衆議院

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第11号 令和3年3月9日(火曜日)

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令和三年三月九日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第五号

  令和三年三月九日

    午後一時開議

 第一 原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)、デジタル庁設置法案(内閣提出)、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(大島理森君) 日程第一、原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。内閣委員長木原誠二君。

    ―――――――――――――

 原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔木原誠二君登壇〕

木原誠二君 ただいま議題となりました法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、原子力発電施設等の立地地域において、防災インフラ整備への支援等を引き続き実施していくため、令和三年三月末までとされている原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法の有効期限を十年間延長するものであります。

 本案は、去る二月二十四日本委員会に付託され、同日井上国務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。次いで、三月五日に質疑を行い、質疑終局後、本案に対し、立憲民主党・無所属より、法律の目的規定について、福島第一原子力発電所の事故により様々な影響が生じていることを明記する等を内容とする修正案が提出され、趣旨の説明を聴取いたしました。

 次いで、原案及び修正案について討論を行い、採決した結果、修正案は賛成少数をもって否決され、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(大島理森君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)、デジタル庁設置法案(内閣提出)、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、デジタル社会形成基本法案、デジタル庁設置法案、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣平井卓也君。

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) このたび政府から提出をしたデジタル社会形成基本法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 情報通信技術が急速に進展し、国民の生活が大きく変化する中、データの利活用が、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展の実現のために不可欠となっています。また、新型コロナウイルスへの対応において、国や地方公共団体のデジタル化の遅れや不十分なシステム連携を背景に煩雑な手続や給付の遅れが生じるなど、社会全体のデジタル化の推進が喫緊の課題となっています。

 さらに、少子高齢化等の社会構造の変化により、社会の多様性が増していく中、情報通信技術の活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現することが重要です。

 この法律案は、こうした状況を踏まえ、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進し、もって我が国経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、デジタル社会を、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて自由かつ安全に多様な情報又は知識を世界的規模で入手し、共有し、又は発信するとともに、先端的な技術をはじめとする情報通信技術を用いて電磁的記録として記録された多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、あらゆる分野における創造的かつ活力ある発展が可能となる社会と定義することとしております。

 第二に、デジタル社会の形成に関し、ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現、国民が安全で安心して暮らせる社会の実現、利用の機会等の格差の是正、個人及び法人の権利利益の保護等の基本理念について定めることとしております。

 第三に、デジタル社会の形成に関し、国、地方公共団体及び事業者の責務等について定めることとしております。

 第四に、デジタル社会の形成に関する施策の策定に当たっては、多様な主体による情報の円滑な流通の確保、高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用の機会の確保、人材の育成、生産性や国民生活の利便性の向上、国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用、公的基礎情報データベースの整備、サイバーセキュリティーの確保、個人情報の保護等のために必要な措置が講じられるべき旨について定めることとしております。

 第五に、別に法律で定めるところにより内閣にデジタル庁を設置し、政府がデジタル社会の形成に関する重点計画を作成するとともに、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法を廃止することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 次に、デジタル庁設置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、デジタル社会形成基本法に基づき、デジタル社会の形成に関する司令塔として、強力な総合調整機能を有するデジタル庁を設置し、デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進することを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、デジタル庁の設置、任務、所掌事務について定めております。

 デジタル庁は、内閣に置き、デジタル社会の形成についての基本理念にのっとり、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けること、デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務としております。

 また、その任務を達成するため、デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案及び総合調整をつかさどるほか、デジタル社会の形成に関する重点計画の作成及び推進、行政手続における特定の個人又は法人その他の団体を識別するための番号等の利用、情報通信技術を用いた本人確認に関する総合的かつ基本的な政策の企画立案及び推進、データの標準化、外部連携機能及び公的基礎情報データベースに関する総合的かつ基本的な政策の企画立案及び推進、国の行政機関、地方公共団体その他の公共機関及び公共分野の民間事業者の情報システムの整備及び管理の基本的な方針の作成及び推進、国の行政機関が行う情報システムの整備及び管理に関する行政各部の事業の統括及び監理等をつかさどることとしております。

 第二に、デジタル庁の組織について定めております。

 デジタル庁は、内閣総理大臣を長とし、事務統括権、関係行政機関の長に対する勧告権等を有するデジタル大臣を置くとともに、副大臣一人、大臣政務官一人に加え、デジタル大臣に進言等を行い、かつ、庁務を整理し、各部局及び機関の事務を監督する内閣任免の特別職であるデジタル監等を置くこととしております。

 また、デジタル庁に、全ての国務大臣等をもって組織するデジタル社会推進会議を置くこととしております。

 なお、この法律は、一部を除き、令和三年九月一日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 次に、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 情報通信技術が急速に進展し、国民の生活が大きく変化する中、データの利活用の重要性が高まっており、データの適正な利用のためのルール整備と併せ、マイナンバーの情報連携の促進やマイナンバーカードの利便性の向上及び普及の促進等を図る必要があります。また、新型コロナウイルス感染症への対応において、押印、書面を前提とした制度、慣行がテレワークの支障となるなど、社会全体のデジタル化の推進が喫緊の課題となっています。

 この法律案は、こうした状況を踏まえ、デジタル社会形成基本法に基づきデジタル社会の形成に関する施策を実施するため、個人情報の保護に関する法律、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の関係法律について所要の整備を行うものであります。

 次に、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、個人情報の保護に関する法律、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律の三法を個人情報の保護に関する法律に統合するとともに、地方公共団体の個人情報保護制度についても改正後の個人情報の保護に関する法律において全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化する等の措置を講ずることとしております。

 第二に、国家資格に関する事務等における個人番号の利用や情報連携を拡大するとともに、従業員本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供を可能とすることとしております。

 第三に、地方公共団体が指定した郵便局におけるマイナンバーカードの電子証明書の発行、更新等、公的個人認証サービスにおける本人同意に基づく基本四情報の提供及び電子証明書の移動端末設備への搭載を可能とする等の措置を講ずることとしております。

 第四に、地方公共団体情報システム機構の代表者会議に主務大臣又はその指名する者を加えるとともに、同機構の個人番号カード関係事務について、国が目標設定、計画認可、財源措置を行うこととするなど、国によるガバナンスを強化することとしております。

 第五に、押印を求める手続についてその押印を不要とするとともに、書面の交付等を求める手続について電磁的方法により行うことを可能とすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 次に、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、デジタル社会形成基本法案に定めるデジタル社会の形成についての基本理念にのっとり、デジタル化等による公的給付等の受取手続の簡素化、迅速化を進めるため、各行政機関等が行う公的給付の支給等に利用することができる預貯金口座を、内閣総理大臣にあらかじめ登録し、行政機関等が当該預貯金口座に関する情報の提供を求めることを可能とするものです。あわせて、緊急時等の公的給付の支給を実施するための情報について個人番号を利用して管理できることとする等により、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施を図ることを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、預貯金者は、公的給付の支給等に係る金銭の授受に利用することができる一の預貯金口座について、オンラインにより、又は金融機関の窓口等を通じ、内閣総理大臣に申請をして、その登録を受けることを可能とすることとしております。

 第二に、行政機関等は、公的給付の支給等に係る金銭の授受をするために必要があるときは、登録された預貯金口座に関する情報について、内閣総理大臣に対し提供を求めることを可能とすることとしております。

 第三に、行政機関等は、個別の法律の規定によらない公的給付のうち、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある災害若しくは感染症が発生した場合に支給されるもの、経済事情の急激な変動による影響を緩和するために支給されるものとして内閣総理大臣が指定するものの支給を実施しようとするときは、当該支給を実施するための基礎とする情報を個人番号を利用して管理することを可能とすることとしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。

 次に、預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、デジタル社会形成基本法案に定めるデジタル社会の形成についての基本理念にのっとり、預貯金者の意思に基づく預貯金口座への個人番号の付番を推進する仕組みや、災害時又は相続時に預貯金者又はその相続人の求めに応じ、預貯金口座に関する情報を提供する制度を創設すること等により、行政運営の効率化及び行政分野におけるより公正な給付と負担の確保に資するとともに、預貯金者の利益の保護を図ることを目的とするものであります。

 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。

 第一に、預貯金者は、預貯金口座への個人番号の付番を希望する旨を申し出ることができるとともに、金融機関は、預貯金契約その他重要な取引を行う場合に、預貯金者に対し、付番の意思について確認しなければならないこととしております。

 第二に、預貯金者本人の意思に基づき、預金保険機構を介して、一度の申出により、複数の金融機関の預貯金口座への個人番号の付番を可能とすることとしております。

 第三に、災害又は相続の際に、預貯金者又はその相続人が、既に付番された預貯金口座の所在情報を金融機関窓口で確認するサービスを可能とすることとしております。

 第四に、国は、預金保険機構及び金融機関と協力して、預貯金口座への個人番号の付番について必要な広報等を行うものとするほか、預金保険機構の業務の特例として、この法律に基づき預金保険機構が行う業務について預金保険法を適用することとする等、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

     ――――◇―――――

 デジタル社会形成基本法案(内閣提出)、デジタル庁設置法案(内閣提出)、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣提出)、公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案(内閣提出)及び預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小林鷹之君。

    〔小林鷹之君登壇〕

小林鷹之君 自由民主党の小林鷹之です。

 ただいま議題となりましたデジタル改革関連五法案について、自由民主党・無所属の会を代表して質問いたします。(拍手)

 今般の新型コロナウイルスへの対応を通じて、各種の給付においての煩雑な申請手続、地方を含む行政のデジタル化の遅れなどが明らかになりました。

 デジタル化は経済社会生活の抜本的な転換につながるものであり、その推進においては、徹底的な利用者目線で、国民の誰もが安心してデジタル技術を利活用し、その利便性を実感できることを最優先に進めることが重要です。同時に、デジタル化を加速度的に進め、我が国をデジタル技術により強靱化させるとともに、他国に遅れることなく、先進的なデータ駆動型社会の構築を目指すべきと考えます。

