衆議院

メインへスキップ



第17号 令和3年4月2日(金曜日)

会議録本文へ
令和三年四月二日(金曜日)

    ―――――――――――――

  令和三年四月二日

    午後一時 本会議

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明及び質疑


このページのトップに戻る

    午後一時二分開議

議長(大島理森君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明

議長(大島理森君) この際、地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件につき、趣旨の説明を求めます。外務大臣茂木敏充君。

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) ただいま議題となりました地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府は、平成二十四年十一月、東南アジア諸国連合の構成国十箇国、オーストラリア、中国、インド、韓国及びニュージーランドとの間で、この協定の交渉を開始することについて一致し、平成二十五年五月から交渉を行いました。その結果、令和二年十一月十五日に、インドを除く十五箇国代表により、各国において、この協定の署名が行われました。

 この協定は、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を拡大させるとともに、知的財産、電子商取引等の幅広い分野での新たなルールを構築すること等を内容とする経済上の連携のための法的枠組みを設けるものであります。

 この協定の締結により、世界の成長センターであるこの地域と我が国とのつながりがこれまで以上に強固になり、我が国及び地域の経済成長に寄与することが期待されます。また、世界で保護主義や内向き志向が強まる中、自由貿易体制の維持強化を更に推進していくとのメッセージを世界に向けて発進することにもなると考えます。

 以上が、この協定の締結について承認を求めるの件の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明に対する質疑

議長(大島理森君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小熊慎司君。

    〔小熊慎司君登壇〕

小熊慎司君 立憲民主党の小熊慎司です。

 私は、立憲民主党・無所属を代表して、ただいま議題となりました地域的な包括的経済連携協定、いわゆるRCEP協定について質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、本日、急遽、日米首脳会談延期の一報がもたらされました。直前での延期など前代未聞であり、外交上、例を見ない話です。日本側には何か落ち度がなかったのでしょうか。菅総理は、バイデン大統領が初めて対面で会談する首脳と胸を張っていましたが、米国にとって菅総理との信頼関係はどれほどなのかと思わざるを得ません。

 今回の首脳会談先送りはもとより、今後のワクチン外交を含めた菅総理の外交手腕に対する大きな不安を指摘させていただき、質問に入ります。

 世界中でコロナ感染が収まらず、多くの方々が塗炭の苦しみを抱え、我慢を延々と強いられていることは、皆様御承知のとおりです。そのような中でも、RCEP協定を契機として域内の経済連携を発展させていくことが求められております。そのためには、政治の信頼が不可欠です。

 今国会において、法案や参考資料に信じられない数のミスが見つかりました。コロナ対策に尽力しているはずの厚生労働省では、大人数で深夜までの会食をしていたことが明らかになりました。実に情けない話ですが、これを官僚のせいだと決めつけてしまうのではなく、範を示すべき政治家が責任も取らず、説明もせず、緩みまくっているから役所の皆さんにまでその緩みが広がっているのではないかと自省する必要があります。政府においては、監督責任という言葉をいま一度かみしめていただきたいと思います。

 そこで、お伺いいたします。

 コロナ禍における経済連携を進展させるために万全の対策が必要であるにもかかわらず、与党の度重なる不祥事により、政治の信頼を失っています。厚生労働省の深夜会食も、政治家が範を示せていない証左であり、厚労大臣においては辞職相当の責任があるとの指摘もあります。改めて、大臣の責任を問います。

 RCEP協定については、その経済、通商上の効果に加えて、地政学的な意味合いも考える必要があります。米中対立が深刻となる中、アジア太平洋地域にも不安定な要因が目立っており、RCEP協定がこうした不安定な要因を助長するようなことがあってはなりません。

 一部には、RCEPは中国主導の枠組みとなるのではないかとの懸念の声もあります。中国の貿易慣行や国際法の遵守にも疑いの目が向けられる中、RCEP協定をこの地域の平和と安定のためにどのように活用していくのか、外務大臣の見解を伺います。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、世界でサプライチェーンの寸断を招きました。我が国でも、その脆弱性、そして中国依存の高さが明らかとなりました。サプライチェーンの強靱化は喫緊の課題となっています。

