衆議院

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第2号 令和元年10月7日(月曜日)

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令和元年十月七日(月曜日)

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 議事日程 第二号

  令和元年十月七日

    午後三時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑


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    午後四時二十七分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(大島理森君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。枝野幸男君。

    〔枝野幸男君登壇〕

枝野幸男君 立憲民主党代表の枝野幸男です。(拍手)

 冒頭、大島議長に一言申し上げます。

 議長は、去る五日、継続審議となっている国民投票法改正案について、ぜひ臨時国会で与野党で話し合って合意を見つけてほしいなどと述べられました。これまで中立公正な議会運営に努力されてきた大島議長らしくない、信じがたい発言であります。

 議会運営全体に責任を持つ議長が、特定法案について、それも政治的に注目されている重要法案について、時期を区切って合意を期待するなどという発言は、議長として越権であり、議会運営全体に影響を与えかねません。

 議長におかれては、事態を真摯に受けとめ、一層中立公正な議会運営に当たられるよう、強く求めます。

 報道等によれば、本日朝、能登半島沖の我が国の排他的経済水域内で、水産庁の漁業取締り船と北朝鮮の大型漁船が衝突し、二十名前後の乗組員が漂流、救助中とのことです。事態を大変憂慮しています。

 現場付近では、北朝鮮漁船による違法操業など、容認しがたい案件が多発しています。政府においては、万全の対応の上、事実関係の究明をお願いしたいと思います。

 それでは、会派を代表し、所信表明演説に対して質問いたします。

 ことしも大きな自然災害が相次いでいます。一連の災害で被害に遭った皆さんに改めてお見舞いを申し上げます。

 私たちも、被災者の皆さんに寄り添い、一日も早い復旧と復興に向けて、できることは最大限進めていきます。政府にも、全力を挙げるよう強く求めます。

 台風十五号災害への対応については、政府は、迅速、適正、問題はないと繰り返してきました。しかし、被災地からは対応のおくれを指摘する声が上がっています。

 おくれの原因が政府自身にあるのか否かを今の段階で断定するつもりはありません。しかし、内閣改造のタイミングなど、具体的指摘があるのも事実です。

 全体について責任を持っている政府の立場として、まずは結果的に対応がおくれたことを率直におわびし、今後の災害に備えるためにも、第三者による客観的な検証を急ぐべきであります。

 政府も検証チームを立ち上げたようですが、政府首脳が初めから問題ないを繰り返す中での内部的な検証では、客観的で厳しい検証は困難です。総理の見解を求めます。

 大規模停電への対応について、政府は、東京電力からの報告を問題視し、経済産業大臣は、東京電力に猛省を促したいと述べました。

 東京電力福島第一原発事故の対応に当たった者として、私は、あのときの教訓が全く生かされていないのではないかと危惧をしています。

 あのときも、東京電力からの報告が決定的に不足していた上に、発災直後は著しく楽観的な報告が繰り返されました。迅速かつ正確な報告がなされないことに苦慮し、最終的には、東京電力本社に政府関係者が常駐する必要まで生じました。

 この経緯を、現在の東京電力の幹部も、当時野党であった現政権の皆さんも、知らなかったはずありません。原発事故を教訓としているなら、東京電力は、何よりも正確かつ迅速な報告に心がけていたはずです。政府の側も、受け身でいたのでは正しい情報が迅速に得られないおそれがあることを警戒して当然であります。

 あのときと同様、今回も、現場の東京電力職員や関連会社の皆さんは不眠不休で対応に当たられました。それだけに、政府が受け身でなく情報をとりに行っていたのか、東京電力上層部に危機意識が不足していなかったのか、経緯や問題点を明らかにする必要があります。経済産業大臣に説明を求めます。

 台風十五号による停電は多くの皆さんに著しい影響を与えましたが、太陽光パネルや蓄電池が備え付けられていたために独立して電気を使うことが可能となり、影響を最小限に抑えることができた場所もありました。分散型電源は、災害に備えるという意味でも極めて有用であります。

 分散型エネルギー社会推進四法案が提出されていますが、与党は審議しようとしません。災害に強い暮らしをつくり、地域再生にもつながる重要課題として、再生可能エネルギーを中心とした分散型エネルギーを推進すべきであります。今回の教訓を踏まえ、政府として本気で取り組むつもりはないか、総理の認識をお尋ねします。

 関西電力の役員らが、原発立地自治体である福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていました。

 関西電力は、昨年九月に事実を把握しながらこれを公表せず、その上、去る二日の会見でも、真摯な説明にはほど遠く、元助役に、死人に口なしとばかり全責任をなすりつけるような、見苦しい姿を示しました。

 金品を受領していた時期は、原発再稼働が問題になっていた時期、原発が動かないから電気料金を値上げすると言っていた時期とも重なります。受け取っていた金品の原資は、電力料金か税金に由来する、いわゆる原発マネーそのもの。関西電力の隠蔽体質と原発利権による資金還流は、原発政策の根幹にかかわる大問題であります。

 政府は、この問題にどう対処するつもりでありますか。私は、背景も含め、政府主導で徹底的に調査すべきと考えますが、総理の見解をお聞かせください。

 また、このような資金を受け取っていた関電幹部は当然辞職すべきと考えますが、総理の認識はいかがでしょうか。

 二日に発表された関西電力による調査報告書は、昨年つくられたものです。政府はその時点で報告を受けていなかったのか、経済産業大臣にお尋ねします。

 なお、岩根茂樹関西電力社長など関係者には、ぜひ、参考人として国会の場で説明をいただきたいと考えております。

 菅原経済産業大臣は、平成二十四年四月十三日の経済産業委員会において、当時経産大臣であった私への質問で、「基本的に、私は、二〇三〇年をめどに原発をゼロにしていく、原発のない日本をつくっていく、こういう考え方に立っております。」こう発言されました。一昨年の衆議院議員選挙における選挙公報には、脱原発を堂々と掲げています。

 ところが、大臣に就任すると、原発ゼロは、今この瞬間、将来的に考えても現実的ではないと方針転換しています。

 いつ、なぜ、考えが変わったんですか。直近の選挙公報にはっきりと脱原発を掲げていたのですから、明確な公約違反になると思いますが、いかがですか。菅原大臣の詳細な説明を求めます。

 福島第一原発に保管されているトリチウム水について、九月十日、当時の原田環境大臣は、私は、所管を外れるが、やっぱりそれを思い切って放出して希釈すると、それしか方法がないというのが私の印象だと述べました。

 一方、新任の小泉環境大臣は、九月十二日、原田前大臣の発言によって傷ついた県民の方々には大変申しわけなく思う、所管外と断った上での発言とはいえ、しっかり向き合うことをやらなければならないと思ったと述べています。

 海洋放出に関する政府の見解は、結局何なのでしょうか。しっかり向き合うというのは具体的にどのようなことを意味するのですか。総理にお尋ねします。

 私たちの強い懸念と反対にもかかわらず、政府は十月一日からの消費増税を強行しました。

 キャッシュレス決済のポイント還元事業について、対象となる中小事業者は約二百万店なのに、十月一日時点で事業に参加していたのは約五十万店。多くの中小事業者にとって、この事業に参加するのは負担が大きく、したくてもできないという私たちの危惧が現実となっています。

 全体の四分の一程度しか利用できていないということは、制度そのものに問題があったと言わざるを得ません。総理の認識をお尋ねします。

 複数税率についても、レジ対応のおくれなど、混乱が指摘されています。

 そもそも、ポイント還元や複数税率は、消費税の持つ逆進性や痛税感の緩和という点での効果が限定的です。簡素で公平であるべきという税の基本原則から逸脱し、いたずらに混乱を引き起こすだけであります。

 逆進性を緩和し、低所得の皆さんの暮らしを守るには、給付つき税額控除こそが圧倒的に効果的であり効率的であります。健康で文化的な生活を営む上で必要な消費額、負担することになる消費税額を見積もり、所得税非課税世帯ではそれを給付する。所得税を納めている場合は税額控除と組み合わせる。これで、中低所得者の負担をきちっと軽減することができます。

 高所得者ほど多額の恩恵を受け、現場も混乱する複数税率ではなく、一日も早く給付つき税額控除を導入することを引き続き強く求めてまいります。

 そもそも、日本経済低迷の本質的な問題は、長期にわたる消費の低迷にあります。

 バブル崩壊後の一九九二年、平成四年から昨年までの二十七年間、民間最終消費支出の年平均成長率は名目〇・八%、実質で一・〇%にすぎません。ことしに入ってからの四半期ごとに見ても、一%に満たない低水準。同じ二十七年間に、輸出の年平均成長率は名目で二・九%、実質で四・一%であることからも、日本経済の半分以上を占める消費こそが経済低迷の圧倒的要因であります。

 第二次安倍政権が発足して、間もなく七年。株価は上がっても、また、大企業の収益は拡大しても、GDP成長率が一%そこそこに低迷しているのは、その主要因である消費が全く回復していないから。その中で消費増税を断行したことは、経済政策の観点からも、著しく問題であります。

 加えて、みずからの反省も込めて、税制への信頼について申し上げます。

 消費税は、高齢化などに対応する社会保障の充実、社会保障財源の確保を大義名分として導入され、段階的に税率が引き上げられてきました。しかし、結果的に、消費税による増収分におおむね相当する規模で法人税などの直接税収が少なくなっています。

 導入以降の消費税収入累積額は幾らですか。直接税収入について、消費税導入時点の収入を基準として、それを下回った額、上回った額を加減した累積額はどうなりますか。改めて財務大臣に確認をいたします。

 直接税には景気動向などの影響が大きいこともわかっています。しかし、納税者の立場からは、結果的に、大企業の法人税や富裕層の所得税が減った分を穴埋めする役割を果たしてきたとしか見えません。

 法人税や富裕層の所得税など、この間に恩恵を受けてきた層に対する直接税について、抜本的な強化、見直しを図るべきであります。

 対象とすべきは、多額の収益を上げ、内部留保を積み重ねている大手企業です。経営状況の厳しい中小企業など、赤字であったり利益を上げていなかったりする企業とは区別する必要があります。

 多大な利益を上げている資本金十億円以上の大企業の方が、収益に対する実質的な法人税の比率が低いという実態もあります。高収益を上げている大企業には、少なくとも中小企業と同等以上の負担を求めるべきでありますが、財務大臣の認識をお尋ねします。