 今後、菅総理は新たなデジタル社会を目指して我が国を導かれることになりますが、そのための取組は、将来を見据えて計画的に、かつ全体を見渡して整合的に推進することが必要不可欠となります。

 総理は、今国会の施政方針演説において、国民の希望を実現したいとの思いで、行政の縦割り、既得権益、そしてあしき前例主義を打ち破り、未来を切り開いていく、困難な課題にも答えを出していくと力強く訴えられました。

 そこで、総理に伺います。

 国民の希望を実現し、かつ我が国の成長の原動力となる、目指すべきデジタル社会とはどのような社会でしょうか。総理から答弁願います。

 そして、目指すべきデジタル社会の実現の成否は、デジタル化を牽引するデジタル庁に懸かっています。デジタル政策の司令塔であるデジタル庁の役割や位置づけについて、どのように考えておられるのか、総理から答弁願います。

 また、デジタル社会は、国民が日々の生活の中で利便性を実感できるものでなければなりません。デジタル社会を形成するための基本理念を定め、これを実現していく主体となるデジタル庁を設置するとともに、現行の法制度についても、デジタル化推進の観点から、見直すべき点は見直していくことが重要です。自民党のデジタル社会推進本部においても集中的に議論を重ねてまいりました。

 まず、社会全体におけるデータ流通が増加し、多様化していく中で、個人情報の保護に配慮しつつ、国民ができるだけ円滑にデータのやり取りを行う仕組みづくりが必要です。

 また、マイナンバーやマイナンバーカードの活用によって、煩瑣な行政手続を効率化したり、あるいは自身の健康、医療データにアクセスできるようにしたりするなど、国民の利便性を向上させて、デジタル社会のメリットを国民にしっかりと届けていかなければなりません。

 加えて、昨年の特別定額給付金の支給の際に国民が感じた不便さを踏まえ、今後、公的な給付金の支給については、マイナンバーの利活用により、給付の迅速化をしっかりと図っていく必要があります。

 今回、政府から提出された、預貯金口座の情報をマイナンバーとともに登録し、行政機関がその情報を管理できるようにする預貯金口座の登録に関する法案、及びマイナンバーを活用した給付迅速化の仕組みの構築のための法案により、国民への公的給付が迅速になることや、災害時や相続時に口座情報が提供されることにより、国民がその利便性を実感できるようになることを期待しています。

 こうした観点から、デジタル社会の形成を進めるために関係法律の改正を行うとのことですが、これらの改正がデジタル社会の実現に向けてどのように寄与するのか、平井大臣から答弁願います。

 デジタル社会の形成を図る整備法には、データの適正な利用の観点から、個人情報保護法の改正が盛り込まれています。長年の課題であった、いわゆる二千個問題が解決され、個人情報保護とデータ流通の両立が期待されますし、GDPRへの十分性認定に関する対応など、国際的制度調和を図る上で非常に重要な改正だと思います。

 加えて、データの利活用の在り方は、今後の国際秩序の在り方に大きな影響を与え得るものです。我が国がG20大阪サミットで提唱した信頼性のある自由なデータ流通、いわゆるDFFTを具体化し、産業データの利活用を含めた国際ルールの形成を主導していくことは、我が国の国益にかなう喫緊の課題と考えます。産業データの利活用推進の観点から、今年中にもデータ法の整備を目指すとしている欧州に先駆け、我が国としても実効性あるルール整備を行うべきと考えます。

 こうした点を盛り込んだデータ戦略を速やかに策定すべきと考えますが、平井大臣の見解を伺います。

 なお、今回の法案には含まれていませんが、国民生活をより便利にするためのデジタル化の推進は、サイバーセキュリティーとセットで検討しなければならないと考えます。現に、コロナ禍において世界でもテレワーク等が広がる中、サイバー攻撃が増えているとの報告もあります。サイバーセキュリティー強化についての考え方を平井大臣に伺います。

 最後に、社会のデジタル化を推進する観点からは、私たちが所属する立法府についても、歴史や伝統を尊重しつつも、時代にそぐうデジタル化を議員自らが進めていかなければならないと考えます。そのことを申し添え、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 小林鷹之議員にお答えをいたします。

 目指すべきデジタル社会についてお尋ねがありました。

 今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れなど、様々な課題が浮き彫りになりました。私は、思い切ってデジタル化を進めなければ日本を変えることはできない、そういう思いを強くいたしました。

 役所に行かずともあらゆる手続ができる、地方にいても都会と同じような生活、仕事ができる、こうした社会を目指して、誰もがデジタル化の恩恵を最大限受けることができる、世界に遜色のないデジタル社会を実現し、さらに、民間におけるデジタル化も促していくことで、経済の好循環を先導いたします。

 政府としては、デジタル社会の実現に向けて、デジタル改革関連法案の成立に全力を尽くしてまいります。

 デジタル庁の役割、位置づけについてお尋ねがありました。

 デジタル庁は、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は三千億円の予算を持つ組織として、国全体のデジタル化を主導します。また、政府情報システムを統括するほか、自治体のシステムの統一、標準化、マイナンバーカードの普及などを担うことになります。

 残余の質問については、関係大臣から答えさせます。(拍手)

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) まず、質問にお答えする前に、今回の法律案の参考資料に多数の誤りがありましたことに、おわびを申し上げます。訂正をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、お答えさせていただきます。

 デジタル社会の形成を図るための関係法律の改正についてお尋ねがありました。

 デジタル改革関連法案のうち、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案は、デジタル社会形成基本法案に基づいてデジタル社会の形成に関する施策を実施するため、関係法律の改正を行うものであります。

 まず、個人情報保護制度について、これまで三本に分かれていた法律を一本に統合し、地方公共団体の制度についても全国的な共通ルールを規定するとともに、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化することで、いわゆる二千個問題を解決し、個人情報の保護と利活用のバランスに配慮した制度を実現するものであります。

 また、マイナンバーを活用した情報連携の拡大により、行政手続の際の添付書類を省略可能とするとともに、マイナンバーカードの電子証明書のスマートフォンへの搭載等により、マイナンバーカードの利便性の抜本的向上等を実現するものです。

 さらに、押印を求める各種手続について、押印を不要とする見直しを進めるとともに、書面の交付等を求める手続について、電磁的方法で行うことを可能とすることで、これらの手続の利便性の向上及び負担の軽減を図るものです。

 こうした関係法律の改正を通じて、データの適正な利用のためのルール整備や、行政手続のデジタル化や利便性の向上を進め、国民がよりデジタル社会の利便性を実感できるように取り組んでまいります。

 データ戦略の速やかな策定についてのお尋ねがありました。

 データ戦略については、昨年末、有識者を含めた第一次取りまとめの検討において、分野をまたいだデータ連携のためには、データ連携に必要な共通のルールの整備が必要であり、そのための項目として、データの取扱いに係る契約のひな形やデータ交換のための標準化などをまとめたところであります。

 さらに、データの提供先での目的外利用への不安など、データ流通を阻害する要因に対するルールの在り方についても今後検討することとしております。

 議員御指摘のとおり、データ活用のためのデータ取扱いルールの整備は、分野をまたいだデータ連携や民間データの流通の推進には不可欠であり、そのためにどのようなルールが適切か、スピード感を持って検討を進めてまいります。

 サイバーセキュリティーについてお尋ねがありました。

 現在進めているデジタル改革において、国民目線に立ったデザイン思考とセキュリティー・バイ・デザイン、すなわち使い勝手のよさと安全性の高さの両立を前提として、国民がデジタルの恩恵を安心して受けられるような社会を目指してまいります。

 そのため、デジタル庁は、内閣サイバーセキュリティセンターとも連携し、情報システムに関する整備方針においてサイバーセキュリティーについての基本的な方針を示し、その実装を進めるとともに、デジタル庁にセキュリティーの専門チームを置き、デジタル庁が整備、運用するシステムを中心に検証、監査を実施することとしています。さらに、国民の重要な情報資産をしっかりと保護するため、内閣サイバーセキュリティセンターとの連携体制を含めたデジタル庁におけるサイバーセキュリティー対策の在り方について、更に具体化してまいります。

 また、サイバーセキュリティ戦略本部において、次期サイバーセキュリティ戦略の策定に向けた検討が開始されています。次期戦略については、今年後半の策定に向け、デジタル改革を支えるサイバーセキュリティーという観点からの取組、サイバー攻撃の増加や新型コロナウイルス感染症の影響といった環境変化を踏まえた対応の強化、サイバー攻撃の抑止や国際協調の推進に向けた発信力の強化などに留意して検討が開始されており、この中で、更なるサイバーセキュリティーの強化を具体化してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 森田俊和君。

    〔森田俊和君登壇〕

森田俊和君 立憲民主党の森田俊和でございます。

 会派を代表いたしまして、ただいま提案のありましたデジタル関連法案につきまして質問をいたします。(拍手)

 この法案ですが、大変驚きました。法案の要綱を含めた関係資料で、先ほど大臣の方からも発言がございましたが、二十八か所の間違いがあったということです。これから国民の皆様の、詳細にわたる、かつプライベートも含めた個人情報を扱うシステムを組んで、セキュリティーを万全にしてやっていこうというところで、このような初歩的なミスが出てきてしまっている。この法案に臨む政府の姿勢は一体どんなものなのかと心配になってしまいます。

 ちなみに、この間違いのことについては、内閣委員会の会派の筆頭理事もまだ説明を聞いておりません。この法案審議に臨む決意と覚悟をお示しいただけないことには、とても不安で、このまま委員会審議に臨める状況ではないということを申し上げざるを得ません。

 今回の法案では、国民の皆様に、新しいシステムのことであったり、個人情報の扱いであったり、いろいろなことについて御理解、御協力をお願いしていかなければなりません。自分の個人情報を誰かに委ねるというのは、大きな判断です。信頼がなければ、自分の個人情報を委ねることはできません。

 お隣の台湾でデジタル担当閣僚を務め、ITの起業家でもあるオードリー・タン氏は、社会のデジタル化を進めていく際には、政府と国民との信頼関係が不可欠だと言っています。そのとおりだと思います。

