衆議院

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第7号 令和3年2月9日(火曜日)

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令和三年二月九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第四号

  令和三年二月九日

    午後一時開議

 第一 情報監視審査会委員辞任の件

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 情報監視審査会委員辞任の件

 情報監視審査会委員の選任

 総合科学技術・イノベーション会議議員任命につき同意を求めるの件

 再就職等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事長、同理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 行政不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件

 調達価格等算定委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 情報監視審査会委員辞任の件

議長(大島理森君) 日程第一、情報監視審査会委員辞任の件につきお諮りいたします。

 情報監視審査会委員大塚高司君から、委員を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 情報監視審査会委員の選任

議長(大島理森君) つきましては、情報監視審査会委員の選任を行います。

 衆議院情報監視審査会規程第六条の規定に基づき、情報監視審査会委員に盛山正仁君を選任するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、選任することに決まりました。

     ――――◇―――――

 総合科学技術・イノベーション会議議員任命につき同意を求めるの件

 再就職等監視委員会委員長及び同委員任命につき同意を求めるの件

 公正取引委員会委員任命につき同意を求めるの件

 国家公安委員会委員任命につき同意を求めるの件

 預金保険機構理事長、同理事及び同監事任命につき同意を求めるの件

 行政不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

 電波監理審議会委員任命につき同意を求めるの件

 日本放送協会経営委員会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 社会保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件

 調達価格等算定委員会委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 公害健康被害補償不服審査会委員任命につき同意を求めるの件

議長(大島理森君) お諮りいたします。

 内閣から、

 総合科学技術・イノベーション会議議員

 再就職等監視委員会委員長及び同委員

 公正取引委員会委員

 国家公安委員会委員

 預金保険機構理事長、同理事及び同監事

 行政不服審査会委員

 電波監理審議会委員

 日本放送協会経営委員会委員

 中央更生保護審査会委員

 日本銀行政策委員会審議委員

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会公益委員

 社会保険審査会委員

 中央労働委員会公益委員

 調達価格等算定委員会委員

 運輸審議会委員

及び

 公害健康被害補償不服審査会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。

 内閣からの申出中、

 まず、

 総合科学技術・イノベーション会議議員に梶原ゆみ子君、佐藤康博君及び橋本和仁君を、

 再就職等監視委員会委員長に井上弘通君を、

 同委員に橋爪隆君、原田久君、鍋島美香君及び平田眞理子君を、

 国家公安委員会委員に宮崎緑君を、

 預金保険機構理事長に三井秀範君を、

 行政不服審査会委員に三宅俊光君を、

 日本放送協会経営委員会委員に尾崎裕君及び葛西雅子君を、

 中央更生保護審査会委員に小野正弘君を、

 労働保険審査会委員に甲斐哲彦君を、

 社会保険審査会委員に後藤多美子君を、

 中央労働委員会公益委員に荒木尚志君を、

 運輸審議会委員に山田攝子君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に阿部潤君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 総合科学技術・イノベーション会議議員に藤井輝夫君を、

 公正取引委員会委員に三村晶子君を、

 預金保険機構理事に正願隆一君及び高橋和人君を、

 同監事に坂本裕子君を、

 行政不服審査会委員に交告尚史君及び村田珠美君を、

 電波監理審議会委員に笹瀬巌君及び長田三紀君を、

 日本放送協会経営委員会委員に不破泰君を、

 中央更生保護審査会委員に山脇晴子君を、

 労働保険審査会委員に東郷眞子君を、

 中央社会保険医療協議会公益委員に中村洋君及び長谷川ふ佐子君を、

 社会保険審査会委員に中森正二君を、

 中央労働委員会公益委員に岩村正彦君、畠山稔君、相原佳子君、磯部哲君、沖野眞已君、鹿士眞由美君、柴田和史君、田上淳子君、鹿野菜穂子君、高橋佳代君、松下淳一君、守島基博君、小西康之君及び両角道代君を、

 調達価格等算定委員会委員に安藤至大君、高村ゆかり君、大石美奈子君及び松村敏弘君を、

 公害健康被害補償不服審査会委員に山中朋子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(大島理森君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本放送協会経営委員会委員に森下俊三君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 日本銀行政策委員会審議委員に野口旭君を、

 調達価格等算定委員会委員に秋元圭吾君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。財務大臣麻生太郎君。

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。

 本法律案は、ポストコロナに向けた経済構造の転換及び好循環の実現、家計の暮らしと民需の下支え等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うものであります。

 以下、その大要を申し上げさせていただきます。

 第一に、ポストコロナに向けた経済構造の転換及び好循環の実現を図るため、デジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例を設けることといたしております。また、中小企業の経営資源の集約化による事業再構築等を促すため、準備金制度の創設等を行うことといたしております。

 第二に、家計の暮らしと民需を下支えするため、住宅ローン控除制度の特例の延長等を行うことといたしております。

 このほか、土地の売買等に係る登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うことといたしております。

 以上、所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。日吉雄太君。

    〔日吉雄太君登壇〕

日吉雄太君 立憲民主党・無所属の日吉雄太です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 まず、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に哀悼の誠をささげるとともに、現在、治療、療養中の皆様にお見舞いを申し上げ、また、医療従事者の皆様に心からの敬意と感謝を申し上げます。

 また、本日は、世界中から批判の声が上がる東京オリパラ組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に対して、有志で、白い服装、胸に白いポケットチーフ、白いバラを身に着け、女性参政権のシンボルである白をまとい、抗議の意味を込めて、本会議に臨んでおります。参議院からも、同調する議員が傍聴席の方におられます。

 さて、菅総理、菅内閣が発足して五か月余りが経過しました。安倍内閣から菅内閣に引き継がれた説明責任無視の姿勢は、一極集中の政治権力による与党としてのおごりでもあり、国民と寄り添う政治の実現とはかけ離れた国民無視の政治です。その根本にあるのが、桜を見る会をめぐる安倍前首相の虚偽答弁問題だと言えます。

 総理は、総務省幹部に対して国家公務員倫理法抵触が疑われる接待を重ねていたとされる長男に事実関係の詳細を確認したかと問われ、私が内容に立ち入るべきではないとして、明言を避けました。

 菅総理の態度は、要するに、長男とはとっくに縁を切っているので、何をやっているか知らないと言わんばかりの、赤の他人事のような言いようです。この姿勢こそが、国民の信頼を損ねる行為ではありませんか。

 疑惑発覚後一週間以上たつにもかかわらず、国会質疑において総務省は調査中を盾に答弁を避けていますが、これほどシンプルな事案を調査するのに何日もかかりません。

 菅総理、内閣を総理する大臣として、総務省に対して内部調査の期限を切ってください。このことは、総理の身内に疑念と不信の目を向ける国民に対する最低限の誠意と考えます。

 国会議員による緊急事態宣言下の深夜の飲食、国会審議中の居眠りなど、緊張感のかけらもない行動が頻発しています。政治家に覚悟はあるのか。コロナを何が何でも収束させ、生活を立て直す覚悟はあるのか。国民の皆様は、強い憤りを持って、私たち野党も含め国会議員全員の言動を注視しています。