 所得税については、金融所得課税が最大の問題です。

 スポーツや芸能関係など、限られた期間に集中的に高い収入を得る仕事もあり、所得税の累進強化には考慮すべき点が多々あります。

 金融所得は、他の所得から分離され、原則二〇%という低い率の課税がなされています。著しく高額の所得を得ている方ほど金融所得の比率が高くなっていますから、年収がおおむね一億円を超えると、所得税全体の負担率は急激に下がっています。明らかに不公平、不公正であります。

 株価などに一定の影響を与えるとも言われているため、慎重な制度設計が必要ですが、金融所得を総合課税に組み込み、累進課税の仕組みが機能する方向に変更するべきであります。財務大臣の見解を伺います。

 消費増税から脱却し、安定的な成長を実現するには、昭和の成功体験に引きずられた経済政策を大転換するしかありません。

 人口減少と高齢化に加え、貧困、格差の増大と固定化、老後や子育てなど将来不安の急激な拡大、減っていく実質賃金と非正規雇用の増大。これらはいずれも、消費にとって重大なマイナス要因であります。

 消費したくても消費できない貧困層をふやし、ある程度の蓄えがある方でも、医療や介護の不安によって、老後になっても蓄えを使えず、希望しても、子供を産み育てることを諦めざるを得ない。ローンを組むこともできず、仕事と収入が不安定なために、家庭を持つことも、いや、持つ意欲すら持てない。このような社会では、どんなによい物やサービスを売り出しても、消費が拡大するはずありません。

 規制は少なく、政府の関与を小さくして、自由な競争に委ねる。人件費をいかに低く抑えるかに奔走する。大規模な開発型の公共投資や大手企業への誘導策で民間投資を促す。きわめつきは、輸入物価を上昇させ、国内由来の消費にはマイナスとなる事実上の円安誘導で輸出企業を潤す。こうした経済政策は、高度成長期には一定の役割を果たしたかもしれませんが、しかし、現代の消費不況の時代には、効果がないばかりか、むしろマイナスであります。

 社会保障の充実を図り、税制も大きく見直して所得再分配機能を強化し、貧困や格差を解消に向かわせる。特に、介護や保育に代表される、老後や子育てなど暮らしの安心にかかわる人件費を厚くして人手不足を解消し、将来不安を小さくする。希望する非正規労働者をできるだけ早く正規雇用に転換しつつ、実質賃金を引き上げる。これこそが、これからの時代の最も効果的な消費拡大策であり、経済対策であります。

 こうした観点からも、安倍政権の社会保障政策は時代に逆行しています。

 非正規労働者への厚生年金の適用拡大について、政府は必要性こそ認めているものの、その規模感がはっきりしません。このままでは対象企業の若干の拡大にとどまるのではないかと危惧しています。

 この間、急激に非正規労働者の比率が高まり、将来の低年金高齢者を少なくするためには、厚生年金の適用拡大を大胆に進める必要があります。具体的な拡大規模の見通しを含めて、総理の見解を伺います。

 総理は、基礎年金について、マクロ経済調整が終わる三十年後でも、物価上昇率で割り引けば微減か横ばいであると説明し、年金は大丈夫としています。

 しかし、年金の受給水準については、現役時代と比べた所得代替率ではかるべきです。これによると、約三割下がるのではないですか。微減又は横ばいという試算は、実質賃金が四〇%も上昇することを前提としており、実質賃金が下がっている現状を考えると、余りにも非現実的であります。

 マクロ経済調整が終わる三十年後における所得代替率はどうなるのか。それによって想定される生活保護の大幅増加にどう対応するのかを含めて、総理の認識を伺います。

 政府が検討している六十五歳以上の在職老齢年金の廃止には、約四千億円の財源が必要になります。その財源は厚生年金基金にならざるを得ず、厚生年金受給者全体の年金財源が約四千億円カットされることになります。

 在職老齢年金の廃止で恩恵を受けるのは、月収四十七万円以上という高所得高齢者に限られます。そのために厚生年金受給者全体の財源を四千億円カットすれば、格差は拡大します。国民の理解は得られないと考えますが、総理の認識をお伺いします。

 十月から、低年金の方約一千万人に対し、月約五千円の特別給付金を支給することになりました。このための法律は、非自民政権下の二〇一二年十一月に成立したものです。

 この給付は、実施が大幅におくれたのに加えて、対象者が返信はがきを返送しないと受け取れない仕組みになっているようであります。この点、十分な周知がなされているとは思えません。どのような周知をしているのか、総理にお尋ねします。

 要介護一、二のホームヘルプやデイサービスを保険給付から外して、自治体の地域支援事業とし、生活援助のサービスをカットすると言われています。また、自己負担が二割となる対象を、被保険者の上位二〇%から二五%に広げることが検討されています。

 これでは、当然のことながら、家族の負担がふえます。認知症の家族会など介護者団体からは、今でもぎりぎりなのに、介護で家庭崩壊する、介護離職がふえると強く反対する声が上がっています。

 医療同様、介護においても、軽いうちに早期に対応することで、一定程度、重度化を防いだりおくらせたりすることにつながります。目先の財政的なつじつま合わせのために、必要なサービスが提供されなくなれば、当事者のみならず、財政も含めた社会全体のコストも大きくなると考えます。

 安易なサービスカットや利用抑制につながる負担増は適切ではありません。総理の認識をお伺いします。

 日米貿易交渉に関連して、突然、米国のトウモロコシ購入の話が出てきました。

 日本でのトウモロコシの病害虫被害が理由であるようにも言われていますが、国内でのトウモロコシの病害虫被害の程度と不足分の規模について、総理にお尋ねします。

 その上で、購入額を含め、トウモロコシ輸入に関して米国に約束した具体的中身と合意した理由について、総理の答弁を求めます。

 今回、自動車関税については継続協議となりました。

 今後の協議について、何らかの期限やめどは設けられているのでしょうか。方向性について、一定の認識の共有はあるのでしょうか。総理にお尋ねします。

 昨年十二月に発効のTPP11、ことし二月に発効した日欧EPA、そして今回の日米貿易協定をあわせ、一次産業に与える影響は極めて大きいものがあります。ただでさえ我が国の一次産業は生産基盤が著しく弱まっており、この三協定による悪影響を放置すると、壊滅的な状況に陥ります。

 一次産業は、生きていく上で欠かせない食料を賄うための最も基本的な営み。国土や自然環境を守るとともに、農山漁村の人口が維持されることで地域の経済社会や文化を守っていく基盤となるなど、多面的な役割を担っています。

 第一次産業をサステーナブルなものとするためには、私たちが国会提出している農業者戸別所得補償法案を成立させることが不可欠であると考えます。総理の認識をお伺いします。

 辺野古新基地問題について、一連の選挙を通じて、県民の民意は明らか過ぎるほど明らかになっています。政府は、それを無視し、新基地建設を強行し続けています。

 今からでも工事を一旦停止し、沖縄県側と真摯に話し合う気は全くないのですか。総理御自身の口から沖縄県民に対してお答えいただきたいと思います。

 イージス・アショアに関する調査では、グーグルアースを用いていたことだけでも信じられないのに、縦、横方向の縮尺の違いにも気づかず、山との仰角九カ所全てでデータを過大評価するなど、余りにもずさんで、唖然とするばかりであります。

 正確な地形の把握は、軍事における基本中の基本。どんなに正面装備を強化しても、地形の把握すらできないのでは、国を守ることなどできません。旧日本軍が兵たんを軽視した過ちに通じるものであります。

 防衛省のずさんな対応をどう受けとめ、どう改善するのか、総理の説明を求めます。

 また、このようなずさんな調査もあって、秋田を始め地元の反発、反対が強まっています。それでも配備を強行するのでしょうか。総理の見解を伺います。

 教員の長時間労働がようやく問題視されるようになり、ことし一月、中央教育審議会は変形労働時間制の導入を答申しました。夏休みのような長期休業中などに休日のまとめどりを促し、年単位でつじつまを合わせようとするものです。

 しかし、子供たちには休暇となる期間でも、教職員には、研修などが集中しており、時間的余裕はありません。こうした実態のもとで、中教審の答申レベルの前進にとどまれば、抜本的な改善につながらないどころか、逆に、長時間労働を固定化し、拡大させかねません。大幅な業務縮減と定数改善を進め、教員の長時間労働を容認してきた給特法そのものを抜本的に見直すべきであります。

 教員が子供たちと向き合う時間的、精神的ゆとりを持てなければ、多様化する子供たちを取り巻く環境に対応した、実のある指導が困難です。日本の未来を担う子供たちの成長に寄り添う教員の多くが過労死ラインに達してしまっている現状を早急に解決すべきと考えますが、総理の認識を伺います。

 そもそも、教育予算や人員配置を比較すると、日本の子供たちの学ぶ環境はOECD諸国の中で最低水準です。子供一人当たりの教育予算と教職員配置について、OECD諸国の中で日本が何カ国中何位であるか、総理に確認をします。

 二〇二〇年度に始まる大学入試の英語民間検定試験について、混乱が続き、批判が高まっています。

 全国高校長協会は、受験生の不安が解消できていないとして、現状のままなら実施見送りを求める方針を示しました。当事者である高校生へのアンケートなどでも、大方が不安を感じ、延期などを求めています。

 離島など地方の受験生や経済状況が厳しい家庭の受験生が不利になるなど、問題は明白であります。運用実態を見ながら改善をしていく旨の発言に対して、高校生からは、実験材料にするのかという批判が出ています。

 一旦延期して、公平な機会を提供できる制度が整うまでは、現在のセンター試験を継続すべきと考えますが、総理の見解を求めます。

 文化庁は、いわゆるあいちトリエンナーレを国の補助事業として採択していましたが、今になって、約七千八百万円の補助金を全額交付しないと発表しました。

 補助金事業への採択後に企画内容を変更した場合でも、せいぜい減額程度が一般的です。全額返還は、水増し請求など不正行為が認められたものに限られています。

 しかも、不交付は、議事録などの記録もなく、補助事業としての採択を決めた審査委員会の意見を聞くこともなく、密室の中で突然決められ、発表されました。内容、手続両面で、違法、不当であります。文部科学大臣の説明を求めます。