 RCEP協定は、我が国にとって中国との間で初めての経済連携協定となりますが、本協定を締結することによって、中国への依存が更に高まり、サプライチェーンの強靱化を損なうという懸念に対する政府の見解を伺います。

 RCEP協定の交渉は、TPP協定の交渉と並行して進められてきました。TPP協定の国会審議の際には、RCEP交渉は、TPPにおける成果も踏まえながら、質の高い協定の早期妥結に向けて進めていくというのが政府の方針でした。しかし、RCEP協定の内容については、自由化率が低く、ルールが緩いというのが一般的な評価です。

 そこで、今回署名に至った本協定の内容は、TPP交渉における成果が生かされた、質の高い協定となったのか伺うとともに、RCEP協定の内容に対する政府の評価を伺います。

 我が国との間で初めてEPAを締結することになる中国及び韓国からは、冷凍されたものも含め、業務用、加工用の野菜が多く輸入されております。本協定では多くの品目が関税撤廃、削減の対象から除外されていると承知していますが、国産品の生産基盤の強化は必須で、それを支援していくことが求められています。

 そこで、本協定が我が国農業に与える影響について、どのように考えているのか、また、生産基盤の強化に向けては、何が課題で、政府はどのような支援を行っていくつもりなのか、見解を伺います。

 また、本協定では、巨大市場である中国へのホタテガイやパック御飯など我が国の輸出関心品目について関税撤廃が獲得されており、今後の輸出拡大が期待されます。しかし、今回関税撤廃を獲得した品目の中には、例えば、イチゴやブドウのように、中国が検疫条件を設定していないため、現状では輸出できない品目もあります。

 関税以外の輸出障壁の撤廃に対し、本協定はどのような効果をもたらすのか伺うとともに、輸出障壁への対策を伺います。

 さらに、RCEP参加国には、東京電力福島第一原子力発電所事故を理由として、農産品等に科学的根拠に基づかない輸入規制も課されています。協定の発効前の規制解除のために、これまで以上の努力と結果が求められています。

 そこで、これまでどおりの積み重ねでなく、新たな取組の下、どのように規制解除を働きかけていくのか、伺います。

 本協定では、サービスの貿易や投資に加え、幅広い分野のルールを定めていますが、その内容は必ずしも十分ではありません。

 投資分野では、投資家と国との間の投資紛争解決手段、ISDSについては規定がなく、協定発効後二年以内に討議を開始するとされているだけです。

 また、電子商取引分野では、TPP11では規定されたソースコードの開示要求の禁止が規定されておらず、対話を行い、協定発効後五年ごとに行われる一般的見直しにおいて対話の結果を考慮するとされているだけです。

 継続協議となっている項目の中には、中国だけでなく、ASEAN諸国の中でも考え方が異なる項目もあります。電子商取引分野について、我が国はオーストラリアやシンガポールとともにWTOでの議論を主導していますが、TPP11協定並みの高い水準のルールを本協定の発効後に導入していくことについて、どのような見通しを持っているのか、政府の見解を伺います。

 また、中国では、WTO加盟を機に、知的財産保護に関する法制度が整備されつつあると承知しておりますが、中国における知的財産権侵害は後を絶ちません。問題は、法制面ではなく実態面と言えます。本協定においても知的財産の保護に関する規定が置かれていますが、その実効性をどのように確保していくのか、見解を伺います。

 RCEP協定の署名後、中国はTPP11への参加を検討する考えを明らかにしました。中国がTPP11のルールを例外なく受け入れるのであれば、拒否するものではありません。中国のTPP11参加の実現可能性について、RCEP協定交渉を経た今、政府はどのように見ているのか、伺います。

 さらに、RCEPが締結されましたが、より高度なルールに基づく日中韓FTAは今後も追求していくつもりなのか、お伺いいたします。

 あわせて、RCEPを通して中国と経済連携協定を結ぶことで、我が国は、中国の尖閣諸島における挑発について、この程度なら日本は許容しているというシグナルを中国に送ることにはならないかと危惧します。そういった懸念を払拭するため、政府は中国及び国際社会に対してどういった説明や対応を考えているのか、お答えください。

