衆議院

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第15号 令和3年3月25日(木曜日)

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令和三年三月二十五日(木曜日)

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  令和三年三月二十五日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

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 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、内閣提出、少年法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。法務大臣上川陽子君。

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 少年法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 近年の法律改正により、公職選挙法の定める選挙権年齢は満二十年以上から満十八年以上に改められ、また、民法の定める成年年齢も二十歳から十八歳に引き下げられることとなり、十八歳及び十九歳の者は、社会において、責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場となりました。

 刑事司法における取扱いにおいては、十八歳及び十九歳の者は、成長途上にあり、可塑性を有する存在である一方で、このような社会情勢の変化を踏まえますと、これらの者については、少年法の適用において、その立場に応じた取扱いをすることが適当であると考えられます。

 そこで、この法律案は、少年法を改正して、十八歳以上の少年の特例等を定めるとともに、関係法律を改正することにより、所要の措置を講ずるものであります。

 この法律案の要点を申し上げます。

 第一は、十八歳以上の少年の保護事件について、家庭裁判所が原則として検察官に送致しなければならない事件に、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であって、犯行時十八歳以上の少年に係るものを加えることとするものであります。

 第二は、十八歳以上の少年の保護事件について、ぐ犯をその対象から除外するとともに、家庭裁判所による保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲においてしなければならないこととするものであります。

 第三は、十八歳以上の少年について、検察官送致の決定がされた後の刑事事件の特例に関する少年法の規定は、原則として適用しないこととするものであります。

 第四は、十八歳以上の少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合には、略式手続による場合を除き、記事等の掲載の禁止に関する少年法の規定を適用しないこととするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の趣旨であります。(拍手)

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 少年法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。山田賢司君。

    〔山田賢司君登壇〕

山田賢司君 自由民主党の山田賢司です。

 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、ただいま議題となりました少年法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、本日午前七時過ぎ、北朝鮮が度重なる国連安保理決議に反し弾道ミサイル二発を日本海に向けて発射したことに、強く抗議いたします。

 北朝鮮には、安保理決議の履行遵守を求めるとともに、速やかに日本人拉致被害者を返せと強く求めます。

 質問に入ります。

 選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げに伴い、十八歳及び十九歳の者は、我が国社会において、大人としての権利を有し、責任を負うべき立場となるに至りました。

 こうした状況を踏まえ、少年法における少年の年齢などの在り方については、我が党でも長らく議論してきました。

 少年法を含め、刑事司法制度は、国民の理解、信頼に支えられるものでなければなりません。犯罪には被害者がいます。加害少年について、その将来を考えて保護矯正を図るという少年法の意義は理解しますが、それは被害者の理解が不可欠です。何の罪もなく命を奪われ、あるいは一生消えない傷を負わされる被害者は、理不尽に奪われた生活や将来を返してもらえるわけではありません。

 これまで以上に犯罪被害者の心情に寄り添い、より一層支援を充実させる必要があると考えますが、法務大臣の御所見を伺います。

 少年法の適用年齢引下げに反対される方々の御意見の中には、少年は未熟で可塑性に富むから大人として扱うべきではないというものがあります。

 しかし、十九歳までは未熟で可塑性があるけれども、二十歳になるとそれがなくなるというものではありません。何歳であろうが、きちんと罪を償って、社会復帰している大人は大勢います。先日の国連犯罪防止刑事司法会議、京都コングレスにおいても、保護司に代表される我が国の更生保護制度の意義を世界に紹介したところです。

 少年院なら更生できるけれども、刑務所に入ると更生できないというのであれば、むしろ現在の刑務所における矯正プログラムを見直す必要があると考えますが、法務大臣の御認識を伺います。

 少年法に対しては、罪を犯しても処罰されないとか、非行少年を甘やかしているというイメージが世の中にあります。しかし、実は、少年法は、刑事手続より広範な保護処分が可能であり、犯罪の未然防止や本人の矯正を図る制度が設けられています。私は、むしろ少年法をもっと積極的に活用するべきと考えます。

 例えば、学校における犯罪。

 先日、いじめがきっかけで不登校となった御本人、保護者の方、複数からお話を伺いました。

 いじめと一言でくくられますが、その実態は、殴る蹴るの暴行を受ける、金品を奪われる、裸にされて辱めを受けるといった陰湿な犯罪が行われています。教員の手に負えず、学校側は、見て見ぬふりをするどころか、被害をなかったことにしようとしたそうです。

 少年の凶悪犯罪は増えていないと言われますが、見えないところで少年犯罪の被害者は苦しんでおり、加害少年が野放しになっているのではないでしょうか。本来、公務員には犯罪の告発義務があり、これらを見過ごすことは許されません。

 こうした学校内での犯罪こそ、むしろ積極的に少年法を活用すべきです。非行少年に対して、早い段階で性格の矯正や環境の調整に関する保護処分を行うことは、被害者を守り、安全で安心して学べる教育環境を確保することに加えて、非行少年本人の健全育成のためにも必要であると考えますが、文部科学大臣の御所見を伺います。

 本法律案では、十八歳、十九歳の者について、全件、家庭裁判所の判断を経ることとした上で、重大な犯罪については原則検察官送致とする、いわゆる原則逆送の対象となる事件の範囲を拡大することになりますが、その趣旨と、併せて、新たに原則逆送の対象となる主要な罪名の例について、法務大臣に伺います。

 実際に逆送するか否かは個別事案ごとに家庭裁判所が判断しますが、本改正の趣旨を踏まえ、刑事責任を負うべき事件では、きちんと逆送決定がされる、確かな運用を期待します。

 次に、本法律案では、十八歳、十九歳の者について、公判請求された場合には、いわゆる実名報道を解禁することとしています。他方、被害者の実名やプライバシーは無制限にさらされています。

 非行少年の実名を公表するか否かより、むしろ被害者のプライバシー保護を確保する施策が必要だと考えますが、それを踏まえて、今回の実名報道の解禁についての法務大臣の御見解を伺います。

 今回の法案は、罪を犯した十八歳、十九歳の者をいかに取り扱うべきかという大きな課題について最初の一歩を踏み出すものですが、今後とも、社会情勢や国民意識を踏まえつつ、制度の在り方を不断に検討していくべきです。

 本法律案の附則において、施行から五年経過後のいわゆる検討条項を設ける趣旨について、法務大臣の答弁を求めます。

 本法律案の速やかな成立に向けて、議員各位の御賛同を求めて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 山田賢司議員にお答え申し上げます。

 まず、犯罪被害者支援施策の充実の必要性についてお尋ねがありました。

 誰もが、犯罪に巻き込まれ、被害者になり得るのであって、被害者やその御家族の方々が抱える問題は、決して人ごとではなく、自分たちの問題として捉えるべきものと認識しています。

 犯罪被害者の支援のための各種取組に当たっては、被害者やその御家族の方々の御意見に常に耳を傾けながら、不断にその内容を見直し、改善していくことが必要です。

 政府においては、犯罪被害者等基本法の理念に基づき、施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本計画を定め、その計画を数次にわたり見直しながら、被害者等の支援のための各種取組を進めてきたところであり、引き続き、更なる推進、充実に努めてまいりたいと考えています。

 次に、刑務所における処遇の在り方についてお尋ねがありました。

 少年院においては、健全育成の理念に基づき、対象者の個別の問題性及び生育環境等に応じたきめ細やかな矯正教育を行っていることから、若年者の再犯防止に一定の効果を上げているものと認識しています。