 一部の展示中止にまつわる手続が補助取消しの理由であるならば、本末転倒です。脅迫という犯罪行為に対して、不本意ながら展示を中止したのですから、責められるべきは専ら脅迫者です。文化庁は、必要な情報が事前に申告されなかったことを問題視しているようですが、表現に対する抗議を事前に予想することは困難です。文化庁は、脅迫者に結果的に加担したと言われても仕方ありません。

 多くの人は、結局、展示の中身が気に食わないから金を出さないのだと受けとめています。こんなことが前例とされるなら、今後は、議論を起こすような展示は公的補助を受けることが難しくなるのではないかという萎縮効果が働いて、お上に迎合した当たりさわりのない表現だけに徹しようという、事実上の事前検閲につながってしまいます。

 不交付決定を違法、不当として撤回し、当初の決定どおり補助金を交付すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHK「クローズアップ現代+」に関し、経営委員会は、郵政グループ幹部からの抗議を受け、ガバナンス強化の名目で上田会長を厳重注意しました。

 放送法三十二条二項は、経営委員が個別番組の編集に干渉、規律することをわざわざ明文で禁止しています。番組内容に介入しても、ガバナンス強化という名目さえつければよいなら、放送法三十二条二項は空文化してしまいます。こんなことが許されないのは当然のことであって、経営委員会の対応は明白な放送法違反であります。

 また、厳重注意が行われたとされる昨年十月二十三日の議事録には、何の記載もありません。経営委員会に議事録の作成、公表を義務づけた放送法第四十一条に反する上、隠蔽の意図が疑われます。国民の受信料の上に成り立つNHKとして、適切な情報公開を怠るのであれば、存在意義すら失われます。

 内容面、手続面、両面での放送法違反について、総理の見解を伺います。

 郵政グループは、総務事務次官経験者である鈴木副社長がじきじきにNHKに圧力をかけていました。

 事務次官を退官して八年以上経過しているとはいえ、十一月七日付の鈴木副社長名の文書では、みずからについて、わざわざ、かつて放送行政に携わり、NHKのガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場、自分で自分のことをそういうふうに紹介しているんですよ。これで圧力を感じない人がいたら、逆に、鈍感過ぎて、組織人、社会人としての資質が疑われます。

 忘れてはならないのは、一連の問題が、ガバナンスの問題でもある、かんぽ生命の不正販売をめぐって発生していることです。不正販売問題では、現時点でも郵政グループ幹部の危機意識が希薄であると指摘されています。こうした流れの中で、報道機関に圧力をかけた鈴木副社長の責任は大変重いと言わざるを得ません。総理の認識をお伺いします。

 なお、鈴木副社長についても、当然のことながら、国会に参考人として来ていただいて、詳細な説明をいただきたいと考えています。

 これらの問題がほぼ同時に明らかになった状況は、大変深刻だと思っています。

 昭和初期の言論、表現の自由に対する侵害状況も、ある日突然、明確な形で生じたのではありません。圧力やそんたく、そして萎縮などがじわじわと拡大し、多くの良識ある国民が気づいたときには、はねのけることが困難な状況に追い込まれていました。

 報道、表現の自由が機能しない社会は、もはや民主社会とは言えません。最大与党の皆さんも、党名に掲げる自由と民主を真に大切であると思うならば、この危機感を共有していただけるはずですが、総理の認識を伺います。

 最後に、自由民主党で憲法に関する責任者を務めてこられた下村議員が、同性婚を認める議論を進めてもよいと受け取れる発言をされました。安倍総理が所信表明で多様性を強調されたこととも平仄が合っております。

 自由民主党が、同性婚を認めることに賛同いただき、議論を進めていただけるなら、大歓迎であります。

 なお、現行憲法でも同性婚を認める法律を禁じていないというのが圧倒的多数説であります。既に同性婚を認める民法改正案を国会提出しておりますので、議論の場は、憲法審査会ではなく、法務委員会であります。

 与党の皆さんは、常々、反対なら対案を出せと言っておられますので、まさか対案も出さずにたなざらしにすることはないと信じます。

 ぜひ、この臨時国会で法務委員会における法案審査を進め、自民党を含む皆さんの御賛同を得て、同性婚を認める民法改正を成立させていただくようお願いを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 枝野議員にお答えをいたします。

 台風第十五号への災害対応についてお尋ねがありました。

 まず、台風第十五号によりお亡くなりになられた方の御冥福をお祈りするとともに、全ての被害者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 政府においては、台風の接近前から防災担当大臣が出席して、関係省庁災害警戒会議を開催したほか、停電の解消に時間を要している状況等を踏まえ、関係省庁災害対策会議を合計十四回開催し、閣僚懇談会でも議論するなど、関係省庁が緊密に連携し、切れ目のない対応に当たってきたところです。

 そうした中で、内閣府や経済産業省等の連絡員や専門的な知識を有する者を順次千葉県庁や各市町村に派遣したほか、食料品等のプッシュ型支援、自衛隊員延べ五万四千人を動員しての倒木除去作業やブルーシートの展張作業、被災地への自治体職員の広域応援派遣を行うなど、被災地のニーズを踏まえたさまざまな支援策を講じてまいりました。

 このように、今回の台風への初動対応については、迅速、適切に行われてきたものと認識しておりますが、今回の台風においては、長期間にわたる停電及びその復旧プロセスなどのさまざまな課題が認められました。それらの課題を検証、検討するため、先般、官房副長官をトップとする検証チームを立ち上げました。

 今後、このチームのもとに設置した実務者検討会において、メンバーである防災分野等の有識者五名の御意見も伺いながら、長期停電の原因及びその復旧プロセス、通信障害に関する関係者間の情報共有、復旧プロセス、国、地方自治体の初動対応、災害対応にふなれな自治体への支援等について、徹底的かつ客観的に検証してまいります。

 分散型エネルギーについてお尋ねがありました。

 議員提出法案の取扱いは、国会の運営にかかわるものであり、国会がお決めになることと考えています。

 その上で申し上げれば、分散型エネルギーは、非常時にも活用できるエネルギー供給源を確保する点や地域活性化にも資する点から、重要と考えます。

 政府としては、これまでも、地産地消型エネルギーシステムの構築に対する支援などを行ってきておりますが、今後とも、自家発電設備や蓄電設備の整備を支援するなど、分散型エネルギーの普及を後押ししてまいります。

 関西電力の問題についてお尋ねがありました。

 東日本大震災後に、担当大臣として、電気料金の上昇、関西電力の原発再稼働などで大変な御苦労をされた枝野代表には申し上げるまでもありませんが、電気事業者たるものは、原子力にかかわるものか否かにかかわらず、その事業全体について、電気料金を支払う利用者の皆さんから不信を持たれることのないよう、常に適正な事業運営に努めるべきは当然であります。

 そうした観点から、政府として、今回の問題について、電気事業法に基づき、所管する経済産業省から関西電力に対して事実関係や他の類似事案の有無などの報告徴収命令を既に出しており、これを受けて、関西電力は、独立した第三者委員会のもとで調査を行うこととしたものと承知しております。

 まずは、第三者の目を入れて、徹底的に全容を解明することが不可欠であり、その上で、経営問題も含め、再発防止等の措置を講ずることで、利用者の皆さんの信頼回復に努めることが必要であると考えています。

 東京電力福島第一原発における処理水の取扱いについてお尋ねがありました。

 小泉環境大臣の発言については、詳細を承知しておらず、コメントは差し控えますが、汚染水処理については、東京電力福島第一原発事故の直後から、歴代政権が、地元福島県の皆さんと向き合い、その御理解を得ながら取り組んできたものと承知しています。

 その上で、ALPSの処理水については、現在、経済産業省において、有識者による小委員会を設置し、地元関係者の御意見もお聞きしながら、海洋放出を含めたあらゆる選択肢について検討を行っていると承知しており、今後、政府として、丁寧な議論の上に、結論を出してまいります。

 ポイント還元と中小事業者の負担についてお尋ねがありました。

 今回のポイント還元では、決済端末の支援を行い、中小・小規模事業者の導入に係る負担をゼロとするとともに、手数料についても、三・二五%以下とした上で、更にその一部を補助するなどにより、中小・小規模事業者の皆さんの負担を大きく軽減することで、キャッシュレスを導入しやすい環境を整えています。

 現在の参加店舗は五十万店でありますが、こうした制度への理解が深まる中で、最近は一日一万店ペースで決済事業者への申請が増加しており、こうした申請中の案件も含めれば、現時点で八十万店を超えています。

 決済事業者による審査体制を強化することで、申請待ち時間の圧縮を図り、参加店舗数の速やかな拡大を目指します。

 また、これまでも、千五百の商店街など全国で説明会を行ってまいりましたが、今後、全国千六百の商工会などの協力を得て個別店舗への働きかけを行うなど、制度のさらなる周知を図ることでより多くの中小店舗に参加いただけるよう取り組んでまいります。

 海外で急速にキャッシュレス決済が普及する中、日本を訪れる外国人観光客の七割が、キャッシュレスがあればもっとお金を使ったと回答しています。

 今回のポイント還元により、キャッシュレス化を進めることで、インバウンド消費の拡大を通じて全国津々浦々の中小・小規模事業者の皆さんの成長へとつなげてまいります。

 厚生年金の適用拡大についてお尋ねがありました。

 同一労働同一賃金によって正規、非正規の壁がなくなる中で、厚生年金の適用範囲を拡大し、老後の安心を確保していくことが重要です。

 具体的な適用範囲については、中小・小規模事業者への影響や労働者の就業実態なども踏まえつつ、老後の安心確保にしっかりと資するものとなるよう、年末までを目途に検討を進めてまいります。

 年金水準と生活保護についてお尋ねがありました。

 先般公表した財政検証の結果によれば、マクロ経済スライドによる調整が終了した後の所得代替率は、前回よりも悪化するのではないかとの一部の臆測に反し、代表的なケースでは、前回検証時の五〇・六%に対して、五〇・八%と改善したところであります。

 また、基礎年金額は、物価上昇分を割り戻した実質価格で見て、おおむね横ばいとなっています。

 なお、三十年後の生活保護受給者数を正確に見通すことは困難ですが、経済を強くすることで年金の財政基盤を確かなものとし、さらに、年金の適用拡大など老後の安心を支える制度改革を推し進めることで、生活の安定を図ってまいります。

