもりは、安倍総理、ありますか。その点についてお答えください。

 これまで申し上げたように、外交・安全保障環境をめぐる課題は山積みであり、諸課題を掘り下げて議論すべく、党首討論あるいは予算委員会の開催を強く求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 渡辺周議員にお答えをいたします。

 北朝鮮についてお尋ねがありました。

 北朝鮮の核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題の解決に向けて、相互不信の殻を破り、次は自分自身が金正恩委員長と向き合うとの決意を私は従来から述べてきました。

 条件をつけずに向き合うとは、そのことをより明確な形で述べたものです。向き合うとは、金委員長と会い、率直に、また虚心坦懐に話し合うということです。当然、最重要課題である拉致問題についても話し合います。

 この立場は、先日の北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射によっても変わっていません。拉致問題の解決に向けては、我が国自身が主体的に取り組むことが重要です。御家族も御高齢となる中、一日も早い解決に向け、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動してまいります。

 北朝鮮との間では、北京の大使館ルートなど、さまざまな手段を通じてやりとりを行い、拉致問題の解決に向けてあらゆる努力を行ってきていますが、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、詳細について明らかにすることは差し控えます。

 いずれにせよ、我が国として、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を目指す考えであり、この方針に変わりはありません。

 北朝鮮の核・ミサイル問題に関して、安保理決議は、北朝鮮に対して、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄を求めています。

 安保理決議が定める以上、非核化が実行されるまで、制裁は解除されるべきではないというのが国際社会の一致した立場であると理解しています。我が国としては、引き続き、米国を始めとする国際社会と緊密に連携しつつ、安保理決議を完全に履行していく方針に変わりはありません。

 北方領土問題についてお尋ねがありました。

 北方領土は、我が国が主権を有する島々です。この立場に変わりはありません。

 日ロ間では、これまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきています。

 その中でも一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有していることから、昨年十一月の日ロ首脳会談では、五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで一致をしたところであります。

 一九五六年共同宣言の第九項は、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されることを規定しています。

 従来から政府が説明してきているとおり、日本側は、平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題であるとの一貫した立場です。これから後退していることは全くありません。

 その上で、交渉内容にかかわることや我が国の交渉方針、考え方については、交渉に悪影響を与えないためにも、お答えすることは差し控えます。

 プーチン大統領とは、シンガポールでの首脳会談において、領土問題を次の世代に先送りすることなく、みずからの手で必ずや終止符を打つとの強い決意を共有しています。

 戦後七十年以上残された課題の解決は容易ではありません。しかし、私たちはこれをやり遂げなければなりません。

 六月のG20大阪サミットにプーチン大統領をお招きし、あわせて首脳会談を行います。日本国民とロシア国民が、互いの信頼関係、友人としての関係を更に増進し、相互に受入れ可能な解決策を見出すための共同作業を力強く進めて、平和条約交渉をでき得る限り前進させてまいります。

 ホルムズ海峡をめぐる状況と自衛隊の出動についてお尋ねがありました。

 現在、米国とイランの間で緊張が高まっている状況に関し、日本のエネルギー供給の生命線ともいうべきホルムズ海峡の周辺でこのような事態が進行していることを懸念しています。

 中東の平和と安定はグローバル経済、世界情勢にとって重要であり、また、エネルギーを依存する我が国にとって死活的に重要な地域であり、引き続き情勢を注視していきます。

 他方、ホルムズ海峡の封鎖の可能性など、今後の情勢については、予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきます。

 政府としては、現時点で、ホルムズ海峡の情勢に対応し、平和安全法制に基づいて、自衛隊を出動させることは考えていません。

 その上で、あえて一般論として申し上げれば、具体的にいかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなると考えています。

 防衛費と財政規律についてお尋ねがありました。

 新中期防は、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、我が国の防衛に必要な事業を積み上げた結果、決定したものです。

 米国政府から防衛装備品の調達や米軍駐留経費負担の増加について要求されているとの事実はありませんが、いずれにせよ、今後とも、我が国の主体的な判断のもと、新中期防に定めた方針に従って着実に防衛力の強化を進めていく考えです。

 F35AのライフサイクルコストとFMSの改善についてお尋ねがありました。

 F35Aの実際の耐用命数については今後運用していく中で設定されるものですが、ライフサイクルコストの算定に当たっては、三十年間運用することと仮定しています。

 その上で、F35Aのライフサイクルコストは、平成三十年度の時点では、四十二機の取得を前提として、約二兆三百十四億円ですが、昨年十二月の閣議了解による追加取得分を含むライフサイクルコストは、現在防衛省において積算中であり、完了後、速やかに公表を行う予定と承知をしております。

 FMSによる防衛装備品の調達については、防衛大臣から直接米国に改善を申し入れるなど、問題点の改善に取り組んでおり、具体的には、昨年六月までに、ソフトウエアの更新がなされるなどの改善が行われています。

 F35の閣議了解と新たな中期防以降の調達についてお尋ねがありました。

 F35の百五機の追加導入は、現有のF15のうち、非近代化機九十九機全体の代替として閣議了解を行ったものです。

 五年間という対象期間がある中期防を超えて、長期的な調達計画の全体像を示すことは、我が国の防空体制の将来体制を国の内外に示し、説明責任を果たす観点から適切なものと考えており、戦闘機等の調達に当たっては、これは、皆さん、民主党政権時代も含め、従来からこうした手法がとられてきています。

 昨年十二月に決定した中期防以降のF35の調達計画については、五年後に行われる次期中期防の策定過程において検討されるべきものと考えています。

 なお、F35の導入は、我が国防衛のため、我が国の主体的な判断により行うものであります。

 イージス・アショアについてお尋ねがありました。

 イージス・アショアは、我が国全域を二十四時間三百六十五日、長期にわたり切れ目なく防護することを可能とするために導入するものです。その上で、長期間の洋上勤務が繰り返されるイージス艦と比較して、隊員の負担が大きく軽減されることは事実であると考えています。

 また、イージス・アショアの導入により、我が国の弾道ミサイル防衛能力は抜本的に向上することとなり、配備地域を含め、我が国が弾道ミサイル攻撃を受ける危険性はむしろ低減するものと考えています。

 いずれにせよ、イージス・アショアは我が国の防衛上極めて重要な装備品であり、イージス・アショアや周辺地域を防護するため、平素から自衛隊と関係機関が緊密に連携し、万全な警備体制を構築していく考えです。

 なお、BMD能力の向上と同時に、自衛隊員の処遇の向上や充足率の向上を図っていく考えです。

 自衛隊のサイバー人材の育成、確保及びサイバー部隊についてお尋ねがありました。

 自衛隊のサイバー人材の育成、確保については、今年度から、サイバーの教育課程を拡充することとしているほか、高度な専門的知見を有する外部の人材を活用することとしています。