 総理は、緊急事態宣言の再発令を決めた会見で、一か月後には必ず事態を改善させると明言しました。しかし、宣言は延長され、一か月で収束できなかった責任は全て私が背負うとの発言に至りました。全力でやります、でも、できませんでしたでは済まされない話です。

 菅総理、総理がどれくらいの覚悟を持ってコロナ対策に取り組んでいるのか、国民の皆様に向かって具体的に説明してください。

 新型コロナウイルス感染症の拡大は、個人、企業、団体を問わず、大きな打撃を与えています。また、貧富の格差を始め、日本社会が抱える様々な問題点を顕在化させてもいます。

 そして、コロナ禍において、私たちの価値観の大転換が起こり、生き方、暮らし方、仕事の仕方など、様々な変革が生じています。

 これまでの人口増加による経済成長を前提とした社会から、当面の間は人口減少を織り込んだ成熟社会へとシフトしていく必要があるでしょう。

 また、競争一辺倒の格差社会から、個人を尊重し互いに支え合う共生社会へと深化していくべきです。

 そのためのキーワードが、豊かさです。新たな豊かな社会をつくっていかなければなりません。それは、物質的な満足感ばかりでなく、精神的な満足感に重きを置く社会です。例えば、仕事やメールや携帯電話に追われる、二十四時間稼働する社会を脱却し、時間にゆとりのある生活を送ることができる社会です。

 こうした状況にあって、税制が果たすべき役割は大きく、タイムリーかつ適切に改正を行うことは極めて重要です。

 今般の税制改正では、コロナ禍により打撃を受けた家計の下支えと、ポストコロナに向けた経済構造の転換支援が大きな柱として掲げられています。その方向性には賛同しますが、個別の改正事項を見ると、喫緊の課題への対応は不十分であり、社会のゆがみを抜本的に解消する道筋も全く示されていません。

 まず初めに、私としては、抜本的な改革の一例として、海外からの日本で働く方を含め、原則として全ての人に確定申告を義務づけることを提案します。理由は以下の四つです。

 第一に、全ての人が税に向き合うことは、民主主義が成熟するためには極めて重要だからです。

 源泉徴収制度と年末調整制度は、手っ取り早く税を徴収することにたけていますが、個々人の納税意識を希薄化させます。税と向き合うことは、その支出と向き合うことであり、それはまさに政治と向き合うことにほかなりません。

 第二に、税の公平性を確保する必要があるからです。

 コロナをきっかけに、働き方の多様化が加速しています。給与所得者が大勢を占めていた時代は終わり、個人事業主、兼業者が増え、人材の流動化が進んでいます。給与所得者にも税務メリットを付与し、シンプルで公平な税制にする必要があります。

 第三に、個人が尊重される社会に対応する必要があるからです。

 夫婦が共に働く社会において、扶養制度の改革を含め、当たり前に個々に確定申告をする社会が迫っています。

 第四に、生活困窮者の実情を把握するためです。

 国は、納税者の所得状況は把握していますが、納税に至らない人の所得状況は十分に分かりません。これではスムーズな社会保障も行えません。もし、把握できていれば、特別定額給付金の支給ももっとタイムリーかつ適切に行えたはずです。

 以上を踏まえ、全ての人に確定申告を義務化することについて、総理の見解を伺います。

 次に、各論について伺います。

 税制で家計を下支えするということであれば、全ての人に課される消費税を減税することが一つの選択肢です。本来であれば真っ先に検討すべき事項だと考えますが、今回の改正には盛り込まれていません。

 生活に困窮する方を支援し、消費の促進を通して事業者を支えるために、経済が回復するまでの当面の間、消費税を廃止するつもりはありませんか。総理の見解を伺います。

 個人所得課税について伺います。

 住宅ローン控除特例の延長が掲げられていますが、コロナ禍により住宅取得が停滞している状況に鑑み、住宅ローンの控除期間を当面の間延長することについては理解します。

 しかし、住宅市場は供給過多の状況にあります。それにもかかわらず、新築住宅の増加を促進する税制に固執することに、合理性があるとは思えません。そもそも、この恩恵を受けられるのはローンを組める中高所得者層であり、コロナ禍で苦しむ低所得者層には恩恵のない税制です。

 住宅ローン控除の見直し、家賃補助制度の創設等、住宅政策全体の抜本的な転換を行うべきであると考えますが、総理の見解を伺います。

 法人課税について伺います。

 デジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルの投資促進税制について、デジタル化及び脱炭素化を促進するという方向性には賛同できますが、そもそも、投資する余力のある大企業にしか恩恵のない制度です。一方で、MアンドAによる中小企業の再編を促す税制を新設するとされています。これでは、大企業を優遇し、コロナ禍による経営難にあえぐ中小企業を淘汰するような改正ではありませんか。

 新型コロナウイルスにより打撃を受けた中小企業が事業を継続し、雇用を維持できるように後押しをするのが、今、税制に求められていることだと思いますが、総理の見解を伺います。

 資産課税について伺います。

 教育資金等の一括贈与に係る非課税措置の延長及び見直しが掲げられています。

 しかし、そもそも、この非課税措置自体、財産の少ない層には恩恵がありません。

 再分配機能の強化とそれによる格差の是正という観点から、相続税、贈与税の在り方については抜本的に見直すべきであると考えますが、総理の見解を伺います。

 納税猶予特例について伺います。

 新型コロナウイルスの影響により、いまだに苦しい状況にある人が多くいるにもかかわらず、政府は、当初の予定どおり、本年二月一日をもってこの特例制度を打ち切りました。

 最新の統計によれば、五十一万件という決して少なくない利用があります。特例の打切りは、社会的弱者の切捨てにほかなりません。

 総理、この場で、一刻も早く、納税猶予特例の再開そして減免を含め、検討していただけませんか。厚生年金保険料等の猶予特例の延長、減免にも関わる問題です。真摯な回答を求めます。

 消費課税について伺います。

 航空機燃料税の引下げにより、約三百億円の減収を見込んでいますが、この改正の趣旨を伺います。

 また、コロナ禍における航空産業への支援は当然ですが、それに比べても、個人所得課税の減税と中小企業への減税が見劣りすることは否めません。もっと個人と中小企業にも手厚い支援をする必要があると考えますが、総理の見解を伺います。

 今般の税制改正は、コロナ禍により打撃を受けた個人、企業、団体への支援という点でも、日本社会の問題点を解決する中長期的な税制上の道筋を示すという点でも、極めて不十分なものです。

 大企業、高所得者を優遇し、中小企業、中低所得者層には十分な支援がない、いわば貧富の格差助長税制です。

 加えて、積年の課題の解決が先送りされています。

 金融所得課税の総合課税化はまたも見送られました。一億円を超えると所得が増えるほど所得税負担率が低下するという仕組みは異常です。

 また、個人所得課税における人的控除を、高所得者ほど税負担軽減が大きい所得控除から税額控除あるいは給付つき税額控除へと転換するといった改革も見送られています。

 コロナ禍により貧富の格差の問題がより深刻化している状況にあって、今こそ、所得再分配機能を回復させる、こうした税制全体の抜本的改革が必要だと思いますが、その考えはありますか。総理の見解を伺います。