 在職老齢年金制度についてお尋ねがありました。

 在職老齢年金制度については、人生百年時代を見据えて、高齢者の就労意欲を阻害しない観点からの見直しが必要と考えており、厚生年金の適用拡大の効果など、年金制度全体の改革の中で、御指摘の年金財政の問題にも留意しつつ、検討を進めてまいります。

 年金生活者支援給付金についてお尋ねがありました。

 年金生活者支援給付金の請求の手続については、テレビやラジオ等も活用した広報を行うとともに、専用のコールセンターを設置し、手続等についてのお問合せに丁寧に対応しております。

 また、請求書は、氏名等を記載し返送するだけの簡易なはがき形式とするなど、対象者の方に可能な限り御負担をかけずに請求できるような工夫もしております。

 今後とも、給付金の手続が適切に行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。

 介護保険制度についてお尋ねがありました。

 介護保険制度については、現時点において、議員が指摘された内容の見直しを行う検討がなされているわけではありません。

 今後、年金、医療、介護、労働など社会保障全般にわたって、人生百年時代を見据えた改革を進める中で、給付と負担のあり方について適切に検討してまいります。

 トウモロコシの害虫被害についてお尋ねがありました。

 非常に強い食害性と伝播力を持つ害虫であるツマジロクサヨトウは、本年七月、我が国で初めてその発生が確認され、先週までに、東北から九州、沖縄までの十九府県、百二市町村に発生地域が拡大しています。

 現在、その防除や蔓延防止対策に全力を挙げている段階であり、総被害量を見通すことは困難です。

 トウモロコシ輸入については……(発言する者あり)

議長(大島理森君) 御静粛に。

内閣総理大臣(安倍晋三君)(続) よろしいでしょうか。

 トウモロコシ輸入についてお尋ねがありました。

 トウモロコシの購入について、私からトランプ大統領に対し、我が国では、本年に入り、トウモロコシ等に寄生する害虫の被害対策の一環として、海外のトウモロコシの前倒し購入を含む代替飼料の確保対策を実施することとしている、これは民間企業が購入するものであるが、飼料用トウモロコシの多くが米国から買われていることから、その対策の実施によって米国のトウモロコシが前倒しで購入されることを期待していると説明しましたが、米国と約束や合意をしたとの事実はありません。

 日米貿易交渉における自動車関税の取扱いについてお尋ねがありました。

 具体的な関税の撤廃時期は今後の交渉の中で決まっていくことになりますが、今回の日米貿易協定においては、自動車及び自動車部品について、さらなる交渉による関税撤廃を明記します。

 さらに、この協定が誠実に履行されている間、日本の自動車及び自動車部品に対して、米国通商拡大法第二三二条に基づく追加関税が課されることがない旨を私からトランプ大統領に直接確認いたしました。

 その上で、こうした交渉結果については、我が国の自動車工業会から、自動車分野における日米間の自由で公正な貿易環境が維持強化されるものであるとの評価が既に発表されていると承知しています。まさに国益にかなう結果を得ることができたと考えています。

 農業者戸別所得補償法案についてお尋ねがありました。

 旧戸別所得補償制度については、全ての販売農家を対象に交付金を支払うものであったことから、担い手への農地の集積ペースをおくらせる面があったと考えています。また、十分な国境措置がある米について交付金を交付することは、他の農産物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたい等の課題があります。

 そして、何よりも、主食用の米は、需要が年々減少しています。旧戸別所得補償制度のように米への助成を基本にするのであれば、米の過剰作付を招き、需要のある作物への転換は進みません。それでは農家の所得向上にはつながりません。

 このため、安倍内閣では、旧戸別所得補償制度は廃止し、麦、大豆、飼料用米といった需要のある作物の生産振興を図っています。また、農地バンクによる農地集積や輸出促進など、前向きな政策を強化してまいりました。

 これにより、生産農業所得は三年連続で増加して九千億円も拡大し、農林水産品の輸出は六年連続で過去最高を更新し、九千億円を超えました。

 こうした新しい農業を切り開くための政策を更に力強く展開し、農家の所得向上を実現してまいります。

 普天間飛行場の辺野古移設についてお尋ねがありました。

 沖縄に米軍基地が集中する現状は、到底是認できません。沖縄の負担軽減は政府の大きな責任です。

 その中で、住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。

 普天間の全面返還を日米で合意してから二十年を超えた今もなお返還が実現しておらず、もはや先送りは許されません。

 これからも、地元の皆様と対話を積み重ね、御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

 イージス・アショアの配備についてお尋ねがありました。

 イージス・アショアについて、説明資料の誤りや緊張感に欠けた不適切な対応があったことは、極めて遺憾です。

 他方、厳しい安全保障環境の中、国民の命を守り抜くため、イージス・アショア二基の導入はどうしても必要です。

 イージス・アショアの配備の決定に当たっては、あくまでも正確なデータに基づく客観的な検討が前提です。

 今後、調査の外部委託や専門家による検証などを通じ、不適切な調査を徹底的にやり直し、国民の皆様と地元の方々に正確で丁寧な説明が可能となるよう、全力で取り組んでまいります。

 教員の長時間勤務についてお尋ねがありました。

 教員の勤務実態を踏まえ、業務の見直しなどを行い、教員の業務負担の軽減を図ることは喫緊の課題であると認識しております。

 このため、勤務時間の上限に関するガイドラインの徹底、部活動や給食費徴収の事務に係る業務の効率化、小学校の英語専科教員の配置など、学校の指導、事務体制の強化などに総合的に取り組んできたところであります。さらに、学校における働き方改革を推進するため、業務量の適正管理等に関する指針の策定などを内容とする法案の提出準備を行っております。

 教育予算や教職員配置の国際比較についてお尋ねがありました。

 OECDが行っている調査によると、二〇一五年における在学者一人当たりの公財政支出額の順位は、小中高校段階で三十三カ国中十五位となっています。また、二〇一六年における教員一人当たり生徒数の順位は、小学校段階で三十四カ国中二十四位、中学校段階で三十カ国中二十位となっており、いずれもOECD諸国の中で最低水準であるとの御指摘は当たりません。

 なお、今般、消費税の使い道を見直し、税収を子育て世代、子供たちに大胆に振り向けることで、幼児教育、保育の無償化、そして真に必要な子供たちの高等教育の無償化を実現したところです。

 大学入試の英語民間検定試験についてお尋ねがありました。

 グローバル人材を育成する上で、英語は重要なツールであり、読む、聞く、話す、書くの四技能を総合的に育む必要がありますが、現在の大学入試センター試験では、その全てを評価することは困難です。このため、二〇二〇年度から民間の英語検定試験の本格的な活用を図ることとしています。

 その実施に当たっては、各大学側の試験活用方法の早期確定、トラブル発生時の再試験の実施など、安心して受験できる体制を整えることとしており、さらに、高校、大学関係者による協議を通じて、受験生の皆さんの不安の払拭に向けて、よりきめの細かい対応を促してまいります。

 あいちトリエンナーレについてお尋ねがありました。

 補助金の交付等については、それぞれの所管官庁、実施機関において、法令や予算の趣旨にのっとって適正に実施されるべきものであり、このたびのあいちトリエンナーレに対する補助金については、文化庁においてそうした判断をしたものと承知しています。

 放送法についてお尋ねがありました。

 御指摘の件については、現在、担当部局において事実関係を確認中であると承知しており、総務省において適切に対応するものと考えています。

 日本郵政グループについてお尋ねがありました。

 日本郵政グループと放送事業者との間の個別のやりとりについてコメントすることは差し控えます。

 なお、かんぽ生命をめぐる一連の問題については、現在、総務省及び金融庁において実態解明に向けて立入検査等を実施しているものと承知しています。

 報道の自由、表現の自由についてお尋ねがありました。

 私たちに対する、安倍政権に対する連日の報道をごらんいただければおわかりいただけると思いますが、萎縮している報道機関など存在しないと考えています。それにもかかわらず、ありもしない危機をいたずらにあおるような言動は、我が国の隆々たる各言論機関、才能あふれる芸術家の皆さんに対して大変失礼であるのみならず、外国からの誤解を生みかねないものであります。

 報道の自由、表現の自由は、まさに民主主義を担保するものであり、当然尊重されるべきものであることは言うまでもなく、日本国憲法に基づいてしっかり保障されていることは、立憲を党名に掲げる枝野議員であれば御理解いただけるものと考えております。期待しております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 枝野議員からは、消費税収及び直接税収入、法人課税、金融所得課税について、計三問お尋ねがあっております。

 まず、消費税収及び直接税収入においてお尋ねがありましたが、消費税収は、平成元年四月の導入から平成三十年度決算まで、国、地方合わせて累計三百七十二兆円であります。

 また、個人や法人の所得課税や資産課税の直接税収入は、平成元年度から平成三十年度までの各年度と消費税導入前とを比較し、上回った額と下回った額を累計すると、国、地方合わせて約三十五兆円のマイナスであります。

 なお、直接税収につきましては、これは当然のことながら、経済情勢などの影響が大きいことは申し添えておきます。

 次に、大企業と中小企業の法人税負担についてのお尋ねがあっております。

 議員の御指摘の、収益に対する実質的な法人税の比率につきましては、その意味するところが定かではないんですが、法人税の制度について申し上げれば、中小法人につきましては、法人所得のうち八百万円以下の部分につきましては、大法人向けの税率が二三・二%になっておりますが、他方、中小企業は一五%の軽減税率としております。

 また、欠損金の繰越控除につきましても、大法人は所得の五〇%までを限度としているところ、中小法人につきましては所得の全額まで控除可能としていることなど、御存じのようにさまざまな特例を設けておるところであります。

 したがって、現行の税制において、大法人に比べ、中小法人により配慮したものとなっているものだと認識をいたしております。

 最後に、金融所得課税についてのお尋ねがありました。

 金融所得課税については、平成二十六年から、上場企業の譲渡益等に係る税率を一〇%から二〇%に引き上げたところであります。その結果として、高所得者ほど所得の負担率が上昇する傾向が見られ、所得再配分機能の回復に一定の効果があったのではないかと考えております。

 こうした取組を行ってきていることも踏まえ、今後の金融所得課税のあり方については、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣菅原一秀君登壇〕