 また、自衛隊のサイバー関連部隊等については、新たな防衛大綱及び中期防に定めた考え方のもと、五年後を目途に、全体として千数百名の規模まで拡充するよう努めてまいります。

 サイバー攻撃と武力攻撃の関係についてお尋ねがありました。

 どのようなサイバー攻撃であれば武力攻撃に当たるかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等を踏まえ、個別の状況に応じて判断すべきものと考えています。

 その上で、一般論として申し上げれば、サイバー攻撃のみであっても、例えば、物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生し、これが相手方により組織的、計画的に行われている場合には武力攻撃に当たり得ると考えられます。

 したがって、政府としては、サイバー攻撃による武力攻撃が発生した場合には、憲法上、自衛のための必要最小限度の範囲での武力の行使が許されると考えています。

 なお、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなるため、一概にお答えすることは困難であり、これはサイバー攻撃の場合についても同様です。

 日米地位協定の改定についてお尋ねがありました。

 そもそも日米地位協定と米国が第三国と締結している地位協定との比較については、地位協定そのものの規定ぶりのみならず、細部の取決め、実際の運用や背景等も含めた全体像の中で検討する必要があると考えられ、一律な比較は難しい面があるものと承知しています。

 例えば、御指摘のドイツやイタリアはNATO加盟国ですが、NATOの設立根拠条約たる北大西洋条約は加盟国の間での相互防衛義務を定めています。

 これに対し、我が国の場合、日米安保条約は米国への基地提供義務を定めています。これは、米国の対日防衛義務に対応する義務であります。

 このような点からも、異なる義務を負う防衛体制のもとでの接受国と派遣国との関係や、米軍基地のあり方について、相互防衛義務を負うNATO諸国でのあり方と一律に比較することは難しいものと考えています。

 その上で、日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府として、事案に応じて、最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応してきています。

 安倍政権のもとでは、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。国際約束の形式で得たこの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのものであります。

 また、例えば、日本側に第一次裁判権がある犯罪の被疑者たる米軍人軍属の拘禁についても、日米合意に基づき、実際に、起訴前に日本側への移転が行われてきています。

 今後とも、このような目に見える取組を一つ一つ積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。

 日米首脳会談の議題については、現在調整中であり、お答えすることは差し控えます。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 公明党を代表し、新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画について質問をします。(拍手)

 冒頭、北朝鮮の五月四日の飛翔体発射に続く、九日の短距離弾道ミサイル発射は、累次にわたる安保理決議に明白に違反をしており、まことに遺憾であります。総理におかれましては、米国始め国際社会と緊密に連携しつつ、拉致、核、ミサイル問題の解決に向け、適時適切な対応を求めます。

 分断や対立によって不透明感を増している現在の安全保障環境下にあって、不断の外交努力を重ね、脅威を未然に防止し、我が国のみならず国際社会の平和と安定をもたらしていくことが今ほど求められている時代はありません。宇宙、サイバー、電磁波といった新領域での安全保障上の懸念が指摘される中、抑止力を更に高め、万一の備えとして必要な防衛力を整備する観点から、新たな防衛大綱、中期防が閣議決定されました。

 公明党は、専守防衛に徹し、軍事大国にならないとの基本的理念を堅持する立場から、主体的に与党協議に臨み、我が党の主張が随所に反映された大綱及び中期防になったと理解をしております。

 他方、今回の防衛大綱、中期防については、さまざまな懸念が報道されたのも事実です。政府には、この機会を捉え、国民の皆様にわかりやすい答弁を求めます。

 以下、質問に入ります。

 防衛大綱はおおむね十年程度の防衛力のあり方と水準を示すものですが、今回の改定は前大綱から五年目での改定となりました。安倍政権において二回目となる大綱改定の背景となった安全保障環境の大きな変化とは何であるのか、総理の具体的な答弁を求めます。

 一方、国家の外交及び防衛政策の基本指針である国家安全保障戦略は今回は改定されておりません。防衛大綱を改定したのに国家安全保障戦略を改定しなかった理由についても総理の答弁を求めます。

 今回の大綱では、前大綱で示された統合機動防衛力を深化させつつ、一、宇宙、サイバー、電磁波といった新領域との有機的融合を図る領域横断作戦、クロス・ドメイン、二、平時から有事における常時継続的な活動の強化、三、日米同盟、安全保障協力の推進から成る多次元統合防衛力という新たな概念が示されました。なぜ、多次元統合防衛力という新たな概念を用いて大綱を整備する必要があるのか、また、多次元統合防衛力という概念が自衛隊の体制にどのような変化をもたらすのか、岩屋防衛大臣の答弁を求めます。

 日米同盟の強化の項目には、我が国がみずからの防衛力を主体的、自主的に強化することが不可欠の前提であり、その上で日米同盟強化の取組を推進する旨が記述されました。この記述の意味するところは何か、防衛大臣の答弁を求めます。

 次に、サイバーに関し質問をします。

 軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にしたハイブリッド戦が主流となる中で、クロス・ドメインによる対応が必要不可欠です。サイバー領域は、各ドメインをつなぐかなめであると同時に、サイバー領域への攻撃は我が国防衛の急所ともなり得ます。

 物理的手段による攻撃に伴うサイバー攻撃の場合、武力行使の三要件を満たせば自衛の措置が可能と承知をしておりますが、有事においてサイバーのみによる相手国からの攻撃があった場合、自衛の措置はとり得るのか、防衛大臣の答弁を求めます。

 また、先般の日米2プラス2において、サイバー攻撃も日米安全保障条約五条に定める武力攻撃に当たり得ることが初めて確認をされました。サイバー領域における日米共同対処の可能性を明確にするもので、極めて重要です。今回の日米2プラス2の成果及び意義について、防衛大臣の答弁を求めます。

 今回の大綱には、共同の部隊としてサイバー防衛部隊の創設が明記されました。サイバー領域は極めて専門性の高い分野であるだけに、人材の柔軟な採用や前例にとらわれない待遇などを通じ、単に人員の増強にとどまらない、質、量の強化が急がれます。今後のサイバー防衛部隊の体制整備、能力強化について、防衛大臣の答弁を求めます。

 サイバー攻撃は有事の場合とは限られず、むしろ、攻撃の主体が国又は国に準ずる組織であるのか、また相手方の意図も容易に判断できない場合が多いと考えます。そこで、平時から有事に至るまで、さらには民間企業の対策も含めた常時継続的なサイバー防御体制を政府を挙げて早期に構築する必要があると思いますが、総理の答弁を求めます。