 一方で、刑務所においては、例えば、若年受刑者について、その可塑性に期待し、積極的な働きかけを行うなど、個々の資質及び環境に応じて矯正処遇を行っているところです。

 少年院と刑務所では、対象者の犯罪、非行の程度、収容期間等の点で違いがあり、一概に少年院と刑務所における処遇効果を比較して申し上げることは困難です。

 その上で、法制審議会の答申においては、若年受刑者について、少年院の知見等を活用することとするなど、刑務所の受刑者処遇の更なる充実を図ることも求められているため、その実施に向け、速やかに検討していきたいと考えています。

 次に、十八歳以上の少年に係る原則逆送の対象事例についてお尋ねがありました。

 十八歳及び十九歳の者は、公職選挙法及び民法の改正等により、重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となりました。

 これらの者が重大な犯罪に及んだ場合には、十八歳未満の者よりも広く刑事責任を負うべきものとすることが、その立場に照らして適当であり、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保という観点からも必要であると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年について、原則逆送事件の範囲を拡大し、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件を追加することとしています。

 新たに原則逆送の対象事件となる主な罪名としては、例えば、現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪などがあります。

 次に、十八歳以上の少年に係る実名報道の取扱いについてお尋ねがありました。

 実名報道を含むいわゆる推知報道の禁止を定める少年法第六十一条の趣旨は、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり社会生活に影響を与えるのを防ぎ、その更生に資することにあります。

 しかし、推知報道の禁止は、憲法により保障されている報道の自由を制約する例外的な規定である上、例えば、犯罪被害者など他の関係者については、推知報道を禁止する規定は設けられていないところです。

 十八歳以上の少年について推知報道を一律に禁止することは、先ほど答弁したように、責任ある主体としての立場に照らし、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点からも、適当でないと考えられます。

 その上で、十八歳以上の少年についても、逆送され、公判請求された場合には、公開の法廷で刑事責任を追及される立場となることに鑑み、本法律案では、その時点から推知報道の禁止を解除することとしています。

 最後に、施行から五年後の検討の規定についてお尋ねがありました。

 本法律案が成立、施行されると、十八歳及び十九歳の者に係る事件の手続などの在り方については現行制度と相応に異なるものとなり、また、本改正や成年年齢の引下げに係る改正民法の施行後、社会情勢や国民意識を踏まえて、制度の在り方を検討することが必要であると考えられます。

 そこで、施行後五年が経過した段階で制度の在り方について検討する機会をあらかじめ設けておくことが適当であると考えられることから、本法律案では、附則にその旨の規定を設けることとしています。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣萩生田光一君登壇〕

国務大臣(萩生田光一君) 山田議員にお答えいたします。

 学校内での児童生徒の犯罪に対する積極的な少年法の活用についてお尋ねがありました。

 いじめ事案のうち、加害児童生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められる場合を始め、学校内における犯罪行為に対しては、被害児童生徒を徹底して守り通すという観点から、教職員が毅然と適切な対応を取ることが重要です。

 文部科学省としては、加害児童生徒について、その児童生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められる場合や、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、警察への通報を含め、適切な連携が重要であるということを周知しているところです。

 他方、児童生徒の問題行動については、教育的な指導により改善が見込まれ、そのような指導が児童生徒の将来のためにも効果的である場合は、警察等の関係機関と連携しながら、学校において教育的な指導によって改善措置を講ずることが考えられます。

 文部科学省としては、引き続き、全ての子供たちが安心して学べる環境を確保するため、学校内における犯罪行為に対する教職員の毅然とした適切な対応を促してまいりたいと思います。(拍手)

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議長(大島理森君) 池田真紀君。

    〔池田真紀君登壇〕

池田真紀君 立憲民主党の池田真紀です。

 会派を代表し、議題となりました少年法等の一部を改正する法律案について質問いたします。(拍手)

 まずは、一点、武田総務大臣に伺います。

 一昨日の本会議で、昨年十一月十一日の関係業者との会食において、事前に会費設定をしていた、すなわち割り勘会食の取決めをしていたとは答弁なされませんでした。

 武田大臣は、この日以外でも、会費設定のない関係業者との会食の誘いを受けていたのでしょうか。そうだとすれば、そのこと自体が大臣として著しい倫理規範の欠落であることを強く指摘させていただきます。御答弁ください。

 元法務大臣の河井克行衆議院議員の辞職の意向が示されました。河井元大臣は、神父の助言で、罪を認め、議員辞職を決断したと公判で述べていますが、本来であれば、自民党の総裁や幹事長がもっと早く助言して、議員辞職をさせるべきではないでしょうか。

 そもそも、一億五千万もの自民党からの資金提供が案里氏の選挙の際に行われたということです。しかも、その中には、税金を原資とする政党交付金も含まれています。自民党の提供した資金により河井夫妻に選挙買収が行われていたとの供述調書も裁判で提出されています。河井元大臣の辞職につき、二階幹事長は他山の石と述べていますが、実態は同じ穴のムジナと言わざるを得ません。

 ほかにも、違法接待などの政官業の癒着、前経済産業大臣の選挙区内の香典問題など、違法行為が後を絶ちません。コロナ禍で経営も家計も厳しい国民から、憤りの声や政治不信の声が届いています。

 どうして、元法務大臣始め、法を守るべき立場の者が簡単に法を犯すことが起きたのか、法務大臣の見解をお聞かせください。

 また、あわせて、案里氏の当選無効を受けて行われる再選挙において、買収資金を受けた者の刑事処分が保留となっています、その地方議員らが選挙運動を行うことは公職選挙法上問題ないのか、公職選挙法を所管する総務大臣からお答えください。

 それでは、少年法改正案の立法事実を確認します。

 少年の犯罪動向を見ますと、少年による刑法犯の検挙人員は、昭和五十八年の三十一万七千人余りをピークに、減少傾向が続き、令和元年には三万七千人余りと戦後最少を更新しています。少子高齢化によって少年の人口も減少していますが、少年人口十万人当たりの人口比で見ると、昭和五十六年の千七百二十一人に対し、令和元年には三百三十二人と、少年人口の減少以上の減少傾向を見せており、少年人口の減少だけが少年犯罪の減少の理由ではないことは明らかです。

 また、少年犯罪の凶悪化についても、少年の検挙人員で見ると、殺人が、平成元年の百十九人に対し、平成三十年には三十八人、強盗が、平成十五年の千八百四十七人に対し、平成三十年は二百七十一人、放火が、平成十五年の二百七十四人に対し、平成三十年は六十九人、強制性交等が、平成元年の四百五十一人に対し、平成三十年は百七十一人となっています。このように、少年の凶悪事件も明らかに減少しています。

 現行の少年法は、少年事件の全てを家庭裁判所に送致し、そこで、少年の生育歴、家庭環境、障害の有無、程度などを詳細に科学的に調査し、その少年の問題性を明らかにした上で、その問題性に応じた処遇を行う仕組みとなっています。

 少年犯罪が減少している現状、現行の少年法が高く評価されている現状を踏まえ、今、なぜ少年法を改正しなければならないのか、大臣の見解を伺います。また、高く評価されている現行の少年法の機能が本改正案によって損なわれることはないのか、併せて伺います。