国務大臣(菅原一秀君) 私に三問御質問をいただきました。

 まず、大規模停電への東京電力及び政府の対応についてでありますが、経済産業省としては、台風が上陸した九月九日即日、職員を派遣し、最大九十三名、延べ三百四十一名の職員が、千葉県庁を始め二十六の自治体や東京電力から情報を直接収集してまいりました。私も、就任翌日、被災地を二度訪れまして、被害状況をじかに把握し、指示を行ってまいりました。

 停電に関する一連の対応につきましては、専門家によるフルオープンの審議会を既に立ち上げ、東京電力や政府の対応を含め、しっかりと検証して、課題を明らかにしてまいります。

 次に、関西電力による調査報告書の報告をいつ受けたかというお尋ねがございました。

 昨年九月に関西電力が調査報告書をまとめてから今回の報道が出るまで、関西電力から経済産業省に一切の報告がありませんでした。本年九月二十七日の報道の後、初めて関西電力から説明があった次第であります。

 最後に、原子力政策の認識についてのお尋ねがありました。

 私は、以前から脱原発と発してまいりましたが、これは、福島第一原発の事故直後にみずからトラックを運転して被災地に入り、被害を受けたふるさとの姿を目の当たりにし、原発事故リスクを減らしていくため、原発に頼らないエネルギー構造を目指す必要があると考えたからであります。

 こうした私の考えも含め、政府・与党におきましてかんかんがくがくの議論を重ね、二〇一四年に策定したエネルギー基本計画では、徹底した省エネや再エネの最大限の導入に取り組み、原発依存度を可能な限り低減させていくといった方針が示され、今日に至っております。

 私の考えはこの方針と合致しており、従来から一貫しております。したがって、公約違反との御指摘は当たらないと考えます。

 その上で、原発ゼロについては、多様なエネルギー源をバランスよく活用することの重要性、さらには、国民生活や産業活動に安定したエネルギー供給を行うことの責任や気候変動問題への対応を踏まえて、現実的ではないと考えるに至ります。

 なお、二〇一二年四月、私が当時の枝野経産大臣に質問いたしましたのは、原発事故の教訓を踏まえた安全規制が確立、定着しない中で、安易に大飯原発の再稼働を進めることは問題であるという趣旨であります。

 その後、同年九月に原子力規制委員会が設置され、現在は、御案内のとおり、新規制基準に適合すると認められた原子力発電所のみ再稼働することとなっており、当時とは状況が大きく異なります。

 このため、考えが変わったとの御指摘は当たりません。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 枝野議員から、あいちトリエンナーレに対する補助金の取扱いについてお尋ねがありました。

 あいちトリエンナーレに対する補助金については、補助金申請者である愛知県が、補助金申請の手続において、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実の申告がなかったことが不適当な行為と認められたことから、全額不交付としたものです。

 本件補助事業では、文化庁が、関係法令等に基づく手続に従って適切に対応しているものと考えます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 林幹雄君。

    〔林幹雄君登壇〕

林幹雄君 自由民主党の林幹雄です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説に対し質問をいたします。(拍手)

 冒頭、けさ、能登半島沖の我が国のEEZ内で、水産庁の漁業取締り船と北朝鮮の漁船が衝突し、漁船は転覆、現在、乗組員を救助しているという事案が発生いたしました。

 水産庁は、この漁船に対し、EEZ内から退却するよう警告していたとのことですが、水産庁の行動は法律に基づく正当な行動であります。その後の人命救助についても、速やかに行われております。

 政府は、今後、事案の詳細を明らかにし、しっかり対応していただきたいと思います。安倍総理の答弁をお願いします。

 この夏も、佐賀県を中心とする大雨や台風十五号、十七号などの影響で、日本各地で甚大な被害が発生しました。これらの災害により、お亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に深くお見舞いを申し上げます。

 台風十五号は、観測史上最大の風速を記録し、千葉県を中心として、多くの地点で強風や豪雨に襲われました。長期間にわたる停電で、市民生活、道路などの交通、水道などのライフライン、生産や物流など企業活動に深刻な影響が生じ、被害の大きさを改めて認識しました。

 農業用ハウスや畜舎は倒壊し、野菜、果物、畜産など、農林水産業における被害額は東日本大震災による被害額を超え、この災害で離農するとの声も少なくありません。農林水産業者への経営安定や今後の営農、早期の事業再開に最大限の支援が必要です。

 秋の行楽シーズンが真っただ中にあって、観光業も大きなダメージを受けました。災害廃棄物は膨大で、広域で連携し、万全な対応が必要です。

 千葉県内の住宅被害は二万軒を超え、補修のスピードを上げないと、安心して年末年始を過ごせない状況です。屋根に被害のあった被災家屋の多くで、屋内が浸水するなど被害が広がっています。

 半壊の住宅に対しては災害救助法による公費負担がされることになるようですが、一部損壊でも日常生活に支障を来すようなケースには、制度を柔軟に適用することも考えるべきであります。

 停電長期化の主な原因は、鉄塔の倒壊や倒木により送電網が大きな被害を受けたことであると言われていますが、同様の問題は、昨年の台風二十一号や北海道胆振東部地震でも発生しています。

 停電してもすぐに復旧するのが日本の電力供給の強みだったはずなのに、これだけ復旧に時間を要したということは、既存の体制では激化する自然災害に対応できないことを示しています。

 全国の電力会社で過去の経験を共有し、専門家を交え、長期停電の検証を行い、電柱の地中化や強度化など送電網の電力供給体制の強化、非常用電源の確保、家庭用発電機への補助など、電源のバックアップ体制について真剣に考えるべきであります。

 大規模な通信障害も発生し、情報に全くアクセスできない地域も多数発生しました。今回の通信障害に対する復旧プロセスの検証を踏まえ、携帯電話の基地局への非常用電源の設置など、強靱な通信網の整備が急務です。

 JR、私鉄、バスの運休で、一万人を超える利用者が成田空港に足どめとなりました。昨年の西日本豪雨では関西空港が、北海道胆振東部地震では新千歳空港が孤立しており、来年の東京オリンピックを見据えたとき、公共交通機関の強靱化は喫緊の課題です。

 例えば首都圏においては、羽田、成田、茨城の三空港で発着の調整を行う枠組みをつくることや、災害時の外国人への対応がおくれている地方空港の機能の充実を図るなど、非常時に強い柔軟な航空政策も必要です。

 政府の初動対応は迅速で、台風接近前から、関係省庁災害警戒会議を開催したり、閣僚懇談会の場を活用するなど、しっかりと対応してきたと思います。武田防災担当大臣は、就任翌日には千葉県の香取市と多古町に入り、被災現場を調査されました。

 自衛隊は、給水、入浴支援を始め、倒木処理、ブルーシートを張るなど、最大約一万人体制で活動し、感謝の声が多く上がっています。ボランティアの皆さんの心温まる支援にも感謝申し上げるものであります。

 他方、停電の影響で電話が通じず、被害が広大な範囲に及んだことから、全体の把握が難しく、自治体間でスムーズな連携ができなかったことも事実です。全容の把握には被災自治体や地方整備局における機動的な対応が必要であり、今後、防災ヘリやドローンを積極的に活用すべきであります。

 東電の見通しの甘さは大変遺憾であり、社会的責任の重さを考え直していただきたいと思います。

 地球温暖化が進み、台風は今やゲリラ台風ともスーパー台風とも言われ、被害も激甚化しています。過去五年間における激甚災害の指定は二十五件にも上ります。

 今般の台風十五号は、佐賀県の大雨や十七号などと一体化して、柔軟かつ早期に激甚災害に指定される見込みとなりました。これは、自治体や住民に大きな勇気を与えるものであります。

 災害は、今や日本全国どこでも発生することを想定し、オール・ジャパンで対応しなければ国民の生命や生活を守ることはできません。

 国の職員による助言や被災経験のある自治体からの職員派遣など、プッシュ型の人的支援を始め、全国千七百四十一の自治体のうち、わずか百十五市区町村でしか策定されていない国土強靱化地域計画を早急に策定する必要があります。地方創生と国土強靱化を調和させることも効果的です。

 以上、これまで述べてきた復旧復興や災害対応の課題について、安倍総理のお考えをお尋ねします。

 この十月から消費税が一〇%へ引き上げられ、消費税を財源として、三歳から五歳までの全ての子供たちの幼児教育、保育が無償化され、来年四月からは、真に必要な子供たちの高等教育の無償化もスタートします。

 消費税の増収分を活用し、全世代型社会保障へと転換を進め、全ての世代が安心できる社会を築くことは、我が党と国民の皆様との約束であります。支える側と支えられる側のリバランスを通じ、人生百年時代にふさわしい社会保障制度を構築することは、安倍内閣最大のチャレンジでございます。

 先月には、全世代型社会保障検討会議も発足し、具体的な施策について議論が始まりました。消費税と、年金、医療、介護、労働などの社会保障制度は、いずれも国民の関心の高い重要課題であり、財政再建の道筋とあわせ、幅広い理解を得て進めることが大切です。

 全世代型社会保障制度の構築に向けて、西村担当大臣の意気込みを伺います。

 全ての世代が希望に応じて意欲、能力を生かして活躍できる環境整備を進める中で、就職氷河期世代への対応は、我が国の将来にわたる重要な課題であり、社会全体で正面から取り組むべきと考えます。

 政府は、ことし六月に就職氷河期世代支援プログラムを取りまとめ、今後三年間で集中的に支援に取り組んでいくこととしています。この支援について、西村担当大臣の御決意をお伺いします。

 日本経済を支える中小企業にとって、後継者問題は大きな課題であります。事業を承継する際に大きな課題となるのが、経営者の個人保証の問題です。

 経営者の個人保証を引き継ぐことが障害となり、事業継続を断念する事業者は後を絶ちません。また、起業を目指す起業家にとっても、一度失敗すれば全てを失いかねない個人保証は、心理的にも起業のハードルになっています。

 この日本独特の商習慣を是正することは、日本経済の活性化にとって不可欠であります。

 我が党は、これまでも、法人、個人版の事業承継税制の拡充、創設を始め、生産性向上に向けた設備投資、ITの導入支援、取引慣行の適正化など、中小企業の立場に立った取組を進めてきました。