 与党ワーキングチームにおいて多くの時間を費やしたのが、「いずも」型護衛艦改修と短距離離陸垂直着陸戦闘機、STOVL機の導入です。

 まず、「いずも」型護衛艦の改修とSTOVL機導入の必要性がなぜ生じたのか、防衛大臣に具体的な答弁を求めます。

 与党ワーキングチームでは、「いずも」型護衛艦改修とSTOVL機に関する五項目の確認書を作成し、総理に手交をいたしました。

 その内容は、一、「いずも」型護衛艦の改修の必要性に触れた上で、二、「いずも」型護衛艦からのSTOVL機の運用は、必要な場合には運用し、常時の運用とはしないこと、三、STOVL機はあくまで現在十三ある戦闘機飛行隊の内数と位置づけ、STOVL機独自の飛行隊は創設しないこと、四、「いずも」型護衛艦は、引き続き、医療、指揮中枢、人員収容、輸送等を担う多用途護衛艦として運用すること、そして最後に、五、「いずも」型護衛艦は、政府が憲法上保有できないとした攻撃型空母にはそもそも性能上当たらないことを確認しています。

 「いずも」型護衛艦は、改修後も十機程度のSTOVL機しか搭載できず、米国の航空母艦のように、戦闘機に加え、電子戦機、警戒管制機などを搭載できるスペックはなく、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のために用いられるものではないと理解をしておりますが、改修後の「いずも」型護衛艦は、憲法上保有できないとする攻撃型空母に当たるか否か、総理の明確な答弁を求めます。

 次に、与党ワーキングチーム確認書の「いずも」型護衛艦及びSTOVL機の運用方針は大綱及び中期防にはどのように反映されているのか、総理の答弁を求めます。

 最新鋭の装備品も、自衛隊員が不足すれば本来の能力は発揮できず、自衛隊員こそ防衛力の中核です。しかし、少子高齢化や民間企業の雇用改善を受け、自衛隊への応募は減少傾向にあり、警察官や消防署職員との競合も顕著です。人的基盤を確保するために、特に採用面を含めた抜本的な人材確保策並びに自衛隊員の能力、士気向上策が必要と考えますが、防衛大臣の答弁を求めます。

 今回の中期防では、計画の実施に必要な防衛費の水準を約二十七兆四千七百億円と示した上で、ここから約二兆円を削減し、実際の予算編成に伴う防衛費を約二十五兆五千億円まで抑える目標が設定されました。前中期防では一兆円弱の削減額だったことを踏まえれば、相当な努力が必要です。特に、FMS調達によって後年度負担が増加する中での合理化、効率化を図るには、これまで以上の徹底的なコスト管理が必要と考えます。

 限られた財源の中で、いかに防衛装備品の合理的な調達を行っていくのか、最後に岩屋防衛大臣の答弁を求め、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 浜地雅一議員にお答えをいたします。

 防衛大綱見直しの背景と国家安全保障戦略を改定しなかった理由についてお尋ねがありました。

 今、国際社会のパワーバランスは大きく変化しつつあり、我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。

 また、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域が死活的に重要になっており、陸、海、空での対応を重視してきたこれまでの安全保障のあり方を根本から変えようとしています。

 こうした中でも、我が国に対する脅威が現実化し、国民の命と平和な暮らしを脅かすことを防ぐためには、安全保障の現実には正面から向き合い、従来の延長線上ではない、真に実効的な防衛力を構築する必要があると判断し、新たに防衛大綱を作成したものです。

 一方、国家安全保障戦略は、我が国の掲げる理念や我が国の国益といった我が国の安全保障に関する大枠の方針を示したものです。昨年、内容のレビューを行ったところでありますが、現下の安全保障環境は、全体として見れば、同戦略で示された基本的な枠内にあると考えられます。

 こうしたことから、今回は国家安全保障戦略のもとで防衛力の強化に注力することとしたものですが、政府としては、引き続き、変化する国際情勢の分析、評価を続け、我が国の将来の安全保障のあり方について、閣僚間で緊密な議論、検討を行っていく考えです。

 政府を挙げたサイバー防御対策についてお尋ねがありました。

 政府としては、国民が安全で安心して暮らせる社会を実現するため、官民一体となって、多層的なサイバーセキュリティーを確保するための取組を推進しています。

 また、我が国の安全保障を脅かすようなサイバー空間における脅威に対しては、内閣官房を中心に関係省庁が一体となって、とり得る全ての有効な手段と能力を活用し、断固たる対応をとることとしています。

 引き続き、我が国のサイバーセキュリティー確保のため、万全の体制を構築してまいります。

 「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。

 「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、専守防衛のもと、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、隊員の安全を確保しつつ、しっかりとした備えを行うものであり、今後の我が国の防衛上、必要不可欠なものであります。

 これは、自衛のための必要最小限度のものであり、憲法上保有が許されない攻撃型空母に当たるものではありません。

 また、「いずも」型護衛艦の改修については、与党で大変充実した御議論をいただきました。与党間の確認書の内容は、政府としても同じ考えであり、その趣旨は、全て大綱、中期防に反映されています。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 浜地雅一議員にお答えいたします。

 まず、多次元統合防衛力についてお尋ねがありました。

 厳しさを増す安全保障環境の中で、軍事力の質、量にすぐれた脅威に対する実効的な抑止及び対処を可能とするためには、宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域と、これまでの陸、海、空の従来の領域の組合せによる戦闘様相に適切に対応することが死活的に重要になってきております。

 このため、新たな大綱のもとでは、多次元統合防衛力の構築を進めることとしております。この方針のもとに、個別の領域における能力の質及び量を強化しつつ、全ての領域における能力を有機的に融合させ、その相乗効果によって全体としての能力を増幅させる領域横断作戦によりまして、個別の領域における能力がたとえ劣勢である場合にもこれを克服して、我が国の防衛を全うできるような自衛隊の新たな体制をしっかり整備していく考えであります。

 次に、日米同盟の強化についてお尋ねがありました。

 防衛力は、平時から有事までのあらゆる段階で、日米同盟における我が国自身の役割を主体的に果たすために不可欠のものでございまして、我が国の安全保障を確保するために防衛力を充実強化することは、同時に日米同盟を充実強化することにほかならないと考えております。

 今回の大綱におきましては、このような防衛力の意義、必要性を踏まえまして、これを主体的、自主的に強化していく旨を明記したところでございます。

 次に、有事においてサイバーのみによる相手国からの攻撃が発生した場合の対応についてお尋ねがありました。

 政府としては、従来から、武力の行使の三要件を満たす場合には、憲法上、自衛の措置としての武力の行使が許されるとの立場をとってきております。

 一方、どのようなサイバー攻撃がこの武力行使の三要件に言う武力攻撃に該当するかにつきましては、生起した事態の個別の状況に応じて判断すべきものと考えております。

 その上で、一般論として申し上げれば、社会全体のサイバー空間への依存度が高まるとともに、サイバー攻撃の態様は一層高度化、巧妙化しており、たとえサイバー攻撃のみであっても、例えば、物理的手段による攻撃と同様の極めて深刻な被害が発生する、これが相手方により組織的、計画的に行われている、こういう場合には武力攻撃に当たり得ると考えております。