 令和三年度予算案では、一般会計の歳出総額が百七兆円規模に達する一方で、税収見込額は昨年度予算を六兆円余り下回り、五十七兆円とされています。確かに、コロナ対策のための財政出動等により歳出が増大する一方で、コロナ禍により税収が減少するわけですから、やむを得ないと思います。

 政府は、財政の健全化に向けて、プライマリーバランスの黒字化とGDPに対する債務残高比率引下げを同時に達成することを目指していますが、コロナ禍における今年度の国債の新規発行額は百十二兆円に上り、国債発行残高も一千兆円の大台が目前に迫ってきました。

 今年度においても国債発行を行うことが財政上可能であるとの判断があったわけですが、どうして可能と判断できたのでしょうか。総理、その根拠を御説明ください。

 また、債務残高比率の引下げは、必ずしも国債残高の減少を目的としてはいません。GDPが大きければ、国債残高が増えることも容認します。エクイティーファイナンスができず、外部からの資金調達を国債に依存せざるを得ない政府にとって、国の経済規模拡大のための投資を行うには、国債の発行は不可欠です。税収の範囲内での支出では、おのずと限界があります。一方で、経済規模が縮小する場合、国債の必要性も総合的には小さくなります。

 総理は国債残高の適正規模をどのように考えているのでしょうか。また、どのくらいの残高までなら発行できますか。総理の見解を伺います。

 コロナ禍において、政府は補償に対して後ろ向きの姿勢を示しています。もしも財政規律がボトルネックになっているのであれば、コロナを克服するまでの当面の間、財政規律を凍結する考えはありますか。事実上凍結しているように思われますが、総理の見解を伺います。

 また、コロナを克服した暁にはどのように税制の財源調達機能を回復させますか。実需が減少している市場を踏まえ、実質的な財政均衡を図るためにはいかなる対策を取りますか。総理の見解を伺います。

 税制の所得再分配機能と財源調達機能の低下は、高所得者、大企業優遇の税制を展開してきた政府・与党の怠慢であり、失策です。

 私たち立憲民主党は、これまでにも金融所得課税の総合課税化や給付つき税額控除の導入等、具体的な対案を示しています。後は政府・与党の皆さんが重い腰を上げれば改革は進みます。改革を止めているのは野党ではなく、あなた方です。

 政府・与党の皆さんの真摯な対応を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 日吉雄太議員にお答えをいたします。

 コロナ対策についてお尋ねがありました。

 新型コロナとの戦いが始まって約一年、私自身、最前線で対応に当たってまいりました。

 先月、十一都府県に緊急事態宣言を発出して以来、効果のある対象に徹底的な対策を行ってきたところです。国民の皆さんの御協力もあって、新規感染者数は大幅に減少するなど、効果が見られ始めております。

 この減少傾向を確かなものにするために、先日、宣言延長の判断を行いました。今、私に求められているのは、一日も早く感染を収束させ、安心して暮らせる日常を取り戻すことであります。引き続き、先頭に立って対策を進めてまいります。

 確定申告の義務化についてお尋ねがありました。

 所得税は申告していただくことが原則ですが、納税者の手続を簡便にするなどの観点から、給与の源泉徴収と年末調整の仕組みが設けられております。

 全ての納税者に確定申告を義務づけることに関しては、申告に伴う納税者の事務負担も考え、慎重に検討する必要があると考えます。

 消費税の廃止についてお尋ねがありました。

 消費税は社会保障のために必要な財源と考えております。

 新型コロナの影響については、多くの事業者にとって重要な資金繰り支援や雇用調整助成金の特例による人件費の支援を行っており、生活に困窮している方々については、緊急小口資金などにより支援を行っております。

 これらの対策により、事業と雇用、暮らしを守っていきます。

 住宅政策についてお尋ねがありました。

 住まいは生活の基盤であり、様々なニーズに応じた住まいの確保を支援しております。

 ローン減税等による持家取得の支援だけでなく、賃貸住宅についても、家賃の消費税が非課税となっているほかに、低所得者の家賃負担の軽減、高齢者向けのサービス付住宅の供給などの支援を行ってまいります。

 中小企業支援についてお尋ねがありました。

 今回の改正に当たっては、中小企業に対して軽減税率を始めとする特例措置を延長しており、その経営基盤の強化をしっかり後押ししてまいります。

 また、中小企業の第三者への事業承継を促すための特例措置では、雇用や投資を促すためのものであり、御指摘は当たりません。

 相続税についてお尋ねがありました。

 相続税については、平成二十五年度改正において、再分配機能の回復を図るために、基礎控除の引下げや最高税率の引上げなどを行ったところであり、今後の在り方については、経済社会情勢を踏まえ、検討する必要があると考えております。

 納税猶予の特例についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響により納税が困難な状況にある方については、今後も既存の猶予制度を御利用いただくことが可能であり、引き続き、個々の実情を十分に踏まえながら、柔軟に対応をしてまいります。

 航空機燃料税などについてお尋ねがありました。

 航空機燃料税の軽減措置は、新型コロナの影響で需要が急変する中、厳しい経営状況にある航空事業者を支援するためのものです。

 また、今回の改正では、個人に対しては住宅ローン控除の特例を延長し、中小企業についても軽減税率などの特例措置を延長しており、引き続き、しっかりと支援をしてまいります。

 所得再分配機能についてお尋ねがありました。

 税制による所得再分配機能の回復を図るため、所得税については、これまで、最高税率を引き上げて累進構造の強化を図るとともに、金融所得課税についても、税率を一〇%から二〇%に倍増しております。

 今後の税制の在り方については、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ、検討する必要があると考えております。

 国債の発行についてお尋ねがありました。

 現在のところ、市場では大量の国債が低金利かつ安定的に消化されておりますが、将来にわたって国債の信認を維持するためには、財政健全化の目標を放棄することはできません。

 経済あっての財政との考え方の下、当面は感染症対策に全力を尽くし、また、成長志向型の経済政策を進め、経済再生に取り組むとともに、今後も改革を進めてまいります。

 また、プライマリーバランスの黒字化や債務残高のGDP比の縮減という目標も旗印に、歳入歳出両面の改革を進めてまいります。

 今後の財政の在り方についてお尋ねがありました。

 先ほど申し上げましたように、当面は感染症対策に全力を尽くし、経済再生に取り組むとともに、今後も財政健全化目標の下で改革を進めてまいります。

 成長志向型の経済政策を進めて、民間需要を喚起しながら、経済を持続的に成長させる中で、税収を拡大させつつ、税制の在り方について不断に見直しを行ってまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 太田昌孝君。

    〔太田昌孝君登壇〕

太田昌孝君 公明党の太田昌孝であります。

 自民党、公明党を代表し、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、総理並びに財務大臣、国土交通大臣に質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ちまして、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた多くの方、御遺族の皆様方に衷心よりお悔やみを申し上げ、また、罹患された多くの皆様方に心からお見舞いを申し上げる次第でございます。