 次に、原則送致対象事件の特則について伺います。

 特定少年に対する原則検察官送致対象事件の規定の仕方を、個別の犯罪の性質を特定した限定的な基準ではなく、死刑又は無期懲役若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる事件として、法定刑によって一律に拡大するのはなぜでしょうか。

 短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の少年事件の処理における問題点は何か。原則検察官送致対象犯罪の拡大した本改正案六十二条二項二号の規定により検察官送致され起訴される事件のうち、実刑率はどのくらいを見込んでいるのか。執行猶予が付されて社会に戻る際の再犯防止対策は何か、大臣に伺います。

 本改正案では、保護処分の特例として、十八歳、十九歳の少年、特定少年に行う保護処分は、その少年が抱える問題性ではなく、犯情の軽重を考慮して処分内容やその期間を定めるとしています。

 例えば現行の少年院での処遇の効果を見ると、少年院を出た少年が五年以内に再度少年院や刑務所に入る割合は二二・七%であるのに対し、刑務所出所者が五年以内に再度刑務所に戻る割合は三七・五%となっています。このように、再犯防止という観点からも、少年院の処遇は評価されています。

 今回の改正によって、少年の改善更生、立ち直り、再犯防止という点で効果を上げている少年院の処遇が中途半端なものになるのではないかとの懸念が示されています。

 本改正案で、特定少年への保護処分に犯情の軽重を考慮して上限を画した理由は何でしょうか。また、少年院での処遇の機会が狭まることに対する懸念にどのように応えようとするのか、大臣の見解を伺います。

 そもそも、少年院では、教育程度も中卒や高校中退などが多数を占めています。高卒認定試験や、就労できるよう大型特殊自動車運転免許、電気工事士などの資格取得も力を入れています。また、女子少年に共通する課題に対応し、アサーショントレーニングなどの対応が定着しつつあります。私の地元北海道でも、浦河べてるの家の当事者研究も取り入れて、社会生活を送る上で自己覚知やSOSの出し方など自らの弱さや力を発見しながら研究しています。

 他方、児童福祉法に基づく様々な施策では、原則十八歳までだった児童養護施設の入所や二十歳までだった自立援助ホームの利用は、二十二歳まで引き上げられています。それは、法の目的を達成するために元々民法とイコールにはなっていません。再犯、再非行の防止のために少年法の適用を若年の成人にも拡大することの方が社会防衛、防犯、国益に資するという考えはないのか、大臣の見解を伺います。

 本改正案では、十八歳、十九歳のときに犯した罪によって公判が行われることとなった場合、実名や写真など、本人を推定できるような情報を報じることを禁ずる規定が適用されないこととなっています。この推知報道の禁止は、少年の保護、更生を図るとともに、それが再犯を予防する上からも効果的であるとの考えによるものです。

 この改善更生、社会復帰や再犯防止への影響が大きい推知報道の禁止を適用除外とした理由を伺うとともに、インターネット上に名前や写真が残り続けることにより社会復帰の妨げとなっているとの指摘については、大臣、どのようにお考えになりますか。伺います。

 本改正案では、十八歳、十九歳の少年は虞犯として保護処分の対象とならないこととしています。虞犯を除外する理由を法務大臣に伺います。

 長年にわたり虐待を受けていた影響から家出生活の中で性風俗業に関係している女子少年など、いわゆる薬物犯罪や売春などに取り込まれて被害者的な立場にある要保護性の高い十八歳、十九歳の少年少女たちに教育の機会を与え、犯罪的な生活からすくい上げる最後のチャンスを失うのではないかと懸念されています。

 家庭環境や生育歴に問題のある、あるいは、早期に適切な支援を受けられなかったがゆえに性搾取や性暴力にさらされやすい少女は少なくありません。今回の改正によって、問題を抱えた少女たちを支援する契機を一つ失うと言えますが、今後、このような少女たちをどのように見つけ出し、どのように支援をしていこうと考えているのか、伺います。

 最近は、オレオレ詐欺などの特殊詐欺でお金をだまし取る相手から現金を直接受け取る役目をする、いわゆる受け子で捕まる少年が増えています。また、持続化給付金詐欺に多くの大学生が関わっていたことも報道されたところです。これらの少年はSNSなどで簡単に金を稼げる方法があると誘われ、バイト感覚で詐欺に加担した例などが報じられています。

 このような少年たちに対し、大金を手に入れられるからと簡単に飛びついた軽率さを責めることは簡単です。また、犯した罪は罪として処罰することも必要かもしれません。しかし、より重要なのは、この少年たちの背景に何があるのかという分析ではないでしょうか。若者の経済的な問題が潜んでいないのでしょうか。大臣の見解を伺います。

 実際に少年法の対象となる子供の多くは、家庭環境、生育歴、障害などによって、生きづらさ、困難さを抱えた子供であります。その子供自身には、選びようのない、解決しようのない問題です。

 例えば、一人親家庭の非行出現率の高さが指摘されています。これには、一人親家庭を取り巻く環境に構造的な問題があるのではないかと疑問に思わずにはいられません。この点について、どのように分析をしているのでしょうか。

 さらに、重要なのは、その問題点の解消です。

 一人親家庭の非行出現率の高さに対して、どのように政策として対応していくのか、これはまさに政治が解決するべき課題です。大臣の見解を伺います。

 少年法の対象となる子供たちが生きづらさ、困難さを抱えて育ってきたということは、少年法が立ち直りのきっかけになるという意味では、そういう子供たちの最後のセーフティーネットと言えるかもしれません。

 先日、虐待や性暴力を受けるなど、孤立、困窮した中高生や十代女子を支援する一般社団法人Colaboに行ったとき、私に話してきた子は、黒髪で化粧っ気もなく、身だしなみも整っていました。家にはいられないその理由は、精神疾患のある親と、そして、弟や妹たちが仲が悪くてぐちゃぐちゃだと。よく聞くと、その妹や弟は障害のある子供でした。いわゆるヤングケアラーです。

 ハウスはあっても、ほっとするホームはない。様々な困難を抱えた環境に置かれている少年は犯罪加害者に、少女は性搾取され、売春などの対象となるリスクがいつも隣り合わせにあります。疲れ切って追い詰められてしまうこともあります。その前に何とか支援につなげることが重要なのではないでしょうか。犯罪による経済的損失もなく、子供自身やその人生を傷つけることなく、その前に、支援が必要な子供をすくい上げ、必要な支援を行っていく、こういう取組が求められているのではないでしょうか。そのために、何をすべきか、どういう制度を設けるべきか、こういう検討が必要なのではないでしょうか。

 そこで、少年法を、単なる刑事政策上の制度ではなく、困難を抱える子供や若年層への総合的な政策の中に位置づけ、その中で少年法の在り方を検討すべきではないでしょうか。大臣の見解を伺います。

 最後に、改正法案の提出理由にある社会情勢の変化とは具体的にどのようなものか、伺います。

 刑事法は、犯罪の予防、防止という目的に照らし、刑事政策的な効果について実証的に検討するべきと考えますが、大臣の見解を伺います。

 私は、ソーシャルワーカーとしても、少年事件の被害者にも、そして加害者にも関わっていました。大人に搾取され、健全な育ちの機会を奪われ、誰も信じられない、そして、何があっても守ってくれるという大人がいない子供たちばかりです。その子供たちから、少年院で初めて自分につき合ってくれる大人に出会った、初めて信頼できる大人に出会えたという言葉もよく聞かれます。少年法第一条の「健全な育成」、その目的がなされているあかしです。