 金融機関が融資の際に取得する個人保証についても抜本的に見直す必要があると考えていますが、安倍総理の認識を伺います。

 デジタル経済が進展していく中で、オンラインの市場で支配力を有する巨大IT企業の存在感が増しています。いわゆるプラットフォーマーの問題であります。

 中小企業やベンチャー企業にとっては、世界に取引市場を広げるチャンスになる一方で、圧倒的な市場での力の格差のため、出店条件が一方的に変更される、利用料が高いといった課題も生じています。

 こうした課題を解決し、デジタル市場の活性化を日本経済の成長につなげるため、政府はどのように取組を進められるのか、安倍総理に伺います。

 消費税率の引上げと同時に、経済への影響を乗り越えるため、新たに軽減税率制度やキャッシュレスポイント還元制度がスタートしました。

 他方で、キャッシュレス決済を全く使っておらず、負担軽減につながっていないといった声もあります。制度の周知徹底や利用促進を含め、しっかりと対応していかなければなりません。

 消費税引上げの経済への影響とその対策について、安倍総理に伺います。

 海洋プラスチックごみの対策は、世界的な課題であります。安倍総理は、さきのG20大阪サミットで、大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを提案され、各国から高く評価されています。

 アジア諸国での削減を進めるため、年内にも、インドネシアにあるERIA、東アジア・ASEAN経済研究センターの中に、各国の政策や取組事例を共有する情報集約拠点を設立すると聞いています。

 ERIAは我が国が主導して設立した国際機関であり、海洋プラスチックごみの対策に政府は総力を挙げて取り組まなければなりません。小泉環境大臣の決意を伺います。

 気候変動は、我々の命や生活にかかわる極めて身近な問題です。近年、日本においても、毎年のように記録的な猛暑となり、熱中症により多くの方々が命を落としています。世界各地で、災害や猛暑に見舞われるリスクは今後更に高まると考えられています。

 G20大阪首脳宣言では、イノベーションを通じて環境と成長の好循環を目指すことが確認されました。脱炭素化が世界の潮流になる中で、アメリカはパリ協定の脱退を表明しました。

 我が国としては、定められた目標達成に向け、温暖化対策と経済成長の両立を目指すべきであります。

 低炭素、省エネ製品の開発、水素、洋上風力の発電などの革新的技術の推進、ESG金融の拡大など、経済社会システムの転換を進めていかなければなりません。

 他方、エネルギーの安定供給は国民生活の根幹であります。ホルムズ海峡における航行の安全が脅かされたり、サウジアラビアの石油施設で一部供給停止が生じたりするなど、日本のエネルギー安定供給体制を揺るがす事態が生じています。

 我が国にふさわしいエネルギーミックスを冷静に考えることが、将来に向けた責任ある態度であります。

 中東の平和と安定のために、世界が安倍総理に期待することは年々大きくなっており、緊張緩和に向け、一層頑張っていただきたいと存じます。

 エネルギーの安定供給について、安倍総理の見解を伺います。

 先月最終合意をした日米貿易協定は、世界のGDPの約三割を占める日米の貿易をより強力で安定的なものにする、大きな意義のある協定であります。

 TPPの範囲内で取りまとめられた結果に、我が党も関係団体も評価しており、粘り強い交渉力を発揮した政府関係者の皆さんに感謝申し上げたいと思います。

 今後は、農林水産業者の懸念や不安に丁寧に応え、協定の早期発効に政府・与党一致団結して取り組まなければなりません。

 日米交渉の成果と総合的なTPP等関連政策大綱の改定について、安倍総理のお考えをお聞かせください。

 昨年から、韓国の我が国に対する動きは、到底看過することはできません。財産、請求権の問題は、一九六五年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、韓国大法院の判決は到底受け入れられません。

 また、GSOMIA破棄の通告は、地域の安定という大局を見失っているとしか言いようがありません。我が国としては、日米連携のもと、冷静に状況を分析し、決して譲らず、主張すべきは主張することが肝要であります。

 北朝鮮は、引き続き、我が国全域を射程におさめる弾道ミサイルを数百発保有、実戦配備しております。移動式発射台やSLBMなど、発射兆候を把握することがより困難な手段を保有しています。

 ことしに入って、新型短距離弾道ミサイルと推定されるものも含めて十一回ものミサイル発射を強行し、技術の高度化を図っていることは深刻な事態であります。イージス・アショアを含めた総合ミサイル防空体制の確立は急務です。

 他方、配備に当たって、地元の御理解が大前提であるにもかかわらず、防衛省の一連の不適切な対応によって、地元住民の皆様から大きな反発を招くことになりました。このような防衛省の対応は言語道断であり、今後、全省一丸となって信頼回復に取り組むべきであります。

 安倍総理は、北朝鮮のたび重なる暴挙に毅然と対応することで、我が国の平和と安全の確保に努めてこられました。何よりも重要な拉致問題については、トランプ大統領と拉致被害者御家族との面会を実現させ、さらには、米朝首脳会談で拉致問題が提起されたことは、首脳間の信頼関係の深さをあらわしています。

 安倍総理は、金正恩委員長と直接向き合う決意を表明されておりますが、この問題の解決に全力を尽くしていただきたいと思います。

 安倍内閣は、発足以来、沖縄の基地負担軽減に全力で取り組み、着実な成果を出しています。特に、平成二十八年十二月の北部訓練場の返還は、沖縄の本土復帰後最大規模であり、大きな成果です。

 沖縄には、戦後七十年余りを経てなお、米軍基地の存在による大きな負担を背負っていただいております。私たちは今後も、県民の期待に応えられるように努力を続けていかなければなりません。

 六月のG20大阪サミットでは、厳しい国際情勢の中、安倍総理が貿易や環境などの議論をリードし、主要国が一致協力して問題解決に当たるとの決意を内外に示すことができました。

 八月のTICAD7では、アフリカのさらなる発展に向け、経済、社会、平和と安定の観点から活発な議論が行われました。横浜宣言二〇一九は、我が国の今後のアフリカ外交の指針を明確にするものとして内外から高い評価を受けています。

 多国間外交の成果について、安倍総理に伺います。

 ハンセン病の問題については、患者、元患者の皆様のみならず、その御家族に対しても極めて厳しい偏見、差別が存在したことは事実であります。

 御家族の方々が強いられてきた苦痛と苦難に、改めて深く反省し、対応していかなければなりません。

 補償や、偏見、差別の解消は、できる限り家族の皆様に寄り添い、真摯に検討を進めていくべきと考えます。安倍総理のお考えをお聞かせください。

 現行の過疎法は、令和三年三月末に期限が到来いたします。このため、過疎関係市町村が新たな過疎対策法の制定を求めています。過疎地域は、全国の自治体の約五割、国土の約六割を占め、食料、水、エネルギーの供給を始め、自然環境の保全、癒やしの場の提供など、多くの機能を有し、国家への多大な貢献をしています。

 これを維持し、風格ある国土を築き上げていくために、過疎地域への支援を充実させる必要があると考えます。

 自民党としても、新法の制定を視野に入れ、現地視察や意見交換を行うなど、精力的な活動をしています。安倍総理のお考えを伺います。

 我が国で二十六年ぶりとなる豚コレラが発生し、一年が経過しました。感染は各地に拡大しており、生産者は不安な日々を過ごしています。

 政府はワクチンを接種する方針ですが、今後、豚コレラをどのように終息させるのか、被害をこうむった農家への支援とあわせ、安倍総理にお伺いします。

 昨年、漁業法の改正が行われました。一九六一年には七十万人に達した漁業従事者は、二〇一七年には十五万三千人へと大幅に減少しています。その多くが小規模又は家族的な経営体であり、今後進められる水産改革に不安を感じる漁業者が多くいるのも実情です。

 地域社会を守りつつ、持続可能な水産業としなければ、真の改革とは言えません。

 新たに資源管理に関する措置も定められましたが、我が国の水産物の漁獲量が減少している中で、政府は水産資源の適切な管理を今後どのように進めていくのでしょうか。水産政策改革について、安倍総理にお伺いします。

 観光は、我が国の成長戦略の柱であり、地方創生の切り札です。訪日外国人はことし一月から八月で二千二百十四万人と過去最高ペースで推移し、訪日ラッシュは続いています。

 特に、中国やベトナム、アメリカやカナダなどからの来客が前年比一〇%以上の伸びを見せており、この流れを持続させるためには、長期的な視点で受入れ体制を考えていかなければなりません。

 昨今、旅行者がふえ過ぎて交通混雑などが日常化し、地域の生活環境が悪化するオーバーツーリズムが世界的に問題となっており、我が国でも京都や鎌倉など各地で起きています。

 二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年には六千万人の訪日客の目標達成には、オーバーツーリズムへの本格的な対策が必要です。日本人による国内観光の機運を高めることも、地方の観光インフラの維持向上のためには必要です。観光政策について、安倍総理のお考えをお伺いします。

 ソサエティー五・〇の時代を迎え、これからの国や社会を支え、未来を生きる子供たちにとって、ICTを活用した教育が不可欠であります。しかしながら、学校のICT環境は脆弱で、地域間格差もあり、危機的な状況です。

 例えば、現在は、地方財政措置で三人に一台が措置されることになっていますが、現状では全国の平均で五人に一台にとどまっているなど、なかなか整備が進んでいません。国土強靱化の一環として、災害時の避難所としての学校の機能を強化するためにも、ICT環境の整備が必要です。

 全ての子供たちが授業中に自分のパソコンを持ち、全ての学校のネットワーク環境が整備され、子供たちが令和にふさわしい教育を受けられるようにすべきです。地方任せにせず、一刻も早く国が主導して取り組むべきと考えます。

 高等専門学校は、昭和三十七年の制度創設以降、中学校卒業後の早期に、五年一貫による工学分野を中心とした専門的、実践的な技術者教育制度です。この我が国独自のユニークな教育システムは産業界から高い評価を受け、就職率はほぼ一〇〇%、学生一人当たり二十件以上の求人が来る状況です。

 また、アジアを中心にKOSENとして広く知られています。ことし五月には日本型教育システムを完全に取り入れたタイ高専が開校するなど、我が国の教育システムへの理解促進や海外展開が進み、多彩な人材を育成しています。