 現在の日本の状況はいかがでしょうか。このところの総務省と東北新社やNTTに関するニュースを見ておりますと、国民の皆様は、果たして、政府を信頼して個人情報を預けてよいとお考えになるでしょうか。

 今回の接待の問題では、接待そのものが倫理に反するということに加えて、放送電波の割当ての判断への影響もあり、さらに、放送法違反、外資規制の問題もあります。外国の個人、法人などが株式の二〇%以上を持つ事業者は放送を行えないと規定されておりますが、東北新社がBSの認定を受けた二〇一七年において、外資比率は二一・二三%でしたが、認定は取り消されておりません。

 ただでさえこのような重大な問題を総務省が抱えていることに加え、そこに総理の御親族が関わっていたとなれば、これは、総務省だけでなく、政府そのものに対して国民の皆様が不信感を抱くことになります。

 今後デジタル関係の政策を進めていくに当たって、政府への信頼をどのように築いていくか。まず、国民の皆様に、これまで起こったことを明らかにし、御理解いただくことが、信頼への第一歩だと考えます。

 そこで、総理に伺います。

 総務省あるいは政府に対する国民の皆様から信頼を得るために、今後どのようにこの総務省と東北新社をめぐる問題に対処するお考えでしょうか。

 総務大臣にも伺います。

 東北新社から接待を受けたこと、総理の御親族が関係していたことが、放送電波を割り当てる際に、全く影響がなかったでしょうか。また、外資規制に反していることを見逃したことについても、全く影響がなかったでしょうか。お聞かせください。

 本論に入ります。

 まず、総理にお伺いしたいのは、デジタル社会によってどんな国を目指すのかということです。デジタルはあくまで手段です。デジタルによって、どこが変わるのか、どこが変わらないのか、目指すべき在り方を明確にしておく必要があります。

 私は、私的な仕事で、介護の仕事に携わっております。どこの介護事業所でもそうだと思いますが、人手が不足しておりまして、スタッフも五十代、六十代、七十代と年齢層も高めです。病気で手術をしたり、あるいは長期療養をしたりで、休むことも多くあります。常にぎりぎりの人数で回しているという状況です。

 これが、ICT機器の導入で、例えば、体温や血圧などの数値、食事や排せつの量や回数、睡眠時間等の記録を自動で行えるようになって、少しでもスタッフの負担が減ればよいなと思います。

 大事なのは、記録の負担が減ったらどうするかということです。省力化できたと人手を減らすのも一つの方向ですが、果たしてそれは御利用者の皆様の満足につながるでしょうか。幸せにつながるでしょうか。私が思っておりますのは、御利用者の方の話を聞く時間を増やしたいということです。そばにいる時間を増やしたいということです。

 寂しい思いをしていらっしゃる御高齢の方が、今の世の中にはたくさんいらっしゃいます。ああ、この職員さんが私の話を聞いてくれた、私のそばにいてくれた、ここは私がいていい場所なんだと少しでも温かい気持ちを感じていただくことができれば、デジタルが、ICTが人間の幸せにつながったと言うことができます。

 デジタル化により、手間が省けました、職員を減らして経費を削減できましたということで終わってしまっては、法案に書いてあるような、国民の幸福な生活の実現にはつながらないでしょう。

 デジタル化により、例えば、今まで市役所の窓口で入力や手続にかかっていた時間を節約することができた、そして、できた時間を困っている住民の皆様の話を聞くことに充てることができた、たらい回しにせず、親身になって話を聞き、対応する時間が持てるようになった、こういうことができるならば、温かい行政サービスが実現し、国民の皆様の幸せにつながります。

 AIやICTの導入によりいろいろな仕事がなくなるということも言われておりますが、私は、最後に残る仕事は、人が人に寄り添うことだと思っています。誰かが誰かのそばにいること、誰かが誰かの話を聞いてあげられることが、私たち人間の幸せの大きな部分を占めております。AIやICTの導入によって、人間が人間であることの価値がより明確になると私は思っています。介護でも行政でも、人が人に寄り添うことの大切さは変わりません。

 そこで、お伺いします。

 総理は、デジタル化によってどんな国の在り方をイメージしていらっしゃるでしょうか。デジタル化により、私たちはどんな幸せを手にすることができるのでしょうか。具体的な事例を含めて、デジタル化により目指すべき国の形をお示しいただきたいと思います。

 次に、デジタル弱者について伺います。

 昨年の新型コロナウイルス対策の支援制度で、持続化給付金がございました。これは、オンラインのみで申請を行うということで、多くの事業者の方から諦めや嘆きの声を聞きました。特に、御高齢の事業者の方には、パソコン、インターネットと聞いた時点で、ああ、無理無理、俺には分かんねえとなってしまう方が大勢いらっしゃいました。一方で、飲食店への時短協力金は、オンラインと郵送、どちらもオーケーとなりましたので、ああ、郵送でもいいんだねと大きな安心感を持って受け止めていただくことができました。

 これは、技術が発展途上であることを示しております。成熟した技術は使う人を選びません。最終的には、ICTなどの機器も、誰でも迷うことなく使いこなせるということが目標になります。しかし、技術は突然成熟するわけではありません。その途中では、デジタルとアナログを併用する必要があります。

 デジタルに関係する技術は、当然のことながら、デジタルに明るい人が開発しています。そこにはデジタル弱者の視点が入っていないということが多々ございます。

 そこで、総理にお伺いします。

 特に、新しいデジタル技術や機器の導入当初の時期には、こうした技術や機器に不慣れな方のことを常に考え、今までの技術ややり方を併用させ、配慮をすべきと考えますが、政府としてのお考えをお聞かせください。

 続いて、デジタル庁の設置によって何ができるようになるのか、総理にお伺いいたします。

 関係行政機関の長に対する勧告権を持つ、あるいは関係予算の一括計上を行うということは法案に書いてありますが、こういう新しいことができる、あるいは、こういうところがよくなるという具体的なメリットをお聞かせください。

 次に、国の情報システムについて伺います。

 新型コロナウイルス対策において、接触確認アプリCOCOAでは、アンドロイドでうまく動かないという不具合があり、さらにはそれが四か月間放置されるという二重に信じられない事態が起きました。ここまではいかないにしても、どんなに綿密な準備をしたシステムにも、必ず不具合あるいは使いづらいということが起こります。

 国の情報システムにおいても、自治体や国民の皆様から、特に導入初期には多くの苦情や改善提案がなされると思います。こうした改めるべき点をどのような仕組みで受け止め、そしてどのような仕組みでシステム改修につなげていくお考えでしょうか。デジタル大臣の御所見をお伺いいたします。

 また、これに関連して、特に地方公共団体情報システムについて総務大臣に伺いますが、情報システムの標準化を図る対象として、児童手当、生活保護などが含まれています。自治体によっては、独自の支援を加えている事例も多々あります。現在は独自のシステムを使ってこうした手続を行っている自治体が国のシステムをどの程度カスタマイズできるのか、お聞かせください。

 続いて、情報漏えいについてお尋ねいたします。

 ハッカーなどがシステム外部から侵入するというリスクに加え、ふだん使用している関係者自らが悪意を持ったり、あるいは悪意を持った外部の者から買収されたりして、情報を漏えいしてしまうという事態も想定されます。また、特に、今回は、デジタル庁を創設し、外部からの人材を多く採用すると伺っております。民間の人材を活用するということ自体は否定しませんが、情報管理という意味からは、かなりの注意を払う必要があります。

 マイナンバーが広く活用されるようになると、資産や健康状態、携帯や買物の履歴を通じて、趣味や移動、交友関係など、ありとあらゆる情報が流出してしまいます。こうした情報漏えいに対して、どのように予防し、また、漏えいしてしまった事案に対処するお考えでしょうか。

 デジタル庁の民間人材確保と情報管理をどう行っていくかということも含めて、デジタル大臣、御答弁をお願いいたします。

 デジタル社会は政治の在り方も大きく変えつつあります。

 情報伝達においては、マスメディアに加え、SNS、ユーチューブなどが大きな地位を占めるようになりました。個人が簡単に情報発信し、双方向のやり取りもできる時代となりました。

 近代民主政治においては、一々民意の集約ができないという想定で、代表者である議員を選び、議会で様々な決定をしてきたわけですが、現在では、国レベルでも、直接民主制、つまり有権者全員の投票で政策を決定するということが技術的には容易になってきています。

 自分の一票が国や地域の政策を決めていると有権者の皆様一人一人が思える仕組みをつくることは、民主主義において大きな意義を持っています。

 そのような中で、議員は、様々な情報や意見のやり取りを通じて、有権者の意見集約、合意形成を促し、直接民主制を支える役割も果たしていくべきと考えます。

 五十年後、百年後を描くのが私たち政治家の大きな仕事の一つです。デジタル社会における政治や議員の将来のあるべき姿、理想像について、最後に総理の御所見をお伺いし、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 森田俊和議員にお答えをいたします。

 総務省の事案についてお尋ねがありました。

 まず、私の家族が関係し、結果として公務員が倫理法に違反する行為をすることになったことについて、大変申し訳なく、国民の皆さんに改めておわびを申し上げます。

 政府としては、行政に対する国民の信頼を大きく損なう事態となったことは深く反省しないとならないと考えており、国民の信頼を回復し、期待に応えられるよう努めてまいります。

 お尋ねの事案については、総務省において、検証委員会を立ち上げるなど、第三者も入れて客観性も担保した上で、事実関係の確認を徹底し、国会の同意をいただいたメンバーで構成される国家公務員倫理審査会の指導も受けるなどしながら、ルールにのっとって、しっかりと対応してもらいたいと考えております。

 目指すべき国の形についてお尋ねがありました。

 役所に行かずともあらゆる手続ができる、地方にいても都会と同じような仕事や生活ができる、こうした社会を目指し、デジタル庁が司令塔となり、誰もがデジタル化の恩恵を最大限受けることができるよう、世界に遜色のないデジタル社会を実現したいと考えています。