 また、医師、看護師始め医療関係者の皆様、介護に関わる皆様、エッセンシャルワーカーの皆様方に、心から敬意と感謝を申し上げる次第でございます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 雇用の維持、確保についてお尋ねをいたします。

 新型コロナの影響による離職者は八万人を超え、大学生等の就職内定率は前年比五・六ポイント減少するなど、雇用情勢は一層厳しさを増しております。

 本法案では、雇用の確保を図るため、大企業向けの賃上げ投資促進税制や、中小企業向けの所得拡大促進税制の要件を見直し、賃上げのみならず雇用の増加を図る企業を支援する税制へ改正することとなっております。

 また、優れた技術や人材を持ちながら、経営者の高齢化によって廃業を余儀なくされようとしている中小企業の第三者事業承継を後押しするため、中小企業事業再編投資損失準備金制度が創設されます。この税制の適用を受けた中小企業は、所得拡大促進税制の控除率が上乗せされるため、MアンドA後の積極的な雇用の維持、確保が期待されます。

 予算措置も併せ、雇用の維持、確保に全力を挙げていただきたいと思いますが、総理の答弁を求めます。

 法人税改正の意義と効果についてお尋ねをいたします。

 本法案には、法人税の軽減税率の特例、中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制の延長など中小企業関連税制を継続するとともに、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制やカーボンニュートラル投資促進税制の創設、中堅・大企業の繰越欠損金の控除上限の特例の創設、研究開発税制の見直しなど、本格的な経営改革やポストコロナを見据えた挑戦を後押しする数々のメニューが盛り込まれております。

 今回の法人税改正の意義や期待する効果について、改めて総理に答弁を求めます。

 住宅ローン減税の特例措置の延長等についてお尋ねをいたします。

 コロナの影響により住宅着工戸数が低迷をしています。住宅建設は経済への波及効果が大きく、住宅需要の喚起策が求められます。

 そこで、本法案では、控除期間十三年の住宅ローン減税の特例を延長し、令和四年末までに入居する方が対象となります。さらに、所得一千万円以下の方に限り、床面積五十平米以上の要件を緩和し、四十平米以上の住宅でも適用することとしております。家族構成が多様化する現代において、利用しやすい制度に改められるものと評価をします。

 ただし、契約期限が、注文住宅の場合は本年九月末まで、建て売り分譲住宅等の場合は本年十一月末までとされていることから、国民の皆様が決断する期間は半年ないし八か月間であります。経済対策として最大限効果を発揮するため、どのように取り組むお考えか、国土交通大臣に答弁を求めます。

 子育て支援に関する非課税措置についてお尋ねいたします。

 この度、公明党が強く訴え続けてまいりました、ベビーシッターや認可外保育施設等の利用料に対する国や自治体からの助成金の非課税措置が実現します。

 助成制度を活用し続けると、実際に所得が増えたわけではないにもかかわらず、翌年に多額の所得税が課されてしまうことから、子育て世帯が制度の利用をためらう現状がありました。

 今後は安心して助成を受けられるようになり、とりわけ新型コロナウイルスの対策、対応を契機に在宅勤務が広がりを見せる中で、仕事と子育ての両立を一層支援するものと期待をします。

 また、出産後の母子の心身をケアする産後ケア事業の消費税の非課税措置も盛り込まれ、利用料の軽減が期待されます。

 いずれも、サービスを必要としている子育て世帯への周知徹底を図るとともに、この度の改正を機に、こうした事業の普及を一層進めていただきたいと思いますが、総理に答弁を求めます。

 納税猶予の特例の期限後の対応についてお尋ねをいたします。

 今月から、納税猶予の特例を受けている方の納付期限が順次到来をいたします。

 先日、緊急事態宣言の延長を受け、国税庁が確定申告期限の一か月延長を発表しました。公明党として強く要望していたことでもあり、政府の決断を評価します。

 その上で、依然として経営環境が厳しい中、更なる猶予を求める声があります。今回の改正案には特例猶予の延長は盛り込まれておりませんが、換価の猶予によって更なる猶予が認められます。個別に申請し、適用されれば、通常八・八%の延滞税を一%に軽減した上で、更に一年間納税が猶予されます。さらに、個別の事情がある場合は、延滞税なしで納税猶予が認められる場合もあると伺っております。

 コロナで特に大きな影響を受けている事業者を始め、納税することによって事業継続や生活維持に支障を来すおそれのある方々にとっては、非常に重要な制度であります。支援を必要としている方がこの制度をきちんと活用できるよう、広く周知徹底していただきたい。

 審査に当たっては、コロナの影響を十分に考慮していただきたいと思いますが、どのような場合に認められるのか、明確な答弁をお願いします。また、納税者が無理なく納付できるよう、分割納付などの柔軟な運用を強くお願いしたいと思いますが、財務大臣の答弁を求めます。

 消費税の総額表示の義務化への対応についてお尋ねをいたします。

 消費税の価格表示の特例が、今年度末、三月三十一日で期限を迎え、本年四月一日から総額表示が義務化されます。これまで税抜き価格で表示されていた値札が総額表示に切り替わることで、消費マインドの冷え込みが懸念されます。また、消費税の転嫁拒否に関し、事業者間の本体価格での交渉拒否も妨げられなくなることから、転嫁拒否行為を助長するおそれもあります。

 こうしたことにならないよう、円滑な実施に向け、事業者への相談対応や国民の皆様への周知、広報等を徹底するとともに、転嫁拒否行為の監視、取締りを一層強化すべきと考えますが、財務大臣の答弁を求めます。

 以上、本法案は、予算措置と併せ、新型コロナの影響を乗り越え、日本経済の再生と好循環を実現するためのものであり、早期に成立させるべきものと訴え、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 太田昌孝議員にお答えをいたします。

 雇用の維持、確保のための政策についてお尋ねがありました。

 今回の税制改正では、いわゆる賃上げ促進税制について、大企業においては新規雇用、中小企業においては雇用の給与総額の増加を促しております。

 また、中小企業の第三者への事業承継を促すための特例措置は、雇用や投資を促すためのものです。

 雇用調整助成金の特例なども併せて、新型コロナの影響の中で雇用を支えてまいります。

 法人税制についてお尋ねがありました。

 今回の改正については、企業全体で取り組むデジタル投資を支援し、カーボンニュートラル目標の達成に向けて、過去最高水準の最大一〇%の税額控除を行います。さらに、中小企業の第三者への事業承継を促すための特例措置を講じます。

 これらにより、大企業、中小企業に投資を促し、新たな雇用につなげてまいります。

 子育て支援に関する非課税措置についてお尋ねがありました。

 お尋ねのベビーシッター等については、待機児童問題に終止符を打つためにも、今般の税制改正を踏まえ、更に利用促進を図ってまいります。

 また、産後ケア事業については、産後も安心して子育てができる支援体制を構築するため、今般の税制改正により、より利用しやすい環境を整備し、事業の全国展開に向けて取り組んでまいります。