 しかし、その子供たちは社会に出てから言います。社会が余りにも冷たくて、壁ばかりで、頑張っても頑張っても前に歩けないと。更生し、自立できるための仕組みをつくること、そして、少年たちが願うあったかい社会となる政策や風土をつくることをお約束し、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 池田真紀議員にお答え申し上げます。

 まず、河井克行元法務大臣に係る公職選挙法違反事件などについてお尋ねがありました。

 個別事件の捜査、公判や捜査機関の活動内容に関わる事柄について、法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきます。

 その上で、どのような立場の者であっても、法令を遵守すべきは当然のことです。

 公に奉仕する政治家は、一人一人が自らを律し、国民に疑念を抱かれないよう行動することが重要であると考えています。

 次に、本改正の理由と現行少年法の機能への影響についてお尋ねがありました。

 公職選挙法や民法の改正により、十八歳及び十九歳の者は、責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場となりました。

 刑事司法における取扱いにおいては、成長途上にあり、可塑性を有する存在である一方で、このような社会情勢の変化を踏まえると、少年法の適用において、その立場に応じた取扱いをすることが適当であると考えられます。

 そこで、本法律案では、少年法を改正し、十八歳以上の少年の特例等を定めることとしています。

 他方で、本法律案では、十八歳以上の少年についても、少年の健全な育成を図るという少年法第一条の目的の下で、全ての事件を家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することとしており、少年法の機能が損なわれることはないと考えています。

 次に、十八歳以上の少年に係る原則逆送事件に関してお尋ねがありました。

 十八歳以上の少年に係る原則逆送事件の範囲については、犯罪の性質に着目した基準を適切に定めることは困難であり、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑を基準とすることが適当であると考えたものです。

 また、本法律案は、現行制度の下で、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の少年事件の処理に特段の問題があることを理由として改正するものではありません。

 新たに原則逆送の対象となる事件で実刑判決が見込まれる割合については、実刑判決を言い渡すか否かは、施行された後に個別の事案に応じて裁判所が判断する事柄であるため、お答えすることは困難です。

 刑の執行猶予については、心理的強制によって対象者の改善更生を図る機能がある上、より積極的な働きかけが必要な場合には、対象者を保護観察に付することもできる仕組みとなっています。

 次に、十八歳以上の少年に対する少年院送致処分に関し、犯情による限度を設けることとした理由と処遇機会への影響についてお尋ねがありました。

 少年院送致などの保護処分は、対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うものであることから、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対して、保護の必要性のみを理由に後見的介入を行うことが、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、国家による過度の介入とならないかといった問題点があると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えてはならないという趣旨で、犯罪の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行うこととしています。

 現在の少年事件における実務の運用上も、一般的には犯罪事実の軽重と処分との間の均衡を考慮して処分が行われているものと認識しており、先ほど申し上げた限度を設けても、家庭裁判所において要保護性に応じて少年院送致処分を選択することに直ちに支障が生じるものではないと考えています。

 次に、少年法の適用対象の拡大についてお尋ねがありました。

 少年法の適用対象年齢を現行の二十歳未満から引き上げて若年の成人も適用対象とすることについては、少年法の仕組みによる再犯防止の効果について実証的な検討が困難であることや、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点を踏まえる必要があることなどから、慎重な検討を要すると考えています。

 次に、十八歳以上の少年に係る推知報道の禁止を解除することとした理由とその影響についてお尋ねがありました。

 少年法においては、少年事件について実名報道などの推知報道を禁止していますが、そもそも憲法により保障されている報道の自由を制約する例外的な規定である上、例えば、犯罪被害者など他の関係者については、推知報道を禁止する規定は設けられていないところです。

 また、インターネットに関わる問題は、犯罪報道一般に妥当する事柄であり、少年事件に特有のものではありません。

 推知報道により社会復帰が阻害されるとの指摘は承知していますが、十八歳以上の少年について推知報道を一律に禁止することは、責任ある主体としての立場に照らし、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点からも、適当でないと考えられます。

 そこで、十八歳以上の少年についても、逆送され、公判請求された場合には、公開の法廷で刑事責任を追及される立場となることに鑑み、本法律案では、その時点から推知報道の禁止を解除することとしています。

 次に、十八歳以上の少年に対し、虞犯による保護処分をしないこととした理由などについてお尋ねがありました。

 民法上の成年とされる十八歳以上の少年に対し、罪を犯していないのに、保護の必要性のみを理由として保護処分をすることについては、先ほど十八歳以上の少年に対する保護処分の限度について答弁したのと同様の問題点があると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年については、虞犯による保護処分はしないこととしています。

 他方で、十八歳以上の少年の健全育成のためには、対象者の任意に基づく支援、措置が重要であると認識しており、法務省としても、引き続き、関係機関等と適切に連携しつつ、法務少年支援センターや更生保護サポートセンターにおける各種取組など、少年の健全育成、非行防止の取組を推進していくこととしています。

 次に、少年犯罪の背景についてお尋ねがありました。

 少年による犯罪の背景には、経済的問題、家庭環境、少年の資質など様々な要因が考えられるところであり、一概にお答えすることは困難です。

 次に、一人親家庭の少年の非行に関してお尋ねがありました。

 少年が非行に及ぶ要因については、家庭環境、経済的問題、少年の資質など様々な要因が考えられるところであり、一概にお答えすることは困難です。

 その上で、法務省としては、一人親家庭の少年も含め、非行に及んだ少年に対して、引き続き、少年鑑別所、少年院、保護観察所において、個別の事情に応じた適切な矯正教育や生活環境の調整などを行い、その立ち直りや再犯防止に取り組んでまいりたいと考えています。

 次に、少年法の位置づけについてお尋ねがありました。

 少年法は、保護を要する若年者一般を対象とするものではなく、あくまで、罪を犯し、刑罰法令に触れ、あるいはそのおそれのある少年に対し、刑事司法制度として、健全育成を図るものと位置づけられます。

 その上で、その運用に当たっては、行政、福祉分野の関係機関とも適切に連携して、少年の非行防止や立ち直りを図っていくことが重要であると考えています。

 最後に、本法律案の理由中の社会情勢の変化などについてお尋ねがありました。

 この社会情勢の変化とは、御指摘のような意見があるという趣旨ではなく、近年の法律改正により、選挙権年齢及び成年年齢が十八歳に引き下げられ、十八歳及び十九歳の者が、重要な権利、自由を認められ、社会において、責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場になったことを指すものです。

 また、御指摘のとおり、刑事政策的な効果を実証的に検討することも重要ですが、同時に、刑事司法制度については、被害者を含む国民の理解、信頼という観点からの検討も重要であると考えています。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 池田真紀議員にお答え申し上げます。

 困難な問題を抱えた少女たちへの支援についてお尋ねがありました。

 様々な困難を抱えた若年女性は、自ら悩みを抱え込み、問題が顕在化しにくいといった側面が指摘されていることを踏まえ、厚生労働省では、平成三十年度から、モデル事業として、公的機関と民間支援団体が密接に連携し、夜間の見回り、声かけなどのアウトリーチ支援や居場所の確保、自立支援等の支援を行ってまいりました。

 さらに、令和三年度からは、相談支援体制や医療機関との連携等の強化を図った上で本格実施に移行することとしており、引き続き、困難な問題を抱えた少女たちの支援にしっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣武田良太君登壇〕