 また、残念ながら、RCEP協定は、インド不参加のまま、十五か国での署名に至りました。インドは、我が国が掲げる自由で開かれたインド太平洋の重要なパートナーであり、民主主義や法の支配といった共通の価値観を有した長年の友好国です。RCEPにおける中国の影響力が過大にならないようにするためにも、インドの参加は必要不可欠であったと考えます。

 そこで、インドの参加が得られないままでも本協定を締結することにどのような意義があるのか、また、今後、インドのRCEP参加に向け、我が国としてどのような支援ができるのか、見解を伺います。

 あわせて、本協定の締結は米国をTPP復帰へと促す機運を高めるとお考えなのか、伺います。

 米国では、トランプ大統領に替わり、国際協調路線を掲げるバイデン政権が発足しましたが、バイデン大統領自身も、今のままではTPPに参加しない、再交渉すると述べており、簡単には米国のTPP復帰は見通せない状況です。今後、米国に対してTPP復帰をどのように働きかけていくつもりなのか、見解を伺います。

 加えて、日本政府は、本来、アメリカを含むTPPの締結を目指してきたはずですが、アメリカとは二国間の貿易協定を結ぶことになりました。内容的には、日本が農業製品で譲歩するのみで、TPPでは撤廃するとされていた自動車と自動車部品の関税は、今日に至るまで全く減っておりません。

 当時、安倍総理も茂木大臣も、更なる交渉による関税撤廃と合意文書に明記されていることをもって、これは二国間の関税撤廃の約束だと強弁していましたが、この点に関してバイデン政権と国家間の合意であることを確認したのか、伺います。

 また、早期に自動車関連の関税を撤廃しなければ、日米貿易協定はガット違反の状態です。アメリカに対しては関税撤廃の約束を履行するように早期に迫るべきですが、働きかけは行っているのでしょうか。日米貿易協定に関する次の段階の交渉がどうなっているのか、お答えください。

 RCEPの締結とともに、水産物の取引も拡大することが考えられます。参加国には、IUU漁業の漁獲高が高い国があります。より一層の厳格なIUU漁業対策が求められておりますが、見解を伺うとともに、対策の有効策として、違法、無報告、無規制漁業の防止、抑制、廃絶のための寄港国措置協定、いわゆるPSMA協定の批准を参加国に求めていく必要があると考えますが、見解を伺います。

 RCEP参加国には、様々な態様の国があり、民主主義、法の支配、人権の尊重という基本的価値観を共有できるとは言えない国も存在します。協定の締結を契機に、こういう国に対しても日本は基本的価値観を共有する働きかけを行っていくべきではないでしょうか。

 日・EUがEPAを締結した際に、日・EU戦略的パートナーシップ協定も締結しました。法の支配、人権、環境に関する配慮、労働者保護、青少年保護などについて、意識を共有し、協力を推進していく協定です。RCEPにおいても同様の協定、少なくともワーキンググループなどの設置を検討すべきではないでしょうか。対応を伺います。

 最後に、ミャンマーで本年二月一日にクーデターが起きてから二か月が過ぎました。抗議デモに対する弾圧により多数の死者が出るなど、事態は悪化の一途をたどっています。

 国際社会は批判を強め、米国などは追加制裁を科すなど圧力を強めています。一方、制裁が強まることによってミャンマーが国際社会から孤立することも懸念されますが、ミャンマーを再び民主化プロセスへと導く必要があります。

 ミャンマー国軍は、一年としている非常事態宣言を解除した後、半年以内に総選挙を実施し、勝利した政党に実権を移譲するとしています。今後の情勢について予断はできませんが、ミャンマーが再び軍事政権となった場合、本協定の扱いはどうなるのでしょうか。ミャンマーが軍事政権下で本協定に定められた締結手続を完了した場合、我が国政府はその手続を正当なものとして受け入れるのか伺うとともに、もしそうであれば、政府は事実上ミャンマーの軍事政権を承認することになると思われますが、政府の見解を伺います。