 にもかかわらず、高専の施設設備の老朽化は著しい状況であり、高等専門学校の機能の高度化が急務であると考えます。

 以上、ICT環境の整備と高等専門学校の機能の高度化について、萩生田文部科学大臣の決意を伺います。

 この夏、憲法審査会の皆さんがドイツなどを視察され、合意形成のプロセスや国民投票制度などについて知見を深めてこられたと聞いています。その知見をもとに、憲法審査会の場で冷静な議論を行うことで、課題が浮き彫りになってきます。

 立法府で行わなければならないことはまさに活発な議論を行うことであり、それが主権者である国民の皆さんに対しての立法府の責任であります。

 二百回目の記念すべき国会が始まるに当たり、まずは、提出されて四国会を経過した国民投票法案の議論を、与野党で前に進めようではありませんか。

 最近では、積極的に憲法議論を進めている野党の代表も出てきました。大変喜ばしいことであり、まさに令和の時代にあるべき姿であります。各党の発信がふえれば、国民の皆様にも、国会で何が行われているのか、どういう考え方なのかが明確に伝わります。国民に伝えていくこと、判断する材料を示すこと、それこそが最も大切なことであります。

 議論を恐れてはいけません。自民党は、党幹部が率先して憲法集会を開催したり、地方に出向く機会をふやし、公党としての責任を果たしていきたいと考えています。

 憲法の議論においては、自民党案を押しつけることや数の力で押し切ることはいたしません。スケジュールありきでもありません。各党の皆さんとともに冷静な議論を行い、時代に合わせて変えていくべき部分については勇気を持って提案していきます。

 さきの参議院選挙で国民の皆様が安倍内閣に託したことは、政治の安定であります。政治の安定なくして国民生活の安定はありません。自民党と公明党が連立を組んで二十年を迎えた今、この道のりは間違っていなかったことを心から実感します。

 世界の厳しい競争の中にあっては、挑戦なくして新しい時代は切り開けないということもまた真実であります。安定政権のもと、チャレンジを恐れず、実りある国会にしていくことを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕

内閣総理大臣(安倍晋三君) 林幹雄議員にお答えをいたします。

 日本海大和堆での北朝鮮籍と思われる船舶と水産庁取締り船の衝突事案についてお尋ねがありました。

 本日午前九時七分ごろ、日本海の大和堆の我が国排他的経済水域内において、水産庁取締り船と北朝鮮籍と思われる船舶が衝突をし、水産庁取締り船が乗組員の救助に当たっているとの報告を受けています。

 政府としては、事案発生後、関係省庁で情報共有等を図るとともに、全力で救助等の対応に当たっているところであり、事案の詳細については、今後しっかりと調査してまいります。

 なお、政府としては、引き続き、我が国排他的経済水域内での外国漁船による違法操業の防止のため、毅然と対応してまいります。

 台風十五号からの復旧復興や災害対応の課題についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、今般の台風第十五号による被災地の被害は深刻であり、政府においては、同台風による被害を激甚災害に指定することとしました。

 また、暴風雨により極めて多くの家屋に被害が生じ、被災者の方々の日常生活に著しい障害が生じたことから、災害救助法の制度を拡充して、一部損壊の住宅のうち、屋根等に日常生活に支障を来す程度の被害が生じた住宅については、支援の対象とすることとします。

 農林水産業については、一日も早い経営再開に向けて、災害復旧事業の早期実施、農業用ハウス再建への支援、停電対策を主とした総合的な農林漁業者への支援策を決定し、周知を図っています。

 観光業については、宿泊事業者のための特別相談窓口を設置し、被害状況の実態把握と早期復旧、営業再開に向けた個別相談を行っているほか、各施設の営業状況に関する正確な情報発信に取り組んでおり、引き続き、必要な対応を行ってまいります。

 災害廃棄物の処理については、引き続き、千葉県や関係団体と連携し、応援職員やごみの収集車両の派遣、広域処理先の確保、財政支援といったあらゆる側面から被災自治体を支えてまいります。

 一方、今回の台風においては、長期間にわたる停電及びその復旧プロセスなどのさまざまな課題が認められました。それらの課題を検証、検討するため、先般、官房副長官をトップとする検証チームを立ち上げました。

 今後、このチームのもとに設置した実務者検討会において、メンバーである防災分野等の有識者五名の御意見も伺いながら、長期停電の原因及びその復旧プロセス、通信障害に関する関係者間の情報共有、復旧プロセス、国、地方自治体の初動対応、災害対応にふなれな自治体への支援等について、徹底的かつ客観的に検証してまいります。

 発生した災害から得られた教訓を踏まえ、防災・減災対策を不断に見直していくことが重要です。

 防災ヘリコプターやドローンについては、今後とも、迅速な災害状況の把握等のため、積極的に活用してまいります。

 また、被災自治体への人的支援を速やかに実施するため、今回、災害自治体に直接支援要請を働きかけるなどしましたが、引き続き、プッシュ型の人道支援の充実に努めてまいります。

 航空政策については、空港での滞留者を少なくするための航空機の発着の弾力化や非常時の外国人への情報提供のあり方の見直しなど、全国の空港で災害対策を強化してまいります。

 国土強靱化の取組を実効性あるものとするためには、地域の強靱化の推進が極めて重要です。

 地方公共団体による国土強靱化地域計画の策定を促進し、地域計画に沿った事業や取組により、地域の強靱化を図り、災害に屈しない、強さとしなやかさを備えた国土をつくり上げてまいります。

 経営者の個人保証についてお尋ねがありました。

 一度失敗すると全てを失ってしまう個人保証の慣行は、断ち切らなければなりません。

 このため、安倍内閣では、五年前から経営者保証に関するガイドラインの運用を開始し、政権として、個人保証に依存しない融資の推進に積極的に取り組んでまいりました。その結果、昨年度までに、民間金融機関では新規融資の二割、日本政策金融公庫と商工中金では十兆円を上回る融資が個人保証なしで実施されています。

 とりわけ、事業承継の際には、個人保証を求められることが後継者確保の大きな障害になっているとの切実な声があります。

 このため、先般、個人保証脱却・政策パッケージを取りまとめたところであり、先代経営者と後継者からの保証の二重取りの原則禁止、事業承継時に個人保証を不要とする新たな信用保証制度の創設などの施策に、個人保証の慣行は今の世代で必ずや断ち切るとの強い決意を持って取り組んでまいります。

 デジタル市場に関する取組についてお尋ねがありました。

 デジタル経済の進展は、中小・小規模事業者等を中心に、海外も含めた広大なマーケットへのアクセスを飛躍的に高めるなど、成長のチャンスです。

 他方、御指摘のように、巨大IT企業との関係では、個別交渉が困難、規約が一方的に変更される、利用料が高いといった声も聞かれます。

 こうした課題を踏まえ、政府として、今般、デジタル市場競争本部を設置したところであり、デジタル市場の新たなルール整備について、具体的な検討を既に開始しています。

 中小・小規模事業者等との取引透明化や個人情報保護のあり方などについて、年内に結論を得て、速やかに実行に移すことで、デジタル市場の活性化を我が国経済の成長につなげてまいります。

 消費税率引上げの影響とその対策についてお尋ねがありました。

 今回の消費税率引上げに当たっては、教育の無償化や軽減税率に加え、思い切ったポイント還元、プレミアムつき商品券、自動車や住宅に対する大胆な減税など、十二分な対策を実施してきたところであります。

 今後とも、引上げによる影響に十分目配りをするとともに、これらの制度が円滑に実施されるよう、その周知や利用促進に政府一丸となって対応することで、経済の大宗を占める国内消費をしっかりと下支えし、経済の好循環を確保してまいります。

 エネルギーの安定供給についてお尋ねがありました。

 資源に乏しい我が国にとって、エネルギーの安定的かつ低廉な供給を確保するためには、徹底した省エネに加え、エネルギー源の多様化や調達先の多角化を進めていくことが必要です。

 こうした観点から、引き続き、資源利用の高効率化、再エネの最大限の導入などを通じ、エネルギーミックスの確実な実現を図り、化石燃料への依存度引下げに取り組むとともに、化石燃料についても、原油だけでなく天然ガスなどへのシフト、幅広い地域における権益確保など、調達の多角化に取り組んでまいります。

 他方、現状において、我が国の原油の八割以上を中東地域に依存しており、この地域の平和と安定は、我が国にとって死活的に重要です。こうした中で、先般のサウジアラビアの石油施設への攻撃などにより、中東情勢が深刻の度を増していることを強く懸念しています。

 本年六月のイラン訪問に続き、先月の国連総会でもローハニ大統領と首脳会談を行いました。その際、イランは核兵器を含む全ての大量破壊兵器に反対するとの明確な発言がローハニ大統領からあり、この地域の平和と安定に向けた意思を改めて確認いたしました。

 また、ニューヨークでは、トランプ大統領との首脳会談でも、中東情勢、その緊張緩和に向けた方策について、率直な話合いを行いました。

 厳しい情勢であればこそ、米国と同盟関係にあり、同時にイランと長年良好な関係を維持してきた日本ならではのかじ取りが求められています。これからも、この地域の緊張緩和、平和と安定の実現に向けて、我が国は粘り強い外交を継続してまいります。

 日米貿易協定についてお尋ねがありました。

 今般、米国との貿易協定が最終合意に至りました。

 我が国の幅広い工業品については、米国の関税削減、撤廃が実現します。日本の自動車・自動車部品に対しては、二三二条に基づく追加関税は課されないことを直接トランプ大統領から確認しました。

 農林水産物については、過去の経済連携協定で約束したものが最大限であるとした昨年九月の共同声明に沿った結論が得られました。

 とりわけ、我が国にとって大切な米について、関税削減の対象から完全に除外いたしました。

 さらには、米国への牛肉輸出に係る低関税枠が大きく拡大するなど新しいチャンスも生まれ、国益にかなう結果が得られたと考えています。

 それでもなお残る農家の皆さんの不安に対しても、万全の対策を講じてまいります。

 年末に向けて、与党のお力もかりながら、総合的なTPP等関連政策大綱を改正する考えです。

 新たな市場の開拓や生産基盤の強化などに取り組むことで、今回の協定を、全国津々浦々、我が国経済のさらなる成長につなげてまいりたいと考えています。

 多国間外交の成果についてお尋ねがありました。

 G20大阪サミットでは、貿易について、自由、公正、無差別、透明性、公正な競争条件などの大原則を確認したこと、信頼性のあるデータの自由な流通を確保するための国際的なルールづくりをWTOのもとで推進するため、大阪トラックの開始を、トランプ大統領、習近平主席を始めG20の数多くの首脳の出席を得て宣言したこと、インフラ投資に関して、開放性、透明性、経済性、債務の持続可能性といった原則を、質の高いインフラ投資に関するG20原則として全てのメンバーの承認を得たこと、海洋プラスチックごみによる新たな汚染を二〇五〇年までにゼロにすることを目指す大阪ブルー・オーシャン・ビジョンに一致したことなど、世界の諸課題に団結して取り組んでいくとの力強いメッセージを世界に発信することができました。