 こうした取組の周知徹底を図るとともに、事業を推進し、今後も、結婚や出産、子育てを希望する方々の声に丁寧に耳を傾け、一つ一つ望みを実現してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 太田先生から、納税猶予の特例の期限後の対応、消費税の総額表示の義務化への対応について、計二問お尋ねがあっております。

 まず、納税猶予の特例の期限後の対応についてお尋ねがありました。

 国税庁といたしましては、特例猶予の申請期限が過ぎた後におきましても、既存の猶予制度をきちんと活用できるよう、業界団体や関係民間団体を通じて周知を始め、あらゆるチャンネルを通じて既存の猶予制度の積極的な周知、広報を図っているところであります。

 既存の猶予制度の審査に当たりましては、新型コロナの影響を踏まえまして、納税者個々の実情を十分に配慮した柔軟な対応に努めているところであります。特例猶予の条件を満たすような方には、基本的には既存の猶予制度を御利用いただけると考えております。

 また、猶予制度の申請期限が過ぎた後におきましても、新型コロナの影響を受けている場合には、既存の猶予制度を適用し、原則として一年間猶予することといたしており、分割して納付していただくこともできます。

 引き続き、納税者の置かれた状況等に十分配慮いたし、積極的な周知、広報と迅速かつ柔軟な対応に努めてまいりたいと考えております。

 もう一つ、消費税の総額表示、転嫁対策についてのお尋ねがあっております。

 事業者が消費者に対して行う消費税に係る価格表示につきましては、消費者の利便性を確保する観点から、消費税額を含めた支払い総額が一目で分かるようにするため、総額表示とすることとされております。

 二度の消費税の引上げに当たりまして、事業者の事務負担等に配慮をいたして講じておりました総額表示義務の特例が、本年三月末にその期限が切れることになります。総額表示の円滑な再実施のために、関係省庁とも協力をしつつ、相談対応等々、周知の取組を丁寧に進めておるところです。

 また、消費税の転嫁拒否を含む買いたたき等につきましては、引き続き、独占禁止法、下請法等に基づき、関係省庁において厳正に対応していくことになります。(拍手)

    〔国務大臣赤羽一嘉君登壇〕

国務大臣(赤羽一嘉君) 太田議員から、住宅ローン減税の特例措置の延長等についてお尋ねがございました。

 昨年一年間の住宅着工数は、御指摘のとおり、コロナ禍の影響で受注が大幅に減少したことにより、八十一万五千戸と、前年比九・九%の減少となりました。

 内需の柱である住宅投資は経済波及効果が大きいことから、住宅投資を喚起することにより、日本経済全体を回復させていくことを目指し、昨年十二月に閣議決定された総合経済対策において、住宅ローン減税の特例措置等を盛り込んだところでございます。

 この措置では、控除期間十三年の延長を一年延長するとともに、合計所得金額一千万円以下の方について、床面積要件を五十平米以上から四十平米以上に引き下げております。これは、コロナ禍の影響等により住宅取得環境が厳しくなっていることを踏まえ、子育て世帯など幅広い購買層の需要を喚起する観点から、措置することとしたものでございます。

 また、太田議員の御指摘のように、住宅の購入の判断には時間がかかるのが常でありますので、今回の特例措置をできるだけ多くの皆様に御利用していただけるよう、グリーン住宅ポイント制度等とともに、住宅関連団体や住宅情報提供サイトなどを通じて、適用期間も含めて、特例措置の周知徹底を最大限に行ってまいります。

 以上でございます。(拍手)

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議長(大島理森君) 清水忠史君。

    〔清水忠史君登壇〕

清水忠史君 私は、日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に対し、菅総理に質問いたします。(拍手)

 初めに、新型コロナ感染症で亡くなられた皆様に心から哀悼の意を表し、闘病中の皆様にお見舞いを申し上げます。

 また、医療の最前線や保健所等で働く皆様方に、敬意と感謝を申し上げます。

 私は、昨年末、新型コロナウイルスに感染しました。地元大阪で、三十九度の高熱に見舞われ、激しい頭痛と胸の痛みなどに苦しみました。保健所から連絡が来た際、入院を希望しましたが、重症者が増えて、あなたの症状では入院できませんと告げられ、自宅待機を経てホテルで隔離療養しました。

 私の場合は幸いにして復帰することができましたが、今、各地で、感染者が入院もホテル療養もかなわず自宅待機中に亡くなるという痛ましい事態が起こっています。対策の遅れで、救える命が救えなかった、総理はこのことをどう受け止めているのですか。

 私自身が感染して、改めて、医療体制の強化の必要性、必要な人がすぐに検査が受けられる体制の重要性を痛感しています。

 今、多くの医療機関が力を合わせ、地域医療を守っていますが、経営は深刻です。コロナ患者を受け入れていない医療機関を含めて、減収補填に踏み切るべきです。

 そして、最前線でコロナと戦う医療従事者の皆さんに、野党法案で提案している慰労金を支給すべきです。

 クラスターが発生している高齢者施設と医療機関を感染から守ることは急務です。全額国による直接の費用負担で、職員、入所者、入院患者への一斉の定期的検査の実施を速やかに行うことを求めます。

 緊急事態宣言が延長される中、事業者への更なる支援は待ったなしです。

 俺たちは一年余り政府の言うとおりに我慢してきた、死に物狂いで頑張っているときに、二度目の緊急事態宣言が出て、夜八時までに店を閉めろという、一日六万円の協力金では固定費にも足らない。多くの経営者の思いです。

 総理、緊急事態宣言の影響を受け、全国で苦しむ事業者の皆さんに対して、複雑な条件をつけずに、事業規模に応じた協力金を支給するべきではありませんか。

 コロナの影響は、既に一年以上に及びます。あらゆる地域、あらゆる業種の自営業者、中小企業が疲弊しており、倒産、廃業、休業に追い込まれています。このままでは、中小企業が支える雇用も地域経済も崩壊しかねません。再度、持続化給付金などの直接支援を行うべきではありませんか。答弁を求めます。

 今回の税制改正は、ポストコロナに向けた経済構造の転換を掲げ、企業のデジタル化やカーボンニュートラルに向けた投資への減税を措置していますが、優先して行うべきは、現にコロナ禍で苦しんでいる国民、事業者の負担軽減です。

 今こそ消費税の減税です。

 一昨年秋に実施された消費税率の一〇%への引上げで、景気は冷え込み、個人消費が低迷、国民が重い負担に苦しむ中でコロナ禍は起こりました。消費税は、食料品、生活必需品や光熱費など、暮らしに不可欠な支出にも課税され、コロナ禍で苦境にあえぐ国民にも容赦がありません。

 総理、消費税減税は、新型コロナの影響を一番深刻な形で受けている、所得の少ない人と中小零細企業への効果的支援になるのではありませんか。消費税率を安倍政権が引き上げる前の五%にまで戻す緊急減税を決断すべきです。