 我々の経済的発展が、そしてまた社会的繁栄が、誰かの涙や不条理な貧困や血塗られた果てに安穏としてその恩恵をやすやすと受け入れることがあってはなりません。

 そこに正義はありません。人の命が懸かっています。自由や平等の普遍的、基本的価値観が脅かされています。

 日和見で曖昧な態度ではなく、ミャンマー国軍の暴挙に関しては、国際協調の下、日本が強いリーダーシップを発揮して毅然とした対応を取ることが、ミャンマーの民主化のために必要です。

 アジア地域の安定、世界平和のために、日本外交が非道な国軍に加担することなく王道を進むことを求めて、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。感謝します。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 小熊議員から、RCEP協定と地域の平和と安定についてお尋ねがありました。

 RCEP協定は、十五か国が参加し、物品市場アクセスの改善のみならず、この地域に、知的財産や電子商取引を含む、自由で公正なルールに基づく秩序を形成する、大きな一歩となると考えています。

 本協定は、ASEANが推進力となって交渉が進められ、合意に至ったものであり、中国主導の枠組みであるとは認識していません。

 我が国として、TPP11にも参加している豪州及びニュージーランド等とも緊密に連携しながら、RCEP協定を通じて、地域における経済秩序の形成に主導的役割を果たしていきたいと考えています。

 次に、RCEP協定の内容について、TPP協定との比較も含めてお尋ねがありました。

 RCEP協定は、カンボジア、ラオス、ミャンマーといった後発開発途上国を含め、国内制度や経済発展状況が大きく異なる十五か国による経済連携協定であり、TPPとは交渉の経緯や参加国の状況などが異なるため、一概に比較してお答えするのは困難です。

 その上で申し上げれば、本協定は、参加国の経済発展状況等が大きく異なる中でも、物品・サービスにとどまらず、知的財産や電子商取引等も含めた新たなルールまで盛り込んだものであり、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けた重要な一歩になると考えています。

 食品輸入規制についてでありますが、日本産食品の輸入規制の撤廃は最重要課題の一つであり、様々な機会を捉えて、関係国・地域に対する申入れを行っています。

 日本産食品の安全性については、科学的なデータに基づいた説明を行い、その結果、シンガポールが昨年一月に輸入停止を解除、インドネシアが、昨年一月に水産物、加工食品、五月にその他の農産品に対する規制を大幅に緩和しました。

 政府としては、輸入規制措置を維持するRCEP署名国に対して、様々な機会を捉えて、更なる働きかけを行ってまいります。

 RCEP協定の電子商取引分野のルールの今後についてでありますが、RCEP協定では、交渉の結果、ソースコードの開示要求の禁止等については、協定発効後に締約国間にて協議を行うこととなっています。

 我が国としては、電子商取引分野のルールの更なる改善、向上に向け、引き続き各国と議論をしていきたいと考えております。

 知的財産保護関連規定の中国における実効性確保についてでありますが、RCEP協定では、知的財産権の保護及び行使に関するルールが定めてあります。こうした規定が適切に運用されることにより、日本企業が直面する問題の改善に資することが期待されます。

 仮に、締約国が協定の規定と相入れない措置を取る場合には、協定に規定された協議メカニズムや紛争解決手続を活用して、適切に対応していきます。

 中国のTPP参加の実現可能性及び日中韓FTAの今後の方針についてお尋ねがありました。

 TPP11は、市場アクセスでもルールの面でも、高いレベルの内容となっています。

 中国を含め、新規加入に関心を示すエコノミーがTPP11のこうした高いレベルを満たす用意ができているかどうかについて、まずはしっかりと見極める必要があると考えています。

 日中韓FTAは、ルール面を含め、RCEPを超える高いスタンダードの協定にしていくことが重要であると考えておりますが、まずは、署名に至ったRCEPの早期発効に取り組んでいきたいと思います。

 尖閣諸島をめぐる我が国の対応についてでありますが、中国海警船舶が累次にわたり尖閣諸島周辺の我が国領海に侵入し、日本漁船に接近しようとする動きを見せていることは、誠に遺憾であり、断じて容認できません。尖閣諸島周辺の我が国領海で独自の主張をする海警船舶の活動は、そもそも国際法違反であり、これまで中国側に厳重に抗議してきているところであります。