国務大臣(武田良太君) 池田議員からの質問にお答えをいたします。

 まず、御指摘の昨年十一月十一日の会合については、出席者から特定の許認可等に関する要望、依頼を受けたことはなく、食事はしておらず、自己負担もしていることなど、当時の状況を総合的に勘案すると、大臣等規範に抵触する会合ではなかったと考えております。

 その他の個別の事案一つ一つにお答えするのは差し控えさせていただきたい、このように考えておりますが、私は、国民の皆様から疑念を招くような会食や会合に応じることはございません。

 引き続き、国民の皆様からの疑念を招くことのないよう、自らを律し、職務に励んでまいります。

 次に、当選無効を受けて行われる再選挙において選挙運動を行う者について御質問をいただきました。

 公職選挙法第百三十七条の三においては、一定の選挙犯罪により有罪判決を受け、刑に処され、公民権を停止された者について、選挙運動をすることができない旨が規定されております。

 総務省としては、刑事処分に関する当局の判断についてお答えする立場にはなく、公民権停止がなされていない場合において各人が行う選挙運動に関することについて、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 浜地雅一君。

    〔浜地雅一君登壇〕

浜地雅一君 公明党の浜地雅一です。

 公明党を代表し、少年法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。(拍手)

 憲法改正国民投票、公職選挙法の投票年齢に引き続き、令和四年四月からは民法の成年年齢が十八歳以上に引き下がります。一連の年齢問題において、少年法の適用年齢が最後の課題でした。

 そこで、平成二十九年二月から法制審議会がスタートしたものの、議論は膠着状態でありました。

 少年法は処分が軽い、投票権があり、民法上も成年となるなら義務を負うべきだ、国法の統一性を図るべきとの引下げ派の意見がある一方、少年法は、軽微な犯罪でも更生のため少年院に収容される場合がある、決して軽くはない、少年の可塑性、更生可能性の高さに着目すれば、保護、教育によって健全な社会人として育てることが有益である、政治参加や経済取引が単独でできることと、少年の保護、教育を図るという趣旨、目的は異なる、実際、飲酒や喫煙は引き続き禁止されているではないかといった引下げ反対派の主張がぶつかり合っておりました。

 この膠着状態を打破するため、政治の側からも意見を集約し、一定の方向性を示すべきとの考えの下、自公でPTを設置。

 PTでは、十八歳の大半は高校生である、民法上、成年になるからといって、いきなり可塑性、更生可能性が失われるとは考え難い、大人の入口として引き続き保護が必要だとする意見や、投票権が付与され、民法上、成年となり、社会での位置づけが変化することは事実である、何らかの取扱いは変える必要があるとの意見などがぶつかり合いました。

 社会における権利と責任、保護、教育的処遇の活用のバランスをめぐってかんかんがくがくの議論を行い、令和二年七月に自公PTで少年法の在り方についての基本的な考え方を取りまとめ、結果、法制審の議論が加速され、令和二年十月に全会一致で法制審の答申が取りまとめられました。政治主導で少年法の年齢問題が決着したことは、感慨深いものがあります。

 まず、少年法の適用年齢について質問します。

 二条では、「「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。」と定義し、十八、十九歳の者も引き続き少年と位置づけることとなりました。これを公明党は高く評価します。

 一方で、少年法は、国親思想、パターナリズムを理念とするため、民法上、親権者の監護権に服さないこととなる十八、十九歳の者に少年法を適用することは許容されないとの意見もありました。

 十八、十九歳の者に引き続き少年法の適用を維持した理由について、法務大臣の答弁を求めます。

 また、十八、十九歳の者に特定少年との呼称をつけ、十八歳未満の少年とは一部異なる取扱いをしますが、呼称を特定少年とされた理由についても併せて答弁を求めます。

 改正案においても、全件家庭裁判所送致が維持されました。これも高く評価をします。

 法制審では、重大犯罪については家裁を経由することなく検察官が起訴する案も提案されましたが、なぜ全件家裁送致としたのか、法務大臣の家庭裁判所が果たす役割についてのお考えを含め、お答えください。

 次に、逆送、すなわち、家裁が刑事処分を相当として検察官に送致する範囲について質問します。

 改正案では、特定少年の原則逆送の範囲を、死刑又は無期に加え、短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪としました。

 原則逆送ですから、例外的に逆送しない場合もあるわけですが、まず、例外なく逆送とする必要的逆送を取らなかった理由について、法務大臣の答弁を求めます。

 原則逆送の範囲について、自公PTでは、強盗罪を加えるべきかが大きな論点となりました。

 強盗罪は短期五年以上の重大犯罪ですが、凶器などを使って被害者を畏怖させ金品を強奪する犯行から、ひったくりが窃盗目的で金品を盗もうとした際に被害者を傷つけた場合も強盗罪に当たるなど、犯情に幅があります。そこで、PTの合意内容には、とりわけ強盗罪については、犯情を十分に考慮して逆送の当否が判断される運用とすべきとの付言を付しました。

 原則逆送の範囲を短期一年以上の懲役、禁錮とした理由、及び自公PTで付言した強盗罪の運用はどのように図られるのか、法務大臣の答弁を求めます。

 少年法には、将来犯罪を犯すおそれのある行動をする少年も保護の対象とする虞犯の規定がありますが、今回、特定少年は虞犯の対象から除外されました。特定少年に虞犯を適用しないとした理由について、法務大臣にお尋ねします。

 虞犯からは除外されるものの、特定少年も、少年警察活動規則に基づく不良行為少年として、引き続き、補導の対象になります。

 特定少年の健全育成、非行防止のためには、関係府省庁の連携強化が不可欠であります。現在、子ども・若者育成支援推進法に基づき、少年非行対策課長会議が開催されておりますが、課長級では不十分です。早急に政府を挙げて体制強化を図るべきと思いますが、坂本少子化担当大臣の答弁を求めます。

 次に、特定少年の保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲で行うこととされました。特定少年にも保護、教育が重要との理由で少年法の適用を認めるのであれば、引き続き、犯情を超えた保護処分を課せるようにすべきとも考えられますが、なぜ特定少年に保護処分の限度を設けたのか、法務大臣の答弁を求めます。

 推知報道、いわゆる実名報道の禁止解除について質問します。

 なぜ少年だけが実名報道されないのか、被害者やその家族からすれば不公平感がありますし、一部世論からも批判のあるところです。

 改正案では、特定少年が公判請求された段階で推知報道を解除するとしましたが、なぜこのような改正となったのか、特定少年に限らず、少年事件全般についても推知報道の解除を検討されなかったのか、法務大臣の答弁を求めます。

 その他、改正案では、労役場留置や仮釈放の特例、不定期刑など少年法特有の規定について、特定少年が逆送された後は原則適用しないこととされました。その意義について、法務大臣の答弁を求めます。

 これら特則の中で、自公PTで特に議論となったのは資格制限の在り方です。

 平成二十九年に閣議決定された再犯防止推進計画において、資格制限の見直しに向けた取組が始まったものの、各資格はそれぞれの所管省庁にまたがっているため、法務省のみの検討では限界があります。

 最後に、政府におかれては、再犯防止の観点から、関係府省庁一丸となって資格制限の在り方の抜本的な検討を早急に進め、結論を得ることを強くお願い申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 浜地雅一議員にお答え申し上げます。