 あわせて、経営が悪化し、納税猶予を適用している中小企業などに消費税の納税免除の措置を取ることを強く求めます。

 インボイス制度の問題も重要です。

 今年の十月一日から対象事業者登録が始まります。消費税の仕入れ税額控除方式としてのインボイス制度が実施されれば、年間の売上げが一千万円に満たない小規模事業者は、取引先の意向次第で、消費税の課税業者となるのか、商取引から排除されるのかの選択を迫られます。

 財務省は、本制度により、百六十一万者が課税業者に転換し、二千四百八十億円の税収増になると見込んでいます。一事業者当たり十五万四千円もの新たな税負担となる計算です。対象となる個人事業者の多くは、スナックや居酒屋などの飲食業、建設業の一人親方や職人、フリーランスで働く、今まさに打撃的な影響を受けている人たちです。少なくとも、十月からの登録開始は延期するべきではありませんか。

 コロナ禍の下で、富の集中が進み、格差が拡大しています。

 資産一千億円以上の富裕層は、総資産を約十四兆円から約二十二兆円へと殖やしています。他方、企業の倒産、廃業は大幅に増加し、就業者数は七十一万人の減少、完全失業者数は、この一年間で四十九万人増え、二百万人近くまで膨れ上がりました。

 金融資産を持つ者と持たざる者、富裕層と庶民の所得格差、資産格差が拡大しているにもかかわらず、今回の税制改正は、証券優遇税制の見直しに全く触れていません。

 優遇措置を抜本的に見直し、所得が一億円を超える高額所得者ほど税負担が軽くなる、現在のいびつな税制にメスを入れるべきではありませんか。

 大企業優遇税制も見直すべきです。

 一部の大企業に多額の恩恵が及ぶ研究開発減税を、なぜ温存するのですか。

 政府の資料によれば、二〇一九年度の研究開発減税は総額五千五百七十四億円に及ぶものの、中小企業の利用はたった三百九十一億円にすぎず、九三%が大企業への減税です。しかも、上位十社だけで減税額一千七百四十一億円、全体の三割以上を占めるという集中ぶりです。

 四百六十兆円も内部留保をため込む大企業に偏った減税策は、抜本的に改めるべきではありませんか。

 コロナ禍の下、税制は、能力に応じた負担を求める応能負担の原則、生計費非課税の原則に立ち戻る税制改革が求められていることを指摘し、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 清水忠史議員にお答えをいたします。

 自宅待機中の新型コロナウイルス感染者への対応についてお尋ねがありました。

 国民の命と暮らしを守ることが政治の責任であり、自宅療養中に亡くなられた方がいらっしゃることについては、大変申し訳なく、お亡くなりになられた全ての皆さんに御冥福をお祈り申し上げます。

 政府としては、病床確保に向けた強力な支援措置を講じるとともに、自宅療養中の患者が症状に変化があった場合には、速やかにこれを把握し、医療機関等につなぐため、引き続き、保健所の体制整備やパルスオキシメーターの活用など、必要な対策を講じてまいります。

 医療機関への減収補填や慰労金についてお尋ねがありました。

 政府としては、これまでも、コロナ対応を行っていない医療機関への支援も含めて、三・二兆円の支援を行うとともに、三次補正で一・四兆円の追加支援を行っております。さらに、昨年末以降、一床当たり最大千九百五十万円の支援を実施しており、医療従事者の処遇改善に充てていただきたいと考えております。

 引き続き、地域の医療機関の状況を踏まえ、必要な支援をちゅうちょなく実施するとともに、医療従事者の方々の気持ちに寄り添い、しっかりと支援を講じてまいります。

 高齢者施設や医療機関に対する検査についてお尋ねがありました。

 政府としては、重症化リスクの高い方々のいる施設に対し重点的な検査を実施することとし、感染拡大地域の医療や高齢者施設の従業員等に対して、実質的に国の費用負担で検査を実施できるようにしております。

 今回、改めて緊急事態宣言の対象となっている都府県には、高齢者施設の従事者などの検査の集中的実施計画を早急に策定し、三月までに実施していただくことにしております。

 事業者への支援についてお尋ねがありました。

 飲食店に対する一日六万円の協力金については、東京都の平均的な店舗においても固定費がおおむね賄えると聞いており、大規模チェーンであっても店舗数に応じた支援を行っております。

 また、全国に緊急事態宣言を行い、幅広い業種に休業要請を行った昨年とは状況が異なっていることから、持続化給付金を再度支給することは考えておりませんが、緊急事態宣言により大きな影響があった事業者には一時金を支給させていただくことにしております。

 国民、事業者の負担軽減についてお尋ねがありました。

 新型コロナの影響については、多くの事業者にとって重要な資金繰り支援や雇用調整助成金の特例による人件費の支援を行っており、生活に困窮している方々には、緊急小口資金などにより支援を行っております。

 これらの対策により、事業と雇用、暮らしを守ってまいります。

 消費税の減税についてお尋ねがありました。

 消費税は社会保障のために必要な財源と考えております。

 新型コロナの影響により消費税等の納税が困難な状況にある方については、今後も既存の猶予制度を御利用いただくことが可能であり、引き続き、個々の実情を十分に踏まえながら、柔軟に対応してまいります。

 インボイス制度についてお尋ねがありました。

 インボイス制度は、複数税率の下で、適正な課税を確保するために導入するものであり、その円滑な導入を図る観点から、事業者の準備や設備導入のための十分な期間を設けております。

 今後とも、制度の円滑な導入に向けて、周知、広報など、必要な取組を進めてまいります。

 金融所得課税についてお尋ねがありました。

 所得税については、これまでも、最高税率の引上げや金融所得課税の税率の引上げなどを実施してきました。

 これらの改革によって、所得が高くなるに従って所得税の負担率がより上昇し、所得再分配機能の回復に効果があったと考えております。

 今後の税制の在り方については、経済社会の情勢の変化等も踏まえつつ、検討する必要があると考えています。

 研究開発税制についてお尋ねがありました。

 研究開発税制については、適用額は大企業が大きいですが、適用件数では中小企業が多く、幅広い企業に利用されております。

 また、今回の改正では、試験研究費の増減に応じて税額控除率を上下させる仕組みを強化しており、これにより研究開発を促してまいります。

 以上であります。(拍手)

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議長(大島理森君) 青山雅幸君。

    〔青山雅幸君登壇〕

青山雅幸君 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸です。

 所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに関連する事項について、会派を代表して質問させていただきます。(拍手)

 日本の最大の中長期的課題は、言うまでもなく、高齢者世代の割合の増加と人口減少です。

 これは、高齢者の消費が合理的消費水準を下回ることなどからくる消費減少により経済を縮小させ、他方では社会保障費の継続的な増加圧力として働くため、日本の国債残高を膨らませ続けています。

 そして、これからの三十年間、日本は、六十五歳以上の高齢者人口の割合が拡大を続ける一方、生産年齢人口の割合は縮小を続け、二〇五〇年頃にようやく均衡に達します。単純な人口減少ではなく、この人口構成の変化こそが日本の大問題であると言えます。