 我が国固有の領土である尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在しません。RCEPは、二国間ではなく、十五か国による経済連携協定ですが、いずれにせよ、国際社会に対して、正確な情報を発信し、理解と支持を得ることは重要であり、引き続き取り組んでいく考えであります。

 インドのRCEP参加についてお尋ねがありました。

 RCEP協定は、インドを除く署名国だけでも、世界人口、世界のGDP及び貿易総額の約三割をカバーする経済連携協定となります。また、RCEP協定参加国と我が国の貿易額は、我が国貿易総額の五割弱に及びます。

 また、この地域に知的財産や電子商取引を含む自由で公正なルールに基づく秩序を形成することは、世界的に保護主義や内向き志向が強まる中で、自由貿易を推進していくというメッセージを世界に向けて明確に発信することにもなります。

 他方、十三億人の人口を有するインドは、着実に経済成長を実現しており、経済大国への歩みを進めています。我が国としては、インドのRCEP復帰に向けて、インドとも更に対話を行いつつ、RCEPの内側から引き続き主導的役割を果たしていく考えであります。

 米国のTPP復帰についてお尋ねがありました。

 米国は、世界でもグローバル化や技術革新が進んでいる国であり、私が担当した日米貿易交渉に際しても、この点を含め、米国がTPPに参加することは米国経済にとっても戦略的観点からも望ましいと説明をしてきました。

 バイデン政権は、まずは国内の雇用政策等を重視し、それまで新たな貿易協定は結ばないとしており、RCEP協定の締結が米国のTPP復帰を促すかについては予断を許しませんが、いずれにせよ、バイデン新政権とは、通商政策を含め、しっかりと意思疎通をしてまいります。その一環で、四月には、菅総理が最初の外国首脳としてワシントンを訪れることを今日発表させていただきました。

 日米貿易協定に関してお尋ねがありました。

 日米貿易協定においては、自動車・自動車部品について、単なる交渉の継続ではなく、関税の撤廃に関して更に交渉する旨明記をされています。すなわち、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について今後交渉を行うことが日米間で合意されているわけであります。したがって、自動車・自動車部品を関税撤廃率に含めることは何ら問題ないと考えています。

 なお、バイデン政権の通商政策については、まずは国内の雇用政策等を重視し、それまでは新たな貿易協定は結ばないという方針であると理解していますが、引き続き、通商政策を含め、しっかり意思疎通を図ってまいります。

 RCEP協定における法の支配、人権、環境に関する配慮などに関する意義の共有と協力についてお尋ねがありました。

 我が国としては、国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配がRCEP参加国においても保障されることが重要であると考えており、その観点からRCEP協定発効後もいかなる協力が可能か、参加各国と議論を進めてまいりたいと考えております。

 最後に、ミャンマー軍事政権によるRCEP協定の締結についてお尋ねがありました。

 ミャンマーについては、我が国は、事案発生以来、ミャンマー国軍に対して民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきています。我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性を認めることはありません。

 いずれにしても、ASEAN諸国を始め、他のRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応を検討してまいります。(拍手)

    〔国務大臣野上浩太郎君登壇〕

国務大臣(野上浩太郎君) 小熊議員の御質問にお答えいたします。

 RCEP協定の影響及び生産基盤の強化についてのお尋ねがありました。

 RCEPにおける我が国農林水産品の関税については、重要五品目、すなわち、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物について、関税削減、撤廃から全て除外し、また、関税撤廃率は近年締結された二国間EPA並みの水準としており、国内農林水産業への特段の影響はないと考えております。

 他方、我が国の農林水産業は、人口減少に伴う国内マーケットの縮小や農業者の減少、高齢化の進行など厳しい状況に直面しており、本協定で獲得した海外需要の拡大等の成果を最大限活用できる生産体制等を整えていくことが重要です。

 そのため、輸出五兆円目標にも対応した畜産物、果物等の増産の推進や、輸入品からの代替の見込まれる小麦、大豆等の増産、加工食品、外食向け原料の国産への切替え等に取り組んでいるところであります。

 次に、関税以外の輸出障壁の撤廃に関する本協定の効果と対策についてのお尋ねがありました。

 本協定では、衛生植物検疫措置、いわゆるSPS措置に関する手続の透明性の確保に係る義務等を規定するほか、自国と他の締約国との間の貿易に影響を及ぼしていると認める場合には技術的協議を要請することができ、同要請が行われた場合には、原則として三十日以内に協議を行う義務を定めております。