 政府としては、こうした社会の実現に向けて、デジタル改革関連法案の成立に全力を尽くしてまいります。

 新しいデジタル技術や機器の導入に不慣れな方への配慮についてお尋ねがありました。

 デジタル改革には、誰一人取り残さないという視点が不可欠であります。デジタルに苦手意識がある方に十分に配慮をして改革を進めてまいります。

 例えば、誰にとっても使い勝手がよい行政サービスへの刷新や、新たな技術や機器に不慣れな方を念頭に、身近な場所で身近な人から機器、サービスの利用方法を学べる環境づくりを推進します。

 デジタル庁設置の具体的なメリットについてお尋ねがありました。

 これまで、政府内や自治体において、情報システムがばらばらに構築され、デジタル化の遅れが指摘されてきました。

 デジタル庁が、政府情報システムの統括を担い、関係予算の一括計上を行うことで、システムの効率的な調達、運営が可能となります。また、デジタル大臣が関係行政機関の長に対して勧告権を持ち、勧告した事項に関し特に必要があると認められたときには、内閣総理大臣に意見具申することで、迅速、強力な政策調整が可能となります。

 これらの仕組みを通じて、国、地方、民間を通じたデジタル化を強力に進めてまいります。

 デジタル社会での政治や議員のあるべき姿についてお尋ねがありました。

 国民の皆さんの声に徹底的に向き合い、政策を実現していくことが政治の役割です。デジタル時代にあっては、SNSなど新しい手段も積極的に取り入れ、多様な声に向き合っていくことが必要だと考えます。

 デジタル社会において、こうした声をいかに実現していくべきなのか、果たすべき政治の役割などについても、国会においてかんかんがくがくの議論がなされることを期待いたします。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) 国の情報システムの整備についてお尋ねがありました。

 自治体や国民の皆様から幅広く御意見や御提案をいただくことは重要であると考えており、政府においては、デジタル庁の創設に向けて、全国の自治体職員と省庁の職員が、地方自治体のシステムについてオンライン上で一緒に議論する場としてデジタル改革共創プラットフォームを立ち上げ、意見交換を行っているほか、広く国民の皆さんからアイデアを投稿、議論いただくデジタル改革アイデアボックスを設けており、今後はインターネット上の技術者のコミュニティーとも積極的にコミュニケーションを取っていこうと考えております。

 さらに、デジタル庁では、システムに詳しいエンジニアに参画してもらい、全ての国の情報システムを対象に統括、監理を行うこととしています。加えて、今年度から実施している一元的なプロジェクト管理により、プロジェクトの方向性、経費の妥当性、仕様どおりの調達、運用が行われているかなどを検証していますが、デジタル庁ではこれを更に強化していく考えであります。

 こうした取組を通じて、全体として質の高い、徹底した国民目線に立ったシステム開発をしてまいりたいと考えています。

 デジタル庁における情報漏えいの防止と対応についてお尋ねがありました。

 マイナンバーについては、マイナンバー法に規定する社会保障、税、災害対策の各分野の行政事務において利用されており、個人情報保護の観点から、行政機関等の保有する個人情報は従来どおり各行政機関などで分散管理することとしているため、どこかの機関が一元的に把握、管理を行うものではなく、個人情報が芋づる式に抜き出せない仕組みとなっています。

 その上で、現在進めているデジタル改革において、国民目線に立ったデザイン思考とセキュリティー・バイ・デザイン、すなわち使い勝手のよさと安全性の高さの両立を前提として、国民がデジタルの恩恵を安心して受けられるような社会を目指してまいります。

 そのため、デジタル庁にセキュリティーの専門チームを置き、内閣サイバーセキュリティセンターとも連携しつつ、デジタル庁が整備、運用するシステムの検証、監査の実施や、万が一事案が発生した場合の迅速な原因究明と対応などを担える体制を構築することにより、国民の重要な情報資産をしっかりと保護するために必要な対策を取ってまいります。

 また、デジタル庁として、民間人材募集の際、必須条件として国家公務員に求められる高い倫理観を持った者であることを求めるとともに、選考の中で組織文化への適合を確認すること、官民の出身を問わず職員が情報管理に当たって遵守すべき規程を適切に整備、運用すること、重要な情報についてアクセスできる職員を必要最小限に限定することなどによって、情報管理の徹底に努めてまいります。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 森田議員からの御質問にお答えをいたします。

 総務省職員の国家公務員倫理規程違反の事案について御質問をいただきました。

 この度は、度重なる総務省幹部職員の会食に係る事案により、国民の疑念を招く事態となっていることにつきまして、改めて深くおわび申し上げます。

 国会で多々御指摘のあった、行政がゆがめられたのではないかとの疑念に応えるべく、改めて、新谷副大臣をヘッドとする、検事経験者を含む第三者の有識者で構成される検証委員会を立ち上げることとしております。

 現在、客観的かつ公正に検証いただけるよう、具体的な検証内容や方法について有識者の御意見を伺っているところではありますが、早急に委員会を立ち上げられるよう、引き続き準備を進めてまいります。

 いずれにしても、こうした疑念を招くことが二度と起こらないよう、コンプライアンスを徹底的に確保し、国民の信頼回復に努めてまいります。

 次に、地方公共団体の情報システムの標準化について御質問をいただきました。

 総務省が今国会に提出している地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案では、事務処理の内容が各地方公共団体で共通し、統一的な基準に適合する情報システムを利用することが住民の利便性向上や行政運営の効率化に寄与する事務を対象に、情報システムの機能などについて、国が基準を定めることとしております。

 地方公共団体は、当該基準に基づき各事業者が開発したシステムを調達し、利用することとなりますが、この法律案では、条例などに基づく独自サービスについて、標準化の対象事務と一体的に処理することが効率的であると認めるときは、標準に準拠したシステムの機能などに一定の改変や追加を行うことを可能とする規定も盛り込んでおります。

 今後とも、関係府省とも連携し、地方公共団体の御意見を丁寧に伺いながら、標準化、共通化の取組を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 濱村進君。

    〔濱村進君登壇〕

濱村進君 公明党の濱村進でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりましたデジタル改革関連五法案につきまして質問いたします。(拍手)

 ノーベル経済学賞の受賞者でありますロバート・ソローは、一九八七年の書評の中で、製造業の現場にコンピューターが多数導入されたにもかかわらず生産性の伸びはむしろ鈍化しつつある状況について、コンピューター時代は至る所に表れているが、生産性の統計だけには表れていないと述べました。これはソロー・パラドックスと呼ばれ、情報化社会がもたらす楽観的な生産性向上への期待に疑問を投げかけ、その後の生産性論争へと発展していきました。

 米国では情報化投資による生産性向上が得られたという議論が大宗でありますが、生産性に対する貢献だけでなく、新たな付加価値が得られるものと考えます。

 では、情報化投資、すなわち現在で言うデジタル投資によって得られるべきものは何であるのでしょうか。

 私は、国民が豊かさを実感できることであると考えます。野村総合研究所の生活者一万人アンケート調査等によれば、日本人の生活満足度には、所得の多寡よりもデジタルの利活用度のインパクトが大きいという結果が得られております。

 菅総理は、昨年の政権発足後、即座にデジタル庁の創設を宣言されました。

 デジタル庁の設置は、行政改革と規制改革を進めるための突破口であります。デジタル庁を設置し、行政改革、規制改革を断行した上で、どのような社会を実現されようとしているのか、菅総理にお伺いいたします。

 今般のデジタル改革は、行政のデジタル化だけでなく、デジタル社会の形成が射程であります。菅総理も、我が国の経済社会の大きな転換につながる改革であり、今までにないスピードで取り組む必要がありますと述べておられます。社会構造の変化や急速な技術発展のスピードに規制やガバナンスのアップデートが追いついていないという事象を解消しなければなりません。

 デジタル庁が、行政の誤謬を恐れず、迅速な施策、アジャイルガバナンスの実行部隊として官民における好循環を創出することを期待しておりますが、そのためには、行政に対する国民からの信頼が必要不可欠であると考えます。

 行政の信頼性向上のため、プロセスの可視化を行うことは効果があると考えます。行政の課題認識とそれに対する施策やプロジェクトの進捗を可視化することについて、菅総理の御所見をお伺いいたします。

 公明党は、昨年の十一月十三日に、菅総理と平井大臣に、デジタル庁設置に向けての提言を提出いたしました。提言の副題は、「豊かな国民生活と誰ひとり取り残さない社会の実現のために」といたしました。こうした理念についてはデジタル社会形成基本法の基本理念に十分に反映されたものと理解しております。

 そこで、平井大臣に伺います。

 IT基本法を抜本的に改正するということではなく、廃止とした上で、デジタル社会形成基本法として新法を提出した理由について、IT基本法との違いとその狙いについてお伺いいたします。

 我が党の提言において、デジタル庁設置の目的については、デジタルによる恩恵を国民が実感することができ、データの利活用をもって国民の最大幸福を実現するための不断の努力を行うための司令塔となることを提言しております。

 今回のデジタル庁設置法案では、デジタル庁が政府におけるデジタル政策の司令塔として機能するように規定されているのか、平井大臣にお伺いいたします。

 これまで各省で行ってきたIT調達について、課題は何であると考えますでしょうか。

 私は、前職において、自治体業務のバックオフィスシステムの開発や提案依頼書や調達仕様書の作成支援、CIO補佐官等、官公庁向けのITコンサルティングを行っていた時期がありました。役所が自らIT調達を行うことの難しさを実感してきたわけであります。

 役所の人たちは、人事ローテーションがあり、一定年数を経過すると異動いたします。これではノウハウが蓄積いたしません。また、中には、ユーザーとしてのITスキルだけでなく、開発者としてのスキルレベルも持っていて、ベンダーの提案を適切に評価できる人もいらっしゃいましたが、ほんの一握りだけでありました。これは、行政だけでなく、民間においても同様のことが言えたわけでありますが、ここは日本のIT調達の弱点であると考えます。