 したがって、このような場合には、憲法上、自衛のための必要最小限度の範囲での武力の行使が許される場合があると考えているところでございます。

 次に、サイバーに関する今回の日米2プラス2の成果及び意義についてお尋ねがありました。

 先般の日米2プラス2会合では、領域横断作戦のための協力として、特にサイバー分野における協力を強化していくことで一致をいたしました。このような日米間の方向性の一致は、具体的な協力を進めていく上での、両国共通の基礎となると考えております。

 具体的には、サイバー攻撃が日米安保条約第五条に言う武力攻撃に当たる場合があるということを確認いたしましたけれども、これは、サイバー空間における日米共同対処の可能性を明確にするものでありまして、抑止の観点からも意義が大きいものと考えております。

 次に、今後のサイバー防衛部隊の体制整備、能力強化についてお尋ねがありました。

 自衛隊のサイバー関連部隊につきましては、中期防衛力整備計画の期間中に、共同の部隊としてサイバー防衛部隊を新編することを含めて、全体として千数百名までの規模に拡充するよう努めてまいります。

 サイバー人材の確保が極めて重要との認識のもとで、今年度から、サイバーに関する教育課程を拡充することとしているほか、高度な専門的知見を有する外部人材を活用していきたい、こういうふうに考えております。

 防衛省・自衛隊としては、新たな大綱、中期防のもとで、このような取組を通じてサイバー防衛能力を抜本的に強化していく考えであります。

 次に、「いずも」型護衛艦の改修の必要性についてお尋ねがありました。

 近年、諸外国の航空戦力の近代化が著しい状況にございます。また、我が国の南西諸島の列島線を越えて、太平洋側に進出する戦闘機、爆撃機の飛行が増加をしております。したがって、太平洋の空域におけるこの軍用機の活動の活発化にしっかり対応していかなければなりませんが、広大な太平洋において、現在、自衛隊の戦闘機が使用可能な飛行場は硫黄島一カ所だけでございます。

 「いずも」型護衛艦における航空機の運用と所要の改修は、専守防衛のもとで、新たな安全保障環境に対応し、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについて、自衛隊員の安全を確保しつつ、しっかりと備えを行うものでありまして、今後の我が国の防衛上、必要不可欠な措置であると考えております。

 次に、抜本的な人材確保策及び自衛隊員の能力、士気向上策についてお尋ねがありました。

 少子化、高学歴化、高い水準にある有効求人倍率のもとで、自衛官の採用をめぐる環境は大変厳しい状況にございます。自衛官の応募者数そのものも、平成二十五年度は約十一万五千人だったところ、平成二十九年度は約九万三千人に減少しております。

 このような中、防衛力の中核をなす自衛隊員の人材確保と能力、士気の向上は防衛力の強化に不可欠でございまして、人的基盤の強化をこれまで以上に推進をしていく必要がございます。

 このため、新たな大綱、中期防では、人的基盤の強化を防衛力の中心的な構成要素であり優先事項であると位置づけまして、採用層の拡大、地方公共団体との連携による採用の取組強化、女性自衛官の一層の活用、定年年齢の引上げ等の人材の有効活用を図ることとしております。

 また、厳しい安全保障環境に対応して部隊の活動が長期化する傾向にございますけれども、全ての隊員がみずからの能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うできるような環境を整えていくことが重要でございます。新たな大綱、中期防では、自衛隊員の生活、勤務環境の改善、働き方改革を推進するほか、給与面の改善を含む処遇の向上を図ることとしておりまして、その取組をしっかり行ってまいります。

 最後に、防衛装備品の合理的な調達についてお尋ねがありました。

 新中期防におきましては、一層の効率化、合理化を徹底するために、重要度の低下した装備品の運用停止、費用対効果の低いプロジェクトの見直し、徹底したコスト抑制や長期契約を含む装備品の効率的な取得などの装備調達の最適化などを通じて実質的な財源確保を図っていくこととしております。

 したがいまして、今後、中期防に定められた経費の枠内で、こうした取組を徹底することによって、他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力の強化に全力で取り組んでまいる所存でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 赤嶺政賢君。

    〔赤嶺政賢君登壇〕

赤嶺政賢君 私は、日本共産党を代表し、新防衛大綱、中期防について質問します。(拍手)

 安倍政権が昨年末に閣議決定した新防衛大綱、中期防は、アメリカ第一を掲げ、同盟国に軍事分担と財政負担の拡大を求めるトランプ政権につき従い、過去最大の軍事予算を投じて、日米軍事同盟の拡大強化を図るものです。

 新大綱、中期防は、現在の安全保障環境の特徴として、国家間の競争が顕在化していることを挙げ、従来の陸、海、空のみならず、宇宙、サイバー、電磁波などの新たな領域にまで日米間の軍事協力を拡大するとしています。

 これは、中国、ロシアなどとの戦略的競争を安全保障上の優先課題に位置づけ、核戦力と宇宙軍拡、サイバー攻撃態勢の強化で圧倒的な軍事覇権体制を確立しようとするアメリカの軍事戦略を日本が共有し、その一翼を担うということではありませんか。

 際限のない大国間の軍拡競争に日本が加わるということですか。

 世界的な軍事的緊張の激化と軍事費の膨張による国民生活切捨て、財政破綻を招く危険をどう認識しているのですか。

 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、二〇一八年の世界の軍事支出は、一兆八千二百二十億ドル、約二百兆円に上り、一九八八年の統計開始以来、過去最高になっています。

 国連のグテーレス事務総長は、昨年五月に発表した軍縮アジェンダで、冷戦期のような緊張状態がはるかに複雑で危険な環境のもとで戻ってきたと、軍拡競争が激化する世界の現状に警鐘を鳴らし、加盟国と専門家、産業界、市民社会に軍縮のための取組を強化するよう呼びかけました。

 憲法九条を持つ日本がやるべきことは、この提案に積極的に応え、軍事対軍事の悪循環から抜け出し、軍縮に踏み出すための外交的なイニシアチブを発揮することではありませんか。

 新大綱、中期防は、憲法違反の安保法制、日米ガイドラインを具体化するものです。

 「いずも」型護衛艦の空母化改修によって、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機への給油、整備を容認した安保法制のもとで、米軍戦闘機が「いずも」を拠点に他国領土への爆撃を行うことが可能になります。歴代政府自身が憲法上許されないとしてきた武力行使との一体化そのものではありませんか。

 しかも、政府は、長距離巡航ミサイルや高速滑空弾など、自衛隊が他国領土を直接攻撃できる兵器の保有にまで踏み出しています。戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を定めた憲法九条のもとで、このような兵器の保有が認められる余地はどこにもないではありませんか。