 まず、少年法の適用対象年齢についてお尋ねがありました。

 少年法の適用対象年齢の在り方は、成長過程にある若年者をどのように取り扱い、どのように改善更生を図るかに関わる問題であり、民法の成年年齢が引き下げられたからといって、論理必然的にこれを引き下げなければならないものではないと考えています。

 本法律案では、十八歳及び十九歳の者について、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となる一方で、成長途上にあり、可塑性を有することを踏まえ、いわゆる原則逆送対象事件を拡大することや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で保護処分を行うことなどの特例を設けた上で、全事件を家庭裁判所に送致し、原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することとしています。

 そのため、十八歳及び十九歳の者については、引き続き少年法の適用対象とすることが適当であると考えたものです。

 次に、十八歳及び十九歳の者の呼称についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、少年法の法文上、十八歳以上の少年という表現が繰り返される事態を避けるため、十八歳以上の少年の略称を定めることとしています。

 そして、十八歳以上の少年は、二十歳未満の者を指す少年の一部であることから、法制技術的な観点から、特定少年とすることとしたものです。

 次に、十八歳以上の少年について、家庭裁判所への全件送致の仕組みを採用した理由などについてお尋ねがございました。

 これまで、少年事件について、いわゆる全件送致の仕組みの下、家庭裁判所は、十八歳及び十九歳の者を含めて、少年の再非行の防止や立ち直りに重要な機能を果たしてきたものと認識しています。

 そして、十八歳以上の少年は、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となる一方で、成長途上にあり、可塑性を有することからすると、その改善更生、再犯防止を図るためには、引き続き家庭裁判所の機能を最大限活用することが刑事政策的観点から合理性を有すると考えられることから、本法律案では、十八歳以上の少年についても、全件送致の仕組みを採用することとしたものです。

 その上で、原則逆送の対象事件を拡大することとしています。

 次に、一定の事件について、例外なく送致する仕組みを採用していない理由についてお尋ねがありました。

 御指摘の仕組みとすると、家庭裁判所は、一定の事件に当たるときは、個別にどのような処分が適当かを判断することなく一律に逆送決定をしなければならないことになりますが、家庭裁判所として処分について判断しないのに調査のみを実施させることが制度の在り方として適当か、現在の家庭裁判所による少年事件の調査は、その結果に基づいて家庭裁判所が処分を選択することを前提に行われているが、その前提が失われても有効に機能するかなどの問題点があると考えられることから、本法律案ではこれを採用しなかったものです。

 次に、十八歳以上の少年に係る原則逆送事件についてお尋ねがありました。

 十八歳及び十九歳の者の立場や、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保という観点からは、これらの者が重大な犯罪に及んだ場合には、十八歳未満の者よりも広く刑事責任を負うべきものとすることが適当であると考えられます。

 そこで、本法律案では、原則逆送事件の範囲を拡大することとしています。

 そして、拡大する範囲については、他の刑事法でも基準として用いられ、強制性交等罪、強盗罪なども含まれる、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件を対象に加えることが、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑やこれに該当する犯罪の性質等に照らして適当であると考えたものです。

 本法律案では、十八歳以上の少年に係る原則逆送事件についても、現行法と同様、例外となるただし書を設けることとしています。

 そのため、御指摘の強盗罪を含め、新たに原則逆送の対象となる事件についても、家庭裁判所では、個々の事案において、十分な調査を尽くし、犯情の軽重を含む様々な事情を考慮した上で、適切な処分の判断が行われるものと想定しています。

 次に、十八歳以上の少年に対し、虞犯による保護処分をしないこととする理由についてお尋ねがありました。

 虞犯の制度は、法定の事由に該当し、その性格、環境に照らし、将来罪を犯すおそれのある少年について、少年院送致を含む保護処分を課すことができるとするものです。

 しかし、権利、自由の制約という不利益を伴うことからすると、民法上の成年とされ、監護権の対象から外れる十八歳及び十九歳の者に対して、保護の必要性のみを理由に後見的介入を行うことが、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係で許容されるか、国家による過度の介入とならないかといった問題点があると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年については、虞犯による保護処分はしないこととしています。

 次に、十八歳以上の少年に対する保護処分に関し、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行うこととする理由についてお尋ねがありました。

 民法上の成年とされる十八歳以上の少年について、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えた保護処分をすることについては、先ほど虞犯について答弁したのと同様の問題点があると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年に対する保護処分は、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内で行うこととしています。

 次に、十八歳以上の少年に係る推知報道の禁止の解除などについてお尋ねがありました。

 実名報道を含むいわゆる推知報道の禁止を定める少年法第六十一条の趣旨は、少年の特定に関する情報が広く社会に伝わり社会生活に影響を与えるのを防ぎ、その更生に資することにあります。

 しかし、推知報道の禁止は、憲法により保障されている報道の自由を制約する例外的な規定である上、例えば、犯罪被害者など他の関係者については、推知報道を禁止する規定は設けられていないところです。

 十八歳以上の少年について推知報道を一律に禁止することは、先ほど答弁したように、責任ある主体としての立場に照らし、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点からも、適当でないと考えられます。

 その上で、十八歳以上の少年についても、逆送され、公判請求された場合には、公開の法廷で刑事責任を追及される立場となることに鑑み、本法律案では、その時点から推知報道の禁止を解除することとしています。

 本法律案では、十八歳及び十九歳の者について、刑事司法制度において、その立場に応じた取扱いをするという観点から、推知報道の禁止を改めることとするものです。

 そのため、十八歳未満の少年に係る推知報道の禁止については、現行法のままとしています。

 最後に、十八歳以上の少年に係る刑事事件の特例の適用についてお尋ねがありました。

 御指摘の労役場留置の禁止などの少年法における刑事事件の特例は、刑事事件の手続及び処分においても、少年の健全な育成を図るために設けられているものです。

 しかし、十八歳以上の少年について、家庭裁判所により刑事処分相当と判断されて逆送決定がされた場合にまで、なお健全育成を図るための特例をそのまま適用するのは、責任ある主体としての立場や、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点から、適当でないと考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年について、刑事処分相当を理由とする逆送決定がされた後は、少年法における刑事事件の特例の規定を原則として適用しないこととしています。

 以上です。(拍手)

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 特定少年の健全育成、非行対策の体制の在り方についてお尋ねがありました。

 次代を担う青少年の育成は、国民全体に課せられた責務であり、特定少年を含めた少年の健全育成及び非行防止は、重要な課題の一つと認識しております。

 御指摘の少年非行対策課長会議は、子ども・若者育成支援推進本部の下に置かれており、全閣僚を構成員とする同本部において、関係府省庁の少年の健全育成及び非行防止のための各種施策の実施を推進しています。

 今月末を目途に子供・若者育成支援推進大綱を策定することとしており、関係府省庁の緊密な連携の下、引き続き、特定少年を含む少年の健全育成及び非行防止のための取組を進めてまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 藤野保史君。

    〔藤野保史君登壇〕

藤野保史君 私は、日本共産党を代表して、少年法等一部改正案について質問します。(拍手)

 本案は、十八歳及び十九歳の少年を特定少年と新たに規定し、虞犯の対象としないなど、保護と更生の機会を失わせるものです。さらに、検察官送致の対象事件を大幅に拡大し、起訴後は推知報道を解禁するなど、少年法を厳罰化しようとしています。