 まず、この点に関する問題認識について、麻生財務大臣の御見解をお伺いします。

 戦後、経済や産業が灰じんに等しい状況にまで落ち込みながら、人口構成は今のインドのような理想的なピラミッド形状であるとともに、日々経済が発展し、国民がひとしく未来に希望を持てた時代から、既に八十年近くが経過しました。今の日本は、世界的経済発展を遂げながら、人口構成が不利な方向に傾き、国民が必ずしも将来に希望を持てない、そういう状況にあります。

 そのような国家の状況を踏まえ、国民、特に、若い世代が未来に希望を持てる国づくりを進めるためには、改革という言葉を超えた、新たなる制度設計が必要な時期に来ています。この新たなる制度設計については、日本維新の会、馬場幹事長が、さきの予算委員会で、新所得倍増計画として言及されたところであります。

 そして、この大改革と同時に必要なことが、日本企業の国際競争力の維持と発展です。

 今回の所得税法改正案には、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の創設、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設、研究開発税制の見直しといった、日本企業が世界に向けて競争力を高めるための三点の工夫が織り込まれました。

 政府の成長戦略会議では、中小企業の生産性向上が重視されています。この視点はもちろん重要であり、今回の改正案にも盛り込まれていますが、もう一つ、忘れてはならないのは、生産性についてはそれほど世界と見劣りしない大企業も、現状では世界的競争力を失いつつあることです。

 二〇二〇年版フォーチュン五百社において、日本企業のランクインは僅かに五十三社、トップテンにはトヨタ一社しか入っていません。一九九五年版で、トップ五百社中百四十九社を占めて世界第二位となって、一位アメリカに僅か二社差と肉薄し、トップテンに六社もいた栄光の時代は、遠い過去になりつつあります。

 こうした現実を払拭し、再躍進を図ることは、日本の最大の課題である人口高齢化に伴う社会保障関連費増を賄うためにも重要です。経済で負け組に転じれば、すなわち社会保障も負け組に転じる。今の経済大国の地位を維持するだけでなく発展させることは、国民の利益にも資するものです。

 大企業においても国際競争は熾烈です。

 例えば、自動車産業では、自動運転、電気自動車などの開発が、旧来の自動車産業だけでなく他分野の企業も参入して、しのぎを削るように開発と実験が行われており、全産業の知恵を集結した大競争となっているのが世界の現実です。

 カーボンニュートラルについても、中国の習近平国家主席が、昨年九月の国連総会で、二〇六〇年までの実現を目指すと発表し、アメリカのバイデン新政権は、大統領選挙公約に、二〇五〇年までにエコノミーワイドでネットゼロエミッション、二〇三五年までの電力のカーボンフリー化を掲げるなど、意欲的な姿勢を示しています。また、米中両大国だけでなく、デンマークでは、既に五〇%を風力、太陽光の再生可能エネルギーで賄い、さらに、三ギガワットという巨大な規模の人工エネルギー島を設置するということも計画しています。

 菅総理は、昨秋の臨時国会における施政方針において、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現を宣言されたところですが、このような世界の情勢に遅れることのない積極的な施策が必要です。

 そこで、今回の税制改正だけでなく、政府としてどのようにこれらの前向きな課題に取り組んでいかれるのか、総理にお尋ねいたします。

 政府及び主要な自治体は、金融においての国際競争力を高めるため、国際金融都市の実現に向けて動き出しております。

 日本は、かなり以前より国際金融センターの実現に向けて取り組んできたにもかかわらず、これまでは大きな成果は上げられませんでしたが、国際情勢の変動を受けて、政府も積極性を強め、在留資格の取得要件の緩和等を進めています。

 さらに、税制面で障害となっている課題の解決のために、本法案で、業績連動給与の損金算入や就労等のため日本に居住する外国人についての相続税の取扱いについての改正が図られています。

 このような改正にとどまらず、ロンドンのような国際金融都市を日本に誕生させるために、今後どのように積極的な対策を講じていくのか、総理の見解をお伺いいたします。

 国民が希望を持てる新しい未来を打ち立てるため、日本維新の会・無所属の会は、政治的利害得失や既得権益を始めとする種々の制約にとらわれることなく、自由な議論に基づいて国民のための政策実現を目指すことをお誓いし、私からの質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 青山雅幸議員にお答えをいたします。

 我が国企業の国際競争力についてお尋ねがありました。

 中期的な経済の成長のためには、税制改正に加えて、社会保障改革や成長戦略の議論が必要と考えています。

 例えば、カーボンニュートラルについては、十四の重要分野ごとに高い目標を掲げており、産業構造の転換と力強い成長を生み出してまいります。

 この国会には、グリーン、デジタル、地方の活性化や少子化対策などを実現するための予算や法律を多数提案させていただいております。こうした成長志向の政策の実現により、我が国企業が再び成長していける国づくりを目指します。

 国際金融センター実現に向けた施策についてお尋ねがありました。

 税制については、外国人の国外財産を相続税の対象外とするとともに、運用成果に応じた収入に係る所得税は、主要先進国と比べて遜色ない水準である二〇%の税率を一律に適用することといたします。

 また、海外の人材がビジネスを容易に開始できるよう、海外資産運用業者の参入手続を簡素化するほか、在留資格の特例を創設いたします。

 さらに、法人設立や生活について、英語でワンストップで支援する窓口をつくります。

 これらにより、国際金融センターを実現するため、政府一体となって取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣麻生太郎君登壇〕

国務大臣(麻生太郎君) 青山議員からは、一問、人口構成の変化によります経済と財政への影響についてのお尋ねがあっております。

 これは、先生御指摘のとおり、生産年齢人口の割合の減少と高齢化人口の割合の拡大という人口構成の変化が、日本の財政、経済の抱えております構造的な課題であるということは、私どももそう認識をいたしております。

 人口が減少していく中で、民需主導の持続的な経済成長を実現していくためには、ポストコロナというものを見据えて、規制改革、経済構造の配置転換等々、潜在成長力を高めていく必要があると考えております。

 また、日本の社会保障は受益と負担のバランスが不均衡な状態にあり、今後も、支え手の減少による財源の縮小と高齢化による社会保障の増加が見込まれております。こうした不均衡を是正し、制度の持続可能性を確保していくという必要があると考えております。(拍手)

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議長(大島理森君) 前原誠司君。

    〔前原誠司君登壇〕

前原誠司君 国民民主党の前原誠司です。

 私は、会派を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案について、賃上げ及び投資の促進に係る税制、及び中小企業における所得拡大促進税制の見直しに絞って、菅総理に質問いたします。(拍手)

 日本の宿痾の一つが、上がらない賃金です。

 直近では日本の平均名目所得が最も高かったのは一九九七年ですが、この年の時間当たりの賃金を各国とも一〇〇とした場合、コロナ前の二〇一八年の日本の名目賃金は先進国で唯一下落し、八・二%減の九一・八となります。これに対し、イギリスは九二%、アメリカは八一%も上昇しています。物価上昇率を割り引いた実質賃金で見ても、日本は一〇%のマイナス。イギリスは四一%、アメリカは二五%の増加となります。