 平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは憲法の趣旨とするところではないとしてきた歴代政府の憲法見解との矛盾をどう説明するのですか。

 総理は、憲法改正にかかわり、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはないと強調しますが、既に九条改憲を先取りする動きを進めているではありませんか。自衛隊を米軍とともに海外で戦争する軍隊につくりかえるものであり、断じて許されません。

 米国製兵器の大量購入も重大です。

 米国政府からのFMS、対外有償軍事援助が年々増大し、今年度は七千十三億円。安倍政権復帰前の五倍以上になっています。こうした米国製兵器の大量購入が軍事費全体を押し上げ、財政の硬直化を招く要因になっているのではありませんか。

 新大綱、中期防は、F35ステルス戦闘機百五機の大量調達、六千億円を超えるとも言われるイージス・アショアの導入を盛り込んでいますが、トランプ大統領は過去の日米首脳会談で、こうした兵器の売り込みを明言してきました。アメリカ言いなりの兵器調達は直ちに中止すべきではありませんか。

 昨日十五日で、沖縄の本土復帰から四十七年になりました。

 県民が願ったのは、核も基地もない平和な島としての復帰でした。米軍占領下に構築された広大な米軍基地が居座り続ける現状は、決して県民が願った沖縄の姿ではありません。

 政府は、沖縄県知事選挙、県民投票、衆議院補欠選挙などで繰り返し示された県民の民意を正面から受けとめ、辺野古新基地建設は断念し、普天間基地を直ちに閉鎖、撤去すべきです。

 住民合意を置き去りにした南西諸島への自衛隊配備はやめるべきです。

 以上、新防衛大綱、中期防の撤回を要求し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 赤嶺議員にお答えをいたします。

 防衛大綱と米国の軍事戦略等についてお尋ねがありました。

 新たな防衛大綱は、我が国を取り巻く安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増していることを踏まえ、未来の礎となる、我が国防衛のあるべき姿を示すものとして、我が国が主体的に検討し、策定したものです。

 米国の軍事戦略の一翼を担うとか大国間の軍拡競争に日本も加わるといった御指摘は当たりません。また、軍事費の膨張により財政破綻を招く危険があるとは考えていません。

 軍縮のために我が国がとるべき外交的イニシアチブについてお尋ねがありました。

 グテーレス国連事務総長は、昨年五月に軍縮アジェンダを発表されており、我が国としても、そこで示された問題意識を共有しています。

 一般によく指摘されるように、脅威は能力と意図の二つの要素から構成されます。

 我が国の平和と繁栄を確固たるものとしていくためには、能力の観点から、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、平和安全法制に基づく取組等を通じて日米同盟を更に強化し、その抑止力、対処力を一層強化していくこと、意図の観点から、我が国にとってより好ましい状況を実現すべく、平和外交を引き続き力強く展開していくことの双方において、不断の努力を積み重ねていくことが必要です。

 我が国は、引き続き、自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、このビジョンを共有できる全ての国々と協力していくとともに、地球儀を俯瞰する視点で、積極的な平和外交を展開し、地域や世界の平和と繁栄に貢献してまいります。

 「いずも」型護衛艦の改修と武力行使の一体化についてお尋ねがありました。

 「いずも」型護衛艦の改修を行った後、重要影響事態などの場合において、どのように米軍への支援を行うかについては、現在、具体的な構想はなく、検討も行っていません。

 なお、一般論として、重要影響事態の場合に、平和安全法制に基づいて行う米軍機に対する給油や整備等については、米軍による武力の行使と一体化するものではありません。

 新たな装備品の導入と憲法との関係についてお尋ねがありました。

 スタンドオフミサイルを始め、新たな大綱のもとで導入する装備品は、いずれも、我が国の防衛に必要不可欠なものであり、憲法九条に合致したものです。性能上専ら相手国国土の壊滅的な破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器に当たるものではなく、政府見解と矛盾するものでもありません。

 また、新たな大綱のもとでの防衛力整備は、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、国民の命と平和な暮らしを守り抜くものであり、憲法九条改正の先取りとか、自衛隊を米軍とともに海外で戦争する軍隊につくりかえるとの御指摘は当たりません。

 米国製の装備品の導入についてお尋ねがありました。

 防衛関係費については、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、我が国の防衛に必要な事業を積み上げた上で、決定しているものです。米国製装備品の調達が防衛費全体を押し上げているとの御指摘も当たりません。

 また、F35やイージス・アショアといった米国製の装備品を含む防衛装備品の導入については、我が国の防衛に万全を期す観点から、我が国の主体的な判断のもと行っているものであり、これも御指摘は当たりません。

 普天間飛行場の閉鎖、撤去及び南西地域の自衛隊配備についてお尋ねがありました。

 沖縄に米軍基地が集中する現状は、到底是認できません。沖縄の基地負担の軽減は、政府の大きな責任です。県民投票等の結果については真摯に受けとめ、これからも基地負担の軽減に全力で取り組んでいく考えです。

 住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。

 これは、政府と地元の皆様との共通認識であると思います。

 抑止力の維持と危険性の除去、この二つを考えあわせて検討を重ねた結果が現在の方針です。

 今後とも、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、現行の日米合意に基づき、普天間の一日も早い全面返還を実現し、同時に、米軍基地の整理、統合、縮小、返還により負担軽減を図るため、全力で取り組んでまいります。

 また、南西地域における陸上自衛隊配備の空白状況を解消することは極めて重要な課題であり、引き続き、地元の皆様に丁寧に説明を行い、理解を得る努力を続けてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 森夏枝さん。

    〔森夏枝君登壇〕

森夏枝君 日本維新の会の森夏枝です。

 私は、党を代表して、ただいま議題となりました防衛大綱について質問いたします。(拍手)

 中国の軍事力の増強、特に、航空母艦の配備と製造、北朝鮮の弾道ミサイル開発と熱核爆弾によるものと推定される核実験も行われ、東アジア地域における軍事的脅威が高まってきています。

 さらには、これまで同じ米国との同盟国という関係であった韓国軍による、哨戒機に対する火器管制レーダー照射を受けるという事態も起きており、これまでになく、日本周辺地域における緊張関係が高まっています。

 これまで、防衛大綱は十年、中期防衛力整備計画は五年ごとに見直すものとされています。しかし、このような見直しでは、日本周辺の軍事的変化に追いつかず、防衛体制は不十分であると考えざるを得ません。

 国民の生命と財産を守るという政府の基本的役割を確認するとともに、安全、安心のために防衛力の強化を図るべきものであるという姿勢を明らかにした上で、質問に入ります。

 防衛大綱は見直しをされましたが、防衛費はGDPの一%を少し上回る程度であり、また、東アジア情勢の変化をどこまで反映したのでしょうか。

 性能が著しく改善されてきた北朝鮮の弾道ミサイルが発射された場合、撃ち落とせるミサイルであるSM3ブロック2Aは、いまだ配備されていません。そのため、ミサイル防衛能力は非常に心もとないものとなっています。