 政府のIT調達について、どのように課題を認識し、改善するおつもりか、平井大臣に伺います。

 デジタル庁の成功のためには、人材の確保は欠かせません。

 提言にも記載いたしましたが、行政組織から改革意欲にあふれる人材を結集しつつ、民間からも役割を決めた上で採用を行い、プロパー職員だけでなく、各省庁や地方公務員からのローテーションメンバーとの混成に取り組んでいただきたいと考えております。

 また、デジタル庁の職員採用において、技官としての情報技術の採用枠、デジタル総合職を新設することで、政府のデジタル投資を、自ら開発、保守、運用ができる内製化に取り組む必要があると考えます。

 さらに、プロジェクトの進捗に応じて必要な職能も変わるため、専任だけでなく兼任も行えるなど柔軟な人材配置を行い、官民の人材のリボルビングドアを実現すること等、人材の確保、マネジメントの在り方について、菅総理にお伺いいたします。

 誰一人取り残さない社会を実現するため、政府調達においてはユニバーサルデザインを原則とすることは必要不可欠であります。

 あらゆる人にとって使いやすいを実現しなければなりませんが、現状、全ての人にとって使いにくい状況であります。また、使い方が分からない方、障害をお持ちで使うことができない方、デジタル機器が家庭にない方等、それぞれ使いにくい事情が違います。こうした状況を解決するため、障害をお持ちの方を含む一般のボランティアによるユーザーテストの実施は効果が期待されます。

 さらに、行政コストとして費用対効果と受益者の満足度の観点から、操作に困る方々には個別に支援スタッフが対応することも含め、代理申請の在り方や、そもそもの申請主義を見直すことも含めて、デジタルインクルージョンを実現する必要があります。こうした観点から、デジタル庁にはユーザーインターフェースやユーザーエクスペリエンスの専門部署を設置すべきと考えます。

 平井大臣に、情報アクセシビリティーの確保について御所見をお伺いいたします。

 デジタル改革は、人材にせよ、機器にせよ、国内で保有するデジタルリソースを行政のみに投入するのではなく、民間への好循環を生み出して経済成長につなげることが重要であります。これまでの守りのデジタル投資から攻めのデジタル投資に転換することに対する菅総理の御決意をお伺いいたします。

 EUにおいては、二〇一四年より、加盟国がどれだけデジタル化しているかを評価するために、デジタル経済社会指数を作成し、公表しております。これには、コネクティビティー、人的資本、インターネットサービス利用、デジタル技術の活用、デジタル公共サービスの五つの指標でポイントをつけております。

 EU加盟国において、一人当たりGDPと生活満足度の相関係数は〇・六二ですが、デジタル経済社会指数と生活満足度の相関係数は〇・八二と非常に高く、デジタル指数の高い国の国民の方が生活満足度が高い傾向にあることが分かっております。

 このような指標を参考に、デジタル化への取組を評価する仕組みの導入について、菅総理の御所見をお伺いいたします。

 平成十二年のIT基本法制定以来、二十年以上が経過いたしました。今こそ、デジタル投資でイノベーションによる経済成長を果たし、国民が豊かさを実感できる社会の形成のチャンスであることを申し上げ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 濱村進議員にお答えします。

 デジタル庁により実現する社会の姿についてお尋ねがありました。

 今回の感染症では、行政サービスや民間におけるデジタル化の遅れなど、様々な課題が浮き彫りになりました。私は、思い切ってデジタル化を進めなければ日本を変えることができない、そういう思いを強くしました。

 役所に行かずともあらゆる手続ができる、地方にいても都会と同じような仕事や生活ができる、こうした社会を目指し、デジタル庁が司令塔となり、誰もがデジタル化の恩恵を最大限受けることができる、世界に遜色のないデジタル社会を実現したいと考えています。

 こうした改革の実現に向けて、デジタル改革関連法案の成立に全力を尽くしてまいります。

 施策や進捗の可視化についてお尋ねがありました。

 デジタル社会形成基本法案において、デジタル社会の形成のため、政府が迅速かつ重点的に講ずべき施策について、施策の目標や達成期間を明記した重点計画を作成し、計画の進捗状況のフォローアップを行い、その結果を公表することとしております。

 こうした取組を通じて、国民の信頼獲得に努めつつ、デジタル庁が司令塔となり、世界に遜色のないデジタル社会を実現してまいります。

 デジタル庁における人材の確保、マネジメントの在り方についてお尋ねがありました。

 組織の要は人です。デジタル庁には、民間から百名規模の高度な専門人材を迎えます。国、地方、民間の人材が新しい発想でマネジメントを行い、成果を出してまいります。

 また、優秀なデジタル人材が国、自治体、民間を行き来することで、官民のデジタル化をダイナミックに進めてまいります。

 加えて、国家公務員の採用試験においてデジタル区分の創設を検討するなど、デジタル人材の育成、確保に努めてまいります。

 デジタル投資による経済成長についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、デジタル改革を民間における投資の促進につなげていくことで、経済の好循環につなげていくことが必要不可欠と考えております。

 例えば、今回の関連法案では、法人登記情報などの基本的なデータを民間で利活用しやすい形で提供することで、民間における新しいサービスの創出を促すこととしております。

 取組を評価する仕組みについてお尋ねがありました。

 デジタル社会形成基本法では、徹底した国民目線でデジタル化を進めることを明確にしており、その推進に当たっては、状況を適切に評価していく仕組みの構築が重要であります。

 デジタル庁では、御提案を踏まえつつ、例えば事業ごとの達成状況を公表するなど、デジタル化への取組を評価する具体的な仕組みを検討してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) 濱村進議員の質問にお答え申し上げます。

 デジタル社会形成基本法案についてお尋ねがありました。

 デジタル社会形成基本法案は、近年、データの活用の重要性が高まっていることに加え、今般の感染症への対応で明らかとなった行政のデジタル化の遅れ等の課題を踏まえ、社会のデジタル化を強力に推進するため、IT基本法を全面的に改める必要が生じたことから、これを廃止し、全く新しい基本法として制定を目指すものであります。

 この法案では、我が国経済の持続的、健全な発展と国民の幸福な生活の実現に寄与することを目指し、データの利活用により発展が可能となるデジタル社会を定義した上で、国民の立場に立ったサービスの価値向上・創出、災害・感染症への対応、アクセシビリティーの確保等に関する基本理念や基本方針を新たに規定するとともに、デジタル社会の形成に関する司令塔としてデジタル庁を設置することとしており、その目的、目指すべき社会、基本理念、遂行するための体制等において、IT基本法と異なるものとなっています。

 目指すべきデジタル社会の実現に向けて、基本法案を含めた関連法案の成立に全力を尽くしてまいります。

 デジタル庁設置法案についてお尋ねがありました。

 デジタル庁設置法案においては、デジタル庁に、各府省に対する勧告権などに裏づけられた強力な総合調整機能、マイナンバー等のID制度や公的機関が保有する社会の基本的なデータの整備に関する企画立案など、デジタル社会の形成に向けた企画立案機能、各府省、地方公共団体、準公共部門等の情報システムを統括、監理し、重要なシステムについては自ら整備する機能を持たせることとしています。

 こうした機能を最大限発揮するための組織として、デジタル庁を内閣に直接置くこととし、その長を内閣総理大臣とするとともに、内閣総理大臣を助け、デジタル庁の事務を統括するデジタル大臣や副大臣、政務官、デジタル監等を置き、また、全国務大臣等を議員とするデジタル社会推進会議を設置することとしております。

 これにより、デジタル庁は、今までにない強力なデジタル政策の司令塔として、社会全体のデジタル化を推進していくことができると考えています。

 政府のIT調達の課題と改善策についてのお尋ねがありました。

 情報システムの調達においては、専門家を養成しつつ、発注者側の能力を向上させ、オープンな技術の採用など実質的な競争性を高めることが課題であると考えています。

 本年九月の設置を目指すデジタル庁においては、民間人材を幅広く登用することを含め、体制を大幅に拡充すること、政府が共通して利用する基盤的なシステムについてはデジタル庁自ら整備することとしています。これにより、デジタル庁に専門的な知見が蓄積されるようにしながら、全ての政府情報システムを対象とした一元的なプロジェクト管理を強化することとともに、IT調達、契約方法の改善に向けた検討を行うなど、取組の実効性を高めてまいります。

 情報アクセシビリティーの確保についてのお尋ねがありました。

 デジタル改革には、誰一人取り残さないという視点が不可欠であり、御指摘のように、ユニバーサルデザインを前提とした、人に優しいデジタル化を目指し、情報アクセシビリティーを確保することが極めて重要です。

 こうした認識の下、デジタル社会形成基本法案において、国民が誰一人取り残されることなく、デジタル社会におけるあらゆる活動に参画することが可能となるよう、施策が講じられなければならない旨規定しています。

 これを実現するものとして、いわゆるUI、UXの向上など、国民の皆様にとって使い勝手がよい行政サービスへの刷新が必要であり、新設するデジタル庁においては、そのための専門の体制を整えていく所存です。

 誰一人取り残さないデジタル化を実現するため、情報アクセシビリティーの確保にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 塩川鉄也君。

    〔塩川鉄也君登壇〕

塩川鉄也君 私は、日本共産党を代表して、デジタル改革関連五法案について、菅総理に質問します。(拍手)

 第一に、デジタル改革と行政サービスの問題です。

 菅総理は、行政のデジタル化で住民サービスの向上を徹底すると述べました。しかし、このコロナ禍で露呈したのは、デジタル申請のみとした持続化給付金や家賃支援給付金、文化芸術継続支援金などで支援を受けられない事業者を多数生じさせたことです。

 また、この間、自治体を含め、デジタル化を口実にし、窓口の減少や紙の手続の取りやめ、対面サービスを後退させる事例が相次いでいます。

 行政サービスの向上のためには、迅速、簡便な手続としてデジタル化を生かすとともに、住民の多様で多面的な行政ニーズに応える対面サービスの拡充を図ることこそ、住民の選択肢を増やし、利便性の向上につながるのではありませんか。