 本協定が発効すれば、SPS措置に関する協議について、本協定に基づく協議の場も活用することができるようになります。

 今後とも、農林水産物・食品輸出本部の下、こうした協議の場も活用しつつ、あらゆる機会を捉えてSPS措置に関する協議を進めることにより、更なる農林水産物・食品の輸出拡大を図ってまいります。

 次に、IUU漁業対策についてのお尋ねがありました。

 水産資源の適切な管理を推進する観点から、IUU漁業の撲滅に向けて積極的に取り組んでいく必要があると考えております。

 そのため、我が国としては、日本に輸入されるマグロ類等に関して、外国為替及び外国貿易法に基づき、事前審査を行い、IUU漁獲物が輸入されないよう措置しているとともに、外国人漁業の規制に関する法律に基づく、IUU漁船リストに掲載された漁船の寄港規制に加え、IUU漁獲物等の我が国への陸揚げの禁止措置を行っております。

 また、昨年十二月に成立しました水産流通適正化法において、国際的にIUU漁業のおそれの大きい魚種について、輸入時に外国政府が発行する証明書の添付を求める措置を講ずることとしたところであります。

 御指摘のありました違法漁業防止寄港国措置協定、PSM協定につきましては、我が国は未締約国に対して加入を呼びかけているほか、令和元年の国連総会持続的漁業決議においては、我が国の提案を踏まえ、主要な寄港国による同協定の早期締結の重要性が強調されたところであります。

 今後とも、未締約国に対しては、二国間対話や国連の場等を通じて働きかけを行うなど、IUU漁業の撲滅に向けたこうした取組を積極的に推進してまいります。(拍手)

    〔国務大臣梶山弘志君登壇〕

国務大臣(梶山弘志君) 小熊議員からの御質問にお答えいたします。

 RCEP協定の締結と特定の国への依存度やサプライチェーン強靱化の関係性についてお尋ねがありました。

 RCEP協定の締結は、サプライチェーンの強靱化に資するものであり、特定の国への依存度を高めることにはならないと考えます。

 その理由としては、第一に、全てのRCEP参加国が関税を削減、撤廃することで、日本国内で製造して相手国に輸出するという選択肢を取りやすくなり、結果的に日本国内の製造基盤の維持強化につながると考えます。

 第二に、RCEP参加十五か国間で知的財産や投資、電子商取引等に係る共通のルールが構築されることで、サプライチェーンの強靱化、効率化に資する面的な事業環境の整備が実現されます。

 このような観点から、RCEP協定の早期発効と全ての締結国による着実な履行は非常に重要と考えており、各国と連携してしっかり取り組む所存であります。

 なお、新型コロナウイルス感染症によりサプライチェーン寸断のリスクが顕在化したことから、生産拠点の海外集中度が高い製品、部素材などの国内拠点を整備するためのサプライチェーン補助金を措置しました。

 RCEPに加えてこれらの予算措置も活用し、サプライチェーンの多元化、強靱化に取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣田村憲久君登壇〕

国務大臣(田村憲久君) 厚生労働省職員の会食についてお尋ねがありました。

 厚生労働省の職員が、送別会の趣旨で、大人数で深夜まで会食を行っていた事実が確認されました。

 新型コロナウイルス感染症対策を進める立場にある厚生労働省において、あってはならないことであり、国民の皆様の信用を裏切る形になったことについて、深くおわび申し上げます。

 必要な調査の上、三月三十日付で、会食に参加した課長級職員について減給、管理監督者である局長について訓告など、関係職員に対して処分を行いました。この課長職については、併せて、同日、大臣官房付に異動させたところであります。

 加えて、今回の事案を非常に重く受け止め、厚生労働大臣としての責任を痛感し、私の給与の全額二か月分を自主返納することにいたしました。

 改めて、全職員の認識を徹底し、二度とこうした事案が起こらないよう全力で取り組んでまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(大島理森君) 山尾志桜里君。