 総理に伺います。

 防衛大綱が、現実に必要とされる防衛体制の構築に間に合っていると本当にお考えでしょうか。総理御自身の見解を伺います。

 去る四月九日、航空自衛隊所属の最新のステルス戦闘機F35Aが、三沢基地がある青森県の沖合に墜落する事故が発生しました。行方不明になった自衛隊員の安否が気遣われますが、この事故による教訓について、ぜひとも今後の防衛活動に役立てていただきたいと思います。

 総理に伺います。

 本事故が起きたことにより、今後の防衛装備の見直しは検討するのでしょうか。また、防衛体制についてどのような影響があるとお考えでしょうか。御回答願います。

 新防衛計画大綱では、これまで、陸、海、空という従来型区分に加えて、宇宙、サイバー、電磁波という新しい領域に対する防衛力を構築することとしています。

 サイバー分野については、気がかりな点が多いと考えています。

 日本は専守防衛を国是としています。しかし、サイバー攻撃を受けた場合は、ダメージが大き過ぎるため、反撃することができないケースが考えられます。通常戦力の場合のような、抑止力に当たるものが存在せず、攻撃した者勝ちとなります。サイバー攻撃の分野においては、専守防衛という姿勢では国民を守ることができないことが想定されているわけです。この分野においては、専守防衛の適用除外にすることを検討すべきではないかと考えます。

 総理に伺います。

 我が国が専守防衛の原則を守りながらサイバー攻撃を受けた場合の被害をどのように見積もっていますでしょうか。サイバー分野において専守防衛の原則を守ることは適切であるとお考えでしょうか。御回答願います。

 新防衛大綱では、総合ミサイル防空能力の中心にイージス・アショア二基が位置づけられています。しかし、イージス・アショアは、弾道ミサイルを撃ち落とすものであり、抑止力としての効果がありません。

 平成二十七年九月十四日の安倍総理は、策源地攻撃については、これ、座して死を待つべきではないということにおいて、これは憲法解釈上でもできるという考えをとってきておりますと御答弁されています。

 であるならば、イージス・アショアよりも、策源地攻撃力を有する精密誘導兵器の導入など、抑止力となり得る装備の導入を急ぐべきではないでしょうか。にもかかわらず、イージス・アショアという高額の装備の配備にこだわるのは、トランプ大統領の御機嫌取りという側面もあるからだと言わざるを得ません。防衛費は限られています。より効率のよい防衛体制を構築すべきではないでしょうか。

 総理に質問をいたします。

 本防衛大綱において、イージス・アショアよりも、安価に導入できて、かつ抑止力にもなる、策源地攻撃力を有する巡航ミサイルのような精密誘導兵器の導入を検討しているのかどうか、お答え願います。

 本年三月、宮古島に陸上自衛隊が配備されましたが、中距離多目的誘導弾と迫撃砲弾の全てを島外に撤去してしまいました。自衛隊を離島に配置しながらも小銃しか持たせないことは、無謀としか言いようがありません。新防衛大綱では、このようなちぐはぐな対応があってはならないと考えます。

 総理に質問いたします。

 宮古島での陸上自衛隊の弾薬の現状をどのようにお考えでしょうか。また、どのような計画で見直しを進めるのでしょうか。お答え願います。

 ヘリコプター搭載護衛艦として運用されている「いずも」型については、改修して、短距離離陸垂直着陸性能を持つ戦闘機の運用が検討されています。固定翼機の戦闘機が搭載可能となれば、航空母艦と呼ぶべきものでしょう。

 総理に伺います。

 日本が航空母艦を配備することになった場合、東アジア地域における軍事バランスに対する影響はどのようなものになるとお考えでしょうか。建艦合戦につながるおそれを想定しておりますでしょうか。御見解をお願いいたします。

 日本維新の会は、現実的な外交防衛政策をとることを主張しています。新防衛大綱が、現実的な防衛体制が構築できるよう運用されることを政府に求めまして、私からの質問といたします。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 森夏枝議員にお答えをいたします。

 防衛大綱の見直しと必要な防衛体制の構築についてお尋ねがありました。

 防衛大綱の見直しに当たっては、北朝鮮の核・ミサイル開発を含め、一層厳しさを増す安全保障環境の現実に正面から向き合い、国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるよう、必要な防衛力の強化を行うこととしたものです。

 防衛力の強化に当たっては、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保し、従来と抜本的に異なる速度で変革を図ってまいります。

 なお、安倍政権としては、従来より、防衛費をGDPと機械的に結びつけることは適切ではないと申し上げているところであり、現在、防衛関係費にGDP一%の枠は設定されていません。

 F35の事故を受けた装備の見直し及び防衛体制への影響についてお尋ねがありました。

 今般の事故については、防衛省において事故原因等について調査を進めているところです。このため、現時点で、F35に係る今後の方針について、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。

 また、我が国のF35は、運用性能に関する試験等の段階にあるため、現時点では防衛体制に影響があるとは考えていません。

 まずは、事故原因の究明に全力を尽くしてまいります。

 サイバー攻撃と専守防衛との関係についてお尋ねがありました。

 専守防衛は、憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針であり、サイバー分野においてもこのような考え方を堅持することは当然です。

 その上で申し上げれば、現代においては、サイバー攻撃により、物理的手段による攻撃と同様の深刻な被害が発生する可能性も否定できないと考えています。

 このため、政府としては、専守防衛を堅持しつつ、サイバー空間の特性も踏まえ、有事において相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力を整備することなどにより、サイバー防衛能力を抜本的に強化し、国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、万全を期していく考えです。

 敵基地攻撃能力を有する精密誘導兵器の導入の検討についてお尋ねがありました。

 新たな防衛大綱、中期防のもとでも、いわゆる敵基地攻撃を目的とした装備体系を整備することは考えていません。

 いわゆる敵基地攻撃については、日米の役割分担の中で米国の打撃力に依存しており、今後とも、我が国の政策判断として、こうした日米間の基本的な役割分担を変更することは考えていません。

 宮古島の陸上自衛隊の弾薬の現状と計画の見直しについてお尋ねがありました。

 宮古島への陸自部隊の配備に当たって、地元の方々に対する説明とは異なる形で誘導弾や迫撃砲弾が搬入されていたことから、現在、これらの弾薬は島外に搬出されているものと承知しています。

 今後、別の地区で火薬庫が整備された後に、改めてこれらの誘導弾等を搬入する計画ですが、それまでの間は、状況に応じ緊急的に弾薬を搬入することにより、事態対処に万全を期す考えです。