 少年法第一条は、少年の健全な育成を根本理念としています。これは、戦後、日本国憲法の精神に基づいて、教育基本法や児童福祉法と並んで、少年を、保護の客体であると同時に、人権、権利の主体として、その保護と更生を図るためにほかなりません。大臣は、特定少年にもこの理念が及ぶと考えていますか。

 現行法は、成人では不起訴になる事案でも全て家庭裁判所に送致する、全件送致主義を取っています。家裁調査官が、少年の資質や犯罪の背景にある家庭環境などをきめ細かく調査し、教育的観点から処遇を決定しています。

 女子少年院に入っていたある女性はこう言っています。刑務所は、満期になれば出られるけど、自分の行動や自分と向き合わないといけない少年院は、内省しないと無理です、適用年齢の引下げは、十八歳、十九歳が更生する機会を奪います。

 法制審議会でも、十八歳、十九歳の少年の保護と更生を図る上で、現行法が大きな役割を果たしていることは共通認識となっています。

 なぜ、特定少年について、その大事な役割を奪うのですか。

 元々、少年法改正論議は、民法の成人年齢引下げとの国法上の統一から始まりました。しかし、それぞれの法律の年齢区分はそれぞれの法律の立法目的によって決められるべきであり、実際、飲酒や喫煙等は二十歳のままです。

 上川法務大臣自身、二〇一八年五月三十日の参院本会議で、年齢要件は、それぞれの法律の趣旨や立法目的に基づいて定められていることから、その変更の可否を検討するに当たっても、それぞれの法律目的等を考慮する必要があると答弁しています。そうであれば、なぜ、十八歳、十九歳の少年について、少年法の保護を外して厳罰化するのですか。

 現行法は、被害者の死亡という重大かつ明白な結果が発生している場合に限って、検察官に原則逆送するとしています。

 ところが、本案は、法定刑の下限が短期一年以上の罪にまで大幅に拡大しようとしています。なぜ検察官逆送の対象を拡大する必要があるのか。また、なぜその対象が短期一年以上の罪なのか。逆送事件の拡大は、多くの少年から立ち直りの機会を奪い、逆に再犯の可能性を高めるのではありませんか。

 本案は、検察官送致の対象に拡大された事件について、起訴後、推知報道を解禁しようとしています。ネット時代において、一たび実名等がさらされれば、半永久的に残り、本人や家族に深刻な影響を与えます。

 政府は、少年の立ち直りにとって、現行法の推知報道禁止規定が果たしてきた役割をどう認識しているのですか。また、推知報道の解禁が少年の立ち直りを阻害する危険性についてどう考えているのですか。

 本案は、特定少年について、虞犯の規定を適用しないとしています。女子少年の虞犯比率は、男子少年を上回っています。私は、新宿歌舞伎町などで若年女性を支援する一般社団法人Colaboが行っている声かけ活動など現場を見てきました。性風俗産業やJKビジネスへの従事は、典型的な虞犯の一つと言われています。

 特定少年が児童福祉法の対象とならない現状では、虞犯をきっかけとする保護処分が少年たちのセーフティーネットとして重要な役割を果たしているのではありませんか。

 少年犯罪は年々減少し、少年法を厳罰化する立法事実はありません。今政府がやるべきことは、少年法の厳罰化ではなく、少年法に携わる人や現場への支援を抜本的に強化することです。

 このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 藤野保史議員にお答え申し上げます。

 まず、特定少年に少年法第一条の理念が及ぶかどうかについてお尋ねがありました。

 本法律案では、御指摘の少年法の目的を定める同法第一条を改正しておらず、十八歳以上の少年についても、引き続き、少年法の目的が及ぶこととなります。

 次に、十八歳以上の少年について果たす少年法の役割についてお尋ねがありました。

 本法律案においては、十八歳以上の少年について、成長途上にあり、可塑性を有する存在であることから、家庭裁判所、少年院、保護観察所等の知見を引き続き活用して対象者の改善更生を図るため、全ての事件を家庭裁判所に送致した上で、家庭裁判所が原則として保護処分を行うという少年法の基本的な枠組みを維持することとしています。

 したがって、十八歳以上の少年について、少年の保護と更生を図るという少年法の役割を奪うようなものではないと考えています。

 次に、十八歳及び十九歳の者を少年法による保護の対象から外す理由などについてお尋ねがありました。

 少年法の適用対象年齢の在り方は、成長過程にある若年者をどのように取り扱い、どのように改善更生を図るかに関わる問題であり、民法の成年年齢が引き下げられたからといって、論理必然的にこれを引き下げなければならないものではないと考えています。

 その上で、本法律案では、十八歳及び十九歳の者について、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となる一方で、成長途上にあり、可塑性を有することを踏まえ、いわゆる原則逆送対象事件を拡大することや、犯した罪の責任に照らして許容される限度を超えない範囲内で保護処分を行うことなどの特例を設けた上で、少年法の適用対象として、家庭裁判所へのいわゆる全件送致などの少年法の基本的な枠組みを維持することとしています。

 したがって、本法律案について、十八歳及び十九歳の者を少年法による保護の対象から外して厳罰化するものであるとの御指摘は当たらないと考えています。

 次に、十八歳以上の少年に係る原則逆送の対象事件についてお尋ねがありました。

 十八歳及び十九歳の者は、公職選挙法及び民法の改正等により、重要な権利、自由を認められ、責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場となりました。

 これらの者が重大な犯罪に及んだ場合には、十八歳未満の者よりも広く刑事責任を負うべきものとすることが、その立場に照らして適当であり、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保という観点からも必要であると考えられます。

 そこで、本法律案では、十八歳以上の少年について、原則逆送事件の範囲を拡大することとしています。

 そして、拡大する範囲については、他の刑事法でも基準として用いられ、強制性交等罪、強盗罪なども含まれる、死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役、禁錮に当たる罪の事件を対象に加えることが、犯罪の類型的な重大性を表す法定刑やこれに該当する犯罪の性質等に照らして適当であると考えたものです。

 次に、原則逆送事件の拡大による影響についてお尋ねがありました。

 十八歳以上の少年に係る原則逆送の対象事件の拡大は、一定の重大犯罪に及んだ場合には、十八歳未満の者よりも広く刑事処分の対象となるという原則を明示することにより、自覚や規範意識を高め、犯罪を予防することにも資すると考えられます。

 また、本法律案においては、十八歳以上の少年に係る原則逆送の対象事件についても、現行法と同様、例外となるただし書を設けて保護処分を選択することもできることとしており、家庭裁判所では、個々の事案において、十分な調査を尽くし、処遇の有効性の観点も考慮した上で、適切な処分の選択が行われるものと考えています。

 したがって、原則逆送の対象事件の拡大により、十八歳以上の少年の立ち直りの機会が奪われ、再犯の可能性が高まるものではないと考えています。

 次に、十八歳以上の少年に係る推知報道の禁止の解除などについてお尋ねがありました。

 少年法においては、少年事件について、実名報道などの推知報道を禁止しており、その趣旨は、対象者の社会復帰の妨げとならないようにすることにあると認識しています。

 もっとも、推知報道の禁止は、そもそも憲法により保障されている報道の自由を制約する例外的な規定である上、例えば、犯罪被害者など他の関係者については、推知報道を禁止する規定は設けられていないところです。