    〔山尾志桜里君登壇〕

山尾志桜里君 国民民主党の山尾志桜里です。

 会派を代表して、RCEPについて質問します。(拍手)

 今回の加盟国には、中国とミャンマーが含まれます。現在進行形で自国民に対し重大な人権侵害を行っている国と、今、経済連携を前進させることが本当に妥当なのか、厳しい判断が突きつけられています。

 まず、合意時点と状況が激変したミャンマーについてです。

 国軍は市民に対する発砲や空爆をエスカレートさせ、今日までに七歳の少女を含む五百人以上が死亡しています。

 今後、日本として、ミャンマー国軍によるRCEP発効を万が一にも認める可能性があるのでしょうか。人権国家として、自国民を殺りくする国軍と、対話はしても正統性は認めないという一線を守っていただきたい。答弁を求めます。

 RCEPの合意形成は、RCEP合同委員会においてコンセンサスが図られます。ミャンマー国軍による発効の是非、あるいはルール違反の疑いへの対応など、今後の課題は少なくありません。自由、人権、法の支配という普遍的価値観に基づいて日本が合意形成をリードしていくに当たり、各国の価値観を把握する必要があります。

 そこで、伺います。

 昨年六月三十日に開かれた国連人権理事会では、香港国家安全維持法について懸念表明と支持表明、二つの共同声明が発表されました。今回のRCEP加盟各国につき、懸念表明に参加したのか、支持表明に参加したのか、どちらにも不参加だったのか、お答えください。

 中国を含めて支持を表明した国が四か国、他方、日本を含めて懸念を表明した国が三か国と把握していますが、正しいでしょうか。確認させてください。

 その上で、人権弾圧を内政問題として黙認したり、ルール違反を数の力で押し通すような枠組みになってしまう懸念をいかに払拭するつもりでしょうか。お答えください。

 注目された電子商取引の分野では、データローカリゼーション要求の禁止と、データフリーフローの規定が整備されました。

 すなわち、原則として、自国でビジネスする海外企業に対してサーバーなどを我が国に設置せよと要求することは禁止される一方、加盟国間でデータの越境移転を妨げてはならないとされました。

 確かにこうした規定は、これまでは自由貿易の推進力として肯定的に捉えられてきたものです。しかし、RCEPの加盟国には、適法性、公正性、透明性といった根本的なデジタル原則を必ずしも共有していない国が含まれます。

 韓国や中国のサーバーに画像データなどが保管されていたLINEの問題、楽天、日本郵政、テンセントの大型資本提携がもたらす情報流出への懸念。今後は、個人情報保護やサイバーセキュリティーなどの観点から、むしろ規制を求めるべき場面も出てくるのではないでしょうか。

 データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストという方針の大前提であるトラストを確信できない国が含まれる今回のRCEPで、日本はどのような場面でデータ流通を規制できるのか、サーバーを日本に置くことを要求できるのか、例外が認められる公共政策上あるいは安全保障上の必要性とは何を指すのか、安全保障には経済安全保障も含まれるのか、具体例とともに説明を求めます。

 昨年四月、習近平主席はこう演説しました。国際産業チェーンの我が国に対する依存関係を引き寄せ、外部の人間が供給を断つことに対する強くて有力な反撃、威嚇能力を形成する。人権弾圧を理由とした経済制裁を困難にするために、サプライチェーンにおける国際社会の中国依存を強める趣旨とも受け取れます。

 こうした発信の上で、実際に香港やウイグルにおける人権状況が悪化している今、むしろ経済制裁を検討すべき場面で経済連携をすることに強い懸念を覚えます。

 そこで、提案です。

 今、議員立法で検討が進んでいる人権侵害制裁法と併せて、人権デューデリジェンスの法制化です。一定の規模を持つ企業に対し、政府のサポートの下、サプライチェーンを含め、直接間接に人権侵害に加担することのないような計画や実施状況の公開を義務づけるものです。この法制化についても、昨年末、EUが二〇二一年に法案提出すると動き、具体的な取組のない国はG7の中で日本だけになってしまいました。

 価値を同じくする国々が人権侵害制裁法や人権デューデリジェンスの法制化を加速度的に進める中、日本がこうした取組なしに、今回、RCEP締結の姿だけを見せてよいとは思えません。この二つの法整備を検討する考えはあるか、答弁を求めます。