 部隊の配備に当たって、地元の御理解と御協力を得ていくことは極めて重要であり、今後、より一層、正確かつ丁寧な説明に努めてまいります。

 「いずも」型護衛艦の改修についてお尋ねがありました。

 改修後の「いずも」型護衛艦について、空母ではないかとの御意見があり得ることは承知していますが、空母については、一般的には、米空母のように、専ら航空機の運用機能に特化した艦船を指すものと考えています。

 他方、「いずも」型護衛艦は、改修により航空機の運用機能が加わっても、引き続き、多機能な護衛艦として活用していく考えです。

 このため、航空母艦を配備するといった仮定の御質問にお答えすることは差し控えさせていただきます。

 いずれにせよ、「いずも」型護衛艦の改修は、専守防衛のもと、自衛隊員の安全を確保しながら、広大な太平洋を含む我が国の海と空の守りについてしっかりとした備えを確保するため、必要不可欠なものと考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 広田一君。

    〔広田一君登壇〕

広田一君 社会保障を立て直す国民会議の広田一です。

 新防衛大綱、中期防について質問します。(拍手)

 まず、安全保障環境に関連してお伺いします。

 安倍政権は、現在の安全保障環境について、戦後最も厳しいという認識を示しています。つまり、朝鮮戦争、キューバ危機、米ソ冷戦時代より厳しいという認識です。新大綱では、さらに、格段に速いスピードで厳しさを増していると述べています。まず、その理由について、安倍総理の答弁を求めます。

 その一方で、新大綱では、今後十年間を見通しても、主要国間の武力紛争が発生する蓋然性は低いとしています。安全保障環境は戦後最も厳しいが、武力紛争の発生する蓋然性は低いとするのは一体どういう意味なのか、国民にわかりやすく説明すべきです。総理の答弁を求めます。

 南シナ海では、アメリカの相対的なプレゼンスが低下する中で、中国は海洋進出を活発化させています。パワーバランスが変化する中で、武力紛争が発生する蓋然性が低いとする根拠について、総理の答弁を求めます。

 クリミアでは、ハイブリッド戦がありました。宇宙、サイバー、電磁波という死活的に重要とされる領域でも、今後、武力紛争が発生する蓋然性は低いのか、総理の答弁を求めます。

 政府は、サイバー攻撃に対する反撃は、新三要件を満たせば可能としています。しかし、サイバー攻撃は一瞬です。先制攻撃と反撃の境界が曖昧です。攻撃元の特定も困難です。従来の要件で、迅速、的確に判断、対処できるんでしょうか。さらに、閣議決定等の手続をしていればとても間に合わないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 従来の延長ではないと言うなら、先般の日米2プラス2を踏まえて、サイバーなど新たな領域における武力攻撃事態の対処について不断の検討をすべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 次に、中国の動向についてお伺いします。

 中国の軍事力は、質、量とも飛躍的に拡大しています。透明性を欠いた軍事予算の増加、力を背景とした一方的な現状変更の試み等がなされております。

 それにもかかわらず、新大綱では、中国の軍事的動向を脅威ではなく懸念にとどめています。これは、中国に配慮して、実態を過小評価していると考えます。

 潜在的脅威ですらないのか、総理の答弁を求めます。

 次に、我が国の防衛の基本方針に関連してお伺いします。

 新大綱では、我が国は、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならない旨の記述があります。

 しかし、安倍政権は、専守防衛に徹するどころか、専守防衛をないがしろにしています。その理由は、歴代自民党政権が憲法違反としてきたにもかかわらず、集団的自衛権行使容認を数の力でごり押しをしたからです。これは、立憲主義、民主主義に対する明らかな挑戦です。

 専守防衛は、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使するというもので、個別的自衛権をより厳格、抑制した受動的な防衛姿勢です。そこに、日本を攻撃していない他国に対して先んじて武力攻撃をするという集団的自衛権の概念が入り込む余地はありません。

 専守防衛と集団的自衛権は相入れないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 今、「いずも」の実質的な空母化やスタンドオフミサイルの導入によって、専守防衛がなし崩しになるのでないかという議論があります。

 問題の本質は、何をもって専守防衛を担保するのかということです。つまり、他国に対する攻撃可能な能力、装備は一切保持しないことで担保していくのか、それとも、その能力、装備は持つが、運用、つまり意思で担保していくのか、総理の答弁を求めます。

 安全保障は国家の礎であります。なし崩し的にその根幹を変えることは許されません。もし変えるなら、正々堂々と国民に説明し、信を問うべきであると考えますが、総理の答弁を求めます。

 「いずも」の空母化は疑問です。

 「いずも」は多用途な運用が想定をされています。その中でも、我が国防衛のための最も中心的な用途、運用は、対潜水艦作戦であります。常時ではなくてもSTOVL機を運用するとなると、改修はもとより、日常的に厳しい訓練、そして整備が必要となります。そのために相当の日数が費やされます。その間、稼働日数が制約されて、我が国の対潜哨戒能力は確実に低下します。これでは本末転倒ではないでしょうか。岩屋防衛大臣の答弁を求めます。

 その上で、F35Bを操縦するのはどこの誰なのか、その発着艦訓練は誰が、いつ、どこで実施するのかなど、基本的な運用方針について防衛大臣の答弁を求めます。

 防衛力の中核は自衛隊員です。よって、人材確保や能力、士気向上のためには、その処遇改善は喫緊の課題であります。

 安倍政権は、平成二十六年、東日本大震災のときに最高四万二千円に引き上げられた原子力災害派遣手当をもとに戻し、最高でも三千二百四十円に大幅に減額しました。このことについて、総理は御存じなかったというふうに思いますが、しかし、これは余りにも理不尽なことであり、何度か安保委員会でも質問しました。その結果、小野寺前大臣や岩屋大臣のリーダーシップ、防衛省の御尽力もあって、今年度から見直しがされました。

 自衛隊員の手当などの処遇や勤務環境については、不断の検証をし、改善はあっても改悪はあってはならないと考えますが、総理の答弁を求めます。

 あわせて、洋上勤務のあり方を始め、長時間労働の是正や休暇の取得拡大といった自衛隊版の働き方改革の推進について、防衛大臣の答弁を求めます。

 最後に、我が会派は、安全保障と社会保障は国家を守る車の両輪と位置づけて、真に国民のためになる政策を訴えることをお誓いして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 広田一議員にお答えをいたします。

 武力紛争の蓋然性と安全保障環境の認識についてお尋ねがありました。

 政府としては、北朝鮮の核・ミサイル開発のみならず、中国の透明性を欠いた軍事力の強化、東シナ海や南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試み、大量破壊兵器の拡散や国際テロの深刻化、サイバー空間や宇宙空間などの新たな領域における課題の顕在化など、グローバルな安全保障上の課題が広範かつ多様化していることなどを踏まえ、我が国を取り巻く安全保障環境は戦後最も厳しいと言っても過言ではなく、新たな大綱においては、平成二十五年の前大綱策定時に比して、安全保障環境が格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しているものになっていると認識しています。