 基本法案は、国、自治体の情報システムの集約、共同化を推進するとしています。

 政府は、五年後の二〇二五年度末までに、自治体の業務システムの統一、標準化を目指すとし、全国規模のガバメントクラウドを立ち上げ、クラウド移行などを容易にするための自治体の業務の標準化、特に、住民基本台帳や地方税などの主要な十七業務の標準化を推進するとしています。

 システムの統一、すなわち集約、共同化は、自治体の業務内容を国のシステムに合わせていくという問題を引き起こします。

 現に、自治体クラウドを利用しているある町では、三人目の子供の国保税免除をとの要望に対し、町長が、自治体クラウドを採用しており、町独自のシステムのカスタマイズ、仕様の変更はできないと答弁をしています。財政的にも人材の面からも、実質的にカスタマイズできなければ、自治体独自のサービスの抑制につながるのではありませんか。

 自治体業務は、自治体ごとに多様であり、住民ニーズも異なります。それなのに、国主導のシステムの集約、共同化によって、国が作った鋳型に過不足なく当てはまるものしか認められず、自治体を国の端末に変質させるものになるのではありませんか。自治体の自立性を失わせ、地方自治の侵害は認められません。

 第二に、何のためのデジタル改革なのかという問題です。

 基本法案は、AIやクラウドなどを利用し、個人データなどを活用する社会にしようというものです。

 政府は、データが競争力の源泉であり、国、地方の行政機関が最大のデータホルダーであるとして、行政のデジタル化の重要性を述べています。

 データ利活用の手段となるのが、国、自治体のシステムの集約、共同化とマイナンバー制度の拡大です。

 基本法案では、マイナンバーの利用の範囲の拡大を明記しています。

 これまで政府は、マイナンバー制度の利用範囲を税、社会保障、災害の三分野に限定し、分散管理で情報漏えいを防ぐことで、国による国民の情報の一元管理は行わない、国民総背番号制ではないとしてきました。整合性が取れないのではありませんか。

 整備法案では、税理士や医療、介護、社会福祉などの国家資格の保有者を手始めに、マイナンバーでの情報管理を進めるとしています。口座ひもづけ二法案では、本人同意が必要とはいえ、年金や児童手当などの受給者を手始めに、国が資産状況を把握し、税務調査などに使えるようにしています。

 また、政府のマイナポータルの入口の鍵機能を持つマイナンバーカードの普及を急務としています。これは、マイナポータルを通じて、国に、個人の所得、資産、医療、教育などあらゆる分野を丸ごとスキャンし、膨大なデータを集積しようとしているのではありませんか。

 集積された個人データはどのように活用されるのですか。本人にとって不利益となる利活用が行われないと言えますか。

 重大なことは、基本法案の基本理念に、個人情報保護の文言がないことです。

 現在のデジタル社会では、国家や企業などに集積された個人データが、本人の知らないところでやり取りされ、プロファイリングやスコアリングされ、本人に不利益な使い方をされる懸念があります。一昨年のリクナビ問題のように、プロファイリングなどが個人の人生に大きな影響を与える事態を引き起こしています。

 個人情報は、個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきであり、プライバシー権は、憲法が保障する基本的人権です。忘れられる権利や情報の自己コントロール権を保障する仕組みにしていくことこそ求められているのではありませんか。

 なぜ、基本理念に個人情報保護を入れないのですか。個人データの利活用を優先し、プライバシー権など人権保障を軽んじることになりませんか。国家による個人情報の集積が監視社会につながるのではないかという国民の不安にどう応えますか。

 さらに、個人情報の利活用、流通が進まない原因だとして、整備法案では、民間、行政機関などに分かれていた個人情報保護法制の統合、さらに、先進的な規制を先行させてきた自治体独自の個人情報保護条例を一元化しようとしています。

 自治体独自の基準の引下げで、プライバシー保護の後退、条例制定権を侵害する地方自治への介入になりはしませんか。

 最後に、デジタル庁についてです。

 設置法案は、政府全体のデジタル化に関する重要な基本方針を策定し、各行政機関に勧告するという強力な権限を持ち、データの利活用を推進する司令塔として、デジタル庁を位置づけています。国の省庁にとどまらず、補助金を出している自治体、医療機関、教育機関といった準公共部門に対しても、予算配分やシステムの運用について口を挟むことができるようになります。このような強い権限は、自治体や大学などの自主性を損なうものではありませんか。

 また、デジタル庁は、民間企業の人材を多数登用するとしています。しかし、内閣官房IT総合戦略室では、民間企業在籍者がその身分のまま非常勤職員として勤務をしていること、デジタル関連の委託事業において随意契約などが横行し、不透明な契約であることが問題となってきました。デジタル庁に民間企業在籍者を登用すれば、特定企業に都合のよいルール作りや予算執行が行われるのではありませんか。

 今、大問題となっている、総務省、農水省違法接待から始まる官民癒着と利権構造の全容解明こそ行うべきではありませんか。

 以上、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 塩川鉄也議員にお答えをいたします。

 対面サービスの拡充についてお尋ねがありました。

 デジタル社会の実現を目指す中で、行政機関においても、デジタル化による業務効率化を図ることにより、真に必要な窓口業務等に職員を振り向けることで、住民の利便性を高めていくことが可能になると考えています。

 御指摘のような利便性の後退といったことがないよう、各自治体の状況をよく見ながら、行政のデジタル化を進めてまいります。

 自治体のシステムの統一についてお尋ねがありました。

 自治体のシステムの統一、標準化の対象は、税や社会保障などに限られており、事務処理の内容が各自治体で共通し、創意工夫の余地が少ない事務であります。

 すなわち、自治体独自の創意工夫が期待されるサービスを対象とするものではなく、また、そのためのシステムはそれぞれ構築することとなります。

 したがって、自治体のシステムの統一、標準化の取組が、自治体独自のサービスを抑制するものとは考えていません。

 マイナンバーの利用範囲についてお尋ねがありました。

 マイナンバーの利用範囲は、マイナンバー法で定められており、現在、社会保障、税、災害対策の分野の事務が対象とされています。御指摘の条文は、こうした分野を追加するものではなく、これらの分野の中でマイナンバーを利用する事務を増やしていくことを内容とするものと承知をしています。

 いずれにしろ、行政機関が保有する個人情報については、一元管理はせず、個人情報の保護に万全を期してまいります。

 マイナンバー制度と個人情報についてお尋ねがありました。

 マイナンバー制度は、個人情報を特定の機関において一元管理するものではありません。

 政府としては、今後とも、個人情報の保護に万全を期した上で、マイナンバー制度の利活用と普及を促進してまいります。

 個人情報の保護についてお尋ねがありました。

 今回の法案においては、個人情報の保護の重要性を踏まえ、基本方針として、個人情報の保護を規定しております。また、基本理念として、情報の活用等により個人及び法人の権利利益等が害されないようにしなければならない旨を規定いたしております。

 このように、基本法案は、個人情報の保護や人権に十分配慮しており、また、国家による個人情報の集積や監視社会を目指すものではありません。こうした点について、しっかりと説明を尽くしてまいります。

 個人情報保護法の改正と地方自治体との関係についてお尋ねがありました。

 今回の改正は、全ての地方公共団体に適用される全国的な共通ルールを法律で規定するものですが、今回の改正後も、法律の範囲内で、条例により、必要最小限の独自の保護措置を講じることは可能としております。

 したがって、プライバシー保護の後退、条例制定権の侵害等の御懸念は当たらないものと考えています。

 デジタル庁の権限と自治体や大学等の自主についてお尋ねがありました。

 デジタル庁は、自治体、医療、教育などについて、各省庁と協力しながら情報システムの整備方針を定めることになっておりますが、あくまで効率的なシステム構築を目指すものであり、個々の自治体や大学等の業務運営に関与することを目的とするものではありません。

 したがって、それぞれの自主性が損なわれることは考えておりません。

 デジタル庁における民間人材の活用についてお尋ねがありました。

 デジタル改革を進めるためには、専門性の高い民間人材を積極的に活用する際に、民間企業との委託事業などにおいて公正な予算執行を確保することは当然だと考えております。

 具体的には、委託などの手続に係るルール作りについて透明性を確保するとともに、民間企業と利害関係が相反する際には当該業務から隔離するなど、厳正な予算執行を行ってまいります。

 総務省及び農林水産省の事案についてお尋ねがありました。

 お尋ねの事案については、両省において、検証委員会を立ち上げるなど、第三者も入れて客観性も担保した上で、事実関係の確認を徹底し、国会の同意をいただいたメンバーで構成される国家公務員倫理審査会の指導も受けるなどしながら、ルールにのっとって、しっかり対応してもらいたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 足立康史君。

    〔足立康史君登壇〕

足立康史君 日本維新の会の足立康史です。

 我が党を代表し、デジタル関連法案について質問します。(拍手)

 間もなく東日本大震災から十年を迎えます。

 私は、大学卒業後、二十年余り、現在の経済産業省に勤務し、まさに東日本大震災に伴い発災した東京電力福島第一原発事故を機に辞職し、日本の原子力政策等の抜本改革のために、地元大阪で政治活動を始めました。

 そうした経緯から、発災時に政権にあった民主党、そして現在の自公政権の原子力政策には、ふんまんやる方ない思いを抱き続けています。

 本日はデジタル関連法案の審査ですから多くを述べることはいたしませんが、一点だけ、この本会議場で確認しておきたいことがございます。

 二〇一一年八月に公布、施行された原子力損害賠償支援機構法附則六条三項には、政府は、原子力政策における国の責任の在り方等について検討を加え、その結果に基づき、原子力に関する法律の抜本的な見直しを含め、必要な措置を講ずるものとするとあります。

 総理に伺います。

 原子力政策における国の責任の在り方等に関する検討は行われたのでしょうか。行われたのであれば、その結果に基づき、原子力に関する法律の抜本的な見直しは実行されたのでしょうか。福島第一原発事故の教訓を十分に踏まえた原子力政策の抜本的な見直しは既に完了したのか、現在も見直し作業中なのか、あるいはこれから検討するのか、政府の認識を確認させてください。