 あわせて、国会承認のタイミングです。

 加盟十五か国のうち、国内手続を終えた国はどこですか。中国とタイが国内手続を完了したと認識していますが、この状況で、今、日本が次に続く必要はないのではありませんか。中国やミャンマーの人権状況を見極めつつ、オーストラリアやニュージーランドなどとよく連携して、国会承認に関してはもう一呼吸置くという判断を検討いただけませんか。

 この条約に関しては、戦略的に時間をかけて議論を続け、適切なタイミングで適切な結論を得るべきです。是非、与野党を問わず、議員の皆様にも、知恵を絞り、政府に働きかけいただくことをお願いして、代表質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣茂木敏充君登壇〕

国務大臣(茂木敏充君) 山尾議員から、ミャンマー国軍によるRCEP協定の発効についてお尋ねがありました。

 RCEP協定は、ASEAN、日中韓、豪州、ニュージーの十五か国が署名したEPAであり、我が国としては、RCEP協定を通じて、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けた重要な一歩になると考えています。

 ミャンマーについては、我が国は、事案発生以来、ミャンマー国軍に対して民主的な政治体制の回復を強く求めてきています。肝腎なことは目に見えないとも言われますが、水面下も含め、様々な働きかけを続けます。一方、我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性を認めることはありません。

 いずれにせよ、ASEAN諸国を始め、他のRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応を検討してまいります。

 次に、RCEP協定参加国の人権問題への対応についてでありますが、昨年六月三十日の国連人権理事会において、RCEP協定参加国のうち、三か国が香港の国家安全維持法に懸念を示す共同ステートメントに参加をし、四か国が中国の政策を支持する共同ステートメントに参加したと承知をしております。

 我が国としては、国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配がRCEP参加国においても保障されることが重要であるとの考えに基づき、今後もしっかりと対応してまいります。

 データ流通規制に関するルールについてでありますが、RCEPにおける電子商取引章においては、情報の越境移転の制限の禁止、コンピューター関連施設の設置要求の禁止といった電子商取引を促進するための規定が盛り込まれていますが、これらの規定の例外として、締約国が公共政策の正当な目的を達成するためや、自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認められる措置を講じることは認められており、データ流通に関して必要な規制を行う政策判断の裁量は確保されております。

 例えば、個人情報保護は、公共政策の正当な目的に当たると考えられます。また、安全保障上の重大な利益について、経済安全保障分野に関するものも含まれ得ると考えます。

 人権侵害制裁法や人権デューデリジェンス法の整備についてお尋ねがありました。

 一方的に人権侵害を認定して制裁を科すような制度を日本も導入すべきかについては、これまでの日本の人権外交の進め方との関係、国際社会の動向など、様々な観点から、不断の分析、検討が必要と考えています。

 また、国際的に企業に対する人権尊重を求める声が高まる中、昨年十月十六日、政府はビジネスと人権に関する行動計画を策定しました。この行動計画では、企業に対して、人権デューデリジェンスの導入促進を期待する旨を表明していますが、その義務づけについては、様々な議論が必要になると考えています。

 まずは、関係省庁と連携しつつ、この行動計画を着実に実施しつつ、関係者の意見も聴取し、関係省庁で議論を深めていきたいと考えています。

 最後に、RCEP協定について、現時点で国内手続を終えて批准書を寄託した国はありませんが、可能な限り早期に発効させることが重要であるとの認識は各国間で共有されていると考えております。

 我が国として、まずはRCEP協定の早期発効を実現させた上で、TPP11にも参加している豪州及びニュージーランド等と緊密に連携しながら、協定の履行確保にもしっかりと取り組み、RCEP協定を通じて地域における経済秩序の形成にも主導権を発揮してまいりたいと考えております。(拍手)

議長(大島理森君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(大島理森君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       外務大臣   茂木 敏充君

       厚生労働大臣 田村 憲久君

       農林水産大臣 野上浩太郎君

       経済産業大臣 梶山 弘志君

 出席副大臣

       外務副大臣  鷲尾英一郎君


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.