 他方、冷戦期に懸念されているような主要国間の大規模武力紛争の蓋然性については低いと考えられますが、武力紛争そのものの蓋然性が低いと申し上げているわけではありません。

 今日では、大量破壊兵器を搭載した弾道ミサイル攻撃は、たとえ少数であっても我が国の存立を脅かし得るものであることなどから、さきに述べた主要国間で大規模武力紛争が発生する可能性のみで安全保障環境の厳しさを判断することはできないものと考えています。

 特に、新たな領域における武力紛争の可能性については、冷戦期に想定されていたような陸、海、空といった従来の領域における紛争の形態とは異なることから、一層の注視が必要と考えています。

 サイバーなど新たな領域における武力行使の要件等についてお尋ねがありました。

 政府としては、平素から、サイバー空間における脅威動向に関する情報の収集、分析や、攻撃源の特定のための能力の向上に努めています。その上で、各種のシミュレーションや訓練を繰り返すことにより、大規模なサイバー攻撃の発生時に際して、時間的な制約がある中でも的確な判断及び対処を行うことが可能となるよう、万全を期しています。

 また、政府としては、憲法上、自衛の措置としての武力の行使が許されるのは、武力の行使の三要件を満たす場合に限られると考えており、サイバー分野といった新たな領域においても、これに関する考え方を変更することは考えていません。

 中国の軍事動向の評価についてお尋ねがありました。

 中国については、軍事力の広範かつ急速な増強や、海空域における活動の急速な拡大、活発化など、その軍事動向は、国防政策や軍事力の不透明性と相まって、我が国を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念となっており、今後も強い関心を持って注視していく必要があると考えています。

 他方で、先般の訪中の際には、習近平主席との間で、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認したところであり、もとより、我が国は、中国に対し、脅威や潜在的脅威との認識を示したことはありません。

 日中両国は、地域と国際社会の平和と繁栄に大きな責任を共有しています。中国との間では、相互理解、信頼関係を一層増進するため、多層的な対話や交流を推進し、中国が責任ある建設的な役割を果たすよう促していく考えです。

 専守防衛と集団的自衛権についてお尋ねがありました。

 平和安全法制に基づく限定的な集団的自衛権の行使は、武力の行使の三要件に該当する場合に限られており、我が国と密接な関係にある他国に対する武力行使の発生が前提であり、また、他国を防衛すること自体を目的とするものではありません。

 このように、専守防衛は憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢というものであることに変わりはなく、その定義には変更はありません。政府としては、今後ともこれを堅持してまいります。

 専守防衛と「いずも」型の改修やスタンドオフミサイルの導入についてお尋ねがありました。

 専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、我が国防衛の基本方針です。

 このように、専守防衛は、防衛力の運用と保持する能力の双方についての考え方を示したものと考えています。

 「いずも」型護衛艦の改修やスタンドオフミサイルの導入は、このような専守防衛の考え方のもと、安全保障環境に対応して、隊員の安全を確保しつつ、我が国の防衛を全うするため、必要不可欠なものです。安全保障の根幹をなし崩しに変えるとの御指摘は当たりません。

 自衛隊員の手当や勤務環境の改善についてお尋ねがありました。

 まず、さきの東日本大震災に対応した隊員に対して臨時に設けた特例の手当については、自衛隊による震災対応の終了を踏まえて廃止したものであり、減額したとの御指摘は当たりません。

 他方、災害への備えを平素から準備していることは極めて重要であるとの考え方のもと、今年度より新たに恒久的な措置として大規模災害対応時の手当を創設したところです。

 政府としては、厳しい任務に当たる隊員の処遇を確保するため、引き続き、隊員の給与や勤務環境の改善など、必要な措置を講じてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣岩屋毅君登壇〕

国務大臣(岩屋毅君) 広田一議員にお答えいたします。

 「いずも」型護衛艦の運用についてお尋ねがありました。

 「いずも」型護衛艦は、対潜水艦作戦機能のみならず、ヘリコプターの運用機能、指揮中枢機能、人員や車両の輸送機能、医療機能等も兼ね備えた多機能な護衛艦として運用しております。

 また、「いずも」型を含め、護衛艦が改修や訓練に入る際には、他の護衛艦が対潜哨戒を含む任務に当たることとしておりまして、我が国の対潜哨戒能力を低下させることのない運用に努めているところでございます。

 改修後の「いずも」型護衛艦につきましても、あくまでも多機能な護衛艦として、さまざまな事態に応じて、保有する機能をしっかり発揮できるよう、適切に運用していく考えでございまして、その具体的な運用要領につきまして、引き続きしっかり検討を進めてまいります。

 次に、今後導入するSTOVL機の運用等の基本方針についてお尋ねがありました。

 短距離離陸垂直着陸機、いわゆるSTOVL機につきましては、現在、具体的な機種を選定中でありまして、まだ決定をいたしておりません。

 STOVL機は、空自の装備として導入する予定でございますので、空自のパイロットが運用する予定でございます。

 その配備地は、現在、戦闘機を配備している空自基地を中心に検討しておりますけれども、その配備地を拠点として各種の訓練を行うこととなります。

 発着艦訓練等の詳細につきましては、具体的な機種の検討、選定とあわせて、引き続き検討を進めてまいります。

 最後に、自衛隊版の働き方改革の推進についてお尋ねがありました。

 自衛隊員は、その任務の特殊性によりまして、二十四時間三百六十五日、即応態勢をとる義務が課せられておりますが、通常は、部隊等において、原則の始業、終業時間を定めております。しかし、交代制勤務や海上部隊などの自衛官、訓練、演習等により必要がある場合には、幕僚長や部隊等の長がそれぞれの勤務の実情に即した勤務時間を定め、任務遂行に当たっているところでございます。

 防衛省・自衛隊としては、厳しい安全保障環境のもとで、各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するためには、隊員が心身ともに健全な状態で、能力を十分に発揮できる環境を整えることが必要であると考えております。

 このため、近年では、自衛隊の働き方改革として、勤務時間外の勤務の縮減、休暇、代休の取得を積極的に呼びかけるなど、隊員の勤務環境の改善に努めているところでございまして、この取組を更に強化してまいりたいと考えております。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十九分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       総務大臣    石田 真敏君

       法務大臣    山下 貴司君

       文部科学大臣  柴山 昌彦君

       厚生労働大臣  根本  匠君

       経済産業大臣  世耕 弘成君

       国土交通大臣  石井 啓一君

       防衛大臣    岩屋  毅君

       国務大臣    宮腰 光寛君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 西村 康稔君

       防衛副大臣   原田 憲治君


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