 第二次安倍政権誕生後、日本銀行が異次元の金融緩和と称する大規模な国債の引受けを行い、株価や債券価格は大幅に上昇しました。コロナ禍に見舞われる前の七年間で、企業の経常利益は六四%、内部留保は七三%上昇しましたが、名目賃金は五%しか伸びず、実質賃金は四%、むしろ下がっています。

 政府が何もしてこなかったと言うつもりはありません。金融緩和や財政出動に加え、春闘では政府自ら官製の賃上げ交渉を行う。最低賃金も二〇一六年から四年連続の三%引き上げ。同一労働同一賃金も制度化されました。そして、賃上げを行った企業への税制優遇措置、これも二〇一三年から行われています。

 にもかかわらず、賃金はなかなか上がりません。もちろん、日本のみならず、世界中が今はコロナ禍。需要が蒸発し、賃上げどころではない企業や個人経営者が多数存在しています。

 とにかく必要な財政出動を行い、生き残るべき企業を守り、雇用を守り、国民の生活と健康を守ることに専念すべきであることは論をまちません。

 その上で、菅総理に伺います。

 世界の中で日本だけ賃金が上がらない主な原因は何だと考えておられるのか。その原因を列挙し、ポストコロナにおいて、それらを克服するための具体的対応策をそれぞれ示し、政府として、年度を区切って賃上げの目標を名目、実質共に明確に示すべきだと考えますが、答弁を求めます。

 加えて、中小零細企業の再編によって生産性を上げることが日本の成長につながると主張されているデービッド・アトキンソン氏を総理は政府の成長戦略会議のメンバーに選ばれていますが、アトキンソン氏のこの持論に賛同されているのかもお答えください。

 また、ポストコロナ時代には、世界の先進国と比べてもいまだ低い最低賃金を、現実的に、しかし着実に上げていくべきだと私は考えます。中小零細企業を経営される方々にとって、最低賃金の引上げは、非常に抵抗感の強いテーマであることはよく認識をしています。しかし、日本のGDPにおいて消費の占める割合は約五五%。賃金が低ければ購買力が上がらず、経済成長は見込めません。それによって苦しい経営状況が続くのです。負の連鎖を断ち切らなければなりません。

 コロナが収まれば、最低賃金の引上げを継続的に行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 さて、賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直しですが、現行制度と異なるのが、継続雇用者給与等支給額、対前年度同月比三%以上という要件がなくなり、新規雇用者給与等支給額、対前年度増加率二%以上という新たな要件に変わったことです。国内設備投資額、当期の減価償却費の総額九五%以上もなくなりました。

 他方、雇用者給与等支給額、対前年度を上回ることという要件が残っていることから推察すると、コロナ禍において、賃金よりも雇用を優先した、そして、国内設備投資要件は企業にとっては厳し過ぎるために削除したという理解でよいのか、お答えください。

 時限措置は二年ですが、コロナが落ち着いた後は、従来の、賃金も設備投資もという組合せに戻すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 また、中小企業における所得拡大促進税制の見直しについても、コロナ対応で継続雇用の要件を外していると考えてよいのか。さらに、適用期限を二年延長するとしていますが、これも、ポストコロナでは継続雇用要件を復活させるべきだと考えますが、答弁を求めます。

 菅総理は、イノベーションの中核に、デジタル化、グリーン化を置いておられます。大賛成です。ただ、デジタル化、テクノロジーの発展に伴う寡占化の進展は、労働分配率の低下、つまり賃金の低下を更にもたらす可能性があります。

 しかし、労働分配率の低下はイノベーションによる宿命ではなく、例えばスウェーデンのように、持続的な賃上げ、円滑な労働移動、政府による能力開発の支援を行えば、デジタル化の進展は、むしろ賃上げの大きな武器になり得ます。

 労働流動性を高める必要性、そして、その前提として、政府による能力開発、再教育支援が不可欠だと考えますが、総理の答弁を求め、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 前原誠司議員にお答えをいたします。

 賃金の引上げについてお尋ねがありました。

 諸外国との比較は、労働者の年齢構成や雇用環境等の前提条件が異なることから、一概にこれを行うことは困難ですけれども、我が国の賃金の引上げは、新型コロナ感染症流行前においては、連合の調査によれば、六年連続で今世紀に入って最も高い水準の賃上げが実現しました。昨年末には私から賃上げの流れを継続するよう要請をし、先般、経団連から、賃金引上げのモメンタム維持が望まれるとの報告が出されたところであります。

 今後も、成長分野への民間投資を大胆に呼び込みながら、企業の生産性を高め、これまでの賃上げの流れを継続してまいります。

 なお、賃上げの目標を示すべきとのお尋ねについては、感染症により雇用、経済の状況が厳しい現状を踏まえ、今は官民を挙げて雇用を守ることを最優先課題として取り組んでまいります。

 成長戦略会議のメンバーについてお尋ねがありました。

 まず、メンバーの中の特定の方の御意見に限らず、様々な方から話を伺い、政策の参考にしているところであります。

 中小企業については、経営資源の集約化による事業の再構築やデジタル化など、生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを構築し、創意工夫する企業を応援してまいります。

 最低賃金の引上げについてお尋ねがありました。

 日本経済全体の生産性の底上げや取引関係の適正化など、賃上げしやすい環境整備に不断に取り組みます。

 私の内閣では、最低賃金については、より早期に全国加重平均千円になることを目指すとの方針を堅持しつつ、地方の所得を増やし、消費を活性化するため、雇用にも配慮しながら継続的な引上げを図り、経済の好循環につなげてまいります。

 賃上げ及び投資促進税制についてお尋ねがありました。

 新型コロナの中では、まずは雇用を守ることが政治の責務であると考えています。

 今回、賃上げ及び投資の促進税制については、新規の雇用に取り組む企業を後押しする仕組みへと見直すことにいたしました。

 今後の本税制の在り方については、今回の見直しの効果などを踏まえて検討してまいります。

 中小企業の所得拡大促進税制についてお尋ねがありました。

 中小企業についても、雇用を増加させる企業を下支えするために、雇用者全体の給与の増加を要件としています。

 今後の本税制の在り方については、今回の見直しの効果などを踏まえ検討してまいります。

 労働者の能力開発支援等についてお尋ねがありました。

 デジタル化の進展等により、求められるスキルが変化している中で、技術革新と産業界のニーズに合った能力開発を推進していくことが重要であると考えます。

 政府においては、大学等による学び直しへの支援、IT、データを中心とした教育訓練への支援、人材育成を実践する企業への助成などを通じ、求められるスキルを身につけ、成長分野への労働移動と賃金の引上げが実現するよう支援してまいります。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  義偉君

       財務大臣

       国務大臣    麻生 太郎君

       総務大臣    武田 良太君

       法務大臣    上川 陽子君

       厚生労働大臣  田村 憲久君

       経済産業大臣  梶山 弘志君

       国土交通大臣  赤羽 一嘉君

       環境大臣    小泉進次郎君

       国務大臣    井上 信治君

       国務大臣    小此木八郎君

       国務大臣    加藤 勝信君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 坂井  学君

       財務副大臣   伊藤  渉君


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