 十八歳以上の少年について、社会復帰を阻害する危険を理由として推知報道を一律に禁止することは、責任ある主体としての立場に照らし、また、刑事司法に対する被害者を含む国民の理解、信頼の確保の観点からも、適当でないと考えられます。

 そこで、十八歳以上の少年についても、逆送され、公判請求された場合には、公開の法廷で刑事責任を追及される立場となることに鑑み、本法律案では、その時点から推知報道の禁止を解除することとしています。

 最後に、虞犯による保護処分の役割などについてお尋ねがありました。

 虞犯の制度は、法定の事由に該当し、その性格、環境に照らし、将来罪を犯すおそれのある少年について、少年院送致を含む保護処分を課すことができるとするものであり、少年の保護、教育上、一定の機能、役割を果たしているものと認識しています。

 もっとも、保護処分は対象者の権利、自由の制約という不利益を伴うものであり、罪を起こすおそれを理由として保護処分を行うことは、成年年齢引下げに係る民法改正との整合性や責任主義の要請との関係といった問題点があるため、本法律案では、十八歳以上の少年に対しては、虞犯による保護処分はしないこととしています。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 串田誠一君。

    〔串田誠一君登壇〕

串田誠一君 日本維新の会の串田誠一です。

 少年法等の一部を改正する法律案について、党を代表して質問いたします。(拍手)

 本法案は、成年年齢が十八歳に引き下げられたこと、少年による凶悪な事件が報道されることにより、十八歳以上の若者が特別扱いされるべきではないという声が国民の一部にあることなどから法律改正を求めるものであることは、一定の理解ができます。

 一方、少年法は、処罰より矯正教育による更生という考え方であることからすれば、成人と同じ扱いをして、事案により執行猶予という択一的な処理をすると、矯正教育を受ける機会を奪うことにもなりかねません。

 そこで、適正な改正になるかどうか判断するために、以下、質問をいたします。

 成人の再犯者率と少年の再犯者率はどのようになっているでしょうか。また、成人の共犯率と少年の共犯率はどのようになっているでしょうか。

 最初に二つの質問をいたしましたのは、本法案と関連すると思うからです。

 少年の共犯率が高いのは、少年が周りに影響されやすいということであると思います。

 この度、法定刑が重い事件には、家庭裁判所が原則として検察官に送致しなければならないとされています。

 成人と同じように扱われるということになると以下の懸念がありますので、質問をいたします。

 少年が周りに影響を受けやすいということは、少年の更生も周りの影響を受けやすいということでもあると思います。成人の再犯率が高い中で、現在の少年の処遇が功を奏しているとも言えます。再犯率が高い成人と同様の手続によることは、かえって悪い結果になるのではないかという懸念があります。所感を伺います。

 少年には、矯正教育プログラムが効果的であると思われます。

 千葉県の八街少年院は、飼い主がいない保護された犬を訓練する、動物を介在した矯正教育プログラムが行われています。保護された犬は、適切な世話もしつけもされず、愛情も受けられず捨てられた犬たちです。恐らく、自分と同じ境遇であるということを感じることでしょう。同じような境遇をたどった少年が、犬ときずなが生まれていき、共に成長し、立ち直りに効果があると言われています。保護犬の命が救われ、少年の立ち直りにもなる、まさに少年に適したプログラムであると思います。

 そこで、少年に成人と同じ手続で処遇されるようになると、少年特有の対応ができなくなるのではないでしょうか。所感を伺います。

 最後に、少年事件は、少年を取り巻く環境が大切です。

 日本の少年の貧困は、一昨年の国連の子ども権利委員会から勧告を受けるほどです。貧困による環境が犯罪に走ることは十分に想定されます。

 貧困以外にも、日本は、子どもの権利条約を遵守していないと国連から勧告を受けています。少年を適切な環境で成長させてあげたい。

 最近、国際養子縁組により海外へ養子として日本から多数の子供が渡っていたという報道がありました。

 国も、子供の権利をしっかり守るべきであると思います。特に、批准した子どもの権利条約を守ることは、国としても当然のことと思います。

 そこで、子どもの権利条約を守るように国連から勧告をされていることについて、政府としてどのように対応していくのか、伺います。

 成人年齢が引き下げられたことで、これまで少年だった者たちが成人と同じように扱われるべきであるという趣旨は理解できます。一方、飲酒、喫煙、ギャンブルなどは二十歳以上のままであり、まだ成長過程であることを国が認めていることも事実です。

 少年と成人との違いをどこでどのように分けていくのか、大変難しい問題です。党内でもしっかりと議論していきたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣上川陽子君登壇〕

国務大臣(上川陽子君) 串田誠一議員にお答え申し上げます。

 まず、成人の再犯者率及び少年の再犯者率についてお尋ねがありました。

 お尋ねの再犯者率については、法務省としては、少年と成人で区別してそれぞれの統計を取っていないため、お答えすることは困難です。

 その上で、参考として申し上げると、令和元年において、成人と少年を合わせて、刑法犯により検挙された者に占める再犯者の人員の比率は四八・八%であったのに対して、刑法犯により検挙された少年に占める再非行少年の人員の比率は三四・〇%でした。

 次に、成人の共犯率及び少年の共犯率についてお尋ねがありました。

 令和元年において、刑法犯の検挙事件のうち、成人のみによる事件の中で共犯による事件の占める比率は九・八%であったのに対し、少年のみによる事件の中で共犯による事件の占める比率は二一・二%でした。

 次に、少年事件の取扱いの在り方についてお尋ねがありました。

 本法律案では、十八歳以上の少年について、家庭裁判所や少年院等の知見を引き続き活用して対象者の改善更生を図るため、いわゆる全件送致の仕組みを維持し、家庭裁判所において調査、審判を行い、原則として保護処分を課すこととしています。

 また、十八歳以上の少年に係る原則逆送事件についても、現行法と同様、例外となるただし書を設けて保護処分を選択することもできることとしており、家庭裁判所では、個々の事案において、十分な調査を尽くし、処遇の有効性の観点も考慮した上で、適切な処分の選択が行われるものと考えています。

 次に、刑務所における若年受刑者の処遇についてお尋ねがありました。

 刑務所においては、二十歳未満の者について、特にその年齢に配慮しつつ、これらの者を含めた若年受刑者に対し、その可塑性に期待し、積極的な働きかけを行っているところです。

 法制審議会の答申においては、若年受刑者について、少年院の知見等を活用して、その特性に応じた処遇の充実を図ることなどが求められており、その内容も踏まえ、若年受刑者処遇の更なる充実に努めてまいりたいと考えています。

 最後に、児童の権利委員会の勧告への対応についてお尋ねがありました。

 我が国は、児童の権利条約の趣旨に照らし、子供の利益を確保するという観点からこれまでも必要な対応を講じてきたところであり、児童の権利条約についても誠実に遵守してきたものと認識しています。

 その上で、児童の権利委員会の総括所見に対しては、その内容を精査し、関係省庁と連携して適切に対応しているところです。

 いずれにせよ、先ほど議員から御指摘がありました子供の貧困の問題を含め、政府としては、チルドレンファーストという視点で、しっかりと取り組んでいきたいと思います。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十三分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       総務大臣   武田 良太君

       法務大臣   上川 陽子君

       文部科学大臣 萩生田光一君

       厚生労働大臣 田村 憲久君

       国務大臣   坂本 哲志君

 出席副大臣

       法務副大臣  田所 嘉徳君


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