 もちろん、この支援機構法は、民主党政権、それも菅直人内閣において閣議決定された無責任な法律だから忠実に実行する必要などないとお考えなのであれば、共感する部分もないとは言いませんので、そこは正直におっしゃっていただければと存じます。

 さて、二〇一二年末に総選挙で初当選をさせていただいた直後の初めての通常国会、二〇一三年の通常国会において、付託された最重要法案の一つが、第二次安倍内閣が閣議決定したマイナンバー関連四法案でありました。

 当時、厚生労働委員であった私は、日本医師会等が求めていた医療等IDに反対する立場から質問したのを思い出します。

 その私の考えのとおり、医療等IDという誇大妄想は退けられ、より合理的な被保険者番号の個人単位化が進められ、さらには、今月からマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになるのを見て、感慨を新たにしています。

 そこで、総理に伺います。

 そもそも、医療等IDという発想自体が、分散管理を基本とするマイナンバーの仕組みに対する無理解に基づくものであり、被保険者番号の個人単位化に比べてコストがかさむばかりであり、医療等IDでなければ実現できないといった特段のベネフィットはないと考えますが、いかがでしょうか。

 日本医師会や共産党がまき散らしたマイナンバーに係る誤解を排する観点から、改めて政府の見解を御紹介いただければ幸いです。

 他方、全く進んでいないのが、外国人の在留管理への活用であります。

 二〇一八年の臨時国会で成立した入管法の大改正に当たって、我が党は、深刻な偽造が蔓延する在留カードに代えて、マイナンバーカードの携帯義務化を提案し、与党との修正協議の結果、個人番号等の利用の在り方について検討を加えると法律に明記しました。

 そこで、総理に伺います。

 入管法の検討規定には、法律の公布後、速やかに検討するとありますが、外国人の在留管理におけるマイナンバーカードの活用について検討されましたか。

 検討された結果、マイナンバーカードを在留カードとして活用しないという結論になったということであれば、マイナンバーカードを健康保険証として利用できても在留カードとしては利用できないという理由を御教示ください。

 以上、デジタル関連法案が審議入りするに当たって、むしろその前にどうしても確認しておかなければならない事項について質問しましたが、時間があと三分ありますので、最重要事項三点について総理に伺い、私の質問とさせていただきます。

 第一は、マイナンバーと預貯金口座のひもづけ義務化をなぜ見送ったのかです。更に言えば、今後、全ての預貯金口座とマイナンバーとのひもづけ義務化を改めて検討の俎上にのせる余地があるのかないのか、御見解をお示しください。

 第二は、二月五日の予算委員会での私の質問に対し、給付つき税額控除制度の課題として、総理は、マイナンバー制度が普及してもなお低所得者の所得を正確に把握することは難しいとおっしゃいました。私は、その真意をお尋ねします。

 所得や資産の正確な把握は、給付つき税額控除といった特定の政策案に付随する課題ではなく、日本の税と社会保障に係る根源的な課題ではありませんか。そうであれば、総理御指摘の課題は、政府・与党による現行制度、プランAと、私たち日本維新の会による新所得倍増計画、プランBとを比較した場合におけるプランBに特有の課題ではないと考えますが、いかがでしょうか。

 私は、自公政権が築いてきた社会保障制度と我が党が提案する社会保障制度とのいずれを選ぶかは、純粋に政策判断、政策選択の問題であり、議論の入口で、私たちの政策、プランBには様々な課題があるから検討できないという総理の御答弁は、意を尽くされたものではなかったと私は考えていますが、いかがでしょうか。お時間の許す限り、丁寧に御答弁を賜れれば幸いです。

 第三は、デジタル政策と経済産業制度、社会保障制度との関係です。

 私は、経済社会のデジタル化は、手段であって目的ではないと考えています。目的は、経済社会を時代に即してトランスフォームすることであり、活力ある経済と安心の社会を築くことであると考えています。

 我が党は、そうした観点から、マイナンバーのフル活用を前提とした経済社会の大改革プラン、新所得倍増計画(仮)を公表し、党員、支持者の皆様始め、広く国民の皆様の御意見を賜っているところでありますが、菅内閣は、経済社会のDX、デジタルトランスフォーメーションを通じてどのような経済社会を築こうとされているのでしょうか。最後に菅内閣の中期経済社会ビジョンについてお伺いし、私の質問といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 足立康史議員にお答えをいたします。

 原子力政策についてお尋ねがありました。

 福島第一原発の事故後、御指摘の機構法等の規定の趣旨も踏まえ、それまでに国が描いてきた原子力政策を含むエネルギー政策は白紙から見直しをし、原発依存度を可能な限り低減する方針を定めました。

 具体的には、原子力に関する法律を抜本的に改正し、世界で最も厳しい規制基準の策定、原子力災害に備えた避難計画の充実、事業者による損害賠償方針の明確化といった措置を講じております。

 今後も、原子力政策については、内外の情勢変化を踏まえながら、不断に見直しをしてまいります。

 いわゆる医療等IDについてお尋ねがありました。

 御指摘の医療等IDは、医療分野での情報の利活用を推進していくに当たり、プライバシー保護を十分に確保する観点から、個人を識別するIDとして、当初、厚生労働省において検討が行われていたものであります。

 一方、こうした仕組みについては、システム構築が新たに必要となるほか、医療機関側においてシステム改修が必要となることから、オンライン資格確認の導入に向けて整備した、個人単位化した医療保険の被保険者番号を活用することとしたものであります。

 政府としては、引き続き、この仕組みを活用して、医療・介護分野のデータの連結精度を向上させ、ビッグデータとしての活用を進めてまいります。

 外国人の在留管理についてお尋ねがありました。

 在留管理の在り方については、マイナンバーカードの利用も含め、幅広く検討を進めてきましたが、常時携帯義務のある在留カードが在留管理を行う上で有用であることなどを踏まえ、対応する必要があると認識しております。

 政府としては、在留カードの番号等の利用の在り方について、改正入管法の附則の規定も踏まえつつ、本年中に結論を得るべく、法改正やシステム開発等、必要な措置につき検討を進めてまいります。

 マイナンバーと預貯金口座のひもづけについてお尋ねがありました。

 預貯金口座にマイナンバーを付番することによって、公正な給付の実現や、所在の分からない口座情報の把握に資するようになります。

 そのため、今回提出した法案では、新規口座開設時に金融機関がマイナンバーの告知を求めることを義務づけることとしています。まずは本法案を成立させていただき、円滑に実施してまいります。

 給付つき税額控除についてお尋ねがありました。

 所得や資産の正確な把握は、税や社会保障に係る課題と考えております。

 それを前提とした上で、給付つき税額控除については、生活保護など、同じ目的の制度と比較する中で必要性を検討すべきであり、マイナンバーが普及したとしても低所得者の所得を正確に把握することは難しいことなど様々な課題があることを踏まえれば、慎重に検討していく必要があると考えております。

 経済社会のビジョンについてお尋ねがありました。

 次の成長の原動力をつくるために、グリーンとデジタルを車の両輪として改革を進め、産業構造転換をし、投資を促し、雇用を増やします。

 特にデジタル化については、行政のデジタル化を実現するため、今後五年で全国の自治体システムの統一、標準化を目指すとともに、民間におけるデジタル化を促し、経済の好循環を実現します。

 さらに、地方の所得を引き上げ、テレワークなどにより、地方にいても都会と同じような生活ができる、そうした社会を実現します。とりわけ、農業を地域の成長産業として、輸出で稼げる農業を育成します。

 こうした政策により、ポストコロナにおいて、我が国経済が再び成長して世界をリードし、世界の中でも安全、安心の魅力ある国づくりをしてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(赤松広隆君) 岸本周平君。

    〔岸本周平君登壇〕

岸本周平君 国民民主党・無所属クラブの岸本周平です。

 会派を代表して、質問をいたします。(拍手)

 あさって、三月十一日に、東日本大震災から十年目を迎えます。

 改めて、お亡くなりになられた全ての方々に哀悼の誠をささげますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 さて、二〇〇〇年にIT基本法ができました。電子政府ということが言われ始めてから二十年がたちました。

 この間、私自身も、通産省の情報処理システム開発課長として電子政府を担当した後、政治家として、二〇一三年のマイナンバー法や内閣法の改正による政府CIOの設置、二〇一四年のサイバーセキュリティ基本法、二〇一六年の官民データ活用推進基本法、そして二〇一九年のデジタル手続法など、議員立法も含め、いろいろな法律に関わってまいりました。

 これらの仕組みの下、これまでハード面、例えばネットワークや電子申請システムの整備など、具体的なことは一定程度進んでまいりました。

 一方で、昨年来の新型コロナウイルス感染症の拡大は、マイナンバーカードの普及率の低迷、オンラインによる給付金申請手続の不具合、自治体ごとのシステムの乱立や教育、医療のデジタル化の遅れなど、二十年たっても我が国のデジタル化には多くの課題が残っていることを浮き彫りにしました。

 また、デジタル化を進める過程で、二千個問題と呼ばれるように、自治体ごとに個人情報保護ルールが異なることが地方のデジタル化を阻害している問題も明らかになりました。政府に設置したCIO制度についても、せっかくの強い権限にもかかわらず、その活用が十分に行われていない状況にあります。

 このように、残念ながら、我が国は、世界のデジタル先進国から大きな差をつけられている状況であります。

 昨年九月にデジタル改革担当大臣に平井大臣が就任されて、こうした長年の課題を一気に解決するべく、デジタル庁の設置、デジタル社会形成基本法の制定、官民の個人情報保護ルールの一元化、預貯金口座へのマイナンバーの付番の促進などを含むデジタル改革関連法案が作られました。