 TICAD7では、過去最高の四十二名のアフリカの首脳級の参加を得て、経済、社会、平和と安定という三つの柱に基づき、アフリカ開発のあり方について、民間ビジネスの活力を最大限に活用する観点から活発な議論を行い、横浜宣言二〇一九を発表しました。

 TICAD7を通じ、日本政府として、経済の柱では、今後三年間で民間投資を二百億ドル規模以上へ拡大し、ABEイニシアチブ三・〇を通じて産業人材を六年間で三千人育成すること、社会の柱では、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを三百万人へ拡大し、質の高い教育を三百万人の子供たちへ提供すること、平和と安定の柱では、司法、警察、治安維持等の分野を担う六万人の人材を育成することといった取組により、日本がダイナミックに発展するアフリカのパートナーとなっていくことを表明しました。

 今後も、日本として、多国間外交の分野でリーダーシップを発揮し、国際社会が協調してさまざまな課題に取り組んでいくよう尽力してまいります。

 ハンセン病の患者、元患者の御家族への補償等についてお尋ねがありました。

 かつてとられた施設入所施策のもと、ハンセン病の患者、元患者の御家族の皆様に、極めて厳しい偏見、差別が存在したことは、厳然たる事実です。

 そのことを率直に認め、訴訟への参加、不参加を問わず、新たな補償の措置を早急に実施します。

 また、患者、元患者とその御家族の皆様に寄り添いながら、差別、偏見の根絶に向けて、政府一丸となって全力を尽くしてまいります。

 過疎対策についてお尋ねがありました。

 過疎地域は、国土の保全や食料、水の供給など国民全体の生活にかかわる重要な公益的機能を有している一方で、著しい人口減少と高齢化の進展、存続困難な集落の発生など、さまざまな課題に直面していると認識しています。

 安倍内閣においては、地方創生の旗を高く掲げ、地方創生推進交付金などを活用し、魅力あふれる地方大学づくりや地域おこし協力隊の拡充、地方へ移住し、起業、就業をスタートする際に最大三百万円を支給する制度によって、地方にこそチャンスがあると考える若者たちの背中を後押ししているところです。

 引き続き、過疎地域を始め地域の課題に総力を挙げて取り組み、地方への人の流れを大きくしてまいります。

 御指摘の過疎対策法は、これまで議員立法として制定されてきた経緯があります。現行の過疎対策法が令和三年三月に失効することを踏まえ、現在、政府としては、総務省の有識者会議において新たな過疎対策について議論をしているところであり、今後の各党各会派の議論にも資することとなるよう、しっかりと検討を進めてまいります。

 豚コレラについてお尋ねがありました。

 豚コレラは、中部地方を中心に感染が拡大し、先月には新たに埼玉県、長野県の養豚場でも感染が確認されるなど、各地で発生が続いています。

 こうした事態の一刻も早い終結に向けて、あらゆる対策を総動員します。衛生管理の徹底や野生イノシシ対策の強化を図るとともに、ワクチン接種に向けた準備を早急に進めます。

 また、発生農家の皆様に対しては、殺処分した豚への補償、技術指導、経営再開する場合の支援金の交付など、万全の支援策を講じてまいります。

 水産政策の改革についてお尋ねがありました。

 水産政策の改革については、昨年成立した改正漁業法を円滑に実施するため、現在、新たな資源管理制度の導入等に向け準備を進めているところです。

 この制度は、漁獲量による資源管理を導入し、漁船の大型化や省エネ化により漁業の生産性を高めます。同時に、三千億円の予算措置で、新しい漁船や漁具の導入など、浜の皆さんの生産性向上への取組もしっかりと支援しているところです。

 こうした改革を、漁業者の皆様の声を真摯に伺いながら着実に進めることにより、水産資源の減少に歯どめをかけ、漁業者の所得向上と、若者に魅力ある水産業を実現していく決意です。

 観光政策についてお尋ねがありました。

 観光は、我が国の成長戦略の柱であり、地方創生の切り札です。安倍内閣では、できることは全て行うとの方針のもと、観光立国の実現に向けて精力的に取り組んでまいりました。

 その結果、昨年、日本を訪れる外国人観光客が三千万人の大台に乗り、その消費額は四兆五千億円となりました。

 今後は、オリンピック、パラリンピックに向けて、より多くの誘客を官民一体となって進めるとともに、町ぐるみでの観光客受入れの環境整備を進めてまいります。

 その中で、御指摘のオーバーツーリズムといった課題に対しても、混雑情報の事前発信など、地域と連携しながら取組を強化してまいります。

 他方、我が国の旅行消費額全体の約八割を占める国内観光の振興を図ることも引き続き重要です。外国人のみならず、日本人にとっても魅力ある観光地域づくりを進めることにより、地方へのさらなる誘客を進めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣西村康稔君登壇〕

国務大臣(西村康稔君) 全世代型社会保障制度の構築に向けた意気込みについてのお尋ねがございました。

 一億総活躍を掲げる安倍内閣にとりまして、全世代型社会保障への改革は最重要課題であります。

 その大きな第一歩として、消費税の使い道を見直し、十月一日から、三歳から五歳まで全ての子供たちの幼児教育、保育を無償化しました。来年四月からは、真に必要な子供たちの高等教育を無償化いたします。

 さらに、全世代型社会保障検討会議を新たに設置し、審議を開始いたしました。

 少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度へ改革を進めてまいります。

 人生百年時代を見据え、七十歳までの就業機会の確保、年金受給開始時期の選択肢の拡大、厚生年金の適用拡大の検討、予防、健康づくりの推進など、社会保障全般にわたる改革に取り組んでまいります。

 次に、就職氷河期世代への支援についてお尋ねがありました。

 雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った就職氷河期世代の方々への対応は、御指摘のとおり、我が国の将来にかかわる重要な課題であります。

 政府としては、支援プログラムに基づき、現状よりもよい処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、三年間で集中的に取り組み、正規雇用者三十万人の増加を目指すとともに、社会参加への支援が特に必要な方々には、息長く寄り添った支援を行ってまいります。

 今後、支援の実効性を高めるための官民協働スキームとして、関係者で構成する官民プラットフォームを立ち上げて社会全体の機運醸成に取り組むとともに、支援プログラムを着実に実施してまいります。

 就職氷河期世代の皆さんの意欲、経験、能力を生かせるよう、できる限りのチャンスを広げてまいります。(拍手)

    〔国務大臣小泉進次郎君登壇〕

国務大臣(小泉進次郎君) 海洋プラスチックごみの対策について、御指摘、お尋ねがありました。

 海洋プラスチックごみによる汚染は、人類の責任として、なくさなければなりません。御指摘の大阪ブルー・オーシャン・ビジョンで目指す新たな汚染ゼロの世界を二〇五〇年までに実現すべく、まずは我が国が率先して取り組んでまいります。

 具体的には、あした八日から東京でG20資源効率性対話・G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組フォローアップ会合を主催し、各国の担当者と取組の進捗を確認するとともに、来年サウジアラビアで開催されるG20に向けて、協力、連携を進めます。

 また、御指摘の東アジア・ASEAN経済研究センター、いわゆるERIAでは、我が国の主導により、海洋プラスチックごみナレッジセンターが、まさにあさって、九日に設立されます。このセンターも通じ、ASEAN各国へ廃棄物管理や人材育成などの支援も実施します。

 新たな汚染ゼロの実現には、地球規模の連携に加え、国民一人一人の御理解、御協力も欠かせません。現在審議会で御議論いただいているレジ袋の有料化を始め、消費者、産業界、自治体、国のオール・ジャパンの取組につながるよう、環境省としても全力を尽くします。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 林議員から、学校のICT環境の整備と高等専門学校の機能の高度化についてお尋ねがありました。

 ソサエティー五・〇時代の社会を迎えるに当たって、学校のICT環境の整備は必要不可欠です。

 しかし、我が国のICT活用状況は世界から大きく後塵を拝しており、また、御指摘のように、地方自治体間で整備状況にばらつきが見られるなど、文部科学省としても現状に危機感を抱いているところです。

 こうした中、文部科学省としても、最終的に、児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、ICTを十分活用することのできるハードウエア、ネットワーク等の環境整備を達成するため、その整備促進を図ってまいりたいと考えています。

 また、高等専門学校は、創設以来約六十年にわたり、五年一貫の実践的技術者育成を行っており、産業界や諸外国から高い評価を受け、御紹介をいただいたタイ高専を始め、近年では海外展開も進めています。

 他方で、御指摘のように、高等専門学校の機能を支える施設整備の老朽化が進んでいるため、計画的に整備、更新を行って対応してまいりたいと考えています。

 今後とも、関係省庁や産業界と連携しながら、令和の時代にふさわしい学校ICT環境の実現や高等専門学校の機能の高度化に全力で取り組む決意です。(拍手)

     ――――◇―――――

福田達夫君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明八日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(大島理森君) 福田達夫君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  安倍 晋三君

       財務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    高市 早苗君

       法務大臣    河井 克行君

       外務大臣    茂木 敏充君

       文部科学大臣  萩生田光一君

       厚生労働大臣  加藤 勝信君

       農林水産大臣  江藤  拓君

       経済産業大臣  菅原 一秀君

       国土交通大臣  赤羽 一嘉君

       環境大臣    小泉進次郎君

       防衛大臣    河野 太郎君

       国務大臣    菅  義偉君

       国務大臣    田中 和徳君

       国務大臣    武田 良太君

       国務大臣    衛藤 晟一君

       国務大臣    竹本 直一君

       国務大臣    西村 康稔君

       国務大臣    北村 誠吾君

       国務大臣    橋本 聖子君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 西村 明宏君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 近藤 正春君


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