 ここまで来たことには非常に感慨深いものがあります。いよいよこれから、すっかり遅れてしまった我が国のデジタル化を強力に進めていくことが期待できます。

 それでは、まず、デジタル庁についてお尋ねします。

 デジタル化はかけ声だけでできるものではなく、また、デジタル化するとしても、単に既存のものをデジタルに置き換えるというだけでは何の意味もありません。例えば、政府のデジタル化を行う際には、業務改善をまず行い、行政のスリム化を行うことが当然なのですが、これまでは必ずしもできていませんでした。愚かな政府が、愚かな電子政府になっただけであります。

 さらに、デジタル化については、非常に専門的な知見が必要となります。しかし、情報システムの整備一つを見ても、これまでの霞が関では、デジタルに詳しい人材がいないということもあり、ベンダーに丸投げでした。

 真にデジタル化を進めるのであれば、各府省庁の抵抗を排除するため、デジタル化を進めるための業務を明確にし、デジタル庁に権限や予算をしっかりと与えつつ、その中に民間人を始めとする優秀なデジタル人材を多く抱える必要があります。

 そこで、菅内閣総理大臣にお伺いいたします。

 デジタル庁が社会全体のデジタル化の司令塔となるべく、どのような業務を担当させるのか、そのためにどのような権限を与えるのか、また、デジタル庁において民間人材をどのように活用するつもりなのか、お答えください。

 次に、地方のデジタル化について、平井大臣にお伺いします。

 デジタル化については、汎用的なものはクラウドに載せ、多くの主体が使うことで効率性が高まります。一方で、地方公共団体については、地方分権とのバランスを取ることも必要なことです。

 そこで、デジタル庁は地方公共団体のシステムにどのように関与するのか、お答えください。

 また、我が国では、先ほども申し上げましたが、地方自治体ごとに個人情報保護ルールが異なります。二千個問題とも呼ばれているように、地方のデジタル化やデータの利活用を阻害するようなことが起こっています。

 例えば、最近でも、地方公共団体の多くの条例にあるオンライン結合制限の規定が、政府の進めているGIGAスクール構想の推進や新型コロナウイルス感染症の感染者の共有システムであるHER―SYSの活用のハードルとなりました。

 今回、個人情報保護法を改正して、地方公共団体に直接、国の法律を適用することによって、いわゆる二千個問題は解決するのかどうか、お答えください。

 さて、冒頭にも申し上げましたように、あさってで東日本大震災から十年を迎えます。自然災害や感染症の流行などの不測の事態は、いつでも生じ得るものと覚悟して、準備を怠らないようにすることは、今を生きる我々の責務です。これからつくろうとするデジタル社会では、不測の事態があっても、安全、安心な暮らしが確保されるようにしていく必要があります。

 その大前提として、デジタル社会を支える基盤であるマイナンバーカードの普及を進める必要がありますが、いまだに四人に一人程度の普及にとどまっております。

 デジタル社会の実現に向けて、更なる普及が必要だと考えますが、今回の法改正を通じて、今後、どのようにマイナンバーカードの普及を進めていくお考えか、武田総務大臣にお伺いします。

 また、今回のデジタル改革関連法案の中で、政府は、預貯金口座を国に登録することを求める法案を提案していますが、これによって災害などの緊急時の対応にどのように生かせるのでしょうか。昨年の特別定額給付金のような混乱は生じなくなるのでしょうか。平井大臣にお尋ねします。

 また、国への口座の登録とは別に、金融機関においてマイナンバーを付番すること、これは長年の課題となっております。今般のコロナウイルスによって生活が激変してしまった方も多くいらっしゃる中で、真に救うべき方に手を差し伸べて、その一方で、不正を許さない、公平公正な社会保障制度や税制を実現していくことが不可欠です。こうした理想の実現に向けて、一つの基礎となるものがマイナンバーの付番です。

 マイナンバーの預貯金口座へのひもづけ、これは、今回、政府の提案する仕組みによって本当に広まるのでしょうか。私は、全ての銀行口座をマイナンバーにひもづけするよう義務化すべきだと考えますが、平井大臣、いかがでしょうか。

 最初に申し上げましたとおり、私も含め、我が国のIT戦略に関わってきた多くの仲間が主張してきたことが、今回の法案によって一歩前進しようとしている、そのことは大変うれしいことであります。

 しかし、これは終点ではありません。私たちは、まさにスタート地点に立ったばかりであります。これから、デジタル庁が、社会全体のデジタル化の司令塔として、我が国のデジタル化をリードしていくことを期待いたしまして、私の代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅義偉君登壇〕

内閣総理大臣(菅義偉君) 岸本周平議員にお答えをいたします。

 デジタル庁の業務、権限、民間人材の活用についてお尋ねがありました。

 デジタル庁は、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は三千億円の予算を持つ組織として、国全体のデジタル化を主導します。また、政府情報システムを統括するほか、自治体のシステムの統一、標準化、マイナンバーカードの普及などを担うことになります。

 組織の要は人です。デジタル庁には、民間から百名規模の高度な専門人材を迎えます。国、地方、民間の人材が新しい発想でマネジメントを行い、成果を出してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 岸本議員からの御質問にお答えをいたします。

 本法案を通じた今後のマイナンバーカードの普及策について御質問をいただきました。

 マイナンバーカードは、オンラインで確実な本人確認ができるデジタル社会の基盤となるものであり、令和四年度末にはほぼ全国民に行き渡ることを目指し、その普及を進めております。

 本法案では、マイナンバーカードに関し、郵便局における電子証明書の発行、更新、電子証明書のスマートフォンへの搭載、本人同意に基づく署名検証者への最新の住所情報等の提供、転出転入手続のワンストップ化、地方公共団体情報システム機構に対する国のガバナンス強化などを行うこととしております。

 これらにより、マイナンバーカードの利便性の抜本的向上及び発行、運営体制の強化を図り、マイナンバーカードの普及促進を更に加速してまいります。(拍手)

    〔国務大臣平井卓也君登壇〕

国務大臣(平井卓也君) 岸本周平議員にお答え申し上げます。

 デジタル庁の地方公共団体システムへの関わりについてのお尋ねがありました。

 デジタル庁は、国の情報システムだけでなく、地方公共団体の情報システムの整備及び管理に関する基本的な方針を定めることとしています。

 地方公共団体の情報システムについて、当該方針に沿って整備、管理することを推進することにより、システムの統一、標準化を進め、各団体がばらばらに対応することによる人的、財政的負担を軽減し、地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるようにするとともに、新たなサービスの迅速な展開を図ってまいります。

 具体的には、デジタル庁が、情報システムの基盤として全国的なクラウドサービスを地方公共団体に提供し、また、国が地方公共団体の情報システムに対する補助金等を支出する事業について統括、監理することとしています。

 これらの取組を進めることにより、地方公共団体と一緒にデジタル改革を進めてまいります。

 個人情報保護法の改正による、いわゆる二千個問題の解決についてのお尋ねがありました。

 社会全体のデジタル化に対応した個人情報保護とデータ利活用の両立が要請される中、いわゆる二千個問題として、地方公共団体ごとの条例の規定やその解釈が異なることがデータの利活用の支障となり得る、条例がないなど、求められる保護水準を満たさない団体がある等の指摘があり、データの利活用を円滑化するためのルールや運用の統一を求める声が高まっていました。

 今回の個人情報保護法の改正により、法律で規定する全国的な共通ルールが全ての地方公共団体に適用され、個人情報保護委員会がその解釈を一元的に担うこととなるため、いわゆる二千個問題は解消されるものと考えております。

 公金受取口座登録法案についてのお尋ねがありました。

 本法案は、国民の皆様に任意で公金受取のための口座をマイナンバーとともに登録していただき、その口座情報を災害や感染症などの緊急時の給付金の支給等に利用できるようにするものであります。

 これにより、緊急時の給付金の申請においては、口座情報の記載や通帳の写し等の添付、行政機関における口座情報の確認作業等を不要にすることができます。

 加えて、昨年の特別定額給付金の事務においては、行政機関でマイナンバーが利用できず、申請者と給付対象者の照合作業が非効率なものになっていましたが、本法案では、緊急時の給付金の支給事務等にマイナンバーが利用できることとしています。

 これらにより、今後の災害や感染症などの緊急時の給付金等では、申請手続の簡素化や給付の迅速化を実現し、国民の命を守り、真に必要なサービスをお届けするというマイナンバー制度の趣旨を体現していきます。

 預貯金口座個人番号利用申出法案についてのお尋ねがありました。

 本法案は、国民の皆様の負担軽減のための制度として、希望者による付番の申出としており、国民に義務づけることはしていません。一方で、金融機関への義務として、新規口座開設時等の際に、国民に対して本人同意を前提としてマイナンバーをお尋ねするという義務を規定しています。

 これまで、特定口座などの証券口座は口座名義人本人に告知義務を付しましたが、付番が進まなかったこともあり、罰則がない義務化の効力には疑問もあります。結果的にどうすれば一番付番がスムーズに進むかということが重要であり、利用者のメリットを充実させることで実効性確保を高める観点から、希望者を対象としています。

 預貯金口座への付番を促進するため、付番の申出のしやすさ、その結果受けられる具体的な国民の皆様のメリットを充実させることとし、一回の付番の申出を行うことにより、本人が他の金融機関にお持ちの口座についても、個別に申出をする必要がなく、預金保険機構を通じて自動的に付番がされる仕組みや、相続時や災害時に口座の所在を的確に確認できる仕組みを規定し、付番の実効性確保を高めることとしています。

 預貯金口座への付番をすることは非常にメリットがあることであって、そういうメリットを十分に説明することが重要であり、国と金融機関が密接に協力し、付番の申出の具体的なメリットと併せて、付番の申出によりデメリットが生じないことも分かりやすく金融機関の窓口等で国民に対し説明し、付番を促進してまいります。(拍手)

副議長(赤松広隆君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(赤松広隆君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十一分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  菅  義偉君

       総務大臣    武田 良太君

       国務大臣    井上 信治君

       国務大臣    平井 卓也君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 坂井  学君

       内閣府副大臣  藤井比早之君


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